特許第6956518号(P6956518)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6956518加水分解ペプチドおよび乳を含有する飲料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6956518
(24)【登録日】2021年10月7日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】加水分解ペプチドおよび乳を含有する飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/66 20060101AFI20211021BHJP
   A23L 2/02 20060101ALI20211021BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20211021BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20211021BHJP
【FI】
   A23L2/00 J
   A23L2/02 E
   A23L2/38 P
   A23L2/00 B
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-98756(P2017-98756)
(22)【出願日】2017年5月18日
(65)【公開番号】特開2018-191584(P2018-191584A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2020年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】松浦 啓一
【審査官】 戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】 [トクホ] カルピス アミールS 毎朝野菜 血圧が高めの方に 200ml×24本,2012年03月22日,pp.1-9,URL: https://www.amazon.co.jp/%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%83%94%E3%82%B9-%E3%82%A2%E3%83%9F%E3%83%BC%E3%83%ABS-%E6%AF%8E%E6%9C%9D%E9%87%8E%E8%8F%9C-%E8%A1%80%E5%9C%A7%E3%81%8C%E9%AB%98%E3%82%81%E3%81%AE%E6%96%B9%E3%81%AB-1L%C3%978%E6%9C%AC/dp/B007NCSFW8?th=1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00−2/84
A23L 33/00−33/29
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
日経テレコン
Mintel GNPD
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解ペプチドと乳とを含有する飲料であって、
セロリおよび/またはパセリの野菜汁を含み、
飲料全体に対し前記野菜汁を0.1〜30質量%含有し、
飲料全体に対し前記加水分解ペプチドを0.05〜8質量%含有する、飲料。
【請求項2】
前記加水分解ペプチドとしてカゼイン加水分解物を含む請求項1記載の飲料。
【請求項3】
前記加水分解ペプチドに対する前記野菜汁の質量比が0.04以上である請求項1または2に記載の飲料。
【請求項4】
飲料中に含まれる無脂乳固形分が0.1〜10質量%である請求項1からのいずれか一つに記載の飲料。
【請求項5】
その含有量が飲料全体に対し0.05〜8質量%である加水分解ペプチドと乳とを原料として含有する飲料の製造においてセリ科野菜、ホウレンソウおよびアスパラガスからなる群から選択される1種または2種以上の野菜汁を飲料全体に対し0.1〜30質量%配合することを含む、前記飲料を飲んだときに感じられるペプチド臭の抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加水分解ペプチドおよび乳を含有する飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
消費者の多様な健康ニーズに応えるべく、健康成分として認知も高く数々の機能性も確認されている各種加水分解ペプチドを含有する飲食品が多数開発されている。また、その嗜好性の高さや健康への配慮、天然イメージの向上などの理由から、乳を含有する飲料も多数存在しており、そのため、加水分解ペプチドを含有し且つ乳も配合した飲料へのニーズがより一層高まっている。
【0003】
