特許第6956911号(P6956911)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6956911
(24)【登録日】2021年10月7日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】帯電防止剤
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/16 20060101AFI20211021BHJP
   C08K 5/42 20060101ALI20211021BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20211021BHJP
【FI】
   C09K3/16 113
   C09K3/16 108D
   C09K3/16 106A
   C09K3/16 102J
   C09K3/16 102L
   C09K3/16 102K
   C08K5/42
   C08L101/00
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2021-101264(P2021-101264)
(22)【出願日】2021年6月18日
【審査請求日】2021年6月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】杉本 佑子
(72)【発明者】
【氏名】冨士田 真市
【審査官】 中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−94432(JP,A)
【文献】 特開2003−34748(JP,A)
【文献】 特開2013−136724(JP,A)
【文献】 特開2010−196050(JP,A)
【文献】 特表2002−543230(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/008507(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K3/16
C08K3/00−13/08
C08L1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性ポリマー(a)のブロックと親水性ポリマー(b)のブロックとを構成単位として有するブロックポリマー(A)と、分岐型アルキル(アルキルの炭素数6〜18)ベンゼンスルホン酸塩(S)とを含有してなる帯電防止剤(Z)。
【請求項2】
前記疎水性ポリマー(a)が、ポリアミド(a1)、 ポリオレフィン(a2)、及びポリエステル(a3)からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の帯電防止剤。
【請求項3】
前記親水性ポリマー(b)が、ポリエーテル(b1)である請求項1又は2記載の帯電防止剤。
【請求項4】
前記分岐型アルキル(アルキルの炭素数6〜18)ベンゼンスルホン酸塩(S)を構成するカチオンが、イミダゾリウム又はナトリウムである請求項1〜3のいずれか記載の帯電防止剤。
【請求項5】
前記ブロックポリマー(A)と分岐型アルキル(アルキルの炭素数6〜18)ベンゼンスルホン酸塩(S)との重量比[(A)/(S)]が90/10〜99/1である請求項1〜4のいずれか記載の帯電防止剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか記載の帯電防止剤(Z)と、熱可塑性樹脂(E)とを含有してなる帯電防止性樹脂組成物(Y)。
【請求項7】
前記帯電防止剤(Z)と熱可塑性樹脂(E)との重量比[(Z)/(E)]が3/97〜20/80である請求項6記載の帯電防止性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の帯電防止性樹脂組成物(Y)を成形してなる成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁性の高い熱可塑性樹脂に帯電防止性を付与する方法として帯電防止剤を用いることが一般的である。帯電防止剤を用いて帯電防止性を付与する方法としては、高分子型帯電防止剤であるポリエーテルエステルアミド(例えば、特許文献1参照)を樹脂中に少量練り込む方法が知られている。
しかしながら、上記の高分子型帯電防止剤を練り込む方法においても、帯電防止性について十分に満足できるとは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−12755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、熱可塑性樹脂に優れた帯電防止性を付与する帯電防止剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、疎水性ポリマー(a)のブロックと親水性ポリマー(b)のブロックとを構成単位として有するブロックポリマー(A)と、分岐型アルキル(アルキルの炭素数6〜18)ベンゼンスルホン酸塩(S)とを含有してなる帯電防止剤(Z)である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の帯電防止剤(Z)は、以下の効果を奏する。
(1)優れた帯電防止性を付与する。
(2)成形品に優れた機械的強度(機械物性)を付与する。
(3)成形時の連続成形性(脱型性)に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<疎水性ポリマー(a)>
本発明における疎水性ポリマー(a)としては、例えば、ポリアミド(a1)、ポリオレフィン(a2)、ポリエステル(a3)が挙げられる。
上記疎水性ポリマー(a)のうち、帯電防止性の観点から、好ましいのはポリアミド(a1)、ポリオレフィン(a2)、ポリエステル(a3)、さらに好ましいのはポリアミド(a1)、ポリオレフィン(a2)、とくに好ましいのはポリオレフィン(a2)である。
本発明における疎水性ポリマー(a)は、好ましくは1×1011Ω・cmを超える体積固有抵抗値を有するポリマーである。
なお、本発明における体積固有抵抗値は、ASTM D257(1984年)に準拠し、23℃、50%RHの雰囲気下で測定して得られた数値のことである。
上記(a)は、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0008】
<ポリアミド(a1)>
本発明におけるポリアミド(a1)は、アミド形成性モノマー(a10)を開環重合又は重縮合したものが挙げられる。
アミド形成性モノマー(a10)としては、ラクタム(a101)、アミノカルボン酸(a102)が挙げられる。また、ジアミン(a103)とジカルボン酸(a104)の組み合わせをアミド形成性モノマー(a10)としてもよい。
具体的には、ポリアミド(a1)としては、ラクタム(a101)、アミノカルボン酸(a102)を開環重合又は重縮合したもの、及びジアミン(a103)とジカルボン酸(a104)との重縮合物等が挙げられる。
【0009】
ラクタム(a101)としては、炭素数[以下、Cと略記することがある]4〜20のラクタム(γ−ラクタム、δ−ラクタム、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタム、ω−ラウロラクタム及びウンデカノラクタム等)等が挙げられる。
ラクタム(a101)の開環重合体としては、例えばナイロン4、ナイロン5、ナイロン6、ナイロン7、ナイロン8、ナイロン11及びナイロン12が挙げられる。
【0010】
