【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、固体炭素材料を生成する方法であって、
炭素質原料の熱処理によって形成された、重合を受けることができる、炭素含有材料を用意することと、
炭素含有材料を重合剤と混合して材料混合物を形成することと、
固体炭素材料を生成するために、材料混合物の重合が起こる温度まで材料混合物を加熱することと
を含む、方法が提供される。
【0010】
本発明の実施形態には、有意な利点がある。特に、生成された固体炭素材料は、比較的高い密度および硬度を有し得る。いくつかの事例において、生成された炭素材料は、特に更なる処理(すなわち炭化)の後に、コークス炭から生成された冶金コークスと同様の特性を有する。更に、生成された固体炭素材料は、コークス炭から生成された冶金コークスと比較して比較的低い硫黄含有率および比較的低い灰収率を有し得る。
【0011】
本明細書で使用される「炭素質原料」という用語は、石炭(泥炭、亜炭、褐炭、亜歴青炭、瀝青炭、半無煙炭から無煙炭までのその石炭化度の範囲全体)、バイオマス、固形廃棄物、またはそれらの混合物を含むがこれらに限定されない、炭素を含有する再生可能および再生不可能な多様な原料を含むよう意図される。固形廃棄物は、農業廃棄物、林業廃棄物、および一般廃棄物、または炭素質原料の加工からの残留物を含み得るが、これらに限定されない。
【0012】
本明細書で使用される「重合」という用語は、モノマー単独の重合に加えて、共重合、例えば2種以上の異なるモノマーの重合を用語の範囲内に含むよう意図される。更に、「重合」という用語は、モノマーまたはプレポリマーを互いに結合させることによるポリマー鎖の形成だけでなく、架橋として一般的に知られている、これらのポリマー鎖間の結合を確立させることよる三次元ネットワークの形成も含むものとして理解されたい。
【0013】
本明細書で使用される「炭素含有材料」という用語は、主な元素としての炭素と水素および酸素などの他の元素とを含む材料または材料組成物を用語の範囲内に含むよう意図される。例えば、炭素含有材料は、バイオマスまたは石炭などの炭素質原料の熱分解から得られてもよい。
【0014】
本明細書で使用される「重合剤」という用語は、重合を引き起こすまたは加速させるために重合性材料に添加される1つ以上の成分を用語の範囲内に含むよう意図される。したがって、「重合剤」という用語は、架橋剤、開始剤、加速剤、促進剤などとして働く材料を含むものと意図される。本明細書で使用される「誘発する」という用語は、重合剤のこれらの機能のいずれかまたは全てを含むように使用される。
【0015】
重合後に、重合剤が生成された固体炭素材料の一部を形成するように、本方法が実施され、重合剤が選択されてもよい。重合剤は、炭素質原料の加水分解または他の手段の熱的処理から生成されてもよい。ある範囲の成分が、重合剤として個別に使用されても混合物として使用されてもよいバイオマスの加水分解から生成され得ることは、当業者には理解されよう。
【0016】
ある実施形態において、重合剤は、フラン環、カルボニル基、および/または他の反応性官能基を有する材料を含む。例えば、重合剤は、フルフラール、ヒドロキシアセトン、フルフラールアルコール、またはそれらの混合物を含んでもよい。重合剤は、炭素質原料の加水分解、液化、または熱分解から得られてもよい。
【0017】
一実施形態において、炭素含有材料は、液体の形態で用意されてもよい。
【0018】
更なる実施形態において、炭素含有材料は、凝縮可能であり得る。
【0019】
特定の実施形態において、炭素含有材料は、流動性液体または非流動性ペーストを含む。炭素含有材料は、バイオオイルであってもよいバイオクルードなどの粗製物を含んでもよい。この点に関して、炭素含有材料は、当業者に知られる多様な方法を使用したバイオマスの熱分解、水熱的処理、または液化によって生成されてもよい。他の好適な炭素質原料としては、都市廃棄物、泥炭、亜炭、褐炭、亜歴青炭、および低ランクの瀝青炭などの石炭、ならびにそれらの混合物を挙げることができる。
【0020】
ある実施形態において、本方法は、炭素含有材料を更なる材料と混合するステップを含む。この混合ステップが、炭素含有材料を重合剤と混合するステップと共に行われてもよいことは理解されよう。
【0021】
