(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6956587
(24)【登録日】2021年10月7日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20211021BHJP
F21V 23/00 20150101ALI20211021BHJP
F21V 25/00 20060101ALI20211021BHJP
F21W 102/00 20180101ALN20211021BHJP
F21W 131/10 20060101ALN20211021BHJP
F21W 131/406 20060101ALN20211021BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20211021BHJP
【FI】
F21S2/00 340
F21V23/00 113
F21V23/00 117
F21V25/00
F21W102:00
F21W131:10
F21W131:406
F21Y115:30
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-204332(P2017-204332)
(22)【出願日】2017年10月23日
(65)【公開番号】特開2018-85330(P2018-85330A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2020年10月23日
(31)【優先権主張番号】10 2016 220 928.0
(32)【優先日】2016年10月25日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512288684
【氏名又は名称】オスラム ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】OSRAM GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ダニエルズ
【審査官】
下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−235323(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0116520(US,A1)
【文献】
特開2015−065144(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/035636(WO,A1)
【文献】
中国特許出願公開第106051576(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21V 23/00
F21V 25/00
F21V 9/00
F21W 102/00
F21W 131/10
F21W 131/406
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の一次光ビーム(PS1)を発生する第1の半導体光源(2)と、
第2の一次光ビーム(PS2)を発生する第2の半導体光源(3)と、
一次光(P1,P2)から二次光(S)へ少なくとも部分的に変換する蛍光体ボリューム(7)と、
前記第1の一次光ビーム(PS1)を前記蛍光体ボリューム(7)上に偏向させる第1の偏向素子(10a)と、
前記第2の一次光ビーム(PS2)を前記蛍光体ボリューム(7)上に偏向させる第2の偏向素子(10b)と、
少なくとも前記一次光(P1,P2)に対して感応性のある第1の光センサ(11,12)と、
第2の光センサ(13,14)と、を備えた照明装置(1)であって、
前記第1の偏向素子(10a)は、前記第1の一次光ビーム(PS1)に対して部分透過性であり、
前記第1の光センサ(11,12)には、前記第1の偏向素子(10a)を透過した、前記一次光ビーム(PS1)の成分が照射可能であり、
前記第2の光センサ(13,14)には、前記蛍光体ボリューム(7)によって放射可能な光(P1,P2,S)が照射可能である、照明装置(1)。
【請求項2】
前記第2の偏向素子(10b)は、前記蛍光体ボリューム(7)によって放射可能な前記光(P1,P2,S)に対して少なくとも部分透過性であり、前記第2の光センサ(14)には、前記蛍光体ボリューム(7)によって放射可能でかつ前記第2の偏向素子(10b)を透過可能である前記光(P1,P2,S)が照射可能である、請求項1記載の照明装置(1)。
【請求項3】
