特許第6956775号(P6956775)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6956775
(24)【登録日】2021年10月7日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】固体炭素材料の生成方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/05 20170101AFI20211021BHJP
【FI】
   C01B32/05
【請求項の数】28
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-235613(P2019-235613)
(22)【出願日】2019年12月26日
(62)【分割の表示】特願2017-553322(P2017-553322)の分割
【原出願日】2016年4月13日
(65)【公開番号】特開2020-79193(P2020-79193A)
(43)【公開日】2020年5月28日
【審査請求日】2020年1月21日
(31)【優先権主張番号】2015901314
(32)【優先日】2015年4月13日
(33)【優先権主張国】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】500534843
【氏名又は名称】カーティン ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー チュン−ヂュー
(72)【発明者】
【氏名】フー シュン
【審査官】 神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−064207(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2845842(EP,A1)
【文献】 国際公開第2013/180565(WO,A1)
【文献】 特開2006−236942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体炭素材料を生成する方法であって、
バイオマスを含む炭素質原料から重合剤および残留物を生成することと、
前記重合剤を、バイオマスを含む炭素質原料の熱分解から生成され、かつ重合を受けることのできる液体またはペーストのバイオオイルと混合して、材料混合物を形成することと、
前記固体炭素材料を生成するために、前記材料混合物の重合が起こる温度まで前記材料混合物を加熱することと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記バイオオイルを更なる材料と混合するステップを更に含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記更なる材料が細孔を有し、前記材料混合物の重合の少なくとも一部が、前記更なる材料の前記細孔内で起こることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記更なる材料が、石炭、バイオマス、およびチャーのうちの少なくとも1つからの微粒子を含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載の方法であって、前記更なる材料が、固体炭素材料複合体を生成するための有機または無機の添加物を含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記更なる材料が、炭素金属複合体を生成するための無機塩を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の方法であって、前記材料混合物を加熱するステップが、段階的様式で実施されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の方法であって、前記材料混合物の重合が起こるように前記材料混合物を加熱するステップが、不活性環境で実施されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の方法であって、前記生成された固体炭素材料を、前記固体炭素材料が炭化および/または脱揮発する温度まで加熱するステップを更に含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前記生成された固体炭素材料が400℃〜1500℃の温度まで加熱されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の方法であって、前記材料混合物の重合を誘発するステップと、前記生成された固体炭素材料を炭化させるステップとが、交互に起こる様式で1回以上繰り返されて、前記生成された固体炭素材料の密度が最終的に上昇することを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の方法であって、前記材料混合物の重合速度を上昇させるための触媒を提供するステップを更に含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法であって、前記残留物が更に処理されて、重合を受けることのできる前記バイオオイルと、一部の重合が起こる細孔を有する更なる材料とが生成されることを特徴とする方法。
【請求項14】
固体炭素材料を生成する方法であって、前記方法が、
バイオマスを含む炭素質原料から重合剤および残留物を生成することと、
バイオマスを含む炭素質原料の熱分解によって、重合を受けることができかつ高温にある、バイオオイルを形成することと、
前記バイオオイルを冷却することと、
前記バイオオイルと混合するために前記重合剤を導入して材料混合物を形成することと
を含み、前記バイオオイルがその重合に必要とされるおよその温度まで冷却された後に、前記重合剤が導入され、
それによって前記材料混合物の重合が起こり、前記固体炭素材料が生成されることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記バイオオイルを更なる材料と混合するステップを更に含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、前記更なる材料が細孔を有し、前記材料混合物の重合の少なくとも一部が、前記更なる材料の前記細孔内で起こることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項15または16に記載の方法であって、前記更なる材料が、石炭、バイオマス、およびチャーのうちの少なくとも1つからの微粒子を含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項15から17のいずれか1項に記載の方法であって、前記更なる材料が、固体炭素材料複合体を生成するための有機または無機の添加物を含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、前記更なる材料が、炭素金属複合体を生成するための無機塩を含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項15から19のいずれか1項に記載の方法であって、前記更なる材料が、前記バイオオイルを生成するための前記炭素質原料の熱処理中に形成された固体残留物を含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項14から20のいずれか1項に記載の方法であって、前記材料混合物を冷却するステップが、均一様式または段階的様式で実施されることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項14から21のいずれか1項に記載の方法であって、前記材料混合物の重合の前およびその間に前記材料混合物を冷却することが、不活性環境で実施されることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項14から22のいずれか1項に記載の方法であって、前記材料混合物の重合速度を上昇させるための触媒を提供するステップを更に含むことを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項14〜23のいずれか1項に記載の方法であって、前記残留物が更に処理されて、重合を受けることのできる前記バイオオイルが生成され、一部の重合が起こる細孔を有する更なる材料が生成されることを特徴とする方法。
