特許第6956618号(P6956618)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6956618
(24)【登録日】2021年10月7日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】調整支援装置
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/42 20060101AFI20211021BHJP
   H01H 35/00 20060101ALI20211021BHJP
   G01V 8/12 20060101ALI20211021BHJP
   H03K 17/78 20060101ALI20211021BHJP
【FI】
   G01J1/42 N
   H01H35/00 A
   G01V8/12 J
   H03K17/78 D
   H03K17/78 Q
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-238828(P2017-238828)
(22)【出願日】2017年12月13日
(65)【公開番号】特開2019-105567(P2019-105567A)
(43)【公開日】2019年6月27日
【審査請求日】2020年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】特許業務法人山王内外特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100101133
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 初音
(74)【代理人】
【識別番号】100199749
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 成
(74)【代理人】
【識別番号】100188880
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 辰哉
(74)【代理人】
【識別番号】100197767
【弁理士】
【氏名又は名称】辻岡 将昭
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅人
(72)【発明者】
【氏名】野原 功
(72)【発明者】
【氏名】坂井 昌由加
(72)【発明者】
【氏名】奈良 千尋
【審査官】 小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−318718(JP,A)
【文献】 特開2014−085191(JP,A)
【文献】 特開2017−073723(JP,A)
【文献】 特開2011−188131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00 − G01J 1/60
G01J 11/00
G01V 1/00 − G01V 99/00
H01H 35/00
H03K 17/74 − H03K 17/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電スイッチの受光部で受光される光量に対する閾値の調整を支援する調整支援装置であって、
前記光電スイッチの受光部で受光された光量の時系列データを取得するデータ取得部と、
前記データ取得部により取得された時系列データを示すグラフを表示するグラフ表示部と、
時間の指定を受付ける時間受付部と、
前記データ取得部により取得された時系列データの上昇部分における点と下降部分における当該点と同一光量である点との間の時間が前記時間受付部により受付けられた時間と一致する光量を探索する光量探索部と、
前記光量探索部により探索された光量の値を表示する光量値表示部と
を備えた調整支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光電スイッチの受光部で受光される光量に対する閾値の調整を支援する調整支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光電スイッチ(光電センサとも呼ばれる)では、ワーク等の対象物からの反射光を受光部で受光した場合に対象物が存在すると判断し、又は、受光部に対する投光が対象物により遮断された場合に対象物が存在すると判断する。したがって、光電スイッチでは、受光部で受光される光量に対して閾値が設定され、この閾値を用いて対象物の有無を判断することになる。
【0003】
ここで、対象物を静止させ、対象物の有無が明確になる状態で2点チューニングを行うことができる場合には、閾値の調整は比較的容易である。
一方、対象物が常時動いている状態等のように、状態変化に対応するための閾値の再調整が必要な場合には、2点チューニングを行うことができず、閾値の調整に様々な工夫が必要になる。例えば特許文献1では、環境要因に追従して光量に対する閾値又は投光量を自動調整する方法が提案されている。この種の閾値の自動調整では、受光部で受光された光量の最大値と最小値との間の中間値を閾値に設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許5211872号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光電スイッチにおいて閾値調整は重要な工程であり、環境要因に限らず、閾値が不適切な値となることを低減しなければならない。特に2点チューニングが行えない場合については、更なる改善が求められている。以下に、閾値が不適切な値となる場合について示す。なお以下では、対象物の通過に伴い受光部で受光される光量が減少する場合を示す。
