(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2A】本開示の実施形態に従った水晶体嚢内に配置されたモジュール式IOLのそれぞれ正面図および側方断面図。
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図2B】本開示の実施形態に従った水晶体嚢内に配置されたモジュール式IOLのそれぞれ正面図および側方断面図。
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図3A】本開示の実施形態に従ったモジュール式IOLを植え込む方法を概略的に示すそれぞれ正面図および側方断面図。
【
図3B】本開示の実施形態に従ったモジュール式IOLを植え込む方法を概略的に示すそれぞれ正面図および側方断面図。
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図3C】本開示の実施形態に従ったモジュール式IOLを植え込む方法を概略的に示すそれぞれ正面図および側方断面図。
【
図3D】本開示の実施形態に従ったモジュール式IOLを植え込む方法を概略的に示すそれぞれ正面図および側方断面図。
【
図4A】本開示の実施形態に従ったモジュール式IOLを植え込む方法を概略的に示すそれぞれ正面図および側方断面図。
【
図4B】本開示の実施形態に従ったモジュール式IOLを植え込む方法を概略的に示すそれぞれ正面図および側方断面図。
【
図4C】本開示の実施形態に従ったモジュール式IOLを植え込む方法を概略的に示すそれぞれ正面図および側方断面図。
【
図4D】本開示の実施形態に従ったモジュール式IOLを植え込む方法を概略的に示すそれぞれ正面図および側方断面図。
【
図5】一次レンズと二次レンズとの間の接続のために表面下取付機構が提供されている本開示の実施形態に従ったモジュール式IOLの正面図。
【
図6A】表面下取付機構の2つの実施形態を示す
図5の線6−6に沿って得られた断面図。
【
図6B】表面下取付機構の2つの実施形態を示す
図5の線6−6に沿って得られた断面図。
【
図7】一次レンズと二次レンズとを接続するために延長取付機構が提供されている本開示の実施形態に従ったモジュール式IOLの正面図。
【
図8A】延長取付機構の3つの実施形態を示す
図7の線8−8に沿って得られた断面図。
【
図8B】延長取付機構の3つの実施形態を示す
図7の線8−8に沿って得られた断面図。
【
図8C】延長取付機構の3つの実施形態を示す
図7の線8−8に沿って得られた断面図。
【
図9A】一次レンズに対する二次レンズの位置を調節するための取付機構の様々な位置を示す正面図。
【
図9B】一次レンズに対する二次レンズの位置を調節するための取付機構の様々な位置を示す正面図。
【
図9C】一次レンズに対する二次レンズの位置を調節するための取付機構の様々な位置を示す正面図。
【
図9D】一次レンズに対する二次レンズの位置を調節するための取付機構の様々な位置を示す正面図。
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図10】一次レンズと二次レンズとの間の接続のためにエッチングされた表面下取付機構が提供されている本開示の実施形態に従ったモジュール式IOLの正面図。
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図11A】エッチングされた表面下取付機構の様々な実施形態を示す
図10に示したモジュール式IOLの断面図。
【
図11B】エッチングされた表面下取付機構の様々な実施形態を示す
図10に示したモジュール式IOLの断面図。
【
図11C】エッチングされた表面下取付機構の様々な実施形態を示す
図10に示したモジュール式IOLの断面図。
【
図11D】エッチングされた表面下取付機構の様々な実施形態を示す
図10に示したモジュール式IOLの断面図。
【
図11E】エッチングされた表面下取付機構の様々な実施形態を示す
図10に示したモジュール式IOLの断面図。
【
図11F】エッチングされた表面下取付機構の様々な実施形態を示す
図10に示したモジュール式IOLの断面図。
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図12A】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの、それぞれ、正面図、断面図および詳細図。
【
図12B】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの、それぞれ、正面図、断面図および詳細図。
【
図12C】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの、それぞれ、正面図、断面図および詳細図。
【
図13A】レーザーエッチングによって形成された溝(矢印参照)の、それぞれ4倍および40倍の代表的な顕微鏡写真。
【
図13B】レーザーエッチングによって形成された溝(矢印参照)の、それぞれ4倍および40倍の代表的な顕微鏡写真。
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図14】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図14A】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図14B】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図14C】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
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図15】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図15A】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図15B】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図15C】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図15D】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
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図16】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図16A】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図16B】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図16C】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図16D】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図17】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図17A】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図17B】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図17C】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
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図18】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図18A】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図18B】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図18C】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図19】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図19A】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
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図19B】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図19C】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図19D】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図20】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図20A】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図20B】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図20C】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図20D】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図20E】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図20F】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図20G】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図20H】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図20I】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図21】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図21A】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図21B】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図21C】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図21D】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図21E】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図22】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図22A】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図22B】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図22C】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
【
図22D】本開示の実施形態に従った別のモジュール式IOLの様々な図。
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図23A】本開示の実施形態に従ったモジュール式IOLのためのレンズ除去システムの概略図。
【
図23B】本開示の実施形態に従ったモジュール式IOLのためのレンズ除去システムの概略図。
【
図23C】本開示の実施形態に従ったモジュール式IOLのためのレンズ除去システムの概略図。
【
図23D】本開示の実施形態に従ったモジュール式IOLのためのレンズ除去システムの概略図。
【
図23E】モジュール式IOLのためのレンズ除去システムの別の実施形態の概略図。
【
図23F】モジュール式IOLのためのレンズ除去システムの別の実施形態の概略図。
【
図23G】モジュール式IOLのためのレンズ除去システムの別の実施形態の概略図。
【
図23H】モジュール式IOLのためのレンズ除去システムの別の実施形態の概略図。
【
図24】二次レンズの交換が術中に検出された準最適な光学的結果によって動機づけられている、本開示の実施形態に従ったモジュール式IOLを用いるための方法の概略フローチャート。
【
図25】二次レンズの交換が術後に検出された準最適な光学的結果によって動機づけられている、本開示の実施形態に従ったモジュール式IOLを用いるための方法の概略フローチャート。
【
図26】二次レンズはインサイチューで取付手段を形成することによって一次レンズに取り付けられる、本開示の実施形態に従ったモジュール式IOLを用いるための方法の概略フローチャート。
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図27】本開示に従ったモジュール式IOLのさらに別の実施形態の様々な図。
【
図27A】本開示に従ったモジュール式IOLのさらに別の実施形態の様々な図。
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図27B】本開示に従ったモジュール式IOLのさらに別の実施形態の様々な図。
【
図27C】本開示に従ったモジュール式IOLのさらに別の実施形態の様々な図。
【
図27D】本開示に従ったモジュール式IOLのさらに別の実施形態の様々な図。
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図28A】本開示に従ったモジュール式IOLのさらに別の実施形態の様々な図。
【
図28B】本開示に従ったモジュール式IOLのさらに別の実施形態の様々な図。
【
図28C】本開示に従ったモジュール式IOLのさらに別の実施形態の様々な図。
【
図28D】本開示に従ったモジュール式IOLのさらに別の実施形態の様々な図。
【
図28E】本開示に従ったモジュール式IOLのさらに別の実施形態の様々な図。
【
図28F】本開示に従ったモジュール式IOLのさらに別の実施形態の様々な図。
【
図28G】本開示に従ったモジュール式IOLのさらに別の実施形態の様々な図。
【
図29A】本開示に従ったモジュール式IOLのさらに別の実施形態の様々な図。
【
図29B】本開示に従ったモジュール式IOLのさらに別の実施形態の様々な図。
【
図29C】本開示に従ったモジュール式IOLのさらに別の実施形態の様々な図。
【
図29D】本開示に従ったモジュール式IOLのさらに別の実施形態の様々な図。
【
図29E】本開示に従ったモジュール式IOLのさらに別の実施形態の様々な図。
【
図29F】本開示に従ったモジュール式IOLのさらに別の実施形態の様々な図。
【
図29A2】本開示に従ったモジュール式IOLのさらに別の実施形態の様々な図。
【
図29B2】本開示に従ったモジュール式IOLのさらに別の実施形態の様々な図。
【
図29C2】本開示に従ったモジュール式IOLのさらに別の実施形態の様々な図。
【
図29D2】本開示に従ったモジュール式IOLのさらに別の実施形態の様々な図。
【
図29E2】本開示に従ったモジュール式IOLのさらに別の実施形態の様々な図。
【
図29G】モジュール式IOLの眼内への挿入および除去を示す解剖図。
【
図29H】モジュール式IOLの眼内への挿入および除去を示す解剖図。
【
図29I】モジュール式IOLの眼内への挿入および除去を示す解剖図。
【
図29J】モジュール式IOLの眼内への挿入および除去を示す解剖図。
【
図29K】モジュール式IOLの眼内への挿入および除去を示す解剖図。
【
図29L】モジュール式IOLの眼内への挿入および除去を示す解剖図。
【
図29M】モジュール式IOLの眼内への挿入および除去を示す解剖図。
【
図30】AおよびBは、本開示に従ったモジュール式IOLのさらなる実施形態の様々な図。
【
図31A】本開示の実施形態に従ったモジュール式IOLの別のレンズ除去システムの概略図。
【
図31B】本開示の実施形態に従ったモジュール式IOLの別のレンズ除去システムの概略図。
【
図31C】本開示の実施形態に従ったモジュール式IOLの別のレンズ除去システムの概略図。
【
