(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6956516
(24)【登録日】2021年10月7日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】リソグラフィ方法、決定方法、情報処理装置、プログラム及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20211021BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20211021BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20211021BHJP
【FI】
G03F7/20 501
H01L21/30 514B
B29C59/02 Z
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-91948(P2017-91948)
(22)【出願日】2017年5月2日
(65)【公開番号】特開2017-219833(P2017-219833A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2020年4月2日
(31)【優先権主張番号】特願2016-109645(P2016-109645)
(32)【優先日】2016年6月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水元 一史
【審査官】
植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−029070(JP,A)
【文献】
特開2000−228344(JP,A)
【文献】
特開平08−306610(JP,A)
【文献】
特開平11−135413(JP,A)
【文献】
特開平11−150054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1サイズを有する複数の第1ショット領域の配列を有する第1層を走査露光を含む工程によって形成する第1処理と、少なくとも2つの前記第1ショット領域を含むサイズに対応する第2サイズを有する複数の第2ショット領域の配列を有する第2層を形成する第2処理とにより、前記第1層と前記第2層とを重ね合わせて基板上に形成するリソグラフィ方法であって、
前記第1ショット領域の配列を示す第1レイアウト情報と、前記第2ショット領域の配列を示す第2レイアウト情報とを取得する第1工程と、
前記第1レイアウト情報及び前記第2レイアウト情報に基づいて、前記第1ショット領域のそれぞれについて、前記第1処理において当該第1ショット領域を走査露光する際の走査方向を決定する第2工程と、を有し、
前記第2工程では、前記第2ショット領域に含まれる少なくとも2つの前記第1ショット領域において走査方向は互いに異なり、かつ前記第2ショット領域に含まれる少なくとも2つの前記第1ショット領域のそれぞれの前記走査方向の組み合わせが、複数の前記第2ショット領域のそれぞれにおいて同じになるように、前記走査方向を決定することを特徴とするリソグラフィ方法。
【請求項2】
前記第1層を形成するためのレシピに含まれる前記第1ショット領域のそれぞれを走査露光する際の走査方向を、前記第2工程で決定された前記走査方向に変更する工程を更に有することを特徴とする請求項1に記載のリソグラフィ方法。
【請求項3】
前記第1ショット領域のそれぞれを走査露光する際の走査方向が前記第2工程で決定された前記走査方向となるように、前記第1層を形成するためのレシピに含まれる前記第1ショット領域を走査露光する露光順番を変更する工程を更に有することを特徴とする請求項1に記載のリソグラフィ方法。
【請求項4】
前記第1ショット領域のそれぞれを走査露光する際の走査方向が前記第2工程で決定された前記走査方向となるように、前記第1層を形成するためのレシピに含まれる前記第1ショット領域の間の前記基板の移動経路を変更する工程を更に有することを特徴とする請求項1に記載のリソグラフィ方法。
【請求項5】
前記第1ショット領域を走査露光する際の走査方向に依存する露光誤差を補正するための補正テーブルを、前記第1ショット領域のそれぞれについて、前記第2工程で決定された前記走査方向に応じて選択する工程を更に有し、
