(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のクリヤ塗装ステンレス鋼板の一実施形態例について説明する。
図1は、本発明のクリヤ塗装ステンレス鋼板の一実施形態例を模式的に示す断面図である。本実施形態例のクリヤ塗装ステンレス鋼板10は、ステンレス鋼板11と、前記ステンレス鋼板11の一方の面に形成された化成処理塗膜12と、前記化成処理塗膜12の表面に形成されたクリヤ樹脂層13とを具備して構成されている。
なお、
図1においては、説明の便宜上、寸法比は実際のものと異なったものである。
【0011】
また、本実施形態において、「クリヤ」とは、可視光領域の光線透過率が30%以上のことである。可視光領域の光線透過率は、分光光度計を用いて、380nm〜750nmの波長範囲で測定した光線透過率である。
クリヤ樹脂層13の可視光領域の光線透過率が30%未満であると、可視光は僅かに透過しているものの、目視ではステンレス鋼板11を殆ど見ることはできない。そのため、ステンレスの持つ美麗な外観を活かした意匠は得られない。
特に、クリヤ樹脂層13の可視光透過率は40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。
【0012】
「ステンレス鋼板」
ステンレス鋼板11としては、フェライト系、マルテンサイト系、オーステナイト系、オーステナイト・フェライト系(二相系)など、一般に使用される公知のステンレス鋼板を用いることができる。
ステンレス鋼板11の表面は、研磨処理が施されていてもよい。研磨処理としては、No.4研磨、ヘアライン(HL)研磨など、一般に使用される研磨方法が挙げられる。
【0013】
「化成処理塗膜」
化成処理塗膜12としては、アミノシラン系シランカップリング剤およびエポキシシラン系シランカップリング剤の一方または両方を含有する塗膜が好ましい。ステンレス鋼板11とクリヤ樹脂層13との間に、これらシランカップリング剤を含有する化成処理塗膜12を有していれば、無公害なクロメートフリーにでき、さらにステンレス鋼板11とクリヤ樹脂層13との密着性を高くできる。
ここで、アミノシラン系カップリング剤としては、例えば、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
エポキシ系シランカップリング剤としては、例えば、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。
これらシランカップリング剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0014】
化成処理塗膜12には、耐食性をさらに向上させるために、リン酸塩類、縮合リン酸、ポリリン酸、メタリン酸、ピロリン酸等のリン酸またはその塩類;アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル、ポリオレフィン、アルキッド樹脂等の樹脂などが含まれてもよい。
【0015】
化成処理塗膜12の付着量は2〜50mg/m
2であることが好ましい。化成処理塗膜12の付着量が2mg/m
2未満であると、光沢および耐食性が低下しやすくなる。一方、付着量が50mg/m
2を超えると、沸騰水試験後の塗膜表面にブリスターを生じることがある。化成処理塗膜12の付着量の好ましい上限は30mg/m
2であり、より好ましくは10mg/m
2である。
化成処理塗膜12の付着量は、蛍光X線分析にてSiO
2量を測定することによって求めることができる。
【0016】
「クリヤ樹脂層」
クリヤ樹脂層13は、アクリル樹脂と、無機担体に有機防カビ剤が担持された担持体とを含有する熱硬化性樹脂組成物を含む塗膜である。詳細には、クリヤ樹脂層13は、熱硬化性樹脂組成物を含む塗膜であり、熱硬化性樹脂組成物は、アクリル樹脂と、担持体とを含有する。担持体は、無機担体と、無機担体に担持された有機防カビ剤と、からなる。
【0017】
<熱硬化性樹脂組成物>
熱硬化性樹脂組成物は、アクリル樹脂と、無機担体に有機防カビ剤が担持された担持体とを含有する。熱硬化性樹脂組成物は、抗菌剤、撥水性樹脂、架橋樹脂から選択される1種以上をさらに含有することが好ましく、硬化触媒をさらに含有してもよい。
【0018】
(アクリル樹脂)
アクリル樹脂としては、架橋性官能基を有するアクリル樹脂が好ましい。架橋性官能基を有するアクリル樹脂はステンレス鋼板11に対する密着性に優れるので、ステンレス鋼板11とクリヤ樹脂層13とがより良好に密着する。
ここで、「架橋性官能基」とは、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシシラン基などから選ばれる1種または2種以上の官能基である。アクリル樹脂は架橋性官能基を1分子あたり、2つ以上有することが好ましい。
【0019】
架橋性官能基を有するアクリル樹脂は、例えば非官能性単量体と架橋性官能基を有する重合性単量体とを反応させることで得られる。
