(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記係合凸部及び前記係合凹部の一方には、前記締結後に、前記係合凸部及び前記係合凹部の他方と係合して前記キャリアプレートに対し前記ガラスホルダを位置決めする位置決め部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のウインドレギュレータ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係るウインドレギュレータについて説明する。このウインドレギュレータは、自動車のドアパネルに取り付けられ、自動車に設けられたドアの窓ガラスを昇降する昇降装置である。特に、本ウインドレギュレータは、窓ガラスを保持するガラスホルダをキャリアプレートに締結するときに、ガラスホルダが位置合わせされる構造(位置合わせ構造)を有したものである。なお、以下、窓ガラスの昇降方向、上昇方向及び下降方向を、単に昇降方向、上昇方向及び下降方向と呼称する。また、以下、各図に示す通り、左右、前後及び上下を規定して説明する。
【0010】
図1及び
図2に示すように、ウインドレギュレータ1は、ドアパネル(不図示)の内部に取り付けられており、窓ガラス90の昇降方向に沿って設けられたガイドレール2と、ガイドレール2と摺動して移動するキャリアプレート3と、キャリアプレート3を牽引する上昇側ワイヤ41及び下降側ワイヤ42と、ガイドレール2の上端に配設され、上昇側ワイヤ41を方向転換するプーリー20と、上昇側ワイヤ41及び下降側ワイヤ42の巻き取り及び繰り出しを行う駆動部5と、を備えている。また、ウインドレギュレータ1は、窓ガラス90を保持すると共にキャリアプレート3に締結されるガラスホルダ6と、ガラスホルダ6をキャリアプレート3に締結する締結ボルト7(締結部材)と、を備えている。すなわち、このウインドレギュレータ1は、いわゆるワイヤ式且つシングルレール式のウインドレギュレータ1である。なお、キャリアプレート3を昇降させる昇降機構は、上昇側ワイヤ41、下降側ワイヤ42、プーリー20及び駆動部5によって構成されている。
【0011】
ガイドレール2は、長板状の金属板を所定の曲率で折り曲げて形成され、ドア9に対して車両前後方向の後方側に傾いて配置されている。そして、ガイドレール2は、キャリアプレート3を昇降自在に支持している。
【0012】
上昇側ワイヤ41は、一端部がキャリアプレート3に連結され、プーリー20を介して、他端部が駆動部5のドラム51(後述する)に連結されている。一方、下降側ワイヤ42は、一端部がキャリアプレート3に連結され、他端部がドラム51に連結されている。
【0013】
駆動部5は、減速機付きのモータ50と、モータ50によって回転駆動され、回転することにより上昇側ワイヤ41及び下降側ワイヤ42の巻き取り及び繰り出しを行う円筒状のドラム51と、ガイドレール2の下端に設けられ、モータ50を保持すると共に、ドラム51を収容するハウジング52と、を有している。
【0014】
モータ50を正転駆動すると、ドラム51が正転し、これに伴って、下降側ワイヤ42が繰り出されつつ上昇側ワイヤ41が巻き取られる。これによって、キャリアプレート3が上昇側ワイヤ41に引っ張られ上昇方向に移動する。これにより、キャリアプレート3に締結されたガラスホルダ6を介して、窓ガラス90が上昇する。一方、モータ50を逆転駆動すると、ドラム51が逆転し、これに伴って、上昇側ワイヤ41が繰り出されつつ下降側ワイヤ42が巻き取られる。これによって、キャリアプレート3が下降側ワイヤ42に引っ張られ下降方向に移動する。これにより、キャリアプレート3に締結されたガラスホルダ6を介して、窓ガラス90が下降する。
【0015】
次に
図3ないし
図7を参照して、キャリアプレート3、ガラスホルダ6及び締結ボルト7について説明する。