その一方で、加水分解ペプチドは、牛、豚、魚等の骨、腱、皮等や大豆から抽出、精製して製造されており、未劣化時の状態からでも感じられる、原料となる動植物由来の独特の臭い(以下、単にペプチド臭ともいう)がある。特に加水分解ペプチド且つ乳を配合した飲料においては、配合した加水分解ペプチドに加えて乳に含まれるペプチドに由来するペプチド臭により、摂取するときの香味が損なわれることがあった。
【0004】
ペプチド臭が感じられるのを抑えるために、加水分解ペプチド含有飲料においては、例えば特許文献1、2記載の方法が提案されている。また、加水分解ペプチドおよび乳を含有する飲料においては、例えば特許文献3記載の方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−67874号公報
【特許文献2】特開2006−197857号公報
【特許文献3】特開2003−102380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
商品設計の自由度の観点から様々な方法によりペプチド臭を抑制できることが好ましく、そのため、さらなる新規な方法が求められている。
本発明は、加水分解ペプチドおよび乳を含有する飲料においてペプチド臭が感じられるのを抑えることができる新規な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、加水分解ペプチドおよび乳を含有する飲料においてペプチド臭が感じられるのを抑える方法について鋭意研究を行った。その結果、該飲料の製造においてセリ科野菜等の野菜汁を配合することによりペプチド臭がマスキングされ、飲んだときにペプチド臭が感じられるのを抑えることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明の要旨は以下のとおりである。
[1] 加水分解ペプチドと乳とを含有する飲料であって、
セリ科野菜、ホウレンソウおよびアスパラガスからなる群から選択される1種または2種以上の野菜汁を含有する飲料。
[2] 飲料全体に対し前記野菜汁を0.1〜30質量%含有する[1]に記載の飲料。
[3] 前記野菜汁として、セロリ、パセリ及びニンジンからなる群から選択される1種または2種以上の野菜汁を含有する[1]または[2]に記載の飲料。
[4] 前記加水分解ペプチドとしてカゼイン加水分解物を含む[1]から[3]のいずれか一つに記載の飲料。
[5] 前記野菜汁として、セロリおよび/またはパセリの野菜汁を含有する[1]から[4]のいずれか一つに記載の飲料。
[6] 前記加水分解ペプチドに対する前記野菜汁の質量比が0.04以上である[1]から[5]のいずれか一つに記載の飲料。
[7] 飲料中に含まれる無脂乳固形分が0.1質量%〜10質量%である[1]から[6]のいずれか一つに記載の飲料。
[8] 加水分解ペプチドと乳とを原料として含有する飲料の製造においてセリ科野菜、ホウレンソウおよびアスパラガスからなる群から選択される1種または2種以上の野菜汁を配合することを含む、前記飲料を飲んだときに感じられるペプチド臭の抑制方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、加水分解ペプチドおよび乳を含有する飲料においてペプチド臭が感じられるのを抑えることができる新規な技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の1つの実施形態について、詳細に説明する。
本実施形態は、加水分解ペプチドと乳とを原料として含有し、飲んだとき(口にしたとき)に感じられるペプチド臭が抑えられている飲料に関し、加水分解ペプチドと乳に加えて、セリ科野菜、ホウレンソウおよびアスパラガスからなる群から選択される1種または2種以上の野菜汁を原料として含有する。
【0011】
本実施形態に係る加水分解ペプチドはいずれの由来、平均分子量のものであってもよく特に限定されないが、動植物性あるいは微生物由来のタンパク質、特に、乳タンパク質由来あるいは大豆タンパク質由来のものを使用することが例示できる。加水分解ペプチドは、例えば、タンパク質を酸、アルカリまたは蛋白質加水分解酵素で加水分解することにより、ペプチドの混合物(ペプチド組成物)として得ることができる。具体的には、カゼイン加水分解物(カゼインペプチド)、コラーゲン加水分解物(コラーゲンペプチド)、大豆タンパク加水分解物(大豆ペプチド)などを挙げることができ、例えばこれらのうち1種または2種以上が飲料中に含まれるようにしてもよい。また、分解によって得られた加水分解ペプチドをさらに、遠心分離、フィルター、酸処理、イオン交換により処理して、不純物、沈殿物を除いて使用してもよい。さらには、殺菌したのち、濃縮及び/または乾燥させて得られた、いわゆるエキスまたは粉末状の加水分解ペプチドも本実施形態の飲料の製造において用いることができる。
【0012】
