(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の例示的実施形態を詳細に説明する。これらの例示的実施形態の例は、本開示が関係する当業者が本開示を容易に実施できるように、添付の図面に示され、以下に説明される。
【0014】
この文書全体を通して、図面を参照するものとし、上記図面では、同一の又は同様の構成要素を指すために、同一の参照番号及び記号を使用する。以下の説明において、本明細書に組み込まれる公知の機能及び構成要素の詳細な説明は、これを含めることにより本開示の主題が不明瞭になる場合は、省略する。
【0015】
ガラス製造装置を、ガラスシートを製造するために提供できる。本開示におけるガラス製造装置は、製造装置、調整装置及び制御デバイスを含んでよい。上記製造装置は、ガラスシート製造プロセスにおいてガラスリボンを成形し、その後上記ガラスリボンから少なくとも1枚のガラスシートを分離するよう構成される。上記製造装置は、以下に
図1〜3を参照しながら更に詳細に説明するフュージョンドロー装置101を含んでよい。上記調整装置は、ガラス製造プロセスの少なくとも1つのプロセス条件を調整するよう構成される。上記調整装置は、以下に
図2及び3を参照しながら更に詳細に説明する温度調整装置221を含んでよい。
【0016】
図1は、フュージョンドロー装置101を概略的に示しているが、更なる例では、アップドロー、スロットドロー又は他のガラス成形技法を、本開示の態様と共に用いてよい。このようなフュージョンドロープロセス技法を用い、本開示は、複数の温度調整要素の動作を独立して調整することにより、ガラスリボンの少なくとも周期的な、例えば連続的な熱応力補償を提供する。例えば、上記複数の温度調整要素に供給される動力の調整は、ガラスリボンが以下で更に詳細に説明される弾性領域に入る際に、応力プロファイルがリボンの中に固定される前にガラスリボン中の応力を制御するのを支援できる。従って、本開示の加工技法により、横方向応力プロファイルの微調整を達成して、応力集中及び/又は結果としてもたらされる光学的不連続を回避できる。
【0017】
装置101は、貯蔵用蓋付き容器109からバッチ材料107を受け取るよう構成された溶融用容器105を含むことができる。バッチ材料107は、モータ113によって動力供給されるバッチ送達デバイス111によって導入できる。任意のコントローラ115は、矢印117で示すように、所望量のバッチ材料107を溶融用容器105に導入するためにモータ113を起動するよう構成できる。金属プローブ119を用いて、スタンドパイプ123内の溶融ガラス121の液位を測定して、測定した情報を、通信ライン125によってコントローラ115に通信できる。
【0018】
フュージョンドロー装置101はまた、溶融用容器105の下流に配置され、第1の接続管129によって溶融用容器105に連結された、清澄用管等の清澄用容器127も含むことができる。撹拌チャンバ等の混合用容器131もまた、清澄用容器127の下流に配置でき、送達用容器133は混合用容器131の下流に配置してよい。図示されているように、第2の接続管135は清澄用容器127を混合用容器131に連結でき、第3の接続管137は混合用容器131を送達用容器133に連結できる。更に図示されているように、下降管139は、溶融ガラス121を送達用容器133からドロー装置に送達するよう位置決めできる。図示したフュージョンドロー機械140を含むフュージョンドロー装置101は、以下に更に詳細に説明するように、溶融ガラスをガラスリボンへとドロー加工するよう構成される。一例では、フュージョンドロー機械140は、溶融ガラスを下降管139から受け取るためのインレット141を備える成形用容器143を含むことができる。
【0019】
図示されているように、溶融用容器105、清澄用容器127、混合用容器131、送達用容器133、及び成形用容器143は、フュージョンドロー装置101に沿って直列に配置してよい溶融ガラスステーションの例である。
【0020】
図2は、
図1の線2−2に沿った、フュージョンドロー装置101の断面斜視図である。図示されているように、成形用容器143は成形用ウェッジ201を含み、これは、成形用ウェッジ201の対向する端部間に延在する、下方に傾斜した成形用表面部分203、205のペアを備える。下方に傾斜した成形用表面部分203、205のペアは、ドロー方向207に集束して基部209を形成する。ドロー平面211は基部209を通って延在し、ガラスリボン103は、ドロー平面211に沿ってドロー方向207に引き出すことができる。図示されているように、ドロー平面211は基部209を二等分できるが、ドロー平面211は基部209に対して他の配向で延在してもよい。