図3は、キャリアプレート3を示した正面図、左側面図及び平面図である。以下、
図3(a)中の手前側をキャリアプレート3の表面側、
図3(a)中の奥側をキャリアプレート3の裏面側として説明する。
図3に示すように、キャリアプレート3は、樹脂で形成されており、表面側左部に広く配設された略倒立台形形状のキャリア締結部31と、背面側右端に配設されたレール取付け部32と、背面側においてレール取付け部32の左側に隣接して配設された上昇側ワイヤ取付け部33と、背面側において上昇側ワイヤ取付け部33の左側に隣接して配設された下降側ワイヤ取付け部34と、を有している。
【0016】
レール取付け部32は、ガイドレール2に対し摺動自在に取り付けられている。すなわち、キャリアプレート3は、このレール取付け部32によって、ガイドレール2に対し昇降自在に支持されている。
【0017】
上昇側ワイヤ取付け部33は、上昇側ワイヤ41の一端が取り付けられている。一方、下降側ワイヤ取付け部34は、下降側ワイヤ42の一端が取り付けられている。すなわち、キャリアプレート3は、この上昇側ワイヤ取付け部33を介して、上昇側ワイヤ41に上昇方向に引っ張られ、この下降側ワイヤ取付け部34を介して、下降側ワイヤ42に下降方向に引っ張られる構成になっている。
【0018】
キャリア締結部31は、表面(
図3(a)中手前側の面:前面)がガラスホルダ6に対する締結面となる平板状の本体部81と、本体部81の左右両端に形成された左右一対のホルダガイド82、82と、本体部81の中央に配設されたボルト挿通孔84と、本体部81表面においてボルト挿通孔84の真下に配設された係合凸部85と、を有している。
【0019】
ボルト挿通孔84は、本体部81の板厚方向に貫通した孔であり、上下方向(昇降方向)に長い長孔状に形成されている。また、ボルト挿通孔84は、締結ボルト7を通す通し孔であり、締結ボルト7の径よりも若干大きく形成されている。また、ボルト挿通孔84には、金属製のスリーブ84aが取り付けられている。本実施形態においては、ボルト挿通孔84が、上下方向に長い長孔状に形成されていることで、キャリアプレート3に対しガラスホルダ6が前後方向に傾き、また上下方向にずれた状態であったとしても、ガラスホルダ6のボルト締結孔67(後述する)に締結ボルト7が締結できるようになっている(
図9参照)。
【0020】
一対のホルダガイド82、82は、キャリアプレート3にガラスホルダ6を取り付けるときに、キャリアプレート3の上方から進入してくるガラスホルダ6をガイドするものである。一対のホルダガイド82、82は、本体部81の左右端部から前方に立ち上がるように形成された側方ガイド部86と、側方ガイド部86の先端から内側に延びる前方ガイド部87と、をそれぞれ有している。各側方ガイド部86、86は、左右方向の内側に向かって傾斜するガイド面86aを有している。このガイド面86aが、ガラスホルダ6のホルダ締結部62(後述する)に接触して、上方から進入してくるガラスホルダ6を左右方向に誘導する。一方、各前方ガイド部87は、本体部81側(後側)に向けて傾斜するガイド面87aを有している。このガイド面87aが、ガラスホルダ6のホルダ締結部62に接触して、ガラスホルダ6を本体部81側に誘導する。詳細は後述するが、これら側方ガイド部86及び前方ガイド部87による誘導によって、キャリアプレート3に対するガラスホルダ6の仮位置合わせがなされる。なお、本実施形態においては、両ホルダガイド82、82が、側方ガイド部86及び前方ガイド部87を有する構成であるが、一対のホルダガイド82、82のうち、一方のホルダガイド82が、側方ガイド部86及び前方ガイド部87を有し、他方のホルダガイド82が、側方ガイド部86を有し且つ前方ガイド部87を有さない構成であっても良い。
【0021】