前記第2の偏向素子(10b)は、前記第2の一次光ビーム(PS2)に対して部分透過性であり、かつ前記蛍光体ボリューム(7)によって放射可能な前記光(P1,P2,S)に対して少なくとも部分透過性であり、前記照明装置(1)は、前記第2の偏向素子(10b)を透過した、前記第2の一次光ビーム(PS2)の成分が照射可能である、さらなる第1の光センサ(12)を備える、請求項1または2記載の照明装置(1)。
【請求項4】
前記第1の偏向素子(10a)は、前記蛍光体ボリューム(7)によって放射可能な前記光(P1,P2,S)に対して少なくとも部分透過性であり、前記照明装置(1)は、前記第1の偏向素子(10a)を透過した、前記蛍光体ボリューム(7)の前記光(P1,P2,S)が照射可能である、さらなる第2の光センサ(13)を備える、請求項1から3までのいずれか1項記載の照明装置(1)。
【請求項5】
前記照明装置(1)は、前記第1の偏向素子(10a)および/または前記第2の偏向素子(10b)において反射され、かつ前記蛍光体ボリューム(7)によって放射可能な前記光(P1,P2,S)が照射可能である、少なくとも1つの第2の光センサ(13)を備える、請求項1から4までのいずれか1項記載の照明装置(1)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第2の光センサ(13,14)は、前記一次光(P1,P2)に対して感応性があり、かつ前記一次光ビーム(PS1,PS2)の光路内で前記蛍光体ボリューム(7)の下流に存在する、請求項1から5までのいずれか1項記載の照明装置(1)。
【請求項7】
前記照明装置(1)は、前記蛍光体ボリューム(7)の温度をセンシングする温度センサ(9)を備えている、請求項1から6までのいずれか1項記載の照明装置(1)。
【請求項8】
前記蛍光体ボリューム(7)は、反射性支持体(8)上に載置される、請求項1から7までのいずれか1項記載の照明装置(1)。
【請求項9】
前記第1の半導体光源(2)および前記第2の半導体光源(3)は、前記蛍光体ボリューム(7)に対して対称に配向されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の照明装置(1)。
【請求項10】
前記第1の半導体光源(2)および前記第2の半導体光源(3)は、個別に活性化可能である、請求項1から9までのいずれか1項記載の照明装置(1)。
【請求項11】
前記第1の半導体光源(2)および前記第2の半導体光源(3)は、異なる波長の一次光(P1,P2)を発する、請求項1から10までのいずれか1項記載の照明装置(1)。
【請求項12】
前記第1の一次光ビーム(PS1)および前記第2の一次光ビーム(PS2)は、異なる輪郭形状を有する、請求項1から11までのいずれか1項記載の照明装置(1)。
【請求項13】
前記照明装置(1)は、さらに、前記光センサ(11,12,13,14)に接続されたデータ処理ユニット(15)を有し、該データ処理ユニット(15)は、少なくとも1つの前記第1の光センサ(11,12)および少なくとも1つの前記第2の光センサ(13,14)のセンサ信号を、前記蛍光体ボリューム(7)の損傷の有無に関して評価するように構成されている、請求項1から12までのいずれか1項記載の照明装置(1)。
【請求項14】
前記照明装置(1)は、投光器(SW)かまたは投光器(SW)の一部である、請求項1から13までのいずれか1項記載の照明装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の一次光ビームを発生する第1の半導体光源と、第2の一次光ビームを発生する第2の半導体光源と、一次光から二次光へ少なくとも部分的に変換する蛍光体ボリュームと、第1の一次光ビームを蛍光体ボリューム上に偏向させる第1の偏向素子と、第2の一次光ビームを蛍光体ボリューム上に偏向させる第2の偏向素子と、第1の光センサと、第2の光センサと、を有している、照明装置に関している。本発明は特に、例えば車両用、舞台照明用、効果照明用、屋外照明用などの投光器に適用可能である。
【0002】
蛍光体ボリュームが、レーザから発せられる青色一次光を用いて照射される、いわゆるLARP(Laser Activated Remote Phosphor)装置は公知である。この蛍光体ボリュームは、青色一次光の一部を、黄色二次光に変換しており、この変換によって、高輝度の青色/黄色有効光もしくは白色有効光が生成される。そのようなLARP装置は、自動車用ヘッドライトへの適用が公知である。
【0003】
自動車分野における高い安全基準に基づいて、波長変換が所期のように実行可能であるかどうか、または直接的な青色レーザ光がLARP装置から出射される可能性があるかどうかが確実に監視されなければならない。これらが当て嵌まる場合には、LARP装置は、減光可能であるか、または完全にスイッチオフ可能である。