【0021】
ガラスリボンをフュージョンドロー加工するためのフュージョンドロー装置101はまた、少なくとも1つの縁部ローラ組立体を含んでよく、これは、リボンを成形用ウェッジ201の基部209から引き出す際に、ガラスリボン103の対応する縁部103a、103bを係合させるよう構成される。上記縁部ローラのペアにより、ガラスリボンの縁部の適切な仕上げが容易になる。縁部ローラ仕上げは、下方に傾斜した成形用表面部分203及び205のペアに関連する縁部配向器212の対向する表面から引き出される溶融ガラスの縁部部分の、所望の縁部特性及び適切な融合を提供する。
図2に示すように、第1の縁部ローラ組立体213aは第1の縁部103aに関連する。
図3は、ガラスリボン103の第2の縁部103bに関連する第2の縁部ローラ組立体213bを示す。各縁部ローラ組立体213a、213bは互いと略同一であってよいが、更なる例では縁部ローラの別の複数のペアは異なる特性を有してよい。
図1に示すように、ガラスリボン103の縁部103a、103bが形成されると、ガラスリボン103の幅「W」が、縁部103aと103bとの間に、ドロー方向207に対して略垂直な方向に画定される。
【0022】
図3に示すように、フュージョンドロー装置101は更に、ガラスリボン103をドロー平面211のドロー方向207に引き出すのを容易にするために、各縁部103a、103bのための第1のプルロール組立体301a及び第2のプルロール組立体301bを含むことができる。
【0023】
フュージョンドロー装置101は更に、ガラスリボン103を別個の複数のガラスシート305へと切断できる切断デバイス303を含むことができる。ガラスシート305を、液晶ディスプレイ(LCD)等の様々なディスプレイデバイスに組み込むために、個々のガラスシートへと細分化してよい。切断デバイスとしては、レーザデバイス、機械的スコーリングデバイス、移動式アンビル機械、及び/又はガラスリボン103を別個の複数のガラスシート305へと切断するよう構成された他のデバイスが挙げられる。
【0024】
図2を参照すると、一例として、溶融ガラス121は、成形用容器143のトラフ215に流れ込むことができる。次に溶融ガラス121は、対応する堰217a、217bを同時に越えて流れ、対応する堰217a及び217bの外側表面219a、219bを下向きに流れ落ちることができる。続いて溶融ガラスの各流れは、下方に傾斜した成形用表面部分203及び205に沿って、成形用容器143の基部209へと流れ、ここで流れが集束し、融合してガラスリボン103となる。次にガラスリボン103は、ドロー方向207に沿ってドロー平面211の基部209から引き出される。
【0025】
図3に移ると、ガラスリボン103は、基部209から、ドロー平面211のドロー方向207に、粘性ゾーン307から硬化ゾーン309へと引き出される。硬化ゾーン309では、ガラスリボン103は、粘性状態から、所望の断面プロファイルを有する弾性状態に硬化される。上記ガラスリボンは続いて、硬化ゾーン309から弾性ゾーン311へと引き出される。弾性ゾーン311では、粘性ゾーン307からのガラスリボンのプロファイルは、ガラスリボンの特性として固定される。硬化したリボンは、この構成から離れるように曲げてよいが、内部応力により、ガラスリボンは元の硬化済みプロファイルに戻るよう付勢され得る。
【0026】
図2〜3に示すように、ガラスリボン103を生産するための装置のうちのいずれは、温度調整装置221を含むことができる。例えば、
図2に示すように、温度調整装置221は、ドロー方向207を例えば垂直に横切って延在する少なくとも1つの温度調整軸に沿った各側方位置225に位置決めできる、複数の温度調整要素223を含むことができる。
【0027】
図示されているように、温度調整装置221は、上記少なくとも1つの軸を、第1の温度調整軸227a及び第2の温度調整軸227bとして提供できるが、更なる例では単一の又は3つ以上の温度調整軸を提供してよい。図示されているように、第1の温度調整軸227a及び第2の温度調整軸227bはそれぞれ、略真っ直ぐな軸を含むことができるが、更なる例では湾曲した又は他の軸形状を提供してよい。なお更に、第1の軸227a及び第2の軸227bは、互いに対して略平行であるが、更なる例ではこれらの軸は互いに対して角度をなしていてもよい。
