特許第6956565号(P6956565)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6956565
(24)【登録日】2021年10月7日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】熱伝導成形体
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20211021BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20211021BHJP
   H01L 23/373 20060101ALI20211021BHJP
   B28B 3/02 20060101ALI20211021BHJP
【FI】
   H05K7/20 F
   H01L23/36 Z
   H01L23/36 M
   B28B3/02 J
   B28B3/02 T
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-163913(P2017-163913)
(22)【出願日】2017年8月29日
(65)【公開番号】特開2019-41069(P2019-41069A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2020年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】井上 広大
(72)【発明者】
【氏名】荒川 洸平
(72)【発明者】
【氏名】藤原 優
【審査官】 三森 雄介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−053145(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/076330(WO,A1)
【文献】 特開2014−083786(JP,A)
【文献】 特開2010−050240(JP,A)
【文献】 特開2010−003981(JP,A)
【文献】 特開2005−272164(JP,A)
【文献】 特開2005−229100(JP,A)
【文献】 特開平05−010450(JP,A)
【文献】 特開平05−000409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
H01L 23/36ー23/373
B28B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向の熱伝導性に比べて主面方向の熱伝導性が高いシート状である複数の膨張黒鉛シートを、主面が重なるように積層するとともに、前記主面に交差する方向に圧縮成形され、圧縮方向を高さ方向とする所定の高さを有し、
前記高さ方向に交差する形状が環状であり、
前記膨張黒鉛シートが、前記環状における径方向に向けて配置された
熱伝導成形体。
【請求項2】
前記膨張黒鉛シートが、前記高さ方向に対して湾曲している
請求項に記載の熱伝導成形体。
【請求項3】
前記膨張黒鉛シートが、前記径方向に対して湾曲している
請求項またはに記載の熱伝導成形体。
【請求項4】
前記膨張黒鉛シートが、前記径方向に対して交差する方向に向いている
請求項またはに記載の熱伝導成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の膨張黒鉛シートで構成した熱伝導成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、モバイル機器やインバータ制御部品における冷却部等には、放熱性の高い熱伝導成形体が放熱体として用いられる。
一方、熱伝導性に優れている膨張黒鉛は、例えば、電子部品からの発熱を拡散するための放熱シートの材料としても利用される(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、このようなシート状の膨張黒鉛は、厚み方向の熱伝導性が主面方向の熱伝導性に比べておよそ1/25程度しかない異方性を有するため、例えば、所定の高さを有する熱伝導成形体を、膨張黒鉛シートを厚み方向に積層して構成すると、高さ方向に交差する方向の熱伝導性は確保できるものの、高さ方向はシート状の膨張黒鉛の厚み方向となるため、高さ方向の熱伝導性を確保できず、熱伝導成形体の要求を満足することができなかった。