アミノカルボン酸(a102)としては、C6〜12のアミノカルボン酸(例えばω−アミノカプロン酸、ω−アミノエナント酸、ω−アミノカプリル酸、ω−アミノペラルゴン酸、ω−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸及びこれらの混合物等)等が挙げられる。
【0011】
ジアミン(a103)としては、C2〜40のジアミン、例えば脂肪族、脂環式及び芳香(脂肪)族ジアミン、並びにこれらの混合物が挙げられる。
脂肪族ジアミンとしてはC2〜40の脂肪族ジアミン(例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,18−オクタデカンジアミン及び1,20−エイコサンジアミン等)等が挙げられる。
脂環式ジアミンとしては、C5〜40の脂環式ジアミン(例えば1,3−又は1,4−シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’−ジアミノシクロヘキシルメタン及び2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン等)等が挙げられる。
芳香族ジアミンとしては、C6〜40の芳香族ジアミン(例えばp−フェニレンジアミン、2,4−又は2,6−トルイレンジアミン及び2,2−ビス(4,4’−ジアミノフェニル)プロパン等)等が挙げられる。
芳香脂肪族ジアミンとしては、C7〜20の芳香脂肪族ジアミン(例えばキシリレンジアミン、ビス(アミノエチル)ベンゼン、ビス(アミノプロピル)ベンゼン及びビス(アミノブチル)ベンゼン等)等が挙げられる。
【0012】
ジカルボン酸(a104)としては、C2〜40のジカルボン酸、例えば脂肪族ジカルボン酸、芳香環含有ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、これらのジカルボン酸の誘導体〔例えば酸無水物、低級(C1〜4)アルキルエステル及びジカルボン酸塩[例えば、アルカリ金属塩(例えばリチウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩)]〕及びこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
【0013】
脂肪族ジカルボン酸としては、C2〜40(帯電防止性の観点から好ましくはC4〜20、さらに好ましくはC6〜12)の脂肪族ジカルボン酸(例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸等)等が挙げられる。
芳香環含有ジカルボン酸としてはC8〜40(帯電防止性の観点から好ましくはC8〜16、さらに好ましくはC8〜14)の芳香環含有ジカルボン酸(例えばオルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−又は2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、トリレンジカルボン酸、キシリレンジカルボン酸及び5−スルホイソフタル酸アルカリ金属(上記に同じ)塩等)等が挙げられる。
脂環式ジカルボン酸としては、C5〜40(帯電防止性の観点から好ましくはC6〜18、さらに好ましくはC8〜14)の脂環式ジカルボン酸(例えばシクロプロパンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキセンジカルボン酸、ジシクロヘキシル−4,4’−ジカルボン酸及びショウノウ酸等)等が挙げられる。
【0014】
上記アミド形成性モノマー(a10)のうち、帯電防止性の観点から好ましいのはε−カプロラクタム、12−アミノドデカン酸であり、また、アジピン酸とヘキサメチレンジアミンを組み合わせてアミド形成性モノマー(a10)とすることも好ましい。
【0015】
ポリアミド(a1)の製造法としては、分子量調整剤の存在下に上記アミド形成性モノマー(a10)を開環重合あるいは重縮合させる方法等が挙げられる。分子量調整剤としては、ジアミン又はジカルボン酸の何れかを用いることができる。ジアミン、ジカルボン酸としては、それぞれ上記ジアミン(a103)(C2〜40、好ましくはC4〜20)、上記ジカルボン酸(a104)(C2〜40、好ましくはC4〜20)として上述した化合物を、1種又は2種以上用いることができる。
【0016】
上記分子量調整剤の使用量は、アミド形成性モノマー(a10)と分子量調整剤との合計重量に基づいて、帯電防止性の観点から、好ましくは2〜80重量%、さらに好ましくは4〜75重量%である。
【0017】
ポリアミド(a1)の数平均分子量[以下、Mnと略記。測定はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による。]は、帯電防止性及び成形性の観点から、好ましくは200〜5,000、さらに好ましくは500〜4,000、とくに好ましくは800〜3,000である。
【0018】
本発明におけるポリマーの数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定することができる。
・装置(一例) :「HLC−8120」[東ソー(株)製]
・カラム(一例):「TSKgelGMHXL」[東ソー(株)製](2本)
「TSKgelMultiporeHXL−M」[東ソー(株)製](1本)
・試料溶液:0.3重量%のオルトジクロロベンゼン溶液
・溶液注入量:100μl
・流量:1ml/分
・測定温度:135℃
・検出装置:屈折率検出器
・基準物質:標準ポリスチレン(TSKstandardPOLYSTYRENE)12点(分子量:500、1,050、2,800、5,970、9,100、18,100、37,900、96,400、190,000、355,000、1,090,000、2,890,000)[東ソー(株)製]
【0019】
<ポリオレフィン(a2)>
本発明におけるポリオレフィン(a2)は、好ましくは反応性基を有するポリオレフィンである。ポリオレフィン(a2)としては、例えば、反応性基を両末端に有するポリオレフィン(a21)及び反応性基を片末端に有するポリオレフィン(a22)が挙げられる。
なお、反応性基とは、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、水酸基、アミノ基及びイソシアネート基を指す。
【0020】
<反応性基を両末端に有するポリオレフィン(a21)>
(a21)としては、カルボキシル基又はカルボン酸無水物基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(a21−1)、水酸基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(a21−2)、アミノ基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(a21−3)及びイソシアネート基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(a21−4)等が挙げられる。これらの内で、変性の容易さ及び成形時の耐熱性の観点から好ましいのは(a21−1)である。
尚、本発明における末端とは、ポリマーを構成するモノマー単位の繰り返し構造が途切れる終端部を意味する。また、両末端とは、ポリマーの主鎖における両方の末端を意味する。
【0021】
(a21)は、例えば、両末端が変性可能なポリオレフィンを主成分とするポリオレフィン(a21−0)の両末端に、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、水酸基、アミノ基又はイソシアネート基を導入することによって得ることができる。