ここで、本実施形態に係る加水分解ペプチドとして、乳との相性の観点からカゼイン加水分解物を用いることが好ましい。カゼイン加水分解物は、カゼインを酸や酵素等により加水分解することにより得ることができるペプチド組成物を意味し、またカゼインは、牛乳、馬乳、山羊乳、羊乳等の獣乳に由来するカゼインを用いることが例示できる。
【0013】
また、飲料全体に対する加水分解ペプチドの含有割合は特に限定されず、当業者が適宜設定できるが、8質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下、さらにより好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。8質量%より多く含有される場合、範囲内にある場合と比較して、ペプチド臭を感じやすくなる。
一方、加水分解ペプチドの含有割合の下限値についても特に限定されないが、ペプチド臭が感じられる場合が多くなる0.05質量%以上において本実施形態に係るセリ科等野菜汁添加によるペプチド臭抑制が適用されるのが好ましく、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上とすることができる。
加水分解ペプチドの含有量は、ケルダール法で分析することができる。その際、乳または野菜汁由来のタンパク質など、加水分解ペプチドに由来しないタンパク質は、加水分解ペプチドの含有量に含めない。
【0014】
本実施形態において、乳は、動物又は植物由来のいずれの乳であってもよい。例えば、牛乳、山羊乳、羊乳、馬乳等の獣乳、豆乳等の植物乳を用いることができ、牛乳が一般的である。これらの乳は、単独又は2種類以上の混合物として用いることができる。また、これらの乳を、乳酸菌やビフィズス菌等の微生物を用いて発酵させた発酵乳を用いることもできる。
乳の形態は特に限定されず、例えば、全脂乳、脱脂乳、乳清、乳蛋白濃縮物、バターミルク粉、無糖練乳、脱脂加糖練乳、全脂加糖練乳が挙げられ、また、粉乳や濃縮乳から還元した乳も使用できる。
本実施形態の飲料において、乳の含有割合は特に限定されず当業者が適宜設定できるが、本実施形態の飲料あたりの無脂乳固形分量が0.1〜10.0質量%であることが、香味及びタンパクの安定性の観点から好ましい。その下限はより好ましくは0.3質量%、さらにより好ましくは0.5質量%である。またその上限はより好ましくは5.0質量%、さらにより好ましくは3.0質量%、特に好ましくは1.5質量%である。なお、無脂乳固形分量は、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(昭和26年12月27日厚生省令第52号)に記載された方法により測定することができる。
【0015】
本実施形態に係る飲料は、加水分解ペプチド、乳とともにセリ科野菜、ホウレンソウおよびアスパラガスからなる群から選択される1種または2種以上の野菜汁(以下、単にセリ科等野菜汁ともいう)を含有する。セリ科の野菜としては、例えば、セロリ、パセリ、ニンジン、セリ、ミツバ、アシタバ、コリアンダー(パクチー)等を挙げることができる。
該セリ科等野菜汁を含有することで、セリ科等野菜汁未配合の場合と比較して、飲んだときにペプチド臭が感じられるのを抑えることができる。該セリ科等野菜によるペプチド臭の抑制作用は、未保存等の飲料劣化が進行していないときに加えて、ペプチド臭が強まる傾向がある加熱劣化(例えば実施例に示す条件と同等の加熱劣化)の状態にある飲料においても確認できる。
さらに、加水分解ペプチドおよび乳を含有する飲料に該セリ科等野菜汁を配合することで、濃度にもよるが、苦味についても感じられるのを抑えることができる。
【0016】
本明細書において、野菜汁とは、原料となる野菜を潰したり搾ったりなどして得られる液体を意味し、後述のとおり原料に由来する固体を含んでいてもよい。
具体的には、野菜汁として、野菜の搾汁液(ストレート汁)、上記搾汁液を濃縮した濃縮汁、上記濃縮汁をさらに希釈した還元汁等が挙げられる。また、野菜汁は、精密濾過法、酵素処理法、限外濾過法等の手法により清澄処理した透明汁であっても、不溶性固形分を含む野菜汁であってもよい。上記不溶性固形分を含む野菜汁は、一般に、混濁汁、コミニュテッド汁、又はピューレと呼ばれる野菜汁を指す。上記混濁汁は、透明汁を得るために実施されるペクチン分解酵素処理を行うことなく得られた、果実由来のペクチンやパルプ分などがコロイド状をなして混濁している野菜汁を指す。上記コミニュテッド汁は、混濁汁の中でも、粉砕された野菜果皮やオイル分も含む野菜汁である。また、ピューレは、野菜の搾汁液を裏ごししたものを指す。
なお、野菜汁の原料となる野菜の部分については特に限定されないが通常食されている部分が原料に含まれるようにすることを例示することができる。当該部分として、例えばセロリ、パセリ、セリ、ミツバ、アシタバ、コリアンダー、ホウレンソウ、アスパラガスについては地上部を、ニンジンについては地下部を挙げることができる。