【0004】
これに対し、帯状の膨張黒鉛シートを渦巻状に巻き回して、所定の高さを有する熱伝導成形体を構成すると、熱伝導成形体を構成する膨張黒鉛シートの主面が高さ方向に向くため、高さ方向の熱伝導性は確保できるものの、高さ方向に交差する径方向がシート状の膨張黒鉛の厚み方向となるため、径方向の熱伝導性を確保できず、熱伝導成形体の要求を満足することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−229100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明では、厚み方向の熱伝導性に比べて主面方向の熱伝導性が高い膨張黒鉛シートを用い、高さ方向及び高さ方向に交差する方向の両方向に優れた熱伝導性を有する熱伝導成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この熱伝導成形体は、厚み方向の熱伝導性に比べて主面方向の熱伝導性が高いシート状である複数の膨張黒鉛シートを、主面が重なるように積層するとともに、前記主面に交差する方向に圧縮成形され、圧縮方向を高さ方向とする所定の高さを有することを特徴とする。
この熱伝導成形体により、高さ方向及び高さ方向に交差する方向の両方向において優れた熱伝導性を発揮することができる。
【0008】
詳述すると、厚み方向の熱伝導性に比べて主面方向の熱伝導性が高いシート状である複数の膨張黒鉛シートを主面が重なるように積層するとともに、前記主面に交差する方向に圧縮成形して圧縮方向を高さ方向とする所定の高さを有する熱伝導成形体を構成するため、前記膨張黒鉛シートの前記主面は熱伝導成形体の高さ方向及び高さ方向に交差する方向に向くこととなり、高さ方向及び高さ方向に交差する方向の両方向において優れた熱伝導性を発揮することができる。
【0009】
なお、熱伝導成形体は、膨張黒鉛シートの積層方向が高さ方向でなければ、所定の高さを有する様々な形状とすることができる。
また、熱伝導成形体は、熱を伝達して放熱するための放熱体、あるいは吸熱体や熱を積極的に伝達するための熱伝達体など、用途に応じた熱伝導性を利用可能な成形体としてもよい。
【0010】
この熱伝導成形体の態様として、所定の高さを有するとともに、高さ方向に交差する形状が環状であり、前記膨張黒鉛シートを前記環状における径方向に向けて配置してもよい。
上記環状は、円環状、角形環状、あるいは適宜の環状としてもよく、上記径方向は、例えば半径方向など、環状の内側と外側とを結ぶ方向である。
【0011】
この熱伝導成形体により、所定の高さを有する環状の熱伝導成形体において、高さ方向及び高さ方向に交差する径方向の両方向において優れた熱伝導性を発揮することができる。
詳しくは、所定の高さを有するとともに高さ方向に交差する環状における径方向に向けて前記膨張黒鉛シートが配置されるため、つまり、前記膨張黒鉛シートの積層方向が環状に沿う方向となり、前記主面が径方向及び高さ方向に沿うため、高さ方向及び径方向の両方向において優れた熱伝導性を発揮することができる。
【0012】
またこの熱伝導成形体の態様として、前記膨張黒鉛シートが、前記高さ方向に対して湾曲してもよい。
この熱伝導成形体により、積層する前記膨張黒鉛シート同士の高さ方向の結合強度が向上し、耐久性を高くすることができる。
【0013】
またこの熱伝導成形体の態様として、前記膨張黒鉛シートが、前記径方向に対して湾曲してもよい。
この熱伝導成形体により、積層する前記膨張黒鉛シート同士の径方向の結合強度が向上し、耐久性を高くすることができる。
【0014】
またこの熱伝導成形体の態様として、前記膨張黒鉛シートが、前記径方向に対して交差する方向に向いてもよい。
この熱伝導成形体により、径方向の熱伝導性を調整することができる。
【0015】
詳述すると、前記膨張黒鉛シートが前記径方向に対して交差する方向に向くことで、半径方向、つまり放射方向に配置された場合に比べて、膨張黒鉛シートの径方向の長さを長く形成することができる。つまり、径方向に交差する向きに応じて膨張黒鉛シートの径方向の長さを調整でき、膨張黒鉛シートの長さによって、熱伝導成形体の径方向の熱伝導性を調整することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、高さ方向及び高さ方向に交差する方向の両方向に優れた熱伝導性を有する熱伝導成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】膨張黒鉛シート及び放熱成形体についての説明図。