移動している対象物を光電スイッチが検出している時間帯(光量が減少する時間帯)に、光量の平均的な減少量から大きく乖離して、光量の最小値への変化が極めて短時間に発生することがある。具体的には、例えば、対象物が半透明であり、光の遮断が不完全な場合であって、汚れのような想定外の遮断スポットが存在する場合に、上記の問題が発生することがある。また、図5,6に示すように、対象物11に不透明領域111が存在する場合であって、搬送用コンベア12の不具合等により対象物11が傾き、不透明領域111が投光位置に入ってしまう場合に、上記の問題が発生することがある。なお図6では、黒丸で示されるように、光電スイッチが1個の対象物11に対して光強度を5回検出した場合を示している。このような場合、受光部で受光された光量の最大値と最小値との間の中間値は、短時間に発生する事象に対する値になり得るため、この値を閾値とすることは適切であるとは限らない。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、光電スイッチの受光部で受光される光量に対する閾値を適切に調整可能とする調整支援装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る調整支援装置は、光電スイッチの受光部で受光される光量に対する閾値の調整を支援する調整支援装置であって、光電スイッチの受光部で受光された光量の時系列データを取得するデータ取得部と、データ取得部により取得された時系列データを示すグラフを表示するグラフ表示部と、時間の指定を受付ける時間受付部と、データ取得部により取得された時系列データの上昇部分における点と下降部分における当該点と同一光量である点との間の時間が時間受付部により受付けられた時間と一致する光量を探索する光量探索部と、光量探索部により探索された光量の値を表示する光量値表示部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、上記のように構成したので、光電スイッチの受光部で受光される光量に対する閾値を適切に調整可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明の実施の形態1に係る調整支援装置の構成例を示す図である。
図2】この発明の実施の形態1に係る調整支援装置の動作例を示すフローチャートである。
図3】この発明の実施の形態1に係る調整支援装置の動作例を示す図であり、調整支援装置が有するタッチパネルに表示される画面の一例を示す図である。
図4】この発明の実施の形態1に係る調整支援装置の動作例を示す図であり、調整支援装置が有するタッチパネルに表示される画面の別の一例を示す図である。
図5】搬送用コンベアの不具合を示す図である。
図6図6A図6Bは、対象物の傾きにより光が想定外に遮断される場合を説明する図であって、図6Aは対象物に傾きが無い場合を示す図であり、図6Bは対象物に傾きが有る場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る調整支援装置の構成例を示す図である。
調整支援装置は、光電スイッチの受光部で受光される光量に対する閾値の調整を支援する。なお、光電スイッチは、移動している対象物11の検出領域における有無を検出する。この調整支援装置は、図1に示すように、データ取得部1、グラフ表示部2、時間受付部3、光量探索部4及び光量値表示部5を備えている。なお、調整支援装置は、システムLSI等の処理回路、又はメモリ等に記憶されたプログラムを実行するCPU等により実現される。
【0011】
データ取得部1は、光電スイッチの受光部で受光された光量の時系列データを取得する。この際、データ取得部1は、例えばブルートゥース(登録商標)等の無線通信等によって、光電スイッチから上記時系列データを取得する。
【0012】
グラフ表示部2は、データ取得部1により取得された時系列データを示すグラフを表示する。この際、グラフ表示部2は、光電スイッチが対象物11を検出している時間帯である所定時間幅の時系列データを示すグラフを表示する。また以下では、調整支援装置はタッチパネル(不図示)を有し、グラフ表示部2はこのタッチパネルにグラフを表示するものとする。
【0013】
時間受付部3は、切り取り時間(時間)の指定を受付ける。この時間受付部3は、マニュアルによる時間調整機能として機能する。
【0014】
光量探索部4は、データ取得部1により取得された時系列データの上昇部分における点と下降部分における当該点と同一光量である点との間の時間が時間受付部3により受付けられた時間と一致(略一致の意味を含む)する光量を探索する。
【0015】
光量値表示部5は、光量探索部4により探索された光量の値を表示する。以下では、光量値表示部5は、調整支援装置が有するタッチパネルに光量の値を表示するものとする。
【0016】
次に、実施の形態1に係る調整支援装置の原理について説明する。なお以下では、対象物11の通過に伴い受光部で受光される光量が減少する場合を示す。
上述したように、移動している対象物11を光電スイッチが検出している時間帯に、光量の平均的な減少量から大きく乖離して、光量の最小値への変化が極めて短時間に発生することがある。このような場合、受光部で受光された光量の最大値と最小値との間の中間値は、短時間に発生する事象に対する値になり得るため、この値を閾値とすることは適切であるとは限らない。すなわち、閾値を調整するうえで重要な判断材料は、光量の減少が発生している時間である。一方、オペレータは、対象物11の通過に要する時間を概ね把握できる。よって、オペレータは、光量の時系列データを見れば、把握している対象物11の通過に要する時間から、対象物11の通過時の光量の値を認識できる。
