特許第6956661号(P6956661)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社PFUの特許一覧

<>
  • 特許6956661-原稿搬送装置 図000002
  • 特許6956661-原稿搬送装置 図000003
  • 特許6956661-原稿搬送装置 図000004
  • 特許6956661-原稿搬送装置 図000005
  • 特許6956661-原稿搬送装置 図000006
  • 特許6956661-原稿搬送装置 図000007
  • 特許6956661-原稿搬送装置 図000008
  • 特許6956661-原稿搬送装置 図000009
  • 特許6956661-原稿搬送装置 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6956661
(24)【登録日】2021年10月7日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】原稿搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/06 20060101AFI20211021BHJP
   B65H 3/06 20060101ALI20211021BHJP
【FI】
   B65H5/06 B
   B65H3/06 330A
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-52876(P2018-52876)
(22)【出願日】2018年3月20日
(65)【公開番号】特開2019-163146(P2019-163146A)
(43)【公開日】2019年9月26日
【審査請求日】2020年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000136136
【氏名又は名称】株式会社PFU
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】下坂 喜一郎
(72)【発明者】
【氏名】森川 修一
【審査官】 佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−040235(JP,U)
【文献】 特開昭62−065859(JP,A)
【文献】 特開平06−107356(JP,A)
【文献】 特開2007−298789(JP,A)
【文献】 特開2010−269921(JP,A)
【文献】 特開2008−302513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/00− 3/68
B65H 5/00
G03G 15/00
B41J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキローラ又はパッドと、
所定のニップ幅を有するように、前記ブレーキローラ又はパッドに対して押圧して配置された原稿送り出し用のピックローラと、を有し、
前記ピックローラの円周面には、少なくとも一部に円周方向と直交する方向に対して傾斜するよう形成された複数の溝が形成され、
前記複数の溝は、前記円周方向と直交する方向において、前記円周面の一方の端部から他方の端部まで連通して形成され、
隣接する前記複数の溝の円周方向におけるピッチの最大値が、前記ニップ幅以下になるように設定され、
前記ピックローラの軸方向断面において、前記円周面に前記溝の少なくとも一部が形成され、
前記複数の溝は、前記ピックローラと前記ブレーキローラ又はパッドとが接触するニップ領域内で、前記複数の溝が形成される領域の面積が、前記複数の溝が形成されていない領域の面積より小さくなるように形成される、原稿搬送装置。
【請求項2】
前記複数の溝の前記円周方向と直交する方向に対して傾斜する角度は5〜75°の範囲である、請求項1に記載の原稿搬送装置。
【請求項3】
前記ピックローラの軸方向断面において、前記円周面に対する前記溝が占める割合は、2〜60%である、請求項1又は2に記載の原稿搬送装置。
【請求項4】
前記ピックローラの前記円周面には、さらに、円周方向に対して少なくとも一部が平行になるよう形成された縦溝部分が形成される、請求項1から3の何れか一項に記載の原稿搬送装置。
