(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリカルボン酸が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、および、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体からなる群から選択される一種または二種以上の重合体を含む、請求項1に記載のガスバリア性積層体。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。なお、文中の数字の間にある「〜」は、断りがなければ、以上から以下を表す。
【0014】
(ガスバリア性積層体)
図1および
図2は、本実施形態におけるガスバリア性積層体100の構成を模式的に示す断面図である。
図1および
図2において、ガスバリア性積層体100は、基材層101と、基材層101の少なくとも一方の面に設けられ、かつ、ポリカルボン酸およびポリアミン化合物を含む混合物(以下、上記混合物を「ガスバリア用塗材」とも呼ぶ。)を加熱硬化してなるガスバリア性重合体層103と、を含む。
また、
図2に示すように、ガスバリア性積層体100において、無機物層102が基材層101とガスバリア性重合体層103との間にさらに積層されていてもよい。これにより、酸素バリア性をさらに向上させることができる。
ここで、ポリカルボン酸およびポリアミン化合物を含む混合物を加熱硬化してなる層とは、ポリカルボン酸およびポリアミン化合物を含む混合物のアミド架橋体により構成された層を意味する。
以下、ガスバリア性積層体100を構成する各層について説明する。
【0015】
(ガスバリア性重合体層)
ガスバリア性重合体層103は、ポリカルボン酸およびポリアミン化合物を含む混合物を加熱硬化してなるものである。そして、ガスバリア性重合体層103において、ポリカルボン酸の重量平均分子量が、1.6×10
5以上2.0×10
6以下であり、ポリアミン化合物の重量平均分子量が、3.0×10
3以上6.0×10
4以下であり、((混合物中のポリカルボン酸に含まれる−COO−基のモル数)/(混合物中の前記ポリアミン化合物に含まれるアミノ基のモル数))が、100/62以上である。
【0016】
ポリカルボン酸およびポリアミン化合物を含む混合物により形成されたガスバリア性重合体層103には、イオン架橋とアミド架橋という2種類の架橋構造が存在し、これらの架橋構造の存在比率がガスバリア性能を向上させる観点において重要である。ここで、上記イオン架橋とは、ポリカルボン酸に含まれるカルボキシル基とポリアミン化合物に含まれるアミノ基とが酸塩基反応を起こすことによって生成するものであり、上記アミド架橋とは、ポリカルボン酸に含まれるカルボキシル基とポリアミン化合物に含まれるアミノ基とが脱水縮合反応を起こすことによって生成するものである。
そして、ガスバリア性重合体層103の生産性およびガスバリア性能に優れるガスバリア性積層体100を得るべく本発明者らが検討したところ、かかるガスバリア性積層体100を得るための設計指針として、ポリカルボン酸およびポリアミン化合物の重量平均分子量、ならびに、混合物中のポリアミン化合物に含まれるアミノ基のモル数に対する混合物中のポリカルボン酸に含まれる−COO−基のモル数という尺度を適用できることが見出された。
ガスバリア性重合体層103において、ポリカルボン酸およびポリアミン化合物の重量平均分子量、ならびに、混合物中のポリアミン化合物に含まれるアミノ基のモル数に対する混合物中のポリカルボン酸に含まれる−COO−基のモル数がそれぞれ特定の範囲にある構成とすることにより、ガスバリア性重合体層103を生産性、特に熱処理時間短縮化の点で生産性に優れるとともにガスバリア性能に優れたものとすることができる。たとえば、混合物の加熱硬化によりガスバリア性重合体層103を形成する際に、伝導伝熱方式、輻射伝熱方式等の複雑な加熱方式によらない場合、たとえば対流電熱方式を用いる場合であっても、短い加熱時間でガスバリア性に優れたガスバリア性重合体層103を得ることができる。
【0017】
このようなガスバリア性重合体層103が生産性、特に熱処理時間短縮化の点で生産性に優れるとともにガスバリア性能に優れる理由は必ずしも明らかではないが、ガスバリア性重合体層103がポリアミン化合物とポリカルボン酸との間の架橋結合に加え、高分子量即ち長い分子鎖を有するポリカルボン酸によって形成されるため膜構造が安定化することとなり結果的にガスバリア性が向上するためであると推察される。
【0018】
ガスバリア性重合体層103の厚さは、ガスバリア性を向上する観点から、好ましくは0.01μm以上であり、より好ましくは0.05μm以上であり、さらに好ましくは0.1μm以上である。
また、基材層101との安定的な接着を得る観点から、ガスバリア性重合体層103の厚さは、好ましくは0.45μm以下であり、より好ましくは0.4μm以下である。
【0019】
次に、ガスバリア性重合体層103の製造方法の一例について説明する。
本実施形態において、ガスバリア性重合体層103の製造方法は、たとえば以下の工程を含む。
(工程1)ポリカルボン酸およびポリアミン化合物を含む混合物を基材層101に塗工し、塗工層を得る工程。
(工程2)対流電熱方式により塗工層を加熱し、ポリカルボン酸に含まれるカルボキシル基とポリアミン化合物に含まれるアミノ基とを脱水縮合反応させることにより、アミド結合を有するガスバリア性重合体層103を形成する工程。
以下、工程1および工程2についてさらに具体的に説明する。
【0020】
(工程1)
工程1は、ポリカルボン酸およびポリアミン化合物を含む混合物を基材層101に塗工し、塗工層を得る工程である。
まず、上記混合物すなわちガスバリア用塗材を構成するポリカルボン酸およびポリアミンについて説明する。
【0021】
(ポリカルボン酸)
