(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6956951
(24)【登録日】2021年10月8日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】火薬類収容体および筒状体
(51)【国際特許分類】
F42D 1/16 20060101AFI20211021BHJP
【FI】
F42D1/16
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-947(P2017-947)
(22)【出願日】2017年1月6日
(65)【公開番号】特開2017-125674(P2017-125674A)
(43)【公開日】2017年7月20日
【審査請求日】2019年12月10日
(31)【優先権主張番号】特願2016-3414(P2016-3414)
(32)【優先日】2016年1月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000145987
【氏名又は名称】株式会社昭和丸筒
(74)【代理人】
【識別番号】100141092
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 英生
(73)【特許権者】
【識別番号】516203302
【氏名又は名称】高津 荘太
(72)【発明者】
【氏名】岡本 保
(72)【発明者】
【氏名】伊田 篤
(72)【発明者】
【氏名】高津 荘太
【審査官】
立花 啓
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2002/0189482(US,A1)
【文献】
米国特許第03099216(US,A)
【文献】
特開平08−201000(JP,A)
【文献】
特開平06−174400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F42D 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個別の火薬類を発破孔へ複数個挿薬する際に用いられる挿薬用の火薬類収容体であって、
略筒状の収容体本体内の長手方向の任意位置に、前記複数個の火薬類を個別に収容、位置させるもので、
前記収容体本体は紙を主体とする素材からなるテープがスパイラル状に巻回配設されたスパイラル巻きの筒状体であって、前記火薬類の筒状の薬径に合わせて形成され、長手方向の全長に渡って切欠き部が形成されて周方向の可撓性を有しており、
前記収容体本体の内周面が前記可撓性により前記火薬類の外周面に当接することにより前記複数個の火薬類を安定保持するようにしたことを特徴とする火薬類収容体。
【請求項2】
前記収容体本体は前記テープが複数層になっていることを特徴とする請求項1に記載の火薬類収容体。
【請求項3】
前記収容体本体の切り欠き部は中心角が45度〜150度であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の火薬類収容体。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の火薬類収容体に用いられる筒状体であって、該筒状体には前記切欠き部を形成させるための切取線が設けられていることを特徴とする筒状体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば岩盤などの発破孔に火薬類を装填するために使用する火薬類収容体および筒状体に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の発破孔に火薬類を装填する場合、遠隔操作やエヤーで圧送することにより実施されることが知られている(例えば、下記特許文献1参照)。しかしながら、装備費用が高価であり、経済的は装填方法とは言いづらい。また、手作業で装填作業が実施される場合もある。この場合、作業者の安全性確保の観点から、できる限り短時間に確実に装填完了しなくてはならない。しかしながら、火薬類を発破孔に直接挿薬した場合、発破孔はくり粉、岩片などにより孔内が荒れているため、火薬類の装填が容易ではなく、時間を要していた。また、発破孔の水分などにより火薬類が不発となるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−326107号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは上記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、本発明による火薬類収容体は、略筒状の収容体本体の内周面に火薬類を収容させる火薬類収容体であって、少なくとも長手方向の一部に切欠き部が形成されていることを特徴とする火薬類収容体を提供するものである。