図31D】本開示の実施形態に従ったモジュール式IOLの別のレンズ除去システムの概略図。
【
図31E】本開示の実施形態に従ったモジュール式IOLの別のレンズ除去システムの概略図。
【
図31F】本開示の実施形態に従ったモジュール式IOLの別のレンズ除去システムの概略図。
【
図31G】本開示の実施形態に従ったモジュール式IOLの別のレンズ除去システムの概略図。
【
図31H】本開示の実施形態に従ったモジュール式IOLの別のレンズ除去システムの概略図。
【
図31I】本開示の実施形態に従ったモジュール式IOLの別のレンズ除去システムの概略図。
【
図31J】本開示の実施形態に従ったモジュール式IOLの別のレンズ除去システムの概略図。
【
図31K】本開示の実施形態に従ったモジュール式IOLの別のレンズ除去システムの概略図。
【
図31L】本開示の実施形態に従ったモジュール式IOLの別のレンズ除去システムの概略図。
【
図31M】本開示の実施形態に従ったモジュール式IOLの別のレンズ除去システムの概略図。
【
図31N】本開示の実施形態に従ったモジュール式IOLの別のレンズ除去システムの概略図。
【
図32A】モジュール式IOL除去システムおよび方法の実施形態の概略図。
【
図32B】モジュール式IOL除去システムおよび方法の実施形態の概略図。
【
図32C】モジュール式IOL除去システムおよび方法の実施形態の概略図。
【
図32D】モジュール式IOL除去システムおよび方法の実施形態の概略図。
【
図33A】モジュール式IOL除去システムおよび方法の実施形態の概略図。
【
図33B】モジュール式IOL除去システムおよび方法の実施形態の概略図。
【
図33C】モジュール式IOL除去システムおよび方法の実施形態の概略図。
【
図33D】モジュール式IOL除去システムおよび方法の実施形態の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1を参照すると、ヒトの眼10が断面図で示されている。眼10は、いくつかの目的のために光に反応する器官といわれている。意識的な感覚器官として、眼は視覚を可能にする。網膜24の桿体細胞および錐体細胞は、色の区別および奥行知覚を含む意識的な光覚および視覚を可能にする。加えて、網膜24内におけるヒトの眼の非画像形成光感受性神経節細胞(non−image−forming photosensitive ganglion cells)は、瞳孔の大きさの調整、メラトニンホルモンの調節および抑制、並びに体内時計の同調化に影響を与える光信号を受信する。
【0025】
眼10は正確には球体ではなく、むしろ融着した2部分からなるユニットである。角膜12と呼ばれるより湾曲したより小さな前面ユニットは、強膜14と呼ばれるより大きなユニットに関連付けられている。角膜部分12は、典型的には約8mm(0.3インチ)の半径を有する。強膜14は残りの6分の5を構成し、その半径は典型的には約12mmである。角膜12および強膜14は縁(limbus)と呼ばれる輪によって接続されている。角膜12は透明であるため、角膜12の代わりに、虹彩16、すなわち眼の色と、その黒色の中心部、すなわち瞳孔とが見える。眼10の内部を見るためには、光が反射されないので、検眼鏡が必要である。黄斑28を含む眼底(瞳孔に対向する領域)は特徴的な青白い視神経円板(乳頭)を示し、該視神経円板において、眼に進入する血管が通過し、視神経線維18が眼球から出ていく。
【0026】
よって、眼10は3つの透明な構造物を包む3つの被膜からなる。最外層は角膜12および強膜14から構成される。中間層は、脈絡膜20、毛様体22および虹彩16からなる。最内層は網膜24である。網膜24は、検眼鏡内において見ることができる網膜の血管からだけでなく、脈絡膜20の血管からもその循環を得ている。これらの被膜内には、房水、硝子体26、および柔軟な水晶体30が存在する。房水は、2つの領域、すなわち角膜12と虹彩16および水晶体30の露出領域との間の前眼房と、虹彩16と水晶体30との間の後眼房とに含まれる透明な流体である。水晶体30は微細な透明線維からなる毛様小帯32(チン小帯)によって毛様体22に懸垂されている。硝子体26は房水よりはるかに大きい透明なゼリー状物質である。
【0027】
水晶体30は、角膜12と共に、網膜24上に結像されるように光を屈折させるのを助ける眼内の透明な両凸構造物である。水晶体30は、その形状を変化させることによって、様々な距離の対象に対して焦点を合わせることができるように、眼の焦点距離を変化させるように機能し、よって興味のある対象の鮮明な実像が網膜24上に形成されることを可能にする。水晶体30のこの調整は遠近調節(accommodation)として知られており、写真用カメラのそのレンズの移動によるピント合わせに類似している。
【0028】
水晶体は3つの主要部分、すなわち水晶体嚢、水晶体上皮および水晶体線維を有する。水晶体嚢は、水晶体の最外層を形成し、水晶体線維は、水晶体内部の大部分を形成する。水晶体嚢と水晶体線維の最外層との間に位置する水晶体上皮の細胞は、主に水晶体の前側に見られるが、赤道を少し越えて後方に延在する。
【0029】
水晶体嚢は水晶体を完全に取り囲む滑らかで透明な基底膜である。水晶体嚢は弾性であり、コラーゲンから構成されている。水晶体嚢は水晶体上皮によって合成され、その主成分はIV型コラーゲンおよび硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)である。水晶体嚢は非常に弾性に富み、水晶体嚢を毛様体22に接続する小帯線維の張力が作用していない場合には、より球形を水晶体にとらせる。水晶体嚢は約2〜28マイクロメートルの間で厚さが変化し、赤道付近で最も厚く、後極付近で最も薄い。水晶体嚢は、水晶体の後方よりも高い前方の曲率に関与し得る。
【0030】
水晶体30の各種疾患および障害はIOLによって治療され得る。一例として、必ずしもこれらに限定するものではないが、本開示の実施形態に従ったモジュール式IOLシステムは、白内障、近視(近眼)、遠視(遠眼)、および乱視の眼における大きな光学的誤差、水晶体転位症、無水晶体症、偽水晶体および核硬化症を治療するために用いられ得る。しかしながら、説明のために、本開示のモジュール式IOL実施形態は白内障に関して記載する。
【0031】
以下の詳細な説明は、一次眼内要素および二次眼内要素、すなわち眼内レンズを解放可能に受容するように構成された眼内ベースを備えたモジュール式IOLシステムの様々な実施形態について記載する。いくつかの実施形態において、上記ベースは光学的矯正を提供するように構成されてもよく、その場合、モジュール式IOLシステムは一次レンズおよび二次レンズを備えるといわれてもよい。ベースが光学的矯正のために構成された実施形態に関して記載される原理および特徴は、ベースが光学的矯正のために構成されていない実施形態に適用されてもよく、逆もまた同様である。さらに広く述べると、任意の一実施形態に関して記載された特徴は、他の実施形態に適用され、組み込まれてもよい。
【0032】
図2Aおよび
図2Bを参照すると、モジュール式IOLシステム50/60は、内部に嚢切開部36が形成された水晶体30の水晶体嚢34内に植え込まれて示されている。モジュール式IOLシステムは一次レンズ50と二次レンズ60とを備え得る。一次レンズ50は、本体部分52と、一次レンズ50を水晶体嚢34に係留し中心に配置するための一対のハプティック54と、二次レンズ60に取り付けるための手段(ここには示さないが、後述する)とを備え得る。二次レンズ60は、光学本体部分62を備え、ハプティックは有さず、さらに一次レンズ50に取り付けるための対応する手段(ここには示さないが、後述する)を備え得る。一次レンズ50の本体部分52の前面は、二次レンズ60の本体部分62の後面と、それらの間に介在する物質(例えば、接着剤、房水、組織内殖、など)を有することなく、密着し得る。例えば、本体部分52の前面は、本体部分62の後面と直接接触していてもよい。二次レンズ60の交換を容易にするために、一次レンズ50が水晶体30の水晶体嚢34内に残存している間に、二次レンズ60は一次レンズ50に対して急性的および慢性的に解放可能に取り付けられ得る。
【0033】
一次レンズ50の本体部分52は、いくらかの、しかし最適な光学的結果に必要とされるよりも劣る屈折矯正を提供し得る。最適な光学的結果は、二次レンズ60の光学本体部分62と共に一次レンズ50の光学本体部分52によって提供される矯正の組み合わせによって提供され得る。例えば、二次レンズ60の光学本体部分62は、(単焦点矯正に対して)屈折力、(乱視矯正に対して)トーリック特性(toric features)、および/または(多焦点矯正に対して)回折特性(diffractive features)を変更し得る(例えば、追加するか、または減じ得る)。
【0034】
二次レンズ60は外径d1を有し、嚢切開部36は内径d2を有し、一次レンズ50の本体52は外径d3を有してもよく、その場合、d1<d2<d3である。この構成は、水晶体嚢34の任意の部分に対して接触したり、または他の場合には乱したりすることなく、二次レンズ60が一次レンズ50に対して着脱され得るように、二次レンズ60と嚢切開部36の周との間に隙間を提供する。一例として、これらに限定されるものではないが、嚢切開部が約5〜6mmの直径を有すると仮定すると、一次レンズの本体(すなわちハプティック以外)は約5〜8mmの直径を有してもよく、かつ二次レンズは、約3〜5mm未満の直径を有してもよく、それにより、二次レンズと嚢切開部の周との間に最大約1.5mmの半径方向の隙間を提供する。この例にかかわらず、一次レンズに二次レンズを取り付けるべく水晶体嚢を操作する必要性を軽減するために、二次レンズと嚢切開部の周との間に隙間を提供するのに任意の適当な寸法が選択されてもよい。
【0035】
図3A〜
図3D(正面図)および
図4A〜
図4D(側方断面図)を参照すると、モジュール式IOLシステム50/60を植え込むための方法が概略的に示されている。
図3Aおよび
図4Aに見られるように、白内障を有する水晶体30は、水晶体嚢34の内側に不透明または曇った中心部38を含む。白内障手術のための水晶体30へのアクセスは、角膜内における1つ以上の側方切開によって提供され得る。例示の目的のために、角膜切開部という用語をこの本文全体にわたって使用するが、これは、強膜切開部を含む、水晶体嚢へのアクセスを提供するための任意の適当な切開部を含むことを理解されたい。
【0036】
嚢切開部(円形孔)36は手動器具またはフェムト秒レーザーを用いて、水晶体前嚢34に形成され得る。
図3Bおよび
図4Bに見られるように、不透明な中心部38は、嚢切開部36を介した水晶体超音波乳化吸引および/または吸引によって除去される。一次レンズ50は、嚢切開部36を介して挿入されたチューブを用いて、丸められた形態で、水晶体嚢34内に送達される。一次レンズ50は送達チューブから放出されて広がる。愛護的操作により、一次レンズのハプティック54は、
図3Cおよび
図4Cに見られるように、水晶体嚢34の内部の赤道に係合し、かつレンズ本体52を嚢切開部36に対して中心に配置する。二次レンズ60は、その遠位チップを一次レンズ50に近接して配置したチューブを用いて、丸められた形態で送達される。二次レンズ60は送達チューブから放出されて広がる。愛護的操作により、二次レンズ60は嚢切開部36に対して中心に配置される。次に、水晶体嚢34または一次レンズ50を操作することなく、二次レンズ60は、
図3Dおよび
図4Dに見られるように、一次レンズ50に取り付けられる。必要ならば、二次レンズ60は、適当な場合には工程を逆転させた同様の方法で、除去および/または交換されてもよい。代替案として、一次レンズ50および二次レンズ60は単一ユニットとして植え込まれ、それにより送達工程を排除してもよい。
【0037】
二次レンズ60のどちらの側面が一次レンズ50に面するべきかを確認することが困難な場合があるので、二次レンズは適切な位置を示す標識を含んでいてもよい。例えば、正しい側面が上になって配置された場合には時計回りの矢印として見え、誤った側面が上になって配置された場合には反時計回りの矢印として見える、時計回りの矢印を二次レンズ60の前面の周に沿って配置してもよい。これに代わって、正しい側面が上になって配置された場合には第1色として見え、誤った側面が上になって配置された場合には第2色が見える、2層の色標識を二次レンズ60の前面の周に沿って配置してもよい。他の位置を示す標識を二次レンズ60上に用いてもよく、また同様の標識スキームを一次レンズ50に適用してもよい。
【0038】
図5を参照すると、表面下取付機構70は、二次レンズ60を一次レンズ50に解放可能に固定するために用いられ得る。取付機構70は、光の透過に干渉するのを避けるために、嚢切開部36の周の半径方向内側、かつ視野の半径方向外側に配置され得る。これに代わって、またはこれに加えて、取付機構70は、光の透過に干渉する可能性を最小限にするために、半径方向および側方方向の大きさが二次レンズ50の周のごく一部分(例えば10〜20%未満)に制限され得る。直径方向に対向した2つの取付機構70が示されているが、任意の適当な数を二次レンズ60の周囲に均等にまたは非均等に分散させて用いてもよい。
【0039】
一次レンズ50および二次レンズ60が同時に送達される場合には、取付機構70を丸め軸線80と整合させることが望ましく、レンズ50,60は送達器具によって挿入するために丸め軸線80のまわりに丸められ得る。軸線80のまわりに丸められるときに二次レンズ60は一次レンズ50に対してずれることがあるので、取付機構70を丸め軸線80に沿って提供することにより、取付機構70に対する応力が最小限となる。この目的のために、取付機構70は、丸め軸線80に対して同軸に整合され、軸線80から限られた距離(例えば二次レンズ60の周の10〜20%未満)に延びるように構成され得る。
【0040】
取付機構70は、
図6Aおよび
図6Bに示すような組合い形状またはインターロック形状を有するように構成され得る。一般に、上記形状は、解放可能に連結可能な雄部と雌部とを含む。雌部は雄部を受容し、一次レンズ50と二次レンズ60との間の相対運動を少なくとも二次元(例えば上下および左右)において制限するように構成されている。上記雌部および雄部は、一次レンズ50と二次レンズ60との間の相対運動を三次元(例えば上下、右左、前後)において制限するようなインターロック形状を有するように構成されてもよい。取付機構70は、それぞれ、後方(押す)方向および前方(引く)方向に垂直力(orthogonal force)を印加することにより、係合および解放され得る。例えば、取付機構70は、成形、切断、エッチングまたはそれらの組み合わせによって予め形成されてもよい。
【0041】
示した例において、各取付機構70は、インターロック円柱状突起72および円筒状凹部または溝74を含む。他の組合い形状またはインターロック形状も同様に用いられてもよい。示した円筒形状は、送達するために丸められたときに、二次レンズ60の一次レンズ50に対する若干の回転を可能にし、よってそれらに対する応力をさらに低減するという利点を有する。
図6Aに示すように、円柱状突起72は、一次レンズ50の本体52の前面から前方に延在し得、円筒状凹部74は、二次レンズ60の半径方向の周辺区域に近接して二次レンズ60の本体62の後面を通って前方に延在し得る。これに代わって、
図6Bに示すように、円柱状突起72は、二次レンズ60の半径方向の周辺区域に近接して二次レンズ60の本体62の後面から後方に延在してもよく、円筒状凹部74は一次レンズ50の本体52の前面を通って後方に延在してもよい。
図6Bに示した構成は、一次レンズ50が既存の植え込まれたIOLであり、そのIOL内に、例えばレーザーによって、凹部74がインサイチューでエッチングされ得る場合に、特に適しているであろう。
【0042】
図7を参照すると、延長取付機構90は一次レンズ50および二次レンズ60を解放可能に接続するために用いられ得る。延長取付機構90は図示して説明する以外は表面下取付機構70と同様であり得る。延長取付機構90は、二次レンズ60の周から半径方向に延びており、それぞれ組合い形状またはインターロック形状を備える。それらの形状の例は
図8A〜
図8Cに示す。
図8Aでは、円柱状部分92は二次レンズ60の外縁から延び、円筒状凹部94は一次レンズ50の外縁から延びている。
図8Bには、一次レンズ50の外縁から延びる円柱状部分92と、二次レンズ60の外縁から延びる円筒状凹部94とを有する系が示されている。
図8Aおよび
図8Bに示す実施形態の双方において、取付機構90は、前方(押す)方向および後方(引く)方向に垂直力をそれぞれ印加することにより、係合および解放(disengaged)され得る。これに代わって、
図8Cに示す実施形態では、取付機構90は、どちらのレンズ50/60が円柱状部分92および円筒状凹部94の各々に取り付けられているかによって、時計回りまたは反時計周り方向の回転力を印加することにより係合または解放され得る。加えて、
