(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0010】
[第1実施形態]
図1、
図2を参照して第1実施形態を説明する。まず
図1を参照して第1実施形態に係るバックル用無線給電システム1(以下では単に「無線給電システム」とも表記する)の構成を説明する。
図1は、第1実施形態に係る無線給電システム1の概略構成を示すブロック図である。
【0011】
図1に示す無線給電システム1は、車両の座席近傍に設置され、座席に設けられるシートベルトのバックルに電力を無線給電すると共に、バックルで取得された情報を車両側がバックルから無線通信により受信する。なお、本実施形態では、「バックルで取得された情報」とはバックル状態信号を含む。「バックル状態信号」とは、例えば、タングがバックルに挿入されているか否か、タング挿入可否を検出する検出部の故障有無などの情報を含む。
【0012】
図1に示すように、無線給電システム1は、車両側装置10とバックル側装置20とを備える。車両側装置10は、バックルに無線給電を行うと共に、バックル側装置20から受信するバックル状態信号に基づいてバックルの状態を検出する。バックル側装置20は、車両側装置10から無線給電された電力をバックルに供給すると共に、バックル状態信号を車両側装置10に送信する。例えば、車両側装置10は車両内に設置され、バックル側装置20はバックルが設けられる座席に設置されている。車両側装置10とバックル側装置20とは、無線で双方向に通信を行う。
【0013】
車両側装置10は、送信部11と、受信部12と、制御部13とを有する。送信部11は、電力をバックル側装置20に送信する。受信部12は、バックル状態信号をバックル側装置20から受信する。送信部11、受信部12によるバックル側装置20との送受信は、共通の単一のアンテナ14を介して行われる。
【0014】
制御部13は、送信部11、受信部12の動作を制御する。また、制御部13は、受信部12により受信されたバックル状態信号に基づいて、バックルの状態を検出する。制御部13は、検出したバックル状態に基づいて、車両の表示部などを用いて乗員にシートベルトの装着状態を提示することができる。
【0015】
バックル側装置20は、電源生成部21と、送信部22と、検出スイッチ23(検出部)とを備える。電源生成部21は、車両側装置10から受信した電力を用いて送信部22やバックル各部へ供給する電源を生成する。例えば、バックルのタング挿入口に照明を設けて、この照明の電源として用いることもできるし、タング挿抜の検出手段としてセンサ類を用いる場合にセンサの電源としても用いることができる。
【0016】
送信部22は、バックル状態信号を車両側装置10に送信する。送信部22は、検出スイッチ23の開閉に応じてオン/オフの信号を送信する。検出スイッチ23は、バックルにタングが挿入されたときにオン状態となり、バックルにタングが挿入されていないときにオフ状態となる。つまり、バックル状態信号のオン/オフは、タングがバックルに装着されているか否かを示す情報である。電源生成部21、送信部22による車両側装置10との送受信は、共通の単一のアンテナ24を介して行われる。
【0017】
次に
図2を参照して本実施形態に係る無線給電システム1の動作について説明する。
図2は、第1実施形態に係る無線給電システム1の動作を示すシーケンス図である。
【0018】
まず車両側装置10の送信部11は、無線給電の開始条件(例えばエンジンスタート、ドア開など)をクリアすると(S101)、所定タイミングで電力を送信(送電)する(S102)。電力の送信タイミングは、例えば周期的なタイミングを適宜設定することができる。
【0019】
次に、バックル側装置20では、電源生成部21が電力を受信(受電)し(S201)、電力を送信部22に供給する。第1実施形態では、この電力供給が、送信部22によるバックル状態信号の送信を行うためのトリガとなる。
【0020】
送信部22は、まず検出スイッチ23の故障有無を確認する(S202)。検出スイッチ23の故障が無い場合(S202のNo)にはステップS203に進む。検出スイッチ23に故障が有る場合(S202のYes)には、バックル状態信号の内容を「故障」とする(S206)。
【0021】
ステップS202にて検出スイッチ23に故障が無いと判定した場合、検出スイッチ23の出力を取得する(S203)。スイッチの出力がONの場合には、バックル状態信号の内容を「ON」とする(S204)。スイッチの出力がOFFの場合には、バックル状態信号の内容を「OFF」とする(S205)。なお、検出スイッチ23が正常に動作している場合、タングがバックルに挿入されている状態ではスイッチ出力はONとなり、タングがバックルから抜かれている状態ではスイッチ出力はOFFとなる。
【0022】
送信部22は、ステップS204、S205、S206のいずれかの処理の後、バックル状態信号を車両側装置10に送信する(S207)。
【0023】
次に、車両側装置10では、受信部12がバックル状態信号を受信して(S103)、制御部13に出力する。
【0024】
制御部13は、受信したバックル状態信号に基づきシートベルト装着状態を判定する(S104)。例えば、バックル状態信号がONの場合には、タングがバックルに挿入されている状態であり、乗員がシートベルトを装着していると判定する。バックル状態信号がOFFの場合には、タングがバックルから抜かれている状態であり、乗員がシートベルトを装着していないと判定する。また、バックル状態信号が「故障」の場合には、タングの挿抜状態を判定する要素に何らかの故障が発生しているものを判定する。
【0025】
制御部13は、ステップS104の判定結果に基づいてシートベルト装着状態を乗員に通知する(S105)。例えばシートベルト装着有無や、バックル検出機能の故障有無の上方を車両のメーターパネルに表示したり、音で報知することができる。
【0026】
送信部11は、終了条件(例えばエンジン停止など)を満たしているか否かを判定する(S106)。終了条件を満たしていない場合(S106のNO)にはステップS102に戻り、再度所定タイミングで電力送信を行う。