係合凸部85は、本体部81の表面において、ボルト挿通孔84の真下の位置に配設されている。すなわち、係合凸部85は、締結ボルト7の締結位置から、昇降方向下側に位置ずれした位置の1箇所に配設されている。また、
図3及び
図4(a)に示すように、係合凸部85は、本体部81の表面から突出した突起であって、高さが曲率半径未満の球欠状の突起である。そして、係合凸部85は、その表面85aが、ガラスホルダ6をキャリアプレート3に締結するときにガラスホルダ6を誘導する誘導斜面(誘い斜面)を成している(位置合わせ構造)。すなわち、係合凸部85の表面85aは、ガラスホルダ6をキャリアプレート3に締結するときに、ガラスホルダ6の係合凹部68(後述する)と係合し、締結ボルト7の締結方向に直交する方向において、キャリアプレート3に対するガラスホルダ6の位置を所定の取付け位置(目標の取付け位置)に誘導する。
本実施形態では、係合凸部85は、締結時に、キャリアプレート3に対しガラスホルダ6を移動させるだけでなく、締結時に、ボルト挿通孔84及び締結ボルト7の接触と共働して、キャリアプレート3に対しガラスホルダ6を締結ボルト7の軸回りに回転させる(詳細は後述する)。すなわち、係合凸部85は、キャリアプレート3に対して、締結ボルト7に対するボルト挿通孔84の遊びσ(上下左右の遊び)の範囲で締結ボルト7の締結方向に直交する方向に位置ずれしたガラスホルダ6を、キャリアプレート3の所定の取付け位置に誘導すると共に、キャリアプレート3に対して締結ボルト7の軸回りに傾いて位置ずれしたガラスホルダ6を所定の取付け位置(締結ボルト7の軸回りの所定の回転位置)に誘導する役割を担っている。詳細は後述するが、この締結時の係合凸部85の表面85aによる誘導によって、キャリアプレート3に対するガラスホルダ6の本位置合わせがなされる。
【0022】
また、係合凸部85の半径rは、締結ボルト7に対するボルト挿通孔84の遊びσ(ガタ)を考慮して設定されている。具体的には、
図5に示すように、係合凸部85の半径rは、ボルト挿通孔84の遊びσの2分の1より大きくなっている。本実施形態では、ボルト挿通孔84が上下方向に長い長孔状に形成されており、上下方向の遊びσが最も大きいため、同図の示すように、係合凸部85の半径rは、上下方向の遊びσを基準とし、上下方向の遊びσの2分の1より大きくなっている。すなわち、係合凸部85の半径rは、ボルト挿通孔84の遊びσの範囲内で、キャリアプレート3に対しガラスホルダ6が最大限位置ずれしたとしても、表面85aの上記誘導斜面によって所定の取付け位置に誘導できる大きさになっている。なお、ここにいう遊びσは、スリーブ84aを含んだものであり、スリーブ84aの内径と、締結ボルト7のネジ部7bの外径との差である。
【0023】
また、係合凸部85の半径rは、キャリアプレート3に対しガラスホルダ6が、締結ボルト7の軸回りに傾き得る範囲で最大限傾いたとしても、表面85aの上記誘導斜面によって所定の取付け位置(締結ボルト7の軸回りの所定の回転位置)に誘導できる大きさになっている。本実施形態では、ガラスホルダ6やホルダガイド82の形状等によって、キャリアプレート3に対しガラスホルダ6が傾き得る範囲が調整されており、これにより、係合凸部85によって、最大限傾いたガラスホルダ6を誘導できるようになっている。
【0024】
図6は、ガラスホルダ6を示した正面図、右側面図、背面図及び底面図である。
図6に示すように、ガラスホルダ6は、樹脂で形成されており、窓ガラス90を保持するガラス保持部61と、ガラス保持部61の下端から下方に延びて形成され、キャリアプレート3に締結されるホルダ締結部62と、を備えている。
【0025】
ガラス保持部61は、正面視矩形且つ側面視角「U」字状に形成されており、窓ガラス90の下端を挟み込むように保持している。窓ガラス90の下端は、ガラス保持部61に保持された状態で、ガラス保持部61に対し接着剤等で固定されている。
【0026】
ホルダ締結部62は、表面(