【0004】
本発明の課題は、従来技術における欠点を少なくとも部分的に克服し、具体的には、蛍光体ボリュームの不具合を検出する特に確実な手段を提供することである。
【0005】
前記課題は、本発明により、独立請求項に記載の特徴によって解決される。好ましい実施形態は、特に従属請求項から明らかとなる。
【0006】
前記課題は、第1の一次光ビームを発生する第1の半導体光源と、第2の一次光ビームを発生する第2の半導体光源と、一次光から二次光へ少なくとも部分的に変換する蛍光体ボリュームと、第1の一次光ビームを蛍光体ボリューム上に偏向させる第1の偏向素子と、第2の一次光ビームを蛍光体ボリューム上に偏向させる第2の偏向素子と、少なくとも一次光に対して感応性のある第1の光センサと、第2の光センサと、を備え、ここで第1の偏向素子は、少なくとも一次光ビームに対して部分透過性であり、第1の光センサには、第1の偏向素子を透過した、第1の一次光ビームの成分が照射可能であり、第2の光センサには、前記蛍光体ボリュームによって放射可能な光が照射可能である、照明装置によって解決される。
【0007】
この照明装置は、それが、2つの光センサによって高い検出信頼性が可能になるという利点を有する。さらに部分的冗長性が得られ、それによって、光センサの1つが故障した場合でも、他のセンサを用いてまだなお蛍光体ボリュームの不具合を検出する可能性が残される。また、そのような照明装置は、コンパクトにかつ高い信頼性のもとで実現可能である。同じ蛍光体ボリュームの照射のために複数の半導体光源を投入することは、それらの動作電流が低下することにより、それらの寿命が延びるというさらなる利点をもたらす。また、それによって、故障にかかわる信頼性も高まる。なぜなら、1つの半導体光源が故障しても、他の半導体光源がこの故障を少なくとも部分的に補償できるからである。その上さらに、それによって複数の光センサが別個にテストおよび/または較正可能になる。
【0008】
半導体光源は、少なくとも1つの半導体レーザおよび/または少なくとも1つの発光ダイオードを有することができる。半導体光源は、関連する一次光ビームのビーム誘導および/またはビーム成形のために、少なくとも1つの光学系、例えば少なくとも1つのレンズ、例えばフレネルレンズ、少なくとも1つのコリメータなどが光学的に下流に接続されていてもよい。
【0009】
一次光ビームは、関連する半導体光源によって放射可能な各一次光を用いて生成される。レーザの場合には、一次光はポンピング光とも称され得る。この一次光は、例えば紫外線または青色の一次光であってもよい。
【0010】
蛍光体ボリュームまたはコンバータボリュームは、入射した一次光を、少なくとも部分的に、波長の異なる二次光に変換もしくはコンバートするのに適した少なくとも1つの蛍光体を含んでいる。複数の蛍光体が存在する場合、それらは相互に異なる波長の二次光を生成することができる。この二次光の波長は、一次光の波長より長くてもよいし(いわゆる「ダウンコンバート」)、または一次光の波長より短くてもよい(いわゆるアップコンバート)。例えば青色一次光は、蛍光体を用いて緑色、黄色、橙色または赤色の二次光に変換することができる。部分的な波長変換または波長コンバートのみの場合、蛍光体ボリュームからは、二次光と未変換一次光とからなる混合光が放射される。この混合光は、有効光として用いることができる。例えば、青色の未変換一次光と黄色の二次光とからなる混合光からは白色有効光が生成できる。しかしながら、一次光がもはや存在しないか、または有効光中の無視できる割合でのみ存在する完全な変換も可能である。変換率は、例えば蛍光体の厚さおよび/または蛍光体の蛍光濃度に依存する。複数の蛍光体が存在する場合、一次光からは異なるスペクトル組成の二次光成分を、例えば黄色および赤色の二次光を生成することができる。例えば赤色二次光は、有効光をより暖かい色合いにするために、例えばいわゆる「暖色系白」にするために用いてもよい。複数の蛍光体が存在する場合、少なくとも1つの蛍光体は、二次光の再度の波長変換に、例えば緑色二次光から赤色二次光への波長変換に適し得る。このような二次光から再度波長変換された光は、「三次光」とも称され得る。
【0011】
蛍光体は、光透過性のマトリックス材料内に分散して埋め込まれた蛍光体粒子、例えば粉末粒子を含むことができる。マトリックス材料は、例えば、シリコン、エポキシ樹脂またはガラスを含むことができる。蛍光体はまた、一体型の波長変換体、例えばYAG:Ce,LuAG,LiEuMo
2O
8またはLi
3Ba
2Eu
3(MoO
4)