なお、「主成分」とは、ポリオレフィン全体の重量に占める両末端が変性可能なポリオレフィンの重量が、ポリオレフィン全体の重量の50重量%以上であることを意味する。
ただし、両末端が変性可能なポリオレフィンの重量がポリオレフィン全体の重量の50重量%未満であっても、両末端が変性可能なポリオレフィンの重量と、後述する片末端が変性可能なポリオレフィンの重量の合計がポリオレフィン全体の重量の50重量%以上であり、両末端が変性可能なポリオレフィンの重量が片末端が変性可能なポリオレフィンの重量以上である場合には、(a21−0)であるとする。
【0022】
(a21−0)には、炭素数2〜30(好ましくは2〜12、更に好ましくは2〜10)のオレフィンの1種又は2種以上の混合物の(共)重合によって得られ、プロピレンに由来する構成単位をポリオレフィン中に30モル%以上含有するポリオレフィン及び減成されたポリオレフィン{高分子量[好ましくは数平均分子量(以下Mnと略記)10,000〜150,000]のポリオレフィンを機械的、熱的又は化学的に減成してなるもの}が含まれる。なお、(共)重合は、重合又は共重合を意味する。
【0023】
これらの内、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、水酸基、アミノ基又はイソシアネート基を導入する際の変性のし易さ及び入手のし易さの観点から好ましいのは、減成されたポリオレフィンであり、更に好ましいのは熱減成されたポリオレフィンである。熱減成によれば、後述の通り1分子当たりの末端二重結合数が1〜2個の低分子量ポリオレフィンが容易に得られ、上記低分子量ポリオレフィンはカルボキシル基、カルボン酸無水物基、水酸基、アミノ基又はイソシアネート基等を導入して変性することが容易である。
【0024】
熱減成されたポリオレフィンとしては、例えば、高分子量ポリオレフィンを、不活性ガス中で加熱して得られたもの(300〜450℃で0.5〜10時間、例えば特開平3−62804号公報に記載の方法で得られたもの)及び空気中で加熱することにより熱減成されたもの等が挙げられる。
【0025】
熱減成法に用いられる高分子量ポリオレフィンとしては、炭素数2〜30(好ましくは2〜12、更に好ましくは2〜10)のオレフィンの1種又は2種以上の混合物の(共)重合体[Mnは好ましくは10,000〜150,000、更に好ましくは15,000〜70,000:メルトフローレート(以下MFRと略記:単位はg/10min)は好ましくは0.5〜150、更に好ましくは1〜100]であって、プロピレンに由来する構成単位をポリオレフィン中に30モル%以上有するもの等が挙げられる。ここでMFRとは、樹脂の溶融粘度を表す数値であり、数値が大きいほど溶融粘度が低いことを表す。MFRの測定は、JIS K7210−1(2014)で規定した方法に準拠する。例えばポリプロピレンの場合は、230℃、荷重2.16kgfの条件で測定される。
炭素数2〜30のオレフィンとしては、炭素数2〜30のα−オレフィン及び炭素数4〜30のジエンが挙げられる。
【0026】
炭素数2〜30のα−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−イコセン及び1−テトラコセン等が挙げられる。
炭素数4〜30のジエンとしては、ブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエン及び1,11−ドデカジエン等が挙げられる。
炭素数2〜30のオレフィンの内、分子量制御の観点から好ましいのは、炭素数2〜12のα−オレフィン、ブタジエン、イソプレン及びこれらの混合物であり、更に好ましいのは、炭素数2〜10のα−オレフィン、ブタジエン及びこれらの混合物であり、特に好ましいのは、炭素数2〜3のα−オレフィンであるエチレン及びプロピレン並びにこれらの混合物である。
【0027】
<反応性基を片末端に有するポリオレフィン(a22)>
(a2)としては、カルボキシル基又はカルボン酸無水物基をポリマーの片末端に有するポリオレフィン(a22−1)、水酸基をポリマーの片末端に有するポリオレフィン(a22−2)、アミノ基をポリマーの片末端に有するポリオレフィン(a2−3)、イソシアネート基をポリマーの片末端に有するポリオレフィン(a22−4)及びカルボキシル基及び水酸基の両方をポリマーの片末端に有するポリオレフィン(a22−5)等が挙げられる。
これらの内で、変性の容易さ及び成形時の耐熱性の観点から好ましいのは、(a22−1)である。
尚、片末端とは、ポリマーの主鎖におけるいずれか一方の末端を意味する。
【0028】
(a22)は、例えば、片末端が変性可能なポリオレフィンを主成分とするポリオレフィン(a22−0)に、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、水酸基、アミノ基又はイソシアネート基を導入することによって得ることができる。
なお、「主成分」とは、ポリオレフィン全体の重量に占める片末端が変性可能なポリオレフィンの重量が、ポリオレフィン全体の重量の50重量%以上であることを意味する。
ただし、片末端が変性可能なポリオレフィンの重量がポリオレフィン全体の重量の50重量%未満であっても、片末端が変性可能なポリオレフィンの重量と、上述した両末端が変性可能なポリオレフィンの重量の合計がポリオレフィン全体の重量の50重量%以上であり、片末端が変性可能なポリオレフィンの重量が両末端が変性可能なポリオレフィンの重量よりも多い場合には、(a22−0)であるとする。
【0029】
(a22−0)は、(a21−0)と同様にして得ることができる。
【0030】
(a21−0)及び(a22−0)は、一般的にこれらの混合物として得られるが、混合物をそのまま使用してもよく、精製分離してから使用してもよい。これらの内、製造コスト等の観点から好ましいのは、混合物である。
【0031】
以下、(a21−0)の両末端にカルボキシル基、カルボン酸無水物基、水酸基、アミノ基又はイソシアネート基を有する(a21−1)〜(a21−4)について説明するが、(a22−0)の片末端にこれらの基を有する(a22−1)〜(a22−4)については、(a21−0)を(a22−0)に置き換えたものについて、(a21−1)〜(a21−4)と同様にして得ることができる。また、好ましいものについても(a21)と(a22)とは、同様である。
【0032】
(a21−1)としては、(a21−0)の末端をα,β−不飽和カルボン酸(無水物)で変性した構造を有するポリオレフィン(a21−1−1)、(a21−1−1)をラクタム又はアミノカルボン酸で二次変性した構造を有するポリオレフィン(a21−1−2)、(a21−0)を酸化又はヒドロホルミル化により変性した構造を有するポリオレフィン(a21−1−3)、(a21−1−3)をラクタム又はアミノカルボン酸で二次変性した構造を有するポリオレフィン(a21−1−4)及びこれらの2種以上の混合物等が使用できる。
なお、α,β−不飽和カルボン酸(無水物)は、α,β−不飽和カルボン酸又はその無水物を意味する。
【0033】
(a21−1−1)は、(a21−0)をα,β−不飽和カルボン酸(無水物)で変性することにより得ることができる。
変性に用いられるα,β−不飽和カルボン酸(無水物)としては、モノカルボン酸、ジカルボン酸及びモノ又はジカルボン酸の無水物が挙げられ、具体的には(メタ)アクリル酸、マレイン酸(無水物)、フマル酸、イタコン酸(無水物)及びシトラコン酸(無水物)等が挙げられる。
これらの内、変性の容易さの観点から、好ましいのはモノ又はジカルボン酸の無水物及びジカルボン酸であり、さらに好ましいのはマレイン酸(無水物)及びフマル酸であり、とくに好ましいのはマレイン酸(無水物)である。
なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又はメタアクリル酸を意味する。
【0034】
(a21−1−2)は、(a21−1−1)を前記ラクタム又はアミノカルボン酸で二次変性することにより得ることができる。
【0035】
(a21−1−3)は、(a21−0)を酸素及び/又はオゾンにより酸化する方法(酸化法)、又はオキソ法によるヒドロホルミル化によりカルボキシル基を導入することにより得ることができる。
酸化法によるカルボキシル基の導入は、公知の方法、例えば米国特許第3,692,877号明細書記載の方法で行うことができる。ヒドロホルミル化によるカルボキシル基の導入は、公知の方法を含む種々の方法、例えば、Macromolecules、VOl.31、5943頁記載の方法で行うことができる。
(a21−1−4)は、(a21−1−3)をラクタム又はアミノカルボン酸で二次変性することにより得ることができる。
【0036】
(a21−1)の酸価は、親水性ポリマー(b)との反応性の観点から、好ましくは4〜100mgKOH/g、さらに好ましくは4〜50mgKOH/g、とくに好ましくは5〜30mgKOH/gである。
【0037】
(a21−2)としては、(a21−1)を、水酸基を有するアミンで変性したヒドロキシル基を有するポリオレフィン及びこれらの2種以上の混合物が使用できる。
変性に使用できる水酸基を有するアミンとしては、炭素数2〜10の水酸基を有するアミンが挙げられ、具体的には2−アミノエタノール、3−アミノプロパノール、1−アミノ−2−プロパノール、4−アミノブタノール、5−アミノペンタノール、6−アミノヘキサノール及び3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサノール等が挙げられる。
【0038】
(a21−2)の水酸基価は、親水性ポリマー(b)との反応性の観点から、好ましくは4〜100mgKOH/gであり、さらに好ましくは4〜50mgKOH/g、とくに好ましくは5〜30mgKOH/gである。
【0039】
(a21−3)としては、(a21−1)を、ジアミンで変性したアミノ基を有するポリオレフィン及びこれらの2種以上の混合物が使用できる。
ジアミンとしては、炭素数2〜12のジアミン等が使用でき、具体的には、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン及びデカメチレンジアミン等が挙げられる。
これらの内、変性の容易さの観点から好ましいのは、炭素数2〜8のジアミン(エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン及びオクタメチレンジアミン等)であり、更に好ましいのはエチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミン、特に好ましいのはエチレンジアミンである。
【0040】
(a21−3)のアミン価は、親水性ポリマー(b)との反応性の観点から、好ましくは4〜100mgKOH/gであり、更に好ましくは4〜50mgKOH/g、特に好ましくは5〜30mgKOH/gである。
【0041】
(a21−4)としては、(a21−2)をポリ(2〜3又はそれ以上)イソシアネートで変性したイソシアネート基を有するポリオレフィン及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、炭素数(イソシアネート基中の炭素原子を除く。以下同様。)6〜20の芳香族ポリイソシアネート、炭素数2〜18の脂肪族ポリイソシアネート、炭素数4〜15の脂環式ポリイソシアネート、炭素数8〜15の芳香脂肪族ポリイソシアネート、これらのポリイソシアネートの変性体及びこれらの2種以上の混合物が含まれる。
【0042】
(a22−5)としては、(a22−0)の片末端をα,β−不飽和カルボン酸無水物で変性した構造を有するポリオレフィンを、さらにジオールアミンで二次変性した構造を有するポリオレフィン(a22−5−1)が使用できる。
二次変性に用いるジオールアミンとしては、例えば、ジエタノールアミンが挙げられる。
【0043】
(a21)及び(a22)のMnは、帯電防止性の観点から、それぞれ、好ましくは1,000〜25,000であり、さらに好ましくは1,500〜12,000、とくに好ましくは2,000〜7,000である。
【0044】
<ポリエステル(a3)>
本発明におけるポリエステル(a3)は、例えば、ジオール(a31)とジカルボン酸(a32)とを構成単量体とするポリマーである。
【0045】
前記ジオール(a31)としては、脂肪族ジオール(a311)、芳香族基含有ジオール(a312)が挙げられる。
前記ジカルボン酸(a32)としては、脂肪族ジカルボン酸(a321)、芳香族ジカルボン酸(a322)が挙げられる。
なお、ジオールは(a31)、1種単独でも、2種以上の混合物でもよい。
【0046】
脂肪族ジオール(a311)としては、例えば、1,2−エタンジオール(エチレングリコール)、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、1,2−、1,3−または1,4−シクロヘキサンジオール、シクロドデカンジオール、ダイマージオール、水添ダイマージオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコールが挙げられる。
【0047】
芳香族基含有ジオール(a312)としては、例えば、ビスフェノールA、1,2−ヒドロキシベンゼン、1,3−ヒドロキシベンゼン、1,4−ヒドロキシベンゼン、1,4−ベンゼンジメタノールが挙げられる。
【0048】
脂肪族ジカルボン酸(a321)としては、例えば、炭素数2〜20(好ましくは4〜16)のもの、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸が挙げられる。
なお、(a321)は、上記のアルキルエステル、酸ハライドを使用してもよい。
【0049】
芳香族ジカルボン酸(a322)としては、例えば、炭素原子数8〜20のもの、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、フェニルマロン酸、ホモフタル酸、フェニルコハク酸、β−フェニルグルタル酸、α−フェニルアジピン酸、β−フェニルアジピン酸、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。
なお、(a322)は、上記のアルキルエステル、酸ハライドを使用してもよい。
【0050】
ポリエステル(a3)の数平均分子量[以下、Mnと略記。測定はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による。]は、帯電防止性及び成形性の観点から、好ましくは800〜8,000、さらに好ましくは1,000〜6,000、とくに好ましくは2,000〜4,000である。
【0051】
<親水性ポリマー(b)>
本発明における親水性ポリマー(b)としては、特許第3488163号に記載の親水性ポリマーが挙げられ、具体的には、ポリエーテル(b1)、ポリエーテル含有親水性ポリマー(b2)等が挙げられる。帯電防止性及び樹脂物性の観点から望ましいのはポリエーテル(b1)である。
なお、本発明における親水性ポリマー(b)は、好ましくは1×1011Ω・cm以下の体積固有抵抗値を有するポリマーである。
【0052】
ポリエーテル(b1)としては、ポリエーテルジオール(b1−1)、ポリエーテルジアミン(b1−2)及びこれらの変性物(b1−3)が挙げられる。