前記第1処理では、前記工程で選択された補正テーブルを用いて前記第1ショット領域を走査露光することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載のリソグラフィ方法。
【請求項6】
前記補正テーブルを選択する工程では、前記第2工程で決定された前記走査方向に加えて、前記第2ショット領域に含まれている前記第1ショット領域の数に応じて、前記補正テーブルを選択することを特徴とする請求項5に記載のリソグラフィ方法。
【請求項7】
前記第1処理と前記第2処理とでは、異なるリソグラフィ装置を用いることを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか1項に記載のリソグラフィ方法。
【請求項8】
前記第2処理では、基板上のインプリント材にモールドを接触させてパターンを形成するインプリント装置により前記第2層を形成することを特徴とする請求項7に記載のリソグラフィ方法。
【請求項9】
第1サイズを有する複数の第1ショット領域の配列を有する第1層を走査露光を含む工程によって形成する第1処理と、少なくとも2つの前記第1ショット領域を含むサイズに対応する第2サイズを有する複数の第2ショット領域の配列を有する第2層を形成する第2処理とにより、前記第1層と前記第2層とを重ね合わせて基板上に形成する際の前記第1ショット領域のそれぞれを走査露光する際の走査方向を決定する決定方法であって、
前記第1ショット領域の配列を示す第1レイアウト情報と、前記第2ショット領域の配列を示す第2レイアウト情報とを取得する第1工程と、
前記第1レイアウト情報及び前記第2レイアウト情報に基づいて、前記第1ショット領域のそれぞれについて、前記第1処理において当該第1ショット領域を走査露光する際の走査方向を決定する第2工程と、を有し、
前記第2工程では、前記第2ショット領域に含まれる少なくとも2つの前記第1ショット領域において走査方向は互いに異なり、かつ前記第2ショット領域に含まれる少なくとも2つの前記第1ショット領域のそれぞれの前記走査方向の組み合わせが、複数の前記第2ショット領域のそれぞれにおいて同じになるように、前記走査方向を決定することを特徴とする決定方法。
【請求項10】
第1サイズを有する複数の第1ショット領域の配列を有する第1層を走査露光を含む工程によって形成する第1処理と、少なくとも2つの前記第1ショット領域を含むサイズに対応する第2サイズを有する複数の第2ショット領域の配列を有する第2層を形成する第2処理とにより、前記第1層と前記第2層とを重ね合わせて基板上に形成する際の前記第1ショット領域のそれぞれを走査露光する際の走査方向を決定する情報処理装置であって、
前記第1ショット領域の配列を示す第1レイアウト情報と、前記第2ショット領域の配列を示す第2レイアウト情報とを取得する第1工程と、
前記第1レイアウト情報及び前記第2レイアウト情報に基づいて、前記第1ショット領域のそれぞれについて、前記第1処理において当該第1ショット領域を走査露光する際の走査方向を決定する第2工程と、を実行する処理部を有し、
前記第2工程では、前記第2ショット領域に含まれる少なくとも2つの前記第1ショット領域において走査方向は互いに異なり、かつ前記第2ショット領域に含まれる少なくとも2つの前記第1ショット領域のそれぞれの前記走査方向の組み合わせが、複数の前記第2ショット領域のそれぞれにおいて同じになるように、前記走査方向を決定する、
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項11】
請求項9に記載の決定方法を情報処理装置に実行させるためのプログラム。
【請求項12】
請求項1乃至8のうちいずれか1項に記載のリソグラフィ方法を用いてパターンを基板に形成する工程と、
前記工程で前記パターンが形成された前記基板を処理する工程と、
を有することを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リソグラフィ方法、決定方法、情報処理装置、プログラム及び物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
