(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、橋梁等の構造物には、橋梁の伸縮や変形を吸収するために伸縮装置等が設けられる。伸縮装置の一部として、主に床版と橋台のパラペットとの間、又は一対の床版の間に形成された遊間の上に伸縮部が設けられる。この場合、伸縮部の損傷等に伴い、伸縮部を介して遊間内への浸水が懸念として挙げられていた。この対策として、例えば特許文献1では、伸縮部を土工部まで延長した延長床版を用いた技術が開示されている。また、例えば特許文献2では、外力に対して優れた衝撃性及び耐摩耗性を有するゴム等により形成された緩衝性体摩耗保護材等に関する技術が開示されている。
【0003】
特許文献1では、橋台及び土工部の上に設置された底版と、橋梁の端部から土工部側へ延びて底板の上を摺動する延長床版とのすべり面構造であって、底版及び延長床版の少なくとも一方は、他方と摺動するすべり面として、底版と延長床版との間に配置された、摺動性を有するゴム板を備える技術が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲の請求項1、明細書段落[0008]、
図1等参照)。
【0004】
特許文献2では、砂防ダムや橋脚等のコンクリートによる構造物の表面に弾性材からなる板状の緩衝性耐摩耗保護材を取付具により締めつけて固定し、構造物の表面を砂や水等による浸食から保護するようにした構造物の保護構造において、連続する緩衝性耐摩耗保護材同士の目地と構造物との間に弾性材からなる目地保護材を配置し、緩衝性耐摩耗保護材を構造物に取付具で締めつけることにより、目地保護材を構造物に圧着して固定させる技術が開示されている(特許文献2の特許請求の範囲の請求項1、明細書段落[0006]、
図1等参照)。
【0005】
しかし、特許文献1の開示技術では、延長床版として鉄筋コンクリート構造等が用いられる。この場合、延長床版の一端に車両等の荷重が作用すると、延長床版の他端が浮き上がる恐れがある。この対策として、部材厚を厚く形成するほか、延長区間を土工部まで延長することで、延長床版の浮き上がりを抑制する方法が用いられる。この場合、床版及びパラペットのはつりを実施する範囲が大きくなり、例えば床版及びパラペット内に埋設された鉄筋の一部を除去する必要がある。このため、特許文献1のような延長床版を用いた技術では、遊間内への浸水を抑制できる反面、施工規模が大きくなり、工期が長くなるとともに工事費が増大する。
【0006】
また、特許文献2の開示技術では、コンクリートによる構造物の表面に用いられる構成に過ぎず、遊間のような空間に対して用いる旨の記載がされていない。このため、遊間内への浸水を抑制できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、前記問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、施工規模を小さくするとともに、遊間内への浸水を抑制することができる橋梁伸縮構造及び橋梁伸縮構造の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明に係る橋梁伸縮構造は、橋梁の舗装部の下に埋設される橋梁伸縮構造であって、床版の上から橋台のパラペットの上まで延伸するゴム構造体と、前記ゴム構造体に内蔵された板部材と、を備え、前記板部材は、前記床版と前記パラペットとの間における遊間の上に架設された第1板部材と、前記遊間の延伸する方向と交わる橋軸方向に沿って前記第1板部材と離間して配置された第2板部材と、を有し、前記第2板部材は、前記床
版に接する固定部材によって前記床
版に固定され、
前記ゴム構造体は、土工部側に形成された前記パラペットの端部の上に設けられた伸縮部に隣接することを特徴とする。
【0010】
第2発明に係る橋梁伸縮構造は、第1発明において、前記板部材は、橋軸方向に沿って前記第1板部材及び前記第2板部材と離間して配置された少なくとも1つの第3板部材を有することを特徴とする。