【請求項25】
固体炭素材料を生成するための重合機構であって、前記重合機構が、
重合を受けることのできるバイオオイルを生成するために、バイオマスを含む炭素質原料を熱分解し、それによって使用中に前記バイオオイルが熱分解器から高温で出るように構成された前記熱分解器と、
前記バイオオイルを受け、前記バイオオイルが重合反応器を通して運ばれる際にそれを冷却するように構成された前記重合反応器と、
前記熱分解器と前記重合反応器との間にそれらと連通して配置され、かつ前記バイオオイルを冷却または加熱するように構成されている熱交換ユニットと、
前記バイオオイルと混合するために重合剤を前記重合反応器に導入して材料混合物を形成するための少なくとも1つの入口と、
を備え、前記入口が、使用中に、前記バイオオイルがその重合に必要とされるおよその温度にある位置に前記重合剤を導入するように構成されており、
それによって前記材料混合物の重合が起こり、前記固体炭素材料が生成されることを特徴とする重合機構。
【請求項26】
請求項25に記載の重合機構であって、前記固体炭素材料を炭化および/または脱揮発させるのに十分な温度まで前記固体炭素材料を加熱するように構成された領域を有することを特徴とする重合機構。
【請求項27】
請求項25又は26に記載の重合機構であって、前記重合反応器と直列に接続され、かつ前記固体炭素材料を炭化および脱揮発させるのに十分な温度まで前記固体炭素材料を加熱するように構成されている、更なる容器を更に備えることを特徴とする重合機構。
【請求項28】
請求項25から27のいずれか1項に記載の重合機構であって、請求項14から24のいずれか1項に記載の方法を行うように配されていることを特徴とする重合機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体炭素材料の生成方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
石炭および石油などの炭素質原料は、固体炭素材料を生成するために使用することができる。例えば、コークス炭、石炭タール、および石炭タールピッチが、鉄鋼産業用の冶金コークスもしくは他の種類の炭素材料を生成するため、またはアルミニウム産業用の電極を生成するために一般的に使用されている。しかしながら、前述の炭素材料の生成にはいくつかの問題が存在する。
【0003】
特に、コークス炭などの、現在使用されている未加工の原料の一部は、再生不可能であり消耗性である。コークス炭は、利用可能な埋蔵炭量のごく一部にしか相当しない。残念ながら、コークス炭よりもランクの低いまたは高い他の石炭、例えば亜炭、褐炭、亜歴青炭、粘結性の低い瀝青炭、および無煙炭は、冶金コークスの作製に好適な原料として必要な粘結特性を有さない。
【0004】
更に、上述のように炭素材料を使用すると、COならびにSOおよびNOなどの他の汚染物質の著しい排出につながる。コークス炭または石油から生成された冶金コークス中の高い硫黄含有率に加えて、灰の収率も比較的高いため、冶金産業でのそれらの適用において多くの問題が生じる。
【0005】
高い強度を有する固体炭素材料は、冶金産業に加えて、他の産業、例えば廃水処理ならびに金の採掘および抽出でも必要とされている。固体炭素材料(例えば活性炭)は、これらの作業に使用するためには良好な機械強度を有していなければならない。
【0006】
バイオマスは、固体炭素材料を作製するために直接使用することのできる唯一の再生可能資源である。しかしながら、バイオマス由来の炭素材料は、通常、冶金コークスおよび高強度の活性炭などの固体炭素材料の代替物とするためには品質が不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/0056125号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
バイオマスまたは他の比較的安価な粘結性の低い炭素質原料から生成された、高品質の固体炭素材料が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、固体炭素材料を生成する方法であって、
炭素質原料の熱処理によって形成された、重合を受けることができる、炭素含有材料を用意することと、
炭素含有材料を重合剤と混合して材料混合物を形成することと、
固体炭素材料を生成するために、材料混合物の重合が起こる温度まで材料混合物を加熱することと
を含む、方法が提供される。
【0010】
本発明の実施形態には、有意な利点がある。特に、生成された固体炭素材料は、比較的高い密度および硬度を有し得る。いくつかの事例において、生成された炭素材料は、特に更なる処理(すなわち炭化)の後に、コークス炭から生成された冶金コークスと同様の特性を有する。更に、生成された固体炭素材料は、コークス炭から生成された冶金コークスと比較して比較的低い硫黄含有率および比較的低い灰収率を有し得る。
【0011】
本明細書で使用される「炭素質原料」という用語は、石炭(泥炭、亜炭、褐炭、亜歴青炭、瀝青炭、半無煙炭から無煙炭までのその石炭化度の範囲全体)、バイオマス、固形廃棄物、またはそれらの混合物を含むがこれらに限定されない、炭素を含有する再生可能および再生不可能な多様な原料を含むよう意図される。固形廃棄物は、農業廃棄物、林業廃棄物、および一般廃棄物、または炭素質原料の加工からの残留物を含み得るが、これらに限定されない。
【0012】
本明細書で使用される「重合」という用語は、モノマー単独の重合に加えて、共重合、例えば2種以上の異なるモノマーの重合を用語の範囲内に含むよう意図される。更に、「重合」という用語は、モノマーまたはプレポリマーを互いに結合させることによるポリマー鎖の形成だけでなく、架橋として一般的に知られている、これらのポリマー鎖間の結合を確立させることよる三次元ネットワークの形成も含むものとして理解されたい。
【0013】
本明細書で使用される「炭素含有材料」という用語は、主な元素としての炭素と水素および酸素などの他の元素とを含む材料または材料組成物を用語の範囲内に含むよう意図される。例えば、炭素含有材料は、バイオマスまたは石炭などの炭素質原料の熱分解から得られてもよい。
【0014】
本明細書で使用される「重合剤」という用語は、重合を引き起こすまたは加速させるために重合性材料に添加される1つ以上の成分を用語の範囲内に含むよう意図される。したがって、「重合剤」という用語は、架橋剤、開始剤、加速剤、促進剤などとして働く材料を含むものと意図される。本明細書で使用される「誘発する」という用語は、重合剤のこれらの機能のいずれかまたは全てを含むように使用される。
【0015】
重合後に、重合剤が生成された固体炭素材料の一部を形成するように、本方法が実施され、重合剤が選択されてもよい。重合剤は、炭素質原料の加水分解または他の手段の熱的処理から生成されてもよい。ある範囲の成分が、重合剤として個別に使用されても混合物として使用されてもよいバイオマスの加水分解から生成され得ることは、当業者には理解されよう。
