特許第6956614号(P6956614)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6956614防水材、防水用開き戸及び防水用開き戸構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6956614
(24)【登録日】2021年10月7日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】防水材、防水用開き戸及び防水用開き戸構造
(51)【国際特許分類】
   E06B 7/22 20060101AFI20211021BHJP
   E06B 5/00 20060101ALI20211021BHJP
【FI】
   E06B7/22 F
   E06B5/00 Z
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-233929(P2017-233929)
(22)【出願日】2017年12月6日
(65)【公開番号】特開2019-100121(P2019-100121A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100095212
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 武
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 展之
(72)【発明者】
【氏名】中島 厚二
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 誠
【審査官】 鳥井 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−218794(JP,A)
【文献】 特開2017−125382(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3204905(JP,U)
【文献】 特開2011−169054(JP,A)
【文献】 特開平09−112156(JP,A)
【文献】 特開2013−238007(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0061522(US,A1)
【文献】 国際公開第01/061138(WO,A1)
【文献】 英国特許出願公開第2479470(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/22
E06B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開き戸により開閉される出入口が内側に形成されているドア枠の下部戸当り部に室外側から当てられ、左右方向への延伸長さを有している下部延伸部と、前記ドア枠の左右の側部戸当り部に室外側から当てられ、前記下部延伸部の左右両端部から上方向への延伸長さを有している左右の側部延伸部と、を備えていて、折り畳み可能となっており、
前記下部延伸部と前記左右の側部延伸部のうち、少なくとも1個の延伸部にヒンジが設けられ、このヒンジにより折り畳み可能となっていることを特徴とする防水材。
【請求項2】
請求項1に記載の防水材において、前記下部延伸部と前記左右の側部延伸部のうち、少なくとも前記ヒンジが設けられている前記1個の延伸部は、硬質材料で形成された室外側のベース部材と、このベース部材の室内側の面に取り付けられ、軟質材料で形成された防水部材とを含んで構成され、この防水部材は、前記ヒンジの配置箇所と対応する箇所で分割された2個の防水分割部材により形成されているとともに、前記ベース部材は、前記ヒンジの配置箇所で分割された2個のベース分割部材により形成され、これらのベース分割部材同士が前記ヒンジで連結されていることにより、前記ヒンジが設けられている前記延伸部が折り畳み可能となっていることを特徴とする防水材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の防水材において、前記ヒンジは、前記下部延伸部に設けられていることを特徴とする防水材。
【請求項4】
請求項3に記載の防水材において、前記ヒンジは、前記下部延伸部の延伸方向となっている左右方向の中央部に設けられていることを特徴とする防水材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の防水材が、室内側の面に取り付けられていることを特徴とする防水用開き戸。
【請求項6】