図2】放熱成形体の平面図及び正面図。
図3】放熱成形体の製造方法についての説明図。
図4】放熱成形体の製造方法についての説明図。
図5】放熱成形体の製造方法についての説明図。
図6】放熱成形体の正面図。
図7】放熱成形体の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
図1は放熱成形体1についての説明図を示し、図2は放熱成形体1の平面図及び正面図を示し、図3乃至図5は放熱成形体1の製造方法についての説明図を示し、図6は高さ方向Hにおける膨張黒鉛シート10の圧縮形状が異なる放熱成形体1の正面図を示し、図7は膨張黒鉛シート10が径方向Rに対して交差する向きとなる放熱成形体1の平面図を示している。
【0019】
詳述すると、図1(a)は放熱成形体1を構成する膨張黒鉛シート10の斜視図を示し、図1(b)は放熱成形体1の斜視図を示している。図3(a)放熱成形体1を構成する複数の膨張黒鉛シート10を配置した状態の斜視図を示し、図3(b)は放熱成形体1を構成する圧縮下型110の斜視図を示している。
【0020】
また、図4(a)は圧縮下型110に複数の膨張黒鉛シート10を配置した状態の斜視図を示し、図4(b)は同状態の断面図を示し、図5(a)は圧縮上型120で膨張黒鉛シート10を圧縮した状態の斜視図を示し、図5(b)は同状態の断面図を示している。なお、図4(a),図5(b)において、理解を容易にするため、圧縮上型120の手前側半部の図示を省略し、奥側半分のみを図示している。
【0021】
図6(a)は高さ方向Hに対して膨張黒鉛シート10が屈曲する放熱成形体1の正面図を示し、図6(b)は高さ方向Hに対して膨張黒鉛シート10が交差する向きとなる放熱成形体1の正面図を示している。
【0022】
なお、図1、並びに図3乃至図7において、説明の便宜上、放熱成形体1を構成する膨張黒鉛シート10の境界を明確に図示するとともに、膨張黒鉛シート10の向き等について説明しているが、実際には、放熱成形体1は圧縮成形によって膨張黒鉛シート10が一体化されることから、膨張黒鉛シート10の境界が不明確な場合もあり得る。
【0023】
放熱成形体1は、例えば、インジェクター装置における冷却部に用いられ、高さ方向H及び径方向Rの放熱性が高い熱伝放熱体であり、所定の高さを有する平面視円環状に形成されている。
本実施形態において、図1(b),図2(b)等に図示するように、放熱成形体1の高さに沿う方向を高さ方向Hとし、放熱成形体1の平面視において円環状の中心から外側に向く方向を径方向Rとしている。また、本実施形態において、放熱成形体1は、高さ方向Hが20mm、径方向Rの内径が24mm、外径が37mmの円環状で形成している。なお、径方向Rについては、各図面において略90度間隔で4方向のみを例示として図示しているが、平面視円環状の中心から外方に向かって放射状に延びる方向であればいずれの方向であってもよい。
【0024】
このように形成される放熱成形体1は、図1(a)に図示する膨張黒鉛シート10を、図2(a)に示すように、放熱成形体1の平面視中心に対して周方向に沿って複数積層するとともに、図2(b)に示すように、膨張黒鉛シート10が高さ方向Hに対して略S字状に湾曲するように圧縮され、一体化されている。
【0025】
膨張黒鉛シート10は、主面10aに対して適宜の厚みtを有し、後述する主面方向x,yに所定の長さを有する矩形状のシート状である。なお、本実施形態において、図1(a)に図示するように、膨張黒鉛シート10の厚みに沿う方向を厚み方向zとし、厚み方向zに直交するとともに、互いに直交する二方向を主面方向x,yとしている。なお、厚みtは、主面方向x,yの長さに拘らず、任意に設定可能である。
【0026】
このような膨張黒鉛シート10は、厚み方向zの熱伝導性が主面方向x,yの熱伝導性に比べておよそ1/25程度しかない異方性を有している。
なお、図1(a),図3(a)において膨張黒鉛シート10は、理解を容易にするため厚みtを厚く図示しているが、本実施形態では、厚みtが0.75mmの膨張黒鉛シート10を用いている。このような厚みtの膨張黒鉛シート10では、21℃の環境において、主面方向x,yの熱伝導性が138W/m・Kであるのに対し、厚み方向zの熱伝導性は5W/m・Kであり、およそ1/25程度である。