【0028】
上記温度調整軸は、ガラスリボンに対して様々な高さで配置してよい。例えば、
図2及び3に示すように、第1の温度調整軸227a及び第2の温度調整軸227bは、硬化ゾーン309内に配置される。更に又はあるいは、更なる例では、各温度調整軸又は少なくとも1つの温度調整軸を、粘性ゾーン307及び/又は弾性ゾーン311内に配置してよい。
【0029】
上述したように、
図2に示すように、複数の温度調整要素223を各側方位置225に配置でき、ここで上記温度調整要素は、ガラスリボン103の幅「W」に沿ったガラスリボン103の横方向温度プロファイルを調整するよう構成される。
図2に示すように、各温度調整軸上の複数の温度調整要素223はそれぞれ、各温度調整軸に沿って直列に、互いから離間していてよい。例えば、
図2に示すように、温度調整要素223のうちの1つを、ガラスリボン103の縁部103aからの距離「L1」である側方位置225に配置してよく、隣接する温度調整要素223を距離「L1」より長い縁部103aからの距離「L2」に配置してよい。いくつかの例では、温度調整要素223は、ガラスリボンの幅「W」に沿って、互いから等間隔に離間させて配置してよい。いくつかの例では、温度調整要素を、ガラスリボンの縁部103a、103bに対して異なる距離で配置してよい。例えば、温度調整要素223を共に、ガラスリボン103の中央領域よりも縁部103a及び103bにより近接させて配置してよく、これによりガラスリボンの縁部において、中央部分よりも良好な熱伝達が可能となる。
【0030】
図示されているように、温度調整要素223を、一列に、互いから離間させて配置できるが、更なる例では温度調整要素のマトリクスを提供してよい。図示されているように、温度調整要素223を互いに略同一とすることもできるが、更なる例では、異なるサイズを有する要素又は異なるタイプの要素を用いてよい。例えば、一例では、温度調整要素のサイズ及び/又はタイプを、ガラスリボンの中央部分よりも縁部に対して良好な熱伝達を可能とするよう設計してよい。一例では、温度調整要素223は加熱コイルを備えることができ、上記加熱コイルを通過する電流からの電気抵抗によって熱が生成される。
【0031】
これもまた
図3に示すように、ガラス製造装置は更に、制御デバイス323を含むことができる。上記制御デバイスは、コントローラ325及び応力センサ装置313を含んでよい。制御デバイス323は、少なくとも1つのプロセス条件を調整するよう、調整デバイスを制御する。
【0032】
応力センサ装置313は、ガラスシート305の応力特性を測定するよう構成される。センサ要素317は、ガラスシート305の複数の位置における応力を感知するよう適合された様々な構成を有することができる。一例では、応力センサ装置313は、偏光を用いて複数の位置における応力を決定するよう構成されたデバイスを含んでよい。このような例により、偏光を用いて、ガラスシートを破壊することなく応力特性を決定できる。
【0033】
制御デバイス323は、以下で更に説明するような、ガラスの修正済み応力特性情報に基づいて温度調整要素223の動作を独立して調整することによる、ガラスリボン103の少なくとも周期的な、例えば連続的な熱応力補償のために構成される。
【0034】
コントローラ325は、複数の温度調整要素223及び応力センサ装置313と通信できる。例えば、図示されているように、応力センサ装置313を、通信ライン329によってコントローラ325と通信できるよう配置できる。同様に、温度調整軸227a、227bに関連する複数の温度調整要素223を、それぞれの通信ライン331、333によってコントローラ325と通信できるよう配置できる。
【0035】
一例では、制御デバイス323は、動力調整と、これに対応するガラスシートの修正済み応力特性に対する影響との関係をリスト化したデータベースを含むことができる。例えば、上記データベースは、以前の動力調整、及びこれに対応する修正済み応力特性に対して観察された影響の固定リストに基づくことができる。一例では、データベースは固定されており、このデータベースを今後の動力調整のために用いて、ガラスリボン内の修正済み応力を補償してよい。更なる例では、データベースは動的であってよく、データベースを経時的にアップデートして新しいデータを含めてよい。例えば、温度調整要素の動作の調整後の修正済み応力特性情報に基づいて、動力調整と、これに対応するガラスシートの修正済み応力特性に対する影響との関係を適合させるよう、データベースを構成してよい。