図7の実施形態は2つの取付機構90の使用のみを示しているが、本開示の原理内において、任意の適当な数の取付機構90を用いてもよい。
【0043】
図9A〜
図9Dを参照すると、取付機構90の二次レンズ60に関連付けられた部分は、二次レンズ60の中心が一次レンズ50の中心と整合されるように配置され得る。これに代わって、例えば、不均衡な手術後の治癒による一次レンズ50の不整合を調節するために、取付機構90の二次レンズ60に関連付けられた部分は
図9B〜
図9Dに示すように偏倚されてもよい。
図9Bでは、取付機構90の二次レンズ60に関連付けられた部分は、回転方向に偏倚されている。
図9Cでは、取付機構90の二次レンズ60に関連付けられた部分は、上方に偏倚されている。
図9Dでは、取付機構90の二次レンズ60に関連付けられた部分は、側方に偏倚されている。
図11Cおよび
図11Fに関連してより詳細に記載するように、前後方向の偏倚も用いられてもよい。
図9B、
図9C、
図9D、
図11Cおよび
図11Fに示す実施形態の各々は例として提供されており、上記偏倚は、一次レンズ50の整合不良に応じて大きさを変更するために、任意の方向(前方、後方、上方、下方、右、左、時計回り、反時計回り)、またはそれらの組み合わせにおいてなされてもよい。さらに、取付機構90を例として示しているが、同じ原理を本明細書に記載する他の取付手段に適用してもよい。
【0044】
図10を参照すると、別の表面下取付機構100が、二次レンズ50を一次レンズ60に解放可能に接続するために使用され得る。表面下取付機構100は、図示して説明する以外は表面下取付機構70に類似し得る。表面下取付機構100は、二次レンズ60の周縁に近接した弓形経路に沿って延びる組合い形状またはインターロック形状を備え得る。表面下取付機構100は、突起102と、突起102が受容され得る対応する凹部または溝104とを備え得る。
図11A(分離時)および
図11D(取り付け時)に示すように、突起102は二次レンズ60の後面から延び、対応する凹部または溝104は一次レンズ50の前面内に延び得る。これに代わって、
図11B(分離時)および
図11E(取り付け時)に示すように、突起102が一次レンズ50の前面から延び、対応する凹部または溝104は二次レンズ60の後面内に延びてもよい。いずれの実施形態においても、突起102の前後方向の寸法は、一次レンズ50の前面と二次レンズ60の後面との間に密着を提供するために、凹部または溝104と同寸法に一致し得る。これに代わって、突起102の前後方向の寸法は、
図11C(分離時)および11F(取り付け時)に示すように、前後方向の偏倚を提供するために、凹部または溝104の同寸法を超えていてもよい。さらに、当業者であれば、任意の適当な数の取付機構100が本開示の原理内において用いられてもよいことが容易に分かるであろう。
【0045】
図12Aを参照すると、別の表面下取付機構105が一次レンズ50に二次レンズ60を接続するために用いられてもよい。表面下取付機構105は、図示して説明する以外は表面下取付機構100に同様であり得る。
図12Aの線B−Bに沿って得た断面図である
図12Bに見られるように、表面下取付機構105は、突起107と、内部に突起107が受容され得る一連の穴109とを含む組合い形状またはインターロック形状を備え得る。穴109は、
図12AのボックスCのいくつかの別の詳細図を示す
図12Cに見られるようなパターンに分散配置され得る。
図12Cにおいて、突起107は黒丸として示した穴109に存在し、一方、白丸として示した残りの穴109は開いたままである。この構成で、一次レンズ50と二次レンズ60との間の所望の整合を達成するために、突起107は対応する一対の穴109に配置されてもよい。例えば、続けて
図12Cを参照すると、突起107は、一次レンズ50と二次レンズ60との間において、中心に配置(基準)、右にシフト、左にシフト、上方にシフト、下方にシフト、時計回りに回転、または反時計回りに回転した(それぞれC1〜C7と標識)整合を行うために対応する一対の穴109に配置され得る。この構成は
図9A〜
図9Dに関して記載したような広範な調整を提供する。加えて、任意の適当な数の取付機構105が、レンズ50,60の周のまわりに均等に配置されてもよいし、または非均等に配置されてもよい。
【0046】
本明細書に記載する様々な表面下取付手段のすべてまたは一部は、成形、切断、フライス切削(milling)、エッチング、またはそれらの組み合わせによって形成され得る。例えば、特に
図11Aに関して、溝104は、既存の植え込まれた一次レンズ50をインサイチューでレーザーエッチングすることによって形成されてもよく、上記突起は二次レンズ60を成形、フライス切削、または切断することによって予め形成されてもよい。
【0047】
インサイチューエッチングに用いられ得るレーザーの例としては、フェムト秒レーザー、チタン/サファイア(ti/saph)レーザー、ダイオードレーザー、ヤグレーザー、アルゴンレーザーおよび可視域、赤外域、および紫外域の他のレーザーが挙げられる。そのようなレーザーは、所望のエッチング形状およびパターンを得るために、エネルギー出力、空間的制御、および時間的制御に関して制御され得る。インサイチューエッチングは、例えばレーザー光線を外部レーザー供給源から角膜を介して瞳孔を通過させて伝送することによって行われてもよい。これに代わって、インサイチューエッチングは、眼内に挿入した可撓性光ファイバープローブからレーザー光線を伝送することによって行われてもよい。
【0048】
図13Aおよび
図13Bを参照すると、4倍および40倍の倍率の顕微鏡写真は、それぞれ、溝(矢印を参照)がレーザーエッチングによって一次レンズ内にどのように試験的にエッチングされたかを示している。上記溝をエッチングするために、以下の範囲、すなわち1nJ〜100uJの電力、20fs〜ピコ秒範囲までのパルス持続時間、および1〜250kHzの周波数に設定したフェムト秒レーザーを用いてもよい。
【0049】
本明細書に開示したモジュール式IOLシステムの一次要素および二次要素は、同一材料、同種材料、または異種材料から形成され得る。適当な材料としては、例えば、アクリル系材料、シリコーン材料、疎水性ポリマーまたは親水性ポリマーが挙げられ、そのような材料は形状記憶特性を有してもよい。例えば、モジュール式レンズ系の光学部分を構成する材料は、シリコーン、PMMA、ヒドロゲル、疎水性アクリル樹脂、親水性アクリル樹脂、または眼内レンズに一般的に用いられる他の透明材料であり得る。モジュール式IOLの非光学的要素は、ニチノール、ポリエチレンスルホンおよび/またはポリイミドを含有してもよい。
【0050】
材料は、モジュール式レンズ系の特定の特徴、特に前述したような一次レンズおよび二次レンズに必要な取り付けおよび分離の特徴の性能を支援するように選択することができる。特定の材料の選択によって改善することができるモジュール式水晶体の他の特徴としては、製造性、術中および術後の取り扱い、固定(術中および術後の修正時の双方)、微小な切開部サイズ(<2.4mm)への到達および交換可能性(レンズの摘出における最小限の外傷)が挙げられる。
【0051】
例えば、一実施形態において、一次レンズおよび二次レンズは、約5〜300℃のガラス転位温度および約1.41〜1.60の屈折率を有する疎水性アクリル樹脂材料から製造される。別の実施形態では、一次レンズおよび二次レンズは、モジュール式システムの固定および分離の特性を支援するために、異なるガラス転移温度および機械的性質を有する異なる材料から製造することができる。別の実施形態では、上記モジュール式レンズ系の双方またはいずれかは、約2.4mm以下の外径への圧縮を可能にする材料から製造される。
【0052】
モジュール式IOLシステムにおいて一般に望ましい材料特性としては、グリスニング(glistening)の形成が最小限であるか、または全くないこと、ヤグレーザーの適用を受けたときにピット形成(pitting)が最小限であること、および標準MEM溶出試験および工業規格による他の生体適合性試験に合格していることが挙げられる。上記材料はベース材料のUV遮断能力を高める様々な発色団を含有していてもよい。一般に、400nm以下の波長は、1%以下の濃度の標準的な発色団によって遮断される。これに代わって、またはこれに加えて、上記材料は、ブルーライト遮断発色団、例えば所望の領域のブルーライトスペクトルを遮断する黄色染料を含有してもよい。適当な材料は、一般に、損傷、例えば、標準的な植え込み法における機械的外傷によって引き起こされる表面摩耗、クラッキングまたは曇り(hazing)に対して耐性を有する。
【0053】
モジュール式IOLの要素は、成形、切断、フライス切削、エッチングまたはそれらの組み合わせのような従来の技術によって形成され得る。
機械的取り付けの代替案として、一次要素と二次要素との間における化学誘引が用いられてもよい。平滑面仕上げを有する類似した材料を用いることによって化学誘引を促進してもよい。化学誘引は、プラズマまたは化学活性化のような表面活性化技術によって高められてもよい。場合により、材料間の付着を避けるために化学誘引を低減し、機械的取り付けにより依存して安定化させることが望ましいことがある。この場合、一次要素および二次要素は異種材料から形成されてもよいし、または他の場合には、化学誘引を有さない隣接面を有してもよい。
【0054】
図14〜
図14Cを参照すると、別のモジュール式IOL140が正面図、断面図、および詳細図でそれぞれ示されている。
図14Aは
図14の線A−Aに沿って得られた断面図を示し、
図14Bは
図14の線B−Bに沿って得られた断面図を示し、
図14Cは
図14Bの円Cの詳細図を示している。モジュール式IOL140は、ハプティック54を備えた一次レンズ50と、二次レンズ60とを備え得る。一次レンズ50の界接面(interfacing surfaces)(前面)と二次レンズ60の界接面(後面)とは、
図14Aおよび
図14Bに最もよく示されているように密着し得る。一次レンズ50および二次レンズ60の界接面間における密着の維持(すなわち隙間の回避)または一定の隙間の維持は、誘発性乱視の可能性を低減し得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、レンズ50,60の各表面間に物質(例えば接着剤)が配置されてもよい。一次レンズ50と二次レンズ60との間に締り嵌めを形成し、よって2つの要素を確実に接続するために、二次レンズ60には環状延長部が形成され、一次レンズ50には対応する大きさおよび形状に形成された円形凹部が形成され得る。一次レンズ50内における凹部の深さは二次レンズ60の厚さの一部分であり得、二次レンズ60の環状延長部は一次レンズ50の一部の上に延び、それにより
図14Cに最もよく示されているような重複接続部142を形成する。重複接続部142は、示したように二次レンズ60の周囲の360度にわたって、またはその一部にわたって延び得る。二次レンズ60の環状延長部は、一次レンズ50の前面より上に隆起して隆起部を形成する。いくつかの実施形態において、上記隆起部は半径方向にテーパーをなす形態を有していてもよい。上記隆起部は一次レンズ50および二次レンズ60の接続および分離を容易にするために、鉗子で半径方向に圧迫され得る。一次レンズ50に二次レンズ60を挿入するために半径方向の圧迫を用いることは、挿入中に水晶体嚢に印加される前後方向の力を低減し、それにより水晶体嚢の断裂の危険性を低減する。
【0055】
図15〜
図15Dを参照すると、別のモジュール式IOL150が正面図、断面図、および詳細図でそれぞれ示されている。
図15Aは
図15の線A−Aに沿って得られた断面図を示し、
図15Bは
図15の線B−Bに沿って得られた断面図を示し、
図15Cは
図15Bの円Cの詳細図を示している。
図15Dは
図15Bの円Cの別の詳細図を示している。モジュール式IOL150は、ハプティック54を備えた一次レンズ50と、二次レンズ60とを備え得る。一次レンズ50の界接面(前面)と二次レンズ60の界接面(後面)とは、
図15Aおよび
図15Bに最もよく示されているように密着し得る。一次レンズ50は、対応する大きさおよび形状に形成された円形の二次レンズ60が内部に配置され得る壁を画定する凹部を備え得る。一次レンズ50内の凹部によって画定される壁は、直径方向に対向した2つの空所152を除く一次レンズの全周に延在し得る。よって、空所152は
図15Aに見られるように二次レンズ60の周縁を露出させ、例えば、鉗子を用いた二次レンズ60の半径方向の圧迫による挿入および除去を容易にする。一次レンズ内の凹部によって画定される壁の残部は、
図15Bおよび
図15Cに見られるように、二次レンズ60の前面が一次レンズ50の前面と同一平面上に位置し得る面一接続部(flush joint)を提供する。
図15Cに見られるように、一次レンズ50内の凹部によって画定される壁および二次レンズ60の接触する端縁は、それらの間に積極的な機械的捕捉および確実な接続を有する接続部154を提供するために内側に傾斜していてもよい。これに代わって、
図15Dに見られるように、一次レンズ50内の凹部によって画定される壁および二次レンズ60の接触する端縁は、それらの間に積極的な機械的捕捉および確実な接続を有する接続部156を提供するために「S」字形であってもよい。別のインターロック形状が用いられてもよい。
【0056】
図16〜
図16Dを参照すると、他のモジュール式IOL160が正面図、断面図、および詳細図でそれぞれ示されている。
図16Aは
図16の線A−Aに沿って得られた断面図を示し、
図16Bは
図16の線B−Bに沿って得られた断面図を示し、
図16Cは
図16Bの円Cの詳細図を示している。
図16Dは
図16Aの円Dの詳細図を示している。モジュール式IOL160は、対応する大きさおよび形状に形成された円形二次レンズ60が内部に配置され得る壁を画定する凹部を備えた一次レンズ50を有する
図15〜
図15Dに示したモジュール式IOL150と同様に構成され得る。しかしながら、この実施形態では、(空所152ではなく)角張った空所162が二次レンズ60の周の一部分に沿って提供されている。二次レンズ60の周縁の周囲部分によって画定される壁は、
図16Cに最もよく示されているように、面一接続部154を提供するために、一次レンズ50内の凹部によって画定される壁と同一の幾何学的形状を有し得る。二次レンズ60の周縁の別の(例えば残りの)周囲部分によって画定される壁は、
図16Dに最もよく示されているように、角張った空所162を提供するために、より内側に傾斜した幾何学的形状を有してもよい。したがって、空所162は、
図16Dに見られるように二次レンズ60の周縁を露出させ、その周縁には、二次レンズ60の半径方向の圧迫による挿入および除去を容易にするために鉗子が配置され得る。他の空所形状が用いられてもよい。
【0057】
図17〜
図17Cを参照すると、他のモジュール式IOL170が正面図、断面図、詳細図、および等角図でそれぞれ示されている。
図17Aは
図17の線A−Aに沿って得られた断面図を示し、
図17Bは
図17Aの円Bの詳細図を示し、
図17Cは組み立てられた要素の等角図を示している。モジュール式IOL170は、対応する大きさおよび形状に形成された円形二次レンズ60が内部に配置され得る壁を画定する凹部を備えた一次レンズ50を有した
図15〜
図15Dに示すモジュール式IOL150と同様に構成され得る。しかしながら、この実施形態では、一次レンズ50内に凹部を画定する壁は、直径方向に対向した2つのタブ172を画定するようにフライス切削された(milled down)その一部分を含む。タブ172の内側の周囲壁は、二次レンズ60の前面が一次レンズ50の前面と同一平面上に位置するように、
図17Bに見られるような面一接続部174を提供する。タブ172に沿った接続部174の界面は、例えば、傾斜していてもよいし、「S」字形であってもよいし、または示したように「C」字形であってもよい。壁がフライス切削されている領域において周に沿ってタブ172から離れた他の場所では、二次レンズ60の周縁は
図17Cに見られるように露出されており、例えば、鉗子を用いた上記周縁の半径方向の圧迫によって、二次レンズ60の挿入および除去を容易にする。
【0058】
図18〜
図18Cを参照すると、別のモジュール式IOL180が正面図、断面図、詳細図、および等角図でそれぞれ示されている。
図18Aは
図18の線A−Aに沿って得られた断面図を示し、
図18Bは
図18Aの円Bの詳細図を示し、
図18Cは組み立てられた要素の等角図を示している。モジュール式IOL180は、対応する大きさおよび形状に形成された円形二次レンズ60が内部に配置されて、タブ172内の面一接続部174によってインターロックし得る部分的な壁を画定する凹部を備えた一次レンズ50を有した