【請求項5】
前記複数の溝の幅は100〜700μmである、請求項1から4の何れか一項に記載の原稿搬送装置。
【請求項6】
前記複数の溝の深さは100〜700μmである、請求項1から5の何れか一項に記載の原稿搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スキャナ等の原稿読取装置では、原稿を搬送する際に原稿の中から繊維状物質(以下、紙粉)が発生し、紙粉が原稿を搬送するローラの円周面に付着する。ローラの円周面に紙粉が付着すると、ローラの円周面と原稿との摩擦係数が低下するため搬送性が悪化する。そのため、原稿読取装置の使用者は、頻繁にローラを清掃して紙粉を取り除かなければならず、スキャニング業務の生産性が悪化する。
【0003】
従来、紙粉による摩擦係数の低下を抑制するために、ローラの円周面の形状、例えば、ローラの円周面に回転方向に対して垂直方向に延びる溝を追加したり、円周面を研磨したりすることが行われてきた。特許文献1から4には、紙を搬送させるためにローラの外面に溝や凹凸が形成されたものが開示される。しかしながら、円周面に溝を追加したり研磨したりすることにより、円周面と搬送する原稿との接触面積が減少し、摩擦係数が低下するため搬送力が低下するという課題があった。また、ローラの円周面に横方向の溝を追加した場合、例えば対向する二つのローラが接触するニップ領域においてローラが回転することで溝が占める割合が変化し、そのため円周面と原稿とが接触する面積が変化する。接触面積の変化により摩擦係数が変化するため、安定的な搬送性が確保されないという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−183533号公報
【特許文献2】特許第5948193号公報
【特許文献3】特開平01−034825号公報
【特許文献4】特開平06−107356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
1つの側面では、紙粉による摩擦係数の低下を抑制し安定的な搬送性が確保された原稿搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの形態によれば、ブレーキローラ又はパッドと、所定のニップ幅を有するように、ブレーキローラ又はパッドに対して押圧して配置された原稿送り出し用のピックローラと、を有し、ピックローラの円周面には、少なくとも一部に円周方向と直交する方向に対して傾斜するよう形成された複数の溝が形成され、複数の溝は、円周方向と直交する方向において、円周面の一方の端部から他方の端部まで連通して形成され、隣接する複数の溝の円周方向におけるピッチの最大値が、ニップ幅以下になるように設定され、ピックローラの軸方向断面において、円周面に溝の少なくとも一部が形成される、
ることを特徴とする、原稿搬送装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
開示の原稿搬送装置により、紙粉による摩擦係数の低下が抑制され安定的な搬送性が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】開示する原稿搬送装置が用いられたスキャナ装置を示す斜視図である。
図2図1に示すスキャナ装置の内部を示す図1のII−II線に沿った断面図であり、原稿を搬送するローラの構成を示す図である。
図3】ニップ幅を示す図であり、(a)はブレーキローラとピックローラとが接触した状態を示す図、(b)はパッドとピックローラとが接触した状態を示す図である。
図4】(a)は円周面に縦溝が形成されたピックローラを示す斜視図、(b)は円周面に横溝が形成されたピックローラを示す斜視図、(c)は円周面が研磨されたピックローラを示す斜視図である。
図5】本願発明による溝が円周面に形成されたピックローラを示す斜視図である。
図6】(a)は図5の部分Aを拡大して示す図であり、ニップ領域と溝の角度との関係を示す図であり、(b)は(a)のB−B線に沿った断面図である。
図7】ピックローラの表面の溝の形状別に計測した、通紙枚数及び摩擦係数の変化を示すグラフである。
図8】(a)〜(i)は本願発明による溝の条件を満たすパターンの例を示す図である。