請求項5に記載の防水用開き戸において、前記防水材が前記室内側の面に接着剤により取り付けられていることを特徴とする防水用開き戸。
【請求項7】
請求項5に記載の防水用開き戸において、前記室内側の面への前記防水材の取り付けが取り外し可能に行われていることを特徴とする防水用開き戸。
【請求項8】
請求項7に記載の防水用開き戸において、前記室内側の面への前記防水材の取り付けがマグネットによって行われていることを特徴とする防水用開き戸。
【請求項9】
請求項8に記載の防水用開き戸において、前記マグネットは、前記防水材を構成する部材となっていることを特徴とする防水用開き戸。
【請求項10】
ドア枠の内側に形成されている出入口を開閉するための開き戸と、
前記ドア枠の下部戸当り部に室外側から当てることが可能であって、左右方向への延伸長さを有している下部延伸部と、前記ドア枠の左右の側部戸当り部に室外側から当てることが可能であって、前記下部延伸部の左右両端部から上方向への延伸長さを有している左右の側部延伸部と、を備えている防水材と、
前記出入口のうち、高さを有する下部側の範囲を遮閉する遮閉部と、この遮閉部と連続し、かつ前記下部延伸部に室外側から当てることが可能であって、左右方向への延伸長さを有している第1延伸部と、前記遮閉部と連続し、かつ前記左右の側部延伸部に室外側から当てることが可能であって、前記第1延伸部の左右両端部から上方向への延伸長さを有している第2及び第3側端延伸部と、を備えている遮閉材と、を含んで構成され、
前記開き戸の室内側の面に前記防水材を、前記遮閉材を介さずに直接配置可能となっているとともに、前記遮閉材を介して間接的に配置可能ともなっていることを特徴とする防水用開き戸構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大雨時や洪水発生時等において、開き戸により開閉される出入口から水が室内側に流入することを防止するための防水材、その防水材を用いた防水用開き戸及び防水用開き戸構造に関する。
【背景技術】
【0002】
大雨時や洪水発生時等において、開き戸により開閉される出入口から水が室内側に流入することを防止するための技術が下記の特許文献1に示されている。この特許文献1に示されている技術では、開き戸により開閉される出入口が内側に形成されているドア枠に、閉じたときの開き戸が当たる下部戸当り部と左右の側部戸当り部が形成されており、出入口のうち、高さを有する下部側の範囲を遮閉する部材となっている板材を、下部戸当り部と左右の側部戸当り部と開き戸とに対して着脱可能とし、この板材に下部戸当り部に室外側から当たる下部シールと、左右の側部戸当り部に室外側から当たる側部シールとを取り付け、出入口を閉じた開き戸により板材をドア枠に立て掛けて、下部シールと側部シールとを下部戸当り部と左右の側部戸当り部とに室外側から当てることにより、出入口から水が室内側に流入することを防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−218794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記技術では、ドア枠の下部戸当り部と左右の側部戸当り部に室外側から当てられる下部シールと左右の側部シールは、板材に取り付けられて使用されるものとなっており、これらのシールだけを有効活用することはできない。
【0005】
本発明の目的は、ドア枠の下部戸当り部と左右の側部戸当り部に室外側から当てられることで開き戸により開閉される出入口から水が室内側に流入することを阻止できる防水材、及びこの防水材を有効活用できるようになる防水用開き戸、防水具及び防水用開き戸構造を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る防水材は、開き戸により開閉される出入口が内側に形成されているドア枠の下部戸当り部に室外側から当てられ、左右方向への延伸長さを有している下部延伸部と、前記ドア枠の左右の側部戸当り部に室外側から当てられ、前記下部延伸部の左右両端部から上方向への延伸長さを有している左右の側部延伸部と、を備えていることを特徴とするものである。
【0007】
このため、この防水材を、ドア枠の内側に形成されている出入口を開閉する開き戸の室内側の面に取り付け可能とし、この取り付けを行うことにより、開き戸が出入口を閉じたときに、下部延伸部がドア枠の下部戸当り部に室外側から当たるとともに、左右の側部延伸部がドア枠の左右の側部戸当り部に室外側から当たることになり、このため、防水材を開き戸の室内側の面に取り付けることにより、開き戸で開閉される出入口から水が室内側に流入することを阻止できることになる。