ポリエーテルジオール(b1−1)としては、ジオール(b0)にアルキレンオキサイド(以下AOと略記する。)を付加反応させることにより得られるものが挙げられ、具体的には一般式(1)で表されるものが挙げられる。
H−(OR−O−E−O−(RO)−H (1)
一般式(1)におけるEは、ジオール(b0)からすべての水酸基を除いた残基である。
一般式(1)におけるR及びRは、それぞれ独立に炭素数2〜4のアルキレン基、炭素数5〜12のアルキレン基、スチレン基及びクロロメチル基である。炭素数2〜4のアルキレン基としては、エチレン基、1,2−又は1,3−プロピレン基及び1,2−、1,3−、1,4−又は2,3−ブチレン基等が挙げられる。
一般式(1)におけるa及びbは、(OR)及び(RO)の平均付加モル数であり、それぞれ独立に1〜300であり、好ましくは2〜250、更に好ましくは10〜100である。
一般式(1)におけるa、bがそれぞれ2以上の場合のR、Rは、同一でも異なっていてもよく、(OR、(RO)部分はランダム結合でもブロック結合でもよい。
【0053】
ジオール(b0)としては、炭素数2〜12の脂肪族2価アルコール、炭素数5〜12の脂環式2価アルコール、炭素数6〜18の芳香族2価アルコール、及び、3級アミノ基含有ジオール等が挙げられる。
【0054】
炭素数2〜12の脂肪族2価アルコールとしては、エチレングリコール(以下EGと略記する。)、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール及び1,12−ドデカンジオールが挙げられる。
炭素数5〜12の脂環式2価アルコールとしては、1,4−ジ(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン及び1,5−ジ(ヒドロキシメチル)シクロヘプタン等が挙げられる。
炭素数6〜18の芳香族2価アルコールとしては、単環芳香族2価アルコール(キシリレンジオール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン及びウルシオール等)及び多環芳香族2価アルコール(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−ブタン、ジヒドロキシビフェニル、ジヒドロキシナフタレン及びビナフトール等)等が挙げられる。
【0055】
3級アミノ基含有ジオールとしては、炭素数1〜12の脂肪族又は脂環式1級アミン(メチルアミン、エチルアミン、シクロプロピルアミン、1−プロピルアミン、2−プロピルアミン、ペンチルアミン、イソペンチルアミン、シクロペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン及びドデシルアミン等)のビスヒドロキシアルキル化物及び炭素数6〜12の芳香族1級アミン(アニリン及びベンジルアミン等)のビスヒドロキシアルキル化物が挙げられる。
これらのうち、ビスヒドロキシアルキル化物との反応性の観点からジオール(b0)として好ましいのは、炭素数2〜12の脂肪族2価アルコール及び炭素数6〜18の芳香族2価アルコールであり、更に好ましいのはEG及びビスフェノールAである。
【0056】
ポリエーテルジオール(b1−1)は、ジオール(b0)にAOを付加反応させることにより製造することができる。
AOとしては、炭素数2〜4のAO[エチレンオキサイド(以下EOと略記する。)、1,2−又は1,3−プロピレンオキサイド、1,2−、1,3−、1,4−又は2,3−ブチレンオキサイド、及びこれらの2種以上の併用系が用いられるが、必要により他のAO[炭素数5〜12のα−オレフィンオキサイド、スチレンオキサイド及びエピハロヒドリン(エピクロルヒドリン等)等]を少しの割合(AOの全重量に基づいて30重量%以下)で併用することもできる。
2種以上のAOを併用するときの結合形式は、ランダム結合、ブロック結合のいずれでもよい。AOとして好ましいのは、EO単独及びEOと他のAOとの併用である。
【0057】
AOの付加反応は、公知の方法、例えばアルカリ触媒の存在下、100〜200℃の温度で行うことができる。
一般式(1)で表されるポリエーテルジオール(b1−1)の重量に基づく、(OR)a及び(RO)の含有率は、好ましくは5〜99.8重量%であり、更に好ましくは8〜99.6重量%、特に好ましくは10〜98重量%である。
一般式(1)における(OR及び(RO)の重量に基づくオキシエチレン基の含有率は、好ましくは5〜100重量%であり、更に好ましくは10〜100重量%、特に好ましくは50〜100重量%、最も好ましくは60〜100重量%である。
ポリエーテルジオール(b1−1)としては、ビスフェノールAのEO付加物、及び、ポリエチレングリコールが好ましい。
【0058】
ポリエーテルジアミン(b1−2)としては、一般式(2)で表されるものが挙げられる。
N−R−(OR−O−E−O−(RO)−R−NH (2)
一般式(2)におけるEは、ジオール(b0)からすべての水酸基を除いた残基である。
ジオール(b0)としては、上記ポリエーテルジオール(b1−1)について例示したものと同様のものが挙げられ、好ましい範囲も同様である。
一般式(2)におけるR、R、R及びRは、それぞれ独立に炭素数2〜4のアルキレン基、炭素数5〜12のアルキレン基、スチレン基及びクロロメチル基である。炭素数2〜4のアルキレン基としては、一般式(1)におけるR及びRとして例示したものと同様のものが挙げられる。
一般式(2)におけるc及びdは、(OR)及び(RO)の平均付加モル数であり、それぞれ独立に1〜300であり、好ましくは2〜250、更に好ましくは10〜100である。
一般式(2)におけるc、dがそれぞれ2以上の場合のR、Rは、同一でも異なっていてもよく、(OR、(RO)部分はランダム結合でもブロック結合でもよい。
【0059】
ポリエーテルジアミン(b1−2)は、ポリエーテルジオール(b1−1)が有するすべての水酸基を、アルキルアミノ基に変換することにより得ることができる。例えばポリエーテルジオール(b1−1)とアクリロニトリルとを反応させ、得られたシアノエチル化物を水素添加することにより製造することができる。
【0060】
変性物(b1−3)としては、ポリエーテルジオール(b1−1)又はポリエーテルジアミン(b1−2)のアミノカルボン酸変性物(末端アミノ基)、イソシアネート変性物(末端イソシアネート基)及びエポキシ変性物(末端エポキシ基)等が挙げられる。
アミノカルボン酸変性物は、ポリエーテルジオール(b1−1)又はポリエーテルジアミン(b1−2)と、アミノカルボン酸又はラクタムとを反応させることにより得ることができる。
イソシアネート変性物は、ポリエーテルジオール(b1−1)又はポリエーテルジアミン(b1−2)と、ポリイソシアネートとを反応させるか、ポリエーテルジアミン(b1−2)とホスゲンとを反応させることにより得ることができる。
エポキシ変性物は、ポリエーテルジオール(b1−1)又はポリエーテルジアミン(b1−2)と、ジエポキシド(ジグリシジルエーテル、ジグリシジルエステル及び脂環式ジエポキシド等のエポキシ樹脂:エポキシ当量85〜600)とを反応させるか、ポリエーテルジオール(b1−1)とエピハロヒドリン(エピクロロヒドリン等)とを反応させることにより得ることができる。
【0061】
親水性ポリマー(b)のMnは、耐熱性及び疎水性ポリマー(a)との反応性の観点から、好ましくは150〜20,000であり、更に好ましくは300〜18,000、特に好ましくは1,000〜15,000、最も好ましくは1,200〜8,000である。
【0062】
<ブロックポリマー(A)>