【0012】
第
3発明に係る橋梁伸縮構造は、第
1発明
又は第2発明において、前記伸縮部は、前記パラペットの端部に固設された伸縮用板部に係止され、前記伸縮用板部は、複数の孔を有することを特徴とする。
【0013】
第
4発明に係る橋梁伸縮構造の施工方法は、橋梁の舗装部の下に埋設される橋梁伸縮構造の施工方法であって、板部材を内蔵したゴム構造体を、床版の上、橋台のパラペットの上、及び前記床版と前記パラペットとの間における遊間の上に設置し、前記遊間の上に前記板部材の有する第1板部材を架設する架設工程と、前記板部材の有する第2板部材を、前記遊間の延伸する方向と交わる橋軸方向に沿って前記第1板部材と離間した位置で、固定部材によって前記床
版に固定する固定工程と、前記ゴム構造体の上に舗装部を形成する舗装工程と、を備え、
前記架設工程では、土工部側に形成された前記パラペットの端部の上に設けられた伸縮部に隣接して前記ゴム構造体を設置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1発明〜第
4発明によれば、ゴム構造体は、舗装部の下に埋設される。このため、ゴム構造体の経時劣化や外因による損傷等を抑制することができる。また、ゴム構造体は、床版の上からパラペットの上まで延伸する。このため、遊間を跨いだ状態でゴム構造体が設置され、遊間の開口部を塞ぐことができる。これらにより、舗装部を介して水が浸入してきた場合においても、外因による損傷等を抑制されたゴム構造体により遊間内への浸水を抑制することが可能となる。
【0015】
第1発明〜第
4発明によれば、ゴム構造体には、橋軸方向に離間した第1板部材及び第2板部材が内蔵される。このとき、鉄筋コンクリート等を用いた延長床版に比べて、各板部材の一端に車両等の荷重が作用した際、各板部材の他端が浮き上がる可能性が低い。このため、ゴム構造体及び各板部材の部材厚を薄くできるほか、はつりを実施する範囲を最小限に抑えることができる。これにより、施工規模を小さくすることができ、工期の短縮とともに工事費の削減が可能となる。
【0016】
第1発明〜第
4発明によれば、第1板部材は、遊間の上に架設される。このため、遊間の上に作用する荷重の耐力を向上させることができる。これにより、車両等の通過に伴う舗装部等の変形に伴う劣化を抑制することが可能となる。
【0017】
第1発明〜第
4発明によれば、第2板部材は、固定部材によって床
版に固定される。このため、ゴム構造体の橋軸方向における一部を固定し、端部を滑らせる状態にすることができる。これにより、ゴム構造体が橋梁の伸縮に追従することが可能となる。
【0018】
第1発明〜第
4発明によれば、第2板部材は、橋軸方向に沿って第1板部材と離間して配置される。このため、第1板部材と第2板部材との間には、ゴム構造体のみが形成された緩衝部が配置される。これにより、ゴム構造体が橋梁のたわみに追従することが可能となる。
【0019】
特に、
第1発明〜第3発明によれば、板部材は、橋軸方向に沿って第1板部材及び第2板部材と離間して配置された少なくとも1 つの第3 板部材を有する。このため、各板部材間におけるゴム構造体の緩衝部を増やすことができる。これにより、ゴム構造体が橋梁のたわみに追従し易くすることが可能である。
【0020】
特に、第
1発明〜第
4発明によれば、ゴム構造体は、伸縮部に隣接する。このため、ゴム構造体に橋梁の伸縮に伴って発生する移動を、伸縮部に伝達して吸収させることができる。これにより、他の構成への影響を抑制した状態で、ゴム構造体が橋梁の伸縮に追従することが可能となる。
【0021】
特に、第
3発明によれば、ゴム構造体は、伸縮用板部に係止された伸縮部に隣接する。このため、ゴム構造体の伸縮に伴い発生する力により、伸縮部が土工部側へ移動することを抑制することができる。これにより、他の構成への影響をさらに抑制した状態で、ゴム構造体が橋梁の伸縮に追従することが可能となる。
【0022】