8のような波長変換セラミック(コンバータセラミック)からなっていてもよい。蛍光体は、小板状の蛍光体であってもよい。
【0012】
第1の偏向素子は、部分透過性の偏向ミラー、例えば銀コーティングされたミラーまたはダイクロイックミラーであってもよい。第1の偏向素子は、さらなる発展形態では、一次光に対してのみ部分透過性であってもよい(および二次光に対しては不透過性であってもよい)。それにより、第1の光センサが一次光の強度を特に正確に検出できるようになる利点が達成される。なぜなら二次光による障害成分が第1の光センサに入射しないからである。そのため、この発展形態は、広帯域な感応性のある簡素な光センサによって、さらなる欠点なしで実現することも可能である。第1の偏向素子は、別の発展形態では、一次光に対して部分透過性でかつ二次光に対して部分透過性または完全透過性であってもよい。このことは、偏向素子が特に簡単に構成可能であるという利点をもたらす。
【0013】
第1の光センサは、一次光に対してのみ感応性のある(および二次光に対して感応性のない)光センサ、例えば輝度センサであってもよい。第1の光センサは、代替的に、一次光に対しても二次光に対しても感応性のある光センサであってもよい。第1の光センサは、第1の偏向素子を透過した一次光の少なくとも一部によって(すなわち一次光ビームの透過成分の少なくとも一部によって)照射される。例えば、第1の半導体光源から出射された第1の一次光ビームが偏向素子の前面側に入射すると、第1の一次光ビームは、そこにおいて所定の反射率R(例えば95%以上)で蛍光体ボリュームへ偏向される。一次光ビームのより少ない成分は、所定の透過率(例えば5%以下)で偏向素子を通って走行し、その後、少なくとも部分的に、偏向素子の光学的に下流に配置された第1の光センサへ到達する。
【0014】
第2の光センサは、二次光に対してのみ感応性のある(および一次光に対して感応性のない)光センサ、一次光に対してのみ感応性のある(および二次光に対して感応性のない)光センサ、あるいは一次光に対しても二次光に対しても感応性のある光センサであってもよい。
【0015】
一発展形態では、偏向ミラーが一次光ビームを、大きな入射角で蛍光体ボリューム上に偏向させる。大きな入射角での入射は、好ましくは入射効率を高めることができる。その他に、複数の半導体光源を用いた大きな入射角での入射は、蛍光体ボリュームの特に信頼性の高い冗長的な監視を可能にする。なぜなら、蛍光体ボリュームが欠損しているか損傷している場合に、一次光ビームを非常に簡単な方法で、妨害されることなく直接的に放出しないという手段が開かれるからである。
【0016】
さらなる発展形態では、一次光ビームもしくはその最大光度の主軸は、所定のブルースター角のもとで蛍光体ボリューム上に入射する。このことは、入射効率を特に大幅に高め得る。このブルースター角は、特に45°〜65°の間、例えば60°〜62°の間である。
【0017】
その他に一発展形態では、偏向素子が、蛍光体ボリュームによって放射される有効光の最大光度の主軸に対して少なくとも45°の角度をなす空間領域に配置されている。これにより、偏向素子が、蛍光体ボリュームによって放射された全有効光束のごく僅かな成分のみを阻止するという利点が達成される。特に開口角度は、ほぼブルースター角に相応し得る。そのため45°〜65°の範囲が一般的に好ましい。
【0018】
偏向ミラーは、より複雑なガラス製光導波路部品に組み込まれていてもよく、関連する一次光ビームの方向調整のために使用されていてもよく、かつ/または設計要素として構成されていてもよい(例えば金属フラップまたはリフレクタなどに組み込まれていてもよい)。
【0019】
第2の光センサに、蛍光体ボリュームによって放射可能な光が照射可能であることには、第2の光センサに、二次光および/または未変換一次光が照射可能であることも含まれ得る。
【0020】
一実施形態では、第2の偏向素子は、蛍光体ボリュームによって放射可能な光に対して少なくとも部分透過性である。この場合第2の偏向素子は、さらなる発展形態では、二次光に対してのみ透過性であってもよく、詳細には部分透過性かまたは完全透過性(透明)であってもよいが、一次光に対しては不透過性であり得る。それにより、第2の光センサは二次光の強度を特に正確に検出することができるという利点が達成される。なぜなら、未変換一次光によるノイズ成分が第1の光センサに入射しないからである。第2の偏向素子は、さらなる発展形態において、二次光に対して透過性でかつ一次光に対して部分透過性であってもよい。このことは、第2の光センサが、蛍光体ボリュームの損傷の際に、一次光の特に強い光束を得ることができるという利点をもたらす。このことは、特に信頼性の高い欠陥検出を可能にする。第2の偏向素子は、さらなる発展形態では、二次光に対して不透過性でかつ一次光に対して部分透過性であってもよい。ここでも、損傷の場合において、一次光の特に強い光束が検出できる。