異なるリソグラフィ装置の間のオーバーレイ精度(Mix&Match)に関する技術が提案されている(特許文献1及び2参照)。特許文献1には、露光装置の種別、即ち、スキャナーやステッパーに応じて、その特性(結像特性の補正容易性)を加味することで、オーバーレイ精度を向上させる露光方法が開示されている。かかる露光方法では、複数の露光装置を用いて基板上に複数の層(パターン)を重ね合わせて形成する際に、複数の露光装置のうち、任意の層を形成する露光装置の結像特性を、他の層を形成する露光装置の像歪み補正特性を考慮して調整している。
【0003】
また、特許文献2には、下地パターンには、ショット領域の形状を制御しにくいインプリント装置を用い、その上に重ね合わせるパターンには、露光装置を用いることで、ショット領域間のディストーションを低減する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第99/36949号
【特許文献2】特開2009−212471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、半導体デバイスにおいては、2次元的な微細化だけではなく、3次元積層構造化によって、メモリの大容量化や小型化などの実現を図る多様な技術が開発されている。このような技術の進化によって、半導体デバイスの製造に用いられるリソグラフィ装置の種類も多様化している。また、半導体デバイスの3次元積層構造化によって、積層数が増加するため、各層における下地パターンとのオーバーレイ精度にも高精度化が要求される傾向にある。例えば、ステッパーやスキャナーとの間のオーバーレイ精度、通常の画角(小画角)の露光装置と大画角の露光装置との間のオーバーレイ精度、インプリント装置と露光装置との間のオーバーレイ精度などにおいて、より高精度化が求められている。
【0006】
特に、通常の画角の露光装置と大画角のインプリント装置との間においては、モールドが押印される大画角のショット領域(インプリント領域)に含まれる通常の画角のショット領域(露光領域)の傾向が、一般的に、大画角ごとに異なることになる。例えば、大画角のショット領域に含まれる通常の画角のショット領域のそれぞれと走査方向との組み合わせが、一定でない可能性が高い。従って、これらの装置の間では、ショット領域のマッチングの制御が困難であり、確定的なオーバーレイ誤差の要因となる。
【0007】
本発明は、このような従来技術の課題に鑑みてなされ、第1層と第2層とを重ね合わせて基板上に形成する際のオーバーレイ誤差を低減するのに有利なリソグラフィ方法を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としてのリソグラフィ方法は、第1サイズを有する複数の第1ショット領域の配列を有する第1層を走査露光を含む工程によって形成する第1処理と、少なくとも2つの前記第1ショット領域を含むサイズに対応する第2サイズを有する複数の第2ショット領域の配列を有する第2層を形成する第2処理とにより、前記第1層と前記第2層とを重ね合わせて基板上に形成するリソグラフィ方法であって、前記第1ショット領域の配列を示す第1レイアウト情報と、前記第2ショット領域の配列を示す第2レイアウト情報とを取得する第1工程と、前記第1レイアウト情報及び前記第2レイアウト情報に基づいて、前記第1ショット領域のそれぞれについて、前記第1処理において当該第1ショット領域を走査露光する際の走査方向を決定する第2工程と、を有し、前記第2工程では、
前記第2ショット領域に含まれる少なくとも2つの前記第1ショット領域において走査方向は互いに異なり、かつ前記第2ショット領域に含まれる少なくとも2つの前記第1ショット領域のそれぞれ
の前記走査方
向の組み合わせが、
複数の前記第2ショット領域の
それぞれにおいて同じになるように、前記走査方向を決定することを特徴とする。
【0009】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、例えば、第1層と第2層とを重ね合わせて基板上に形成する際のオーバーレイ誤差を低減するのに有利なリソグラフィ方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一側面としてのリソグラフィ方法を説明するためのフローチャートである。
【
図2】第1ショット領域の配列の一例及び第2ショット領域の配列の一例を示す図である。
【