【0027】
次に第1実施形態に係る無線給電システム1の効果を説明する。無線給電システム1において、車両側装置10は、バックル側装置20へ電力を送信し、かつ、バックル側装置20からバックル状態信号を受信する単一のアンテナ14を有する。バックル側装置20は、車両側装置10によるバックル状態信号の受信タイミングが電力の送信タイミングと競合しないようバックル状態信号を車両側装置10に送信する。より詳細には、バックル側装置20は、車両側装置10から電力を受信したことをトリガとしてバックル状態信号を車両側装置10に送信する。
【0028】
従来の無線給電と無線情報通信とを併用するシステム(例えば特許文献1)では、無線給電と無線情報通信とを別系統を用いて実施するのが一般的である。無線給電技術は、汎用性を高めるために、他の無線通信システムへの影響を与えないような周波数帯を選ぶべきという考え方が主流だからである(例えば「庄木裕樹、"ワイヤレス電力伝送技術の利用周波数の国際協調、制度化、標準化に関する最新動向"、ITUジャーナル、2014年2月、Vol.44、No.2、P.32〜35」)。
【0029】
これに対して第1実施形態の無線給電システム1では、上記構成により、車両側装置10は、電力送電と、バックル状態信号の受信とを異なるタイミングで行うことができるので、両者の処理を別系統に分ける必要がなく、単一のアンテナ24を用いて同一系統で行うことが可能となる。これにより、車両側装置10が複数のアンテナを持つ必要がなくなり、システム構成を簡素化できる。また、バックル側装置20は、車両側装置10からの電力受信を情報送信のトリガとして用いるので、車両側装置10は情報を要求するための要求信号を別途送信することが不要であり、バックル状態信号の送受信の構成をさらに簡素化できる。
【0030】
また、第1実施形態の無線給電システム1では、バックル状態信号は、タングがバックルに装着されているか否かの情報に加えて、検出スイッチ23の故障有無の情報も含む。これにより、車両側装置10がバックル状態信号に基づいてタング挿抜だけでなく、タング挿抜を検出する検出部の故障も判定できるので、車両側装置10によるバックルの状態の検出をより一層精度良く行うことができる。
【0031】
[第2実施形態]
図3、
図4を参照して第2実施形態を説明する。
図3は、第2実施形態に係る無線給電システム1Aの概略構成を示すブロック図である。
図3に示すように、無線給電システム1Aでは、車両側装置10Aが、バックル側装置20Aへ電力を送信するのに応じて、バックル状態信号の送信をバックル側装置20Aに要求する「状態要求信号」をバックル側装置20Aへ送信する点、バックル側装置20Aが、車両側装置10Aから要求信号を受信するのをトリガとしてバックル状態信号を車両側装置10Aに送信する点で、第1実施形態の無線給電システムと異なる。
【0032】
図3に示すように、車両側装置10Aでは、制御部13Aが送信部11Aに状態要求信号を出力し、送信部11Aは電力送信と重ならないタイミングで状態要求信号を送信する。状態要求信号の送信タイミングは、例えば電力を送信した直後のタイミングである。
【0033】
バックル側装置20Aでは、送信部22Aは、車両側装置10Aから状態要求信号を受信すると、バックル状態信号を送信する。
【0034】
図4は、第2実施形態に係る無線給電システム1Aの動作を示すシーケンス図である。
図4の各ステップのうち
図2と同一符号のものは、
図2を参照して説明した第1実施形態の動作と同様である。ここでは第1実施形態との相違点のみを説明する。
【0035】
車両側装置10Aにおいて、ステップS102にて送信部11Aが所定タイミングで電力を送信(送電)した後に、送信部11Aはバックルの状態要求信号もバックル側装置20Aに送信する(S102A)。
【0036】
バックル側装置20Aでは、送信部22Aは、状態要求信号を受信すると(S201A)、これをトリガとしてステップS202〜S207の上述したバックル状態信号の送信処理を行う。
【0037】
なお、状態要求信号の送信タイミングは、電力送電のタイミングに対応すればよく、例えば電力送電より前のタイミングで状態要求信号を送信する構成でもよい。
【0038】
このように、第2実施形態の無線給電システム1Aでは、バックル側装置20Aが車両側装置10Aから状態要求信号を受信したことをトリガとしてバックル状態信号を車両側装置10Aに送信する。状態要求信号をトリガとして用いることにより、バックル状態信号の送信タイミングの設定の自由度を向上できる。例えば、車両側装置10Aによる状態要求信号の送信タイミングを電力送電後の所定時間経過後とすれば、バックル側装置20Aがバックル状態信号を送信するタイミングを遅らせることができるし、状態要求信号の送信タイミングを電力送電より前にすれば、バックル側装置20Aがバックル状態信号を送信するタイミングを早くすることができる。
【0039】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【0040】
上記実施形態では、検出スイッチ23に故障がある場合には、バックル側装置20の送信部22が故障発生の旨を車両側装置10に送信する構成を例示したが、この代わりに、故障発生時にはバックル状態信号を送信しない構成としてもよい。この場合、車両側装置10は、バックル側装置20からバックル状態信号を所定期間に受信しない場合にスイッチ故障発生と判定することができる。
【0041】
上記実施形態では、バックル側装置20,20Aが車両側装置10,10Aに送信する情報として、タングがバックルに挿入されているか否かを示すバックル状態信号を例示したが、これ以外のバックルで取得された他の情報としてもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、タングがバックルに挿入されているか否かを検出する検出部として検出スイッチ23を適用する構成を例示したが、たとえば光センサ、ホールスイッチなどの他の要素を適用することもできる。