本発明の帯電防止剤(Z)におけるブロックポリマー(A)は、上記疎水性ポリマー(a)のブロックと親水性ポリマー(b)のブロックとを構成単位として有する。ブロックポリマー(A)を構成する疎水性ポリマー(a)及び親水性ポリマー(b)は、それぞれ1種又は2種以上であってもよい。
【0063】
ブロックポリマー(A)を構成する疎水性ポリマー(a)のブロックと、親水性ポリマー(b)のブロックの重量比[疎水性ポリマー(a)/親水性ポリマー(b)]は、帯電防止性及び耐水性の観点から、好ましくは10/90〜80/20であり、更に好ましくは20/80〜75/25である。
【0064】
ブロックポリマー(A)を構成する疎水性ポリマー(a)のブロックと、親水性ポリマー(b)のブロックとが結合した構造には、(a)−(b)型、(a)−(b)−(a)型、(b)−(a)−(b)型及び[(a)−(b)]n型(nは平均繰り返し数を表す。)が含まれる。
ブロックポリマー(A)の構造としては、導電性の観点から疎水性ポリマー(a)と親水性ポリマー(b)とが繰り返し交互に結合した[(a)−(b)]n型のものが好ましい。
[(a)−(b)]n型の構造におけるnは、帯電防止性及び機械的強度(機械物性)の観点から、好ましくは2〜50であり、更に好ましくは2.3〜30、特に好ましくは2.7〜20、最も好ましくは3〜10である。nは、ブロックポリマー(A)のMn及びH−NMR分析により求めることができる。
【0065】
ブロックポリマー(A)のMnは、後述する成形品の機械的強度(機械物性)及び帯電防止性の観点から、好ましくは2,000〜100,000、さらに好ましくは5,000〜60,000、特に好ましくは10,000〜40,000である。
【0066】
ブロックポリマー(A)が、疎水性ポリマー(a)のブロックと親水性ポリマー(b)のブロックとが、エステル結合、アミド結合、エーテル結合又はイミド結合を介して結合した構造を有するものである場合、下記の方法で製造することができる。
上記結合のうち、工業的な観点から、好ましいのは、エステル結合、アミド結合である。
【0067】
疎水性ポリマー(a)と親水性ポリマー(b)を反応容器に投入し、撹拌下、反応温度100〜250℃、圧力0.003〜0.1MPaで、アミド化反応、エステル化反応又はイミド化反応で生成する水(以下生成水と略記する。)を反応系外に除去しながら、1〜50時間反応させる方法が挙げられる。反応に用いる疎水性ポリマー(a)と親水性ポリマー(b)の重量比[疎水性ポリマー(a)/親水性ポリマー(b)]は、帯電防止性及び耐水性の観点から、10/90〜80/20であり、更に好ましくは20/80〜75/25である。
エステル化反応の場合、反応を促進させるために、疎水性ポリマー(a)及び親水性ポリマー(b)の合計重量に基づいて、0.05〜0.5重量%の触媒を使用することが好ましい。触媒としては、無機酸(硫酸及び塩酸等)、有機スルホン酸(メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸及びナフタレンスルホン酸等)、アンチモン触媒(三酸化アンチモン等)、錫触媒(モノブチル錫オキサイド及びジブチル錫オキサイド等)、チタン触媒(テトラブチルチタネート、ビストリエタノールアミンチタネート及びシュウ酸チタン酸カリウム等)、ジルコニウム触媒(テトラブチルジルコネート、オキシ酢酸ジルコニウム等)及び亜鉛触媒(酢酸亜鉛等)等が挙げられる。触媒を使用した場合は、エステル化反応終了後必要により触媒を中和し、吸着剤で処理して触媒を除去・精製することができる。
【0068】
生成水を反応系外に除去する方法としては、以下の方法が挙げられる。
(1)水と相溶しない有機溶媒(例えばトルエン、キシレン及びシクロヘキサン等)を使用して、還流下、有機溶媒と生成水とを共沸させて、生成水のみを反応系外に除去する方法。
(2)反応系内にキャリアガス(例えば空気、窒素、ヘリウム、アルゴン及び二酸化炭素等)を吹き込み、キャリアガスと共に生成水を反応系外に除去する方法。
(3)反応系内を減圧にして生成水を反応系外に除去する方法。
【0069】
<分岐型アルキル(アルキルの炭素数6〜18)ベンゼンスルホン酸塩(S)>
本発明における分岐型アルキル(アルキルの炭素数6〜18)ベンゼンスルホン酸塩(S)は、後述のカチオンと分岐型アルキルベンゼンスルホン酸アニオンとから構成される。
本発明において分岐型アルキルとは、メチル基を2個又は2個以上有するアルキル基を有するものである。一方、分岐型以外の直鎖型アルキルは、メチル基を1個有するアルキル基である。
分岐型アルキル(アルキルの炭素数6〜18)ベンゼンスルホン酸塩(S)により、成形時の連続成形性(脱型性)に優れる。
【0070】
塩(S)を構成するアニオンとしては、例えば、分岐型アルキル(アルキルの炭素数6〜18、好ましくは炭素数8〜16、さらに好ましくは炭素数10〜14)ベンゼンスルホン酸スルホン酸のアニオン、とくに好ましいのは分岐型ドデシルベンゼンスルホン酸のアニオンである。
【0071】
塩(S)を構成するカチオンとしては、アルカリ金属(例えばリチウム、ナトリウム、カリウム)カチオン、イミダゾリウムカチオンが挙げられる。
【0072】
上記イミダゾリウムカチオンとしては、C5〜15のイミダゾリウムカチオン、例えば、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウム、1,2−ジメチル−3−エチル−イミダゾリウム、1,2,3−トリエチルイミダゾリウム、1,2,3,4−テトラエチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−フェニルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−ベンジルイミダゾリウム、1−ベンジル−2,3−ジメチル−イミダゾリウム、4−シアノ−1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、3−シアノメチル−1,2−ジメチルイミダゾリウム、2−シアノメチル−1,3−ジメチル−イミダゾリウム、4−アセチル−1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、3−アセチルメチル−1,2−ジメチルイミダゾリウム、4−メチルカルボキシメチル−1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、3−メチルカルボキシメチル−1,2−ジメチルイミダゾリウム、4−メトキシ−1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、3−メトキシメチル−1,2−ジメチルイミダゾリウム、4−ホルミル−1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、3−ホルミルメチル−1,2−ジメチルイミダゾリウム、3−ヒドロキシエチル−1,2−ジメチルイミダゾリウム、4−ヒドロキシメチル−1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、2−ヒドロキシエチル−1,3−ジメチルイミダゾリウム等が挙げられる。
【0073】
塩(S)を構成するカチオンのうち、帯電防止性の観点から、好ましいのは、ナトリウム、イミダゾリウム、さらに好ましいのはナトリウム、1−アルキル(アルキルの炭素数1〜3)3−アルキル(アルキルの炭素数1〜3)イミダゾリウム、とくに好ましいのは1−エチル−3−メチルイミダゾリウムである。
【0074】
<帯電防止剤(Z)>
本発明の帯電防止剤(Z)は、前記ブロックポリマー(A)と、前記塩(S)とを含有してなる。