非官能性単量体としては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸ラウリル等の脂肪族または環式アクリート;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミドなどが挙げられる。
これら非官能性単量体は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
架橋性官能基を有する重合性単量体としては、ヒドロキシ基を有する単量体、カルボキシ基を有する単量体、アルコキシシラン基を有する単量体等が挙げられる。
ヒドロキシ基を有する単量体は、1分子中にヒドロキシ基と重合性不飽和二重結合をそれぞれ1つ以上含有する単量体である。このような単量体としては、例えばアクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル等のヒドロキシアルキルエステル;ラクトン変性水酸基含有ビニル重合モノマー(例えば、プラクセルFM1、2、3、4、5、FA−1、2、3、4、5(以上、株式会社ダイセル製)等)などが挙げられる。
カルボキシ基を有する単量体は、1分子中にカルボキシ基と重合性不飽和二重結合をそれぞれ1つ以上含有する単量体である。このような単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。
アルコキシシラン基を有する単量体は、1分子中にアルコキシシラン基と重合性不飽和二重結合をそれぞれ1つ以上含有する単量体である。このような単量体としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタアクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
これら架橋性官能基を有する重合性単量体は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
(架橋樹脂)
架橋樹脂は、アクリル樹脂を硬化させる樹脂である。熱硬化性樹脂組成物が架橋樹脂を含有することで、アクリル樹脂が架橋構造となり、クリヤ樹脂層13の強度が高まるとともに、ステンレス鋼板11に対するクリヤ樹脂層13の密着性がより向上する。
【0022】
架橋樹脂としては、イソシアネート樹脂、アミノ樹脂などが挙げられる。
架橋樹脂としてイソシアネート樹脂を用いる場合、加工性に優れる熱硬化性樹脂組成物が得られる。一方、架橋樹脂としてアミノ樹脂を用いる場合、表面硬度に優れる熱硬化性樹脂組成物が得られる。
これら架橋樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
イソシアネート樹脂には、常温下でも硬化反応が進行するノンブロックタイプと、常温下では反応が進まないが、加熱することによって硬化反応が進行するブロックタイプとがある。ブロックタイプでは、イソシアネート基をフェノール類、オキシム類、活性メチレン類、ε−カプロラクタム類、トリアゾール類、ピラゾール類等のブロック剤によって封鎖することで、常温下では反応が進まないが、加熱することによって硬化反応が進行する。
イソシアネート樹脂としては、ノンブロックタイプおよびブロックタイプのいずれも使用可能であるが、プレコート型塗装による生産を行う場合は、連続生産時の作業性に優れる点で、ブロックタイプが好ましい。
【0024】
ブロックタイプのイソシアネート樹脂は、分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物である。このような化合物としては、具体的に、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;これらイソシアネートのビューレットタイプの付加物やイソシアヌル環タイプの付加物などが挙げられる。
これらイソシアネート樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
アクリル樹脂が架橋性官能基を有する場合、その架橋性官能基(例えば、OH基やCOOH基等)とイソシアネート樹脂のイソシアネート基(NCO基)との比は、当量比(モル当量比)で架橋性官能基/NCO基=1.0/0.2〜1.0/2.0となる範囲が好ましく、1.0/0.2〜1.0/1.5となる範囲がより好ましく、1.0/0.5〜1.0/1.2となる範囲がさらに好ましい。当量比が1.0/0.2以上であれば、熱硬化性樹脂組成物の架橋が充分となるため、ステンレス鋼板11に対するクリヤ樹脂層13の密着性が向上するとともに、耐水性や耐薬品性も良好となる。一方、当量比が1.0/2.0以下であれば、イソシアネート基が適量となるため未反応のイソシアネート樹脂が残りにくくなり、熱硬化性樹脂組成物の硬化性を良好に維持できる。熱硬化性樹脂組成物の硬化性が良好であれば、熱硬化性樹脂組成物の硬度が低下するのを抑制できるので、クリヤ樹脂層13に加圧による圧痕が発生するのを抑制できる。