【0008】
以上の防水材は、折り畳み可能とすることが好ましい。これによると、開き戸の室内側の面に取り付ける以前の防水材を折り畳むことができるため、全体を小さな寸法にして限られたスペース等に収納できる。
【0009】
このように防水材を折り畳み可能とすることは、例えば、防水材を構成している下部延伸部と左右の側部延伸部のうち、少なくとも1個の延伸部にヒンジを設け、このヒンジにより折り畳み可能とすることにより実現できる。
【0010】
また、このように防水材を構成している下部延伸部と左右の側部延伸部のうち、少なくとも1個の延伸部にヒンジを設け、このヒンジにより防水材を折り畳み可能とする場合には、下部延伸部と左右の側部延伸部のうち、少なくともヒンジが設けられている1個の延伸部を、硬質材料で形成された室外側のベース部材と、このベース部材の室内側の面に取り付けられ、軟質材料で形成された防水部材とを含んで構成し、この防水部材を、ヒンジの配置箇所と対応する箇所で分割された2個の防水分割部材により形成するとともに、ベース部材を、ヒンジの配置箇所で分割された2個のベース分割部材により形成し、これらのベース分割部材同士をヒンジで連結することにより、ヒンジが設けられている前記延伸部を折り畳み可能としてもよい。
【0011】
また、本発明に係る防水用開き戸は、開き戸により開閉される出入口が内側に形成されているドア枠の下部戸当り部に室外側から当てられ、左右方向への延伸長さを有している下部延伸部と、前記ドア枠の左右の側部戸当り部に室外側から当てられ、前記下部延伸部の左右両端部から上方向への延伸長さを有している左右の側部延伸部と、を備えた防水材が、室内側の面に取り付けられているものである。
【0012】
このため、この防水用開き戸では、出入口がこの防水用開き戸により閉じられたときには、ドア枠の下部戸当り部に防水材の下部延伸部が室外側から当り、ドア枠の左右の側部戸当り部に防水材の左右の側部延伸部が室外側から当ることにより、出入口から水が室内側に流入することを阻止できる。
【0013】
この防水用開き戸において、防水材は、開き戸の室内側の面に取り付けた後は取り外し不能となっていてもよく、あるいは、取り外し可能となっていてもよい。防水材を、開き戸の室内側の面に取り付けた後に取り外し可能としておくことにより、大雨時や洪水発生時等の異常事態発生時において、防水材を開き戸の室内側の面に取り付け、通常時には、防水材が取り付けられていない開き戸により出入口を開閉できるようになる。
【0014】
また、上述したように防水材を、開き戸の室内側の面に取り付けた後は取り外し不能とする場合には、この取り付けのために接着剤やビス等を用いることができる。
【0015】
また、防水材を、開き戸の室内側の面に取り外し可能に取り付けることは、この室内側の面にフック部材等の取付部材を設けることにより行え、また、防水材自体に取付部材を設けることによっても行え、さらに、室内側の面と防水材との両方に取付部材を設けることによっても行え、取付部材として面ファスナー等を用いることにより、開き戸の室内側の面に防水材を取り外し可能に取り付けることができる。
【0016】
そして、防水材を、開き戸の室内側の面に取り外し可能に取り付けるために、この室内防水材自体に取付部材を設ける場合における一例として、防水材に、開き戸の室内側の面に吸着する吸着部材を設けてもよい。
【0017】
この吸着部材は、開き戸の室内側の面が磁性材料で形成されている場合には、この室内側の面に吸着するマグネットでもよく、また、開き戸の室内側の面が磁性材料で形成されている場合とそうではない場合との両方において、吸着部材を吸盤としてもよい。
【0018】
本発明に係る防水具は、開き戸により開閉される出入口が内側に形成されているドア枠の下部戸当り部に室外側から当てられ、左右方向への延伸長さを有している下部延伸部と、前記ドア枠の左右の側部戸当り部に室外側から当てられ、前記下部延伸部の左右両端部から上方向への延伸長さを有している左右の側部延伸部と、を備えている防水材と、前記出入口のうち、高さを有する下部側の範囲を遮閉する遮閉部と、この遮閉部と連続し、かつ前記下部延伸部に室外側から当てることが可能であって、左右方向への延伸長さを有している第1延伸部と、前記遮閉部と連続し、かつ前記左右の側部延伸部に室外側から当てることが可能であって、前記第1延伸部の左右両端部から上方向への延伸長さを有している左右の第2及び第3延伸部と、を備えている遮閉材と、を含んで構成され、前記防水材と前記遮閉材が分離されて形成されていることを特徴とするものである。
【0019】
