特許第6956593号(P6956593)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6956593
(24)【登録日】2021年10月7日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】塗布容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/42 20060101AFI20211021BHJP
   B65D 47/20 20060101ALI20211021BHJP
【FI】
   B65D47/42
   B65D47/20 210
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-211283(P2017-211283)
(22)【出願日】2017年10月31日
(65)【公開番号】特開2019-81594(P2019-81594A)
(43)【公開日】2019年5月30日
【審査請求日】2020年5月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】古原 裕嗣
【審査官】 杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−067436(JP,A)
【文献】 特開2016−141432(JP,A)
【文献】 特開2017−210285(JP,A)
【文献】 特開2017−154769(JP,A)
【文献】 実開平05−022354(JP,U)
【文献】 特開2005−126120(JP,A)
【文献】 特開2016−159912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 39/00−55/16
B65D 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が収容される容器本体と、
前記容器本体の口部に装着され、頂壁に貫通孔が形成された有頂筒状の計量筒部材と、
前記計量筒部材の内側に配置され、前記計量筒部材との間に計量室を形成するとともに、前記計量室と前記容器本体の内側とを連通させる連通孔が形成された中栓部材と、
前記計量室に移動可能に配設され、前記計量室に連通する吐出口が形成された先端部が前記貫通孔から外部に突出可能な塗布栓と、を備え、
前記塗布栓は、前記計量室と前記吐出口との連通を遮断し、かつ前記連通孔を介して前記計量室と前記容器本体の内側とを連通させる計量位置と、容器軸方向において前記計量位置よりも前記連通孔側に位置するとともに、前記連通孔を介した前記計量室と前記容器本体の内側との連通を遮断し、かつ前記計量室と前記吐出口とを連通させる塗布位置と、の間で移動可能であり、
前記吐出口には、前記塗布栓が前記塗布位置に位置している状態で、弾性変位により前記吐出口の内側を容器軸方向において移動可能な弾性部材が装着されており、
前記弾性部材には、前記吐出口を形成する前記塗布栓の内周面に向かって径方向に突出する嵌合突起が形成され、
前記塗布栓の内周面には、容器軸方向に延在し、前記嵌合突起との嵌合位置を容器軸方向に変位可能とする嵌合溝が形成されている、ことを特徴とする塗布容器。
【請求項2】
前記弾性部材は、
前記塗布栓の先端面を形成する前記吐出口の開口周縁部に、弾性変形可能に当接するフランジ部と、
前記フランジ部に接続され、前記吐出口の内側に変位可能に挿入された軸部と、を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の塗布容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、人体の頭皮等の被塗布部に対して薬液等の内容物を塗布する塗布容器が知られている。この種の塗布容器は、例えば、被塗布部に塗布する内容物が収容される容器本体と、容器本体の口部に装着され、容器本体内に連通する連通孔を有する中栓部材と、中栓部材との間に、連通孔を通して容器本体内に連通する計量室を形成する計量筒部材と、先端部が計量筒部材から外部に突出するとともに、計量室内に連通する吐出孔を有する塗布栓と、先端部が吐出孔を通して外部に突出するとともに、塗布栓に連設された先行突起と、を備えている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
