(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
挿入部の先端部に設けられた対物レンズと、該対物レンズとの対向面に受光エリアが形成された撮像素子と、該撮像素子の背面側に配置され、該撮像素子を駆動する駆動回路が実装された駆動回路基板とを備える内視鏡において、
前記撮像素子及び前記駆動回路基板を収容する電磁遮蔽シールド
を備え、
該電磁遮蔽シールドは、
前記撮像素子の側部を覆う筒体と、
前記撮像素子と前記対物レンズとの間に配され、前記対物レンズからの光が入光する開口部を備えた構造体と
を備える第1のシールド部材、及び
該第1のシールド部材の後端側に外嵌される第2のシールド部材
を備え、
前記筒体及び前記構造体は、導電性材料により形成された基部と、該基部の内周面に形成された絶縁層とを備え、
前記撮像素子のボンディングパッドと相対する前記構造体の部位に設けたバンプを介して、前記撮像素子を前記電磁遮蔽シールド内に実装してあり、
前記絶縁層の内周面には、前記バンプを介して前記撮像素子を前記駆動回路に接続する3次元配線層を設けてある
内視鏡。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
(実施の形態1)
図1は本実施の形態に係る内視鏡の全体構成を示す模式図である。本実施の形態に係る内視鏡は、操作者によって把持される操作部1と、この操作部1から延出する挿入部2とを有する。
【0012】
挿入部2は、可撓性を有するシース(外皮)によって外装された可撓管23を備えており、可撓管23の先端には、硬質性を有する樹脂製筐体によって外装された先端部21が連結されている。可撓管23と先端部21との連結箇所にある湾曲部22は、操作部1からの操作により内視鏡の光軸方向と交差する方向に湾曲するように構成されている。この湾曲機構は、一般的な内視鏡に組み込まれている周知の機構であり、操作部1の操作(具体的には、湾曲操作ノブの回転操作)に連動した操作ワイヤの牽引によって湾曲部22が湾曲するように構成されている。先端部21の方向が上記操作による湾曲動作に応じて変わることにより、内視鏡による撮影領域が移動するように構成されている。
【0013】
操作部1は、湾曲部22を湾曲させるための湾曲操作ノブの他、先端部21からガスや液体を噴出させるための送気/送水ボタン、観察画像を動画表示又は静止画表示に切り替えるためのフリーズボタン、観察画像の拡大/縮小を指示するズームボタン、通常光と治療光との切り替えを行う切替ボタンなどが設けられる。
【0014】
また、操作部1には、ユニバーサルコード8を介してコネクタ部9が連結されている。内視鏡は、コネクタ部9を介して電気的かつ光学的にプロセッサ装置(不図示)に接続される。プロセッサ装置は、内視鏡からの画像信号を処理する信号処理装置と、自然光が届かない体腔内を内視鏡を介して照射する光源装置とを一体に備えた装置である。別の実施形態では、信号処理装置と光源装置とを別体で構成してもよい。プロセッサ装置は、処理後の画像信号を外部のモニタ装置(不図示)へ出力することにより、モニタ装置に観察画像を表示させる。
【0015】
図2は先端部21の内部構成を説明する模式的断面図である。
図2は、レンズユニット3及び撮像ユニット5の光軸に沿って先端部21を切断した断面を示している。なお、以下の説明において、挿入部2の先端側を内視鏡の「前方」とも記載し、挿入部2の基端側(操作部1側)を内視鏡の「後方」とも記載する。
【0016】
先端部21は、硬質かつ熱伝導性が良好な金属又は樹脂により形成された円筒形状の先端部本体210と、先端部本体210の前方側に嵌合される先端部カバー211とを備える。先端部本体210の後方側の外周面には、前述の湾曲部22を構成する湾曲ゴム212が配設されている。湾曲ゴム212は、伸縮性の少ない緊縛糸213によって先端部本体210に固定され、更に接着剤で固定されることにより、挿入部2における水密を確保している。
【0017】
先端部本体210には、複数の対物レンズを含むレンズユニット3と、撮像素子51(
図4を参照)などの電子部品を備えた撮像ユニット5とを収容する収容空間214が設けられている。この収容空間214は、例えば矩形断面を有する。レンズユニット3は、各対物レンズを所定の位置に配置するためのレンズ枠31を介して、収容空間214内に配設されている。また、撮像ユニット5は、レンズユニット3よりも後方の位置にて、熱伝導性が良好な接着剤などにより収容空間214内に固定されている。
【0018】