【0027】
次に、このように主面方向x,yの熱伝導性に比べて厚み方向zの熱伝導性が低い膨張黒鉛シート10を用いて構成された、高さ方向H及び径方向Rの放熱性が高い放熱成形体1の製造方法について図3乃至図5とともに説明する。
【0028】
まず、図3図4に示すように、複数枚の膨張黒鉛シート10を、主面10aが高さ方向H及び径方向Rに沿うように向けるとともに、主面10a同士が重なり合うように、平面視周方向に沿って配置し、膨張黒鉛シート10を圧縮成形する圧縮下型110の圧縮空間Xにセットする。ここで、本実施形態では、主面10aの主面方向x,yのうちx方向が高さ方向Hを向き、y方向が径方向Rを向くように膨張黒鉛シート10をセットすることとする。
【0029】
なお、膨張黒鉛シート10を圧縮して放熱成形体1を構成する圧縮装置は、圧縮下型110と圧縮上型120とで構成されている。圧縮下型110は、図3(b)に示すように、円筒状凹部111と、円筒状凹部111の平面視中央に配置された円柱部112とで、円筒状の圧縮空間Xが形成されている。
圧縮空間Xは、放熱成形体1と平面視形状は同一の円環状に形成され、放熱成形体1の高さ方向Hより深く形成されている。
【0030】
圧縮上型120は、上型本体121と、上型本体121の底面から下方に突出する円筒状凸部122とで一体に構成されている。円筒状凸部122は、上述の圧縮下型110の円筒状凹部111に嵌合可能な外形と、円柱部112が嵌合可能な内形とで形成されている。
【0031】
圧縮空間Xに配置される膨張黒鉛シート10は、y方向の長さが圧縮空間Xの径方向Rの長さに比べてわずかに短く、x方向の長さが放熱成形体1の高さ方向Hより長く形成されている。なお、本実施形態において、120枚の膨張黒鉛シート10を上述したように周方向に並べて圧縮空間Xにセットするが、便宜上枚数を減らして図示している。また、膨張黒鉛シート10の使用枚数は、放熱成形体1の目的、用途、使用条件等によって任意に変更可能である。
【0032】
このように、y方向の長さが圧縮空間Xの径方向Rの長さに比べてわずかに短く、x方向の長さが放熱成形体1の高さ方向Hより長い膨張黒鉛シート10を圧縮空間Xに配置した後、圧縮空間Xにおける膨張黒鉛シート10の上部に対して圧縮上型120の円筒状凸部122を圧縮下型110の上方から挿入し、図5に示すように、圧縮下型110の上面110aと、圧縮上型120の上型本体121の底面とが対面するまで圧入する。
【0033】
このように、圧縮下型110の上面110aと、圧縮上型120の上型本体121の底面とが対面するまで圧入することで、圧縮空間Xに配置された膨張黒鉛シート10は、上述したように、高さ方向Hに対して略S字状に湾曲するように圧縮され一体化される。これにより、複数の膨張黒鉛シート10から放熱成形体1を構成することができる。
【0034】
なお、膨張黒鉛シート10の圧縮空間Xにおける配置や、x方向の長さに対する高さ方向Hの圧縮量によっては、膨張黒鉛シート10が高さ方向Hに対して略S字状に湾曲せず、膨張黒鉛シート10が高さ方向Hに直線状となる場合もあり、図6(a)に示すように、例えば、膨張黒鉛シート10が高さ方向Hに対して屈曲するように圧縮される場合もある。さらには、図6(b)に示すように、膨張黒鉛シート10が高さ方向Hに対して交差する方向に向く場合もある。
【0035】
このように、所定の高さを有する放熱成形体1は、厚み方向zの熱伝導性に比べて主面方向x,yの熱伝導性が高いシート状である複数の膨張黒鉛シート10を、主面10aが重なるように積層するとともに、主面方向x,yに圧縮成形され、圧縮方向を高さ方向Hとしたため、高さ方向H及び径方向Rの両方向において優れた熱伝導性を発揮することができる。
【0036】
詳述すると、厚み方向zの熱伝導性に比べて主面方向x,yの熱伝導性が高いシート状である複数の膨張黒鉛シート10を主面10aが重なるように積層するとともに、主面方向x,yに圧縮成形して圧縮方向を高さ方向Hとする所定の高さを有する放熱成形体1を構成するため、膨張黒鉛シート10の主面10aが放熱成形体1の高さ方向H及び径方向Rに向き、高さ方向H及び径方向Rの両方向において優れた熱伝導性を発揮することができる。
【0037】