この防水具では、防水材と遮閉材が分離されて形成されているため、防水材だけを、前述したように、開き戸の室内側の面に取り付けて用いることが可能となる。
【0020】
そして、大雨時や洪水発生時等の異常事態発生時において、この防水具の防水材と遮閉材とを組み合わせて用いる場合には、ドア枠の下部戸当り部に室外側から当てられた防水材の下部延伸部に遮閉材の第1延伸部を室外側から当てるとともに、ドア枠の左右の側部戸当り部に室外側から当てられた防水材の左右の側部延伸部に遮閉材の第1及び第2延伸部を室外側から当てる。これにより、開き戸が開いていても、遮閉材の遮閉部に水圧が作用する水が出入口から室外側から室内側に流入することを阻止でき、また、この遮閉部は、出入口のうち、高さを有する下部側の範囲を遮閉するものとなっているため、人等がこの遮閉部を跨ぐなどして越えることにより、室外側から室内側に又は室内側から室外側に移動することができる。
【0021】
なお、この防水具における遮閉材には、ドア枠の下部戸当り部の上面に載せられる底部を設けることが好ましい。これによると、ドア枠に遮閉材をセットする作業を容易に行えるようになるとともに、遮閉部に水圧が作用する前や、遮閉部に水圧が作用しているが水面の高さ位置が低いときでも、遮閉材の底部をドア枠の下部戸当り部の上面に載せることにより、遮閉材をドア枠に対して自立させることができる。
【0022】
本発明に係る防水用開き戸構造は、ドア枠の内側に形成されている出入口を開閉するための開き戸と、前記ドア枠の下部戸当り部に室外側から当てることが可能であって、左右方向への延伸長さを有している下部延伸部と、前記ドア枠の左右の側部戸当り部に室外側から当てることが可能であって、前記下部延伸部の左右両端部から上方向への延伸長さを有している左右の側部延伸部と、を備えている防水材と、前記出入口のうち、高さを有する下部側の範囲を遮閉する遮閉部と、この遮閉部と連続し、かつ前記下部延伸部に室外側から当てることが可能であって、左右方向への延伸長さを有している第1延伸部と、前記遮閉部と連続し、かつ前記左右の側部延伸部に室外側から当てることが可能であって、前記第1延伸部の左右両端部から上方向への延伸長さを有している第2及び第3側端延伸部と、を備えている遮閉材と、を含んで構成され、前記開き戸の室内側の面に前記防水材を、前記遮閉材を介さずに直接配置可能となっているとともに、前記遮閉材を介して間接的に配置可能ともなっていることを特徴とするものである。
【0023】
この防水用開き戸構造では、開き戸の室内側の面に防水材が、遮閉材を介さずに直接配置可能となっているとともに、遮閉材を介して間接的に配置可能ともなっているため、防水材を、遮閉材を介さずに開き戸の室内側の面に直接配置した場合には、大雨時や洪水発生時等の異常事態発生時において、ドア枠の下部戸当り部に室外側から防水材の下部延伸部を当てるとともに、ドア枠の左右の側部戸当り部に室外側から防水材の左右の側部延伸部を当てることにより、出入口を閉じた開き戸によって水圧が受けられた水が出入口を通って室外側から室内側に流入することを阻止できる。
【0024】
また、防水材を、遮閉材を介して開き戸の室内側の面に間接的に配置した場合には、大雨時や洪水発生時等の異常事態発生時において、ドア枠の下部戸当り部に室外側から当てられた防水材の下部延伸部に遮閉材の第1延伸部を室外側から当てるとともに、ドア枠の左右の側部戸当り部に室外側から当てられた防水材の左右の側部延伸部に遮閉材の第1及び第2延伸部を室外側から当てることにより、開き戸が出入口を開いているときでも、また、開き戸が出入口を閉じているときでも、水が出入口を通って室外側から室内側に流入することを阻止できる。また、開き戸が出入口を開いているときには、遮閉材の遮閉部は、出入口のうち、高さを有する下部側の範囲を遮閉するものとなっているため、この遮閉部を跨ぐなどして越えることにより、人等が室外側から室内側に又は室内側から室外側に移動することができる。
【0025】
以上説明した本発明に係る防水材は、これまでの説明から分かるように、開き戸に取り付けられることにより開き戸と組み合せることが可能であり、また、遮閉材と組み合せられることにより防水具を構成するものとなり、さらに、開き戸及び遮閉材と組み合せられることにより防水用開き戸構造を構成するものとなるため、防水材を有効活用して、開き戸で開閉される出入口から水が室内側に流入することを阻止できるようになる。
【0026】