【0026】
アミノ樹脂は、アミノ化合物(メラミン、グアナミン、尿素)とホルムアルデヒド(ホルマリン)を付加反応させ、アルコールで変性した樹脂の総称である。具体例としては、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、ブチル化尿素樹脂、ブチル化尿素メラミン樹脂、グリコールウリル樹脂、アセトグアナミン樹脂、シクロヘキシルグアナミン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、反応速度と加工性の両面を考慮して、メラミン樹脂が好ましい。
メラミン樹脂は、変性するアルコールの種類によってメチル化メラミン樹脂、n−ブチル化メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂、混合アルキル化メラミン樹脂などに分類される。これらの中でも、反応性に優れ、かつ可とう性とのバランスに優れる点で、メチル化メラミン樹脂が特に好ましい。
【0027】
具体的には、メチル化メラミン樹脂としては、サイメル300、301、303、350、370、771、325、327、703、712、715、701、267、285、232、235、236、238、211、254、204、212、202、207(以上、三井サイテック株式会社製)、LUWIPAL 063、066、068、069、072、073(以上 BASF製)、スーパーベッカミンL−105(以上、大日本インキ化学工業株式会社製)、メラン522、523、620、622、623(以上、日立化成工業株式会社製)等が挙げられる。
n−ブチル化メラミン樹脂としては、マイコート506、508(以上、三井サイテック株式会社製)、ユーバン20SB、20SE、21R、22R、122、125、128、220、225、228、28−60、20HS、2020、2021、2028、120(以上、三井化学株式会社製)、PLASTOPAL EBS 100A、100B、400B、600B、CB(以上、BASF製)、スーパーベッカミンJ−820、L−109、L−117、L−127、L−164(以上、大日本インキ化学工業株式会社製)、メラン21A、22、220、2000、8000(以上、日立化成工業株式会社製)、テスアジン3020、3021、3036(以上、日立化成ポリマー株式会社製)等が挙げられる。
イソブチル化メラミン樹脂としては、ユーバン60R、62、62E、360、361、165、166−60、169、2061(以上、三井化学株式会社製)、スーパーベッカミンG−821、L−145、L−110、L−125(以上、大日本インキ化学工業株式会社製)、PLASTOPAL EBS 4001、FIB、H731B、LR8824(以上、BASF製)、メラン27、28、28D、245、265、269、289(以上、日立化成工業株式会社製)、テスアジン3027、3028、3029、3030、3037(以上、日立化成ポリマー株式会社製)等が挙げられる。
混合アルキル化メラミン樹脂としては、サイメル267、285、232、235、236、238、211、254、204、212、202、207(以上、三井サイテック株式会社製)等が挙げられる。
これらアミノ樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
アミノ樹脂の含有量は、アクリル樹脂の固形分100質量部に対して、15〜50質量部が好ましく、25〜40質量部がより好ましい。アミノ樹脂の含有量が15質量部以上であれば、クリヤ樹脂層13の架橋密度が上がるので、ステンレス鋼板11に対する密着性がより向上する。また、クリヤ樹脂層13の表面硬度が充分なものとなるので、耐傷付き性が高まる。一方、アミノ樹脂の含有量が50質量部以下であれば、クリヤ樹脂層13の柔軟性が高まる。
【0029】
(硬化触媒)
熱硬化性樹脂組成物が架橋樹脂を含有する場合、熱硬化性樹脂組成物にはアクリル樹脂と架橋樹脂との架橋反応を促進させるための硬化触媒がさらに含まれていてもよい。
硬化触媒は、熱硬化性樹脂組成物に含まれる架橋樹脂の種類に応じて決定される。例えば、熱硬化性樹脂組成物が架橋樹脂としてイソシアネート樹脂を含有する場合、硬化触媒としては有機錫触媒が好ましい。
【0030】
有機錫触媒としては、例えばジ−n−ブチルチンオキサイド、n−ジブチルチンクロライド、ジ−n−ブチルチンジラウリレート、ジ−n−ブチルチンジアセテート、ジ−n−オクチルチンオキサイド、ジ−n−オクチルチンジラウリレート、テトラ−n−ブチルチンなどが挙げられる。
これら有機錫触媒は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