本実施形態において、ポリカルボン酸は、分子内に2個以上のカルボキシ基を有するものである。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、桂皮酸、3−ヘキセン酸、3−ヘキセン二酸等のα,β−不飽和カルボン酸の単独重合体またはこれらの共重合体が挙げられる。また、上記α,β−不飽和カルボン酸と、エチルエステル等のエステル類、エチレン等のオレフィン類等との共重合体であってもよい。
これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、桂皮酸の単独重合体またはこれらの共重合体が好ましく、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体から選択される一種または二種以上の重合体であることがより好ましく、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸から選択される少なくとも一種の重合体であることがさらに好ましく、アクリル酸の単独重合体、メタクリル酸の単独重合体から選択される少なくとも一種の重合体であることがよりいっそう好ましい。
ここで、本実施形態において、ポリアクリル酸とは、アクリル酸の単独重合体、アクリル酸と他のモノマーとの共重合体の両方を含む。アクリル酸と他のモノマーとの共重合体の場合、ポリアクリル酸は、重合体100質量%中に、アクリル酸由来の構成単位を、通常は90質量%以上、好ましくは95質量%以上、より好ましくは99質量%以上含む。
また、本実施形態において、ポリメタクリル酸とは、メタクリル酸の単独重合体、メタクリル酸と他のモノマーとの共重合体の両方を含む。メタクリル酸と他のモノマーとの共重合体の場合、ポリメタクリル酸は、重合体100質量%中に、メタクリル酸由来の構成単位を、通常は90質量%以上、好ましくは95質量%以上、より好ましくは99質量%以上含む。
【0022】
本実施形態において、ポリカルボン酸は、カルボン酸モノマーが重合した重合体である。ポリカルボン酸の分子量は、ガスバリア性重合体層103の生産性およびガスバリア性のバランスを向上させる観点から、1.6×10
5以上であり、好ましくは1.8×10
5以上、より好ましくは3.0×10
5以上であり、さらに好ましくは5.0×10
5以上であり、殊更好ましくは7.0×10
5以上である。
また、ガスバリア用塗材中の成分の均一性を高める観点から、ポリカルボン酸の分子量は、2.0×10
6以下であり、好ましくは1.2×10
6以下、より好ましくは9.0×10
5以下である。
ここで、本実施形態において、ポリカルボン酸の分子量はポリエチレンオキサイド換算の重量平均分子量であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
【0023】
(ポリアミン化合物)
本実施形態において、ポリアミン化合物は、主鎖あるいは側鎖あるいは末端にアミノ基を2つ以上有するポリマーである。ポリアミン化合物として、具体的には、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ(トリメチレンイミン)等の脂肪族系ポリアミン類;ポリリジン、ポリアルギニンのように側鎖にアミノ基を有するポリアミド類;等が挙げられる。また、ポリアミン化合物は、アミノ基の一部を変性したポリアミンでもよい。良好なガスバリア性を得る観点から、ポリアミン化合物は、好ましくはポリエチレンイミンである。
【0024】
ポリアミン化合物の重量平均分子量は、ガスバリア性重合体層103のガスバリア性を向上させる観点、および、生産性を向上する、具体的には熱処理による硬化時間を短縮させる観点から、3.0×10
3以上であり、好ましくは5.0×10
3以上、さらに好ましくは8.0×10
3以上である。
また、ガスバリア性重合体層103の生産性を向上させる観点から、ポリアミン化合物の重量平均分子量は、6.0×10
4以下であり、好ましくは5.0×10
4以下であり、より好ましくは4.0×10
4以下、さらに好ましくは3.0×10
4以下であり、殊更好ましくは1.5×10
4以下である。
ここで、本実施形態において、ポリアミン化合物の分子量は沸点上昇法や粘度法を用いて測定することができる。
【0025】
(ポリカルボン酸およびポリアミン化合物の配合比率)
本実施形態において、((ガスバリア用塗材中のポリカルボン酸に含まれる−COO−基のモル数)/(ガスバリア用塗材中のポリアミン化合物に含まれるアミノ基のモル数))は、ガスバリア性重合体層103のガスバリア性および生産性を向上させる観点から、好ましくは100/40以下であり、より好ましくは100/42以下、さらに好ましくは100/45以下、よりいっそう好ましくは100/50以下である。
また、同様の観点から、((ガスバリア用塗材中のポリカルボン酸に含まれる−COO−基のモル数)/(ガスバリア用塗材中のポリアミン化合物に含まれるアミノ基のモル数))は、100/62以上であり、好ましくは100/60以上、より好ましくは100/58以上である。
【0026】
次に、工程1におけるガスバリア用塗材の調製方法について説明する。ガスバリア用塗材は、たとえば以下のようにして得ることができる。
まず、ポリカルボン酸に、塩基を加えることによりポリカルボン酸のカルボキシ基を完全にまたは部分的に中和する。次いで、カルボキシ基を完全にまたは部分的に中和したポリカルボン酸にポリアミン化合物を添加する。このような手順でポリカルボン酸およびポリアミン化合物を混合することにより、ポリカルボン酸およびポリアミン化合物の凝集物の生成を抑制でき、均一なガスバリア用塗材を得ることができる。これにより、ポリカルボン酸に含まれる−COO−基とポリアミン化合物に含まれるアミノ基との脱水縮合反応をより効果的に進めることが可能となる。
【0027】
ここで、塩基によってポリカルボン酸を中和することにより、ポリアミン化合物とポリカルボン酸とを混合する際に、ゲル化が起こることを抑制することができる。したがって、ポリカルボン酸において、ゲル化防止の観点から塩基によってカルボキシ基の部分中和物または完全中和物とすることが好ましい。中和物は、ポリカルボン酸のカルボキシ基を塩基で部分的にまたは完全に中和することにより、すなわち、ポリカルボン酸のカルボキシ基を部分的または完全にカルボン酸塩とすることにより得ることができる。これにより、ポリアミン化合物を添加する際、ゲル化を防止できる。