また、先端部21には、収容空間214に並設して、ライトガイド71を収容する収容空間215が設けられている。この収容空間215は、例えば円形断面を有する。収容空間215内には、複数の光ファイバからなるライトガイド71の先端部が固定されている。また、ライトガイド71の前方には、ライトガイド71によって導かれた光源装置からの照明光を出射する照明用の光学レンズ群72が配設されている。
【0019】
以下、撮像ユニット5の構成について説明する。
図3は撮像ユニット5の外観斜視図であり、
図4は撮像ユニット5の拡大断面図である。撮像ユニット5は、対物レンズを含むレンズユニット3との対向面にフォトダイオードからなる受光エリア510を有する撮像素子51、撮像素子51の後方に配置され、撮像素子51を駆動する駆動回路520が実装された駆動回路基板52、撮像素子51及び駆動回路基板52を収容する電磁遮蔽シールド53、バンドパスフィルタ62、並びにカバーガラス63を備える。なお、
図3においては、バンドパスフィルタ62及びカバーガラス63の図示を省略している。
【0020】
撮像素子51は、適宜の厚みを有し、受光エリア510がレンズユニット3の光軸方向と略直交するように、電磁遮蔽シールド53内に配置されている。撮像素子51の前面には受光エリア510や複数の回路と共にボンディングパッド(不図示)が形成されている。撮像素子51は、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ又はCCD(Charge Coupled Device)等の光電変換素子である。撮像素子51は、受光エリア510で結像した光学像の光量に応じて蓄積される電荷を取り出し、撮像信号(電気信号)に変換した後にボンディングパッドを通じて外部へ出力する。
【0021】
駆動回路基板52は、適宜の厚みを有する矩形状の基板であり、基板面が撮像素子51の基板面と略平行となるように、電磁遮蔽シールド53内で撮像素子51の後方に配置されている。駆動回路基板52の前面には、IC(Integrated Circuit)、コンデンサ、抵抗などの電子回路部品と、これらの電子回路部品を電気的に接続する配線パターンとにより構成された駆動回路520が実装されており、駆動回路基板52の後面には、複合ケーブル610として束ねられる各ケーブル61の一端がそれぞれ接続されている。複合ケーブル610の各ケーブル61は、例えば駆動回路基板52を貫通する貫通電極(不図示)を介して、前面の駆動回路520及び後述する3次元配線層543が有するランド545の一部に接続される。複合ケーブル610は、湾曲部22、可撓管23及び操作部1の内部を通ってコネクタ部9に接続されており、撮像素子51から出力される撮像信号等をコネクタ部9を介してプロセッサ装置へ伝送すると共に、コネクタ部9を介して入力されるプロセッサ装置からの制御信号を駆動回路基板52及び撮像素子51へ伝送するように構成されている。
【0022】
電磁遮蔽シールド53は、前方(先端側)に位置する前シールド部材54と、前シールド部材54の後端部に外嵌される後シールド部材55とを備える。電磁遮蔽シールド53は、前シールド部材54と後シールド部材55とにより形成される内部空間にて撮像素子51及び駆動回路基板52を収容し、電磁両立性を確保する。なお、電磁遮蔽シールド53は、図に示してない配線を通じて接地されていることが好ましい。
【0023】
前シールド部材54は、矩形断面を有し、撮像素子51の側部を覆う筒体54Aと、この筒体54Aの前端部に連なり、レンズユニット3と撮像素子51との間に配される構造体54Bとを備える。構造体54Bには、撮像素子51の前面に形成された受光エリア510を露出させ、レンズユニット3からの光が入光する矩形状の開口部54Cが設けられている。
【0024】
なお、前シールド部材54の前方には、バンドパスフィルタ62及びカバーガラス63が設けられている。バンドパスフィルタ62は、特定の波長領域の光を透過し、それ以外の波長領域の光の透過を阻止する。本実施の形態では、内視鏡検査で不要な赤外光を除去するためにバンドパスフィルタ62が設けられている。また、カバーガラス63は、光透過率が高い光学部材であり、受光エリア510の汚損を防ぐために、バンドパスフィルタ62と前シールド部材54の構造体54Bとの間にて開口部54Cを覆うように取り付けられている。
【0025】
前シールド部材54を構成する筒体54A及び構造体54Bは、金属製の基部541と、基部541の内周面側に配置される絶縁層542とにより一体的に形成される。基部541は、ステンレス鋼、真鍮などの導電性材料により形成され、例えば0.05〜0.1mm程度の厚みを有する。一方、絶縁層542は、基部541の内周面に絶縁性樹脂を塗布することにより形成され、例えば0.2〜0.5mm程度の厚みを有する。なお、基部541に塗布される絶縁性樹脂は、後述する3次元配線層543(メタル配線)との密着性が高い材料であることが好ましい。