特に、第
3発明によれば、伸縮用板部は、複数の孔を有する。このため、水等が舗装部を浸透してゴム構造体の上面に到達した際、伸縮用板部の孔を介して土工部側へ流路を形成することができる。これにより、遊間内の浸水をさらに抑制することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係る橋梁伸縮構造について、図面を参照しながら説明する。なお、以下では橋梁において車両等が走行する方向を橋軸方向Xとし、橋軸方向Xと交わり遊間8に沿った方向を橋幅方向Yとし、橋軸方向X及び橋幅方向Yと交わる方向を高さ方向Zとする。
【0025】
<橋梁伸縮構造>
先ず、
図1〜
図5を参照して、本発明の実施形態に係る橋梁伸縮構造1について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る橋梁伸縮構造1の一例を示す斜視図であり、
図2は、1橋梁伸縮構造の一例を示す断面図である。
【0026】
橋梁伸縮構造1は、
図1及び
図2に示すように、主に橋梁における床版93の上及び橋台のパラペット94の上に設置され、舗装部9の下に埋設される。橋梁伸縮構造1は、例えば車両等が通過するほか、列車等が通過する橋梁に用いられる。橋梁伸縮構造1は、橋幅方向Yに沿って延在し、床版93とパラペット94との間における遊間8の上に架設される。橋梁伸縮構造1は、床版93に接する固定部材4によって床版93に固定される。固定部材4として、例えばボルト及びナット等の軸部材が用いられるほか、例えば接着剤等が用いられてもよい。
【0027】
図2に示すように、橋梁伸縮構造1と床版93との間には、下地部93fが設けられる。下地部93fとして、例えば床版93の表面の不陸をならす不陸修正材が用いられる。
【0028】
橋梁伸縮構造1とパラペット94との間には、下地部94f及び滑り部94sが設けられる。滑り部94sは、橋梁伸縮構造1と下地部94fとの間に設けられる。下地部94fとして、例えばパラペット94の表面の不陸をならす不陸修正材が用いられる。滑り部94sとして、例えば橋梁伸縮構造1に作用する摩擦を軽減して滑り易くする剥離剤が用いられる。
【0029】
橋梁伸縮構造1と遊間8との間には、クローザー81(止水部材)が設けられる。クローザー81は、遊間8内への浸水を抑制する。
【0030】
橋梁伸縮構造1上に設けられた舗装部9は、表層9aと、レベリング層9bとを有する。レベリング層9bは、表層9aと、橋梁伸縮構造1との間に設けられ、高さ方向Zにおいてリフレクションクラック抑制シート9cに挟まれる。舗装部9は、橋梁伸縮構造1を設置したあとに設けられ、橋軸方向Xにおいて既設舗装91、92に挟まれる。舗装部9と土工部95との間には、砕石埋戻し部7が設けられる。例えば、舗装部9から浸透した水等が、橋梁伸縮構造1の上を経由して砕石埋戻し部7に到達する。砕石埋戻し部7には、例えば有孔管71が設けられる。
【0031】
橋梁伸縮構造1は、橋梁の伸縮や変形を吸収するために設置される。橋梁伸縮構造1は、ゴム構造体2と、ゴム構造体2に内蔵された板部材3とを備える。
【0032】
(ゴム構造体2)
ゴム構造体2は、
図1及び
図2に示すように、床版93の上からパラペット94の上まで延在する。ゴム構造体2は、板部材3を内蔵していない領域に緩衝部21、22を有する。ゴム構造体2は、パラペット94の上に形成された一端2aと、床版93の上に形成された他端2bとを有する。一端2a及び他端2bは、ゴム構造体2における橋軸方向Xの側面と板部材3との間の領域を示す。
【0033】