図9】(a)〜(d)は溝の条件を満たさないパターンの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を用いて本出願の実施の形態を、具体的な実施例に基づいて詳細に説明する。また、以下の実施の形態において同一又は類似の要素には共通の参照符号を付けて示し、理解を容易にするために、これらの図面は縮尺を適宜変更している。また、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0010】
図1に本出願の原稿搬送装置10が用いられるスキャナ装置1の外観を、図2にスキャナ装置1の内部構造を示す。スキャナ装置1は紙媒体の原稿をデジタルデータ化するための装置であり、筐体45、シュータ40、スタッカ44、原稿搬送装置10等を備える。シュータ40は、原稿を載置可能に筐体45に取付けられる。スタッカ44は、筐体45に回転可能に取付けられ、図1に示すようにスタッカ44が開いている状態で、筐体45から排出された原稿を保持する。
【0011】
スキャナ装置1の内部における原稿の搬送経路では、図2に示すようにシュータ40、シュータ40に載置された原稿を搬送する原稿搬送装置10、上面側の画像読取部41、下面側の画像読取部42を備える。さらに、画像読取部41、42に原稿を搬送する搬送ローラ43、画像読取部41、42により読み取られた原稿を搬送する搬送ローラ46を備える。本実施形態の原稿搬送装置10は、ブレーキローラ11と、ピックローラ13とを有する。
【0012】
ブレーキローラ11に、ピックローラ13が押しつけられると、図3(a)に示すように、ブレーキローラ11及びピックローラ13が接触して変形する。ブレーキローラ11とピックローラ13とが接触し変形する領域をニップ領域30と呼ぶ。ニップ領域30の用紙の搬送方向(図の矢印B方向)又はピックローラ13の回転方向(図の矢印C方向)における長さを、ニップ幅Lと呼ぶ。ピックローラ13は、所定のニップ幅Lを有するようにブレーキローラ11に対して押圧して配置される。なお、図3(b)に示すように、ピックローラ13が接触するのはブレーキローラ11の代わりに平坦なパッド12であってもよい。
【0013】
図4(a)〜(c)に従来のピックローラ113a〜113cを示す。図4(a)に示すピックローラ113aの円周面114aには、円周方向Cに対して平行に配置された複数の縦溝120aが形成される。図4(b)に示すピックローラ113bの円周面114bには、円周方向Cに対して垂直に配置された複数の横溝120bが形成される。図4(C)に示すピックローラ113cは、その円周面114cが研磨されることにより凹凸120cが形成されている。
【0014】
図4(a)に示す縦溝120aが形成されたピックローラ113aを原稿搬送装置に用いる場合、ニップ領域30において、ピックローラ113aの円周面114aがブレーキローラ11に接触する面積に変化はなく、原稿を搬送する摩擦力(グリップ力)としては有利である。一方、紙粉はピックローラ113aが回転すると例えば回転方向Cに移動するものの、縦溝120aにより紙粉は蓄積されず、円周面114aに紙粉が蓄積される。紙粉が円周面114aに蓄積されると摩擦係数が低下するというという課題がある。図4(b)に示す横溝120bが形成されたピックローラを用いる場合、ピックローラ113bの回転により紙粉が移動し横溝120bに紙粉が格納される。しかしながら、ピックローラ113bの幅方向(図の矢印D方向)に通しの溝があると、原稿と接触しない領域が発生し、その部分で搬送力を失うことになる。また、ピックローラ113bが回転すると、ニップ領域30内で原稿との接触面積にばらつきが出てくるため摩擦係数が安定しないという課題がある。図4(c)に示す円周面114cが研磨されたピックローラ113cの場合、ピックローラ113cの回転により研磨された部分に紙粉が格納される。しかしながら、図4(b)に示す横溝120bが形成されたピックローラ113bと同様、研磨部分により原稿との接触面積が部分的に減少し、摩擦係数が安定しないという課題があった。
【0015】