硬化触媒として有機錫触媒を用いる場合、その含有量は、アクリル樹脂とイソシアネート樹脂との固形分の合計100質量部に対して、0.005〜0.08質量部が好ましく、0.01〜0.06質量部がより好ましい。硬化触媒の含有量が0.005質量部以上であれば、硬化触媒の効果が充分に得られる。一方、硬化触媒の含有量が0.08質量部を超えると、単に硬化触媒の効果が頭打ちするだけでなく、反応性が過剰に高くなることによってイソシアネート基(NCO基)が空気中の水分等と反応するなど、アクリル樹脂の架橋性官能基(例えば、OH基やCOOH基等)との1:1反応をかえって阻害する場合がある。その結果、耐侯性が低下するなど本来の性能を発揮できなくなる恐れがある。また、イソシアネート樹脂としてノンブロックタイプを用いた場合、塗料の反応性が極端に速くなるために、アクリル樹脂とイソシアネート樹脂とを混合した後、直ちに塗装する必要性が生じ、塗装作業性が著しく低下する。
【0032】
熱硬化性樹脂組成物が架橋樹脂としてアミノ樹脂を含有する場合、硬化触媒としてはスルホン酸系やアミン系の硬化触媒が好ましい。特に、クリヤ樹脂層13の表面硬度をより高める目的で、より反応性の高いスルホン酸系の硬化触媒である、p−トルエンスルホン酸やドデシルベンゼンスルホン酸を用いることが好ましい。
また、詳しくは後述するが、クリヤ樹脂層13を形成する際には、通常、熱硬化性樹脂組成物等を含む塗料(クリヤ塗料)を調製し、この塗料を用いてクリヤ樹脂層13を形成する。塗料の貯蔵安定性を向上させる観点から、硬化触媒としては、アミン等によって反応基が封鎖して常温下での反応を抑制されたブロック型酸触媒を用いることもできる。これらブロック型酸触媒としては、上述したスルホン酸系の硬化触媒のアミンブロックタイプなどが挙げられる。
【0033】
硬化触媒としてスルホン酸系やアミン系の硬化触媒を用いる場合、その含有量は、アクリル樹脂とアミノ樹脂の固形分の合計100質量部に対して、0.1〜4.0質量部が好ましい。硬化触媒の含有量が0.1質量部以上であれば、硬化触媒の効果が充分に得られる。硬化触媒の含有量が4.0質量部を超えても、硬化触媒の効果が頭打ちとなるだけでなく、塗料の貯蔵安定性が低下する場合がある。
【0034】
(担持体)
担持体は、無機担体に有機防カビ剤が担持されたものである。詳細には、担持体は、無機担体と、無機担体に担持された有機防カビ剤と、からなる。
有機防カビ剤が無機担体に担持されていることで、有機防カビ剤の耐熱性が向上する。そのため、ステンレス鋼板11の表面にクリヤ樹脂層13を形成するに際して焼付けを行っても、担持体中の有機防カビ剤が失活しにくく、充分な防カビ性を発現できる。
なお、本実施形態において「担持」とは、付着や吸着等の物理的結合および/または化学的結合による無機担体への有機防カビ剤の固定を意味する。
【0035】
無機担体としては、ゼオライト、シリカ、リン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、アパタイトなどが挙げられる。
【0036】
有機防カビ剤は、カビ(真箘)類が直接触れた際にカビの細胞膜の形成を阻害することで、カビの発生や増殖を抑制する効果(防カビ性)を有する薬剤である。
有機防カビ剤としては、例えばヨード系化合物、イミダゾール系化合物、有機窒素系化合物、イソフタロ系化合物、ピリジン系化合物などが挙げられる。
ヨード系化合物としては、例えばジヨードメチルパラトリルスルホン、3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバメート(IPBC)、1−[[(3−ヨード−2−プロピニル)オキシ]メトキシ]−4−メトキシベンゼン、3−ブロモ−2,3−ジヨード−2−プロペニルエチルカーボネート、2,3,3−トリヨードアリルアルコール、パラクロロフェニル−3−ヨードプロパルギルホルマールなどが挙げられる。
イミダゾール系化合物としては、例えばメチル−2−(4−チアゾリル)ベンゾイミダゾール、2−メトキシカルボニルアミノベンツイミダゾールなどが挙げられる。
有機窒素系化合物としては、例えば2(2−フラニル)−3(5−ニトロ−2−フラニル)アクリルアミド、N−ブロモアセトアミドなどが挙げられる。
イソフタロ系化合物としては、例えば2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリルなどが挙げられる。
ピリジン系化合物としては、例えば2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン、ビス(ピリジン−2−チオール−1−オキシド)亜鉛酸、2−ピリジンチオール−1−オキシドナトリウム塩、2,2’−ジチオビスピリジン−1−オキシドなどが挙げられる。
【0037】
これら有機防カビ剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
担持体の市販品としては、例えばエッセンガード10、20(以上、株式会社シナネンゼオミック製);PBM(以上、株式会社エム・アイ・シー製);カビノン800、900、930V、940(以上、東亞合成株式会社製)などが挙げられる。