ゴム構造体2の一端2aは、パラペット94における土工部95側の端部94aの上に設けられた伸縮部5に当接する。ゴム構造体2は、他端2b付近に複数の孔2cを有し、孔2cに配置された固定部材4によって床版93に固定される。このとき、ゴム構造体2の一端2aは、固定されずに伸縮し得る状態のため、橋梁の伸縮に追従することができる。また、ゴム構造体2の一端2aに橋梁の伸縮に伴って発生する移動を、伸縮部5に伝達して吸収させることができる。なお、例えばゴム構造体2は、固定部材4によってパラペット94に固定されてもよい。この場合、ゴム構造体2の他端2bは、固定されずに伸縮し得る状態のため、橋梁の伸縮に追従することができる。また、ゴム構造体2の他端2bに隣接して伸縮部5を設けてもよい。この場合においても、他端2bに橋梁の伸縮に伴って発生する移動を、伸縮部5に伝達して吸収させることができる。なお、ゴム構造体2は、伸縮部5と接するほか、例えばゴム構造体2と伸縮部5との間には、ゴム構造体2の伸縮に追従できる構成が配置されてもよい。
【0034】
ゴム構造体2に用いられる材質の基準として、例えば老化前において、引張強さが160kgf/cm
2(16MPa)以上、伸びが350%以上、硬度が72以下、及び圧縮耐久ひずみが30%以下であり、老化後において、引張強さが老化前の値に対して80%以上、伸びが老化前の値に対して80%以上、及び硬度が老化前の値に対して+8以上且つ76以下であることが要求される。
【0035】
上述した各測定方法として、引張強さ及び伸びではJISK6251に基づいて3号ダンベルを用いた方法が行われ、硬さではJISK6253−3に基づいてデュロメータ硬さ試験(タイプA)による方法が行われ、圧縮永久ひずみではJISK6262に基づいて熱処理温度を69〜71℃及び熱処理時間を22〜24時間の条件による方法が行われる。また、材質の老化方法としてJISK6257に基づいて空気加熱老化試験機を用いて老化温度69〜71℃及び老化時間94〜96時間の条件による方法が行われる。
【0036】
ゴム構造体2として、例えばゴム弾性体が用いられる。ゴム弾性体は、抵抗力、反発力が大きいことから、天然ゴムと合成ゴムを混合して加硫した硬質ゴム等が採用されてもよい。なお、ゴム構造体2として用いられるゴム弾性体としては、衝撃荷重に対する緩衝作用のあるゴム弾性体であればよく、衝撃荷重に対する緩衝作用があれば、弾塑性体や粘弾性体など他の弾性体が用いられてもよい。なお、ここで、ゴム弾性体とは、常温時に小さな応力で破断することなく大きく伸び、しかも外力を除くとほとんど瞬間的に元に戻るというゴム弾性を示す物体を指している。また、硬質ゴムとは、例えばクロロプレンゴム、ニトリルゴム等のように、原料ゴムに多量の硫黄を加えたゴム弾性体を指している。
【0037】
(板部材3)
板部材3は、遊間8の上に架設された第1板部材31と、橋軸方向Xに沿って第1板部材31と離間して配置された第2板部材32とを有する。第1板部材31は、遊間8の上及びクローザー81の上に設けられたゴム構造体2に内蔵される。第2板部材32は、ゴム構造体2の孔2cの下に内蔵され、固定部材4によって床版93に固定される。第1板部材31及び第2板部材32は、ゴム構造体2の緩衝部21を挟んで配置される。なお、例えば第2板部材32は、固定部材4によってパラペット94に固定されてもよい。この場合、ゴム構造体2の孔2cは、一端2a付近に配置される。
【0038】
板部材3は、例えば橋軸方向Xに沿って第1板部材31及び第2板部材32と離間して配置された少なくとも1つの第3板部材33を有してもよい。第3板部材33は、ゴム構造体2の一端2aと第1板部材31との間に配置される。第3板部材33及び第1板部材31は、ゴム構造体2の緩衝部22を挟んで配置される。
【0039】
第3板部材33は、例えばゴム構造体2の一端2aと第1板部材31との間に複数配置されるほか、例えば第1板部材31と第2板部材32との間、及び第2板部材32とゴム構造体2の他端2bとの間の少なくとも何れかにも配置されてもよい。この場合、各板部材31、32、33は、それぞれゴム構造体2の緩衝部21、22を挟んで配置される。
【0040】
各板部材31、32、33として、矩形状の鋼板が用いられるほか、例えば車両の荷重に耐えられる任意の矩形状の材料が用いられてもよい。各板部材31、32、33として、それぞれ同じ材料が用いられるほか、それぞれ異なる材料が用いられてもよい。各板部材31、32、33は、例えば1つの鋼板等を分割して形成されてもよい。