図6(c)中の手前側の面:後面)がキャリアプレート3に対する締結面となる平板状の本体部66と、本体部66の中央に配設されたボルト締結孔67と、本体部66表面において、ボルト締結孔67の真下に配設された係合凹部68と、を有している。なお、本体部66の下端部には、ホルダガイド82のガイド面86a、87aに倣う傾斜が形成されている。すなわち、本体部66の下端部の側面には、側方ガイド部86のガイド面86aに倣う形状の傾斜面66a、66aが形成されており、本体部66の下端部の前面には、前方ガイド部87のガイド面87aに倣う形状の傾斜面66bが形成されている。
【0027】
ボルト締結孔67は、締結ボルト7が螺合可能なナット67aを本体部66にインサート成形して形成されたものであり、締結ボルト7が螺合する。
【0028】
係合凹部68は、本体部66の表面に対して窪んだ穴であって、高さが曲率半径未満の球欠状の穴であり、本体部66の表面において、ボルト締結孔67の真下の位置に配設されている。すなわち、係合凹部68は、係合凸部85と相補的な形状を成すと共に、係合凸部85に対応する位置、つまり、締結ボルト7の締結位置から、昇降方向下側に位置ずれさせた位置の1箇所に配設されている。
【0029】
図7は、キャリアプレート3にガラスホルダ6が締結された状態を示した正面図及びA‐A´線断面図である。
図7に示すように、締結ボルト7は、頭部7aとネジ部7bとから成る頭付きボルトで構成されている。締結ボルト7は、キャリアプレート3のキャリア締結部31の裏面(後面)を頭部7aの座面とし、ネジ部7bがボルト挿通孔84を通って、ガラスホルダ6のボルト締結孔67に螺合される。これにより、キャリアプレート3に対しガラスホルダ6が締結される。
【0030】
キャリアプレート3に対しガラスホルダ6が締結された状態では、キャリア締結部31(の本体部81)の表面と、ホルダ締結部62(の本体部66)の表面とが相互に圧縮状態で接触すると共に、係合凸部85と係合凹部68とが嵌合した状態となる。
【0031】
(ウインドレギュレータの取付け動作)
次に
図8及び
図9を参照して、ウインドレギュレータ1の取付け動作について説明する。ウインドレギュレータ1の取付け動作では、まず、ウインドレギュレータ1のガラスホルダ6及び締結ボルト7以外の部分をドアパネルに取り付ける。具体的には、ドアパネルの車内側に開口した開口部から、ウインドレギュレータ1(のガラスホルダ6及び締結ボルト7以外の部分)を差し入れ、ドアパネルの内側に取り付ける。ウインドレギュレータ1のガラスホルダ6及び締結ボルト7以外の部分をドアパネルに取り付けたら、予め窓ガラス90の下端の所定の位置にガラスホルダ6が固定された窓ガラス90をドア9のサッシに入れ込む。その後、窓ガラス90を下方に降ろしていく。
【0032】
窓ガラス90を下方に降ろしていくと、
図8(a)及び(b)に示すように、窓ガラス90に固定されたガラスホルダ6がキャリアプレート3に到達する。その後、窓ガラス90を下方に降ろしていくと、
図8(c)に示すように、ガラスホルダ6のホルダ締結部62が、キャリアプレート3の一対のホルダガイド82、82に誘導されつつ下方に移動していき、ホルダ締結部62の下端がキャリア締結部31の下端部付近まで到達する。これによって、キャリアプレート3に対しガラスホルダ6が仮位置合わせされる。この仮位置合わせでは、締結ボルト7がキャリアプレート3のボルト挿通孔84を通ってガラスホルダ6のボルト締結孔67に締結可能な程度の位置合わせがなされる。
【0033】
キャリアプレート3に対しガラスホルダ6が仮位置合わせされたら、ドアパネルの上記開口部から、締結ボルト7によってキャリアプレート3に対しガラスホルダ6を締結する。