また、上述した塗布栓は、計量室内と外部との連通を遮断し、かつ計量室内と容器本体内とを連通させる計量位置と、容器軸方向において計量位置よりも容器本体の底部側に位置するとともに、計量室内と容器本体内との連通を遮断し、かつ計量室内と外部と連通させる塗布位置と、の間を容器軸方向に移動自在に配設されている。
【0004】
上述した塗布容器において、内容物を被塗布部に塗布するには、まず塗布栓を計量位置に移動させた状態で塗布容器を倒立姿勢にし、容器本体内の内容物を計量室内に流入させる。これにより、計量室に所定量の内容物が計量される。この状態で、塗布栓に連設された先行突起を被塗布部に押し付ける。すると、塗布栓が塗布位置に移動するとともに、先行突起が弾性変位することで、計量室内の内容物が塗布栓の吐出孔を通して吐出される。これにより、被塗布部に内容物が塗布される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−159912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した従来の塗布容器では、先行突起の変位量を調整することで、吐出精度の向上を図ることができるが、当該先行突起は塗布栓と一体に形成されているために柔軟な樹脂材料を使用することが難しく、被塗布部に押し付けた際の触感を柔らかくすることについての要望がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、吐出精度の向上を図りつつ被塗布部に押し付けた際の触感を柔らかくできる塗布容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る塗布容器は、内容物が収容される容器本体と、前記容器本体の口部に装着され、頂壁に貫通孔が形成された有頂筒状の計量筒部材と、前記計量筒部材の内側に配置され、前記計量筒部材との間に計量室を形成するとともに、前記計量室と前記容器本体の内側とを連通させる連通孔が形成された中栓部材と、前記計量室に移動可能に配設され、前記計量室に連通する吐出口が形成された先端部が前記貫通孔から外部に突出可能な塗布栓と、を備え、前記塗布栓は、前記計量室と前記吐出口との連通を遮断し、かつ前記連通孔を介して前記計量室と前記容器本体の内側とを連通させる計量位置と、容器軸方向において前記計量位置よりも前記連通孔側に位置するとともに、前記連通孔を介した前記計量室と前記容器本体の内側との連通を遮断し、かつ前記計量室と前記吐出口とを連通させる塗布位置と、の間で移動可能であり、前記吐出口には、前記塗布栓が前記塗布位置に位置している状態で、弾性変位により前記吐出口の内側を容器軸方向において移動可能な弾性部材が装着されている、ことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る塗布容器によれば、塗布栓が計量位置にある状態で、塗布容器を塗布栓が下向きの例えば倒立姿勢等にすると、容器本体内の内容物が、連通孔を通して計量室内に流入する一方、この内容物の外部への流出は防止されている。そのため、計量室内に所定量の内容物が計量される。
その後、前記倒立姿勢等のままで塗布栓を塗布位置に移動させることで、計量室内の内容物を、吐出口を通して被塗布部に吐出することができる。
ここで、塗布栓が塗布位置にある状態において、吐出口に装着された弾性部材を被塗布部に押し付けると、その押付力に応じて弾性部材が吐出口の内側に向けて弾性変位する。すると、外部と連通する塗布栓と弾性部材との隙間において内容物の表面張力が崩され、吐出口から少量の内容物が塗布される。このように、弾性部材の押付力、つまり弾性部材の変位量を調整することで、吐出口を通して外部に吐出される内容物の流量を制御することができる。その結果、吐出精度の向上を図ることができる。