図3】従来技術において第1層と第2層とを重ね合わせた場合を説明するための図である。
【
図4】本実施形態において第1層と第2層とを重ね合わせた場合を説明するための図である。
【
図5】第1ショット領域の配列の一例及び第2ショット領域の配列の一例を示す図である。
【
図6】従来技術において第1層と第2層とを重ね合わせた場合を説明するための図である。
【
図7】本実施形態において第1層と第2層とを重ね合わせた場合を説明するための図である。
【
図8】第2ショット領域に含まれる4つの第1ショット領域のそれぞれの走査方向に依存する露光誤差の一例を示す図である。
【
図9】
図8に示す露光誤差を補正するための補正テーブルの一例を示す図である。
【
図10】第2ショット領域に含まれる第1ショット領域の数を説明するための図である。
【
図11】第2ショット領域に含まれる第1ショット領域の数を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
図1は、本発明の一側面としてのリソグラフィ方法を説明するためのフローチャートである。かかるリソグラフィ方法では、第1層(例えば、第N層)を走査露光を含む工程によって形成する第1処理と、第2層(例えば、第(N+1)層又は第(N−1)層)を形成する第2処理とにより、第1層と第2層とを重ね合わせて基板上に形成する。第1層は、第1サイズを有する複数の第1ショット領域の配列を有し、第2層は、少なくとも2つの第1ショット領域を含むサイズに対応する第2サイズを有する複数の第2ショット領域の配列を有する。また、第1処理と第2処理とでは、異なるリソグラフィ装置(種別などが違うリソグラフィ装置)が用いられる。本実施形態では、第1処理には、マスク(レチクル)と基板とを走査方向に走査しながら基板を露光(走査露光)する走査型の露光装置(所謂、スキャナーと呼ばれる露光装置など)を用いる。また、第2処理には、基板上のインプリント材にモールド(型)を接触させてパターンを形成するインプリント装置を用いる。従って、露光装置は、小画角(第1サイズの第1ショット領域)のリソグラフィ装置として用いられ、インプリント装置は、大画角(第2サイズの第2ショット領域)のリソグラフィ装置として用いられる。
【0014】
S102では、露光装置によって形成される第1層における第1ショット領域の配列を示す第1レイアウト情報を取得する。露光装置(の記憶部)には、第1層を形成するためのレシピが記憶されている。かかるレシピには、一般的に、基板(ショット領域のそれぞれ)を走査露光する際の露光条件に加えて、ショット領域の配列を示すレイアウト情報も含まれている。従って、露光装置に記憶されたレシピを参照することで、第1レイアウト情報を取得することができる。ここで、露光条件は、例えば、ショット領域を走査露光する際の走査方向や走査速度、各ショット領域の露光順番、露光量、ショット領域の間の基板の移動経路などを含む。
【0015】
S104では、インプリント装置によって形成される第2層における第2ショット領域の配列を示す第2レイアウト情報を取得する。インプリント装置(の記憶部)には、第2層を形成するためのレシピが記憶されている。かかるレシピには、一般的に、基板にインプリント処理を行う際のインプリント条件に加えて、ショット領域の配列を示すレイアウト情報も含まれている。従って、インプリント装置に記憶されたレシピを参照することで、第2レイアウト情報を取得することができる。ここで、インプリント条件とは、基板に形成すべきインプリント材の残膜厚、モールドへのインプリント材の充填時間、モールドの押印力などを含む。なお、残膜厚とは、硬化したインプリント材で形成されるパターンの凹部の表面(底面)と、基板の表面との間のインプリント材の厚さである。
【0016】
S106では、第1ショット領域と第2ショット領域との重なりの条件が均一であるかどうか、即ち、第1処理における第2ショット領域に含まれる少なくとも2つの第1ショット領域のそれぞれと走査方向との組み合わせが一定であるかどうかを判定する。ここで、少なくとも2つの第1ショット領域のそれぞれと走査方向との組み合わせが一定であるとは、その組み合わせが第2ショット領域のうちの少なくとも一部において(所定の数以上)同じであることを意味する。第1ショット領域と第2ショット領域との重なりの条件が均一でない場合には、S108に移行する。一方、第1ショット領域と第2ショット領域との重なりの条件が均一である場合には、S112に移行する。