図9(d)、(e)及び(f)に示すように、締結ボルト7のネジ部7bをガラスホルダ6のボルト締結孔67に螺合していくと、キャリアプレート3に対するガラスホルダ6の前後方向の傾きが矯正されつつ、キャリアプレート3のキャリア締結部31(の本体部81)が、ガラスホルダ6のホルダ締結部62(の本体部66)に接近していく。これに伴って、ホルダ締結部62の係合凹部68の縁が、キャリア締結部31の係合凸部85の表面85aに接触し、係合凹部68の縁が係合凸部85の表面を摺動していく形で、キャリアプレート3に対しガラスホルダ6が誘導される。すなわち、係合凹部68の中心と係合凸部85の中心とが合うように、キャリアプレート3に対しガラスホルダ6が誘導される。
このとき、キャリアプレート3に対しガラスホルダ6が、締結ボルト7に対するボルト締結孔67の遊びσ(上下左右の遊び)の範囲で、締結方向に直交する方向に位置ずれしている場合には、
図10(a)に示すように、キャリアプレート3に対しガラスホルダ6が移動し、所定の取付け位置に移動する。また、キャリアプレート3に対しガラスホルダ6が締結ボルト7の軸回りに傾いている場合には、
図10(b)に示すように、締結ボルト7とボルト挿通孔84(のスリーブ84a)とが接触し、この接触により締結ボルト7を介してガラスホルダ6の移動が規制されることで、この接触部分を中心にガラスホルダ6が回転する。これによって、キャリアプレート3に対するガラスホルダ6の傾きが矯正される。これらによって、キャリアプレート3に対するガラスホルダ6の位置が、所定の取付け位置(締結ボルト7の軸回りの回転位置を含む)に来るように誘導される。これにより、締結ボルト7の締結と同時に、キャリアプレート3に対しガラスホルダ6が本位置合わせされる。この締結ボルト7の締結により、ウインドレギュレータ1の取付け動作を終了する。
【0034】
(実施形態の作用及び効果)
以上、上記実施形態の構成によれば、係合凸部85及び係合凹部68を設けたことで、キャリアプレート3にガラスホルダ6を締結するときに、係合凸部85と係合凹部68とが係合し、ガラスホルダ6を所定の取付け位置に誘導することができる。これにより、締結時に、ガラスホルダ6を正確な位置に位置合わせすることができ、締結ボルト7に対するボルト挿通孔84の遊びσの範囲でガラスホルダ6が位置ずれした状態で締結されてしまうのを抑制することができると共に、締結時に、キャリアプレート3に対するガラスホルダ6の傾きを矯正することができ、キャリアプレート3に対しガラスホルダ6が締結ボルト7の軸回りに傾いて位置ずれした状態で締結されてしまうのを抑制することができる。これらによって、窓ガラス昇降時における摺動抵抗のバラツキの発生を抑制することができる。
【0035】
また、キャリアプレート3とガラスホルダ6との締結を1箇所(1つの締結位置のみ)で行う構成であるため、当該締結を複数箇所で行うものに比べ、ウインドレギュレータ1を簡単な構成にすることができる。また、締結箇所を少なくしたことで、ウインドレギュレータ1の取付け時に利用するドアパネルの上記開口部を小さくすることができる。これにより、ドア9の遮音性を向上させることができる。すなわち、車外の音やウインドレギュレータ1の音が開口部を介して車内に伝わってしまうところ、開口部を小さくすることで、これらの音が車内に伝わるのを抑制することができる。
【0036】
さらに、係合凸部85が、球欠状であり、締結ボルト7の締結方向に直交する全方向から見た断面で誘導斜面が形成される回転体であるため、締結ボルト7の締結方向に直交する全方向において、キャリアプレート3に対しガラスホルダ6を誘導することができ、ガラスホルダ6が、締結ボルト7の締結方向に直交する方向の、360°どの方向に位置ずれしたとしても、ガラスホルダ6を所定の取付け位置に適切に誘導することができる。
【0037】