このように本発明に係る防水材は開き戸や遮閉材と組み合せ可能となっているものであるが、この防水材は、開き戸に取り付けられることにより開き戸だけと組み合せてもよく、また、遮閉材だけと組み合せられることにより防水具を構成するものとなってもよく、さらに、開き戸及び遮閉材と組み合せられることにより防水用開き戸構造を構成するものとなってもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によると、防水材をドア枠の下部戸当り部と左右の側部戸当り部に室外側から当てることで開き戸により開閉される出入口から水が室内側に流入することを阻止できるとともに、この防水材を有効活用できるようになるという効果を得られる
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る防水材が適用されている開き戸装置の全体を示す正面図である。
図2図2は、図1の開き戸装置から開き戸を除いたドア枠の全体を示す正面図である。
図3図3は、防水材が取り付けられている開き戸の室内側の面を示す図である。
図4図4は、図3で示されている防水材だけを示す斜視図である。
図5図5は、図1のS5−S5線断面図である。
図6図6は、図1のS6−S6線断面図である。
図7図7は、防水材を開き戸の室内側の面に取り外し可能に取り付けるための実施形態を示す斜視図である。
図8図8は、防水材が折り畳み可能となっている実施形態を示す斜視図である。
図9図9は、防水材を遮閉材等と組み合せた実施形態を示す斜視図である。
図10図10は、開き戸を閉じたときの図9の実施形態における図5と同様の図である。
図11図11は、開き戸を閉じたときの図9の実施形態における図6と同様の図である。
図12図12は、開き戸を開けたときの図9の実施形態における図5と同様の図である。
図13図13は、開き戸を開けたときの図9の実施形態における図6と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。図1には、開き戸装置の全体正面図が示され、この開き戸装置は、本発明の一実施形態に係る防水材が適用されている開き戸1がドア枠2にヒンジ3を中心に回動自在に取り付けられたものであり、ドア枠2は、建物躯体である壁25に配置されている。このドア枠2は、図1と、図1から開き戸1を除いた図2とに示されているように、上枠部材4と下枠部材5と左右の側枠部材6,7からなる四方枠であり、ドア枠2の内側は、開き戸1により開閉される出入口8となっている。
【0030】
上枠部材4と下枠部材5と左右の側枠部材6,7には、出入口8を閉じたときの開き戸1が当たる上部戸当り部9と、下部戸当り部10と、左右の側部戸当り部11,12とが設けられており、また、これらの戸当り部9,10,11,12には、開き戸1との間で気密性を確保するための気密部材13,14,15,16が内部に収納配置されている凹部9A,10A,11A,12Aが形成されている。これらの戸当り部9,10,11,12と気密部材13,14,15,16と凹部9A,10A,11A,12Aのうち、図1のS5−S5線断面である図5及び図1のS6−S6線断面である図6には、下枠部材5と左右の側枠部材6,7における戸当り部10,11,12と、気密部材14,15,16と、凹部10A,11A,12Aとが示されている。
【0031】
図3には、図1で示されている開き戸1の室外側の面1Aとは開き戸1の厚さ方向反対側の面となっている室内側の面1Bが示されている。この室内側の面1Bには、室外側の面1Aに設けられているドアノブ17と対応するドアノブ18と、室外側の面1Aに設けられているキー式施錠装置19と対応するサムターン部材20とが配置されている。
【0032】
また、図3で示す開き戸1の室内側の面1Bには、出入口8を閉じたときの開き戸1とドア枠2との間の水密性を確保するための防水材30が取り付けられている。この防水材30は、開き戸1の下辺に沿って配置され、左右方向への延伸長さを有する下部延伸部31と、開き戸1の左右の側辺に沿って配置され、下部延伸部31の左右両端部から上方向への延伸長さを有する左右の側部延伸部32,33とからなる上向きに開口したコ字形状のものとなっており、左右の側部延伸部32,33の上下長さ寸法は、開き戸1の高さ寸法よりも短い寸法になっている。また、防水材30だけを示している図4から分かるように、この防水材30は、開き戸1の厚さ方向の寸法である下部延伸部31と左右の側部延伸部32,33のそれぞれの厚さ寸法が同じになっている薄厚状のものであり、このような防水材30は、水密性を有する材料、例えば、EPDM(エチレンプロピレンゴム)やCR(クロロプレンゴム)等で形成されている。
【0033】