これら担持体は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
担持体の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の総質量に対して0.5質量%以上であり、0.5〜2.0質量%が好ましく、1.0〜1.5質量%がより好ましい。担持体の含有量が0.5質量%以上であれば、充分な防カビ性が得られる。かかる効果は、担持体の含有量が上限値を超えると頭打ちとなる。
【0039】
(抗菌剤)
抗菌剤は、細菌が直接触れた際に細菌の細胞膜の形成を阻害することで、細菌の発生や増殖を抑制する効果(抗菌性)を有する薬剤である。
抗菌剤としては、遷移金属を含む化合物が好ましく、具体的には遷移金属単体、遷移金属担持体などが挙げられる。遷移金属担持体は、担体と、担体に担持された遷移金属と、からなる。
遷移金属としては、銀(Ag)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)などが挙げられる。これら遷移金属は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
遷移金属を担持させる担体としては、例えばゼオライト、シリカゲル、リン酸カルシウム、ケイ酸塩、酸化チタンなどが挙げられる。
【0040】
Ag系抗菌剤の市販品としては、例えばゼオミックAK、SW、HD(以上、株式会社シナネンゼオミック製);シルウェルB3(以上、富士シリシア化学株式会社製);ノバロンAG(以上、東亞合成株式会社製);バイオカットSV(以上、日本曹達株式会社製)などが挙げられる。
Ag/Cu系抗菌剤の市販品としては、例えばゼオミックAC(以上、株式会社シナネンゼオミック製)などが挙げられる。
Ag/Zn系抗菌剤の市販品としては、例えばバクテキラー(以上、カネボー化成株式会社製)などが挙げられる。
【0041】
これら抗菌剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
抗菌剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の総質量に対して0.5〜2.0質量%が好ましく、1.0〜1.5質量%がより好ましい。抗菌剤の含有量が0.5質量%以上であれば、充分な抗菌性が得られる。抗菌剤の含有量が2.0質量%以下であれば、クリヤ樹脂層13が白濁するのを抑制でき、意匠性を良好に維持できる。
【0042】
(撥水性樹脂)
撥水性樹脂は、高い界面張力を有する樹脂である。熱硬化性樹脂組成物が撥水性樹脂を含んでいれば、クリヤ樹脂層13の表面張力が高まり、水等の液体に対する接触角が大きくなる。その結果、水等の液体がクリヤ樹脂層13の表面に留まることが抑制され、汚れ成分の固着が軽減される。
家電製品等において、カビが発生したり増殖したりしやすい箇所は、通常、ふき取りなどのメンテナンスが困難であり、汚れ成分が固着しやすい傾向にある。このような箇所に固着した汚れ成分はカビの栄養源となる。また、防カビ剤はカビと直接接触することでその効果を発揮するが、汚れが固着しているとカビと防カビ剤との接触が妨げられ、充分な防カビ性を発現しにくくなる恐れがある。そのため、長期間にわたって家電製品等を使用することで、汚れ成分が固着した箇所は防カビ性の効果が低下する場合がある。
熱硬化性樹脂組成物が撥水性樹脂を含んでいれば、汚れ成分の固着が軽減されるので、担持体中の有機防カビ剤の効果(防カビ性)を長期間にわたって持続的に発現できる。熱硬化性樹脂組成物が抗菌剤をさらに含んでいれば、抗菌性も長期間にわたって持続的に発現できる。
【0043】
撥水性樹脂としては、アクリルシリコーン樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。
アクリルシリコーン樹脂としては、例えば例えばシリコーン変性アクリル樹脂が挙げられる。より具体的には、アクリル系単量体単位を含む重合体と、ポリオルガノシロキサンとを反応させて得られたブロック重合体またはグラフト重合体が挙げられ、これらの中でもグラフト重合体が好ましい。以下、このグラフト重合体を特に「シリコーングラフトアクリル樹脂」ともいう。シリコーングラフトアクリル樹脂は、アクリル系単量体から誘導される直鎖状の構造部分である主鎖に、シロキサンから誘導される構造部分である側鎖がグラフト化したものである。
アクリル系単量体としては、アクリル樹脂の説明において先に例示した非官能性単量体、架橋性官能基を有する重合性単量体などが挙げられる。
【0044】
フッ素樹脂としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などが挙げられる。
【0045】
これら撥水性樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