またさらに、ボルト挿通孔84が昇降方向に長い長孔状に形成されているのに対し、係合凸部85及び係合凹部68を、締結ボルト7の締結位置から昇降方向下側に位置ずれさせた位置に配設したことで、キャリアプレート3に対するガラスホルダ6の傾きを精度良く矯正することができる。すなわち、上記したように、キャリアプレート3に対するガラスホルダ6の傾きの矯正は、ボルト挿通孔84と締結ボルト7との接触に伴う、ガラスホルダ6の回転によって行われるが、この接触の兼ね合いで、締結ボルト7がボルト挿通孔84の一側に寄った状態となる。つまり、締結ボルト7の位置が、ボルト挿通孔84の遊びσの2分の1だけ位置ずれした状態になり、これによってガラスホルダ6が若干傾いた状態となる。これに対し、係合凸部85及び係合凹部68を、締結ボルト7の締結位置から昇降方向下側に位置ずれさせた位置に配設したことで、締結ボルト7の位置ずれ方向を、長孔の遊びσが最も少ない左右方向にすることができる。これによって、締結ボルト7の位置ずれを抑制することができ、締結ボルト7の位置ずれに伴うガラスホルダ6の傾きを少なくすることができる。よって、キャリアプレート3に対するガラスホルダ6の傾きを精度良く矯正することができる。
【0038】
(その他の実施形態について)
次に
図11及び
図12を参照して、ウインドレギュレータ1の変形例について、上記実施形態とは異なる部分のみ説明する。
図11(a)は、第1変形例のウインドレギュレータ1のキャリアプレート3を示した正面図であり、
図11(b)は、第1変形例のウインドレギュレータ1のガラスホルダ6を示した背面図である。
図11(a)に示すように、第1変形例のウインドレギュレータ1では、キャリアプレート3において、係合凸部85が、ボルト挿通孔84の右側及び左側の位置に2つ配設されている。すなわち、係合凸部85は、本体部81の表面において、締結ボルト7の締結位置から、昇降方向に直交する直交方向の一方側に位置ずれさせた位置と、締結ボルト7の締結位置から、上記直交方向の他方側に位置ずれさせた位置と、の2箇所に配設されている。また、
図11(b)に示すように、ガラスホルダ6において、係合凹部68が、係合凸部85に対応する位置に2つ配設されている。すなわち、係合凹部68は、本体部66の表面において、締結ボルト7の締結位置から、上記直交方向の一方側に位置ずれさせた位置と、締結ボルト7の締結位置から、上記直交方向の他方側に位置ずれさせた位置と、の2箇所に配設されている。
【0039】
図11(c)は、第2変形例のウインドレギュレータ1のキャリアプレート3を示した正面図であり、
図11(d)は、第2変形例のウインドレギュレータ1のガラスホルダ6を示した背面図である。
図11(c)に示すように、第2変形例のウインドレギュレータ1では、キャリアプレート3において、係合凸部85が、ボルト挿通孔84の右上及び左上の位置に2つ配設されている。すなわち、係合凸部85は、本体部81の表面において、締結ボルト7の締結位置から、昇降方向上側に且つ昇降方向に直交する直交方向の一方側に位置ずれさせた位置と、締結ボルト7の締結位置から、昇降方向上側に且つ上記直交方向の他方側に位置ずれさせた位置と、の2箇所に配設されている。また、
図11(d)に示すように、ガラスホルダ6において、係合凹部68が、係合凸部85に対応する位置に2つ配設されている。すなわち、係合凹部68は、本体部66の表面において、締結ボルト7の締結位置から、昇降方向上側に且つ上記直交方向の一方側に位置ずれさせた位置と、締結ボルト7の締結位置から、昇降方向上側に且つ上記直交方向の他方側に位置ずれさせた位置と、の2箇所に配設されている。
【0040】
図12(a)は、第3変形例のウインドレギュレータ1のキャリアプレート3を示した正面図であり、
図12(b)は、第3変形例のウインドレギュレータ1のガラスホルダ6を示した背面図である。