【0016】
ある実施形態において、重合剤は、フラン環、カルボニル基、および/または他の反応性官能基を有する材料を含む。例えば、重合剤は、フルフラール、ヒドロキシアセトン、フルフラールアルコール、またはそれらの混合物を含んでもよい。重合剤は、炭素質原料の加水分解、液化、または熱分解から得られてもよい。
【0017】
一実施形態において、炭素含有材料は、液体の形態で用意されてもよい。
【0018】
更なる実施形態において、炭素含有材料は、凝縮可能であり得る。
【0019】
特定の実施形態において、炭素含有材料は、流動性液体または非流動性ペーストを含む。炭素含有材料は、バイオオイルであってもよいバイオクルードなどの粗製物を含んでもよい。この点に関して、炭素含有材料は、当業者に知られる多様な方法を使用したバイオマスの熱分解、水熱的処理、または液化によって生成されてもよい。他の好適な炭素質原料としては、都市廃棄物、泥炭、亜炭、褐炭、亜歴青炭、および低ランクの瀝青炭などの石炭、ならびにそれらの混合物を挙げることができる。
【0020】
ある実施形態において、本方法は、炭素含有材料を更なる材料と混合するステップを含む。この混合ステップが、炭素含有材料を重合剤と混合するステップと共に行われてもよいことは理解されよう。
【0021】
特定の実施形態において、更なる材料は細孔を有する。例えば、更なる材料は、石炭もしくはバイオマス、またはバイオマス、泥炭、亜炭、褐炭、亜歴青炭、低ランクの瀝青炭、もしくはそれらの混合物といった炭素質原料の熱的処理から得られたチャーの微粒子などの、炭素質粒子を含んでもよい。しかしながら、他の好適な更なる材料も想定されることは、当業者には理解されよう。
【0022】
炭素含有材料および重合剤が多孔質材料と混合される場合、炭素含有材料と重合剤との重合の少なくとも一部は、更なる材料の細孔内で起こり得る。したがって、更なる材料の細孔は、凝固した炭素材料で充填されてもよい。
【0023】
追加的または代替的に、更なる材料は、固体炭素材料複合体を生成するための有機または無機の添加物を含んでもよい。例えば、無機塩を材料混合物に添加して、炭素金属複合体を生成してもよい。他の好適な添加物も想定されることは、当業者には理解されよう。
【0024】
炭素含有材料と重合剤とを混合するステップは、およそ室温で実施されても高温で実施されてもよい。
【0025】
この材料と重合剤とを混合するステップは、スラリーを形成するように実施されてもよい。
【0026】
ある実施形態において、材料混合物は、重合を誘発するために高温に加熱される。高温は、商業的意義のある速度で重合が起こるのに(ちょうど)十分であるが、重合中のガス状生成物の形成、および結果的に生成された固体炭素材料における細孔の形成を最低限に抑えることができるように十分に低い温度が選択され得る。
【0027】
ある実施形態において、材料混合物を加熱するステップは、段階的様式で実施される。例えば、異なる加熱速度で、かつ選択された温度レベルにおける様々な維持期間で、温度を徐々に上昇させてもよい。
【0028】
材料混合物を加熱して重合を誘発するステップは、大気圧下で実施されてもよい。しかしながら、反応物質の蒸気圧下などの他の条件も想定される。
【0029】
ある実施形態において、材料混合物を加熱して材料の重合を誘発するステップは、不活性環境、すなわち酸素欠乏環境で実施される。
【0030】
本方法は、固体炭素材料を脱揮発させるのに十分な温度まで固体炭素材料を加熱する(炭化させる)ステップを更に含んでもよい。この点に関して、生成された炭素材料は、冶金コークスの生成のための温度と同様の高さの温度、またはアルミニウム産業用の電極などの高品質の特殊な炭素材料を作製するための更に高い温度まで加熱されてもよい。例えば、生成された固体炭素材料は、400℃〜1500℃の温度まで加熱されてもよい。
【0031】
ある実施形態において、固体炭素材料は、高い強度を有し、様々な有機化合物および無機金属の吸着/吸収能力に優れる場合がある。この特定の適用形態では、固体炭素材料を炭化させる必要がない場合がある。
【0032】
重合のステップ、および生成された固体炭素材料を炭化させるステップは、生成された固体炭素材料の密度が更に上昇するように、交互に起こる様式で1回以上繰り返されてもよい。
【0033】
ある実施形態において、本方法は、材料混合物の重合速度を上昇させるための触媒を提供するステップを含む。例えば、触媒は、材料混合物に添加されてもよい。代替的に、触媒は、炭素含有材料、重合剤、および更なる材料のうちの少なくとも1つに含有されてもよい。例えば、バイオオイルなどの炭素含有材料中の酸が、触媒として機能し得る。
【0034】
本方法は、バイオマスなどの炭素質原料の処理によって重合剤および残留物を生成することを含んでもよい。本方法はまた、重合を受けることのできる炭素含有材料と、一部の重合が起こる細孔を有する更なる材料とが生成されるように、残留物を更に処理することを含んでもよい。残留物を熱分解して、重合を受けることのできる炭素含有材料を生成してもよい。
【0035】
本発明の第2の態様によれば、固体炭素材料を生成する方法であって、方法が、
炭素質原料の熱処理によって形成された、重合を受けることができる、炭素含有材料を用意することと、
細孔を有する更なる材料を用意することと、
炭素含有材料および更なる材料を重合剤と混合して材料混合物を形成することと、
固体炭素材料を生成するために、材料混合物の重合が起こる温度まで材料混合物を加熱することと
を含み、
材料混合物の重合の少なくとも一部が、更なる材料の細孔内で起こる、方法が提供される。
【0036】
本発明の第3の態様によれば、固体炭素材料を生成するためのシステムであって、システムが、重合反応器を含み、重合反応器が、
材料混合物および重合剤を提供するための少なくとも1つの入口と、
材料混合物を受けるための反応領域と、
反応領域に熱を提供するための熱源と
を備え、
材料混合物が、炭素質原料の熱処理によって形成された、重合を受けることができる、炭素含有材料を少なくとも含み、
固体炭素材料を生成するために、材料混合物の重合が起こる温度まで反応領域内の材料混合物が加熱される、システムが提供される。
【0037】
本システムの反応器は、固体炭素材料を炭化および脱揮発させるのに十分な温度まで材料混合物を加熱するように配されていてもよい。
【0038】
ある実施形態において、重合剤は、フラン環、カルボニル基、および/または他の反応性官能基を有する材料を含む。例えば、重合剤は、フルフラールを含んでもよい。
【0039】
一実施形態において、炭素含有材料は、液体または蒸気の形態で用意されてもよい。
【0040】
更なる実施形態において、炭素含有材料は、凝縮可能である。
【0041】
特定の実施形態において、炭素含有材料は、バイオクルードなどの粗製物を含む(バイオオイルが特定例である)。
【0042】
ある実施形態において、材料混合物は、更なる材料を含む。
【0043】
更なる材料は、多孔質であり得る。例えば、更なる材料は、石炭もしくはバイオマス、またはバイオマス、泥炭、亜炭、褐炭、亜歴青炭、低ランクの瀝青炭、もしくはそれらの混合物などの炭素質原料の熱的処理から得られたチャーの微粒子などの、炭素質粒子を含んでもよい。しかしながら、他の好適な更なる材料も想定されることは、当業者には理解されよう。
【0044】
炭素含有材料および重合剤が多孔質材料と混合される場合、材料混合物と重合剤との重合の少なくとも一部は、更なる材料の細孔内で起こり得る。更なる材料は、重合剤および炭素含有材料と交差重合してもよい。したがって、更なる材料の細孔は、凝固した炭素材料で充填されてもよい。
【0045】