【0021】
付加的に、第2の光センサには、蛍光体ボリュームによって放射可能でかつ第2の偏向素子を透過する光(二次光および/または一次光)が照射可能である。それにより、第2の光センサは、蛍光体ボリュームによって放射される光に関して、第2の偏向素子の下流に存在する。これにより、蛍光体ボリュームによって放射された有効光のシャドーイングを特に僅かに抑えることができる。
【0022】
さらなる実施形態では、第2の偏向素子は、第2の一次光ビームに対して部分透過性でかつ蛍光体ボリュームによって放射可能な光に対して少なくとも部分透過性であり、照明装置は、さらなる第1の光センサを備え、このさらなる第1の光センサには、第2の一次光ビームの、第2の偏向素子を透過する成分が照射可能である。それにより、好ましくは、2つの一次光ビームの輝度または照度を相互に依存することなく高い信頼性のもとで測定することが可能になる。このことは特に利点となる。なぜなら、それらの輝度が、製造に起因してまたは所期の設定調整によって、相互に著しく偏差させることができるからである。またそれにより、一次光ビームの輝度または照度が、選択的に活性化もしくは非活性化させた半導体光源のもとで測定可能である。
【0023】
さらなる実施形態では、第1の偏向素子は、第1の一次光ビームに対して部分透過性でかつ蛍光体ボリュームによって放射可能な光に対して少なくとも部分透過性であり、照明装置は、さらなる第2の光センサを備え、このさらなる第2の光センサには、蛍光体ボリュームの、第1の偏向素子を透過する光が照射可能である。これにより、蛍光体ボリュームによって放射された光のさらに信頼性の高い検出が可能になる。特に、蛍光体ボリュームの損傷は、相互に依存することなく2回検出することができる。詳細には第1の光センサと第2の光センサとを介して、およびそれらに依存することなく、さらなる第1の光センサとさらなる第2の光センサとを介して、検出することができる。
【0024】
代替的または付加的な実施形態では、照明装置は、少なくとも1つの(場合によってはさらに別の)第2の光センサを備え、この第2の光センサには、蛍光体ボリュームによって放射可能な、第1の偏向素子および/または第2の偏向素子において反射された光が照射可能である。このことは、当該第2の光センサによって検出される有効光もしくは有効光成分の輝度または照度が、関連する偏向素子の下流に配置した場合よりも高くなるという利点をもたらし得る。つまり第2の光センサを用いることによって、第1の偏向素子を透過した有効光の成分を、または有効光もしくは有効光成分(一次光、二次光)の第1の偏向素子によって反射された成分を、代替的または一緒に検出することができる。
【0025】
さらに一実施形態では、少なくとも1つの第2の光センサが一次光に対しても感応性があり、かつ一次光ビームの光路内で蛍光体ボリュームの下流に存在している。これにより、蛍光体ボリュームが損傷した場合に、もはや少なくとも部分的に変換されないかまたは散乱した一次光ビームが第2の光センサに入射する利点が達成される。それにより、蛍光体ボリュームの損傷を特に高い信頼性のもとで検出することができる、特に強いセンサ信号を生成することができるようになる。
【0026】
さらに一実施形態では、第1の半導体光源と第2の半導体光源とが蛍光体ボリュームに対して対称に配向されている。このことは、特にコンパクトな配置構成を可能にする。例えば、これらの半導体光源は、蛍光体ボリュームに対して鏡面対称に、または蛍光体ボリュームに対して約180°回転対称に配置されていてもよい。これらは対向的配置構成とも称される。
【0027】
一発展形態では、2つの第1の光センサと2つの第2の光センサとが存在している場合、これらは蛍光体ボリュームに対して対称的に配向されており、特に対向的配置構成に置かれている。
【0028】
さらに一発展形態では、第1の半導体光源と第2の半導体光源とが相互に平行に配向されている。
【0029】
さらに一発展形態では、一次光ビームの最大光度の主軸と、蛍光体ボリュームによって放射可能な有効光の最大光度の主軸とが、相互に平行に配置されている。
【0030】
さらに一発展形態では、照明装置は、それぞれ2つの半導体光源、2つの第1の光センサ、2つの第2の光センサ、および2つの偏向素子からなる相互に対向する配置構成の複数のセットを有している。これらの複数のセットは、特に、同じ蛍光体ボリュームを使用する。特にこれらのセットの構成要素は、蛍光体ボリュームの周りで等間隔に角度を付けられている。例えば、2つのセット(全部で4つの半導体光源など)の場合には、それらの構成要素は、軸を中心に蛍光体ボリュームの周りで90°回転させることができ、3つのセットの場合には、60°回転させることができる、等である。