特定の実施形態において、更なる材料は細孔を有する。例えば、更なる材料は、石炭もしくはバイオマス、またはバイオマス、泥炭、亜炭、褐炭、亜歴青炭、低ランクの瀝青炭、もしくはそれらの混合物といった炭素質原料の熱的処理から得られたチャーの微粒子などの、炭素質粒子を含んでもよい。しかしながら、他の好適な更なる材料も想定されることは、当業者には理解されよう。
【0022】
炭素含有材料および重合剤が多孔質材料と混合される場合、炭素含有材料と重合剤との重合の少なくとも一部は、更なる材料の細孔内で起こり得る。したがって、更なる材料の細孔は、凝固した炭素材料で充填されてもよい。
【0023】
追加的または代替的に、更なる材料は、固体炭素材料複合体を生成するための有機または無機の添加物を含んでもよい。例えば、無機塩を材料混合物に添加して、炭素金属複合体を生成してもよい。他の好適な添加物も想定されることは、当業者には理解されよう。
【0024】
炭素含有材料と重合剤とを混合するステップは、およそ室温で実施されても高温で実施されてもよい。
【0025】
この材料と重合剤とを混合するステップは、スラリーを形成するように実施されてもよい。
【0026】
ある実施形態において、材料混合物は、重合を誘発するために高温に加熱される。高温は、商業的意義のある速度で重合が起こるのに(ちょうど)十分であるが、重合中のガス状生成物の形成、および結果的に生成された固体炭素材料における細孔の形成を最低限に抑えることができるように十分に低い温度が選択され得る。
【0027】
ある実施形態において、材料混合物を加熱するステップは、段階的様式で実施される。例えば、異なる加熱速度で、かつ選択された温度レベルにおける様々な維持期間で、温度を徐々に上昇させてもよい。
【0028】
材料混合物を加熱して重合を誘発するステップは、大気圧下で実施されてもよい。しかしながら、反応物質の蒸気圧下などの他の条件も想定される。
【0029】
ある実施形態において、材料混合物を加熱して材料の重合を誘発するステップは、不活性環境、すなわち酸素欠乏環境で実施される。
【0030】
本方法は、固体炭素材料を脱揮発させるのに十分な温度まで固体炭素材料を加熱する(炭化させる)ステップを更に含んでもよい。この点に関して、生成された炭素材料は、冶金コークスの生成のための温度と同様の高さの温度、またはアルミニウム産業用の電極などの高品質の特殊な炭素材料を作製するための更に高い温度まで加熱されてもよい。例えば、生成された固体炭素材料は、400℃〜1500℃の温度まで加熱されてもよい。
【0031】
ある実施形態において、固体炭素材料は、高い強度を有し、様々な有機化合物および無機金属の吸着/吸収能力に優れる場合がある。この特定の適用形態では、固体炭素材料を炭化させる必要がない場合がある。
【0032】
重合のステップ、および生成された固体炭素材料を炭化させるステップは、生成された固体炭素材料の密度が更に上昇するように、交互に起こる様式で1回以上繰り返されてもよい。
【0033】
ある実施形態において、本方法は、材料混合物の重合速度を上昇させるための触媒を提供するステップを含む。例えば、触媒は、材料混合物に添加されてもよい。代替的に、触媒は、炭素含有材料、重合剤、および更なる材料のうちの少なくとも1つに含有されてもよい。例えば、バイオオイルなどの炭素含有材料中の酸が、触媒として機能し得る。
【0034】
本方法は、バイオマスなどの炭素質原料の処理によって重合剤および残留物を生成することを含んでもよい。本方法はまた、重合を受けることのできる炭素含有材料と、一部の重合が起こる細孔を有する更なる材料とが生成されるように、残留物を更に処理することを含んでもよい。残留物を熱分解して、重合を受けることのできる炭素含有材料を生成してもよい。
【0035】
本発明の第2の態様によれば、固体炭素材料を生成する方法であって、方法が、
炭素質原料の熱処理によって形成された、重合を受けることができる、炭素含有材料を用意することと、
細孔を有する更なる材料を用意することと、
炭素含有材料および更なる材料を重合剤と混合して材料混合物を形成することと、
固体炭素材料を生成するために、材料混合物の重合が起こる温度まで材料混合物を加熱することと
を含み、
材料混合物の重合の少なくとも一部が、更なる材料の細孔内で起こる、方法が提供される。
【0036】
本発明の第3の態様によれば、固体炭素材料を生成するためのシステムであって、システムが、重合反応器を含み、重合反応器が、