部分中和物は、ポリカルボン酸の水溶液に塩基を添加することにより調製するが、ポリカルボン酸と塩基の量比を調節することにより、所望の中和度とすることができる。本実施形態においてはポリカルボン酸の塩基による中和度は、ポリアミン化合物のアミノ基との中和反応に起因するゲル化を十分に抑制する観点から、好ましくは30〜100当量%であり、より好ましくは40〜100当量%、さらに好ましくは50〜100当量%である。
【0028】
塩基としては、任意の水溶性塩基を用いることができる。水溶性塩基として、揮発性塩基と不揮発性塩基のいずれかまたは双方を使用することができるが、残存した遊離塩基によるガスバリア性低下を抑制する観点から乾燥・硬化の際に除去が容易な揮発性塩基であることが好ましい。
揮発性塩基としては、たとえば、アンモニア、モルホリン、アルキルアミン、2−ジメチルアミノエタノール、N−メチルモノホリン、エチレンジアミン、トリエチルアミン等の三級アミンまたはこれらの水溶液、あるいはこれらの混合物が挙げられる。良好なガスバリア性を得る観点から、アンモニア水溶液が好ましい。
不揮発性塩基としては、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムまたはこれらの水溶液、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0029】
また、ガスバリア用塗材の固形分濃度は、塗工性を向上させる観点から、0.5〜15質量%に設定することが好ましく、1〜10質量%に設定することがさらに好ましい。
【0030】
また、ガスバリア用塗材には、塗布の際にはじきが発生するのを防止する観点から、界面活性剤をさらに添加することが好ましい。界面活性剤の添加量は、ガスバリア用塗材の固形分全体を100質量%としたとき、0.01〜3質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。
【0031】
本実施形態において、界面活性剤としては、たとえば、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられ、良好な塗工性を得る観点から、非イオン性界面活性剤が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類がより好ましい。
【0032】
非イオン性界面活性剤としては、たとえば、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、シリコーン系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、含フッ素界面活性剤等が挙げられる。
【0033】
ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル類としては、たとえば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル等を挙げることができる。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類としては、たとえば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類を挙げることができる。
ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル類としては、たとえば、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル等を挙げることができる。
ソルビタン脂肪酸エステル類としては、たとえば、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等を挙げることができる。
シリコーン系界面活性剤としては、たとえば、ジメチルポリシロキサン等を挙げることができる。
アセチレンアルコール系界面活性剤としては、たとえば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール等を挙げることができる。
含フッ素系界面活性剤としては、たとえば、フッ素アルキルエステル等を挙げることができる。
【0034】
また、ガスバリア用塗材は、本発明の目的を損なわない範囲で、他の添加剤を含んでもよい。たとえば、滑剤、スリップ剤、アンチ・ブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機また有機の充填剤、多価金属化合物等の各種添加剤を添加してよい。
【0035】
次いで、ガスバリア用塗材を基材層101に塗工し、塗工層を得る。
ガスバリア用塗材を基材層101に塗布する方法は、限定されず、通常の方法を用いることができる。たとえば、メイヤーバーコーター、エアーナイフコーター、ダイレクトグラビアコーター、グラビアオフセット、アークグラビアコーター、グラビアリバースおよびジェットノズル方式等のグラビアコーター、トップフィードリバースコーター、ボトムフィードリバースコーターおよびノズルフィードリバースコーター等のリバースロールコーター、5本ロールコーター、リップコーター、バーコーター、バーリバースコーター、ダイコーター、アプリケーター等種々公知の塗工機を用いて塗工する方法が挙げられる。
【0036】
塗工層の厚み(ウエット厚み)は、得られるガスバリア性積層体100のバリア性能をより良好なものとする観点から、好ましくは0.05μmであり、より好ましくは1μm以上である。
また、得られるガスバリア性積層体100がカールすることを抑制する観点、および、ポリカルボン酸に含まれる−COO−基とポリアミン化合物に含まれるアミノ基との脱水縮合反応をより効果的に進める観点から、ウエット厚みは、好ましくは300μm以下であり、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは100μm以下、よりいっそう好ましくは30μmである。