【0031】
その他に一実施形態では、第1の半導体光源と第2の半導体光源とが個別に活性化可能である。このことは、有効光の放射パターンの形成において特に高い柔軟性を可能にする。
【0032】
有効光の放射パターンの形成において、特に高い柔軟性は、第1の一次光ビームと第2の一次光ビームとが異なる輪郭形状および/または輪郭サイズを有する構成によっても達成され得る。
【0033】
一発展形態では、照明装置は、蛍光体ボリューム上で生成される形状および/または照明スポットを変更するように構成されている。このことは、例えば、一次光ビームの輪郭形状および/または輪郭サイズを可変にすることによって実現可能である。代替的または付加的に、一次光ビームによって蛍光体ボリューム上で生成される照明スポットは、厳密には一致していない。そのため、放射パターンは、半導体光源の異なる活性化によってその形状を変更することができる。
【0034】
半導体光源は、パルス化および/または振幅変調されて動作可能であってもよい。一発展形態では、異なる半導体光源は、例えば異なるパルス特性および/または振幅特性を伴い、異なって動作可能かまたは異なって動作される。例えば、異なる半導体光源は、例えば各パルス動作の設定調整によって、時間的に順次連続してまたは重畳して動作されてもよい。特に、異なる半導体光源は、交互にまたは断続的に動作させることができる。
【0035】
また一発展形態では、半導体光源によって発せられる一次光ビームの出力は、変倍可能または減光可能であり、特に個別に変倍可能である。
【0036】
さらに一実施形態では、照明装置は、蛍光体ボリュームの温度を感知または監視するための温度センサを有する。この温度センサは、好ましくは、蛍光体ボリュームの過熱、特に熱破壊を防止するために使用することができる。
【0037】
またさらに一実施形態では、蛍光体ボリュームは、反射型の支持体上に載置されている。この反射型の配置構成は、基本的な使用も可能な伝達型の配置構成よりも、熱的にかつ安全技術的に著しい利点を有している。蛍光体ボリューム内で変換された熱は、例えば伝達型の配置構成の場合よりもはるかに効果的に放出できる。
【0038】
付加的に、蛍光体ボリュームの温度監視は、著しく簡単にかつ直接的に実現され得る。特に良好な熱放出のために、支持体は金属またはセラミックからなっていてもよい。特に高い光出力のために、蛍光体ボリュームに面する支持体側が鏡面化される。蛍光体ボリュームとは反対側の支持体側には、温度センサが配置されていてもよい。
【0039】
その他のさらに一実施形態では、第1の半導体光源と第2の半導体光源とが、異なる波長もしくはポンピング波長の一次光(ビーム)を発する。このことは、関連する一次光ビームおよび/または蛍光体ボリュームによって放射される一次光が区別可能になるという利点をもたらす。このことも、エラー検出の際の利点をもたらし得る。また好ましくは、蛍光体ボリュームの励起は、異なる吸収率および/または異なる効率を用いて行うことができる。このことは、飽和を低減することができる。異なる波長は、例えば、対応するエッジフィルタを有する光センサによって区別することができる。例えば、異なる波長は、例えば445nm、460nmまたは473nmの青色光に相応し得る。しかしながら、第1の半導体光源および第2の半導体光源は、同じスペクトル組成、特に同じ波長の一次光(ビーム)も放射することができる。
【0040】
さらに一実施形態では、照明装置が、光センサと接続されたデータ処理ユニットを有し、該データ処理ユニットは、少なくとも1つの第1の光センサおよび少なくとも1つの第2の光センサのセンサ信号を、蛍光体ボリュームの損傷の有無に関して評価するように構成されている。例えば蛍光体ボリュームが存在しかつ損傷していない場合、そこから放出された光は第2の光センサに入射させることができる。この光は、有効光(すなわち二次光と未変換一次光との混合光)かまたはその成分(例えば一次光もしくは二次光)のみであり得る。蛍光体ボリュームが減少すると、この光束は、第2の光センサがその場合に現れる一次光ビームの光路内に存在していなければ、同じ一次光ビームのもとで著しく小さくなる可能性がある。また代替的に、この光束は、第2の光センサがその場合に現れる一次光ビームの光路内に存在しかつ一次光に対して感応性がある場合には、同じ一次光ビームのもとで著しく大きくなる可能性がある。そのため、第1の光センサのセンサ信号の強度に正規化された、第2の光センサのセンサ信号の変化の強度からは、蛍光体ボリュームの損傷の有無を推論することが可能である。この損傷には、例えば亀裂の形成、蛍光体ボリュームの一部の除去または完全な除去が含まれ得る。