【0005】
これによれば、収容体本体の切欠き部を広げることにより、切欠き部から火薬類を火薬類収容体に容易に収容し、火薬類収容体ごと発破孔へ挿薬させることにより、装填作業を短時間に確実に実施することができ、落石などに対する作業員の安全性に配慮することができる。また、収容体本体に雷管を装着した親ダイ以外の火薬類を予め複数本収容させておくことにより、切羽での装填作業の時間を短縮することもできる。
【0006】
また、切欠き部が収容体本体の全長に渡って形成されていることを特徴とする。
【0007】
これによれば、切欠き部を収容体本体の全長に渡って形成させることにより、切欠きを容易に形成でき、安価に製造することができる。
【0008】
また、収容体本体が紙を主体とする素材からなることを特徴とする。
【0009】
これによれば、収容体本体が紙を主体とする素材からなることにより、爆破により粉々になり、ズリと一緒に埋土されても、環境に与える負荷が少ない。また、収容体本体が火薬類の爆破能力を効率よく発揮させることができる。
【0010】
また、収容体本体が収縮性素材層を有していることを特徴とする。
【0011】
これによれば、収容体本体の収縮性素材層を収縮させることにより、容易に所望の断面形状を形成させることができる。
【0012】
本発明による筒状体は、本発明の火薬類収容体に用いられる筒状体であって、筒状体には切欠き部を形成させるための切取線が設けられていることを特徴とする。
【0013】
これによれば、輸送時による負荷や保管時の環境変化による火薬類収容体の形状変化を抑制し、火薬類を火薬類収容体に容易に収容し、火薬類収容体ごと発破孔へ挿薬させることにより、装填工程を短時間に確実に実施することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、火薬類を火薬類収容体に容易に収容し、火薬類収容体ごと発破孔へ挿薬させることにより装填工程を短時間に確実に実施することができ、安全性に配慮した火薬類収容体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態に係る火薬類収容体の斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る火薬類収容体の火薬類を収容した状態を説明するための図である。
【
図3】第1実施形態に係る火薬類収容体の長さ方向に直交する断面図である。
【
図5】第2実施形態に係る火薬類収容体の長さ方向に直交する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明をその好ましい実施形態について図面を参照して説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0017】
本発明の火薬類収容体の第1実施形態について
図1から
図4を参照しつつ説明する。
【0018】
図1は、第1実施形態に係る火薬類収容体の斜視図である。
図2は、第1実施形態に係る火薬類収容体の火薬類を収容した状態を説明するための図である。
図3は、第1実施形態に係る火薬類収容体の長さ方向に直交する断面図である。
図4は、収容工程を説明するための図である。
【0019】
第1実施形態における火薬類収容体1は、略筒状の収容体本体2からなり、収容体本体2の内周面側に火薬類Dが収容される(火薬類Dの雷管、コードは図示せず)。収容体本体2には長手方向に全長に渡って切欠き部3が形成され、長手方向に垂直な面で切断した断面は略C字型である。収容体本体2に切欠き部3が形成されていることにより周方向に可撓性を有し、切欠き部3の幅を広げたり狭めたりすることができる。
【0020】
火薬類収容体1は紙製である。例えば、厚み0.5mmの板紙を3枚積層させたシートを収容する火薬類Dの薬径に合わせて断面略C字型に成形したものであり、全長600mm、内径30mmである。厚みは収容体本体2の強度、作業性の観点から0.5〜3.0mmが好ましい。全長は火薬類Dの収容個数によって適宜設計がなされる。
【0021】
収容体本体2の紙の目は長手方向に沿って構成されているのが好ましい。長手方向の強度を効果的に向上させることができ、火薬類Dを収容した際に、火薬類Dの重量により長手方向と直行する方向に折れ曲がることを防止することができる。さらに、周方向の可撓性を向上させることができ、火薬類Dに当接しやすくなり、火薬類Dが収容体本体2内周面に安定して保持されやすくなる。
【0022】
また、収容体本体2に長手方向に沿ってリブ構造を形成されることにより、長手方向の強度を向上させることもできる。
【0023】
切欠き部3の角度θは30°〜180°が好ましい。30°未満では切欠き部3の幅が狭いために切欠き部3を広げづらく、火薬類Dの収容に時間を要し、180°を超えると火薬類Dが抜け落ちるおそれがある。より好ましくは45°〜150°である。この範囲内では火薬類Dを短時間に確実に収容させることができる。