追加的または代替的に、更なる材料は、機能化された炭素材料または炭素複合体を生成するための有機もしくは無機の添加物を含んでもよい。例えば、無機塩を材料混合物に添加して、炭素金属複合体を生成してもよい。他の好適な添加物も想定されることは、当業者には理解されよう。
【0046】
重合反応器は、各入口が材料混合物の材料成分を提供するように配されている複数の入口を備えていてもよい。例えば、重合反応器は、炭素含有材料を提供するための第1の入口と、重合剤を提供するための第2の入口と、更なる材料を提供するための第3の入口とを備えていてもよい。この実施形態では、重合反応器は、提供される材料成分を混合するための専用の混合領域を備えていてもよい。代替的に、混合物中の個々の成分は、反応器に入る前に予め混合されてもよい。後者の場合では、重合反応器は、混合物が1つの入口から反応器に入るように配されていてもよい。
【0047】
ある実施形態において、熱源は、重合を誘発するために反応領域を加熱するように配される。
【0048】
ある実施形態において、重合反応器は、不活性環境、すなわち酸素欠乏環境で作動するように配される。この実施形態では、重合反応器は、反応領域内に、窒素などの不活性ガスを受けるためのガス入口を備えていてもよい。
【0049】
重合反応器は、生成された固体炭素材料の炭化を実施するように更に配されていてもよい。この点に関して、熱源は、固体炭素材料を脱揮発させる温度まで反応領域を加熱するように配されていてもよい。この例において、材料混合物の重合および固体炭素材料の更なる炭化は、反応領域内で実施される。しかしながら、重合反応器が、生成された炭素材料が更に脱揮発される専用の炭化領域を備えていてもよいことは、当業者には理解されよう。代替的に、炭化は、直列に接続されていてもよい更なる容器内で行うこともできる。
【0050】
ある実施形態において、触媒が反応領域に提供されてもよい。このようにして、材料混合物の重合速度が、触媒によって上昇し得る。
【0051】
重合反応器は、ガス状生成物が重合反応器から出ることができるように、ガス出口を備えていてもよい。ガス状生成物は、炭素材料の更なる炭化の間に放出される揮発性物質を含む場合がある。重合反応器は、重合反応器から出る揮発性物質を収集することができるように、重合反応器のガス出口と流体接触している収集器を更に備えていてもよい。収集された有機物は、薬品回収に使用することができる。不凝縮ガス状生成物は、重合および炭化用の熱を発生させるために、燃焼器の燃料として使用されてもよい。
【0052】
ある実施形態において、重合反応器は、未変換の重合剤を含む重合または炭化中に放出される揮発性物質などのガス状生成物が凝縮し、更なる反応のために反応領域に再循環して戻し得るように配された、冷却器を備える。
【0053】
ある実施形態において、重合反応器は、移動機序により、反応している材料混合物が反応器を通り、反応器の長さに沿って移動するように配される。材料混合物が任意の好適な方向で反応領域を通って流れてもよいことは理解されよう。例えば、材料混合物は、実質的に水平な方向に流れてもよく、垂直方向に流れてもよく、傾斜角の方向に流れてもよい。これらの実施形態において、温度は、材料混合物の流れ方向と共に上昇してもよい。
【0054】
重合反応器は、バッチ反応器、セミバッチ反応器、または連続反応器として動作可能であり得る。
【0055】
本発明の第4の態様によれば、本発明の第1および第2の態様による方法を行うように配された重合反応器が提供される。
【0056】
本発明の第5の態様によれば、本発明の第1または第2のいずれかの態様による方法を使用して生成された、固体炭素材料、炭素複合材料、または電極もしくは活性炭などの生成物が提供される。
【0057】
本発明の第6の態様によれば、固体炭素材料を生成するための重合反応器であって、重合反応器が、
材料混合物および重合剤を提供するための少なくとも1つの入口と、
反応している材料混合物を反応器を通して移動させるための機序と、
反応器の長さに沿って温度が上昇するように反応領域に熱を提供するための熱源と
を備え、
材料混合物が、炭素質原料の熱処理によって形成された、重合を受けることができる、炭素含有材料を含み、
固体炭素材料を生成するために、材料混合物の重合が起こる温度まで反応器内の材料混合物が加熱される、重合反応器が提供される。
【0058】
本反応器は、固体炭素材料を炭化および脱揮発させるのに十分な温度まで固体炭素材料を加熱するように配されていてもよい。
【0059】
本反応器は、直列に接続されている更なる容器を備えていてもよく、使用中に、この容器中で、固体炭素材料を炭化および脱揮発させるのに十分な温度まで固体炭素材料が加熱される。
【0060】
本発明の第7の態様によれば、固体炭素材料を生成する方法であって、方法が、
炭素質原料の熱処理によって、重合を受けることができかつ高温にある、炭素含有材料を形成することと、
炭素含有材料を冷却することと、
炭素含有材料と混合するために重合剤を導入して材料混合物を形成することと
を含み、炭素含有材料がその重合に必要とされるおよその温度まで冷却された後に、重合剤が導入され、
それによって材料混合物の重合が起こり、固体炭素材料が生成される、方法が提供される。
【0061】
一実施形態において、材料混合物の重合の前およびその間における材料混合物の冷却は、不活性環境で実施される。
【0062】
本発明の第8の態様によれば、固体炭素材料を生成するための重合機構であって、重合機構が、
重合を受けることのできる炭素含有材料を生成するために炭素質原料を熱処理し、それによって使用中に炭素含有材料が熱処理容器から高温で出るように構成された熱処理容器と、
炭素含有材料を受け、炭素含有材料が重合反応器を通して運ばれる際にそれを冷却するように構成された重合反応器と、
炭素含有材料と混合するために重合剤を重合反応器に導入して材料混合物を形成するための少なくとも1つの入口と
を備え、入口が、使用中に、炭素含有材料がその重合に必要とされるおよその温度にある位置に重合剤を導入するように構成されており、
それによって材料混合物の重合が起こり、固体炭素材料が生成される、重合機構が提供される。
【0063】
一実施形態において、熱処理容器は熱分解反応器である。
【0064】
本重合機構は、熱処理容器と重合反応器との間にそれらと連通して配置され、かつ炭素含有材料を冷却または加熱するように構成されている熱交換ユニットを備えていてもよい。
【0065】
一実施形態において、重合反応器は、固体炭素材料を炭化および/または脱揮発させるのに十分な温度まで固体炭素材料を加熱するように構成された領域を有し得る。代替的に、別の実施形態において、本重合機構は、重合反応器と直列に接続され、かつ固体炭素材料を炭化および脱揮発させるのに十分な温度まで固体炭素材料を加熱するように構成されている、更なる容器を備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
ここで、添付の図面を参照して、本発明の実施形態をほんの一例として説明する。
図1】本発明のある実施形態による炭素材料を生成する方法の流れ図である。
図2】本発明の更なる実施形態による炭素材料を生成する方法の流れ図である。
図3】本発明のある実施形態による重合反応器の概略図である。
図4】本発明の更なる実施形態による重合反応器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
本発明の実施形態は、固体炭素材料を生成する方法に関する。固体炭素材料を生成するために、炭素質原料の熱処理によって形成された、重合を受けることができる、炭素含有材料が用意される。炭素含有材料は、反応物質と呼ばれる場合もある。炭素含有材料は、例えば、液体の形態で用意されてもよい。
【0068】