【0026】
撮像素子51のボンディングパッドと相対する構造体54Bの部位にはバンプ544が設けられている。撮像素子51は、このバンプ544を介したフリップチップ実装により、前シールド部材54の内部空間に実装される。なお、バンプ544は撮像素子51のボンディングパッド上に設けられてもよい。また、筒体54Aの後端面には、駆動回路基板52の前面に形成された配線パターン(不図示)の所定部位と相対するように配置されたランド545が形成されている。駆動回路基板52は、配線パターンの所定部位とランド545とが導通を持つように、半田付け等の手段により筒体54Aの後端面に実装される。
【0027】
本実施の形態では、前シールド部材54(絶縁層542)の内周面に3次元配線層543を設けることにより、撮像素子51側のバンプ544と、駆動回路基板52側のランド545との間の導通を確保している。3次元配線層543は、レーザ加工を併用した選択めっき法、若しくはレジストパターンを用いた選択めっき法により、前シールド部材54の内周面に選択的に金属を堆積させることによって形成される。
【0028】
撮像素子51側のバンプ544と駆動回路基板52側のランド545とが3次元配線層543を介して接続されているので、撮像素子51が出力する撮像信号は、3次元配線層543を介して駆動回路基板52へ伝送され、更に駆動回路基板52に接続されたケーブル61を介してプロセッサ装置へ伝送される。また、ケーブル61を介して入力されるプロセッサ装置からの制御信号は、不図示の貫通電極を通じて、駆動回路基板52の前面に形成された配線パターンに伝送され、配線パターンの所定部位に接続された3次元配線層543を介して撮像素子51へ伝送される。
【0029】
なお、本実施の形態では、前シールド部材54の基部541を金属製としたが、モールド成形された樹脂製又はセラミック製の基部を用いてもよい。この場合、樹脂製又はセラミック製の基部の外周面にベタのGNDパターン(導電層)を設けて、シールド機能を確保すればよい。
【0030】
また、本実施の形態では、筒体54A及び構造体54Bが一体的に形成されているものとしたが、筒体54A及び構造体54Bは別体であってもよい。
【0031】
後シールド部材55は、矩形断面を有する筒体であり、前シールド部材54の後端部に嵌め込み可能な大きさを有する。後シールド部材55の筒壁は、ステンレス鋼、真鍮などの導電性材料により形成され、例えば0.05〜0.1mm程度の厚みを有する。後シールド部材55は、撮像素子51及び駆動回路基板52が前シールド部材54に実装され、複合ケーブル610を構成する各ケーブル61が駆動回路基板52の後面に接続された後、前後方向に適宜の幅だけオーバラップするように前シールド部材54の後端部に外嵌され、接着又は半田付け等の手段により固定される。
【0032】
なお、駆動回路基板52の側面及び後面から後シールド部材55の開口端までの後シールド部材55の内部空間には、絶縁性を有し、熱伝導性が良好な樹脂剤551(充填剤)が充填される。これにより、駆動回路基板52及び複合ケーブル610を構成する各ケーブル61は、後シールド部材55の内部に固定される。
【0033】
以上により、本実施の形態では、ワイヤボンディングを採用した従来のパッケージングより、光軸方向と直交する方向(面方向)のサイズを縮小することができる。また、電磁遮蔽シールド53の内周面に3次元配線層543を設けるので、TAB構造のような銅箔回路の折り曲げが必要なくなり、断線のリスクを軽減することができる。
【0034】
(実施の形態2)
実施の形態2では、駆動回路基板52の一部に面方向に切り欠いた切欠部(半割りスルーホール)を設けた構成について説明する。
【0035】
図5は実施の形態2に係る駆動回路基板52の構成を説明する部分拡大図である。前述したように、前シールド部材54の後端面には撮像素子51に電気的に接続されたランド545が設けられている。実施の形態2における駆動回路基板52は、前シールド部材54の後端面に形成されたランド545の一部を露出させるべく、基板周縁を厚み方向に切り欠いた半割りスルーホール546を備える。
【0036】
実施の形態2では、駆動回路基板52を前シールド部材54に実装した状態にて、前シールド部材54の後端面に形成されたランド545の一部を露出させることが可能であるため、ランド545に複合ケーブル610を構成するケーブル61の一部を接続することができる。これにより、実施の形態2では、駆動回路基板52を経由する必要がない撮像素子51の端子(例えばグランド端子)から直接的に配線を取り出すことが可能となる。また、半割りスルーホール546に半田を塗着し、駆動回路基板52と前シールド部材54とを半田付けする構成としてもよい。