また、容器軸方向に弾性変位可能な弾性部材を被塗布部に押し付けるので、塗布時において、被塗布部に及ぼされる衝撃や外力等が弾性部材のクッション作用により緩和されることになる。そのため、柔らかな塗布感触を得ることができるとともに、不快さや心地悪さを低減し、快適で心地よい塗布を行うことができる。
【0010】
(2)前記弾性部材は、前記吐出口の開口周縁部に、弾性変形可能に当接するフランジ部と、前記フランジ部に接続され、前記吐出口の内側に変位可能に挿入された軸部と、を有していても良い。
【0011】
この場合には、弾性部材を被塗布部に押し付けると、軸部が吐出口の内側に向けて変位すると共に、吐出口の開口周縁部に当接しているフランジ部が弾性変形し、蓄勢される。そして、弾性部材の被塗布部に対する押し付けを解除すると、蓄勢されたフランジ部が復元変形し、軸部が吐出口の外側に向けて変位するため、弾性部材を内容物の塗布前の元の位置に戻すことができ、続けて内容物を塗布することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る塗布容器によれば、吐出精度の向上を図りつつ被塗布部に押し付けた際の触感を柔らかくできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る塗布容器(オーバーキャップが装着状態で、かつ塗布栓が塗布位置)を示す縦断面図である。
図2図1に示す塗布容器(塗布栓が塗布位置で、かつ塗布容器が倒立姿勢)の動作説明図である。
図3図2に示す塗布容器の先端部の拡大図である。
図4】本発明の別実施形態に塗布容器の先端部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る塗布容器を説明する。
【0015】
図1に示すように、塗布容器10は、容器本体11と、中栓部材12と、計量筒部材13と、塗布栓14と、弾性部材15と、オーバーキャップ16と、を備えている。容器本体11および中栓部材12は有底筒状に形成され、計量筒部材13およびオーバーキャップ16は有頂筒状に形成されている。塗布栓14は筒状に形成されている。
【0016】
ここで容器本体11、中栓部材12、計量筒部材13、塗布栓14およびオーバーキャップ16は、それぞれの中心軸が共通軸上に位置している。以下、この共通軸を容器軸Oといい、容器軸Oに沿う容器本体11側を単に下側、オーバーキャップ16側を単に上側という。容器軸O方向から見た平面視において、容器軸Oに直交する方向を径方向といい、容器軸O回りに周回する方向を周方向という。
【0017】
容器本体11内には、例えば、人体の頭皮、皮膚等の被塗布部S(図2参照)に塗布される育毛剤、化粧料、その他薬液等の内容物、または人体以外の被塗布部Sに塗布する液体等が収容されている。容器本体11の口部11aは、口部11a以外の部位(胴部や底部、肩部)よりも小径とされるとともに、上部の外径が下部の外径に比べて小さくなっている。口部11aの下部外周面には雄ねじ部が形成され、口部11aの上部には外周面から径方向の外側に向けて突出する突起部が周方向に沿って延設されている。
【0018】
中栓部材12は、容器本体11の口部11aに装着され、口部11aを閉塞する。中栓部材12は、容器本体11内に連通する連通孔21を有する。
中栓部材12は、口部11aの開口縁上に配設された支持筒22と、支持筒22の下端部から径方向の内側に向けて突設された内フランジ部23と、内フランジ部23に連結されるとともに口部11a内に嵌合されるシール筒24と、シール筒24に対して径方向の内側に連なる受け部材25と、受け部材25から上方に立設されたガイド部26と、を有している。
【0019】
支持筒22は、容器軸O方向に沿って延在している。支持筒22の外周面には、径方向の外側に向けて突出する突起部が周方向に沿って延設されている。
シール筒24は、内フランジ部23における径方向の内側端部から容器軸O方向に延在している。シール筒24のうち、内フランジ部23よりも下方に位置する部分は、口部11a内に密に嵌合されている。
【0020】