【0041】
(ゴム構造体2及び板部材3の形状)
ここで、
図3を参照して、ゴム構造体2及び板部材3の形状について説明する。
図3(a)は、本発明の実施形態に係るゴム構造体2及び板部材3の一例を示す平面図であり、
図3(b)は、
図3(a)における3B−3B線に沿った断面図であり、
図3(c)は、
図3(a)における3C−3C線に沿った断面図である。
【0042】
図3(a)に示すように、ゴム構造体2における橋軸方向Xの幅W2は、780mm程度である。幅W2は、床版93及びパラペット94の幅に収まる程度であり、少なくとも第1板部材31及び第2板部材32を内蔵できる程度の幅であれば任意である。幅W2が小さいほど、施工時における床版93及びパラペット94のはつりを実施する範囲を小さくすることができる。
【0043】
第1板部材31における橋軸方向Xの幅W31は、140mm程度である。幅W31は、遊間8の幅W1(
図2参照:幅W1は70mm程度)よりも大きい。第2板部材32における橋軸方向Xの幅W32は、175mm程度である。幅W32は、固定部材4を挿通できる程度の幅よりも大きい。第3板部材33における橋軸方向Xの幅W33は、185mm程度である。
【0044】
各板部材31、32、33の幅W31、W32、W33が大きすぎる場合、従来の延長床版のように、車両等の荷重が作用した際に橋軸方向Xの端部が浮き上がる恐れがある。このため、各板部材31、32、33は、車両等の荷重が作用した際に端部が浮き上がらない程度の幅W31、W32、W33を有する。
【0045】
ゴム構造体2の緩衝部21、22の幅W21、W22、並びに一端2aの幅W24及び他端2bの幅W23は、それぞれ30〜130mm程度であり、例えば幅W21及び幅W22は60mm程度、幅W23は30mm程度、幅W24は130mm程度である。各幅W21、W22、W23、W24を足し合わせた値は、幅W2から各幅W31、W32、W33を引いた値である。幅W21、W22は、橋梁のたわみに追従できる程度の幅を有する。幅W23は、橋梁の伸縮に追従できる程度の幅を有する。
【0046】
ゴム構造体2における橋幅方向Yの長さD2は、1000mm程度である。板部材3における橋幅方向Yの長さD3は、900mm程度であり、長さD2よりも短い。
【0047】
ゴム構造体2は、橋幅方向Yの一端に形成された突出部2pと、他端に形成された段差部2sとを有する。突出部2p及び段差部2sにおける橋幅方向Yの長さD2s、D2pは、100mm程度である。突出部2pには板部材3が内蔵されず、板部材3の長さD3は、長さD2から長さD2pを引いた値である。
【0048】
図3(b)に示すように、ゴム構造体2の高さH2は、30mm程度である。高さH2が小さいほど、施工時における床版93及びパラペット94のはつりを実施する範囲を小さくすることができる。
【0049】
板部材3の高さH3は、12mm程度である。高さH3は、例えば高さH2未満であれば、各板部材31、32、33において異なる値を示してもよい。
【0050】
図3(c)に示すように、突出部2pの高さH2p及び段差部2sの高さH2sは、8mm程度である。高さH2pは高さH2sと等しいことが望ましい。
【0051】
(ゴム構造体2及び板部材3の配置)
ここで、
図4を参照して、ゴム構造体2及び板部材3の配置について説明する。
図4(a)は、本発明の実施形態に係るゴム構造体2及び板部材3の配置例を示す平面図であり、(b)は、(a)における4B−4B線に沿った断面図である。
【0052】
図4に示すように、ゴム構造体2及び板部材3は、橋幅方向Yに沿って複数配置される。複数のゴム構造体2は、突出部2pと段差部2sとを接合して配置される。突出部2p及び段差部2sは、例えばゴム用接着剤を介して接合される。このため、複数の板部材3は、殆ど隙間を空けずに橋幅方向Yに配置される。
図4では、