【0017】
S108では、第1ショット領域と第2ショット領域との重なりの条件が均一となるように、第1ショット領域のそれぞれについて、第1処理において第1ショット領域を走査露光する際の走査方向を決定する。ここでは、S102及びS104のそれぞれで取得した第1レイアウト情報及び第2レイアウト情報に基づいて、第1処理において第2ショット領域に含まれる少なくとも2つの第1ショット領域を特定する。そして、第2ショット領域に含まれる少なくとも2つの第1ショット領域のそれぞれと走査方向との組み合わせが、第2ショット領域のうちの少なくとも一部において同じになるように、第1ショット領域のそれぞれの走査方向を決定する。この際、かかる組み合わせが、第2ショット領域の全てにおいて同じになるようにするとよい。
【0018】
S110では、S108で決定された走査方向に基づいて、第1層を形成するためのレシピ、即ち、露光装置に記憶されているレシピを変更(更新)する。例えば、露光装置に記憶されているレシピに含まれる第1ショット領域のそれぞれを走査露光する際の走査方向を、決定された走査方向に変更する。また、第1ショット領域のそれぞれを走査露光する際の走査方向が決定された走査方向となるように、露光装置に記憶されているレシピに含まれる第1ショット領域を走査露光する露光順番を変更してもよい。更には、第1ショット領域のそれぞれを走査露光する際の走査方向が決定された走査方向となるように、露光装置に記憶されているレシピに含まれる第1ショット領域の間の基板の移動経路を変更してもよい。
【0019】
S112では、第1処理と第2処理とにより、第1層と第2層とを重ね合わせて基板上に形成する。上述したように、第1処理では、露光装置が記憶しているレシピに従って基板を走査露光することで第1層を形成し、第2処理では、インプリント装置が記憶しているレシピに従ってインプリント処理を行うことで第2層を形成する。
【0020】
本実施形態では、第2ショット領域に含まれる少なくとも2つの第1ショット領域のそれぞれと走査方向との組み合わせが、第2ショット領域のうちの少なくとも一部において同じになるように、第1処理が行われる。これにより、第2処理において第2ショット領域にインプリント処理を行う際に、少なくとも2つの第1ショット領域と第2ショット領域とのマッチングの制御が容易となる(マッチングをより精度よく制御することが可能となる)。従って、第1層と第2層とを重ね合わせ基板上に形成する際のオーバーレイ誤差(即ち、異なるリソグラフィ装置の間のオーバーレイ誤差)を低減するのに有利である。
【0021】
以下、本実施形態のリソグラフィ方法について具体例を説明する。
【0022】
<実施例1>
図2(a)は、第1層における複数の第1ショット領域SR1の配列の一例を示す図である。
図2(a)には、第1ショット領域SR1のそれぞれを走査露光する際の走査方向が矢印で示されている。
図2(b)は、第2層における複数の第2ショット領域SR2の配列の一例を示す図である。
図2(a)及び
図2(b)を参照するに、第1ショット領域SR1のサイズと第2ショット領域SR2のサイズとは異なり、ここでは、第2ショット領域SR2は、4つの第1ショット領域SR1を含むサイズに対応するサイズを有する。
【0023】
図3(a)は、第1ショット領域SR1の配列を示す第1レイアウト情報及び第2ショット領域SR2の配列を示す第2レイアウト情報を考慮せずに、即ち、従来技術において第1層(
図2(a))と第2層(
図2(b))とを重ね合わせた状態を示す図である。この場合、第2ショット領域SR2に含まれる4つの第1ショット領域SR1のそれぞれと走査方向との組み合わせにおいて、
図3(b)及び
図3(c)に示すように、異なる組み合わせが含まれていることがわかる。
【0024】
図4(a)は、本実施形態において第1層(
図2(a))と第2層(
図2(b))とを重ね合わせた状態を示す図である。本実施形態では、上述したように、第1レイアウト情報及び第2レイアウト情報に基づいて、第1ショット領域SR1のそれぞれを走査露光する際の走査方向が決定されている。従って、
図4(b)及び
図4(c)に示すように、第2ショット領域SR2に含まれる4つの第1ショット領域SR1のそれぞれと走査方向との組み合わせが同一になっている。