受け部材25は、有底筒状を呈している。受け部材25は、口部11a内に配置されている。受け部材25の上端部は、口部11a内においてシール筒24の下端部に径方向の内側から連なっている。受け部材25には、前記連通孔21が形成されている。
連通孔21は、受け部材25を貫通している。連通孔21は、周方向に間隔をあけて複数形成されている。各連通孔21は、容器軸O方向に沿う縦断面視でL字状を呈している。各連通孔21は、受け部材25のうち底壁及び周壁に至る部分に跨って形成されている。なお、連通孔21は、受け部材25の底壁及び周壁のうち、少なくとも一方に形成されていても構わない。
【0021】
ガイド部26は、塗布栓14の容器軸O方向の移動を案内する。ガイド部26は、受け部材25の底壁から上方に向けて延びる柱状に形成されている。ガイド部26の上端縁は、シール筒24の上端縁よりも上方に位置している。なお、ガイド部26は柱状の他、中空筒状等、適宜設計変更が可能である。
【0022】
ガイド部26の下端部には、容器軸O方向に延びる支持部27が径方向の外側に向けて突設されている。支持部27は、ガイド部26と一体かつガイド部26よりも外径が大きい円柱形状を有する。支持部27の下端面は、受け部材25の底壁に上方から連なっている。支持部27の上端面は、受け部材25の上端面よりも下方に位置している。
【0023】
計量筒部材13は、中栓部材12との間に、連通孔21を通して容器本体11内に連通する計量室29を形成する。計量筒部材13は、容器本体11の口部11aおよび中栓部材12に装着されている。計量筒部材13には、有頂筒状に形成され、その頂壁に計量室29内と外部とを連通する貫通孔57が形成されている。
【0024】
計量筒部材13は、容器軸O方向に延びる多段状に形成されている。計量筒部材13は、下方から上方に向かうに従い漸次、段状に縮径している。計量筒部材13は、容器軸Oと同軸に配置されている。計量筒部材13は、大径部51と、下段部52と、中径部53と、上段部54と、小径部55と、を備えている。
【0025】
大径部51は、口部11aおよび支持筒22に径方向の外側から装着されている。大径部51には、径方向の内側に向けて突出する突起部が周方向に沿って延設されている。突起部は、容器軸O方向に間隔をあけて2つ配置されていて、これら2つの突起部のうち、下方の突起部は口部11aの上部に形成された突起部に下方から係止され、上方の突起部は支持筒22の突起部に下方から係止されている。これにより、計量筒部材13が口部11aおよび中栓部材12にそれぞれアンダーカット嵌合されている。
【0026】
下段部52は、大径部51の上端部から径方向の内側に向けて延びている。下段部52は、支持筒22の上端部に上方から突き当たる。下段部52の内周縁部には、被着筒部56が設けられている。被着筒部56は、支持筒22とシール筒24との間に嵌合されている。
中径部53は、下段部52の内周縁部から上方に向けて延びている。
【0027】
上段部54は、中径部53の上端部から径方向の内側に向けて延びている。
小径部55は、上段部54の内周縁部から上方に向けて延びている。小径部55内は、前記貫通孔57とされている。貫通孔57の内周面には、台座部58が設けられている。
台座部58は、貫通孔57から径方向の内側に向けて突出している。台座部58は、環状に形成され、周方向の全周にわたって連続して延びている。台座部58は、貫通孔57における容器軸O方向の中央部に設けられている。
【0028】
塗布栓14は、計量室29内に設けられている。塗布栓14の先端部には、計量室29内と外部とを連通可能な吐出口43が形成されている。この塗布栓14の先端部は、貫通孔57から外部(上方)に突出可能とされている。塗布栓14は、容器軸O方向に沿って移動自在に設けられ、貫通孔57内に挿通されている。
【0029】
塗布栓14は、流路筒部41と、弁筒部42と、ガイド筒部45と、計量シール部46と、を備えている。流路筒部41、弁筒部42およびガイド筒部45は、容器軸O方向に延び、容器軸Oと同軸に配置されている。
【0030】