【0036】
他の例では、制御デバイス323は、動力調整を論理的に実施して、ガラスリボン103の修正済み応力特性を最小化できる。例えば、温度調整要素の動力の変化と、結果として得られるガラスリボン内の修正済み応力との関係の数理モデルを用いて、動力調整を実施できる。
【0037】
更なる例では、制御デバイス323は任意に、ファジー論理コントローラを組み込むことができるが、更なる例では他の制御デバイスを使用してよい。
【0038】
いくつかの例では、応力センサ装置313を、全てではないガラスシート305の応力特性情報を周期的に測定するよう設計してよい。例えば、測定プロセスがガラスシートを損傷又は破壊する場合は、全てではないガラスシート305の応力特性情報を周期的に測定することは望ましい場合がある。このような例では、十分な枚数のシートを上述のように周期的に検査して、ガラスシートの破壊的試験による材料の浪費を最小化しながら、応力特性情報の変化に対応できる。一例では、少なくとも1枚のガラスシートを、24時間毎、例えば4時間毎、例えば1時間毎に測定してよい。更なる例では、60枚のガラスシートから少なくとも1枚のガラスシート、例えば240枚のガラスシートから少なくとも1枚のガラスシート、例えば1440枚のガラスシートから少なくとも1枚のガラスシートを測定してよい。更なる例では、ガラスシートの他のパーセンテージ、又はガラスシートの測定と測定との間の他の時間を、特定の用途に基づいて選択してよい。
【0039】
これより、ガラスシートの修正済み応力値を得るための方法について、
図4〜7を参照しながら十分に説明する。上記方法は:a)ガラスシートの複数の応力値をガラスシートの複数の位置においてそれぞれ決定するステップ;b)上記ガラスシートを備える偏光式ディスプレイに関して、上記偏光式ディスプレイが光透過をブロックする状態にある場合に、上記各複数の位置における複数の光漏れ度合いを決定するステップ;及びc)決定された上記複数の光漏れ度合いに基づいて決定された上記複数の応力値を修正するステップを含んでよい。
【0040】
図4は、ガラスシートを通過する光の複屈折データを測定するためのデバイスの概念図である。
図4に示すように、光源11が放出する光は、45°直線偏光子12を通過し、続いて0°光弾性変調器13を通過する。0°光弾性変調器13を通過する間、光の位相は光の周波数に応じて変化する。位相が変化した光はガラス試料14を通過し、その間に光の偏光はガラス試料14の内部応力に応じて変化する。偏光が変化した光の一部分は鏡15及び−45°直線偏光子16を通過し、その後その輝度が第1の輝度センサ(光ダイオード)17によって測定される。上記偏光が変化した光の他の部分は、鏡15から反射されて0°直線偏光子18を通過し、その後その輝度が第2の輝度センサ(光ダイオード)19によって測定される。上記光の遅延及び方位角は、測定された上記輝度値から、ミュラー行列を用いて算出される。当業者には、本実施形態による光の遅延及び方位角を、
図4に示したデバイスのみを用いて測定する必要はないことが明らかであろう。寧ろ
図4は、ガラスシートの光の遅延及び方位角を測定するための例示的な方法を示す例にすぎず、遅延及び方位角は他の公知の方法を用いて測定してよい。
【0041】
ガラスシートの応力値は、光がガラスシートを通過する際に応力により生じる透過光の遅延及び方位角を測定し、上記遅延及び上記方位角を応力値に変換することによって得ることができる。
【0042】
まず、ガラスシートを通過する光の遅延及び方位角θを、ガラスシートの複数の位置において取得する。
【0043】
以下の式1は、光の遅延と主応力との関係を表す。複数の主応力値間の差異は、以下の式1を用いて算出できる。
【0045】
応力成分τ
xyは以下の式2を用いて算出される。
【0047】
応力成分σ
xx及びσ
yyは、以下の式3の偏微分方程式からτ
xyを用いて算出できる。
【0049】
温度差によって形成されるほとんどの残留応力は、y方向に垂直な平面に対してy方向に作用するσ
yyであり、応力制御は主にσ
yyに対して実施してよい。