図17〜
図17Cに示すモジュール式IOL170と同様に構成され得る。しかしながら、この実施形態において、把持凹部または穴182は、タブ172の各々、および二次レンズ60の近接した部分に備えられている。一実施形態において、把持凹部または穴182は、一次レンズ50および二次レンズ60の全厚を通って延びていなくてもよい。例えば、二次レンズ60の把持穴182は、例えば鉗子を用いた二次レンズ60の半径方向の圧迫による挿入および除去を容易にする。タブ部分172内および二次レンズ60内の近接した把持穴182は、例えば鉗子を用いて、接続部174の接続および分離をそれぞれ容易にするために、半径方向に引き寄せられるか、または押し離され得る。
【0059】
一次レンズ50と二次レンズ60との間の接続部174を接続および分離(またはロックおよびアンロック)するために把持穴182によって適用される半径方向力を用いることにより、水晶体嚢に印加される前後方向の力が低減され、それにより水晶体嚢の断裂の危険性が低減される。把持穴182はまた、前後方向の力を最小限にしながら、異なるインターロック形状の接続および分離を容易にするために用いられてもよい。例えば、一次レンズ50内の凹部は、二次レンズ60の周縁上の対応する雄ねじに係合する雌ねじを備えてもよい。この実施形態では、把持穴182に挿入された鉗子は、一次レンズ50および二次レンズ60をねじ込むか、または緩めるために、一次レンズ50に対する二次レンズ60の回転を容易にするために用いられ得る。他の実施形態では、二次レンズ60のキー止め延長部(keyed extension)が一次レンズ50のキー止め開口(keyed opening)内に挿入され、把持穴182に挿入された鉗子を用いて回転されて、一次レンズ50および二次レンズ60をロックおよびロック解除する。別の他の実施形態では、鉗子などを二次レンズ60の穴を介して後方に挿入して、ハンドル(図示せず)のような一次レンズ50上の前方突起を把持してもよく、その後、一次レンズ50を静止させたまま、二次レンズ60に後方向の圧力を印加する。把持穴182はまた、例えば、トーリック用途における回転方向の調整を目的として、一次レンズ50に対して二次レンズ60を回転させるために用いられてもよい。
【0060】
図19〜
図19Dを参照すると、別のモジュール式IOL190が正面図、断面図、詳細図、分解等角図、および組立等角図でそれぞれ示されている。
図19Aは
図19の線A−Aに沿って得られた断面図を示し、
図19Bは
図19Aの円Bの詳細図を示し、
図19Cは要素の分解等角図を示し、
図19Dは要素の組立等角図を示している。モジュール式IOL190は、一次要素はベース55として機能するが、必ずしも光学的矯正を提供しないのに対し、二次要素はレンズ65として機能し、光学的矯正を提供するという点で前述した実施形態のうちの一部とは異なる。ベース55は、前後方向に内部を通って延びる中央開口57を備えた環形またはリングの形状に構成され得る。いくつかの実施形態において、ベース55は完全なリングまたは環形を画定していなくてもよい。ベース55はまた、機能は前述したハプティック54に類似しているが、幾何学的構成は異なるハプティック59を備え得る。一般に、ハプティック54/59はベース55を水晶体嚢内において中心に配置するように機能する。そのようなハプティックはまた、水晶体嚢拡張リング(capsular tension rings)と同様に水晶体嚢の内側の赤道表面に対して外向きの張力を印加するように構成されてもよく、対称的な治癒を支援し、ベースのセンタリングを維持する。ハプティック59は内部に1つ以上の開口を備え得る。
【0061】
ベース55は中央開口57を備えているので、レンズ65の後方光学面はベース55に接触しない。レンズ65には環状延長部が形成されてもよく、ベース55内には対応する大きさおよび形状に形成された円形凹部が形成されて、ベース55上に棚部を形成し、さらに上記環状延長部と棚部との間に締まり嵌めおよび/または摩擦嵌合を有する重複接続部192を形成し、よって2つの要素を確実に接続する。これに代わって、重複接続部192の形状は、前述したような斜角(canted angle)または「S」字形を形成して、それらの間にインターロックを形成してもよい。接続部または接合部192は、接合部192によって引き起こされる光散乱を低減するために改質表面を備え得る。例えば、接続部192の界接面の一方または双方は、接合部192に起因する光散乱を低減するために、部分的に、または完全に、不透明またはつや消し(すなわち粗面)であってもよい。
【0062】
ベース55の凹部の深さは、
図19Bにおいて最もよく見られるように、レンズ65の前面とベース55の前面とが同一平面上に位置するように、レンズ65の環状延長部の厚さと同一であり得る。この構成により、レンズ65の後面は、ベース55の前面より後方に延在する。しかしながら、いくつかの実施形態では、レンズ65の前面はベース55の前面より相対的に高くまたは低く配置されてもよい。ベース55の凹部および対応する棚部の寸法は、少なくともレンズ65の最後方面の少なくとも一部が、ベース55の最後方面と共面をなすように、またはレンズ65の最後方面の少なくとも一部が、ベース55の最後方面よりも後方に位置するように、レンズ65の厚さに関連して選択されてもよい。
【0063】
前の実施形態と同様に、上記レンズは、異なるレンズに術中または術後に交換され得る。これは、例えば第1レンズが所望の屈折矯正を提供しない場合に望ましいことがあり、その場合、第1レンズは、水晶体嚢を乱すことなく、異なる屈折矯正を有する第2レンズと交換され得る。レンズ65が、例えばベースの移動または整合不良により、所望の光学的整合を有さない場合には、ベース55に対して偏倚されるように製造された光学部分を備えた異なるレンズと交換され得る。例えば、第2レンズの光学部分は、
図9A〜
図9Dに関して記載した実施形態に類似して、回転方向、側方方向、および/または軸線方向に偏倚され得る。この一般的な概念は、二次要素(例えばレンズ)が一次要素(例えばベース)に対して限られた位置調整性を有する本願の他の実施形態に適用され得る。
【0064】
この実施形態の一般的な構成には数多くの利点が関連しており、それらのうちの一部を以下に述べる。例えば、レンズ65の後方光学面はベース55と接触していないので、それらの間に異物を巻き込む可能性が排除される。また、一例として、ベース55が材料の全くない中央開口57を備えているので、ベース55は、前述したように一次レンズ50よりも小さな直径に丸められ、角膜内のより小さな切開部を介した送達を容易にし得る。これに代わって、ベース55はより大きな外径を有し、一次レンズ50と同様の直径に丸められてもよい。例えば、ベースレンズ55は、約8mmの外径(ハプティックを除く)を有し、6mmの外径を備えた一次レンズ50と同一の直径に丸められ得る。これは、ベース55とレンズ65との間の接合部の少なくとも一部が、典型的には5〜6mmの直径を有する嚢切開部の周方向の境界(circumferential perimeter)から半径方向外側に移動されることを可能にし得る。ベース55とレンズ65との間の接合部の少なくとも一部を嚢切開部の周から半径方向外側に移動させることにより、視野内に位置する接合部の量を低減し、よって上記接合部によって生じる光散乱または光学収差(例えば異常光視症)の可能性を低減し得る。もちろん、この例にかかわらず、ベース55に対してレンズ65を脱着すべく水晶体嚢を操作する必要性を軽減するために、レンズ65と嚢切開部の周縁との間に隙間を提供するように、任意の適当な寸法が選択されてもよい。
【0065】
図20〜
図20Dを参照すると、別のモジュール式IOL200が正面図、断面図、詳細図、分解等角図、および組立等角図でそれぞれ示されている。
図20Aは
図20の線A−Aに沿って得られた断面図を示し、
図20Bは
図20Aの円Bの詳細図を示し、
図20Cは要素の分解等角図を示し、
図20Dは要素の組立等角図を示している。モジュール式IOL200は、関連するハプティック59を備えたベース55と、レンズ65とを備える。ベース55は、レンズ65の後方光学面がベース55に接触しないように、中央孔57を備える。レンズ65は、ベース55上に棚部を形成して重複接続部202を形成するためにベース55に形成された環状凹部に嵌合するような大きさおよび形状に形成された環状延長部を備える。重複接続部202は2つの要素を確実に接続するために「S」字状の界面によって構成され得る。よって、モジュール式IOL200は、ベース55とレンズ65との間の接続部202が、ペグおよび穴(peg−and−hole)構成を含み得る以外は、モジュール式IOL190に同様である。この構成において、直径方向に対向した一対のペグ204は、レンズ65の後部の周から後方に延びて、ベース55の接続部202の棚部に形成された一連の穴206のうちから選択された一対の穴206内に嵌合する。
【0066】
図20E〜
図20Iはモジュール式IOL200のさらなる詳細を示す。
図20Eはレンズ65の側面図を示し、
図20Fはレンズ65の後面の背面図を示し、
図20Gは
図20Eの円Gの詳細図であり、
図20Hはベース55の前面の正面図であり、
図20Iは
図20Hの円Iの詳細図である。
図20E〜
図20Fに見られるように、直径方向に対向した一対のペグ204はレンズ65の後部の周から後方に延び得る。
図20H〜
図20Iに見られるように、接続部202の棚部に沿ったベース55の内径は一連の穴206を含み、それらの穴のうちから選択した対の中にペグ204の対が挿入され得る。この構成により、レンズ65は、例えば、トーリック用途における回転方向の調整のために、ベース55に対して選択的に回転され得る。
【0067】
図21〜
図21Eを参照すると、別のモジュール式IOL210は、正面図、断面図、詳細図、および等角図でそれぞれ示されている。
図21Aおよび
図21Bは、
図21の線A−Aおよび線B−Bにそれぞれ沿って得られる断面図を示している。
図21Cおよび
図21Dは、
図21Aの円Cおよび
図21Bの円Dの詳細図をそれぞれ示す。
図21Eは、モジュール式IOL210の組み立てられた要素の等角図を示す。モジュール式IOL210は、
図19〜
図19Dに示すモジュール式IOL190と
図17〜
図17Cに示すモジュール式IOL170との組み合わせに類似して構成され得る。モジュール式IOL190のように、モジュール式IOL210は、中央開口と、対応する大きさおよび形状に形成された円形レンズ65が配置され得る壁を画定する凹部とを有した環またはリングの形状に構成されたベース55を備える。モジュール式IOL170のように、上記凹部を画定する壁は、ベース55の内周囲に沿って延び、その一部は直径方向に対向した2つのタブ212を画定するようにフライス切削されている(milled down)。タブ212の内周壁は、レンズ65の前面がベース55の前面と同一平面上に位置するように、
図21Cに見られるような面一接続部214を提供する。タブ212に沿った接続部214の界面は、例えば、傾斜していてもよいし、「S」字形であってもよいし、または図示したように「C」字形であってもよい。壁がフライス切削されている領域において周に沿ってタブ212から離れた他の場所では、
図21Dに見られるように、レンズ65の周縁が露出されており、例えば、鉗子を用いた半径方向の圧迫によってレンズ65の挿入および除去を容易にする。
【0068】
図22〜
図22Dを参照すると、別のモジュール式IOL220が正面図、断面図、および詳細図でそれぞれ示されている。
図22Aは
図22の線A−Aに沿って得られた断面図を示し、
図22Bは
図22の線B−Bに沿って得られた断面図を示し、
図22Cは
図22Aの円Cの詳細図を示し、
図22Dは
図22Bの円Dの詳細図を示している。モジュール式IOL220は、関連するハプティック59を備えたベース55と、レンズ65とを備える。ベース55は、レンズ65の後方光学面がベース55と接触しないように、中央孔を備える。レンズ65の周は、ベース55に形成された環状凹部に嵌合して、ベース55上の棚部および面一接続部222を形成するような大きさおよび形状に形成されている。面一接続部222は、2つの要素を確実に接続するために「S」字状の界面によって構成され得る。一対のペグ224は、ベース55のその内周に近接した部分から前方に延び、レンズ65の周に近接した一対の円弧状スロット226を通って延びている。円弧状スロットは、
図22に示すように、レンズ65の周囲の一部分に沿って延在し得る。この構成により、レンズ65は、例えば、トーリック用途における回転方向の調整のために、ベース55に対して選択的に回転され得る。
【0069】
ペグ224は、
図22Cに示すように、レンズ65の前面より上方に隆起するような大きさに形成され、かつそのように構成され得る。鉗子などをレンズ65内の円弧状スロット226を介して後方に挿入して、ペグ224をハンドルのように把持してもよく、その後、ペグ224を静止させたまま、レンズ65に後方向の圧力を印加する。レンズ65をベース55に接続する間に、ペグ224を保持し、よってベース55を安定させることによって、水晶体嚢に印加される前後方向の力が低減され、それにより水晶体嚢の断裂の危険性を低減する。
【0070】
本明細書に記載するように、モジュール式IOLのレンズ60/65のためのレンズ除去システムおよび方法は例として図面に示されており、他のモジュール式IOLの実施形態を具体化することが理解されるべきである。レンズ60/65は、例として図面に示すような寸法を有し得るが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0071】
図23A〜
図23Dを参照すると、本開示の実施形態に従ったモジュール式IOLのためのレンズ除去システムが概略的に示されている。
図23Aおよび
図23Bは、それぞれレンズ除去システムの側面図および上面図である。
図23Cおよび
図23Dは、レンズ60/65を除去するためにレンズ除去システムがどのように用いられ得るかを示す上面図である。レンズ除去または摘出器システムは、カニューレ230と、一対の鉗子235とを備え得る。カニューレ230は、鉗子235を摺動可能に受容するような大きさに形成された管腔を備え得る。カニューレ230は、管状シャフト部232と、起伏のある(contoured)遠位開口234とを備え得る。カニューレ230は、例えば従来のIOL挿入装置と同様に形成および構成され得る。鉗子235は、一対の非外傷性把持チップ237と管状シャフト239とを備える。管状シャフト239は、チップ237を圧縮しレンズ60/65を把持するために、前進され得る。鉗子235は、レンズ60/65に損傷を与えないようにするために、チップ237が比較的柔軟なポリマー材料によって形成または被覆され得る以外は、例えば、従来の眼科用鉗子と同様に形成および構成され得る。一般に、本明細書に記載するモジュール式IOL要素を操作するために用いられる任意の装置は、それらの要素に損傷を与えないようにするために比較的柔軟なポリマー材料から形成されてもよいし、またはそのようなポリマー材料によって被覆されてもよい。
【0072】
図23Cおよび
図23Dを参照すると、カニューレ230は、その遠位端部(先端部)が嚢切開部に近接するまで角膜切開部を介して挿入され得る。鉗子235は、遠位チップ237がカニューレ230の遠位端部を越えて遠位に延びるまで、カニューレ230内に、そして該カニューレを通って挿入され得る。摘出されるレンズ60/65は
図23Cに示すように鉗子235によって把持され得る。鉗子235によってレンズ60/65を確実に保持した状態で、鉗子235はカニューレ230内に近位に後退され得る。鉗子235がカニューレ230内に後退されるにつれ、レンズ60/65は起伏のある開口234に進入する。起伏のある開口234は、
図23Dに見られるように、レンズ60/65の端縁を丸めて、折り畳ませる。従って、カニューレ230内への鉗子235の完全な後退により、レンズ60/65はカニューレ230の管腔内に安全に捕捉され、その後、上記カニューレ230は眼から除去され得る。同様のアプローチを、関連する工程を逆にして、レンズ60/65を挿入するために用いてもよい。
【0073】
関連する実施形態において、外科用器具は「皮むき」機構によってレンズ60/65を切断してもよい。
図23E〜
図23Fは、レンズ60/65を除去するために用いられ得るレンズ除去システムを示す。レンズ除去システムは、モジュール式IOL290のレンズ60/65、カニューレ230、鉗子235およびブレード650を備え得る。カニューレ230は、上述したカニューレ230とほぼ同様であり、例えば2.2mm未満の外径を有する角膜切開部13を介して挿入するために構成され得る。カニューレ230は、角膜切開部の大きさを最小にしつつレンズ60/65の抽出を容易にするために、楕円形または矩形の断面を有し得る。切断経路610はモジュール式IOL290のレンズ60/65上に示されている。切断経路610は、固定タブ295から光学部分297内に延びて、作動可能タブ296に達することなく、内側にらせんをなし得る。