【0037】
(工程2)
工程2は、対流電熱方式により塗工層を加熱し、ポリカルボン酸に含まれるカルボキシル基とポリアミン化合物に含まれるアミノ基とを脱水縮合反応させることにより、アミド結合を有するガスバリア性重合体層103を形成する工程である。
【0038】
工程2においては、塗工層を加熱する手段として、対流伝熱方式による加熱手段を採用する。ここで、対流伝熱方式による加熱とは、加熱空気を熱風として用い、これを材料に直接接触させておこなう加熱方法であり、材料と熱風の相対速度、および材料と熱風の温度差に起因する伝熱量によって制御するものである。
対流伝熱方式による加熱をおこなう装置としては、たとえば、熱風乾燥器、熱風オーブン、ドライヤー等が挙げられる。
本実施形態において、ガスバリア性重合体層103は、ポリカルボン酸およびポリアミン化合物の重量平均分子量、ならびに、混合物中のポリアミン化合物に含まれるアミノ基のモル数に対する混合物中のポリカルボン酸に含まれる−COO−基のモル数について、前述した条件を満たす。このようなガスバリア性重合体層103は、高温体との接触による伝導伝熱方式や高温体からの熱輻射による輻射伝熱方式に比べて装置構成が簡素な対流伝熱方式による加熱乾燥によっても、短い加熱、乾燥時間で安定的に形成するこができる。そして、得られるガスバリア性重合体層103は、優れたガスバリア性を有する。
【0039】
熱風オーブンや熱風乾燥器を用いて、ガスバリア用塗材を乾燥させる場合、好ましくは160〜250℃の加熱温度で1秒間〜5分間処理し、より好ましくは180〜240℃の加熱温度で5秒間〜3分間処理し、さらに好ましくは185℃〜220℃の加熱温度で15秒間〜3分間加熱処理をおこない、さらにより好ましくは185℃〜220℃の加熱温度で20秒間〜70秒間加熱処理をおこなう。
なお、ポリカルボン酸に含まれる−COO−基とポリアミン化合物に含まれるアミノ基との脱水縮合反応を効果的に進める観点から、加熱処理温度および加熱処理時間はガスバリア用塗材のウエット厚みに応じて調整することが重要である。
【0040】
工程2において、塗工層の上記加熱の前に、上記塗工層の乾燥をおこなってもよい。なお、上記乾燥と加熱処理を同時におこなってもよい。
工程2において、塗工層の加熱処理の前に乾燥をおこなう場合、乾燥温度:60〜150℃、乾燥時間:1秒〜60秒の条件で乾燥をおこなうことが好ましい。
【0041】
以上の手順によりガスバリア性重合体層103が得られる。また、ガスバリア性重合体層103は、上記のガスバリア用塗材により形成されたものであり、ガスバリア用塗材を、基材層101や、後述する無機物層102に塗布した後、乾燥、熱処理をおこない、ガスバリア用塗材を硬化させることによって得られるものである。
【0042】
本実施形態において、ガスバリア性重合体層103の厚み1μmにおける20℃、90%RHでの酸素透過度は、良好なガスバリア性を得る観点から、好ましくは40mL/(m
2・day・MPa)以下であり、より好ましくは30mL/(m
2・day・MPa)以下、さらに好ましくは20mL/(m
2・day・MPa)以下である。
なお、酸素透過度は、JIS K 7126に準じ、温度20℃、湿度90%RHの条件で測定する。
【0043】
(無機物層)
本実施形態においては、
図2を参照して前述したように、ガスバリア性積層体100の基材層101とガスバリア性重合体層103との間に無機物層102をさらに設けてもよい。これにより、優れたガスバリア性能に加え、無機物層102とアミド架橋を有するガスバリア性重合体層103との層間の接着性にも優れるガスバリア性積層体100が得られる。すなわち、本実施形態のガスバリア性積層体100は、ガスバリア性向上のため酸化アルミニウム層等の無機物層102を設けた場合であってもガスバリア性積層体100への外的な変形に対してガスバリア性重合体層103は安定した接着状態を保つことができる。
【0044】
無機物層102を構成する無機物は、たとえば、バリア性を有する薄膜を形成できる金属、金属酸化物、金属窒化物、金属弗化物、金属酸窒化物等が挙げられる。
無機物層102を構成する無機物としては、たとえば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の周期表2A族元素;チタン、ジルコニウム、ルテニウム、ハフニウム、タンタル等の周期表遷移元素;亜鉛等の周期表2B族元素;アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム等の周期表3A族元素;ケイ素、ゲルマニウム、錫等の周期表4A族元素;セレン、テルル等の周期表6A族元素等の単体、酸化物、窒化物、弗化物、または酸窒化物等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
なお、本実施形態では、周期表の族名は旧CAS式で示している。
【0045】
さらに、上記無機物の中でも、バリア性、コスト等のバランスに優れていることから、酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよびアルミニウムからなる群から選択される一種または二種以上の無機物が好ましい。
なお、酸化ケイ素には、二酸化ケイ素の他、一酸化ケイ素、亜酸化ケイ素が含有されていてもよい。
【0046】
無機物層102は上記無機物により構成されている。無機物層102は単層の無機物層から構成されていてもよいし、複数の無機物層から構成されていてもよい。また、無機物層102が複数の無機物層から構成されている場合には同一種類の無機物層から構成されていてもよいし、異なった種類の無機物層から構成されていてもよい。
【0047】