【0041】
さらにまた一実施形態では、照明装置は、投光器または投光器の一部(例えば光生成モジュール)である。ここでは、高輝度が特に有用である。投光器は、車両用ヘッドランプ、舞台照明用の投光器、屋外照明用の投光器、効果照明用の投光器などであってもよい。車両は、自動車(例えば自家用車などの自動車、貨物自動車、バスなど、または二輪車)鉄道、船舶(例えばボートまたは船)または航空機(例えば飛行機またはヘリコプター)であってもよい。
【0042】
本発明の上述した特性、特徴および利点ならびにそれらを達成する方法は、図面と関連してより詳細に説明される実施例の以下の概略的な説明と関連してより明瞭になり、より明確に理解されるようになる。この場合明瞭化の理由から、同一のまたは同等に作用する要素には、同じ参照符号が付されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【0044】
照明装置1は、投光器SWの1つのモジュールであってもよい。この照明装置1は、第1の一次光ビームPS1を生成する第1のレーザダイオード2の形態の第1の半導体光源を有する。この第1の一次光ビームPS1は、z方向zに放射され、青色一次光P1からなる。照明装置1は、第2の一次光ビームPS2を生成する第2のレーザダイオード3の形態の第2の半導体光源も有する(示唆のみ)。この第2の一次光ビームPS2も同様にz方向zに放射され、青色一次光P2からなっている。これらの2つの一次光ビームPS1,PS2のスペクトル特性、例えば優勢波長は、同じであっても、または異なっていてもよい。またこれらの2つの一次光ビームPS1,PS2の輪郭形状および/または輪郭サイズも、同じであってもまたは異なっていてもよい。
【0045】
2つのレーザダイオード2,3には、それぞれ、一次光ビームPS1もしくはPS2を、例えばセラミック蛍光体小板7の形態の蛍光体ボリューム上に集束させるために、ここでは例示的に2つの光学的に直列に接続されたレンズ5,6を備えた光学系4が後置接続されている。この蛍光体小板7は、金属からなる反射性支持体8上に載置されている。この支持体8は、蛍光体小板7に面する表面では鏡面化されており、蛍光体小板7とは反対側の表面には温度センサ9を備えることができる。蛍光体小板7は、入射した一次光P1,P2を部分的に二次光Sに変換できる状況、例えば青色一次光P1,P2を黄色二次光Sに変換できる状況に置かれている。蛍光体小板7によって有効光として放射された混合光P1,P2,Sの主軸HNは、蛍光体小板7の表面に対して垂直であり、それとともにここでは同様にz軸に対して平行である。
【0046】
レーザダイオード2および3は、蛍光体小板7に対して側方にずらされ、蛍光体小板7を直接照射しないので、部分透過性の偏向ミラー10aもしくは10bの形態の2つの偏向素子が、各一次光ビームPS1もしくはPS2を蛍光体小板7上に偏向させるために用いられている。これらの偏向ミラー10a,10bは、特に一次光P1,P2に対して部分透過性でかつ二次光Sに対して部分透過性かまたは完全透過性である。ここではこれらの偏向ミラー10a,10bは、一次光ビームPS1,PS2が所定のブルースター角θ
Bで蛍光体小板7上に入射するように配向されている。
【0047】
偏向ミラー10a,10bは、主軸HNの周りで45°の開口角度を伴って蛍光体小板7に当てられる円錐(図示せず)の外側に位置する空間領域内に存在している。特にこの開口角度はほぼブルースター角に相応し得る。そのため45°〜65°の範囲が一般的に好ましい。
【0048】
さらに照明装置1は、少なくとも一次光P1に対して感応性のある第1の光センサ11と、少なくとも一次光P2に対して感応性のあるさらなる第1の光センサ12と、第2の光センサ13と、さらなる第2の光センサ14とを有している。光センサ13および14は、一次光P1および/またはP2に対して、または二次光Sに対して、感応性があってもよいし、あるいは一次光P1,P2に対して、かつ二次光Sに対して、感応性があってもよい。これらの光センサ11〜14は、例えばフォトダイオードであってもよいし、当該フォトダイオードの上流に場合によっては配置され得る波長依存性のフィルタ(例えばエッジフィルタ)を有するものであってもよい。
【0049】
第1の光センサ11,12は、入射した一次光ビームPS1,PS2に関して、各偏向ミラー10aもしくは10bの下流に配置されている。入射した一次光ビームPS1,PS2の最大の成分(例えば95%超)が、偏向ミラー10aもしくは10bによって、蛍光体小板7上に偏向されるのに対して、少ない成分(例えば5%以下)は、偏向ミラー10aもしくは10bを透過し、光センサ11もしくは12を照射する。