そこで、実施の形態1に係る調整支援装置では、光量の時系列データを示すグラフを表示する機能に加え、マニュアルによる時間調整機能を付加している。これにより、オペレータは、把握している対象物11の通過に要する時間を目安とし、対象物11の通過時の光量の値に応じて適切な閾値を選択可能となる。
【0017】
次に、実施の形態1に係る調整支援装置の動作例について、図2〜4を参照しながら説明する。なお以下では、対象物11の通過に伴い受光部で受光される光量が減少する場合を示す。また、対象物11は半透明であり、また、図5,6に示すような不透明領域111を有するものとする。
実施の形態1に係る調整支援装置の動作例では、図2に示すように、まず、データ取得部1は、光電スイッチの受光部で受光された光量の時系列データを取得する(ステップST1)。
【0018】
次いで、グラフ表示部2は、データ取得部1により取得された時系列データを示すグラフを表示する(ステップST2)。この際、グラフ表示部2は、光電スイッチが対象物11を検出している時間帯である所定時間幅の時系列データを示すグラフを表示する。
図3,4に示すグラフ101において、縦軸は光量を示し、横軸は時間[sec.]を示している。なお図3,4に示すグラフ101では、光電スイッチの受光部で受光可能な範囲を0〜9999とした場合での光量を示している。この図3,4に示すグラフ101では、光量の平均的な減少量から大きく乖離して、光量の最小値への変化が極めて短時間に発生した場合を示している。図3,4に示すグラフ101は、極端且つ典型的な光量の時系列データを示す架空のグラフであるが、実際に起こり得るグラフでもある。
【0019】
次いで、時間受付部3は、切り取り時間の指定を受付ける(ステップST3)。すなわち、オペレータは特定の切り取り時間を指定し、時間受付部3はこの指定を受付ける。図3,4では、オペレータは、グラフ101の上側にある上下キー102を操作することで、切り取り時間を指定する。図3ではオペレータが上下キー102によって切り取り時間として20sec.を指定し、図4ではオペレータが上下キー102によって切り取り時間として15sec.を指定している。
【0020】
次いで、光量探索部4は、データ取得部1により取得された時系列データの上昇部分における点と下降部分における当該点と同一光量である点との間の時間が時間受付部3により受付けられた時間と一致する光量を探索する(ステップST4)。この際、光量探索部4は、上記時系列データの上昇部分における点と下降部分における当該点と同一光量である点とを検出してその時間差を算出し、その時間差が上記切り取り時間と一致するかを判断することで、光量を探索可能である。
【0021】
次いで、光量値表示部5は、光量探索部4により探索された光量の値を表示する(ステップST5)。図3では、光量探索部4により探索された光量に対応する上記グラフの上昇部分における点と下降部分における点との間に強調線103が引かれ、その左側に光量の値として「7579」が表示されている。また図4では、光量探索部4により探索された光量に対応する上記グラフの上昇部分における点と下降部分における点との間に強調線103が引かれ、その左側に光量の値として「6588」が表示されている。
【0022】
例えば、図5に示すように対象物11が搬送用コンベア12により搬送される場合において、搬送速度(移動速度)が5mm/sec.であり、対象物11の横幅が100mmであるとする。この場合、オペレータは、対象物11の通過に要する時間が20sec.であると予め把握できる。したがって、光が遮断されている時間(光量が減少している時間)が20sec.程度であるときの光量が、実際に対象物11が通過している状態(対象物11が検出されるべき状態)における光量である。よって、オペレータは、図3,4のように20sec.以下の時間が切り取られる光量を閾値とすることは適切であると判断できる。例えば図3,4の場合には、オペレータは、両方の光量のほぼ中間の値である7000を閾値とすることは適切であると判断できる。
【0023】
なお図3,4に示す時系列データにおいて、光量の最大値は8986であり、最小値は1194である。ここで、最小値は極めて短時間に発生する光量の減少に伴うものであり、この光量の最大値と最小値との間の中間値((8986+1194)/2=5090)は、短時間に発生する事象に対する値になる。よって、この中間値を閾値とすることは適切ではない。
【0024】
なお上記では、対象物11の通過に伴い受光部で受光される光量が減少する場合を示した。しかしながら、これに限らず、対象物11の通過に伴い受光部で受光される光量が増加する場合についても実施の形態1に係る調整支援装置を適用可能であり、同様の効果が得られる。
【0025】
以上のように、この実施の形態1によれば、光電スイッチの受光部で受光された光量の時系列データを取得するデータ取得部1と、データ取得部1により取得された時系列データを示すグラフを表示するグラフ表示部2と、切り取り時間の指定を受付ける時間受付部3と、データ取得部1により取得された時系列データの上昇部分における点と下降部分における当該点と同一光量である点との間の時間が時間受付部3により受付けられた時間と一致する光量を探索する光量探索部4と、光量探索部4により探索された光量の値を表示する光量値表示部5とを備えたので、光電スイッチの受光部で受光される光量に対する閾値を適切に設定可能となる。
【0026】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 データ取得部
2 グラフ表示部
3 時間受付部
4 光量探索部
5 光量値表示部
11 対象物
12 搬送用コンベア
111 不透明領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6