【0074】
図23Gはブレード650の詳細図である。ブレード650は、単一のカニューレ230の鋭利な切断面(図示通り)であってもよいし。または別個のユニット(図示せず)であってもよい。示したように、鉗子235は開放形態でカニューレ230から遠位に延びる。
【0075】
使用中、レンズ60/65は、本明細書に記載する方法を用いて、水晶体嚢34から前眼房15内に摘出され得る。カニューレ230は、角膜切開部13を介して、眼10の前眼房15内に挿入され得る。鉗子235は、遠位チップ237がカニューレ230の遠位端部を越えて遠位に延びるまで、カニューレ230内に、さらに該カニューレを通って挿入され得る。鉗子235はレンズ60/65を確実に把持し得る。鉗子235によってレンズ60/65を確実に保持した状態で、鉗子235はカニューレ230内に近位に後退し得る。鉗子235がカニューレ230内に後退させられるにつれ、レンズ60/65はブレード650を通過し得、同時にブレード650はレンズ60/65を切断経路610に沿って切断する。レンズ60/65は、それがブレード650によって切断され、カニューレ230の管腔内に引き込まれるにつれて回転し得る。従って、鉗子235のカニューレ230内への後退により、レンズ60/65はカニューレ230の管腔内に安全に捕捉され、その後、上記カニューレ230は角膜切開部13からカニューレ230を引っ張り出すことによって眼から除去され得る。カニューレ230は角膜切開部13より小さい最大幅を有するので、切断されたレンズ60/65も角膜切開部13より小さい最大幅を有する。このレンズ摘出システムおよび方法は、眼10に対する有害な力、例えば、眼10に損傷を与え、かつ/または後部断裂を引き起こし得る前後方向の有害な力を回避し得る。
【0076】
図23Hは、レンズ60/65を除去するために用いられ得るレンズ除去システムの別の実施形態を示す。レンズ除去システムは、モジュール式IOL290のレンズ60/65、カニューレ230、ブレード650、および、湾曲上側アーム242と湾曲下側アーム(図示せず)とを有する湾曲把持器240を備え得る。カニューレ230は、上述したカニューレ230とほぼ同様であり、例えば2.2mm未満の外径を有する角膜切開部13を介して挿入するために構成され得る。切断経路610はレンズ60/65上に示されている。切断経路610は、固定タブ295から光学部分297内に延びて、作動可能タブ296に達することなく、内側にらせんをなし得る。
【0077】
上側湾曲アーム242の上面および下側湾曲アーム(図示せず)の下面は双方とも概して滑らかであり得る。上側湾曲アーム242の下面および下側湾曲アーム(図示せず)の上面は双方とも把持を容易にするように構成された表面、例えば鋸歯状表面を有し得る。上記鋸歯状表面は複数の歯246を有し得る。歯246の角度は、切断工程および/または後退中におけるレンズ60/65の把持をさらに容易にするために、近位方向に偏って(with a proximal bias)構成され得る。
【0078】
湾曲把持器240は、カニューレ230およびブレード650に対して伸長可能かつ後退可能であり得る。後退形態では、湾曲把持器240は、カニューレ230の管腔内に収まり得る。カニューレ230から伸長すると、湾曲把持器240は、
図23Hに示すように、湾曲して「フック」形態を形成し得る。加えて、上側湾曲アーム242および下側湾曲アームは、湾曲把持器240がカニューレ230から伸長するときに、湾曲アームが「フック」形態に湾曲しながら開放形態に分離するように、開放形態のための付勢を有し得る。従って、湾曲把持器240がカニューレ230内に後退するにつれ、上側湾曲アーム242および下側湾曲アームは閉鎖または把持形態に戻り得る。湾曲把持器240は、該装置がカニューレ230の外側にあるときに、湾曲把持器240のこの付勢形態を生じるために適当な材料、例えば、形状記憶ポリマー、非形状記憶ポリマー、金属、合金、ステンレス鋼、ヒートセットニチノール、弾性材料または超弾性材料から形成され得る。
【0079】
使用時、レンズ除去システムのこの実施形態は他の開示した実施形態と同様に機能する。把持中、湾曲把持器240は、カニューレ230から遠位に伸長し得る。湾曲把持器240の付勢により、伸長すると、湾曲把持器240は湾曲した「フック」形態および開放形態を形成する。上側湾曲アーム242および下側湾曲アーム(図示せず)は、レンズ60/65を包囲し得る。湾曲把持器240は切断経路610に沿った切断を容易にするように配置され得る。把持を開始するためには、近位の歯246がレンズ60/65を取り囲み始め、かつブレード650がレンズ60/65に接近するように、カニューレ230が前方にわずかに伸長するか、または湾曲把持器240がわずかに後退し得る。湾曲把持器240は、レンズ60/65がブレード650に引き込まれ、同時にブレード650がレンズ60/65を切断経路610に沿って切断するようにさらに後退し得る。
【0080】
湾曲把持器240がカニューレ230内に後退するにつれ、歯246はレンズ60/65と接触させられる。これは、把持力を湾曲把持器240の長さに沿って分散し得る。これは把持力(grip)を増大し、レンズの穿孔および断裂を防止し得る。切断中、任意の時点においてレンズ60/65の切断されている部分は、レンズ60/65の把持器240によって保持された部分に常に近接しているであろう。切断部に近接するレンズ60/65を把持することによって、より安定した切断を提供することができ、レンズ60/65の断裂、屈曲、湾曲、またはクリンピング(crimping)を防止する。
【0081】
レンズ60/65は、それがブレード650によって切断され、カニューレ230の管腔内に引き込まれるにつれて回転し得る。この実施形態は、1つの切断工程で、レンズ60/65全体がカニューレ230内に後退されることを可能にする。従って、カニューレ230内への把持器240の後退により、レンズ60/65はカニューレ230の管腔内に安全に捕捉され、その後、上記カニューレ230は、開示した方法を用いて、角膜切開部13からカニューレ230を引っ張り出すことによって眼から除去され得る。
【0082】
図24〜
図26は、本開示の実施形態によるモジュール式IOLを用いる方法を記載している。例として、一次レンズおよび二次レンズに関して記載されているが、必ずしもこれらに限定されるものではなく、同一または同様の方法は、ベースおよびレンズを備える本明細書に記載するモジュール式IOLの実施形態を含む他のモジュール式IOLの実施形態に適用されてもよい。
【0083】
図24を参照すると、本開示の実施形態に従ったモジュール式IOLを用いる方法が概略フローチャートに示されている。この例では、二次レンズは、準最適な光学的結果が術中に検出された場合に交換され得る。白内障手術のようなIOL植込み処置を従来通りに開始する(110)。次に、角膜アクセス切開部を形成し、水晶体前嚢に嚢切開部を切開し、水晶体超音波乳化吸引によって白内障の水晶体を除去するといったような従来の工程を用いて、モジュール式IOLを受容するために、生来の水晶体を調製し得る(112)。次に、ベースレンズ(すなわち一次レンズ50)を水晶体嚢内に配置する(114)。次に、二次レンズ(すなわち二次レンズ60)を、水晶体嚢に接触したり、または他の場合には水晶体嚢を乱したりすることなく、嚢切開部の周内においてベースレンズ上に配置する(116)。次に、ベースレンズに対して二次レンズを解放可能に接続するために、取付手段を係合させる(118)。これに代わって、ベースレンズと二次レンズとが一体として一緒に挿入されるように、水晶体嚢に配置する前に二次レンズをベースレンズに取り付けてもよい。ベースレンズおよび二次レンズの双方が適所にある状態で、光学的結果を、例えば手術中の収差測定によって、測定し得る(120)。上記光学的結果は、屈折矯正、中心性、トーリック矯正などを考慮に入れ得る。次に、光学的結果が最適であるか、または準最適であるかに関して判定する(122)。光学的結果が最適であるか、または他の場合には十分である場合には、IOL処置は完了する(124)。しかしながら、光学的結果が準最適である、不十分である、かつ/または患者が他の点で不満である場合には、上記取付手段を解放して(126)、二次レンズを除去し得る(128)。次いで異なる二次レンズをベースレンズ上に配置し(116)、示した同一の後続の工程に従う。上記異なる二次レンズは、例えば、屈折異常を治療するための異なる屈折力、分散について矯正するための異なる偏倚、またはトーリック誤差を矯正するために異なるトーリックパワーを有し得る。
【0084】
図25を参照すると、本開示の実施形態に従ったモジュール式IOLを用いるための別の方法が概略フローチャートに示されている。この例では、二次レンズは、準最適な光学的結果が術後に検出された場合に交換され得る。患者を例えば1〜4週間以上の期間にわたってモジュール式IOLに慣れさせる(130)こと以外は、同一の工程110〜118,124を前述の通りに実施し得る。再診の際に、光学的結果を測定し(120)、光学的結果が最適であるか、または準最適であるかに関して判定する(122)。光学的結果が最適であるか、または他の場合には十分である場合には、IOL処置を中止する(132)。光学的結果が準最適である、不十分である、かつ/または患者が他の点で不満である場合には、修正処置を開始し(134)、前述したような工程126,128,116,118に従って二次レンズを交換し得る。
【0085】
この方法は、光学的結果が十分かどうかを判断する前に水晶体嚢が治癒することを可能する。これは治癒過程が一次レンズおよび/または二次レンズの位置を変えてしまう場合に有利であり得る。この方法はまた長期的に適用されてもよく、その場合、患者の光学的要求および要望はより長い期間(例えば>1年)に対して変化する。この例では、患者は、より強力な屈折矯正、トーリック矯正、または多焦点矯正のような異なる矯正を必要とするか、または所望することがあり、それらの各々は異なる二次レンズによって対処され得る。
【0086】
図26を参照すると、本開示の実施形態に従ったモジュール式IOLを用いるためのさらに別の方法が概略フローチャートに示されている。この例では、二次レンズは、光学的に準最適であるか、または他の場合には患者の要求および要望を満たさない既存のIOLを有する患者138に植え込まれ得る。処置の開始(110)後、例えば前述したような溝を形成するためにレーザーエッチングを用いて、取付機構を既存の(ベース)IOL内にインサイチューで形成し得る(工程140)。溝の形成は、水晶体嚢への接触または他の場合には乱すことを避けるために、以前に切断された嚢切開部の周内において実施され得る。次に、二次レンズを嚢切開部の周内のベースレンズ上に配置し(116)、ベースレンズに対して二次レンズを接続するために取付手段を係合させて(118)、該処置は前述したように完了し得る(124)。
【0087】
図27〜
図27Dを参照すると、別のモジュール式IOL270が正面図、断面図、および詳細図でそれぞれ示されている。
図27Aおよび
図27Bは、
図27Bの線A−Aおよび線B−Bにそれぞれ沿って得られる断面図を示している。
図27Cおよび
図27Dは、
図27Aの円Cおよび
図27Bの円Dの詳細図をそれぞれ示す。モジュール式IOL270は、
図21〜
図21Dに示したモジュール式IOL210と同様に構成され得る。モジュール式IOL210のように、モジュール式IOL270は、中央開口と、対応する大きさおよび形状に形成された円形レンズ65が配置され得る壁を画定する凹部とを備えた環またはリングの形状に構成されたベース55を備える。また、モジュール式IOL210のように、上記凹部を画定する壁は、ベース55の内周に沿って延び、その一部は直径方向に対向した2つのタブ272を画定するようにフライス切削されている。タブ272の内周壁は、レンズ65の前面がベース55の前面と同一平面上に位置するように、
図27Cに見られるような面一接続部274を提供する。タブ272に沿った接続部274の界面は、例えば、傾斜していてもよいし、「S」字形であってもよいし、または図示したように「C」字形であってもよい。上記壁がフライス切削されている領域において周に沿ってタブ272から離れた他の場所では、レンズ65の周縁は
図27Dに見られるように露出されており、例えば、鉗子を用いた半径方向の圧迫によってレンズ65の挿入および除去を容易にする。
【0088】
ベース55は材料が全くない中央開口を備えているので、ベース55は、例えば約8mmのより大きな光学部外径(outside optic diameter)(ハプティックを除く)を有し得、依然として、例えば約2.4mm未満の角膜切開部を通り抜けるのに十分に小さい送達プロファイルに丸められ得る。これは、ベース55とレンズ65との間の接合部の少なくとも一部が、典型的には5〜6mmの直径を有する嚢切開部の周方向の境界から半径方向外側に移動されることを可能にし得る。ベース55とレンズ65との間の接合部の少なくとも一部を嚢切開部の周から半径方向外側に移動させることにより、視野内に位置する接合部の量を低減し、よって上記接合部によって生じる光散乱または光学収差(例えば異常光視症)の可能性を低減し得る。
【0089】
さらにこの利点を示すために、典型的には6mmである従来のレンズの光学部直径を有する標準(単一要素)IOLを検討する。直径6mmの光学部(optic)を備えたIOLは丸められて、2.2mmの角膜切開部を介して送達され得る。標準IOLを水晶体嚢内で固定するために、嚢切開部は、典型的には、水晶体嚢が潰れて治癒した後に、水晶体嚢が標準IOLを完全に捕捉することを可能にするような大きさに形成される。これは、約4.5mm〜5.5mmの直径を有する嚢切開部を形成することを外科医に強いる。
【0090】
ここで、比較によりIOL270を検討する。IOL270のモジュール式(2部品)の性質およびベース55の孔により、双方の要素(ベース55およびレンズ)が丸められて、小さな角膜切開部(例えば2.2mm)を介して送達されることが可能となるが、4.5mm〜5.5mmの嚢切開部を必要としない。むしろ、ベースが8mmの(ハプティックを除く)直径を有するので、嚢切開部の直径はより大きく(例えば6.0mm〜6.5mm)なってもよい。これは、レンズ65が嚢切開部の周の内側に快適に適合することを可能にし、また接合部274がより外周に位置することを可能にして、光の散乱をさらに最小限にする。もちろん、これらの例にかかわらず、ベース55に対してレンズ65を脱着すべく水晶体嚢を操作する必要性を軽減するために、レンズ65と嚢切開部の周縁との間に隙間を提供するために、任意の適当な寸法が選択されてもよい。
【0091】
図28A〜
図28Gを参照すると、別のモジュール式IOL280が示されている。モジュール式IOL280は、例として図面に示すような寸法を有し得るが、必ずしもこれらに限定されるものではない。モジュール式IOL280は、本明細書に記載される他のモジュール式IOL実施形態と、機能および利点に関して同一であってもよいし、または類似していてもよい。モジュール式IOL280は、以下により詳細に記載するように、ベースとレンズとを接続するために用いられる別のインターロック機能を提供する。
【0093】
図28A〜
図28Dを特に参照すると、モジュール式IOL280のベース55の部分は、レンズ65がベース55に取り付けられたときにレンズ65の後方光学面のすべてまたは大部分がベース55と接触しないように、一対のハプティック54と、中央孔57とを備える。レンズ65を受容するような大きさおよび構成である凹んだ棚部282は孔57の周を画定する。棚部282は、レンズ65上のタブ286を受容するような大きさに形成され、かつそのように構成された、1つ以上のキー止め部分284を備え得る。
【0094】
図28E〜
図28Gを特に参照すると、レンズ65は、光学部分287と1つ以上のタブ286とを備え、タブ286はそれぞれ貫通孔288を備える。タブ286はベース内のキー止め部分284内に嵌合するような大きさに形成されている。より詳細には、タブ286は、キー止め部分284の開口(棚部282の不連続部)と整合され、キー止め部分284内の棚部282の下側部分283に載るように後方に移動され得る。プローブまたは同様の装置をタブ286の孔288に係合させるために用いて、タブ286がキー止めの部分284内において棚部282の上側部分285の下に部分的に存在するまで、タブ286をキー止め部分284内において摺動させるように(例えば、図示したように時計回りに)回転させ、それによりレンズ65をベース55に接続し得る。ベース55からレンズ65を分離するために逆の工程に従ってもよい。
【0095】