【0050】
本実施形態によるガラスシートは、ドロープロセス(ダウンドロープロセス、アップドロープロセス等)によって製作できる。ここで、上記ガラスシートの長手方向(y方向)は単純に垂直方向を指すのではなく、ドロープロセスにおけるドロー方向を指す。例えば、ダウンドロー又はフュージョンプロセスでは、上記ガラスシートの長手方向(y方向)は垂直方向であり、上記ガラスシートの横方向(x方向)は水平方向である。更に、フロートプロセスでは、上記ガラスシートの長手方向は水平方向である。
【0051】
図5は、ガラスシートの複数の光漏れ度合いL2を取得する方法を概略的に示す。
図5を参照すると、上述したように電場をLC層に印加した場合、理論的には、バックライトからの光はLCパネルを通過できない。しかしながら実際には、比較的小さい切断済みシートはガラスシートの応力によるゆがみを受ける場合があり、このゆがみによって光漏れが生じ得る。
【0052】
「光漏れ度合い(light leakage degree)」は、LCパネルが光透過がブロックされた状態にあるときの、LCパネルを通過する光の量を示す。この光漏れ度合いは、物理的に、又は遅延データR1及び方位角データを光漏れ度合いに変換することにより、決定できる。
【0053】
TNパネルの偏光条件における光漏れ度合いは、以下の式4で表現される。
【0054】
光漏れ度合い=2sin
2(θ)cos
2(θ)(1−cos(遅延))(4)
好適な測定を用いて、複数の光漏れ度合いL2に含まれ得るノイズを除去してよい。例えば、まず、一連の複数の位置における複数の光漏れ度合いL1を、遅延データR1及び方位角データを光漏れ度合いL1に変換することにより決定する。次に、各位置における及び隣接する位置におけるガラスシートの光漏れ度合いの平均値を決定し、この平均値を各位置に関する光漏れ度合いL2と呼ぶ。例えば、
図2に示すように、9点移動ウィンドウ21内の中心点における光漏れ度合いL1と、上記中心点と取り囲む隣接する8点における光漏れ度合いL1との平均値を、上記中心点における光漏れ度合いL2として決定してよい。
【0055】
図6は、修正前のガラスシートの応力値S2のマップ及び光漏れ度合いL2のマップを示す。
【0056】
図6を参照すると、単一の長手方向ラインに沿った複数の位置の集合それぞれにおける応力値S2は同一であると想定してよく、上記長手方向ラインは、ガラスシートの長手方向に延在する概念上のラインである。いくつかの実施形態では、上記長手方向ライン上の複数の位置の集合それぞれにおけるガラスシートの応力値を得ることができ、その後これらの応力値の平均値を、複数の位置の集合それぞれに関する応力値S2として相関させることができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、ある特定の位置における光漏れの度合いは、上記特定の位置における応力の値に比例しない場合がある。よって、光漏れにかかわらず、ガラスシートにおける応力の全ての値を単純に制御することは効果的でない場合がある。寧ろ、多量の光漏れを誘発する応力の量を選択的に制御することが、ガラスシートの品質の改善においてより効果的となり得る。いくつかの実施形態では、上述したように、ガラスリボンの幅に沿った横方向温度プロファイルを選択的に制御することによって、少量の光漏れしか誘発しない他の応力を制御することなく、このような多量の光漏れを誘発する応力の量を低減してよい。
【0058】
ダウンドロー、フロート又は他のガラス加工によって製造されたガラスシートにおける光漏れのいくつかの原因としては、場合によって水平方向又は垂直方向の温度差による応力の生成、及び外力によって物理的に誘発された温度差による応力の生成が挙げられる。例えばダウンドロー加工において、熱履歴は理論上、垂直方向(ガラスシートの長手方向)又はドロー方向において同一であるはずである。よって、本明細書に記載のいくつかの実施形態は、シート成形ゾーンにおける水平温度プロファイルを自動的に制御することにより、水平方向(ガラスシートの横方向)の温度差による応力を制御できる。しかしながら実際の製作現場では、設備内でのシートの移動及び流れの変化によって局所的な温度差が引き起こされ得る。よって、垂直方向の応力の値は均一でない場合があり、島の形態の高い値の応力が局所的な領域に集中し得る。
【0059】
従来、ガラスシートを製作するプロセスでは、水平温度を応力(σ