図3に示したゴム構造体2及び板部材3を3つ配置した状態を示すが、橋梁の幅に応じてゴム構造体2及び板部材3を配置する数を任意に設定することができる。
【0053】
例えば、突出部2pと段差部2sとの接合部分を挿通するように固定部材4が設けられてもよい。この場合、固定部材4により突出部2p及び段差部2sを圧縮固定することができ、突出部2p及び段差部2sの位置ずれ等を抑制することが可能となる。
【0054】
(伸縮部5)
ここで、
図5を参照して、橋梁伸縮構造1に用いられる伸縮部5について説明する。
図5(a)は、本発明の実施形態に係る橋梁伸縮構造1に用いられる伸縮部5の一例を示す断面図であり、
図5(b)は、伸縮部5の一例を示す側面図である。
【0055】
伸縮部5として、例えば
図5に示すように、橋幅方向Yに延在する直方体の構造物が用いられるほか、角柱又は円柱の構造物が用いられてもよい。伸縮部5は、ゴム構造体2から作用される力に応じて変形し、力の作用が弱まるにつれて元の形状に戻る。伸縮部5として、例えば発砲ウレタンや発泡スチレン等が用いられる。
【0056】
伸縮部5における橋軸方向Xの幅W5は40mm程度であり、高さ方向Zの高さH5は35mm程度である。幅W5は、ゴム構造体2から作用される力を吸収できる程度であれば、任意である。伸縮部5における橋幅方向Yの長さD5は、1000mm程度であり、複数のゴム構造体2の配置される長さに応じて設定される。
【0057】
(伸縮用板部6)
ここで、
図6を参照して、橋梁伸縮構造1に用いられる伸縮用板部6について説明する。
図6(a)は、本発明の実施形態に係る橋梁伸縮構造1に用いられる伸縮用板部6の一例を示す断面図であり、(b)は、伸縮用板部6の一例を示す側面図である。
【0058】
伸縮用板部6として、例えば
図6に示すように、橋幅方向Yに延在する山形鋼等が用いられるほか、例えば端部を接合させた2つの平鋼が用いられてもよい。伸縮用板部6は、橋軸方向Xに交わる面に、複数の孔62を有する。
【0059】
伸縮用板部6の孔62が形成された面は、
図1に示すように、固定部材61によってパラペット94の端部94aに固設される。伸縮用板部6を固設する固定部材61として、例えば伸縮用板部6に溶接されたナットと、ナットに螺合されるボルト等の軸部材が用いられる。なお、伸縮用板部6は、床版93の端部に固設されてもよい。
【0060】
伸縮用板部6は、伸縮部5を係止する。このため、伸縮用板部6は、ゴム構造体2の伸縮に伴い発生する力により、伸縮部5が土工部95側へ移動することを抑制することができる。また、水等が舗装部9を浸透してゴム構造体2上に到達した際、伸縮用板部6の孔62を介して土工部95側へ流路を形成することができる。
【0061】
伸縮用板部6は、例えばゴム構造体2の上面と接する。このため、ゴム構造体2における高さ方向Zの浮き上がりを抑制することができる。
【0062】
図6に示すように、伸縮用板部6における橋軸方向Xの幅W6は90mm程度であり、高さ方向Zの高さH6は75mm程度である。伸縮用板部6における橋幅方向Yの長さD6は、1000mm程度であり、複数のゴム構造体2の配置される長さに応じて複数設置することができる。伸縮用板部6の孔62の直径は、30mm程度である。
【0063】
本発明の実施形態に係る橋梁伸縮構造1によれば、ゴム構造体2は、舗装部9の下に埋設される。このため、ゴム構造体2の経時劣化や外因による損傷等を抑制することができる。また、ゴム構造体2は、床版93の上からパラペット94の上まで延伸する。このため、遊間8を跨いだ状態でゴム構造体2が設置され、遊間8の開口部を塞ぐことができる。これらにより、舗装部9を介して水が浸入してきた場合においても、外因による損傷等を抑制されたゴム構造体2により遊間8内への浸水を抑制することが可能となる。
【0064】