撥水性樹脂の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の総質量に対して0.1〜5.0質量%が好ましく、0.1〜3.0質量%がより好ましい。撥水性樹脂の含有量が0.1質量%以上であれば、クリヤ樹脂層13の表面張力が充分に高まる。かかる効果は、撥水性樹脂の含有量が上限値を超えると頭打ちとなる。また、撥水性樹脂の含有量が5.0質量%以下であれば、クリヤ樹脂層13の光沢が低下しにくく、意匠性を良好に維持できる。
【0046】
(任意成分)
クリヤ樹脂層13には、紫外線吸収剤や光安定剤等の耐光性付与剤、透明性を有する有機顔料や無機顔料、各種パール顔料やアルミペースト等の光輝材、分散剤、消泡剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、湿潤剤、潤滑剤などの添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0047】
<接触角>
クリヤ樹脂層13の露出した表面(ステンレス鋼板11とは反対側の面)の水に対する接触角(水接触角)は80°以上が好ましく、85°以上がより好ましく、90°以上がさらに好ましい。水接触角が80°以上であれば、汚れ成分等を含む水などがクリヤ樹脂層13の表面に接触しても、前記表面に留まりにくく、流れ落ちやすい。よって、クリヤ樹脂層13の表面に汚れ成分が固着しにくいため、防カビ性を長期間にわたって持続的に発現できる。熱硬化性樹脂組成物が抗菌剤をさらに含んでいれば、抗菌性も長期間にわたって持続的に発現できる。
クリヤ樹脂層13の表面の水接触角の上限は特に限定されないが、実現可能な最大接触角という観点から110°が好ましく、105°がより好ましく、100°がさらに好ましい。
【0048】
クリヤ樹脂層13の水接触角は、熱硬化性樹脂組成物中の撥水性樹脂の種類や含有量を調節することで容易に制御できる。
クリヤ樹脂層13の水接触角は、クリヤ樹脂層13の表面に水を1滴滴下し、1秒経過後の水接触角を接触角計を用いて測定される値である。
【0049】
<厚さ>
クリヤ樹脂層13の膜厚は、1〜10μmであることが好ましい。クリヤ樹脂層13の膜厚が1μm以上であれば、加工性を良好に維持できる。クリヤ樹脂層13の膜厚が10μm以下であれば、透明性を良好に維持できるので、意匠性により優れる。
【0050】
「クリヤ塗装ステンレス鋼板の製造方法」
次に、上述したクリヤ塗装ステンレス鋼板10の製造方法の一例について説明する。なお、クリヤ塗装ステンレス鋼板10の製造方法は以下の例に限定されるものではない。
この例の製造方法では、まず、ステンレス鋼板11をアルカリ脱脂や酸、アルカリによるエッチング等の公知の前処理を施すことが好ましい。
次いで、ステンレス鋼板11に、化成処理液を塗布し、乾燥して、化成処理塗膜12を形成する。
【0051】
化成処理液には、クロメートタイプとノンクロメートタイプがあるが、環境に対する配慮の観点からノンクロメートタイプが好ましい。
ノンクロメートタイプの化成処理液としては、シランカップリング剤と、水または有機溶剤等の溶媒と、必要に応じて架橋剤や液状防錆剤とを含むものが挙げられる。
シランカップリング剤としては、化成処理塗膜12の説明において先に例示したアミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤などが挙げられる。シランカップリング剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
有機溶剤としては、例えばトルエン、キシレン、ベンゼン、シクロヘキサン、ヘキサン等の炭化水素;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル化合物;ジエチルエーテル等のエーテル化合物;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒などが挙げられる。これら有機溶剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0052】
化成処理は、化成処理液を付着量が2〜50mg/m
2(蛍光X線にてSiO
2量を測定)になるようにステンレス鋼板11の表面に塗装し、乾燥することで行われる。
化成処理液の塗装方法としては、スプレー、ロールコート、バーコート、カーテンフローコート、静電塗布等の方法を用いることができる。
化成処理液の乾燥は、ステンレス鋼板11に塗装された化成処理液中の溶媒を蒸発させればよく、その温度はステンレス鋼板11の素材最高到達温度(PMT)が60〜140℃程度が適当である。
【0053】
次いで、化成処理塗膜12の表面に、クリヤ塗料を塗布し、乾燥(焼付け)する。
前記クリヤ塗料としては、上述した熱硬化性樹脂組成物と、溶媒と、必要に応じて任意成分とを含むものが好ましい。
クリヤ塗料に用いられる溶媒としては、化成処理液の説明において先に例示した溶媒が挙げられる。