yy)プロファイルS2に基づいて調整できる。しかしながら、
図6に点線で描かれた楕円を比べると、低い値のσ
yyは高い度合いの光漏れを示す位置に出現し得ることが観察できる。よって、従来の方法を用いると、光漏れ度合いの改善の効果はわずかなものとなり得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、局所的な高い度合いの光漏れに対処するために、σ
yyプロファイルを、光漏れの度合いに応じてσ
yyプロファイルに重みを割り当てることにより修正してよく、その後、修正された上記σ
yyプロファイルを制御してよく、これによって光漏れの度合いを低減する効果を改善できる。
【0061】
図7は、ガラスシートにおける平均修正済み応力値MS2を得る方法を概略的に示す。
図7を参照すると、いくつかの実施形態は、外的影響及びダウンドロー加工におけるプロセスの変更によって引き起こされる島形状の局所的な光漏れの集中を低減するために、データフィルタリング及び処理スキームを提供できる。
【0062】
例として、平均前の修正済み応力値MS1を、光漏れの度合いL2に応じて異なる重みWを応力の値S2に割り当てることにより取得できる。例えば、複数の光漏れの度合いL2のうちの、ある特定の光漏れの度合いを、閾値として設定できる。光漏れの度合いL2が上記閾値より低い位置は0の重みWを割り当てられることになり、光漏れの度合いL2が上記閾値以上である位置は1の重みWを割り当てられることになる。続いて、応力の値S2に適切な重みWを乗じることによって、平均前の修正済み応力値MS1を取得できる。
【0063】
いくつかの実施形態では、光漏れの度合いL2が上記閾値より低い位置には0の重みWを割り当てることができ、光漏れの度合いL2が上記閾値以上である位置には、光漏れの度合いL2に比例する重みWを割り当てることができる。続いて、平均前の修正済み応力値MS1を、応力の値S2に適切な重みWを乗じることによって取得できる。
【0064】
ガラスシートのこれらの平均前の修正済み応力値MS1を取得した後、各長手方向ライン上の複数の位置における平均前の修正済み応力の値MS1の平均値を算出することによって、平均修正済み応力値MS2を取得できる。修正済み応力MS2の値に基づいて、ガラスシートを製作するプロセスを修正すると、高い度合いの光漏れを有する領域における応力制御をより効果的に実施できる。これを用いて光漏れの集中を低減できる。
【0065】
これより、
図8及び9を参照して、修正済み応力値に基づいて温度分布を調整する方法を説明する。
【0066】
図8は、本開示のある実施形態における、修正済み応力値MS2に基づいて温度分布を調整した結果を概略的に示し、修正済み応力は、
図7の上述の方法を用いて取得したものである。
図8を参照すると、本明細書に記載の実施形態に従って製作されたガラスシートにおいて、左の画像は応力S2のマップ及び修正前の光漏れの度合いL2のマップを示し、中央の画像は修正済み応力MS2のマップを示し、右の画像は応力S12のマップ及び光漏れの度合いL12のマップを概略的に示す。
【0067】
図8において観察できるように、高い度合いの光漏れに関連する応力MS2を適切に制御した後、応力プロファイルS12を高い度合いの光漏れL12を示す位置において有意に減少させることができる。
【実施例】
【0068】
光漏れの度合いを低減するいくつかの実施形態を試験するために、評価を実施した。以下の表1から明らかとなるように、本明細書に記載の例示的な方法の応用により、数週間にわたり2つのガラスシート製作ラインで製作されるガラスシートの光漏れL12の最大度合いの平均及び分布を有意に低減できるが、従来の応力制御方法は、光漏れL22の島形状の局所的な集中を低減する能力が限られていた。例示的実施形態を用いると、発生した光漏れL12の度合いに基づいて応力プロファイルMS2を得て、この応力プロファイルMS2を光漏れの制御に応用することにより、光漏れL12の集中を有意に低減できた。
【0069】
【表1】
【0070】
図9は、本開示のある実施形態における、修正済み応力値MS2に基づいて温度分布を調整した結果と、従来の方法で応力値S2に基づいて温度分布を調整した結果との比較の図示である。
図9に示すように、従来技術の応力制御方法で製造されたガラス基板の光遅延マップR22(光の最大遅延:1.26)及び光漏れ度合いマップL22(最大光漏れ度合い:2.91*10