材料混合物および重合剤を提供するための少なくとも1つの入口と、
材料混合物を受けるための反応領域と、
反応領域に熱を提供するための熱源と
を備え、
材料混合物が、炭素質原料の熱処理によって形成された、重合を受けることができる、炭素含有材料を少なくとも含み、
固体炭素材料を生成するために、材料混合物の重合が起こる温度まで反応領域内の材料混合物が加熱される、システムが提供される。
【0037】
本システムの反応器は、固体炭素材料を炭化および脱揮発させるのに十分な温度まで材料混合物を加熱するように配されていてもよい。
【0038】
ある実施形態において、重合剤は、フラン環、カルボニル基、および/または他の反応性官能基を有する材料を含む。例えば、重合剤は、フルフラールを含んでもよい。
【0039】
一実施形態において、炭素含有材料は、液体または蒸気の形態で用意されてもよい。
【0040】
更なる実施形態において、炭素含有材料は、凝縮可能である。
【0041】
特定の実施形態において、炭素含有材料は、バイオクルードなどの粗製物を含む(バイオオイルが特定例である)。
【0042】
ある実施形態において、材料混合物は、更なる材料を含む。
【0043】
更なる材料は、多孔質であり得る。例えば、更なる材料は、石炭もしくはバイオマス、またはバイオマス、泥炭、亜炭、褐炭、亜歴青炭、低ランクの瀝青炭、もしくはそれらの混合物などの炭素質原料の熱的処理から得られたチャーの微粒子などの、炭素質粒子を含んでもよい。しかしながら、他の好適な更なる材料も想定されることは、当業者には理解されよう。
【0044】
炭素含有材料および重合剤が多孔質材料と混合される場合、材料混合物と重合剤との重合の少なくとも一部は、更なる材料の細孔内で起こり得る。更なる材料は、重合剤および炭素含有材料と交差重合してもよい。したがって、更なる材料の細孔は、凝固した炭素材料で充填されてもよい。
【0045】
追加的または代替的に、更なる材料は、機能化された炭素材料または炭素複合体を生成するための有機もしくは無機の添加物を含んでもよい。例えば、無機塩を材料混合物に添加して、炭素金属複合体を生成してもよい。他の好適な添加物も想定されることは、当業者には理解されよう。
【0046】
重合反応器は、各入口が材料混合物の材料成分を提供するように配されている複数の入口を備えていてもよい。例えば、重合反応器は、炭素含有材料を提供するための第1の入口と、重合剤を提供するための第2の入口と、更なる材料を提供するための第3の入口とを備えていてもよい。この実施形態では、重合反応器は、提供される材料成分を混合するための専用の混合領域を備えていてもよい。代替的に、混合物中の個々の成分は、反応器に入る前に予め混合されてもよい。後者の場合では、重合反応器は、混合物が1つの入口から反応器に入るように配されていてもよい。
【0047】
ある実施形態において、熱源は、重合を誘発するために反応領域を加熱するように配される。
【0048】
ある実施形態において、重合反応器は、不活性環境、すなわち酸素欠乏環境で作動するように配される。この実施形態では、重合反応器は、反応領域内に、窒素などの不活性ガスを受けるためのガス入口を備えていてもよい。
【0049】
重合反応器は、生成された固体炭素材料の炭化を実施するように更に配されていてもよい。この点に関して、熱源は、固体炭素材料を脱揮発させる温度まで反応領域を加熱するように配されていてもよい。この例において、材料混合物の重合および固体炭素材料の更なる炭化は、反応領域内で実施される。しかしながら、重合反応器が、生成された炭素材料が更に脱揮発される専用の炭化領域を備えていてもよいことは、当業者には理解されよう。代替的に、炭化は、直列に接続されていてもよい更なる容器内で行うこともできる。
【0050】
ある実施形態において、触媒が反応領域に提供されてもよい。このようにして、材料混合物の重合速度が、触媒によって上昇し得る。
【0051】
重合反応器は、ガス状生成物が重合反応器から出ることができるように、ガス出口を備えていてもよい。ガス状生成物は、炭素材料の更なる炭化の間に放出される揮発性物質を含む場合がある。重合反応器は、重合反応器から出る揮発性物質を収集することができるように、重合反応器のガス出口と流体接触している収集器を更に備えていてもよい。収集された有機物は、薬品回収に使用することができる。不凝縮ガス状生成物は、重合および炭化用の熱を発生させるために、燃焼器の燃料として使用されてもよい。