【0025】
このように、本実施形態では、第1ショット領域SR1と第2ショット領域SR2との重なり(第1レイアウト情報及び第2レイアウト情報)を予め取得して、第1ショット領域SR1のそれぞれを走査露光する際の走査方向を決定している。従って、第1ショット領域SR1のそれぞれと走査方向との組み合わせが第2ショット領域SR2の全てについて同じになるようにすることができる。
【0026】
<実施例2>
図5(a)は、第1層における複数の第1ショット領域SR1の配列の一例を示す図である。
図5(a)には、第1ショット領域SR1のそれぞれを走査露光する際の走査方向が矢印で示されている。
図5(b)は、第2層における複数の第2ショット領域SR2の配列の一例を示す図である。
図5(a)及び
図5(b)を参照するに、第1ショット領域SR1のサイズと第2ショット領域SR2のサイズとは異なり、ここでは、第2ショット領域SR2は、2つの第1ショット領域SR1を含むサイズに対応するサイズを有する。
【0027】
図6(b)は、
図6(a)に示す露光順番で第1ショット領域SR1を走査露光した場合において、第1層(
図5(a))と第2層(
図5(b))とを重ね合わせた状態を示す図である。基板の各ショット領域を走査露光する際には、通常、
図6(a)に示すように、基板の端のショット領域からスネーク状に露光順番が設定される。この場合、第2ショット領域SR2に含まれる2つの第1ショット領域SR1のそれぞれと走査方向との組み合わせにおいて、
図6(c)及び
図6(d)に示すように、異なる組み合わせが含まれていることがわかる。
【0028】
図7(b)は、
図7(a)に示す露光順番で第1ショット領域SR1を走査露光した場合において、第1層(
図5(a))と第2層(
図5(b))とを重ね合わせた状態を示す図である。本実施形態では、上述したように、第1レイアウト情報及び第2レイアウト情報に基づいて、第1ショット領域SR1のそれぞれを走査露光する際の走査方向が決定されている。そして、第1ショット領域SR1のそれぞれを走査露光する際の走査方向が決定された走査方向となるように、第1ショット領域SR1を走査露光する露光順番を変更する。具体的には、
図7(a)に示すように、
図6(a)に示す露光順番から、
図7(a)に点線で示す第1ショット領域SR1の露光順番を変更する。これにより、
図7(c)及び
図7(d)に示すように、第2ショット領域SR2に含まれる4つの第1ショット領域SR1のそれぞれと走査方向との組み合わせが同一になる。
【0029】
このように、本実施形態では、第1ショット領域SR1と第2ショット領域SR2との重なり(第1レイアウト情報及び第2レイアウト情報)を予め取得して、第1ショット領域SR1のそれぞれを走査露光する際の走査方向を決定する。そして、第1ショット領域SR1のそれぞれを走査露光する際の走査方向が決定した走査方向となるように、第1ショット領域SR1の露光順番を変更している。従って、第1ショット領域SR1のそれぞれと走査方向との組み合わせが第2ショット領域SR2の全てについて同じになるようにすることができる。
【0030】
<実施例3>
第1処理において第1ショット領域SR1を走査露光する際には、ショット領域の走査方向に依存する露光誤差を補正する補正テーブル(RSP)を、本実施形態で決定された走査方向に応じて選択するとよい。そして、第1処理では、選択された補正テーブルを用いて第1ショット領域SR1を走査露光する。
【0031】
図8は、第2ショット領域SR1に含まれる4つの第1ショット領域SR1a、SR1b、SR1c及びSR1dのそれぞれの走査方向に依存する露光誤差の一例を示す図である。この場合、第1ショット領域SR1aを走査露光する際には、
図9に示す補正テーブルCTaを選択し、第1処理では、補正テーブルCTaを用いて第1ショット領域SR1aを走査露光する。また、第1ショット領域SR1bを走査露光する際には、
図9に示す補正テーブルCTbを選択し、第1処理では、補正テーブルCTbを用いて第1ショット領域SR1bを走査露光する。同様に、第1ショット領域SR1c及びSR1dのそれぞれを走査露光する際には、
図9に示す補正テーブルCTc及びCTdを選択し、第1処理では、補正テーブルCTc及びCTdを用いて第1ショット領域SR1c及びSR1dのそれぞれを走査露光する。
【0032】