図29A〜
図29Fを参照すると、別のモジュール式IOL290が示されている。モジュール式IOL290は例として図面に示すような寸法を有し得るが、必ずしもこれらに限定されるものではない。モジュール式IOL290は、本明細書に記載される他のモジュール式IOLの実施形態と、機能および利点に関して同一であってもよいし、または類似していてもよい。モジュール式IOL290は、以下により詳細に記載するように、ベースとレンズとを接続するために用いられる別のインターロック機能を提供する。
【0096】
図29A〜
図29Cはモジュール式IOL290のベース部55を示し、
図29D〜
図29Fはモジュール式IOL290のレンズ部分65を示す。具体的には、
図29Aは本体部分を有するベース55の正面図を示し、
図29Bは
図29Aの線B−Bに沿って得られた断面図を示し、
図29Cはベース55の斜視図を示している。
図29Dはレンズ65の正面図を示し、
図29Eは
図29Dの線E−Eに沿って得られた断面図を示し、
図29Fはレンズ65の斜視図を示す。ベース部55は光学部分を有さず、レンズ65がモジュール式IOL290の唯一の光学部分であることを可能にし得る。
【0097】
図29A〜
図29Cを特に参照すると、モジュール式IOL290のベース55の部分は、レンズ65がベース55に取り付けられたときに、レンズ65の後方光学面が最外側部分以外は、ベース55と接触しないように、一対のハプティック54と中央孔57とを備える。レンズ65のタブ部分295,296を受容するような大きさおよび構成である凹溝292は孔57の周を画定する。
【0098】
凹溝292は下側リム291および上側リム293を備える。上側リム293はレンズ65がベース55の孔57の内側に留まることができるように、レンズ65の外径より大きい内径を有し得る。下側リム291のすべてまたは一部は、ベース55の孔57内にレンズ65が配置されたときに下側リム291がレンズ65に対してバックストップとして作用するように、レンズ65の外径より小さい内径を有し得る。例として、必ずしもこれらに限定するものではないが、
図29Dに示すように、上側リム293は約6.0mmの内径を有し、下側リム291は約5.5mmの内径を有し、かつレンズ65はタブ295の頂端からタブ296の頂端までで約7.125mmの直径または長手寸法(タブ295,296を含む)を有し得る。さらに、光学本体部分297は、これも
図29Dに示すように、約5.8mmの外径を有し得る。さらに、
図29Bに示すように、上記ベースは約0.615mmの厚さを備え得る。また、上側リム293は約0.45mmの長さを有し得る。下側リム291は、約0.55mmの長さを有する前面と、約0.75mmの長さを有する後面とを備え得る。
【0099】
溝292を画定する下側リム291および上側リム293は、孔57の周のすべてまたは一部のまわりに連続的に延在し得る。これに代わって、溝292を画定する下側リム291および上側リム293は、孔57の周のすべてまたは一部のまわりに不連続に延在してもよい。不連続構成の一例は、下側リム291および上側リム293の各部分を交互に繰り返しており、これはベース55を単一部品に低温機械加工(cryo−machining)するのによく適している場合がある。示したように、ベース55は、後で結合(例えば接着剤結合または溶剤結合)される下側または後方部分55Aおよび上側または前方部分55Bを含む2部品に低温機械加工され得る。これは連続した溝292を画定するのによく適している場合がある。化学的性質および機械的性質の適合性を維持するために、接着剤およびベース55の部品55A/55Bは、同一のモノマー調合物またはポリマー調合物を含有し得る。例えば、上記接着剤は、ベース55の疎水性アクリル部品55A/55Bの製造に用いられるのと同一のアクリルモノマーから調剤され得る。当技術分野においてよく知られている他の製造法も用いられ得る。
【0100】
任意で、ベースの後方部分55Aは、孔57を備えた環状リングではなく、中実の円盤であってもよく、それによりレンズ65の後方側が接触する後面を画定する。上記後面は平坦であってもよいし、またはレンズ65の後方の輪郭に一致するために湾曲していてもよい。これは、レンズ65にバックストップを提供することにより、ベース55におけるレンズ65の送達および配置をより容易にするという利点を有し得る。これはまた後嚢混濁の割合を低減するという利点を提供し得る。
【0101】
図29D〜
図29Fを特に参照すると、モジュール式IOL290のレンズ65は、光学本体部分297(本願では「光学部分」とも称する)と、1つ以上のタブ295,296とを備える。
図29Eに示すように、タブ296は約0.25mmの厚さを備え、光学部分297は約0.78mmの最大厚を備え得る。光学部分297の厚さはタブ295,296に向かってテーパーをなし得る。示したように、タブ295は固定されているが、タブ296は動かされ得る。代替案として、固定タブ295は、(例えばタブ296のような)可動タブと置き換えられてもよい。固定タブ295は、プローブまたは同様の装置を孔298に係合させるために用いて、タブ295を操作し得るように、貫通孔298を備え得る。孔298は約0.231mmの直径を有し得る。可動タブ296は、ベース55の孔57内に送達するための圧迫位置と、ベース55の溝292内に配備するための圧迫されていない拡張位置(図示)との間で動かされ得、よってベース55とレンズ65との間にインターロック接続を形成する。
【0102】
固定タブ295の外側の湾曲は、溝292の内側半径に一致する半径を有し得る。同様に、可動タブ296の外側の湾曲は、可動タブ296がその圧迫されていない拡張位置にある場合、溝292の内側半径に一致する半径を有し得る。この構成は、いったん接続されると、ベース55とレンズ65との間の相対運動を制限する。
【0103】
任意で、レンズ65は円形ではなく、卵形または楕円形であってもよく、タブ295,296は長軸に近接して配置される。したがって、この構成は、その短軸に沿ったレンズ65の端縁とベース55内の溝292の上側リム293の内周との間に隙間を画定するであろう。上記隙間は、分離が必要となった場合に、プローブまたは同様の装置がベース55からレンズ65を取り外すためのアクセスを提供するという利点を有し得る。
【0104】
可動タブ296は、示したように、レンズ65に取り付けられ、2つの端部でレンズから延びて、レンズ65から離れた中間部分を有し得る(板ばねのように)。これに代わって、可動タブ296はレンズ65に取り付けられ、一端でレンズから延び、他端は自由であってもよい(片持ちばねのように)。機械式の技術分野において知られているように、他のばね形態を用いてもよい。
【0105】
可動タブ296は、(例えば側方内向きの力の適用により)その圧迫位置に弾性変形し得る。小さな力による圧迫を容易にするために、陥凹部299をタブの外側(および/または内側)の湾曲上に提供して、ばねにヒンジを形成してもよい。
【0106】
図29A2〜
図29E2はモジュール式IOL290の別のベース部55を示す。具体的には、
図29A2はベース55の正面図を示し、
図29B2は
図29A2の線B−Bに沿って得られた断面図を示し、
図29C2はベース55の斜視図を示し、
図29D2は
図29B2の円Dの詳細図を示し、
図29E2は
図29A2の円Eの詳細図を示している。この別の実施形態において、モジュール式IOL290のベース55のすべての態様は、一対の切欠き291A、一対の刻み目293A、および鋭利な端縁291Bを備えること以外はほぼ同一である。
【0107】
例として、以下の寸法が提供されるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
図29A2において、直径A1は13.00±0.02mmであり、直径A2は8.50±0.10mmであり、直径A3は7.00±0.051mmであり、直径A4は6.30±0.051mmであり、直径A5は5.50+0.15/−0.05mmであり、直径A6は7.92mmであり得る。
図29B2において、寸法B1は0.615±0.020mmであり得る。
図29D2において、寸法D1は0.15mmであり、寸法D2は0.17mmであり、寸法D3は0.75mmであり、寸法D4は0.35mmであり、寸法D5は0.08mmであり、寸法D6は0.30±0.02mmであり得る。
図29E2において、寸法E1(切欠き291Aの幅)は1.48mmであり、寸法E2(刻み目293Aの外縁における直径)は6.62mmであり、寸法E3(上側リム293の内径)は6.25mmであり、寸法E4(切欠き291Aのラジアン)は約30度であり得る。
【0108】
前の実施形態におけるように、この別の実施形態のモジュール式IOL290のベース55の部分は、レンズ65がベース55に取り付けられたときに、レンズ65の後方光学面が最外側部分以外はベース55と接触しないように、一対のハプティック54と中央孔57とを備える。レンズ65のタブ部分295,296を受容するような大きさおよび構成である凹溝292は孔57の周を画定する。凹溝292は下側リム291および上側リム293を備える。
【0109】
モジュール式IOL290のベース55のこの別の実施形態において、下側リム291は、術中に粘弾性物(visco−elastic)を除去することを支援する1つ以上の切欠き291Aを備え得る。また、この別の実施形態において、上側リム293は、術中に、ベース55がより容易に操作されることを可能にするシンスキーフックにアクセスを提供するために1つ以上の刻み目293Aを備え得る。さらに、この実施形態において、下側リム291(またはベース55の後方側)は、後嚢混濁の傾向を低減するために、その後方の周に沿って少なくとも1つの角端縁291Bを備え得る。角端縁291Bは、ベース55の前方の周および外周に沿って形成された角端縁に追加され得る。例えば、示した実施形態において、ベース55は、外周に沿った2つの端縁、すなわち1つの前方周縁と1つの後方周縁291Bとを備える。断面において、角端縁291Bは、直角(square angle)、鋭角または鈍角によって画定されてもよい。角端縁291Bは、示したように、後面と同一平面上にあってもよいし、または後方に突出していてもよい。ベース55は、端縁291Bをより良好に形成するために、後続のタンブリングなしで、機械加工され得る。
【0110】
図29B、
図29B2および
図29Eに関し、下側リム291および上側リム293は、ベース55の周まわりの前後方向(AP)寸法について、溝292に嵌合するタブ295,296に近接する光学部65の対応するAP寸法よりも大きいAP寸法を画定し得ることに留意されたい。例えば、
図29Bおよび
図29B2に示すように、ベース55の周のAP寸法は0.615mmであり、タブ295,296に近接した対応する光学部65のAP寸法は、
図29Eに示すように0.25mmであり得る。モジュール式IOL290が水晶体嚢内に植え込まれる場合、これらの相対寸法は、後嚢と光学部65の後方側との間の隔離(standoff)、並びに嚢切開部に近接する前嚢(時に前尖と呼ばれる)と上記光学部の前方側との間の隔離を提供する。この隔離は、他の場合には手術後の光学部の交換を妨げることがある細胞増殖の可能性、並びに光学部65の混濁化および/または光学部65への組織付着を生じる可能性を低減する。そのような細胞増殖は典型的には半径方向内側に増殖するので、上記隔離は、下側リムおよび上側リム291,293の内周に近接した光学部分55の周に近接して提供され得る。ここれに対し、上記光学部の中心部は、隔離を有しても有さなくてもよく、ベース55の周まわりのAP寸法より小さいか、同一であるか、または大きいAP寸法を有する。例えば、上記光学部の中心部は、
図29Eに示すように(ジオプトリーによって)、0.78mmのAP寸法を有してもよく、これは、
図29Bおよび
図29B2に示したような0.615mmのベース55の周のAP寸法より大きい。加えて、前方側における嚢切開部およびそれに対応した前方側のより少ない組織接触領域の存在によって、前方側より後方側で細胞増殖の可能性がより高いということを認識して、下側(後方)リム291は上側(前方)リム293より大きなAP寸法を有してもよい。当業者は、この効果を達成するためには、例として提供され、必ずしもそれらに限定されるものではない特定の寸法ではなく、相対寸法の重要性を認めるであろう。
【0111】
図29G〜
図29Jを特に参照すると、モジュール式IOL290の植え込みが示されている。
図29Gに示すように、モジュール式IOL290は、最初に、角膜切開部13を介して嚢切開部36を通って水晶体嚢34内に挿入された送達チューブを用いて、ベース55を丸めた形態で水晶体嚢内に送達することにより、植え込まれ得る。
図29Hに示すように、ベース55は送達チューブから放出されて、広がり得る。愛護的操作により、ベース55のハプティック54は水晶体嚢34の内側の赤道に係合し、ベース55の孔57を嚢切開部36に対して中心に配置し得る。
【0112】
レンズ65も送達チューブを用いて丸めた形態で送達され、上記送達チューブはレンズ65の遠位チップをベース55に近接して配置する。レンズ65は送達チューブから放出され広がり得る。愛護的操作によって、レンズ65は嚢切開部36に対して中心に配置される。一旦ベース55が水晶体嚢内に送達され広げられたならば、レンズ65は取付機構70によってベース55に接続され得る。モジュール式IOL290は、タブ295/296および溝292を用いて、ベース55と取付機構70を含むレンズ65との間にインターロック接続を提供する。
【0113】
図29I〜
図29Jに示すように、レンズ65は、最初に可動タブ296を溝292に挿入することによって、ベース55に接続され得る。次に、可動タブ296が固定タブ295の孔298に挿入されたプローブまたは同様の装置を用いた側方力の印加により圧迫され、レンズ65とベース55とが同一平面上に位置するように、レンズ65がベース55の孔57内に進められることを可能にする。
【0114】
次に、上記圧迫力を可動タブ296から解放して、固定タブ295がベース55の溝292内に摺動することを可能し、よってレンズ65をベース55に接続する。インターロック機構(interlocking feature)を圧迫するために前後方向の力ではなく側方力を用いることによって、水晶体嚢の後方断裂の危険性が低減される。プローブは孔298から除去され得る。ベース55からレンズ65を分離するために逆の工程に従ってもよい。
【0115】
可動タブ296および溝292は、ベース55とレンズ65との間にインターロック接続を提供するインターロック部材と称されてもよい。上記インターロック部材の対のうちの少なくとも一方は、それらの間の接続をロックまたはロック解除するために可動である。より一般的には、1つ以上のインターロック接続が上記ベースとレンズとの間に提供され得る。各インターロック接続は一対のインターロック部材を備えてもよく、それらのインターロック部材の一方または双方は可動である。可動インターロック部材は、
図29A〜
図29Fのモジュール式IOL290に関して記載したように、レンズと関連付けられてもよい。これに代わって、可動インターロック部材は、
図30A〜
図30Bに示すモジュール式IOL300に関して記載したように、ベース55に関連付けられていてもよい。
【0116】
レンズ、例えばレンズ60/65の除去は課題を呈することがある。レンズ60/65は本明細書に記載するような一次要素またはベースから取り外されることがあり、広がったレンズ60/65の直径が角膜切開部の幅より大きい場合には、角膜切開部を介した除去は、角膜切開部の幅を増大する危険があり得る。これは、角膜(または強膜切開部が用いられる場合には強膜)に損傷を与える危険性および否定的な術後結果の可能性を増大し得る。一方、例えば、再度巻き付けることによるレンズ60/65の幅の低減もまた、実質的な操作を必要とし、一般に水晶体嚢または眼に損傷を与える危険がある。角膜切開部の幅を増大することなく、かつ眼または水晶体嚢に損傷を与えることなく、レンズ60/65の除去を可能にするレンズ除去法および器具が本明細書に開示される。上記レンズ除去法および器具は、眼への損傷または外傷を防止するために、レンズに対する前後方向の力およびトルクを最小限にするように構成され得る。上記方法および器具はまた、断片、異物または鋸歯状端縁を生じないようにし得る。
【0117】
ベース50/55からレンズ60/65を解放することにより、レンズの除去が開始する。
図29Kに示すように、プローブまたは同様の装置は、角膜切開部13、嚢切開部36を通過して、モジュール式IOL、例えばモジュール式IOL290を収容している水晶体嚢34内に進入し得る。