防水材30は、この防水材30の室外側の面30Aが開き戸1の室内側の面1Bに接着剤又はビス等で固定された状態で、すなわち、取り外し不能に取り付けられ、この取り付けは、下部延伸部31を開き戸1の下辺に沿って配置し、左右の側部延伸部32,33を開き戸1の左右の側辺に配置して行われる。このため、大雨時や洪水発生時等の異常事態発生時において、図1で示したように、開き戸1により出入口8を閉じ、室内側の面1Bに設けられているドアノブ18やサムターン部材20の操作で開き戸1をドア枠2に対してロック状態としたときには、図5に示されているように、防水材30のうち、下部延伸部31がドア枠2の下部戸当り部10に当たり、また、図6に示されているように、左右の側部延伸部32,33がドア枠2の左右の側部戸当り部11,12に当たることになる。このため、大雨や洪水等による水が開き戸1の室外側の面1Aに達し、水面の高さ位置が左右の側部延伸部32,33の上端よりも低位置となった水の水圧がこの室外側の面1Aに作用したときには、この水圧が開き戸1を介して防水材30に作用することと併せ、防水材30の下部延伸部31がドア枠2の下部戸当り部10に一層強く当たり、また、左右の側部延伸部32,33がドア枠2の左右の側部戸当り部11,12に一層強く当たることになり、このため、これらの箇所において、水が出入口8から室内側の空間に流入することを阻止できる。
【0034】
なお、防水材30を開き戸1の室内側の面1Aに取り付けず、この防水材30を、出入口8を閉じたときの開き戸1とドア枠2とにより挟着することにより、水が出入口8から室内側の空間に流入することを阻止するようにしてもよい。
【0035】
図7には、別実施形態に係る防水材40が示されており、この防水材40は、開き戸1の室内側の面1Bに取り外し可能に取り付けることができるものになっている。この防水材40も、開き戸1の下辺に沿って配置され、左右方向への延伸長さを有する下部延伸部41と、開き戸1の左右の側辺に沿って配置され、下部延伸部41の左右両端部から上方向への延伸長さを有する左右の側部延伸部42,43からなる上向きに開口したコ字形状のものとなっている。そして、この防水材40には、この防水材40を開き戸1の室内側の面1Bに取り外し可能に取り付けるための取付部材が設けられている。この取付部材は、開き戸1の鋼板等の磁性材料で形成されている室内側の面1Bに磁力で吸着するマグネット44であり、薄板状のこのマグネット44は、防水部材40の室外側の面40Aに埋設状態で固定配置されている。
【0036】
図7の実施形態に係るマグネット44は小片状のものであるため、マグネット44は、下部延伸部41と左右の側部延伸部42,43のそれぞれの長さ方向、すなわち、これらの下部延伸部41と左右の側部延伸部42,43のそれぞれの延伸方向に複数個ずつ配置されている。
【0037】
このようにこの実施形態に係る防水材40は、開き戸1の鋼板等の磁性材料で形成されている室内側の面1Bに磁力で吸着するマグネット44を備えたものとなっているため、大雨時や洪水発生時等の異常事態発生時において、防水材40を開き戸1の室内側の面1Bにマグネット44で取り付けることができ、また、通常時においては、この室内側の面1Bから防水材40を取り外すことができる。このため、通常時には、開き戸1を通常の開き戸にして出入口8を開閉することができる。
【0038】
言い換えると、この実施形態に係る防水材40は、通常の開き戸に適用できるものとなっている。
【0039】
図8には、さらに別実施形態に係る防水材50が示されている。この防水材50も、開き戸1の下辺に沿って配置され、左右方向への延伸長さを有する下部延伸部51と、開き戸1の左右の側辺に沿って配置され、下部延伸部51の左右両端部から上方向への延伸長さを有する左右の側部延伸部52,53からなる上向きに開口したコ字形状のものとなっている。そして、この防水材50は、下部延伸部51と左右の側部延伸部52,53のそれぞれにおいて、金属や硬質プラスチック等の硬質材料で形成された室外側のベース部材54と、このベース部材54の室内側の面に取り付けられ、軟質材料で形成された防水部材55との重ね合わせ構造により構成されており、この防水部材55は、例えば、前述した水密性を有するEPDMやCR等で形成されている。
【0040】
また、ベース部材54は、下部延伸部51の延伸方向である左右方向の中央部で分割された2個のベース分割部材54A,54Bにより形成され、これらのベース分割部材54A,54B同士は、軸方向が上下方向となっている回動中心軸を備えたヒンジ56により連結されている。防水部材55は、ヒンジ56の配置箇所と対応する箇所で分割された2個の防水分割部材55A、55Bにより形成されており、これらの防水分割部材55A、55Bの分割面同士は、下部延伸部51が図8の実線で示されているように直線状に延びているときには、互いに接触して対面している。