この炭素含有材料が重合剤と混合されて、材料混合物が形成される。炭素含有材料および重合剤は、例えば、スラリーを形成するように混合されてもよい。材料混合物は次に、重合剤が炭素含有材料と重合剤との重合を誘発する温度まで加熱される。このようにして、固体炭素材料が生成され得る。
【0069】
ある具体例において、炭素含有材料は、バイオオイルなどの粗製液体を含む。粗製液体は、炭素質原料または炭素質原料の混合物の熱分解から得られてもよい。粗製液体は、亜臨界条件、臨界条件、または超臨界条件下での炭素質原料の液化からの生成物であってもよい。粗製液体を調製するために使用される炭素質原料は、バイオマス、都市廃棄物、および泥炭、亜炭、褐炭、亜歴青炭、低ランクの瀝青炭、無煙炭などの石炭、またはそれらの混合物であってもよい。
【0070】
更に、固体炭素材料を調製するために、ごく少量の粗製液体が使用され得ることは理解されよう。1つの特定例は、固体炭素材料を生成するための材料として、炭素質原料の熱分解から得られる凝縮可能な液体であるバイオオイルを少量使用することである。
【0071】
重合剤は、フラン環、カルボニル基、および/または他の反応性官能基を有する材料を含んでもよい。ある具体例において、重合剤は、フルフラールを含む。重合剤は、バイオマスなどの炭素質原料の加水分解または液化から得られてもよい。この場合、重合剤は、フルフラールと、バイオマスの加水分解または液化から得られる他の成分との混合物である。
【0072】
バイオクルードと重合剤との材料混合物は、更なる材料と更に混合されてもよい。一例において、更なる材料は多孔質であり、バイオクルードの重合の少なくとも一部は、更なる材料の細孔内で起こる。したがって、更なる材料の細孔は、バイオクルードから重合/凝固した炭素材料で充填されてもよい。
【0073】
ある具体例において、更なる材料は、炭素質粒子を含む。これらの炭素質粒子は、石炭もしくはバイオマス、またはバイオマス、泥炭、亜炭、褐炭、亜歴青炭、低ランクの瀝青炭、無煙炭、もしくはそれらの混合物などの炭素質原料の熱的処理から得られたチャーから得られてもよい。しかしながら、他の好適な更なる材料も想定されることは、当業者には理解されよう。
【0074】
バイオオイルが、重合剤としてのフルフラールおよび多孔質の更なる材料としてのバイオチャーと混合される具体例を考慮すると、粗製バイオオイルのフルフラールとの重合は、バイオチャーの細孔内で起こる。このようにして、バイオチャーの細孔は、バイオオイルとフルフラールとの重合から主に形成された、凝固した炭素材料で少なくとも部分的に充填される。結果として得られる固体炭素材料は、初期の炭素質粒子よりも高い質量密度および硬度を有することになる。フルフラールおよび/または粗製バイオオイルはまた、バイオチャーと反応し、バイオチャーの反応構造と共に縮合して、最終的な固体炭素材料生成物中の架橋を形成し得る。
【0075】
バイオクルードおよび重合剤と混合するための更なる材料として炭素質粒子を選択することには、特定の利点がある。特に、炭素質粒子は、比較的高い炭素含有率および低い揮発度を有する。例えば、バイオマスの熱分解による固体生成物であるバイオチャーは、80%超の炭素含有率を有する場合がある。炭素は、主に大きな芳香族構造の形態でバイオチャー中に存在する。この形態の炭素の揮発度は、高温においてでさえ比較的低い。しかしながら、バイオチャーは、熱分解中にバイオマスから揮発性物質が放出されることから過剰な細孔を有し、このため、特定の適用形態におけるバイオチャーの使用、例えば炭素電極材料、高強度の活性炭、および冶金コークスの代替物としての使用が限定される。
【0076】
この特定例では、重合剤を用いて固体炭素材料を生成するために、熱分解から得られるバイオクルードであるバイオオイルを使用する。重合剤は、この例の場合ではフルフラールである。このようにして、炭素材料の炭素含有率、硬度、および密度を上昇させることができる。この具体例は、固体炭素材料を生成するためのバイオオイル、バイオチャー、およびフルフラールの使用に関するものの、材料混合物はこれらの材料に限定されないことは理解されよう。材料混合物のための更なる好適な材料成分としては、石炭タール、石炭チャー、石炭由来成分とバイオマス由来成分との混合物などが挙げられる。
【0077】
この特定例では、バイオオイルおよびバイオチャーは、バイオマスの熱分解から得られる。しかしながら、材料混合物の材料成分のための他の供給源も想定されることは理解されよう。
【0078】
固体炭素材料を生成する方法にバイオマスを使用することには、有意な利点がある。特に、バイオマスは、再生可能な炭素の源である。バイオマス由来の固体炭素材料は、非常に低い二酸化炭素排出量を有し、短期および長期における有意な環境上の利益をもたらす。冶金産業、水処理、金の採掘または抽出、触媒作製、および他の炭素材料製造産業における炭素材料の適用形態が多数あるため、再生可能なバイオマスの炭素材料への変換は、大きな経済的可能性も有する。
【0079】
ここで図1を参照すると、本発明の特定の実施形態による方法100を例示するフローチャートが示されている。
【0080】
第1のステップ102では、炭素質原料の熱処理によって形成され、重合を受けることのできる炭素含有材料を用意する。この特定の実施形態において、炭素含有材料は、バイオマスの熱分解から得られたバイオオイルである。
【0081】
ステップ104では、更なる材料を用意する。この特定の実施形態において、更なる材料は、同じくバイオマスの熱分解から得られたバイオチャーである。バイオチャーを用意するステップは、バイオチャーを加工して微粒子を用意することを含んでもよい。例えば、バイオチャーを圧砕してもよい。
【0082】
熱分解は、酸素欠乏環境で加熱することによるバイオマスの熱的な分解のプロセスに関する。結果として、バイオマスのマクロ構造が破壊されて、ガス状生成物および凝縮可能な蒸気の形態にある揮発性物質(バイオオイル)が放出される。残った残留物がバイオチャーである。得られたバイオチャーは、比較的高い多孔度を有し、「軽質炭素材料」と呼ばれる場合もある。熱分解プロセスの特定例は、PCT国際特許出願第PCT/AU2011/000741号に更に詳細に記載されている。
【0083】
次のステップ106では、バイオオイルおよびバイオチャーをフルフラールなどの重合剤と共に混合して、材料混合物を形成する。混合は、室温で実施されてもよい。この特定例では、混合は、スラリーを形成するように実施される。
【0084】
次に、ステップ108において、重合剤がバイオオイルの重合を誘発する温度まで、材料混合物を加熱する。この具体例では、重合の一部はバイオチャーの細孔内で起こり、ここで、バイオオイルの分子のサイズが増加し、固体になることによって、バイオチャーの細孔が充填される。バイオオイルおよび/またはフルフラールは、バイオチャー構造と架橋してもよい。
【0085】
重合後に、重合剤に関連する残留材料が生成された固体炭素材料の一部を形成するように、本方法が実施され、重合剤が選択される。
【0086】
ある具体例では、材料混合物は、例えば反応器に給送され、ここで材料混合物が加熱されてもよい。この点に関して、材料成分の混合は、材料混合物を反応器に給送する前、その間、またはその後に実施されてもよい。反応器は、高温における材料混合物の膨張用の空間を確保するために、その容積の全容量まで充填されなくてもよい。
【0087】
この例において、重合プロセスが誘発される温度は、400℃未満に保たれる。例えば、この温度は、50〜400℃の範囲から選択され得るが、厳密な温度は、材料混合物の特性に依存する。この比較的穏やかな反応温度において、プロセス中に形成されるガス状生成物が最低限に抑えられる。バイオオイルの重合中に著しい量のガス状生成物が形成されないことで、結果として得られる固体炭素材料に細孔が存在する可能性を最低限に抑えることができる。ある具体例において、この温度は、予め選択された温度の段階における維持期間と共に、段階的様式で上昇させてもよい。