図29Lに示されるように、プローブまたは同様の装置は、固定タブ295の孔298に係合し、側方力の印加によって可動タブ296を圧迫し得る。圧迫により、固定タブ295はベース50/55の溝292から分離し得る。愛護的操作により、レンズ60/65はレンズ60/65とベース50/55とがもはや同一平面上に位置しないように持ち上げられ得る。一旦解放されると、圧迫力は解除され、可動タブ296は、弾性的に拡張して、ベース50/55の溝292から分離し得る。
【0118】
図29Mに見られるように、プローブまたは同様の装置を用いて、レンズ60/65を水晶体嚢34から前眼房15内に通過させ得る。この工程は、レンズ60/65の幅が嚢切開部36の幅よりも小さいので、眼に損傷を与えたり、または嚢切開部36の大きさを拡張したりしない。上記プローブまたは同様の装置はまた、固定タブ295が角膜切開部13に近位であり、かつ可動タブ296が角膜切開部13に遠位にある向きに、レンズ60/65を回転させ得る。
【0119】
典型的な角膜切開部13は、レンズ60/65の外径より小さい約2.2mmの幅を有し得る。よって角膜切開部13を介して前眼房15からレンズ60/65を除去するには、レンズ60/65の機械的操作が必要となり得る。レンズ60/65を単一片として、または複数片で、角膜切開部を介して引き出すことができるように、レンズ60/65は操作、例えば切断され得る。カニューレまたは送達チューブはこの除去を容易にし得る。
【0120】
図30A〜
図30Bは、ベース55およびレンズ65を備えた別のモジュール式IOL300を示している。
図30Aはベース55の正面図を示し、
図30Bはレンズ65の斜視図を示す。ベース55は、前述したように、中央孔57と一対のハプティック54とを備え得る。ベース55はまた、レンズ65の溝304内に嵌合するような大きさおよび構成である1つ以上の可動タブ302も備え得る。示したように、ベース55は一対の可動タブ302を備えるが、タブのうちの一方は固定されていてもよい(すなわち、非可動であってもよい)。レンズ65は、光学部分307と、下側リム303および上側リム305によって画定された1つ以上の溝304とを備える。レンズ65は溝304が存在する周のまわりでは比較的薄いので、溝304は、示したように下側リム303および上側リム305を延長することによって画定され得る。当業者に認識されるように、この実施形態の可動タブ302および溝304は、同一または同様の機能、用途、別例および利点を含む前の実施形態に記載した可動タブ296および溝292と同一または同様であってもよい。
【0121】
図31A〜
図31Bを参照すると、本開示の実施形態に従ったモジュール式IOLのためのレンズ除去または摘出器システム310が概略的に示されている。
図31Aはレンズ60/65が捕捉されている摘出器システム310の斜視図を示しており、
図31Bはレンズ60/65が離断されている摘出器システム310の斜視図を示している。摘出器システム310は、説明のみを目的として、短縮図で示されている。摘出器システム310の長さおよび直径は、角膜切開部を介した従来の手動操作に対して、例えば従来のレンズカートリッジの寸法に対して、選択され得る。
【0122】
摘出器システムは、ハンドル314と、そこから遠位に延びるスリーブ312とを備える。スリーブ312は内部が中空であり、レンズ60/65を支持するために舌状延長部313を備える。
【0123】
掴持器(grabber)316は、ハンドル314を通って近位に延びる作動部材(図示せず)によって、スリーブ312から遠位に伸長し、かつ上記スリーブ内に後退可能である。掴持器316は、レンズ60/65に係合して引っ張るための遠位フック、鉗子、または他の機構を備え得る。この例では、掴持器316は、レンズ60/65の遠位(反対側)端縁に係合する。これに代わって、マイクロ鉗子を用いてレンズ60/65の近位端を把持してもよいし、または、鋭利器具を用いて、近位端付近のレンズ60/65の前面を穿刺してもよい。鋭利な先端はスリーブ312を介して導入され、延長舌状部313が眼の解剖学的構造を保護するので、これは安全に行うことができる。
【0124】
一対のブレード318は、示したように、舌状延長部313の近位端部の両側においてスリーブ312の遠位端をわずかに越えて延び得る。ブレードアクチュエータ319を用いて、ブレード318を、
図31Aに示すように切断のために前進させてもよいし、または
図31Bに示すように切断させないためにスリーブ312内に後退させてもよい。
【0125】
使用時、水晶体嚢(図示せず)内においてレンズ60/65をベースから取り外して、前眼房内に存在させた状態で、スリーブ312は角膜切開部を介して挿入され、舌状延長部313は摘出されるべきレンズ60/65の下に配置され得る。次に、掴持器316がレンズ60/65の上に進められ得る。切断のためにブレード318が伸長された状態で、掴持器316がスリーブ312内に後退させられて、レンズ60/65内に該レンズを中央部分および2つの側方部分に分割する切り込みを形成し得る。掴持器316は、上記切り込みがレンズの直径を部分的に(例えば80%)横断して延びるまで、後退させられ、よって中央部分と2つの側方部分との間の接続を保持し得る。この時点で、ブレード318はアクチュエータ319を用いて後退させられ得る。次に、掴持器316はさらに後退させられて、レンズ60/65の中央部分がスリーブ312内に引き込まれるようにさせ、かつレンズ60/65の側方部分を反転または回転させ得る。掴持器316のさらなる後退により、レンズ60/65の側方部分が重ね合わされ、上記中央部分に続いてスリーブ312内に入る。次いで摘出器システム310は角膜切開部から除去され、よってレンズ60/65は眼から摘出される。摘出器システム310はまた、ハプティックを備えた光学部分を含む他の光学部を摘出するために用いられてもよく、その場合、上記ハプティックは側方部分に続いてスリーブ内に入る。
【0126】
図31C〜
図31Fを参照すると、モジュール式IOLのためのレンズ除去または摘出器システム310の関連する実施形態が概略的に示されている。
図31Cは、レンズ60/65が捕捉されている摘出器システム310の詳細斜視図に示す。
図31Dは、伸長可能な舌状部313が部分的に後退されており、レンズ60/65が一対のブレード318によって部分的に切断されている、摘出器システム310の詳細斜視図を示している。
図31Eは、レンズ60/65の中央部分が中空スリーブ312の管腔内に摘出されており、かつ残りの「蹄鉄型の」レンズ60/65はスリーブ312と伸長可能な舌状部313との間に把持されている、摘出器システム310の斜視図を示す。
図31Fは、中央部分が切り取られて摘出された後のレンズ60/65の概略図を示す。摘出器システム310の長さおよび直径は、従来の角膜切開部を介した手動操作に対して、例えば従来のレンズカートリッジの寸法に対して、選択され得る。
【0127】
摘出器システム310は、一対の遠位向きブレード318を有する中空カニューレ312を備え得る。中空カニューレ312は、角膜切開部の大きさを増大させることなく、角膜切開部を介して延びるような大きさおよび構成であり得る。中空カニューレ312は、角膜切開部の大きさを最小にしつつレンズ60/65の摘出を容易にするために、楕円形または矩形の断面を有し得る。中空カニューレ312は硬質材料から形成され得、ブレード318はカニューレ312の遠位側方端縁を鋭利にすることにより形成され得、刃先(cutting edges)はそれが角膜切開部を通過する際に眼組織を切断しないようにするために、カニューレ壁の内側に形成されている。摘出器システム310はまた、中空カニューレ312の遠位端部に配置され、かつ上記遠位端部を越えて伸長可能である伸長可能な舌状部313を備え得る。伸長可能な舌状部313の遠位チップは掴持器316、例えば、レンズ60/65に係合する遠位フック、鉗子、または他の機構を形成し得る。
【0128】
伸長可能な舌状部313はカニューレ312の遠位端部を越えて伸長し、伸長位置においてレンズ60/65の遠端に係合し、後退位置においてスリーブ312内に完全に後退するように構成され得る。後退位置において、伸長可能な舌状部313の遠位チップの掴持器316は、スリーブ312からわずかに突出し得る。(図示したような)伸長形態において、伸長可能な舌状部313は、レンズ60/65が切断されている最中にレンズ60/65に対して支持面を提供し得る。掴持器316は、モジュール式IOL290の光学部分297と可動タブ296との間に形成された孔を通じてレンズ60/65に係合し得る。
【0129】
舌状部313は、ブレード318に向かう舌状部313の後退が、舌状部313に向かうブレード318の伸長に対して機能的に等価となり得るように、中空カニューレ312および一対のブレード318に対して移動する。この実施形態は、舌状部313の後退による切断を開示しているが、ブレード318の伸長を含むように理解されるべきである。
【0130】
使用時、レンズ60/65は水晶体嚢(図示せず)内においてベースから取り外され、本明細書に記載する方法を用いて前眼房内に存在し得る。スリーブ312は、後退位置にある伸長可能な舌状部313とともに、角膜切開部13を介して挿入され得る。伸長可能な舌状部313はレンズ60/65の下(後方)に伸長され、掴持器316はモジュール式IOL290の光学部分297と可動タブ296との間に形成された孔を通じてレンズ60/65に係合し得る。閲覧のために、伸長可能な舌状部313はレンズ60/65の下方(後方)に示されているが、伸長可能な舌状部313はまた、レンズ60/65の上、またはレンズ60/65の上下の双方に伸長することもできる。
【0131】
伸長可能な舌状部313がカニューレ312内に後退されるにつれ、レンズ60/65は一対のブレード318に沿って引っ張られ、一対のブレード318はレンズを平行な切断経路330に沿って切断する。上記切断は、レンズ60/65の近位側の固定タブ295から、光学部分297を通って、光学部分297と可動タブ296との間の空間まで延び得る。したがってレンズ60/65は、2つ以上の断片に切断される。例えば、
図31E〜
図31Fに示すように、レンズ60/65は2片に切断されてもよく、中央片は中空スリーブ312内に引き込まれ、残りの2つの「裂片」は前眼房に残存する。よって、切断後、可動タブ296はレンズ60/65の2つの残りの「裂片」に対する接続部として作用し得る。これは、切断後に前眼房内には単一のつながった断片のみが残存するので、眼からの除去を容易にし得る。更に、可動タブ296上の刻み目299は、例えば眼からの後続の摘出中に、2つの「裂片」が互いに対して屈曲および回転し得るように、可撓性の回転点として作用し得る。これに代わって、切断経路330がレンズ60/65に対して90度回転した場合には、レンズ60/65は3片に切断されるであろう。
【0132】
ブレード318は、角膜切開部の幅より小さいほぼ等幅の3つの部分を画定するために、レンズ60/65の直径のほぼ1/3を切断するように離間され得る。例えば、上記部分は、2.2mmの角膜切開部を通って除去されるように、2.0mm未満の幅を有し得る。ブレード318間の幅は、角膜切開部の大きさを増大することなく、角膜切開部を介して挿入されるような大きさに形成されたカニューレ312の幅によって画定され得る。よって、3つの部分の各々はまた、切開部の大きさを増大することなく、角膜切開部を介して除去されるような大きさに形成されている。上記部分は、個々の断片で連続的に除去されてもよいし、各断片を接続するレンズ60/65の未切断部を用いた相互接続片で除去されてもよい。示したように、一般に、矩形中央部分は切断され(第1部分)、蹄鉄型部分340(可動タブ296によって接続された第2部分および第3部分または「裂片」)を残す。例として、以下の寸法が提供されるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
図31Fにおいて、寸法F
1は1.950mmであり、寸法F
2は1.900mmであり得る。
【0133】
レンズ60/65の刻み目または他の機構は、レンズの中央部上にブレード318の伸長可能な対を配置することを支援し得る。例えば、光学部分297と可動タブ296との間の空間は、掴持器316の側方運動が制限され、摘出器システム310をレンズ60/65に対して中心に配置するような大きさに形成され得る。
【0134】
上記切断工程は、レンズ60/65に対して実質的に均衡した力(正味の力が最小であるか、または全くない)を印加し得る。ブレード318は、該ブレードが切断する際に、レンズ60/65に対して力を印加し得る。これらの力は、伸長可能な舌状部313および掴持器316によって印加される支持力(bracing forces)によって対抗され得る。これは、レンズ60/65上における正味の力を最小にするか、または回避して、水晶体嚢に対する外傷および損傷を防止する。別の切断機構が可能である。伸長可能なアームに取り付けられ、かつ切断経路330に沿って回転するように構成された一対の円形ブレード(「ピザカッター」)がブレード318に置き換わってもよい。別の実施形態では、一対のブレード318は、伸長可能な舌状部313からの上向きの圧迫力によって均衡される下向きの圧迫力を印加することによって(「クッキーの抜き型」)レンズ60/65を切断してもよい。
【0135】
レンズ60/65を切断した後、伸長可能な舌状部313はスリーブ312内に後退して、スリーブ312内に中央部分を摘出し得る。次に、摘出器システム310は、
図31Eに示すように、ブレード318の間の掴持器316とカニューレの上端縁部または下端縁部との間に蹄鉄部分340を把持し得る。摘出器システム310は眼から角膜切開部13を介して引き出され、それによりレンズ60/65を除去し得る。これに代わって、鉗子または他の適当な手術道具が蹄鉄部分340を把持し、馬蹄部分を眼の前眼房15から角膜切開部13を介して摘出してもよい。蹄鉄部分340は、
図32Dに示す摘出と同様に、摘出される際に屈曲してもよい。摘出器システム310はまた、ハプティックを備えた光学部分を含む他の光学部分を摘出するために用いられてもよく、その場合、上記ハプティックは側方部分に続いてスリーブ内に入る。
【0136】
図31G〜
図31Nを参照すると、モジュール式IOLのためのレンズ除去または摘出器システム310の別の実施形態が概略的に示されている。
図31Gは、レンズ60/65が後退可能な掴持器320によって捕捉されている摘出器システム310の詳述斜視図に示す。
図31Hは、伸長可能/後退可能な中空カニューレ312が、一対のブレード318によって切断されたレンズ60/65を把持している把持器320に対して完全に伸長されている摘出器システム310の詳細な斜視図を示す。
図31Iは、摘出器システム310の透視図を示す。
図31Jは、レンズ60/65が捕捉されている伸長可能/後退可能な把持器320の拡大図(zoom−in view)を示す。
図31Kは、中空カニューレ312内に完全に後退され閉鎖した形態にある把持器320の拡大図を示す。
図31Lは、中空カニューレ312の外側において完全に伸長され開放した形態にある把持器320の拡大図を示す。
図31Mは、矩形断面を有する把持器320の関連実施形態を示している。
図31Nは、4つの突起を有する把持器320の関連実施形態を示している。摘出器システム310の長さおよび直径は、従来の角膜切開部を介した手動操作に対して、例えば従来のレンズカートリッジの寸法に対して、選択され得る。
【0137】
図31G〜31Hに示すように、摘出器システム310は、遠位端部に一対の遠位向きブレード318と、近位端部に円形ベース360とを有する伸長可能/後退可能な中空カニューレ312を有する。中空カニューレ312は、角膜切開部の大きさを最小にするとともに、レンズ60/65の摘出を容易にするために、楕円形または矩形の断面を有し得る。摘出器システム310は、中空カニューレに対して伸長または後退することができる伸長可能/後退可能な把持器320を有する。把持器320は、ハンドル350が遠位または近位に摺動すると、把持器320が遠位または近位にそれぞれ伸長するように、「T型」ハンドル350に接続されている。
図31Iに示すように、ばね370は把持器320に対してカニューレ312の伸長/後退を促進する。ばね370は、ハンドル350の近位かつ円形ベース360の遠位に位置し、伸長形態において把持器320を付勢し、後退形態においてカニューレ312を付勢するように構成されている。
【0138】
図31Jに示すように、掴持器320は上側アーム322および下側アーム324を有する。上側アーム322の上面および下側アーム324の下面は、双方とも一般に滑らかである。上側アーム322の下面および下側アーム324の上面は双方とも把持を容易にするように構成された表面、例えば鋸歯状表面を有し得る。上記鋸歯状表面は複数の歯326を有し得る。歯326の角度は、切断および/または後退中に、レンズ60/65の把持をさらに容易にするために、近位方向に偏って構成され得る。
【0139】