【0017】
ここで、本実施形態に係るセリ科等野菜汁として、セロリ、パセリ及びニンジンからなる群から選択される1種または2種以上の野菜汁を含有することが好ましい。セリ科等野菜汁としてセロリ、パセリ及びニンジンからなる群から選択される1種または2種以上の野菜汁を含有することで、よりペプチド臭が抑えられるほか、飲料に光が照射されたときに生じ得る光劣化臭(漬物臭、金属臭、プラスチック臭とも表現される)についてもより抑えることができる。またその中でも未劣化の飲料のペプチド臭のさらなる抑制の観点からセロリ及び/またはパセリの野菜汁を含有することがより好ましく、セロリの野菜汁を含有することがさらにより好ましい。
【0018】
セリ科等野菜汁の含有割合は特に限定されないが、飲料全体に対し0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましい。セリ科等野菜汁の含有割合が0.1質量%以上である場合、範囲外にある場合と比較してよりペプチド臭を抑えることができる。一方、セリ科等野菜汁が飲料中に30質量%より多く含有される場合には、範囲内にある場合と比較して野菜汁由来の臭みが強く感じられるようになり、好ましくない。
【0019】
また、本実施形態の飲料においては、加水分解ペプチドに対する野菜汁の質量比は好ましくは0.04以上、より好ましくは0.25以上であることが、ペプチド臭をより抑制できるため、好ましい。
【0020】
本実施形態の飲料は、加水分解ペプチド、乳、セリ科等野菜汁に加え、本発明の目的を達成できる範囲で他の成分を原料として含有するようにしてもよく、特に限定されない。
他の成分として、具体的には、クエン酸などの酸味料、糖度調整剤、果汁、安定化剤、高甘味度甘味料、香料、色素等、等を挙げることができる。
【0021】
本実施形態の飲料において糖度や酸度は特に限定されず、当業者は適宜設定できる。
また、pHも特に限定されないが、好ましくは2.0〜5.0であり、より好ましくは3.0〜4.6であり、さらに好ましくは、3.2〜4.2である。
本実施形態の飲料においてpHの調整は、例えば、酸味料を使用する方法、発酵乳を使用する方法、野菜汁を使用する方法、またはこれらの方法を併用する方法により行うことができるが、所望のpHとすることができれば特に限定されない。酸味料、発酵乳及び野菜汁としては上述のものが使用できる。
【0022】
本実施形態の飲料は、例えば容器詰飲料とすることができる。容器としては、ガラス製、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスチック製、紙製、アルミ製、スチール製の密封容器が挙げられる。
このうち、セロリ、ニンジン、パセリの少なくともいずれかの野菜汁を含有する場合には上述のとおりペプチド臭に加えて光劣化臭についても感じられるのをより抑えることができる。そのため、透明性の高い容器を用いる場合にこれら1種または2種以上の野菜汁が含有されるように飲料が構成されることが好ましい。
【0023】
本実施形態の飲料の製造方法は特に限定されず、加水分解ペプチド、乳、セリ科等野菜汁を混合するなどすればよい。
具体的には、加水分解ペプチド、乳、セリ科等野菜汁、液体原料、および必要に応じて用いられる他の原料を混合し本実施形態の飲料を製造することができる。液体原料は水のほか、上述の他の成分の溶液や分散液であってもよい。原材料の混合する順序なども特に限定されず、当業者が適宜設定することができる。
【0024】
本実施形態に係る飲料においては、得られた飲料に対して、均質化処理や殺菌処理を行なうようにしてもよい。
均質化処理は、通常、ホモゲナイザーを用いて行うことができる。均質化条件は特に限定されないが、温度5〜25℃で圧力10〜50Mpaの条件が好ましく挙げられる。また、均質化処理は、殺菌処理の前後のいずれか、もしくは両方で行うことができる。
殺菌処理は、例えば、65℃で10分間と同等以上の殺菌価を有する加熱殺菌により行うことができる。殺菌処理の方法は特に制限されず、通常のプレート式殺菌、チューブラー式殺菌、レトルト殺菌、バッチ殺菌、オートクレーブ殺菌等の方法を採用することができる。また、殺菌処理は、均質化処理の前後のいずれか、もしくは両方で行うか、または容器充填前後のいずれか、もしくは両方で行うことができる。
殺菌処理後の本実施形態の飲料を容器詰飲料とする方法としては、例えば、容器に飲料をホットパック充填し、充填した容器を冷却する方法、又は容器充填に適した温度まで飲料を冷却して、予め洗浄殺菌した容器に無菌充填する方法などにより行うことができ、特に限定されない。
【0025】
以上、本実施形態によれば、加水分解ペプチド、乳とともにセリ科等野菜汁を配合することにより、ペプチド臭がマスキングされ、飲んだときに該臭いが感じられるのを抑えることができる。その結果、より商品価値を高めた状態で加水分解ペプチドおよび乳を含有する飲料を提供することができる。