また、本発明の実施形態に係る橋梁伸縮構造1によれば、ゴム構造体2には、橋軸方向Xに離間した第1板部材31及び第2板部材32が内蔵される。このとき、鉄筋コンクリート等を用いた延長床版に比べて、各板部材31、32の一端に車両等の荷重が作用した際、各板部材31、32の他端が浮き上がる可能性が低い。このため、ゴム構造体2及び各板部材31、32の部材厚を薄くできるほか、はつりを実施する範囲を最小限に抑えることができる。これにより、施工規模を小さくすることができ、工期の短縮とともに工事費の削減が可能となる。
【0065】
また、本発明の実施形態に係る橋梁伸縮構造1によれば、第1板部材31は、遊間8の上に架設される。このため、遊間8の上に作用する荷重の耐力を向上させることができる。これにより、車両等の通過に伴う舗装部9等の変形に伴う劣化を抑制することが可能となる。
【0066】
また、本発明の実施形態に係る橋梁伸縮構造1によれば、第2板部材32は、固定部材4によって床版93又はパラペット94に固定される。このため、ゴム構造体2の橋軸方向Xにおける一部を固定し、一端2a又は他端2bを滑らせる状態にすることができる。これにより、ゴム構造体2が橋梁の伸縮に追従することが可能となる。
【0067】
また、本発明の実施形態に係る橋梁伸縮構造1によれば、第2板部材32は、橋軸方向Xに沿って第1板部材31と離間して配置される。このため、第1板部材31と第2板部材32との間には、ゴム構造体2のみが形成された緩衝部21が配置される。これにより、ゴム構造体2が橋梁のたわみに追従することが可能となる。
【0068】
また、本発明の実施形態に係る橋梁伸縮構造1によれば、板部材3は、橋軸方向Xに沿って第1板部材31及び第2板部材32と離間して配置された少なくとも1つの第3板部材33を有する。このため、各板部材31、32、33間におけるゴム構造体2の緩衝部21、22を増やすことができる。これにより、ゴム構造体2が橋梁のたわみに追従し易くすることが可能である。
【0069】
また、本発明の実施形態に係る橋梁伸縮構造1によれば、ゴム構造体2は、伸縮部5に隣接する。このため、ゴム構造体2に橋梁の伸縮に伴って発生する移動を、伸縮部5に伝達して吸収させることができる。これにより、他の構成への影響を抑制した状態で、ゴム構造体2が橋梁の伸縮に追従することが可能となる。
【0070】
また、本発明の実施形態に係る橋梁伸縮構造1によれば、ゴム構造体2は、伸縮用板部6に係止された伸縮部5に隣接する。このため、ゴム構造体2の伸縮に伴い発生する力により、伸縮部5が土工部95側へ移動することを抑制することができる。これにより、他の構成への影響をさらに抑制した状態で、ゴム構造体2が橋梁の伸縮に追従することが可能となる。
【0071】
また、本発明の実施形態に係る橋梁伸縮構造1によれば、伸縮用板部6は、複数の孔62を有する。このため、水等が舗装部9を浸透してゴム構造体2の上面に到達した際、伸縮用板部6の孔62を介して土工部95側へ流路を形成することができる。これにより、遊間8内の浸水をさらに抑制することが可能となる。
【0072】
<橋梁伸縮構造の施工方法>
次に、本発明の実施形態に係る橋梁伸縮構造1の施工方法について、
図7〜
図9を参照しながら説明する。
図7は、本発明の実施形態に係る橋梁伸縮構造1の施工方向における架設工程を実施する前の状態を示す斜視図である。
図8は、本発明の実施形態に係る橋梁伸縮構造1の施工方向における架設工程を示す斜視図である。
図9は、本発明の実施形態に係る橋梁伸縮構造1の施工方向における固定工程を示す斜視図である。
【0073】
(架設工程)
先ず、
図7に示すように、遊間8の周辺に施工された舗装部の一部をはつり、床版93の上面及びパラペット94の上面を露出させる。遊間8内には、クローザー81等を設置する。床版93の上面及びパラペット94の上面には、例えば
図2に示した下地部93f、94f、及び滑り部94s等を形成する。その後、パラペット94に接する土工部95をはつり、砕石埋戻し部7を形成する。砕石埋戻し部7には、必要に応じて有孔管71を設置してもよい。
【0074】
次に、