掴持器320は開放形態と閉鎖した把持形態との間で連結を成し得る。
図31Kに示すように、掴持器320がカニューレ312内に完全に後退されるとき、掴持器320は、上側アーム322の遠位端部が下側アーム324の遠位端部に接触するように上側アーム322が若干下向きの角度を有する閉鎖形態にある。このすぼんだ先端部は角膜への進入を容易にし得る。
【0140】
図31Lに示すように、掴持器320がカニューレ312から完全に伸長されると、掴持器320は開放形態に連結を成す。開放形態において、上側アーム322は、カニューレ312が後退されるときに上側アーム322を開放形態に偏向する2つの変曲点328を有する。下側アーム324はカニューレ312に対して平坦かつ平行なままである。この開放形態において、上側アーム322の遠位部分は下側アーム324に平行であり、開口はレンズ60/65を収容するのに十分に広い。このアームが平行な開放形態は、カニューレ312およびブレード318が伸長して掴持器320を閉鎖するときに、最大数の鋸歯326がレンズ60/65と同時に接触することを可能にする。これはまた、レンズ60/65が開口内に摺動することを依然として可能にしながら、上側アーム322および下側アーム324を角膜に触れないようにする開口距離を最小にする。把持部320は、該把持部がカニューレ312の外側に存在する場合に、上側アーム322のこの付勢された形態を生じるために適当な材料、例えば、形状記憶ポリマー、非形状記憶ポリマー、金属、合金、ステンレス鋼、ヒートセットニチノール、弾性材料または超弾性材料から形成され得る。
【0141】
図31Mに示すように、掴持器320は矩形断面を有し得る。
図31Nに示すように、掴持器320には4つの突起、すなわち2つの上側突起322と、2つの下側突起324とを有し得る。これらの掴持器320の実施形態は、以前に開示した掴持器320とほとんど同じく機能する。
【0142】
使用時、レンズ60/65は水晶体嚢(図示せず)内においてベースから取り外され、本明細書に記載する方法を用いて前眼房内に存在し得る。カニューレ312は、「T−型」ハンドル350が近位形態にあり、従って把持器320が
図31Kに示すようにカニューレ312内に後退された状態で、角膜切開部13を介して挿入され得る。ハンドル350がゆっくり解放され、ばね370が把持器320をカニューレ312の遠位端から伸長させ得る。上側アーム322および下側アーム324は平行形態に開放し得る。
図31Lに示すように、把持器320はレンズ60/65を包囲し得る。
【0143】
切断工程中に、カニューレ312およびブレード318をレンズに向けて遠位に伸長させることは、レンズ60/65が眼角(angle of the eye)とぶつかるのを防止し、レンズ60/65を使用者の視野の中心に配置した状態で維持するので、把持器320をブレード318に向けて近位に引っ張ることとは対照的に、望ましいであろう。ばね370がハンドル350によって圧縮される間、把持器320は静止しており、カニューレ312およびブレード318をレンズ60/65に向けて伸長させ得る。カニューレ312が遠位に延びるにつれ、該カニューレは掴持器320を包囲し、上側アーム322および下側アーム324をレンズ60/65のまわりに閉鎖させる。掴持器320が閉鎖するにつれ、最大数の鋸歯326がレンズ60/65に同時に接触して把持力を増大する。ブレード318がレンズ60/65に切り込む際、掴持器320はブレード318に直接近接している。ブレード318が切断する際にブレード318に直接近接してレンズ60/65を把持することは、レンズ60/65の断裂、ねじれ、撓み、またはクリンピングを防止して、安定性を提供する。
【0144】
カニューレ312およびブレード318は、切断経路330に沿ってレンズ60/65の遠位端部に向かって伸長し続け得る。
図31Fに示すように、切断経路330は、レンズ60/65の近位側の固定タブ295から、光学部分297を通って、光学部分297と可動タブ296との間の空間まで延び得る。前述したように、切断後、可動タブ296はレンズ60/65の2つの残りの「裂片」に対して接続部として作用し得る。前眼房内には単一片のみが残存するので、これは眼からの除去を容易にし得る。更に、可動タブ296上の刻み目299は、例えば眼からの摘出中に、2つの「裂片」が互いに対して屈曲および回転し得るように、可撓性の回転点として作用し得る。
【0145】
図31Iに示すように、切断が完了した後、ハンドル350はばね370を圧縮しており、把持器320はレンズ60/65の中央部分と共にカニューレ312内に後退される。摘出器システム310は前眼房および眼から除去され、同時にレンズ60/65の中央被切断部を除去する。レンズ340の残りの1つ以上の部分は、開示した方法を用いて、眼から除去され得る。
【0146】
別の実施形態では、IOLのレンズ60/65は、外科用パンチ430切断器具を用いて、複数片で、眼10から除去され得る。
図32Aに示すように、外科用パンチ430は、通常はパンチを開放位置に付勢する近位ばね475と、近位ハンドル領域480と、遠位ヒンジ470と、遠位狭細パンチ(distal narrow punch)440とを有するはさみ状であり得る。遠位狭細パンチ440は、角膜切開部内に適合するように構成され得、例えば約2.2mm未満の断面幅を備えたテーパー形状を有する。これは、角膜切開部13を介した前眼房15内への遠位狭細パンチ440の挿入を容易にし得る。
【0147】
遠位狭細パンチ部分440は遠位ヒンジ470において結合された内側ブレード450と外側ブレード460とを有し得る。内側ブレード450および外側ブレード460は、「顎状」に互いに分離して構成され得る。外科用パンチが圧迫されたときに、内側ブレード450と外側ブレード460との間に挟まれた任意の材料、例えばレンズ60/65の中央部分が切り抜かれるように、内側ブレード450は外側ブレード460の内側に適合するように構成され得る。上記材料内における切断の形状は、切断されたときに材料に重なり合う内側ブレード450の形状とほぼ同様であり得る。内側ブレードシャフト455は、内側ブレード450から近位に延び得る。外側ブレードシャフト465は、外側ブレード460から近位に延び得る。内側ブレードシャフト455および外側ブレードシャフト465は各々握持領域485を有し、近位ヒンジ475において接続し得る。
【0148】
図32Bに示すように、外科用パンチ430の遠位狭細パンチ440は角膜切開部13を介して前眼房15内に進入し、IOL290のレンズ60/65を把持し得る。遠位狭細パンチ440は、圧迫または閉鎖形態で前眼房15に進入し得る。前眼房15の内側に位置したならば、外科用パンチは、内側ブレード450および外側ブレード460がレンズ60/65の中央部分を包囲するように構成され得る「開放した顎」形態に拡張し得る。外科用パンチ430は圧迫されて、狭細パンチ部分440の「顎」を閉鎖し、内側ブレード450および外側ブレード460を閉鎖形態に戻し得る。この圧迫は、レンズ60/65の中央部分を切断し得る。外科用パンチ430の圧迫は、レンズ60/65に印加される力が均衡される(すなわち、レンズ60/65に対する正味の力がない)ように、レンズ60/65に対して反力を印加し得る。よって、圧迫は前方方向または後方方向に実質的な力を印加せず、水晶体嚢に損傷を与えない。
【0149】
外科用パンチ430は角膜切開部13を介して前眼房15から抜去され得る。内側ブレード450の一部とほぼ同一形状を有するレンズ60/65の中央部分も角膜切開部13を通り抜け得る。よって、外科用パンチ430が抜去される際に、上記中央部分は同時に角膜切開部13を介して前眼房15から摘出され得る。これに代わって、上記中央部分は、前述したように、別の適当な外科用器具、例えば一対の非外傷性把持チップ237および管状シャフト239を有する鉗子235によって、角膜切開部13を介して前眼房15から摘出されてもよい。
【0150】
図32Cを特に参照すると、モジュール式IOL290が、レンズ60/65の中央部分は除去され、凹状蹄鉄部分420が後に残された状態で示されている。上記レンズ60/65の中央部分および残りの蹄鉄部分420の双方は、角膜切開部を通り抜けるために、すべての地点において十分に狭細であり、例えば、すべての地点に2.0mm未満の幅を有し得る。上記中央部分は、固定タブ295、孔298および光学部分297の一部を含み得る。上記中央部分が可動タブ296の一部ではなく、固定タブ295の一部を含むことが望ましいことがある。外科用パンチ430によって可動タブ296を切断することにより、陥凹部299を含む可能性がある可動タブ296の断片を含む小さな第3の断片を生じ得る。そのような断片は見つけたり、または摘出したりすることが困難であり得る。よって、この実施形態では、上記中央部分は光学部分297の中間点を越えて延びるが、可動タブ296までは延びていない。例として、以下の寸法が提供されるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
図32Cの寸法C
1は5.8mmであり、寸法C
2は0.75mmであり、寸法C
3は1.69mmであり、寸法C
4は6.92mmであり得る。
【0151】
図32Dに示すように、レンズ60/65の蹄鉄部分420は角膜切開部13を介して除去され得る。蹄鉄部分420の任意の地点における幅は、角膜切開部の幅より小さく、例えば2.0mmであり得る。これは2.0mmの最大幅と称されてもよい。よって、蹄鉄部分420は、角膜切開部(典型的には2.2mm)を、その大きさを増大することなく通り抜けるために、すべての地点において十分に狭細であり得る。鉗子235は、角膜切開部を介して前眼房15内に挿入され、レンズ60/65の蹄鉄部分420を把持するために用いられ得る。愛護的操作で、鉗子235は、レンズ60/65の蹄鉄部分420を回転させて、角膜切開部13を介して前眼房15から引き出し得る。レンズ60/65の蹄鉄部分420の摘出が角膜切開部13を拡大しないように、特別な注意が払われ得る。摘出後、モジュール式IOL290のベース50/55は水晶体嚢34内に残存し得る。
【0152】
別の実施形態では、切断器具を用いて、レンズ60/65に湾曲した切れ込み510(「らせん状切り込み」)を生成し得るが、レンズ60/65は一体のままであり、複数の断片に切断されない。
図33Aを特に参照すると、曲線状の切り込み510を有するモジュール式IOL290が示されている。示したように、湾曲した切れ込み510は、固定タブ295から光学部分297内に光学部分297の中間点を越えて延び得るが、可動タブ296までは延びていなくてよい。湾曲した切れ込み510は、レンズ60/65の固定タブ295の孔298を二分し得る。
【0153】
湾曲した切れ込み510は、湾曲した切れ込み510上の任意の地点からレンズ60/65の周上の最も近い地点までの距離が角膜切開部13の幅より小さくなるように、例えば2.0mm未満となるように、レンズ60/65上に構成され得る。これは2.0mmの最大幅と称され得る。これは、湾曲した切れ込み510を有するレンズ60/65の角膜切開部13(典型的には2.2mm)を介した前眼房15からの摘出を容易にし得る。
【0154】
湾曲した切れ込み510は、任意の適当な切断器具、例えば
図33Bに示した遠位切断部540を有する湾曲したマイクロ剪刀530を用いて形成され得る。
図33Bは遠位切断部540の詳細な概略図である。湾曲したマイクロ剪刀530の遠位切断部540は、遠位ヒンジ570において取り付けられた内側ブレード550と外側ブレード560とを有し得る。遠位切断部540は、例えば約2.0mm未満の断面幅を有する角膜切開部13内に適合するように構成され得る。これは、角膜切開部13を介した前眼房15内への遠位切断部540の挿入を容易にし得る。遠位切断部540の近位側には、遠位ヒンジを含む外科用パンチ430の近位ハンドル領域480とほぼ同様であってよい本体部分(図示せず)がある。
【0155】
内側ブレード550および外側ブレード560は、「顎状」に開放および閉鎖するように構成され得る。通常のはさみの刃と同様に、内側ブレード550および外側ブレード560は、湾曲したマイクロ剪刀530が圧迫または閉鎖されるときに、上記ブレードの間に挟まれた任意の材料を切断するように構成され得る。
図33Cに示すように、湾曲したマイクロ剪刀530は、切断経路が内側ブレード550と外側ブレード560との間の形状にほぼ同様である湾曲した切れ込み510をレンズ60/65に形成し得る。
【0156】
湾曲したマイクロ剪刀530の圧迫は、レンズ60/65に印加される力が均衡される(すなわち、レンズ60/65に対する正味の力がおおよそゼロになる)ように、レンズ60/65に対して反力を印加し得る。加えて、湾曲したマイクロ剪刀530の湾曲もまた、レンズ60/65の不要なトルクまたは回転を回避する。直線状のはさみは切断する際にレンズにトルクを印加してレンズの回転を引き起こすことがあるが、内側ブレード550および外側ブレード560からのレンズ60/65に対する任意のトルクは、湾曲ブレード上の別の接触点におけるレンズ60/65に対する等しい反対のトルクによって相殺される。よって、レンズ60/65の切断は、前方方向または後方方向に実質的な力またはトルクを印加せず、水晶体嚢に損傷を与えない。
【0157】
図33Cを再び参照すると、IOL290のレンズ60/65を把持している湾曲したマイクロ剪刀530が示されている。この形態は角膜切開部13を有する眼10の前眼房15内において可能である。外科用パンチ430に関して上述した方法を用いて、湾曲したマイクロ剪刀530の遠位切断部540は、角膜切開部13を介して、前眼房15内に部分的に挿入され得る。遠位湾曲ブレード540の断面の幅は角膜切開部13の幅より小さいので、角膜切開部13の大きさは不変である。
【0158】
遠位切断部540は閉鎖形態で前眼房15に進入し得る。いったん前眼房15の内側に位置したならば、内側ブレード550および外側ブレード560は、湾曲した切れ込み経路510に沿ってレンズ60/65を切断するために、拡張形態に開放し得る。遠位切断部540は、レンズ60/65に対して圧迫し閉鎖して、固定タブ295を切断することによって開始し、光学部分297内に中間点を越えて延び、可動タブ296に達することなく、固定タブ295に向かって湾曲して戻る湾曲した切れ込み510を生じ得る。湾曲した切れ込み510は、固定タブ295の孔298を二分し得る。
【0159】
レンズ60/65を切断した後、湾曲したマイクロ剪刀530は、角膜切開部13を介して前眼房15から抜去され得る。湾曲した切れ込み510を有したレンズ60/65は、前述したように、適当な外科用器具、例えば一対の非外傷性把持チップ237および管状シャフト239を有する鉗子235によって、角膜切開部13を介して前眼房15から摘出され得る。
【0160】
レンズ60/65が摘出される際、該レンズはらせん形態に伸長し得る。
図32Dの伸長した蹄鉄形態と同様に、
図33Dは伸長したらせん形態にある湾曲した切れ込み510を有するレンズ60/65を示している。レンズ60/65は、角膜切開部13を介した前眼房15からの摘出中に、らせん状に伸長し得る。レンズ60/65は、近位把持点515または遠位把持点520のいずれかに引張力が適用されると、このらせん形態をなす。
【0161】
鉗子235は角膜切開部13を介して前眼房15内に挿入され、例えば近位把持点515または遠位把持点520においてレンズ60/65を把持するために用いられ得る。愛護的操作により、鉗子235は、湾曲した切れ込み510を備えたレンズ60/65を回転させて、角膜切開部13を介して前眼房15から引き出し得る。レンズ60/65の摘出が角膜切開部13を拡大しないように、特別な注意が払われ得る。上述したように、湾曲した切れ込み510を備えたレンズ60/65は、角膜切開部を通り抜けるためにすべての地点において十分に狭細であり得る。湾曲した切れ込み510上の任意の地点からレンズ60/65の最も近い周上の地点までの距離は、角膜切開部13の幅より小さく、例えば2.0mm未満であってもよい。これは2.0mm未満の最大幅と称され得る。
【0162】
本発明の上記の検討は例証および説明のために示されている。上記は、本発明を本明細書において開示した形態に限定するものではない。本発明の説明は、1つ以上の実施形態および特定の別例および改変例の説明を含んでいるが、例えば本開示を理解した後に当業者の技能および知識の範囲内にあり得るような、他の別例および改変例は、本発明の範囲内にある。本開示は、権利請求されるものに対して、代替の、交換可能なおよび/または均等な構造、機能、範囲、または工程を含む別の実施形態を、そのような代替の、交換可能なおよび/または均等な構造、機能、範囲、または工程が本明細書に開示されているかに否かに関わらず、許される範囲内で包含する権利を得ることを意図しており、特許性のある主題を公に供する意図はない。