流路筒部41は、有底筒状に形成されている。流路筒部41は、貫通孔57内および台座部58内に挿通可能である。流路筒部41の上端部には、径方向の外側に突出する第1係止部41aが形成されている。
流路筒部41の内部は、上方(容器軸O方向に沿う反中栓部材側(反連通孔側))に向けて開口している。流路筒部41の底部は、ガイド部26の上端部に上方から対向している。
【0031】
流路筒部41の内部は、前記吐出口43とされている。吐出口43は、容器軸O方向に直線状に延びる。吐出口43は、容器軸Oと同軸に配置されている。容器軸Oに直交する横断面視において、吐出口43は、真円形状に形成されている。
なお、吐出口43の横断面視形状は、真円形状に限られない。また吐出口43は、容器軸O方向の全長にわたって同径であってもよく、下方から上方に向かうに従い段階的または部分的に拡径していてもよい。
【0032】
流路筒部41には、接続孔44が形成されている。接続孔44は、流路筒部41を径方向に貫通する。また、接続孔44は、吐出口43と計量室29内とを連通する。この接続孔44は、周方向に間隔をあけて複数設けられている。
【0033】
弁筒部42の上端部は、流路筒部41の下端部に径方向の外側から連結されている。弁筒部42は、貫通孔57において台座部58よりも下側に位置する下端部内に挿通可能である。また、弁筒部42の上端部には、規制部50が設けられている。規制部50は、塗布栓14の上方への移動を規制する。規制部50は、台座部58の下端部に下方から対向している。塗布栓14が上方に移動して弁筒部42が貫通孔57の下端部内に挿通されたときに、規制部50が台座部58に下方から当接することで、塗布栓14の更なる移動が規制される。
【0034】
弁筒部42の下端部には、塗布栓14の移動に伴い受け部材25の内周面上を摺動可能な塗布シール部49が形成されている。塗布シール部49は、受け部材25の内周面に密に嵌合し、計量室29内と連通孔21との連通を遮断している。塗布シール部49は、弁筒部42における他の部分に比べて薄肉の筒状に形成されている。塗布シール部49は、下方に向かうに従い径方向の外側に向けて延びるテーパ状を呈している。
【0035】
ガイド筒部45は、ガイド部26に外挿されている。ガイド筒部45は、流路筒部41の底部から下方に延びている。ガイド筒部45は、弁筒部42の内部に配置されている。
ガイド筒部45は、ガイド部26に径方向の内側からガイドされている。ガイド筒部45の下端面は、支持部27に上方から当接している。
【0036】
計量シール部46は、弁筒部42の外周面に設けられている。計量シール部46は、弁筒部42から径方向の外側に向けて突出している。計量シール部46は、容器軸Oと同軸の環状に形成されている。計量シール部46は、周方向の全周にわたって延びている。
【0037】
オーバーキャップ16は、容器本体11の口部11aに着脱自在に装着されて計量筒部材13および塗布栓14を覆う。オーバーキャップ16は、前記口部11aからの離脱に伴って塗布栓14を上昇させる。このオーバーキャップ16は、容器本体11の口部11aに装着される装着筒部60と、装着筒部60の外側を取り囲む周壁部61と、周壁部61の上端開口部を閉塞する天壁部62と、を有している。
【0038】
装着筒部60は、天壁部62の下面から下方に垂設される。装着筒部60の下部内周面には、口部11aの雄ねじ部に螺着される雌ねじ部が形成されている。なお、オーバーキャップ16は、例えば、アンダーカット嵌合により口部11aに装着される等して、容器本体11に対して容器軸O回りに回転させることなく着脱される構成であってもよい。
周壁部61は、装着筒部60の径方向外側に配置され、天壁部62の周端縁から下方に垂設される。周壁部61の外径は、容器本体11の外径と略等しくなっている。
【0039】
天壁部62には、装着筒部60よりも径方向内側に、下方に向けて延びる係止筒63および押下部64が配設されている。
係止筒63は、容器軸Oと同軸に配置されている。係止筒63の下端部は、流路筒部41に径方向の外側から嵌合されている。係止筒63は、貫通孔57において台座部58よりも上側に位置する上端部内に挿入されている。係止筒63の下端部内周面には、流路筒部41の前述した第1係止部41aに、係脱可能に係止される第2係止部63aが形成されている。