図8に示すように、床版93の上、遊間8の上、及びパラペット94の上に、板部材3を内蔵したゴム構造体2を設置し、遊間8の上に第1板部材31を架設する。その後、パラペット94の端部94aに伸縮部5及び伸縮用板部6を設置する。伸縮部5は、伸縮用板部6に係止される。伸縮用板部6は、固定部材61によってパラペット94の端部94aに固設される。
【0075】
このとき、例えばゴム構造体2の一端2aは、伸縮部5と接する。また、ゴム構造体2の一端2aの上面は、例えば伸縮用板部6と接する。なお、ゴム構造体2及び板部材3を設置する前に、伸縮部5及び伸縮用板部6を設置してもよい。
【0076】
(固定工程)
次に、
図9に示すように、第2板部材32を、橋軸方向Xに沿って第1板部材31と離間した位置で、固定部材4によって床版93に固定する。なお、例えば第2板部材32を固定部材4によってパラペット94に固定してもよい。
【0077】
(舗装工程)
その後、
図1及び
図2に示したように、ゴム構造体2の上に舗装部9を形成する。舗装部9は、必要に応じて表層9a、レベリング層9b、及びリフレクションクラック抑制シート9cを含んでもよい。
【0078】
上述した工程を実施することにより、橋梁伸縮構造1の施工方法が完了する。なお、架設工程における舗装部の一部をはつるとき、床版93の一部及びパラペット94の一部の少なくとも何れかをはつりを実施してもよい。また、ゴム構造体2等を設置する前に舗装部を形成しない場合においては、上述したはつりを実施しなくてもよい。
【0079】
本発明の実施形態に係る橋梁伸縮構造1の施工方法によれば、ゴム構造体2を、舗装部9の下に埋設する。このため、ゴム構造体2の経時劣化や外因による損傷等を抑制することができる。また、床版93の上、パラペット94の上、及び遊間8の上にゴム構造体2を設置する。すなわち、遊間8を跨いだ状態でゴム構造体2を設置する。これらにより、舗装部9を介して水が浸入してきた場合においても、外因による損傷等を抑制されたゴム構造体2により遊間8内への浸水を抑制することが可能となる。
【0080】
また、本発明の実施形態に係る橋梁伸縮構造1の施工方法によれば、ゴム構造体2には、橋軸方向Xに離間した第1板部材31及び第2板部材32が内蔵される。このとき、鉄筋コンクリート等を用いた延長床版に比べて、各板部材31、32の一端に車両等の荷重が作用した際、各板部材31、32の他端が浮き上がる可能性が低い。このため、ゴム構造体2及び各板部材31、32の部材厚を薄くできるほか、はつりを実施する範囲を最小限に抑えることができる。特に、床版93及びパラペット94をはつる必要が無い程度に、ゴム構造体2及び各板部材31、32の部材厚を薄くすることができる。これにより、施工規模を小さくすることができ、工期の短縮とともに工事費の削減が可能となる。
【0081】
また、本発明の実施形態に係る橋梁伸縮構造1の施工方法によれば、第1板部材31を、遊間8の上に架設する。このため、遊間8の上に作用する荷重の耐力を向上させることができる。これにより、車両等の通過に伴う舗装部9等の変形に伴う劣化を抑制することが可能となる。
【0082】
また、本発明の実施形態に係る橋梁伸縮構造1の施工方法によれば、第2板部材32を、固定部材4によって床版93又はパラペット94に固定する。このため、ゴム構造体2の橋軸方向Xにおける一部を固定し、一端2a又は他端2bを滑らせる状態にすることができる。これにより、ゴム構造体2が橋梁の伸縮に追従することが可能となる。
【0083】
また、本発明の実施形態に係る橋梁伸縮構造1の施工方法によれば、第2板部材32を、橋軸方向Xに沿って第1板部材31と離間して配置する。このため、第1板部材31と第2板部材32との間には、ゴム構造体2のみが形成された緩衝部21が配置される。これにより、ゴム構造体2が橋梁のたわみに追従することが可能となる。
【0084】
以上、本発明の実施形態に係る梁伸縮構造及び橋梁伸縮構造の施工方法について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されないものである。