【0088】
この特定例では、重合プロセスは、バイオオイル中の小分子および巨大分子の架橋によって進行する。材料混合物中のバイオオイルは、ヒドロキシル基およびカルボニル基の形態の酸素含有官能基を有する分子を含有し得る。重合剤は重合プロセスに関与する、すなわち重合プロセスを開始または加速するが、これは、重合剤が、材料混合物が加熱される温度での重合に対して反応性であるためである。重合剤の官能基は、重合反応において決定的な役割を果たす。これらの官能基は、新たな化学結合(例えば、C−C結合、C−O結合、C=C結合、C=O結合)または芳香環構造の形成によって、他の化合物と結合し得る。材料混合物が加熱される温度において、これらの分子は活性化し、例えば、求電子置換反応および/または求電子付加反応によって互いと反応して共に縮合する。これらの縮合プロセスの結果として、バイオオイル中の分子の少なくとも一部のサイズが増加し、縮合に対するこれらの分子の反応性が高まり得る。このようにして、有機物はより大きなサイズに成長し、最終的にはステップ110で得られる固体炭素材料となることができる。
【0089】
炭素材料生成物に必要とされる特性に応じて、方法100は、生成された固体炭素材料を更に高い温度まで加熱して炭素材料を脱揮発(炭化)させるステップ112を更に含んでもよい。この炭素材料の更なる熱的処理(炭化)を行わない場合、生成される炭素材料は比較的高い酸素含有率を有するが、これは、バイオオイルの比較的高い酸素含有率によるものであり得る。この更なる熱的処理(炭化)によって、炭素材料の酸素含有率を低減させることができる。炭素材料の巨大分子に結合した一部の酸素含有官能基(例えば−CHOまたは−COOHの形態のもの)は、脱カルボニルまたは脱炭酸などの反応によってCOもしくはCOを形成し放出するように反応する場合がある。固体炭素の炭化は、その置換基の多くを除去することにもなる。放出された有機物は、更に加工して価値ある化学物質にすることもでき、他で燃料として使用することもできる。
【0090】
ある特定例において、生成された固体炭素材料は400〜1500℃の範囲の温度まで加熱されるが、厳密な温度は、固体炭素材料の所望の特性に依存する。いくらかの揮発性物質の放出により、固体炭素材料に新たな細孔が作り出され、これが結果的に炭素材料の密度を低下させる場合があることに留意されたい。
【0091】
この点に関して、生成された固体炭素材料は、(バイオチャーの代わりに)炭素材料が追加のバイオオイルおよび重合剤と混合される、更なる重合プロセスに関与してもよい。上述の重合プロセスを参照すると、バイオオイルの重合の一部は、炭化した固体炭素材料の細孔内で起こり、それによって新たな固体炭素材料生成物の密度および硬度が上昇する。
【0092】
重合および炭化は、最終的な固体炭素材料生成物の所望の特性に応じて、1サイクル以上、繰り返してもよい。
【0093】
別の実施形態では、方法100は、ステップ104なしで利用されてもよく、すなわち、ステップ106で形成された材料混合物は、ステップ102のバイオオイルおよび重合剤を含む。材料混合物は、液体または乳濁液の形態にあってもよい。この場合、ステップ108におけるバイオオイルと重合剤との重合はまた、更なる材料の非存在下で(つまりバイオチャーを用いずに)固体炭素材料を形成する。次に、固体炭素材料をステップ112で脱揮発および/または炭化にかけて、脱揮発され密度の高まった炭素材料を生成することができる。この脱揮発され密度の高まった炭素材料は、その後、重合および炭化を更なるサイクル、繰り返すために、バイオチャーの代わりに更なる材料として(ステップ104および106において)使用することができる。方法100でバイオチャーを使用しない場合、極度に低い灰収率を有する固体炭素材料を生成することができる。
【0094】
固体炭素材料が高い強度を必要とする尚も更なる実施形態、例えば水処理または金採掘において、炭化ステップ112は省略されてもよく、炭化温度は800℃未満に保たれてもよい。これらの特定の使用法では、固体炭素材料中の酸素が水から金属を除去するための活性部位として働く、特定の量の酸素含有官能基が望ましい。
【0095】
図2は、バイオマスなどの炭素質原料から固体炭素材料を生成するための、本発明の更なる特定の実施形態による方法200を例示するフローチャートを示す。方法200は、バイオオイルおよびバイオチャーを生成するためにバイオマス原料の一部が使用されるステップ210を含む。バイオマス原料からバイオオイルおよびバイオチャーを生成するための好適な方法は、PCT国際特許出願第PCT/AU2011/000741号に開示されている。
【0096】
バイオチャーは、微粒子として生成される。ステップ220では、バイオマス原料の残部を使用して重合剤を生成する。
【0097】
この例において、バイオマスの加水分解は、フルフラールおよび他の種を含有する重合剤混合物を生成する。加水分解はまた、熱分解(ステップ210)のための原料とすることもできる残留物を生成する。次に、ステップ230でバイオオイル、バイオチャー、および重合剤を混合し、ステップ240で材料混合物を加熱し、固体炭素材料を得るために重合を引き起こす。次にステップ250で、形成された固体炭素材料を更なる炭化にかける、すなわち脱揮発のために炭素材料を高温まで加熱する。この更に炭化された炭素材料は、特に密度および硬度の観点で最終的な固体炭素材料生成物の品質要件を満たすまで、更なるサイクルの重合および炭化を受けるように再循環させること、すなわちバイオチャーを置き換えることができる(ステップ230および240)。
【0098】
別の代替的な実施形態では、方法200は、ステップ230でバイオチャーを材料混合物に提供することなしに実行されてもよい(方法100の場合と同様)。
【0099】
この生成された固体炭素材料は、様々な適用形態の可能性を有する。特に、固体炭素材料は、バイオチャーと比べて比較的高いその密度および硬度のために、石炭由来の冶金コークスの代替物として使用され得る。石炭から形成された冶金コークスは、比較的高い硫黄の含有率および高い灰収率を有し、これが製鋼プロセス中に様々な問題を引き起こし、鋼の品質に著しく影響することに留意されたい。それと比較して、本明細書に開示される有機重合剤を用いてバイオオイルおよびバイオチャーから生成された固体炭素材料は、比較的低い硫黄含有率および比較的低い灰収率を有する。
【0100】
生成された固体炭素材料は、触媒またはアルミニウム産業用の電極を製造するために使用され得る。固体炭素材料は、水処理または金もしくは他の金属の採掘のための高強度の炭素材料として使用されてもよい。
【0101】
更に、バイオオイルおよび重合剤を特定の有機化合物または無機化合物と混合することによって、特定の機能性および特性を有する、ある範囲の炭素複合材料または炭素材料を生成することができる。例えば、バイオオイルは広範囲の極性を有する官能基を含むため、様々な有機物をバイオオイルおよび重合剤と混合することができる。例えば、−SOHなどの酸性官能基を材料混合物に導入し、したがって固体炭素材料に組み込んでもよい。
【0102】