【0041】
このため、ヒンジ56が設けられたこの実施形態に係る防水材50は、図8の二点鎖線で示されているように、下部延伸部51の中央部において、ヒンジ56によって左右方向に折り畳み可能となっている。したがって、この防水材50のベース部材54を開き戸1の室内側の面1Bに、例えば、接着剤等で取り付ける以前は、防水材50を折り畳むことができ、このため、この防水材50を、左右方向の寸法を小さくして限られたスペース等に有効に収納することが可能となる。
【0042】
なお、ベース部材54をマグネットとすることにより、あるいは、ベース部材54にマグネットを配置することにより、防水材50を開き戸1の室内側の面1Bに取り外し可能に取り付けることも可能である。また、防水材50の折り畳み箇所を、それぞれの側部延伸部52,53の延伸方向の途中にも設けてもよく、また、折り畳み箇所を、下部延伸部51と左右の側部延伸部52,53のうち、少なくとも一つの延伸部において、複数設けてもよい。
【0043】
図9には、図1図6の実施形態で示した防水材30と、この防水材30と組み合せられる遮閉材60とが示されている。この遮閉材60と組み合せられるために用いられる防水材30は、開き戸1の室内側の面1Bに取り付けられないものとなっており、また、防水材30と遮閉材60は互いに分離しており、したがって、防水材30は遮閉材60に取り付けられていない。
【0044】
金属板の打ち抜き加工や折り曲げ加工で形成されている遮閉材60は、防水材30の下部延伸部31と対応し、左右方向への延伸長さを有する第1延伸部61と、防水材30の左右の側部延伸部32,33と対応し、第1延伸部61の左右両端部から上方向への延伸長さを有する左右の第2及び第3延伸部62,63とを有するものになっている。第1延伸部61の左右方向の長さ寸法は、防水材30の下部延伸部31の左右方向の長さ寸法と同じ又は略同じであり、左右の第2及び第3延伸部62,63の上下方向の長さ寸法は、防水材30の左右の側部延伸部32,33の上下方向の長さ寸法と同じ又は略同じである。また、第1、第2及び第3延伸部61,62,63の内側は、ドア枠2の内側に形成されている出入口8のうち、高さを有する下部側の範囲を遮閉することができる遮閉部64となっている。
【0045】
遮閉材60は、開き戸1の厚さ方向の寸法を有しているため、遮閉部64は、第1、第2及び第3延伸部61,62,63から室内側にずれた位置に設けられており、このため、第1延伸部61と遮閉部64との間は、遮閉材60の室内外方向の奥行きを有する底部60Aとなっており、また、第2及び第3延伸部62,63と遮閉部64との間は、遮閉材60の室内外方向の奥行きを有する側部60B,60Cとなっている。したがって、第1延伸部61は、底部60Aを介して遮閉部64と連続しており、左右の第2及び第3延伸部62,63は、側部60B,60Cを介して遮閉部64と連続している。
【0046】
図10及び図11には、防水材30と遮閉材60をドア枠2に配置したときが示されている。防水材30の下部延伸部31は、ドア枠2の下部戸当り部10に当てられ、防水材30の左右の側部延伸部32,33は、ドア枠2の左右の側部戸当り部11,12に当てられる。また、遮閉材60の第1延伸部61は、防水材30の下部延伸部31に当てられ、遮閉材60の第2及び第3延伸部62,62は、防水材30の左右の側部延伸部32,33に当てられる。このときには、図10に示されているように、遮閉材60の遮閉部64は、出入口8のうち、高さを有する下部側の範囲を遮閉しているとともに、遮閉材60の底部60Aは、ドア枠2の下枠部材5に設けられている下部戸当り部10の上面10Bの上に載せられている。
【0047】
このように遮閉材60の底部60Aが下部戸当り部10の上面10Bの上に載せられることにより、図10及び図11で示されているように開き戸1が出入口8を閉じているときでも、また、図12及び図13で示されているように開き戸1が出入口8を開けているときでも、遮閉材60は、下枠部材5の上で自立することができる。
【0048】
このように防水材30が遮閉材60と組み合せられる実施形態では、大雨時や洪水発生時等の異常事態発生時において、図10及び図11で示されているように開き戸1により出入口8を閉じているときには、開き戸1の室内側の面1Bが遮閉材60に当接しているため、開き戸1の室外側の面1Aに作用する水圧により、遮閉材60を介して、防水材30の下部延伸部31はドア枠2の下部戸当り部10に強く当たり、防水材30の左右の側部延伸部32,33はドア枠2の左右の側部戸当り部11,12に強く当たるため、出入口8から水が室内側の空間に流入することを阻止できる。