−5)と、本実施形態による応力制御方法を表1の加工ライン1に適用することにより製造された試料ガラス基板の光遅延マップR12(光の最大遅延:0.84)及び光漏れ度合いマップL12(最大光漏れ度合い:0.80*10
−5)とを比較する。従来の応力制御方法の、島形状の局所的な光漏れの集中を低減する能力は限られているが、例示的実施形態は、島形状の局所的な光漏れの集中を有意に低減できた。
【0071】
本開示において言及した方法は、液晶ディスプレイ(LCD)及び有機発光ダイオード(organic light‐emitting diode:OLED)といったディスプレイデバイス用のガラスシートのみならず、種々の他のガラスシートにも応用できる。上記方法は、そのゆがみが最終製品の品質に影響を及ぼし得るガラスシートに有用となり得る。以上の言及は液晶(LC)パネルにおける光漏れに関するものであるが、本開示の目的はこのような光漏れの度合いの改善に限定されないことを理解されたい。というのは、光漏れの度合いは単にガラスシートの品質を視覚的に表すための指標として使用されているためである。
【0072】
本開示の具体的な例示的実施形態に関する以上の説明は、図面を参照して提示されている。以上の説明は、網羅的なものであること、又は本開示をここで開示された形態に正確に限定することを意図したものではなく、当業者には、以上の教示に照らして多数の修正及び変更が明らかに可能である。
【0073】
従って、本開示の範囲は以上の実施形態に限定されず、本明細書に添付される請求項及びその均等物により定義されることを意図している。
【0074】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0075】
実施形態1
a)ガラスシートの複数の応力値を上記ガラスシートの複数の位置においてそれぞれ決定するステップ;
b)上記ガラスシートを備える偏光式ディスプレイに関して、上記偏光式ディスプレイが光透過をブロックする状態にある場合に、上記複数の位置における複数の光漏れ度合いをそれぞれ決定するステップ;
c)決定された上記複数の光漏れ度合いに基づいて決定された上記複数の応力値を修正するステップ;及び
d)修正された上記複数の応力値に基づいてガラスシート製造プロセスの少なくとも1つのプロセス条件を調整しながら、上記ガラスシート製造プロセスにおいて少なくとも1つの追加のガラスシートを製造するステップ
を含む、ガラス製造方法。
【0076】
実施形態2
上記複数の位置は、位置の複数の集合を含み、上記位置の集合はそれぞれ、上記ガラスシートの長手方向に配設され、
上記決定された応力値は上記位置の集合それぞれにおいて同一である、実施形態1に記載の方法。
【0077】
実施形態3
上記ステップa)は、上記位置の集合それぞれにおける上記応力値の平均を算出するステップを更に含み、
上記ステップc)は、上記位置の集合それぞれに関する上記平均を、上記位置の集合それぞれにおいて決定された上記応力値として用いて、上記修正を実施する、実施形態2に記載の方法。
【0078】
実施形態4
上記複数の応力値はそれぞれ、上記ガラスシートの長手方向に垂直な平面に対して、上記ガラスシートの長手方向に作用する応力成分の値を含む、実施形態1に記載の方法。
【0079】
実施形態5
上記複数の位置は、位置の複数の集合を含み、上記位置の集合はそれぞれ、上記ガラスシートの長手方向に配設され、
上記ステップc)は:
上記位置の集合それぞれにおいて決定された上記応力値を、平均前の修正済み応力値へと修正するステップ;
上記位置の集合それぞれにおける上記平均前の修正済み応力値の平均を算出するステップ
を含み、
上記ステップd)は、上記位置の集合それぞれに関する上記平均を、上記位置の集合それぞれにおける上記修正済み応力値として用いて、上記調整を実施する、実施形態1に記載の方法。
【0080】
実施形態6
上記ガラスシート製造プロセスはドロープロセスを含み、
上記ガラスシートの上記長手方向は、上記ドロープロセスにおけるドロー方向である、実施形態2、4及び5のいずれか1つに記載の方法。
【0081】
実施形態7
上記ステップb)は、各上記位置及び各上記位置に隣接する少なくとも1つの隣接位置における、上記光漏れ度合いの平均を算出するステップを更に含み、
上記ステップc)は、各上記位置の上記平均を、各上記位置において決定された上記光漏れ度合いとして用いて、上記修正を実施する、実施形態1に記載の方法。