【0040】
押下部64は、係止筒63の径方向内側に配置されている。押下部64は、容器軸Oと同軸の環状に配置されるとともに、周方向において間隔をあけて複数突設されている。押下部64の下端部は、塗布栓14の先端部に装着された弾性部材15の表面(本実施形態においては後述するフランジ部71の表面)に上方から当接している。押下部64の径方向外側の端部は、係止筒63の内周面に連結されている。
【0041】
弾性部材15は、塗布栓14と別部材であり、容器軸Oと同軸に配置されている。弾性部材15は、塗布栓14の先端部から吐出口43に挿入されている。弾性部材15は、吐出口43における内容物の流通を制限する。弾性部材15は、塗布栓14よりも柔らかいゴムなどの弾性体により形成されており、弾性変位により吐出口43の内側を容器軸O方向において移動可能とされている。この弾性部材15は、フランジ部71と、フランジ部71に接続された軸部72と、を有する。
【0042】
フランジ部71は、図3(a)及び図3(b)に示すように、吐出口43の開口周縁部43aに、弾性変形可能に当接する。開口周縁部43aは、円筒状の塗布栓14の先端面であって、吐出口43の開口端の径方向外側に環状に形成されている。吐出口43の開口端における塗布栓14の内周面には、開口周縁部43aにかけてスリット状の溝43cが形成されている。溝43cは、容器軸Oを中心とする周方向において間隔をあけて複数形成されている。なお、溝43cは、周方向に環状に連なる環状凹部であってもよい。フランジ部71は、円板状に形成され、塗布栓14の流路筒部41の外径と略等しい外径を有し、開口周縁部43aにおける溝43cよりも径方向外側に当接可能とされている。
【0043】
軸部72は、円柱状に形成され、フランジ部71の中央部から吐出口43に向かって容器軸Oに沿って直線状に延在している。軸部72の外周面には、容器軸O方向に延在するスリット状の流路形成溝73が形成されている。流路形成溝73は、軸部72の外周面に周方向において間隔をあけて複数形成されている。また、流路形成溝73の形成領域以外の軸部72の外周面には、吐出口43を形成する塗布栓14の内周面に向かって径方向に突出する嵌合突起74が形成されている。
【0044】
嵌合突起74は、塗布栓14の内周面に形成された嵌合溝43bにアンダーカット嵌合する。嵌合溝43bは、容器軸O方向に延在しており、嵌合突起74との嵌合位置が、容器軸O方向に所定幅で変位可能とされている。これにより、軸部72が、吐出口43の内側において容器軸O方向に変位可能とされる。
フランジ部71の軸部72が接続される側と反対側には、押付部75が設けられている。押付部75は、フランジ部71、軸部72と一体で形成され、ドーム状に膨出(突出)している。この押付部75は、容器軸Oと同軸に配置される。
【0045】
次に、上述した塗布容器10の作用について説明する。なお以下の説明では、図1に示すような、オーバーキャップ16が容器本体11の口部11aに装着された状態を初期状態とする。初期状態の塗布容器10では、塗布栓14が、計量室29内と容器本体11内との連通孔21を通した連通を遮断し、かつ吐出口43を通して計量室29内と外部とを連通させる塗布位置に位置している。この塗布位置において、塗布栓14の先端部は、計量筒部材13の貫通孔57の開口端よりも上方に位置している。
【0046】
初期状態の塗布容器10において、容器本体11の口部11aとオーバーキャップ16との螺着を解除し、オーバーキャップ16を取り外す。オーバーキャップ16と容器本体11とを螺着が解除される方向に相対回転させると、この相対回転に伴いオーバーキャップ16が容器本体11に対して上方移動する。このときオーバーキャップ16が、係止筒63、第2係止部63aおよび第1係止部41aを介して塗布栓14に係止されているため、オーバーキャップ16の上方移動に伴い、ガイド筒部45がガイド部26によって案内されながら、塗布栓14が引き上げられる。
【0047】