【0052】
ある実施形態において、重合反応器は、未変換の重合剤を含む重合または炭化中に放出される揮発性物質などのガス状生成物が凝縮し、更なる反応のために反応領域に再循環して戻し得るように配された、冷却器を備える。
【0053】
ある実施形態において、重合反応器は、移動機序により、反応している材料混合物が反応器を通り、反応器の長さに沿って移動するように配される。材料混合物が任意の好適な方向で反応領域を通って流れてもよいことは理解されよう。例えば、材料混合物は、実質的に水平な方向に流れてもよく、垂直方向に流れてもよく、傾斜角の方向に流れてもよい。これらの実施形態において、温度は、材料混合物の流れ方向と共に上昇してもよい。
【0054】
重合反応器は、バッチ反応器、セミバッチ反応器、または連続反応器として動作可能であり得る。
【0055】
本発明の第4の態様によれば、本発明の第1および第2の態様による方法を行うように配された重合反応器が提供される。
【0056】
本発明の第5の態様によれば、本発明の第1または第2のいずれかの態様による方法を使用して生成された、固体炭素材料、炭素複合材料、または電極もしくは活性炭などの生成物が提供される。
【0057】
本発明の第6の態様によれば、固体炭素材料を生成するための重合反応器であって、重合反応器が、
材料混合物および重合剤を提供するための少なくとも1つの入口と、
反応している材料混合物を反応器を通して移動させるための機序と、
反応器の長さに沿って温度が上昇するように反応領域に熱を提供するための熱源と
を備え、
材料混合物が、炭素質原料の熱処理によって形成された、重合を受けることができる、炭素含有材料を含み、
固体炭素材料を生成するために、材料混合物の重合が起こる温度まで反応器内の材料混合物が加熱される、重合反応器が提供される。
【0058】
本反応器は、固体炭素材料を炭化および脱揮発させるのに十分な温度まで固体炭素材料を加熱するように配されていてもよい。
【0059】
本反応器は、直列に接続されている更なる容器を備えていてもよく、使用中に、この容器中で、固体炭素材料を炭化および脱揮発させるのに十分な温度まで固体炭素材料が加熱される。
【0060】
本発明の第7の態様によれば、固体炭素材料を生成する方法であって、方法が、
炭素質原料の熱処理によって、重合を受けることができかつ高温にある、炭素含有材料を形成することと、
炭素含有材料を冷却することと、
炭素含有材料と混合するために重合剤を導入して材料混合物を形成することと
を含み、炭素含有材料がその重合に必要とされるおよその温度まで冷却された後に、重合剤が導入され、
それによって材料混合物の重合が起こり、固体炭素材料が生成される、方法が提供される。
【0061】
一実施形態において、材料混合物の重合の前およびその間における材料混合物の冷却は、不活性環境で実施される。
【0062】
本発明の第8の態様によれば、固体炭素材料を生成するための重合機構であって、重合機構が、
重合を受けることのできる炭素含有材料を生成するために炭素質原料を熱処理し、それによって使用中に炭素含有材料が熱処理容器から高温で出るように構成された熱処理容器と、
炭素含有材料を受け、炭素含有材料が重合反応器を通して運ばれる際にそれを冷却するように構成された重合反応器と、
炭素含有材料と混合するために重合剤を重合反応器に導入して材料混合物を形成するための少なくとも1つの入口と
を備え、入口が、使用中に、炭素含有材料がその重合に必要とされるおよその温度にある位置に重合剤を導入するように構成されており、
それによって材料混合物の重合が起こり、固体炭素材料が生成される、重合機構が提供される。
【0063】
一実施形態において、熱処理容器は熱分解反応器である。
【0064】
本重合機構は、熱処理容器と重合反応器との間にそれらと連通して配置され、かつ炭素含有材料を冷却または加熱するように構成されている熱交換ユニットを備えていてもよい。
【0065】
一実施形態において、重合反応器は、固体炭素材料を炭化および/または脱揮発させるのに十分な温度まで固体炭素材料を加熱するように構成された領域を有し得る。代替的に、別の実施形態において、本重合機構は、重合反応器と直列に接続され、かつ固体炭素材料を炭化および脱揮発させるのに十分な温度まで固体炭素材料を加熱するように構成されている、更なる容器を備えていてもよい。