また、放熱成形体1は、高さ方向Hに交差する平面視形状が円環状であり、膨張黒鉛シート10が、環状における径方向Rに向けて配置されているため、所定の高さを有する環状の放熱成形体1において、高さ方向H及び高さ方向Hに交差する径方向Rの両方向において優れた熱伝導性を発揮することができる。
【0038】
詳しくは、所定の高さを有するとともに、平面視円環状における径方向Rに向けて膨張黒鉛シート10が配置されているため、つまり、膨張黒鉛シート10の積層方向が環状に沿う方向となり、主面10aが径方向R及び高さ方向Hに沿うため、高さ方向H及び径方向Rの両方向において優れた熱伝導性を発揮することができる。
【0039】
なお、円環状の放熱成形体1は、膨張黒鉛シート10の厚み方向zが平面視円環状の周方向に向くため、周方向の熱伝導性は低くなるものの、高さ方向H及び径方向Rの優れた熱伝導性によって、放熱成形体1の上面及び底面、並びに内周面及び外周面のいずれ面に対しても優れた熱伝導性を発揮するため、放熱体として優れた放熱性能を発揮することができる。
【0040】
また、膨張黒鉛シート10が高さ方向Hに対して略S字状に湾曲している場合や図6(a)に図示するように膨張黒鉛シート10が高さ方向Hに対して屈曲する場合は、積層する膨張黒鉛シート10同士の高さ方向Hの結合強度が向上するとともに、密度が向上し、放熱成形体1の耐久性を向上することができる。
【0041】
なお、図7に示すように、放熱成形体1の膨張黒鉛シート10が、径方向Rに対して交差する方向に向くとともに、径方向Rに対して湾曲してもよい。
この場合も、積層する膨張黒鉛シート10同士の径方向Rの結合強度が向上し、放熱成形体1の耐久性を向上することができる。
【0042】
特に、径方向Rに対して交差する方向に膨張黒鉛シート10を向けることで、放熱成形体1における径方向Rの熱伝導性を調整することができる。
詳述すると、膨張黒鉛シート10が径方向Rに対して交差する方向に向くことで、図1(a)に示すように、平面視円環状の中心から放射方向に膨張黒鉛シート10を配置した場合に比べて、同じ平面視円環状であっても、y方向の長さが長い膨張黒鉛シート10を用いることができる。
【0043】
ここで放熱成形体1を構成する膨張黒鉛シート10は、上述したように厚み方向zの熱伝導性が低いため、主面10a同士が対面して積層する膨張黒鉛シート10同士の間で熱伝導されず、膨張黒鉛シート10の主面方向x,yに熱伝導するため、放熱成形体1における径方向Rの熱伝導性は、膨張黒鉛シート10のy方向の長さに寄与することとなる。
【0044】
このように、径方向Rに対して交差する方向に膨張黒鉛シート10を向けることや、膨張黒鉛シート10を径方向Rに対して湾曲させることで、膨張黒鉛シート10のy方向の長さを調整でき、膨張黒鉛シート10のy方向の長さを調整することで放熱成形体1の径方向Rの熱伝導性を調整することができる。
【0045】
もちろん、図6に図示するように、高さ方向Hに対して膨張黒鉛シート10を湾曲させたり、交差する方向に向けることで放熱成形体1の高さ方向Hの熱伝導性も調整することはできるものの、径方向Rに交差する方向に向ける場合に比べて膨張黒鉛シート10のx方向の長さを調整する調整量は少ない。
【0046】
以上、本発明の構成と、前述の実施態様との対応において、本実施形態の厚み方向は厚み方向zに対応し、
以下同様に、
面方向は主面方向x,yに対応し、
膨張黒鉛シートは膨張黒鉛シート10に対応し、
面に交差する方向及び径方向は径方向Rに対応し、
高さ方向は高さ方向Hに対応し、
熱伝導成形体は放熱成形体1に対応するも、上記実施形態に限定するものではない。
【0047】
上述の説明においては、平面視円環状の放熱成形体1を構成したが、角形環状、あるいは適宜の環状としてもよく、さらに膨張黒鉛シート10の積層方向が高さ方向Hでなければ、所定の高さを有する様々な形状とすることができる。
【0048】
また、放熱成形体1は、熱を伝達して放熱するための放熱体であったが、吸熱体や熱を積極的に伝達するための熱伝達体など、用途に応じた熱伝導性を利用可能な成形体として用いてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…放熱成形体
10…膨張黒鉛シート
H…高さ方向
R…径方向
x,y…主面方向
z…厚み方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7