【0024】
次に、火薬類Dの収容、装填方法について説明する。
図4に示すように火薬類Dを火薬類収容体1の収容体本体2の切欠き部3に押し当てると、切欠き部3の幅が広げられ、火薬類Dが内周面に挿入される。次に切欠き部3の幅が狭まり、火薬類Dが所定の位置に収容される。火薬類Dは収容体本体2の内周面に当接するように保持される。発破孔には、火薬類Dが収容された火薬類収容体1を装填することになる。
【0025】
上記実施形態では、収容体本体2の紙の目は長手方向に沿って構成されているものを説明したが、紙製テープをらせん状に巻き付け、接着剤で固定してなるスパイラル巻きにより形成された略筒状体であってもよい。スパイラル巻きとすることにより、筒状体を連続的に生産することができ、筒状体に切欠き部を形成させることで、量産性が向上し、製造コストを低減できる。火薬類収容体は消耗品であるため、安価であることが強く求められており、製造コストが高いという問題を解消することができる。また、スパイラル巻きとすることにより、必要な強度を保ちながら、発破の際は、収容体本体2が容易にらせん状に解離し、粉々になりやすいため、火薬類の爆発能力をより効率よく発揮させる収容体本体2を形成させることができる。紙製テープは、一層でもよいが、易解離性、物性強度の観点から複数枚螺旋状に巻き、各層を接着剤で固定して形成させるのが好ましい。紙製テープは、板紙、ライナー紙、パーチメント紙などが挙げられる。
【0026】
収容体本体2の長手方向に全長に渡って切欠き部3を設けた収容体について説明したが、切欠き部3は長手方向の少なくとも一部に形成させればよい。より好ましくは、切欠き部3は少なくとも火薬類Dが収容される部分に形成させればよい。また切欠き部3の形状は長手方向に直線である必要はなく、曲線やジグザグ形状などであってもよい。
【0027】
収容体本体2は紙製である収容体を説明したが、素材は特に限定されるものではなく、切欠き部3の幅を広げることができる素材であれば、樹脂、アルミなどの金属等であってもよい。
【0028】
収容体本体2の長手方向に垂直な面で切断した断面が略C字型の収容体を説明したが、特に限定されるものではなく、火薬類Dの断面形状に合わせて略コの字、略矩形、略三角形など多角形であってもよい。
【0029】
略筒状の収容体本体2はまず筒状に成形したものを長手方向に切り欠くことにより形成させることもできるし、シート状のものを成形することによっても形成させることができる。
【0030】
火薬類Dを収容体本体2へ収容する方法として、火薬類Dを切欠き部3を広げて内周面に挿入する方法を説明したが、火薬類Dを収容体本体2の端部から挿入し収容させてもよい。
【0031】
次に、本発明に係る火薬類収容体1の第2実施形態について
図5を参照しつつ説明する。以下の説明では、第1実施形態と異なる構造について説明することとし、同一の構造については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0032】
図5は第2実施形態に係る火薬類収容体の長さ方向に直交する断面図である。火薬類収容体11の収容体本体2が収縮性素材層4を有している。収縮性素材は限定されるものではないが、熱収縮性フィルムであることが好ましい。
【0033】
シート状の収容体本体2を加熱することにより、フィルムが収縮し容易に収容体本体2をカールさせることができるため、簡易な設備で火薬類収容体1を製造することができる。これにより安価に製造することができる。また、耐水性を有する収縮性フィルム層を設けることにより耐水性を付与することもできる。
【0034】
次に、本発明に係る筒状体10の実施形態について
図6を参照しつつ説明する。以下の説明では、火薬類収容体1の第1、第2実施形態と異なる構造について説明することとし、同一の構造については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0035】
図6は筒状体10の実施形態の斜視図である。筒状体10は火薬類収容体1の収容体本体2に用いられるものであって、筒状体10には切欠き部3を形成させるための切取線11が設けられている。作業者などが火薬類を収容する直前に、切取線11を切り取ることにより、切欠き部3を形成させることができる。これにより、輸送時による負荷や保管時の環境変化による火薬類収容体1の形状の変化を軽減させ、火薬類を火薬類収容体1に容易に収容し、火薬類収容体1ごと発破孔へ挿薬させることにより、装填工程を短時間に確実に実施することができる。
【0036】
なお、切取線11はミシン目、ハーフカット、断続的な切込などが好ましい。
【符号の説明】
【0037】
1 火薬類収容体
2 収容体本体
3 切欠き部
4 収縮性素材層
10 筒状体
11 切取線
D 火薬類