【実施例】
【0026】
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0027】
[飲料の調製1]
以下の表1に示す成分について混合した。得られた混合液を96℃に達するまで加熱した後、PET200mlボトルに充填し、その後冷却して実施例および比較例の容器詰飲料を得た。
なお、使用した野菜汁は、実施例1:セロリ(セリ科)、実施例2:ニンジン(セリ科)、実施例3:パセリ(セリ科)、実施例4:ホウレンソウ(ヒユ科)、実施例5:アスパラガス(キジカクシ科)、比較例1:キャベツ(アブラナ科)である。各飲料に含まれる無脂乳固形分は1.5質量%であり、また、野菜汁/加水分解ペプチドは9.35である。また、各飲料の糖度、酸度、pHを表2に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
[試験例1]
5名の評価パネルにより、各飲料(未保存品、熱劣化品、または光照射品)の飲んだときに感じられるペプチド臭、苦味の強さを評価した。また、光照射品については光劣化臭も評価を行った。
いずれの評価項目についても、対照(野菜汁無添加)と同等の評価を4と、また、全く感じられないものの評価を0とする、0〜8の9段階で評価した。
結果を表3、4、5に示す。
【0031】
【表3】
【0032】
【表4】
【0033】
【表5】
【0034】
表3〜5から理解できるとおり、いずれの実施例においてもペプチド臭が抑えられていることが理解でき、さらに苦味についても抑えられている。熱劣化品においてはペプチド臭、苦味の両方について未保存品より強まる傾向があるが、該熱劣化品でも実施例ではペプチド臭および苦味が抑えられている。
加えて、表5から、実施例1〜3についてはペプチド臭に加えて光劣化臭についてもより抑制されていることが理解できる。
【0035】
[飲料の調製2]
野菜汁を表6に示す含有割合に変更した以外は実施例1または3と同様の方法で飲料を製造した。各飲料の糖度、酸度、pHを表6に示す。
【0036】
【表6】
【0037】
[試験例2]
試験例1と同様の方法で実施例1、1a、1b、3、3a、3bについて評価を行った。結果を表7、8、9に示す。
【0038】
【表7】
【0039】
【表8】
【0040】
【表9】
【0041】
表7〜9から理解できるとおり、いずれの実施例においてもペプチド臭、光劣化臭が抑えられている。また、苦味についても濃度が増すと抑制されていることが理解できる。
【0042】
[飲料の調製3]
表10、11に記載の原料、含有割合で混合した以外は実施例1と同様の方法で飲料を調製した。得られた各飲料の糖度、酸度、pHを表11に示す。
【0043】
【表10】
【0044】
【表11】
【0045】
[試験例3]
試験例1と同様の方法で未保存品である実施例1−1〜4について評価を行った。結果を表12に示す。
【0046】
【表12】
【0047】
[飲料の調製4]
表13、14に記載の原料、含有割合で混合した以外は実施例1と同様の方法で飲料を調製した。得られた各飲料の糖度、酸度、pHを表14に示す。
【0048】
【表13】
【0049】
【表14】
【0050】
[試験例4]
試験例1と同様の方法で未保存品である実施例1−5〜8について評価を行った。結果を表15に示す。
【0051】
【表15】
【0052】
試験例3、4の結果から、加水分解ペプチドに対する野菜汁の質量比が0.25以上となることにより、感じられるペプチド臭が大きく低減されることが理解できる。
【0053】
[飲料の調製5]
表16に記載の原料、含有割合で混合した以外は実施例1と同様の方法で飲料を調製した。各飲料に含まれる無脂乳固形分は1.5質量%であり、また、野菜汁/加水分解ペプチドは9.35である。得られた飲料の糖度、酸度、pHを表17に示す。
【0054】
【表16】
【0055】
【表17】
【0056】
[試験例5]
試験例1と同様の方法で実施例6について評価を行った。結果を表18〜20に示す。
【0057】
【表18】
【0058】
【表19】
【0059】
【表20】
【0060】
[飲料の調製6]
表21に記載の原料、含有割合で混合した以外は実施例1と同様の方法で飲料を調製した。各飲料に含まれる無脂乳固形分は1.5質量%であり、また、野菜汁/加水分解ペプチドは9.35である。得られた飲料の糖度、酸度、pHを表22に示す。
【0061】
【表21】
【0062】
【表22】
【0063】
[試験例7]
試験例1と同様の方法で実施例7について評価を行った。結果を表23〜25に示す。
【0064】
【表23】
【0065】
【表24】
【0066】
【表25】
【0067】
試験例6、7の結果から、加水分解ペプチドとしてコラーゲンペプチド、大豆ペプチドを用いた場合にも、カゼインペプチドを用いた場合と同様に野菜汁添加により感じられるペプチド臭が抑制されていることが理解できる。