塗布栓14は、規制部50が台座部58の下端部(計量筒部材13)に当接して更なる上方移動が規制されるまで、オーバーキャップ16とともに引き上げられる。この状態で、オーバーキャップ16と容器本体11とを螺着が解除される方向にさらに相対回転させると、塗布栓14に対してオーバーキャップ16が上方移動することで、第1係止部41aと第2係止部63aとが互いに乗り越える。これにより、オーバーキャップ16と塗布栓14との係止が解除され、オーバーキャップ16のみが上方移動することで、オーバーキャップ16と容器本体11の螺着が解除され、オーバーキャップ16が取り外される。
【0048】
このとき塗布栓14の塗布シール部49は、中栓部材12の受け部材25から離脱されていて、中栓部材12の連通孔21と計量室29内とは、塗布シール部49の下端部と受け部材25の上端部との間を通して連通されている。一方、塗布栓14の計量シール部46が、貫通孔57の内周面(計量筒部材13)に密に当接しており、計量室29と接続孔44との連通が遮断されている。なお、塗布栓14の規制部50が、貫通孔57内の台座部58の下端面と当接することで、計量室29と接続孔44との連通が遮断されてもよい。このように塗布栓14は、オーバーキャップ16を取り外した直後には、吐出口43を通した計量室29内と外部との連通を遮断し、かつ計量室29内と容器本体11内とを連通孔21を通して連通させる計量位置に位置する。
【0049】
次に、容器本体11内の内容物を計量室29内に流入させる。塗布栓14が計量位置にある状態で、塗布容器10を塗布栓14が下向きとなる倒立姿勢とする。すると、容器本体11内の内容物が、連通孔21を通して計量室29内に流入する。一方、計量位置においては、吐出口43と計量室29内との連通が遮断されているため、吐出口43を通した外部への内容物の流出が防止されている。これにより、計量室29内に所定量の内容物が計量される。なお、倒立姿勢では、塗布容器10の上下が反転するため、容器軸O方向に沿う塗布栓14側が下側、容器本体11側が上側となる。
【0050】
続いて、図2に示すように、塗布容器10を倒立姿勢に維持した状態で、塗布容器10を被塗布部Sに突き当てる。本実施形態では、塗布栓14に弾性部材15が装着されていることから、まず弾性部材15が被塗布部Sに押し当てられる。そして、その押付力に応じて塗布栓14が容器軸O方向に移動する。塗布栓14は、ガイド筒部45がガイド部26によって案内されながら、塗布栓14の塗布シール部49が受け部材25内に嵌合される塗布位置まで移動する。塗布栓14の移動は、塗布栓14のガイド筒部45が支持部27に突き当たることで規制される。
【0051】
このとき、計量室29内の内容物が吐出口43内に流入し、吐出口43内の内容物の流通が弾性部材15によって制限されながら、内容物が被塗布部S上(外部)に吐出される。具体的には、被塗布部Sに弾性部材15の押付部75が押し付けられると、図3(b)に示すように、軸部72が吐出口43の内側に向かって変位する。軸部72が吐出口43の内側に向かって変位すると、吐出口43の開口周縁部43aに当接するフランジ部71が反るように弾性変形し、フランジ部71の径方向外端縁が開口周縁部43aから離反し、溝43c(吐出口43)が開放される。
【0052】
当該押し付けによって、さらに軸部72が容器軸O方向に変位すると、溝43cにおける内容物の表面張力が崩れ、内容物が外部に吐出される。これにより、内容物が被塗布部Sに塗布される。
また、当該押し付けを解除すると、図3(a)に示すように、蓄勢されたフランジ部71が復元変形し、軸部72が吐出口43の外側に向けて変位する。そして、復元変形したフランジ部71が、開口周縁部43aにおける溝43cよりも径方向外側に当接することで、吐出口43が閉塞される。
【0053】
以上説明したように、本実施形態に係る塗布容器10によれば、塗布栓14が計量位置にある状態で、塗布容器10を塗布栓14が下向きの例えば倒立姿勢等にすると、容器本体11内の内容物が、連通孔21を通して計量室29内に流入する一方、この内容物の外部への流出は防止されている。そのため、計量室29内に所定量の内容物が計量される。