また、無機物層102が酸化アルミニウムにより構成された酸化アルミニウム層である場合は、酸化アルミニウム層の安定的な接着の観点から、酸化アルミニウム層を蛍光X線分析することにより得られる、アルミニウムのKα線強度をP(kcps)とし、アルミニウムからなり、かつ、酸素を導入しない以外は上記酸化アルミニウム層と同じ製造条件で得られるアルミニウム層を蛍光X線分析することにより得られる、上記アルミニウムのKα線強度をQ(kcps)としたとき、(P/Q)で定義される付着率が好ましくは0.50以上0.75以下、より好ましくは0.52以上0.70以下、さらに好ましくは0.53以上0.65以下、よりいっそう好ましくは0.55以上0.60以下である。付着率を上記範囲にすることによりガスバリア性重合体層103が外的な変形に対してより安定した接着状態を保つことができるガスバリア性積層体100を得ることができる。
【0048】
上記Kα線強度Pは、たとえば、以下の方法により得られる。
蛍光X線分析装置ZSXPrimusII(リガク社製)を用いて、本実施形態のガスバリア性積層体100の酸化アルミニウム層に対し、上記酸化アルミニウム層を構成するアルミニウムのKα線を測定し、得られた蛍光X線強度をKα線強度P(kcps)とすることができる。
上記Kα線強度Qは、たとえば、以下の方法により得られる。
まず、酸素の導入はおこなわずに、本実施形態のガスバリア性積層体100における酸化アルミニウム層と同じ製造条件で、基材層上にアルミニウムにより構成されたアルミニウム層を形成する。次いで、蛍光X線分析装置ZSXPrimusII(リガク社製)を用いて、得られたアルミニウム層に対し、上記アルミニウム層を構成するアルミニウムのKα線を測定し、得られた蛍光X線強度をQ(kcps)とすることができる。
【0049】
ここで、得られる酸化アルミニウム層のKα線強度Pは、酸素の導入量に依存し、酸素の導入量(酸化度)が大きくなるとアルミニウムとしての蒸着量が減少するので、Kα線強度Pは小さくなり、酸素の導入量が少ないとアルミニウムとしての蒸着量が増すのでKα線強度Pは大きくなる。
【0050】
また、本実施形態のガスバリア性積層体100において、無機物層102が酸化アルミニウム以外の金属酸化物により構成された金属酸化物層である場合は、金属酸化物層を蛍光X線分析することにより得られる、上記金属酸化物を構成する金属のKα線強度をR(kcps)とし、金属酸化物を構成する金属からなり、かつ、酸素を導入しない以外は上記金属酸化物層と同じ製造条件で得られる金属層を蛍光X線分析することにより得られる、上記金属のKα線強度をS(kcps)としたとき、(R/S)で定義される付着率が好ましくは0.50以上0.90以下、より好ましくは0.55以上0.80以下である。付着率が上記範囲内であると、ガスバリア性と透明性のバランスが優れたガスバリア性積層体100が得られる。
ここで、上記Kα線強度RおよびSは、酸化アルミニウムの場合について上述したKα線強度PおよびQと同様の方法により測定することができる。
【0051】
無機物層102の厚さは、バリア性、密着性、取扱い性等のバランスの観点から、通常1nm以上1000nm以下、好ましくは1nm以上500nm以下、より好ましくは1nm以上100nm以下、さらに好ましくは1nm以上50nm以下、よりいっそう好ましくは1nm以上20nm以下である。
本実施形態において、無機物層102の厚さは、透過型電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡による観察画像により求めることができる。
【0052】
無機物層102の形成方法は限定されず、たとえば、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、化学気相成長法、物理気相蒸着法、化学気相蒸着法(CVD法)、プラズマCVD法、ゾルゲル法等により基材層101の片面または両面に無機物層102を形成することができる。中でも、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学気相蒸着法(CVD)、物理気相蒸着法(PVD)、プラズマCVD法等の減圧下での製膜が好ましい。これにより、窒化珪素や酸化窒化珪素等の珪素を含有する化学的に活性な分子種が速やかに反応することにより、無機物層102の表面の平滑性が改良され、孔を少なくすることができるものと予想される。
これらの結合反応を迅速におこなうには、その無機原子や化合物が化学的に活性な分子種もしくは原子種であることが好ましい。
【0053】
(基材層)
基材層101は、たとえば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、または紙等の有機質材料により形成されており、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂から選択される少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0054】
熱硬化性樹脂としては、公知の熱硬化性樹脂、たとえば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア・メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド等が挙げられる。
【0055】
熱可塑性樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂、たとえば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリ(1−ブテン)等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66、ポリメタキシレンアジパミド等)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン酢酸ビニル共重合体もしくはその鹸化物、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマー、フッ素樹脂あるいはこれらの混合物等が挙げられる。