図5から図6(b)に本実施形態の原稿搬送装置10が備えるピックローラ13を示す。ピックローラ13は、ブレーキローラ11と所定のニップ幅Lで接触するよう設定される。ピックローラ13の円周面14には、少なくとも一部に円周方向Cと直交する方向(図の矢印D方向)に対して傾斜するよう形成された複数の溝20が形成されている。また、これらの複数の溝20は、円周方向Cと直交する方向において、円周面14の一方の端部15から他方の端部16まで連通して形成される。そして、隣接する複数の溝20の円周方向CにおけるピッチL1の最大値が、ニップ幅L以下になるよう設定されている。そして、図6(b)に示すように、ピックローラ13の軸方向断面において、円周面14には少なくとも溝20の一部が形成される。なお、軸方向断面において、円周面に対する溝が占める割合Rは以下の式により算出される。
W1/W×100=R (式1)
ただし、Wは円周面14の幅(ローラ幅)であり、W1は軸方向断面で切断したときの溝20の長さである。
【0016】
溝20を、円周方向Cと直交する方向(図の矢印D方向)に対して傾斜するように、且つ、円周面14の一方の端部15から他方の端部16まで連通して形成することで、溝により紙粉がかきとられる。また、円周面14に付着した紙粉が回転により移動して溝20に紙粉を格納させることが出来る。そのため、円周面14に紙粉が蓄積されるのが防止され、円周面14に蓄積された紙粉による摩擦係数の低下が防止される。また、さらに隣接する複数の溝20のピッチL1の最大値をニップ幅L以下にすることで、ニップ領域において、回転する際に原稿との接触面積が変化することがなくなり、摩擦係数が一定になる。
【0017】
図7に、従来のピックローラ113a−113cと本実施形態のピックローラ13を用いた場合の、原稿搬送装置が送る総枚数(通紙枚数)と摩擦係数とを計測したグラフを示す。何れのピックローラ13、113a-113cも通紙枚数が増えると摩擦係数は次第に安定していくが、本実施形態のピックローラ13を用いた場合では、従来のピックローラ113a−113cを用いた場合と比較してより大きい摩擦係数が維持されていることがわかる。
【0018】
本実施形態の原稿搬送装置10におけるピックローラ13の円周面14に形成される溝20の条件をまとめると以下の通りである。
(1)溝20は、円周面14の一方の端部15から他方の端部16まで連通して形成される(条件1)。
(2)隣接する溝20のピッチL1の大きさは、ニップ幅Lの大きさ以下である。ただし、ピッチL1は円周方向Cにおける最大の大きさである(条件2)。
(3)ピックローラ13の軸方向断面において、円周面14に溝20の少なくとも一部が形成される(条件3)。
【0019】
さらに、以下の条件に基づいて形成されるのが望ましい。
(4)ピックローラ13の軸方向断面において、円周面14に対する溝20の割合Rは2〜60%以内である(条件4)。
(5)円周方向Cと直交する方向Dに対する溝20の角度αは5〜75°の範囲である(条件5)。
【0020】
図8(a)〜(i)に上記条件を満たす他の実施例1〜9を示す。なお、実施例1〜9の溝20の角度αa〜i、溝の割合及び溝のピッチL1を求めるために、ピックローラ13のローラ幅Wを10mmとし、ニップ幅Lは5mmとした。溝20a〜20iの幅及び深さについては、溝を形成するための型の形成及び抜きの制約、並びに、紙粉の大きさ及び重量を考慮して、100〜700μmとするのがよい。
【0021】
図8(a)に示す実施例の溝20aは、ニップ領域30内で、一方の端部15から他方の端部16まで連通し、且つ、複数回折れ曲がるよう形成される。溝20aの溝角度αaは75°であり、溝の幅を500μmとしている。軸方向断面において円周面14に対する溝の割合Rは40%である。ピッチL1aは5.0mmであり、ニップ幅Lと等しくなるよう形成される。なお、大きい紙粉、例えばほつれた繊維等の長さは最大で2mm程度である。そのため、繊維等の紙粉が溝20aにはまるためには、折れ曲がる溝20aに挟まれた円周面14の最大の長さHが2mm以下であるのがよい。この場合溝角度αaは約75°となり、溝角度αaの最大値と設定することができる。
【0022】
図8(b)及び(c)に示す実施例の溝20b、20cは、中央で直角に折れ曲がりV字状に形成されたパターンである。溝20b及び溝20cの幅は500μmで溝角度αb、αcは45°、溝ピッチは2.5mmである。軸方向断面において円周面14に対する溝20b、20cの割合Rは28%である。
【0023】
図8(d)に示す実施例の溝20dは隣接する溝がクロスするよう形成される。この場合、図に示す最大の幅L1dがニップ幅L以下で形成される。溝20dの幅は500μmで溝角度αdは27°であり、軸方向断面において円周面14に対する溝20dの割合Rは6〜21%である。