【0050】
第2の光センサ13,14は、蛍光体小板7によって放射された有効光P1,P2,Sに関して、各偏向ミラー10a,10bの下流に配置されている。これらの偏向ミラー10aおよび10bは、二次光Sに対して部分透過性または完全透過性であってもよい。そのため蛍光体小板7によって放射された一次光P1,P2は偏光ミラー10a,10bを部分透過し、二次光Sは偏光ミラー10a,10bを完全透過もしくは部分透過して、光センサ13もしくは14を照射することができる。
【0051】
偏向ミラー10a,10bの下流に存在する第2の光センサ13もしくは14は、それらが、蛍光体小板7の外れるときに、各一次光ビームPS2もしくはPS1の光路内に存在するように位置決めされる。
【0052】
各偏向ミラー10aおよび/または10bの下流の位置に対して代替的または付加的に、第2の光センサ13および/または14を、蛍光体小板7によって放射された有効光P1,P2,Sが偏向ミラー10を用いて反射された箇所に存在させることができる。そのような箇所は、例えばレンズ5とレンズ6との間に存在し得る。このことは、第2の光センサ13に対する例として示されているように、特にコンパクトな構造を可能にする。
【0053】
照明装置はさらに、光センサ11〜14に接続されたデータ処理ユニット15を有し、このデータ処理ユニット15は、光センサ11〜14のセンサ信号を、蛍光体小板7の(その除去も含めた)損傷の有無に関して評価するように構成されている。
【0054】
通常の場合、光センサ11,12は、偏向ミラー10a,10bを透過した一次光ビームPS1,PS2の成分の輝度または光束を検出することができる。偏向ミラー10a,10bが二次光Sに対しても透過性であり、光センサ11および12は二次光Sに対して感応性がある場合には、光センサ11,12の配向を、入射した二次光Sの成分が実際に無視できるように設定調整することができる。光センサ13および14は、一次光P1,P2および二次光Sに対する感度のもとで、偏向ミラー10a,10bを透過した相応の光束を検出する。データ処理ユニット15は、例えば、11と14もしくは12と13からなる一対の光センサのセンサ信号の比を監視することができる。
【0055】
損傷の場合、例えば蛍光体小板7が支持体8から外れるかまたは蛍光体小板7内に亀裂が生じた場合には、そこにおいて二次光Sはまったくもしくは僅かしか生成されず、一次光ビームPS1およびPS2は、障害のない場合よりもよりも高い強度で偏向ミラー10aもしくは10bに入射する。偏向ミラー10a,10bが一次光P1,P2に対して透過性でない場合、かつ/または光センサ13および14が一次光P1,P2に対して感応性がない場合には、光センサ13および14から取り出せるセンサ信号は、顕著に低下し、一次光ビームPS1,PS2の光束も減少することはない。これにより、蛍光体小板7の損傷を検出することができる。偏向ミラー10a,10bが一次光P1,P2に対して透過性であり、かつ光センサ13および14が一次光P1,P2に対して感応性がある場合には、光センサ13および14から取り出せるセンサ信号は、顕著に増加し、一次光ビームPS1,PS2の光束も増加することはない。これによっても蛍光体小板7の損傷を検出することができる。
【0056】
本発明は、細部において上述の実施形態によりさらに詳細に描写され、説明してきたが、本発明はそれらに限定されるものではなく、その他の変形例も、当業者によれば、本発明の保護範囲から逸脱することなく導き出すことが可能である。
【0057】
一般に、単数のみでなく複数にもとれる語句については、それが例えば「厳密に1つ」などの語句によって明示的に除外されていない限り、特に「少なくとも1つ」または「1つ以上」等の意味合いで、単数または複数を意味するものと理解されたい。
【0058】
また数値表示についても、それが明示的に除外されていない限り、厳密に指定された数値には、通常の許容範囲が含まれ得るものと理解されたい。
【符号の説明】
【0059】
1 照明装置
2 第1のレーザダイオード
3 第2のレーザダイオード
4 光学系
5 レンズ
6 レンズ
7 蛍光体小板
8 支持体
9 温度センサ
10a 第1の偏向ミラー
10b 第2の偏向ミラー
11 第1の光センサ
12 第1の光センサ
13 第2の光センサ
14 第2の光センサ
15 データ処理ユニット
HN 主軸
P1 一次光
P2 一次光
PS1 第1の一次光ビーム
PS2 第2の一次光ビーム
SW 投光器
z z方向
θ
β ブルースター角