これらの中でも、透明性を良好にする観点から、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリイミドから選択される一種または二種以上が好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートから選択される一種または二種以上がより好ましい。
また、熱可塑性樹脂により形成された基材層101は、ガスバリア性積層体100の用途に応じて、単層であっても、二種以上の層であってもよい。
【0056】
また、上記熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂により形成されたフィルムを少なくとも一方向、好ましくは二軸方向に延伸して基材層101としてもよい。
【0057】
基材層101としては、透明性、剛性、耐熱性に優れる観点から、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリイミドから選択される一種または二種以上の熱可塑性樹脂により形成された二軸延伸フィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートから選択される一種または二種以上の熱可塑性樹脂により形成された二軸延伸フィルムがより好ましい。
【0058】
また、基材層101の表面に、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニアルコール共重合体、アクリル樹脂、ウレタン系樹脂等がコーティングされていてもよい。
さらに、ガスバリア性重合体層103との接着性を改良するために、基材層101に表面処理をおこなってもよい。具体的には、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、プライマーコート処理等の表面活性化処理をおこなってもよい。
【0059】
基材層101の厚さは、良好なフィルム特性を得る観点から、1〜1000μmが好ましく、1〜500μmがより好ましく、1〜300μmがさらに好ましい。
【0060】
基材層101の形状は、限定されないが、たとえば、シートまたはフィルム形状、トレー、カップ、中空体等の形状が挙げられる。
【0061】
ガスバリア性積層体100は、以上の基材層101およびガスバリア性重合体層103を備え、また、無機物層102をさらに備えてもよい。
本実施形態において、130℃、30分間の条件でレトルト処理した後の、ガスバリア性積層体100全体の酸素透過度は、良好なガスバリア性を得る観点から、好ましくは200mL/(m
2・day・MPa)以下、より好ましくは150mL/(m
2・day・MPa)以下、さらに好ましくは100mL/(m
2・day・MPa)以下である。
【0062】
また、ガスバリア性積層体100は、基材層101、無機物層102およびガスバリア性重合体層103以外の層を備えてよい。その他の層の具体例として、アンダーコート層および接着層が挙げられる。
【0063】
(アンダーコート層)
ガスバリア性積層体100において、基材層101と、ガスバリア性重合体層103または無機物層102との接着性を向上させる観点から、基材層101上にアンダーコート層がさらに積層されていてもよい。基材層101と、ガスバリア性重合体層103または無機物層102との間にアンダーコート層を設けることによりガスバリア性重合体層103の追従性がさらに向上し外的な変形が加えられてもガスバリア性積層体100においてガスバリア性重合体層103はより安定的な接着状態を保つことができる。
上記アンダーコート層としては、たとえば、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、オキサゾリン系樹脂、アクリル系樹脂から選択される一種または二種以上により構成されていることが好ましい。
【0064】
アンダーコート層の厚さは、良好な接着性を得る観点から、0.001μm以上であることが好ましく、経済的であるという観点から0.5μm以下であることが好ましい。より好ましくは0.005〜0.1μmであり、さらに好ましくは0.01〜0.05μmである。
【0065】
(接着層)
ガスバリア性積層体100において、基材層101とガスバリア性重合体層103との間に接着剤層が設けられていてもよい。なお、接着剤層から上述したアンダーコート層は除かれる。
接着剤層は、公知の接着剤を含むものであればよい。接着剤としては、有機チタン系樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、変性シリコーン樹脂およびアルキルチタネート、ポリエステル系ポリブタジエン等から組成されているラミネート接着剤、または一液型、二液型のポリオールと多価イソシアネート、水系ウレタン、アイオノマー等が挙げられる。または、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂等を主原料とした水性接着剤を用いてもよい。
また、ガスバリア性積層体の用途に応じて、接着剤に硬化剤、シランカップリング剤等の他の添加物を添加してもよい。ガスバリア性積層体の用途が、レトルト等の熱水処理に用いられるものである場合、耐熱性や耐水性の観点から、ポリウレタン系接着剤に代表されるドライラミネート用接着剤が好ましく、溶剤系の二液硬化タイプのポリウレタン系接着剤がより好ましい。
【0066】
本実施形態のガスバリア性積層体100は、ガスバリア性能に優れており、包装材料、とりわけ高いガスバリア性が要求される内容物の食品包装材料を始め、医療用途、工業用途、日常雑貨用途等さまざまな包装材料としても好適に使用し得る。
また、本実施形態のガスバリア性積層体100は、たとえば、高いバリア性能が要求される、真空断熱用フィルム;エレクトロルミネセンス素子、太陽電池等を封止するための封止用フィルム;等として好適に使用することができる。
また、本実施形態における包装体は、ガスバリア性積層体100を含む。
【0067】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、参考形態の例を付記する。
1.