このように、第1ショット領域SR1a乃至SR1dのそれぞれについて、本実施形態で決定された走査方向に応じて、第1処理で用いる補正テーブルCTa乃至CTdを変更することで、走査方向に依存する露光誤差を補正することができる。
【0033】
<実施例4>
ショットレイアウトにおいては、
図10に示すように、第2ショット領域SR2の位置によって、第2ショット領域SR2に含まれる第1ショット領域SR1の数が異なる場合がある。例えば、基板の中央部の第2ショット領域SR2aには4つの第1ショット領域SR1が含まれているが、基板の周辺部の第2ショット領域SR2bには2つの第1ショット領域SR1しか含まれていない。また、基板の周辺部の第2ショット領域SR2cには1つの第1ショット領域SR1しか含まれていない。第2ショット領域SR2b及びSR2c(パーシャルショット領域)にインプリント処理を行う場合には、第2ショット領域SR2a(コンプリートショット領域)にインプリント処理を行う場合と異なり、特有の歪みが発生する。このような特有の歪みに対応するために、第1ショット領域SR1のそれぞれを走査露光する際には、本実施形態で決定された走査方向に加えて、第2ショット領域SR2に含まれている第1ショット領域SR1の数に応じて、補正テーブルを選択するとよい。換言すれば、第1ショット領域SR1を走査露光する際の走査方向が同じであっても、第2ショット領域SR2に含まれている第1ショット領域SR1の数に応じて、第2処理で用いる補正テーブルを変更するとよい。これにより、第1ショット領域SR1を走査露光する際の走査方向に依存する露光誤差をより高精度に補正することができる。
【0034】
<実施例5>
また、ショットレイアウトにおいては、
図11(a)及び
図11(b)に示すように、第2ショット領域SR2の位置によって、第2ショット領域SR2に含まれる第1ショット領域SR1の数が異なる場合がある。例えば、基板の周辺部の第2ショット領域SR2d(パーシャルショット領域)には、
図11(b)に示すように、1乃至3つの第1ショット領域SR1しか含まれていない。通常は、
図11(a)に示すように、第2ショット領域SR2dに対しても、第2ショット領域SR2aと同様のショットレイアウト(
図10参照)となるように、走査方向を合わせて走査露光を行う。但し、第2ショット領域SR2dについては、第2サイズの第2ショット領域SR2にインプリント処理を行う際の特性を考慮して、他のショット領域と走査方向を変えることも可能である。例えば、第2ショット領域SR2dにおけるインプリント材へのモールドの押印では、インプリント材のはみ出しを考慮して、他のショット領域と異なる力のかけ方や、異なる硬化のさせ方を行う場合がある。従って、
図11(b)に示すように、特定のショット領域、即ち、第2ショット領域SR2dでは、あえて走査方向を、他のショット領域と変えて走査露光を行ってもよい。
【0035】
本発明の実施形態における物品の製造方法は、例えば、半導体デバイスや液晶表示素子などの物品を製造するのに好適である。かかる製造方法は、上述したリソグラフィ方法を用いて、パターンを基板に形成する工程と、パターンが形成された基板を処理(加工)する工程とを含む。また、上記形成工程につづけて、かかる製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージングなど)を含みうる。本実施形態における物品の製造方法は、従来に比べて、物品の性能、品質、生産性及び生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0036】
本発明は、上述の実施形態の1つ以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1つ以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0037】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、第1層と第2層とを重ね合わせて基板上に形成する際の第1ショット領域のそれぞれを走査露光する際の走査方向を決定する決定方法やかかる決定方向を実行する情報処理装置も本発明の一側面を構成する。
【符号の説明】
【0038】
SR1:第1ショット領域 SR2:第2ショット領域