図12(a)に示すように、第3変形例のウインドレギュレータ1では、キャリアプレート3において、係合凸部85が、ボルト挿通孔84の右上、左上、右下及び左下の位置に4つ配設されている。すなわち、係合凸部85は、本体部81の表面において、締結ボルト7の締結位置から、昇降方向上側に且つ昇降方向に直交する直交方向の一方側に位置ずれさせた位置と、締結ボルト7の締結位置から、昇降方向上側に且つ上記直交方向の他方側に位置ずれさせた位置と、締結ボルト7の締結位置から、昇降方向下側に且つ上記直交方向の一方側に位置ずれさせた位置と、締結ボルト7の締結位置から、昇降方向下側に且つ上記直交方向の他方側に位置ずれさせた位置と、の4箇所に配設されている。また、
図12(b)に示すように、ガラスホルダ6において、係合凹部68が、係合凸部85に対応する位置に4つ配設されている。すなわち、係合凹部68は、本体部66の表面において、締結ボルト7の締結位置から、昇降方向上側に且つ上記直交方向の一方側に位置ずれさせた位置と、締結ボルト7の締結位置から、昇降方向上側に且つ上記直交方向の他方側に位置ずれさせた位置と、締結ボルト7の締結位置から、昇降方向下側に且つ上記直交方向の一方側に位置ずれさせた位置と、締結ボルト7の締結位置から、昇降方向下側に且つ上記直交方向の他方側に位置ずれさせた位置と、の4箇所に配設されている。
【0041】
図12(c)は、第4変形例のウインドレギュレータ1のキャリアプレート3を示した正面図であり、
図12(d)は、第4変形例のウインドレギュレータ1のガラスホルダ6を示した背面図である。
図12(c)及び(d)に示すように、第4変形例のウインドレギュレータ1では、第1変形例と同様、キャリアプレート3において、係合凸部85が、ボルト挿通孔84の右側及び左側の位置に2つ配設されており、ガラスホルダ6において、係合凹部68が、ボルト締結孔67の右側及び左側の位置に2つ配設されている。そして、第4変形例のウインドレギュレータ1では、
図4(b)及び
図12(c)に示すように、係合凸部85が四角錐台形状に形成されている。この構成では、四角錐台形状の側面85bが、締結時に係合凹部68と係合してガラスホルダ6を誘導する上記誘導斜面となっている。また、係合凹部68は、四角錐台形状の穴となっており、係合凸部85と相補的な形状となっている。
【0042】
以上、各変形例の構成によれば、係合凸部85及び係合凹部68が少なくとも2箇所に配設されていることで、キャリアプレート3上の2点と、ガラスホルダ6上の2点とを合わせることができる。これにより、キャリアプレート3に対するガラスホルダ6の回転位置(締結ボルト7の軸回りの回転位置)を正確に位置合わせすることができる。すなわち、キャリアプレート3に対するガラスホルダ6の傾き(締結ボルト7の軸回りの傾き)をより精度良くに矯正することができる。
【0043】
なお、上記実施形態においては、係合凸部85及び係合凹部68を、締結ボルト7の締結位置から、昇降方向下側に位置ずれさせた位置に配設する構成であったが、係合凸部85及び係合凹部68を、締結ボルト7の締結位置から、昇降方向上側に位置ずれさせた位置に配設する構成であっても良い。
【0044】
また、上記実施形態においては、係合凸部85が球欠状に形成されている構成であったが、
図4(c)に示すように、係合凸部85が半球状に形成されている構成であっても良い。かかる場合、係合凹部68は、半球状の穴とし、係合凸部85と相補的な形状とする。この構成では、係合凸部85は、その表面85aが、締結時に係合凹部68と係合してガラスホルダ6を誘導する上記誘導斜面を成す一方、その基端部85cが、締結ボルト7の締結後に、キャリアプレート3に対しガラスホルダ6を位置決めする位置決め部を成している。すなわち、締結ボルト7が締結されると、係合凸部85と係合凹部68とが嵌合し、係合凸部85の基端部85c(半球形状の基端部)が、係合凹部68の内縁に対し対面するように係合する。これにより、キャリアプレート3に対しガラスホルダ6が位置決めされ、さらに言えば、キャリアプレート3に対しガラスホルダ6が位置決めされた状態で締結される。ここにいう位置決めは、キャリアプレート3に対しガラスホルダ6が、締結ボルト7の締結方向に直交する方向において、相対的に動かない(移動、回動及び揺動しない)ように位置固定されることを意味している。