基材層と、
前記基材層の少なくとも一方の面に設けられ、かつ、ポリカルボン酸およびポリアミン化合物を含む混合物を加熱硬化してなるガスバリア性重合体層と、
を含み、
前記ポリカルボン酸の重量平均分子量が、1.6×105以上2.0×106以下であり、
前記ポリアミン化合物の重量平均分子量が、3.0×103以上6.0×104以下であり、
(前記混合物中の前記ポリカルボン酸に含まれる−COO−基のモル数)/(前記混合物中の前記ポリアミン化合物に含まれるアミノ基のモル数)が、100/62以上である、ガスバリア性積層体。
2.
前記ポリカルボン酸が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、および、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体からなる群から選択される一種または二種以上の重合体を含む、1.に記載のガスバリア性積層体。
3.
前記ポリアミン化合物が、ポリエチレンイミンを含む、1.または2.に記載のガスバリア性積層体。
4.
1.乃至3.のいずれか一つに記載のガスバリア性積層体を含む包装体。
5.
基材層と、前記基材層の少なくとも一方の面に設けられたガスバリア性重合体層と、を含むガスバリア性積層体の製造方法であって、
ポリカルボン酸およびポリアミン化合物を含む混合物を前記基材層に塗工し、塗工層を得る工程と、
対流伝熱方式により前記塗工層を加熱し、前記ポリカルボン酸に含まれるカルボキシル基と前記ポリアミン化合物に含まれるアミノ基とを脱水縮合反応させることにより、アミド結合を有するガスバリア性重合体層を形成する工程と、
を含み、
前記ポリカルボン酸の重量平均分子量が、1.6×105以上2.0×106以下であり、
前記ポリアミン化合物の重量平均分子量が、3.0×103以上6.0×104以下であり、
(前記混合物中の前記ポリカルボン酸に含まれる−COO−基のモル数)/(前記混合物中の前記ポリアミン化合物に含まれるアミノ基のモル数)が、100/62以上である、ガスバリア性積層体の製造方法。
【実施例】
【0068】
以下、本実施形態を、実施例・比較例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0069】
(溶液(Z1)の作製)
ポリアクリル酸アンモニウム(東亜合成社製、製品名:アロンA−30、30%水溶液、分子量:1×10
5)の混合物に精製水を添加して10%溶液にしたポリアクリル酸アンモニウム水溶液を得た。
(溶液(Z2)の作製)
ポリアクリル酸(東亜合成社製、製品名:アロンA−10H、25%水溶液、分子量:2×10
5)のカルボキシル基に対して10%アンモニア水(和光純薬工業社製)のアンモニアが当量になるよう添加、更に精製水を添加した8.09%溶液のポリアクリル酸アンモニウム水溶液を得た。
(溶液(Z3)の作製)
ポリアクリル酸アンモニウム(東亜合成社製、製品名:ジュリマーAC−10H、20%水溶液、分子量:8×10
5)のカルボキシル基に対して10%アンモニア水(和光純薬工業社製)のアンモニアが当量になるよう添加、更に精製水を添加して8.09%溶液のポリアクリル酸アンモニウム水溶液を得た。
(溶液(Z4)の作製)
ポリアクリル酸アンモニウム(東亜合成社製、製品名:ジュリマーAC−10SH、10%水溶液、分子量:1×10
6)のカルボキシル基に対して10%アンモニア水(和光純薬工業社製)のアンモニアが2.0当量になるよう添加、更に精製水を添加して4.05%溶液のポリアクリル酸アンモニウム水溶液を得た。
【0070】
(溶液(Y1)の作製)
ポリエチレンイミン(日本触媒製、製品名:エポミンSP−018、平均分子量:約1.8×10
3)に精製水を添加して10%溶液にしたポリエチレンイミン水溶液を得た。
(溶液(Y2)の作製)
ポリエチレンイミン(和光純薬工業社製、製品名:ポリエチレンイミン、平均分子量:約1×10
4)に精製水を添加して10%溶液にしたポリエチレンイミン水溶液を得た。
(溶液(Y3)の作製)
ポリエチレンイミン(和光純薬工業社製、製品名:P−70、平均分子量:約7×10
4)に精製水を添加して10%溶液にしたポリエチレンイミン水溶液を得た。
【0071】
(実施例1)
上記ポリアクリル酸アンモニウム水溶液(Z2)24.35gと上記ポリエチレンイミン水溶液(Y2)5.30gを混合・撹拌して混合液を調製した。
さらに上記混合液の固形分濃度が2.5質量%になるように精製水を添加し、均一溶液になるまで撹拌したのちに、非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、花王社製、商品名:エマルゲン120)を混合液の固形分に対して0.3質量%となるように混合し、溶液(V)を調製した。
得られた溶液(V)を、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製、PET12)のコロナ処理面に、メイヤバーにて乾燥後の膜厚が0.3μmになる塗工量にて塗布し、熱風乾燥器を使用して200℃にて45秒間熱処理することにより、ガスバリア性積層フィルムを得た。