【0037】
(実施の形態3)
実施の形態3では、駆動回路基板52の他の実装例について説明する。
【0038】
図6は実施の形態3に係る撮像ユニット5の拡大断面図である。実施の形態3に係る撮像ユニット5は、対物レンズを含むレンズユニット3との対向面に受光エリア510が形成された撮像素子51、撮像素子51の後方に配置され、撮像素子51を駆動する駆動回路520が実装された駆動回路基板52、撮像素子51及び駆動回路基板52を収容する電磁遮蔽シールド53、バンドパスフィルタ62、並びにカバーガラス63を備える。
【0039】
電磁遮蔽シールド53は、実施の形態1と同様に、前シールド部材54及び後シールド部材55を備える。前シールド部材54の筒体54Aは、駆動回路基板52の面方向のサイズよりも少しだけ大きな内径寸法を有する。実施の形態3では、駆動回路基板52は、駆動回路基板52の側面と筒体54Aの後端部付近の内周面とが対面した状態にて、筒体54Aに実装される。具体的には、駆動回路基板52の後面と筒体54Aの後端面とが半田付けされることにより、駆動回路基板52が筒体54Aに実装される。
【0040】
なお、本実施の形態では、駆動回路520用の配線パターンの一部を駆動回路基板52の後面に形成し、この配線パターンを図に示していない貫通電極を介して駆動回路520に接続すると共に、駆動回路基板52の後面に形成した配線パターンを筒体後端面のランド545に接続してもよい。この場合、駆動回路基板52に実装された駆動回路520と撮像素子51との間には、駆動回路基板52の前面に形成された配線パターン、貫通電極、駆動回路基板52の後面に形成された配線パターン、ランド545、3次元配線層543、及びバンプ544を経由する導通路が確保され、この導通路を介して信号の送受を行うことが可能となる。
【0041】
以上のように、実施の形態3では、駆動回路基板52は、駆動回路基板52の側面と筒体54Aの後端部付近の内周面とが対面した状態にて筒体54Aに実装されているので、電磁遮蔽シールド53の外部から面内方向に働く外力を駆動回路基板52の側面にて受けることが可能となり、電磁遮蔽シールド53の強度を向上させることができる。
【0042】
(実施の形態4)
実施の形態4では、駆動回路基板52の後面に駆動回路が実装された構成について説明する。
【0043】
図7は実施の形態4に係る撮像ユニット5の拡大断面図である。実施の形態4に係る撮像ユニット5は、対物レンズを含むレンズユニット3との対向面に受光エリア510が形成された撮像素子51、撮像素子51の後方に配置され、撮像素子51を駆動する駆動回路520が実装された駆動回路基板52、撮像素子51及び駆動回路基板52を収容する電磁遮蔽シールド53、バンドパスフィルタ62、並びにカバーガラス63を備える。
【0044】
電磁遮蔽シールド53は、実施の形態1と同様に、前シールド部材54及び後シールド部材55を備える。前シールド部材54の筒体54Aは、駆動回路基板52の面方向のサイズよりも少しだけ大きな内径寸法を有する。実施の形態3では、駆動回路基板52は、駆動回路基板52の側面が筒体54Aの後端部付近の内周面に当接した状態にて、筒体54Aに実装される。具体的には、駆動回路基板52の後面と筒体54Aの後端面とが半田付けされることにより、駆動回路基板52が筒体54Aに実装される。
【0045】
本実施の形態では、配線パターンを含む駆動回路520を駆動回路基板52の後面に形成し、この配線パターンを筒体後端面のランド545に接続してもよい。この場合、駆動回路基板52に実装された駆動回路520と撮像素子51との間には、駆動回路基板52の後面に形成された配線パターン、ランド545、3次元配線層543、及びバンプ544を経由する導通路が確保され、この導通路を介して信号の送受を行うことが可能となる。
【0046】
以上のように、実施の形態4では、駆動回路基板52は、駆動回路基板52の側面が筒体54Aの後端部付近の内周面に当接した状態にて筒体54Aに実装されているので、電磁遮蔽シールド53の外部から面内方向に働く外力を駆動回路基板52の側面にて受けることが可能となり、電磁遮蔽シールド53の強度を向上させることができる。
【0047】
また、実施の形態4では、駆動回路基板52の後面側に駆動回路520を実装しているので、熱の発生源である駆動回路520を撮像素子51から遠ざけることができると共に、後シールド部材55の内部空間に充填された樹脂剤551により駆動回路520で発生した熱を効率良く放熱することができる。
【0048】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。