【0024】
図8(e)及び図8(f)に示す実施例の溝20e、20fは一定の方向に傾斜した溝であり、ピッチL1e、L1fが2.5mmでニップ幅Lより小さく形成される。溝が傾斜する方向については何れの方向でもよい。溝20dの幅は500μmで溝角度αe、αfは45°であり、軸方向断面において円周面14に対する溝20e、20fの割合Rは28%である。
【0025】
図8(g)に示す実施例の溝20gは一定の方向に傾斜しつつも途中で折れ曲がり一部に縦溝となるように形成されたものである。ピッチL1gの最大の部分は2.5mmでニップ幅Lより小さく形成される。溝20gの幅は500μmで溝角度αgは24°である。軸方向断面において円周面14に対する溝20gの割合Rは6〜21%である。
【0026】
図8(h)に示す実施例の溝20hは一定の方向に傾斜した溝であり、溝の幅が100μmで形成される。ピッチL1hは5mmでニップ幅Lより小さく形成される。溝が傾斜する方向については何れの方向でもよい。溝角度αhは27°であり、軸方向断面において円周面14に対する溝20hの割合Rは2%で、図8に記載した実施例のなかでは最も小さい。
【0027】
図8(i)に示す実施例の溝20iは一定の方向に傾斜した溝であり、溝の幅が700μmで形成される。ピッチL1hは1.2mmでニップ幅Lより小さく形成される。溝が傾斜する方向については何れの方向でもよい。溝角度αiは5°であり、軸方向断面において円周面14に対する溝20iの割合Rは60%で、記載した実施例のなかでは最も大きい。溝の面積が多い場合、摩擦係数が小さくなるため割合Rの最大値は60%程度であり、この場合、溝角度αの最低値は5°と設定される。
【0028】
なお、図1及び図2に示す原稿搬送装置では、2つのピックローラが左右に設けられている。ピックローラが対で構成されている場合において、各ピックローラの円周面に形成される溝の形は左右対称となるように設けた方がよい。非対称の場合は、摩擦係数が異なることから、原稿が斜めになって搬送されるスキュー要因になりうるからである。すなわち、左右で同じ形状の溝であるか、左右対称、例えば一方が図8(e)に記載した溝20e、他方が図8(f)に記載した溝20fであるのがよい。
【0029】
図9に、条件を満たさない溝のパターンの例を示す。図9(a)及び(b)に示す溝220a及び溝220bのパターンは、ピッチL1の長さの条件は満たす。しかしながら、ピックローラ13の軸方向断面において、円周面14に溝が形成されていない領域Eがあるため、条件3を満たしていない。条件3を満たしていない場合、ピックローラ13が回転すると、ニップ領域30においてピックローラ13が原稿と接触する面積が一定にならないことから、摩擦係数が安定しない。
【0030】
図9(c)及び(d)に示す溝220c及び溝220dのパターンは、円周方向Cで溝が形成されていない領域Fがあるため、条件1を満たしていない。円周方向Cに連通する溝が形成されていないことから、領域Fにおいて紙粉が溝等により捕獲されず、紙粉が円周面14に蓄積する。そのため、ニップ領域30において摩擦係数が減少する可能性がある。
【0031】
以上、本出願を特にその好ましい実施の形態について図を参照して詳細に説明した。本実施形態では、スキャナ装置等に用いられる原稿搬送装置のピックローラを例に説明したが、溝はピックローラの円周面以外、例えば搬送ローラの表面に形成されてもよい。また、スキャナ装置に限定されず、プリンタ、コピー装置等に用いられる原稿搬送装置のピックローラに溝が形成されてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 スキャナ装置
10 原稿搬送装置
11 ブレーキローラ
12 パッド
13、113a―113c ピックローラ
14、114a−114c 円周面
15 一方の端部
16 他方の端部
20、20a―20i、120a−120c、220a−220d 溝
30 ニップ領域
40 シュータ
41、42 画像読取部
43、46 搬送ローラ
44 スタッカ
45 筐体
L ニップ幅
L1 ピッチ
α 溝角度
W ローラ幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9