【0054】
クリヤ塗料の塗布方法としては、化成処理液の塗布方法と同じ方法が適用される。
クリヤ塗料を塗装した後の硬化条件は、ステンレス鋼板11の素材最高到達温度(PMT)にして200〜270℃となるように加熱することが好ましく、より好ましくは210〜250℃である。素材最高到達温度が200℃未満であると、硬化反応が充分に進まず、クリヤ樹脂層13の表面硬度が低下するだけでなく、ステンレス鋼板11とクリヤ樹脂層13との密着性が低下することがある。一方、素材最高到達温度が270℃を超えると、クリヤ樹脂層13の柔軟性が低下しやすくなる。加えて、クリヤ塗装ステンレス鋼板10が黄変して意匠性を低下させることがある。
【0055】
「作用効果」
以上説明したクリヤ塗装ステンレス鋼板は、無機担体に有機防カビ剤が担持された担持体を含むクリヤ樹脂層を備える。そのため、ステンレス鋼板11の表面にクリヤ樹脂層13を形成するに際して焼付けを行っても、担持体中の有機防カビ剤が失活しにくく、充分な防カビ性を発現できる。
よって、本実施形態のクリヤ塗装ステンレス鋼板は防カビ性に優れる。
【0056】
特に、クリヤ樹脂層が抗菌剤を含んでいれば、抗菌性にも優れる。また、クリヤ樹脂層が撥水性樹脂をさらに含んでいれば、汚れ成分の固着が軽減されるので、防カビ性や抗菌性を長期間にわたって持続的に発現できる。
【0057】
「用途」
本実施形態のクリヤ塗装ステンレス鋼板は、家庭用や業務用の電化製品、電子機器製品の筐体や内装材、表装材として好適に使用される。
【0058】
「他の実施形態」
本発明のクリヤ塗装ステンレス鋼板は、上述したものに限定されない。例えば、上述した実施形態例では、ステンレス鋼板の片面のみにクリヤ樹脂層が形成されているが、ステンレス鋼板の両面にクリヤ樹脂層が形成されていてもよい。また、上述した実施形態例では、ステンレス鋼板とクリヤ樹脂層との間に化成処理塗膜を有しているが、化成処理塗膜を有していなくてもよい。
【0059】
また、上述した実施形態例では、クリヤ樹脂層は単層構造であるが、積層構造であってもよい。ただし、クリヤ樹脂層が積層構造の場合、少なくとも最上層に担持体が含まれていることが好ましい。クリヤ樹脂層が抗菌剤を含む場合は、少なくとも最上層に抗菌剤が含まれていることが好ましい。また、クリヤ樹脂層が撥水性樹脂を含む場合、最上層以外の層に撥水性樹脂が含まれていると、この層の上に形成される層の平滑性が低下する傾向にあり、表面外観が損なわれることがある。よって、撥水性樹脂は最上層のみに含まれることが好ましい。
【実施例】
【0060】
以下、実施例により本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0061】
「実施例1」
<クリヤ塗料の調製>
アクリル樹脂溶液(DIC株式会社製、「アクリディックA801−P」)と、イソシアネート樹脂溶液としてブロックタイプのイシシアネート樹脂溶液(住化バイエルウレタン株式会社製、「デスモジュールBL3575」、NCO基含有率10.5質量%)とを、アクリル樹脂溶液のヒドロキシル基(OH基)と、イソシアネート樹脂溶液のイソシアネート基(NCO基)との比が、当量比(モル当量比)でNCO基/OH基=1/1となるように混合し、混合物を得た。
得られた混合物と、撥水性樹脂としてシリコーングラフトアクリル樹脂(東亞合成株式会社製、「レゼダGS−1015」)と、多孔質シリカにジヨードメチルパラトリルスルホンが担持された担持体(株式会社エム・アイ・シー製、「PBM」)と、Ag系抗菌剤(株式会社シナネンゼオミック製、「ゼオミックAK」)とを、固形分換算で表1に示す値となるように混合し、熱硬化性樹脂組成物を含むクリヤ塗料を得た。
【0062】
<クリヤ塗装ステンレス鋼板の製造>
ステンレス鋼板としては、SUS430/No.4研磨仕上げ材を用いた。
このステンレス鋼板の一方の面に、アミノシラン系カップリング剤を含む化成処理液を、ロールコータにて、蛍光X線にて測定されるSiO
2が2〜10mg/m
2になるように塗装し、素材最高到達温度(PMT)が100℃になるよう乾燥させ、ステンレス鋼板の表面に化成処理塗膜を形成した。
次いで、化成処理塗膜の表面に、クリヤ塗料をバーコータにより塗布し、表面温度が224℃になるように焼付け、厚さ5μmのクリヤ樹脂層を成膜させて、クリヤ塗装ステンレス鋼板を得た。
得られたクリヤ塗装ステンレス鋼板について、以下の測定、評価方法に基づき、クリヤ樹脂層の水接触角を測定し、防カビ性および抗菌性を評価した。結果を表1に示す。
【0063】
<測定・評価>
(1)水接触角の測定
クリヤ樹脂層の表面に水を1滴(3μL)滴下し、1秒経過後の水接触角を、接触角計(協和界面科学株式会社製、「Drop Master M500」)を用いて測定した。
【0064】
(2)防カビ性の評価
JIS Z 2911:2000に準拠して防カビ性を評価した。具体的な条件および評価基準は以下の通りである。
<<条件>>
・胞子懸濁液:単一胞子懸濁液