上記ブロックポリマー(A)と塩(S)の重量比[(A)/(S)]は、好ましくは90/10〜99/1、さらに好ましくは92/8〜98/2、さらに好ましくは94/6〜97/3である。
【0075】
帯電防止剤(Z)は、例えば、以下の(1)〜(3)のいずれかの方法により、製造できる。
(1)ブロックポリマー(A)と塩(S)とを混合する。
(2)疎水性ブロック(a)のポリマーと親水性ブロック(b)のポリマーを、公知の方法で反応させて、ブロックポリマー(A)を得る際に、反応前又は反応途中で、塩(S)を加える。
【0076】
<帯電防止性樹脂組成物(Y)>
本発明の帯電防止性樹脂組成物(Y)は、上記帯電防止剤(Z)と、後述の熱可塑性樹脂(E)とを含有してなる。
帯電防止剤(Z)と熱可塑性樹脂(E)との重量比[帯電防止剤(Z)/熱可塑性樹脂(E)]は、帯電防止性及び機械的強度(機械物性)の観点から、好ましくは3/97〜20/80、さらに好ましくは5/95〜15/85である。
【0077】
熱可塑性樹脂(E)としては、ポリフェニレンエーテル樹脂(E1);ビニル樹脂〔ポリオレフィン樹脂(E2)[例えばポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂]、ポリ(メタ)アクリル樹脂(E3)[例えばポリメタクリル酸メチル]、ポリスチレン樹脂(E4)[ビニル基含有芳香族炭化水素単独、又は、ビニル基含有芳香族炭化水素と、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル及びブタジエンからなる群から選ばれる少なくとも1種とを構成単位とする共重合体、例えばポリスチレン(PS)、スチレン/アクリロニトリル共重合体(AN樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)、メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレン共重合体(MBS樹脂)、スチレン/メタクリル酸メチル共重合体(MS樹脂)]等〕;ポリエステル樹脂(E5)[例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート];ポリアミド樹脂(E6)[例えばナイロン66、ナイロン69、ナイロン612、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン6/66、ナイロン6/12];ポリカーボネート樹脂(E7)[例えばポリカーボネート、ポリカーボネート/ABSアロイ樹脂];ポリアセタール樹脂(E8)、及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0078】
これらのうち、後述する成形品の機械的強度(機械物性)及び帯電防止性の観点から、好ましいのはポリオレフィン樹脂(E2)、ポリスチレン樹脂(E4)、ポリカーボネート樹脂(E7)、さらに好ましいのはポリスチレン樹脂(E4)である。
【0079】
本発明の帯電防止性樹脂組成物(Y)には、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要により、上記ブロックポリマー(A)、アミド形成性モノマー(c)、イミダゾリウム塩(S)、熱可塑性樹脂(E)以外に、公知の樹脂用添加剤(G)を含有してもよい。
樹脂用添加剤(G)としては、相溶化剤(カルボン酸変性ポリプロピレン等)、難燃剤(グアナミン等)、顔料(酸化チタン等)、染料(アゾ系染料等)、核剤(タルク等)、滑剤(カルバナロウワックス等)、可塑剤(ジオクチルフタレート等)、酸化防止剤(トリフェニルホスファイト等)、紫外線吸収剤[2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等]が挙げられる。
樹脂用添加剤(G)の含有量は、用途によって異なるが、帯電防止剤(Z)と熱可塑性樹脂(E)との合計重量に基づいて、例えば45重量%以下、添加効果の観点から、好ましくは0.01〜30重量%、さらに好ましくは0.1〜10重量%である。
【0080】
本発明の帯電防止性樹脂組成物(Y)は、上記帯電防止剤(Z)、熱可塑性樹脂(E)及び必要により樹脂用添加剤(G)を溶融混合することにより得られる。
溶融混合する方法としては、一般的にはペレット状又は粉体状の成分を適切な混合機、例えばヘンシェルミキサー等で混合した後、押出機で溶融混合してペレット化する方法が適用できる。
溶融混合時の各成分の添加順序には特に限定はないが、例えば、
(1)帯電防止剤(Z)、熱可塑性樹脂(E)及び必要により樹脂用添加剤(G)を一括して溶融混合する方法、
(2)帯電防止剤(Z)、及び熱可塑性樹脂(E)の一部を予め溶融混合して帯電防止剤(Z)の高濃度樹脂組成物(マスターバッチ樹脂組成物)を作製し、その後、残りの熱可塑性樹脂(E)並びに必要により樹脂用添加剤(G)を溶融混合する方法、が挙げられる。
【0081】
<成形品>
本発明の成形品は、上記帯電防止性樹脂組成物(Y)を成形して得られる。該成形方法としては、射出成形、圧縮成形、カレンダ成形、スラッシュ成形、回転成形、押出成形、ブロー成形、発泡成形、フィルム成形(キャスト法、テンター法、インフレーション法等)等が挙げられ、目的に応じて任意の方法で成形できる。
【0082】
本発明の帯電防止剤(Z)は、熱可塑性樹脂(E)に優れた帯電防止性を付与する。また、本発明の帯電防止剤(Z)を用いて得られる成形品は、機械的強度(機械物性)に優れ、成形時の連続成形性(脱型性)に優れる。
このため、各種成形法[射出成形、圧縮成形、カレンダ成形、スラッシュ成形、回転成形、押出成形、ブロー成形、発泡成形及びフィルム成形(例えばキャスト法、テンター法及びインフレーション法)等]で成形されるハウジング製品[家電・OA機器、ゲーム機器及び事務機器用等]、プラスチック容器材[クリーンルームで使用されるトレー(ICトレー等)、その他容器等]、各種緩衝材、被覆材(包材用フィルム、保護フィルム等)、床材用シート、人工芝、マット、テープ基材(半導体製造プロセス用等)、並びに各種成形品(自動車部品等)用材料とし幅広く用いることができ、極めて有用である。
【実施例】
【0083】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、部は重量部を示す。
【0084】
<製造例1>
[ポリアミド(a−1)の製造]
撹拌機、温度計、加熱冷却装置、窒素導入管及び減圧装置を備えたステンレス製耐圧反応容器に、ε−カプロラクタム79.4部、テレフタル酸11.5部、酸化防止剤[「イルガノックス1010」、BASFジャパン(株)製]0.3部及び水6部を投入し、窒素置換後、密閉下、撹拌しながら220℃まで昇温し、同温度(圧力:0.2〜0.3MPa)で4時間撹拌し、両末端にカルボキシル基を有するポリアミド(a−1)を得た。
なお、(a−1)の酸価は78、Mnは1,400であった。
【0085】
<製造例2>
[カルボキシル基を両末端に有するポリオレフィン(a2−1−1α)の製造]
製造例1と同様の耐圧反応容器に、熱減成法で得られた低分子量ポリプロピレン[ポリプロピレン(MFR:10g/10min)を410±0.1℃、窒素通気下(80mL/分)に16分間熱減成して得られたもの。Mn:3,400、炭素数1,000個当たりの二重結合数:7.0、1分子当たりの二重結合の平均数:1.8、両末端変性可能なポリオレフィンの含有率:90重量%]90部、無水マレイン酸10部及びキシレン30部を投入し、均一に混合した後、窒素置換し、密閉下、撹拌しながら200℃まで昇温して溶融させ、同温度で10時間反応させた。