バイオオイルは、いくつかの事例では水30重量%に達する高い水含有率を有するため、多くの無機物をバイオオイルと重合剤との混合物中に溶解させることもできる。したがって、「金属・炭素(metal in carbon)」材料、「金属酸化物・炭素(metal oxides in carbon)」材料、および「塩・炭素(salt in carbon)」材料などの、ある範囲の炭素複合体が生成され得る。例えば、Fe(NO、Ni(NO、Co(NO、およびCu(NOなどの無機塩を、バイオオイルと重合剤との材料混合物中に均質に分散させてもよい。この場合、材料混合物は、無機塩が固体炭素材料に溶け込むことができるような温度まで加熱されてもよい。添加される塩の種類に応じて、高温、例えば800℃において、これらの無機塩は、金属酸化物に分解する場合があり、更には、隣接炭素クラスタによって、または水素などの、外部から供給される還元剤によって、金属に還元することができる。このようにして、従来の炭素担持金属触媒に幾分か類似した「金属・炭素」複合材料が生成され得る。しかしながら、炭素複合材料における金属の分散は、従来の触媒におけるものよりも均一になる。これらの材料は、潜在的に、触媒として、または他の適用形態で使用され得る。
【0103】
上述の機能化された炭素材料を生成する方法は、炭素材料生成物に必要とされる特性に応じて400〜1500℃の温度における炭化を含んでもよいことに留意されたい。
【0104】
ここで図3を参照すると、固体炭素材料を生成するための重合反応器300が示されている。
【0105】
重合反応器300は、材料混合物を提供するための少なくとも1つの入口302を備える。材料混合物は、バイオマスなどの炭素質原料の熱処理によって形成され、かつ重合を受けることのできる炭素含有材料と、フルフラールなどの重合剤とを含む。材料混合物は、微細な炭素質粒子または無機塩などの添加物などの、更なる材料を含んでもよい。
【0106】
重合反応器300が複数の入口を備えていてもよいことは理解されよう。例えば、各入口が材料混合物の材料成分を提供してもよい。この点に関して、重合反応器300は、材料成分を混合するための領域を更に備えていてもよい。
【0107】
重合反応器300は、材料混合物を受ける容器304の形態にある反応領域を更に備えていてもよい。容器304は、燃焼器320からの予熱されたガス322などの熱源によって加熱することができる。この例ではバイオオイルである炭素含有材料の重合を誘発するために、熱源は、材料混合物の特性に応じて50〜400℃の温度まで容器304を加熱してもよい。
【0108】
上述のように、バイオオイルの重合の少なくとも一部は、この場合はバイオチャーである多孔質材料の細孔内で起こる。
【0109】
このようにして固体炭素材料が生成され、これは出口308を通して得ることができる。代替的に、固体炭素材料生成物は、反応器(例えば容器304)を開放することによって吐出されてもよい。
【0110】
この例において、バイオオイルの重合は、不活性環境下の容器304内で起こる。酸素欠乏環境をもたらすため、重合反応器は、不活性ガスを容器304内に受けるためのガス入口306を備える。例示的な不活性ガスは、窒素であり得る。しかしながら、他の好適な不活性ガスも想定される。
【0111】
この例において、容器304は、初めは大気圧下にある。しかしながら、他の条件も想定される。更に、容器304内のバイオオイルおよび重合剤は、場合により揮発性である。この場合、高温における蒸気圧の発生は不可避であり得る。
【0112】
バイオオイルの重合は比較的低い反応温度で起こり、バイオオイル中の有機物の分子サイズが増加し、これにより、蒸気圧が低減される。これにより、著しい蒸気圧を生じることなく、容器304の温度を上昇させ続けることが可能になる。反応温度の漸進的上昇により、バイオオイルの重合が加速し得る。
【0113】
ある特定例では、容器304の温度を徐々に上昇させる。例えば、重合プロセスの初期段階の間、温度を100℃未満に制御して、重合反応器300内の高い蒸気圧を回避することができる。容器304内の材料混合物を100℃未満に維持する時間は、広範囲にわたって、例えば数分から数時間まで変化してよい。こうした比較的低い反応温度でも、重合反応は依然として起こり得る。重合プロセスの進行と共に、著しい蒸気圧を発生させることなく温度を段階的に上昇させる。様々な温度における維持時間は、重合反応の発生に十分な時間を残すように変化させる。
【0114】
重合プロセス中に低い蒸気圧を維持することは、重要な経済的検討事項であり得る。
【0115】
低い蒸気圧を達成する更なる方法は、材料混合物の少なくとも成分の前処理である。上述の例において、蒸気圧は主に、材料混合物中のバイオオイルに由来する。この点に関して、バイオオイルを加工してその揮発度を減少させ、その後それを重合剤およびバイオチャーの炭素質粒子と混合してもよい。バイオオイル中の水および小さな有機物などの軽質の成分は、蒸留または他の方法によって除去され得る。このようにして、容器304内の圧力を低下させることができる。
【0116】
非加圧の容器304の利点は、重合反応器300内の低い圧力である。容器304は著しい圧力に耐える必要がないため、重合反応器300の製造におけるコストは大幅に低下するであろう。更に、重合反応器300の操作に関連する安全上の問題も減少し得る。
【0117】
重合プロセスは、重合を受けることのできるバイオオイル中の分子の大部分が凝固する程度まで繰り返されてもよい。重合によるバイオオイルの凝固後、容器304の温度を更に上昇させて、生成された固体炭素材料を熱的に処理してもよい。この点に関して、熱源320は、容器304を更に加熱するように配されており、生成された固体炭素材料は、この容器内で、最終的な固体炭素材料生成物の所望の特性に応じておよそ400〜1500℃の温度まで加熱される。このようにして、炭素材料を炭化させて、揮発性物質を放出することができる。
【0118】
重合反応器300が、生成された固体炭素材料の炭化を行うための更なる専用領域を備えていてもよいことは理解されよう。例えば、より高い温度に耐えることのできる第2の反応器または重合反応器内の第2の領域において炭化を実施してもよい。炭化を行うための反応領域は、著しい圧力に耐える必要がない場合があることに留意されたい。しかしながら、重合と炭化との両方を1つの容器304で実施することには、特に重合および炭化のステップが1回より多く繰り返される場合に、炭素材料を移動させる必要がないという利点がある。上述の炭化を別々の反応器で実行することも可能である。
【0119】
炭素材料生成物が反応器の壁に固着し、生成物の吐出を困難にすることを防ぐために、反応器表面に何らかの内張り材料が必要とされる場合があることも想定される。
【0120】
例えば重合プロセスまたは炭化中に放出される揮発性物質のために、重合反応器300は、冷却器310を備える。この特定例では、冷却器は、冷却剤として水を使用し得る。本開示の範囲内で、他の冷却方法も想定かつ考慮されることを理解されたい。放出された揮発性物質312の少なくとも一部は、重合プロセスに関与するように、凝縮され、容器304に戻されてもよい。凝縮できない揮発性物質314は、出口316を通って重合反応器300から出ることができ、これはその後、容器318における薬品回収に更にかけられる場合がある。容器318から出るガスは、容器304に熱を供給する燃焼器320における燃焼用の燃料の少なくとも一部を形成し得る可燃物を含有してもよい。
【0121】
更なる実施形態では、重合反応器が提供される。一例として、これは移動床式反応器である。以下の説明は反応器を水平に配置することに関するが、反応器は、垂直または任意の他の配向で配置することもできる。この実施形態において、場合により流動性スラリーの形態にある、バイオオイル、バイオチャー、および重合剤などの材料混合物が、重合反応器の上部から重合反応器に給送される。繰り返しになるが、特に固体炭素材料の塊が生成される場合には、固体材料の移送を容易にするために、反応器の壁を内張りする必要があり得る。代替的に、反応混合物は、重合反応器内を移動または循環する一連の個別の区画に給送される。重合反応器内の温度分布は、均一でなくてもよい。重合反応器は、温度が重合反応器の長さに沿ってその入口302からその出口308にかけて上昇する、温度勾配を提供してもよい。材料混合物が重合反応器に給送されると、重合プロセスが誘発される。