・懸濁液滴下量:0.1mL
・保存温度:29±1℃(28〜30℃)
・保存日数:4週間
・カビ種:黒麹カビ(NBRC6341)
・予備殺菌方法:UVライト10分間照射
<<評価基準>>
0点:肉眼および顕微鏡下で、カビの発育が認められない。
1点:肉眼ではカビの発育が認められないが、顕微鏡下で確認できる。
2点:菌糸の発育が肉眼で認められるが、発育部分の面積はクリヤ樹脂層の表面の面積の25%未満である。
3点:菌糸の発育が肉眼で認められ、発育部分の面積はクリヤ樹脂層の表面の面積の25%以上である。
なお、0点の場合、クリヤ樹脂層はカビの栄養源とはならないと判断される。1点の場合、クリヤ樹脂層はカビをわずかに発育させる程度の栄養源となる物質を含むか、汚染されていると判断される。2点または3点の場合、クリヤ樹脂層はカビに対して抵抗力がなく、カビの発育に適当な栄養源を含むと判断される。
【0065】
(3)抗菌性の評価
JIS Z 2801:2011に準拠して抗菌性を評価した。
具体的には、菌種として黄色ブドウ球菌または大腸菌を用い、普通ブイヨン培地が500倍に希釈され、菌数が1×10
5個/mLとなるように箘液を調製した。
次いで、クリヤ塗装ステンレス鋼板のクリヤ樹脂層の表面に箘液を接種し、次いでポリエチレンフィルムを被せて密着させた状態で、温度35℃、湿度90%の条件で24時間培養した。培養後のコロニー数をカウントして生菌数を求め、下記式より抗菌活性値を算出した。抗菌活性値が2.0以上(すなわち、99%以上の死滅率)であれば抗菌効果があると判断される。
抗菌活性値=log(比較例1の生菌数/比較例1以外の例の生菌数)
【0066】
「実施例2〜5」
混合物と、撥水性樹脂と、担持体と、Ag系抗菌剤の配合組成が固形分換算で表1に示す値となるように変更した以外は、実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を含むクリヤ塗料を調製し、得られたクリヤ塗料を用いてクリヤ塗装ステンレス鋼板を製造し、各種測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0067】
「実施例6」
混合物と、撥水性樹脂と、アミノ樹脂と、担持体と、Ag系抗菌剤の配合組成が固形分換算で表1に示す値となるように変更した以外は、実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を含むクリヤ塗料を調製し、得られたクリヤ塗料を用いてクリヤ塗装ステンレス鋼板を製造し、各種測定および評価を行った。結果を表1に示す。
なお、アミノ樹脂としてメチル化メラミン樹脂溶液(三井サイテック株式会社製、「サイメル303」)を用いた。
【0068】
「実施例7」
混合物と、撥水性樹脂と、担持体と、Ag系抗菌剤と、親水化剤の配合組成が固形分換算で表1に示す値となるように変更した以外は、実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を含むクリヤ塗料を調製し、得られたクリヤ塗料を用いてクリヤ塗装ステンレス鋼板を製造し、各種測定および評価を行った。結果を表1に示す。
なお、親水化剤としてシリケートオリゴマー(コルコート株式会社製、「EMS−485」)を用いた。
【0069】
「比較例1、2」
混合物と、撥水性樹脂と、担持体と、Ag系抗菌剤の配合組成が固形分換算で表2に示す値となるように変更した以外は、実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を含むクリヤ塗料を調製し、得られたクリヤ塗料を用いてクリヤ塗装ステンレス鋼板を製造し、各種測定および評価を行った。結果を表2に示す。
【0070】
「比較例3〜6」
担持体の代わりに、有機防カビ剤、または有機防カビ剤および無機化合物を用い、これらと、混合物と、撥水性樹脂と、Ag系抗菌剤の配合組成が固形分換算で表2に示す値となるように変更した以外は、実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を含むクリヤ塗料を調製し、得られたクリヤ塗料を用いてクリヤ塗装ステンレス鋼板を製造し、各種測定および評価を行った。結果を表2に示す。
なお、有機防カビ剤としてジヨードメチルパラトリルスルホンを用い、無機化合物として多孔質シリカを用いた。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
表1の結果より、各実施例で得られたクリヤ塗装ステンレス鋼板は、防カビ性および抗菌性に優れていた。
一方、表2の結果より、担持体を用いなかった比較例1のクリヤ塗装ステンレス鋼板は、防カビ性に劣っていた。
担持体の量が0.2質量%である比較例2のクリヤ塗装ステンレス鋼板は、防カビ性に劣っていた。また、黄色ブドウ球菌に対する抗菌性にも劣っていた。
無機担体に担持されていない有機防カビ剤を用いた比較例3〜6のクリヤ塗装ステンレス鋼板は、防カビ性に劣っていた。