【0082】
実施形態8
上記ステップa)は:
b1)上記ガラスシートの上記複数の位置における複屈折データを取得するステップ;及び
b2)上記複屈折データから上記複数の応力値を決定するステップ
を含む、実施形態1に記載の方法。
【0083】
実施形態9
上記ステップb)は:
b1)上記ガラスシートの上記複数の位置における複屈折データを取得するステップ;及び
b2)上記複屈折データから上記複数の光漏れ度合いを決定するステップ
を含む、実施形態1に記載の方法。
【0084】
実施形態10
上記複屈折データは、上記ガラスシートの上記複数の位置における遅延データ及び方位角データを含む、実施形態8又は9に記載の方法。
【0085】
実施形態11
上記偏光式ディスプレイは、ねじれネマティックディスプレイである、実施形態1に記載の方法。
【0086】
実施形態12
上記ステップc)は、決定された上記複数の応力値に重みをそれぞれ割り当てることにより、決定された上記複数の応力値を修正し、各上記位置に関する上記重みは、各上記位置において決定された上記光漏れ度合いに応じて変動する、実施形態1に記載の方法。
【0087】
実施形態13
上記割り当ては、各上記位置における上記応力値に、各上記位置に関する上記重みを乗じることを含む、実施形態12に記載の方法。
【0088】
実施形態14
上記複数の位置のうちのいずれの2つの位置であって、上記いずれの2つの位置のうちの一方の位置における上記光漏れ度合いが上記いずれの2つの位置のうちのもう一方の位置における上記光漏れ度合いよりも高くなるように、上記光漏れ度合が異なる、いずれの2つの位置を比較した場合に、上記一方の位置に関する重みは、上記もう一方の位置に関する重み以上である、実施形態12に記載の方法。
【0089】
実施形態15
上記一方の位置における上記光漏れ度合いが所定の閾値以上であり、上記もう一方の位置における上記光漏れ度合いが上記所定の閾値より低い場合、上記一方の位置における上記重みは、上記もう一方の位置に関する上記重みより大きい、実施形態14に記載の方法。
【0090】
実施形態16
上記一方の位置における上記重みは、上記一方の位置における上記光漏れ度合いに比例し、上記もう一方の位置に関する上記重みは0である、実施形態15に記載の方法。
【0091】
実施形態17
上記ガラスシート製造プロセスは、ガラスリボンをドロー加工した後、少なくとも1つの追加のガラスシートへと切断する、ドロープロセスを含み、
上記少なくとも1つのプロセス条件は、上記ガラスリボンの幅に沿った横方向温度プロファイルを含み、上記幅は、上記ドロープロセスにおけるドロー方向を横切るように延在する、実施形態1に記載の方法。
【0092】
実施形態18
上記ステップd)は、上記ガラスリボンの上記幅に沿って位置決めされた複数の温度調整要素の動作を独立して調整することにより、上記横方向温度プロファイルを調整する、実施形態17に記載の方法。
【0093】
実施形態19
上記ステップd)は、上記複数の温度調整要素に供給される動力をそれぞれ独立して調整する、実施形態18に記載の方法。
【0094】
実施形態20
上記ステップd)は、上記少なくとも1つの追加のガラスシートに関する上記少なくとも1つのプロセス条件を調整することにより、上記少なくとも1つの追加のガラスシート中の複数の修正済み応力値を制御する、実施形態1に記載の方法。
【0095】
実施形態21
上記ステップa)〜d)を繰り返すステップe)を更に含む、実施形態1に記載の方法。
【0096】
実施形態22
ガラスシート製造プロセスにおいてガラスリボンを成形し、その後上記ガラスリボンからガラスシートを分離するよう構成された、製造装置;
上記ガラス製造プロセスの少なくとも1つのプロセス条件を調整するよう構成された、調整装置;及び
制御デバイス
を備える、ガラス製造装置であって、
上記制御デバイスは:
上記ガラスシートの複数の応力値を上記ガラスシートの複数の位置においてそれぞれ決定し;
上記ガラスシートを備える偏光式ディスプレイに関して、上記偏光式ディスプレイが光透過をブロックする状態にある場合に、上記複数の位置における複数の光漏れ度合いをそれぞれ決定し;
決定された上記複数の光漏れ度合いに基づいて、決定された上記複数の応力値を修正し;
修正された上記複数の応力値に基づいて、上記少なくとも1つのプロセス条件を調整するように上記調整装置を制御するよう、構成される、ガラス製造装置。