【0049】
また、図12及び図13で示されているように開き戸1が出入口8を開いているときには、遮閉材の遮閉部64の室外側の面64Aに水圧が作用することになり、この水圧により、遮閉材60の第1延伸部61を介して防水材30の下部延伸部31がドア枠2の下部戸当り部10に強く当たり、遮閉材60の第2及び第3延伸部62,63を介して防水材30の左右の側部延伸部32,33がドア枠2の左右の側部戸当り部11,12に強く当たるため、このときも、出入口8から水が室内側の空間に流入することを阻止できる。
【0050】
このため、遮閉材60を防水材30と組み合せたこの実施形態によると、開き戸1が出入口8を閉じているときと、出入口8を開いているときとの両方において、出入口8から水が室内側の空間に流入することを阻止できるため、開き戸1により出入口8を閉じているときに、開き戸1により区画されている室内側の空間と室外側の空間との間を人等が通過することが必要になった場合に、開き戸1を開けて出入口8を人等が通過できる状態にしても、出入口8から水が室内側の空間に流入することを阻止できる。また、このときには、遮閉材60の遮閉部64は、出入口8のうち、高さを有する下部側の範囲だけを遮閉しているため、人等は、この遮閉部64の上を跨ぐなどして越えることにより、出入口8を通過することができる。
【0051】
また、遮閉材60は、底部60Aが下部戸当り部10の上面10Bの上に載せられることにより、開き戸1が開いているときでもドア枠2に対して自立するため、遮閉部64の室外側の面64Aに水圧が作用する前や、この面64Aに水圧が作用しているが水面の高さ位置が低いときでも、遮閉材60の自立は維持されることになる。
【0052】
さらに、このように遮閉材60には、下部戸当り部10の上面10Bの上で自立するための底部60Aが設けられているため、この遮閉材60をドア枠2に対してセットするための作業を容易に行える。
【0053】
以上の説明は、防水材30を遮閉材60と組み合せて用いた場合であるが、前述したように、防水材30と遮閉材60は互いに分離して形成されたものとなっていて、防水材30は遮閉材60に取り付けられていないため、防水材30を開き戸1の室内側の面1Bに遮閉材60を介さずに直接配置して用いることもでき、また、上述したように、防水材30を開き戸1の室内側の面1Bに遮閉材60を介して間接的に配置して用いることもできる。
【0054】
なお、防水材30を開き戸1の室内側の面1Bに遮閉材60を介さずに直接配置して用いることは、防水材30を、出入口8を閉じたときの開き戸1とドア枠2とでこの防水材30を挟着することでもよく、また、防水材30を開き戸1又はドア枠2に両面粘着テープ等の仮止め部材を用いて仮止めすることでもよい。
【0055】
このように開き戸1の室内側の面1Bに遮閉材60を介さずに直接配置して用いる場合や、開き戸1の室内側の面1Bに遮閉材60を介して間接的に配置して用いる場合における防水材は、図9の実施形態で説明したように、図1図6の実施形態の防水材30でもよく、あるいは、図7で説明した防水材40でもよく、あるいは、図8で説明した防水材50でもよい。そして、これらの防水材40,50も、防水材30と同様に、遮閉材60とは分離して形成されている防水材である。防水材40を用いる場合には、この防水材40に設けられているマグネット44により、防水材40を開き戸1の室内側の面1Bと遮閉材60とに選択的に取り付けることができる。
【0056】
なお、防水材30は、遮閉材60に接着剤等により分離不能に取り付けて用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、大雨時や洪水発生時等において、開き戸により開閉される出入口から水が室内側に流入することを防止するために利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 開き戸
1A 室外側の面
1B 室内側の面
2 ドア枠
8 出入口
10 下部戸当り部
10B 上面
11,12 側部戸当り部
30,40,50 防水材
31,41,51 下部延伸部
32,33,42,43,52,53 側部延伸部
44 吸着部材であるマグネット
54 ベース部材
54A,54B ベース分割部材
55 防水部材
55A,55B 防水分割部材
60 遮閉材
60A 底部
61 第1延伸部
62,63 第2及び第3延伸部
64 遮閉部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13