次いで、過剰の無水マレイン酸とキシレンを、減圧下(0.013MPa以下)、200℃で3時間かけて留去して、カルボキシル基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(a2−1−1α)95部を得た。
なお、(a2−1−1α)の酸価は27.5、Mnは3,600であった。
【0086】
<製造例3>
[(a2−1−1α)を二次変性して得られたポリオレフィン(a2−1−2)の製造]
製造例1と同様の耐圧反応容器に、(a2−1−1α)88部及び12−アミノドデカン酸12部を投入し、均一に混合後、窒素ガス雰囲気下、撹拌しながら200℃まで昇温し、同温度で減圧下(0.013MPa以下)3時間反応させ、(a2−1−1α)を二次変性して得られたポリオレフィン(a2−1−2)96部を得た。
なお、(a2−1−2)の酸価は24.8、Mnは4,000であった。
【0087】
<製造例4>
[ポリエステル(a−3)の製造]
撹拌機、温度計、加熱冷却装置、窒素導入管及び減圧装置を備えたステンレス製耐圧反応容器に、ドデカン2酸68.4部、1,6−ヘキサンジオール31.6部、酸化防止剤[「イルガノックス1010」、BASFジャパン(株)製]0.3部を投入し、160℃から210℃まで徐々に昇温しながら常圧で4時間、その後210℃、減圧下で3時間重合して、両末端にカルボキシル基を有するポリエステル(a−3)を得た。
なお、(a−3)の酸価は37、Mnは3,000であった。
【0088】
<製造例11>
[ブロックポリマー(A−1)]
撹拌機、温度計及び加熱冷却装置を備えた反応容器に、ポリアミド(a−1)223部、ビスフェノールAのEO付加物(Mn:1,800)279部、及びオキシ酢酸ジルコニウム7部を投入し、撹拌しながら240℃に昇温し、減圧下(0.013MPa以下)同温度で6時間重合させて、ブロックポリマー(A−1)を得た。
なお、(A−1)のMnは22,000、重量比[(a)/(b)]は44/56であった。
【0089】
<製造例12>
[ブロックポリマー(A−2)]
製造例11と同様の耐圧反応容器に、(a2−1−2)60.1部、ポリエーテルジオール(b1−1α)[PEG(Mn:3,000、体積固有抵抗値:1×10×Ω・cm)]39.9部、酸化防止剤「イルガノックス1010」0.3部及び酢酸ジルコニル0.5部を投入し、撹拌しながら220℃に昇温し、減圧下(0.013MPa以下)同温度で3時間重合させて、粘稠なブロックポリマー(A−2)を得た。
なお、(A−2)のMnは30,000、重量比[(a)/(b)]は60/40であった。
【0090】
<製造例13>
[ブロックポリマー(A−3)]
製造例11と同様の耐圧反応容器に、(a−3)50部、ポリエーテルジオール(b1−1α)[PEG(Mn:3,000、体積固有抵抗値:1×10×Ω・cm)]50部、酸化防止剤「イルガノックス1010」0.3部及び酢酸ジルコニル0.5部を投入し、撹拌しながら220℃に昇温し、減圧下(0.013MPa以下)同温度で3時間重合させて、粘稠なブロックポリマー(A−3)を得た。(A−3)のMnは24,000、重量比[(a)/(b)]は50/50であった。
【0091】
<実施例1>
撹拌機、温度計及び加熱冷却装置を備えた反応容器に、ブロックポリマー(A−1)97部、分岐型ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(C−1)3部を仕込み、220℃で1時間混合、撹拌した後、ベルト上にストランド状で取出し、ペレット化し、帯電防止剤(Z−1)を得た。
【0092】
<実施例2〜5、比較例1〜4>
表1の配合組成(部)にしたがった以外は、実施例1と同様にして、各帯電防止剤(Z)を得た。
【0093】
【表1】
【0094】
<実施例11〜15、比較例11〜14>
表2に示す配合組成に従って、帯電防止剤(Z)、熱可塑性樹脂(E)をヘンシェルミキサーで3分間ブレンドした後、ベント付き2軸押出機にて、回転速度100rpm、滞留時間3分間の条件で、230℃で溶融混錬して、各帯電防止性樹脂組成物(Y)を得た。
得られた各帯電防止性樹脂組成物(Y)について、後述の<評価方法>にしたがって、評価した。結果を表2に示す。
【0095】
<評価方法>
【0096】
1.脱型性(連続成形性)
各樹脂組成物について射出成形機[ 商品名「PS40E5ASE」、日精樹脂工業(株)]を用い、シリンダー温度260℃、金型温度80℃、成形サイクル30秒にて、平板試験片(縦70mm、横70mm、厚さ2mm) を2000ショット射出成形後、下記の<評価基準>により脱型性の評価を行った。
1ショット目の脱型に要する抵抗力(単位:N)を(D1)、2000ショット目の脱型に要する抵抗力を(D2000)として、脱型性を下記式(1)に基づいて評価した。

脱型性(%)=(D2000)×100/(D1) (1)
【0097】
<評価基準>
◎:110%未満
○:110%以上、120%未満
△:120%以上、130%未満
×:130%以上
【0098】
2.表面固有抵抗値(単位:Ω)
各樹脂組成物について射出成形機[ 商品名「PS40E5ASE」、日精樹脂工業(株)]を用い、シリンダー温度260℃、金型温度80℃にて、平板試験片(縦100mm、横100mm、厚さ2mm)を作製した。平板試験片について、超絶縁計「DSM−8103」[東亜電波工業(株)製]を用いて23℃、湿度40%RHの雰囲気下で測定した。
【0099】
3.アイゾット衝撃強度(単位:J/m)
各樹脂組成物について射出成形機[商品名「PS40E5ASE」、日精樹脂工業(株
)]を用い、シリンダー温度260℃、金型温度80℃にて、試験片を作製、ASTM D256 Method A(ノッチ付き、3.2mm厚)に準拠して測定した。
【0100】
【表2】
【0101】
熱可塑性樹脂
(E−1):
ABS樹脂[商品名「セビアン−V320」、ダイセルポリマー(株)製]
(E−2):
ポリプロピレン樹脂[商品名「サンアロマーPM771M」、サンアロマー(株)製]
(E−3):
耐衝撃性PS樹脂[商品名[HIPS 433]、PSジャパン(株)製]
【0102】
表1、2の結果から、本発明の帯電防止剤(Z)は、比較のものと比べて、帯電防止性に優れ、成形品に優れた機械的強度を付与し、さらに成形時の連続成形性(脱型性)に優れることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の帯電防止剤(Z)は、熱可塑性樹脂に優れた帯電防止性を付与する。また、成形品は、機械的強度に優れ、成形時の連続成形性(脱型性)に優れる。
このため、各種成形法[射出成形、圧縮成形、カレンダ成形、スラッシュ成形、回転成形、押出成形、ブロー成形、発泡成形およびフィルム成形(例えばキャスト法、テンター法およびインフレーション法)等]で成形されるハウジング製品[家電・OA機器、ゲーム機器および事務機器用等]、プラスチック容器材[クリーンルームで使用されるトレー(ICトレー等)、その他容器等]、各種緩衝材、被覆材(包材用フィルム、保護フィルム等)、床材用シート、人工芝、マット、テープ基材(半導体製造プロセス用等)、並びに各種成形品(自動車部品等)用材料とし幅広く用いることができ、極めて有用である。
【要約】
【課題】 熱可塑性樹脂に優れた帯電防止性付与する帯電防止剤を提供する。
【解決手段】 疎水性ポリマー(a)のブロックと親水性ポリマー(b)のブロックとを構成単位として有するブロックポリマー(A)と、分岐型アルキル(アルキルの炭素数6〜18)ベンゼンスルホン酸塩(S)とを含有してなる帯電防止剤(Z);帯電防止剤(Z)と、熱可塑性樹脂(E)とを含有してなる帯電防止性樹脂組成物(Y);帯電防止性樹脂組成物(Y)を成形してなる成形品。
【選択図】 なし