【0045】
このような構成によれば、係合凸部85が位置決め部としても機能することで、ウインドレギュレータ1の使用中に、キャリアプレート3に対してガラスホルダ6が相対的に揺動してしまうのを抑制することができる。すなわち、キャリアプレート3とガラスホルダ6との締結を1箇所で行うウインドレギュレータ1では、窓ガラス90の上昇時には、窓ガラス90が車両の前方側に傾き、窓ガラス90の下降時には、窓ガラス90が車両の後方側に傾く。そのため、キャリアプレート3に対してガラスホルダ6が揺動し、その影響で締結ボルト7が緩むおそれがあったが、係合凸部85によってキャリアプレート3に対するガラスホルダ6の位置決めが成されることで、キャリアプレート3に対してガラスホルダ6が相対的に揺動してしまうのを抑制することができる。この結果、締結ボルト7が緩むのを抑制することができる。
【0046】
また、
図4(d)に示すように、係合凸部85を、円柱状の胴部85dと、胴部85dの先端に形成され、半球状の先端部85eと、から成る形状としても良い。かかる場合には、先端部85eの表面が、締結時に係合凹部68と係合してガラスホルダ6を誘導する上記誘導斜面となっており、胴部85dが、締結後に係合凹部68と係合してガラスホルダ6を位置決めする上記位置決め部となる。かかる場合、係合凹部68は、円柱状部分と円柱状部分の端に形成された半球状部分とから成る穴とし、係合凸部85と相補的な形状とする。かかる構成によれば、位置決め部を成す部分を広くすることができるので、係合凸部85による位置決め強度を向上させることができる。
【0047】
また、係合凸部85の形状は、例えば、円錐台形状等を含む錐台形状であっても良いし、円錐形状や四角錐形状等を含む錐形状であっても良い。さらに言えば、係合凸部85の形状を、上記位置決め部を成す柱状の胴部と、胴部の先端に設けられると共に錐台形状または錐形状に形成され、上記誘導斜面を成す先端部と、から成る形状としても良い。
【0048】
なお、上記実施形態においては、係合凸部85に対し係合凹部68が相補的な形状を成す構成であったが、係合凸部85の誘導斜面と係合凹部68との係合によって、キャリアプレート3に対しガラスホルダ6が誘導される構成であれば、係合凸部85に対し係合凹部68が相補的でない形状であっても良い。例えば、球欠状や半球状の係合凸部85に対し、係合凹部68を、係合凸部85と同一径の円柱状の穴とする構成であっても良い。また、例えば、四角錐台形状の係合凸部85に対し、係合凹部68を、立方体形状の穴とする構成であっても良い。
【0049】
また、上記実施形態においては、キャリアプレート3に係合凸部85が形成され、ガラスホルダ6に係合凹部68が形成されている構成であったが、キャリアプレート3に係合凹部68が形成され、ガラスホルダ6に係合凸部85が形成されている構成であっても良い。
【0050】
さらに、上記実施形態においては、係合凸部85に、締結時に係合凹部68と係合してガラスホルダ6を誘導する上記誘導斜面が形成されている構成であったが、係合凹部68に、締結時に係合凸部85と係合してガラスホルダ6を誘導する上記誘導斜面が形成される構成であっても良い。
【0051】
また、上記実施形態においては、シングルレール式のウインドレギュレータ1に、本発明を適用したが、ガイドレール2を2本備えたダブルレール式のウインドレギュレータ1に、本発明を適用しても良い。
【0052】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記した実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。