得られたガスバリア性積層フィルムについて、以下の評価をおこなった。評価結果を表1にあわせて示す。
【0072】
(実施例2)
ポリアクリル酸アンモニウム水溶液(Z3)24.35gと上記ポリエチレンイミン水溶液(Y2)5.30gを混合・撹拌して混合液を調製した他は、実施例1に準じてガスバリア性積層フィルムを作製し、評価した。
【0073】
(実施例3)
ポリアクリル酸アンモニウム水溶液(Z3)23.25gと上記ポリエチレンイミン水溶液(Y2)6.19gを混合・撹拌して混合液を調製した他は、実施例1に準じてガスバリア性積層フィルムを作製し、評価した。
【0074】
(実施例4)
ポリアクリル酸アンモニウム水溶液(Z4)57.42gと上記ポリエチレンイミン水溶液(Y2)7.64gを混合・撹拌して混合液を調製した他は、実施例1に準じてガスバリア性積層フィルムを作製し、評価した。
【0075】
(比較例1)
ポリアクリル酸アンモニウム水溶液(Z1)20.53gと上記ポリエチレンイミン水溶液(Y2)4.47gを混合・撹拌して混合液を調製した他は、実施例1に準じてガスバリア性積層フィルムを作製し、評価した。
【0076】
(比較例2)
ポリアクリル酸アンモニウム水溶液(Z1)19.75gと上記ポリエチレンイミン水溶液(Y2)5.25gを混合・撹拌して混合液を調製した他は、実施例1に準じてガスバリア性積層フィルムを作製し、評価した。
【0077】
(比較例3)
ポリアクリル酸アンモニウム水溶液(Z1)19.02gと上記ポリエチレンイミン水溶液(Y2)5.98gを混合・撹拌して混合液を調製した他は、実施例1に準じてガスバリア性積層フィルムを作製し、評価した。
【0078】
(比較例4)
ポリアクリル酸アンモニウム水溶液(Z3)22.25gと上記ポリエチレンイミン水溶液(Y2)6.99gを混合・撹拌して混合液を調製した他は、実施例1に準じてガスバリア性積層フィルムを作製し、評価した。
【0079】
(比較例5)
ポリアクリル酸アンモニウム水溶液(Z1)19.75gと上記ポリエチレンイミン水溶液(Y1)5.25gを混合・撹拌して混合液を調製した他は、実施例1に準じてガスバリア性積層フィルムを作製し、評価した。
【0080】
(比較例6)
ポリアクリル酸アンモニウム水溶液(Z1)19.75gと上記ポリエチレンイミン水溶液(Y3)5.25gを混合・撹拌して混合液を調製した他は、実施例1に準じてガスバリア性積層フィルムを作製し、評価した。
【0081】
(比較例7)
ポリアクリル酸アンモニウム水溶液(Z3)23.25gと上記ポリエチレンイミン水溶液(Y1)6.19gを混合・撹拌して混合液を調製した他は、実施例1に準じてガスバリア性積層フィルムを作製し、評価した。
【0082】
(比較例8)
ポリアクリル酸アンモニウム水溶液(Z3)23.25gと上記ポリエチレンイミン水溶液(Y3)6.19gを混合・撹拌して混合液を調製した他は、実施例1に準じてガスバリア性積層フィルムを作製し、評価した。
【0083】
(評価用多層フィルムの作製)
(1)厚さ70μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ社製 商品名:RXC−22)の片面に、エステル系接着剤(ポリウレタン系接着剤(三井化学社製 商品名:タケラックA525S):9質量部、イソシアネート系硬化剤(三井化学社製 商品名:タケネートA50):1質量部および酢酸エチル:7.5質量部)を塗布した。乾燥後、各実施例および比較例で得られたガスバリア性積層フィルムのガスバリア性重合体層面と貼り合わせ(ドライラミネート)、多層フィルム(表1中、「レトルト前」という。)を得た。
【0084】
(2)レトルト処理
上記(1)で得られた多層フィルムを無延伸ポリプロピレンフィルムが内面になるように折り返し、2方をヒートシールして袋状にした後、内容物として水を70mL入れ、もう1方をヒートシールにより袋を作成し、これを高温高圧レトルト殺菌装置で130℃、30分間の条件でレトルト処理をおこなった。レトルト処理後、内容物の水を抜き、レトルト処理後の多層フィルム(表1中、「レトルト後」という。)を得た。
【0085】
(評価方法)
(酸素透過度[mL/(m
2・day・MPa)])
上記(1)および(2)で得られた多層フィルムについて、モコン社製OX−TRAN2/21を用いて、JIS K 7126に準じ、温度20℃、湿度90%RHの条件で測定した。
【0086】
【表1】
【0087】
表1より、各実施例で得られたガスバリア性積層フィルムは、ガスバリア性重合体層の加熱乾燥に簡便な熱風乾燥器のみを用いる場合でも、短時間の加熱で得られるため、生産性に優れていた。また、各実施例で得られたガスバリア性積層フィルムは、各比較例のものに比べてレトルト処理後のガスバリア性能に優れていた。
以上から、各実施例においては、ガスバリア性能に優れるガスバリア性積層体を簡便な方法で生産性良く製造できることがわかった。
【0088】
100 ガスバリア性積層体
101 基材層
102 無機物層
103 ガスバリア性重合体層