その後、倒立姿勢等のままで塗布栓14を塗布位置に移動させることで、計量室29内の内容物を、吐出口43を通して被塗布部Sに吐出することができる。
【0054】
ここで、塗布栓14が塗布位置にある状態において、吐出口43に装着された弾性部材15を被塗布部Sに押し付けると、その押付力に応じて弾性部材15が吐出口43の内側に向けて弾性変位する。すると、外部と連通する吐出口43における内容物の表面張力が崩され、吐出口43から変位量に応じた少量の内容物が塗布される。このように、弾性部材15の押付力、つまり弾性部材15の変位量を調整することで、吐出口43を通して外部に吐出される内容物の流量を制御することができる。その結果、吐出精度の向上を図ることができる。また、弾性部材15の押し付けを解除すると、復元変形したフランジ部71によって吐出口43が閉塞されるため、内容物の余分な流出がない。
【0055】
また、容器軸O方向に弾性変位可能な弾性部材15を被塗布部Sに押し付けるので、塗布時において、被塗布部Sに及ぼされる衝撃や外力等が弾性部材15のクッション作用により緩和されることになる。そのため、柔らかな塗布感触を得ることができるとともに、不快さや心地悪さを低減し、快適で心地よい塗布を行うことができる。
したがって、本実施形態に係る塗布容器10によれば、吐出精度の向上を図りつつ被塗布部Sに押し付けた際の触感を柔らかくできる。
【0056】
また、本実施形態では、図3に示すように、弾性部材15は、吐出口43の開口周縁部43aに、弾性変形可能に当接するフランジ部71と、フランジ部71に接続され、吐出口43の内側に変位可能に挿入された軸部72と、を有する。この構成によれば、弾性部材15を被塗布部Sに押し付けると、図3(b)に示すように、軸部72が吐出口43の内側に向けて変位すると共に、吐出口43の開口周縁部43aに当接しているフランジ部71が弾性変形し、蓄勢される。そして、弾性部材15の被塗布部Sに対する押し付けを解除すると、図3(a)に示すように、蓄勢されたフランジ部71が復元変形し、軸部72が吐出口43の外側に向けて変位するため、弾性部材15を内容物の塗布前の元の位置に戻すことができ、続けて内容物を塗布することができる。
【0057】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0058】
例えば、図4(a)に示す塗布容器10Aのように、吐出口43の開口周縁部43aに、吐出口43の開口端における塗布栓14の内周面から塗布栓14の外周面まで径方向に貫通したスリット状の貫通溝43dが形成されていても良い。貫通溝43dは、容器軸Oを中心とする周方向において間隔をあけて複数形成されている。この構成によれば、吐出口43に弾性部材15が装着された状態でも、吐出口43は常に開いた状態となっている。この状態であっても、図4(b)に示すように、軸部72が吐出口43の内側に向けて変位すると、外部と連通する貫通溝43d及び吐出口43における内容物の表面張力が崩され、貫通溝43d及び吐出口43から少量の内容物が塗布される。
【0059】
また、上記実施形態では、弾性部材15の全体が弾性体である構成について例示したが、被塗布部Sに接触する部分(押付部75)及び蓄勢部(フランジ部71)が部分的に弾性体であればよいため、例えば軸部72は剛性体であってもよい。
【0060】
また、上記実施形態において、塗布栓14が塗布位置に位置するときに、計量室29内が、貫通孔57の内周面と塗布栓14の外周面との間を通して外部に連通していてもよい。この場合、吐出口43から内容物が塗布されると、貫通孔57の内周面と塗布栓14の外周面との間から、外部の空気が計量室29内に導入される。
【0061】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10 塗布容器
11 容器本体
11a 口部
12 中栓部材
13 計量筒部材
14 塗布栓
15 弾性部材
21 連通孔
29 計量室
43 吐出口
43a 開口周縁部
57 貫通孔
71 フランジ部
72 軸部
O 容器軸
図1
図2
図3
図4