【0122】
材料混合物が重合反応器に沿って移動する間、材料混合物がより高い温度に徐々に加熱され、材料混合物の重合が加速する。ある具体例では、固体炭素材料の更なる炭化は、同じ反応器内で起こる。別の更なる例では、更なる炭化は、重合反応器と直列に配置された、もう1つの別個の炭化反応器内で起こる。
【0123】
重合および炭化中に生成される揮発性物質の量は、バイオオイル、バイオチャー、および重合剤の特徴に依存する。結果として得られるこれらの揮発性物質の熱ガス流は、重合反応器の一部分の外側のジャケット内を流れて反応器内に熱を伝達して、重合を受けるように材料混合物を加熱することができる。揮発性物質を燃やすか部分的に酸化させて、更なる熱を発生させて、すすの形成を防止するために、いくらかの更なる空気が導入され得ることが想定される。空気の流速は、必要な重合反応器の温度プロファイルに達するように制御され得る。
【0124】
代替的に、揮発性物質を燃焼器内で燃やして熱ガス流を発生させてもよく、この熱ガス流はその後、重合反応器の外側のジャケットに沿って流れて、炭化および重合反応のための熱を供給する。
【0125】
ここで図4を参照すると、固体炭素材料を生成するための重合機構400の更なる実施形態が示されている。
【0126】
重合機構400は、熱処理反応器402および重合反応器404を備える。この例示的な実施形態において、熱処理反応器402は、熱分解反応器である。PCT国際特許出願第PCT/AU2011/000741号には、熱分解反応器402のある特定の実施形態が更に詳細に記載されている。PCT国際特許出願第PCT/AU2014/001137号には、熱分解反応器402の更なる実施形態が更に詳細に記載されている。今日知られているか、または今後開発され得る、他の種類の熱処理反応器が使用されてもよいことは理解されよう。
【0127】
使用中、バイオマスなどの炭素質原料は、入口406を通して熱分解反応器402に給送され、その結果、熱分解され得る。熱分解反応器から結果として得られる、本明細書に記載の炭素含有材料を含む生成物は、ライン408を介して重合反応器404に給送される。この点に関して、ライン408を通って熱分解反応器から出る炭素含有材料が高温(例えば450℃)にあることは理解されよう。例えば、炭素含有材料は、バイオオイル蒸気であってもよい。炭素含有材料の高温は、その後のその重合に必要とされる温度を上回っても下回ってもよい。したがって、熱分解反応器402は、重合の実行に必要とされる温度まで炭素含有材料を加熱あるいは冷却するように構成されている。一実施形態において、重合反応器404への入口部または重合反応器404の最初の部分は、熱交換器として働くことができる。
【0128】
重合反応器404は、出口410を有する。重合反応器404は、垂直に配置されても、水平に配置されても、ある角度に傾斜して配置されてもよい。以下の説明は、重合反応器404が垂直に配置される場合に関するものである。
【0129】
サイドフィードライン412は、重合剤が反応のための材料混合物を形成し、炭素含有材料の重合を引き起こすことができるように、フルフラールなどの重合剤を重合反応器404に導入するように構成されている。
【0130】
好ましい実施形態では、サイドフィードライン412は、必要とされる重合温度まで炭素含有材料が冷却または加熱された直後に、重合反応器404に給送する。
【0131】
サイドフィードライン412は、微細な炭素質粒子または無機塩などの添加物といった、更なる材料を重合反応器404に給送してもよい。更なる材料は、石炭もしくはバイオマスなどの炭素質原料、チャー、または炭素質原料とチャーとの混合物の微粒子とすることができる。サイドフィードライン412は、炭素含有材料の重合速度を上昇させるための触媒を導入してもよい。
【0132】
重合反応器404が複数のサイドフィードラインを備えていてもよいことは理解されよう。例えば、各サイドフィードラインは、重合反応器404に沿った様々な位置で別々の材料を導入してもよい。別々の材料は、重合剤、更なる材料、あるいは添加物および/または触媒であってもよい。
【0133】
好ましい実施形態では、バイオマスが熱分解反応器402に給送されるとき、バイオマスの熱分解から生成されたバイオオイル蒸気(炭素含有材料)とバイオチャー(更なる材料)との両方が、ライン408を介して重合反応器404に移送される。不凝縮ガスがそれらと一緒に移送されてもよい。
【0134】
重合反応器404が、炭素含有材料が重合し得る反応領域を提供することは理解されよう。機構400によりもたらされる特定の利点は、それにより、重合が起こるように炭素含有材料をまず冷却しその後再加熱する必要性が排除されるということである。この点に関して、この例示的な実施形態では、ライン408を通して重合反応器404に給送される炭素含有材料が、その重合に必要とされる温度に近いかまたはそれを上回る高温にあることは理解されよう。炭素含有材料を冷却または加熱することにより、重合の発生のために所望される温度に炭素含有材料がある領域において、重合反応器404に重合剤を導入することが可能である。例えば、重合反応が起こり固体炭素材料が生成され得るように、500℃〜100℃の温度を有する領域において、重合反応器404に重合剤を導入してもよく、一方で、材料混合物は、重合反応器404を通って更に運ばれ、その後、出口410を通って重合反応器404から排出される。
【0135】
代替的な実施形態では、重合機構400は、炭素含有材料を冷却または加熱するように熱分解反応器402と重合反応器404との間にそれらと連通して配置された、専用の熱交換ユニットを有するように構成されている。重合反応器404は、必要とされる反応温度プロファイルをその長さに沿って維持するための熱交換設備を備えていてもよい。重合反応器404で形成された固体炭素材料生成物は、出口410に近い下流部分で冷却されてもよい。
【0136】
出口410を通って排出される、重合されていない炭素含有材料および重合剤などの未反応の材料がある場合は、固体炭素材料から分離し、再利用のために再循環させることができる。
【0137】
上述のように、バイオオイルの重合の少なくとも一部は、この場合はバイオチャーである多孔質の更なる材料の細孔内で起こる。このようにして、固体炭素材料が生成され、これは出口410を通して得ることができる。
【0138】
この例において、バイオオイルの重合は、不活性環境下の重合反応器404内で起こる。重合反応器404は大気圧で操作されることが想定される。しかしながら、他の条件が使用されてもよい。
【0139】
重合機構400は、生成された固体炭素材料の炭化を行うための更なる容器を備えていてもよい。例えば、より高い温度に耐えることのできる第2の反応器において炭化を実施してもよい。この点に関して、第2の反応器は、生成された固体炭素材料をおよそ400〜1500℃の温度まで更に加熱して炭化させ、揮発性物質を放出させるように配されているが、厳密な温度は、生成された固体炭素材料の所望の特性に依存する。
【0140】
代替的な実施形態では、重合反応器404は、その下流部分で固体炭素材料を炭化させるように構成されている。
【0141】
続く「特許請求の範囲」および前述の本発明の説明において、明白な文言または必然的な含意のために文脈上他の意味に解すべき場合を除いて、「含む(comprise)」という単語または「含む(comprises)」もしくは「含むこと(comprising)」などの変化形は、包括的な意味で、すなわち、記載される特徴の存在を明示するが、更なる特徴の存在または追加を排除しないように、本発明の様々な実施形態において使用される。
図1
図2
図3
図4