(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態に係る脱硝触媒塗布液は、脱硝触媒と、バインダー成分とを含む。
【0016】
<脱硝触媒>
本実施形態に係る脱硝触媒は、酸化バナジウムを主成分として、第2の金属を含有する。上記第2の金属は、Co、W、Mo、Nb、Ce、Sn、Ni、Fe、Cu、Zn、及びMnからなる群から選ばれる少なくとも一つである。上記第2の金属の含有量は、脱硝触媒中において、酸化物換算で1wt%以上40wt%以下である。本実施形態に係る脱硝触媒は、従来用いられている脱硝触媒と比較して、低温環境下でも高い脱硝効率を発揮する。
【0017】
(酸化バナジウム)
本実施形態に係る脱硝触媒に用いられる酸化バナジウムとしては、例えば、酸化バナジウム(II)(VO)、三酸化バナジウム(III)(V
2O
3)、四酸化バナジウム(IV)(V
2O
4)、及び五酸化バナジウム(V)(V
2O
5)が挙げられる。酸化バナジウムとしては、五酸化バナジウムであることが好ましい。五酸化バナジウムのV原子は、脱硝反応中、5価、4価、3価、又は2価の価数を有してもよい。
【0018】
酸化バナジウムは、脱硝触媒中に五酸化バナジウム換算で50wt%以上含まれることが好ましく、60wt%以上存在することがより好ましい。
【0019】
(第2の金属)
本実施形態に係る脱硝触媒に用いられる第2の金属は、Co、W、Mo、Nb、Ce、Sn、Ni、Fe、Cu、Zn、及びMnからなる群から選ばれる少なくとも一つである。酸化バナジウムを主成分とする脱硝触媒に上記第2の金属が含まれることにより、従来の脱硝触媒と比較して、低温環境下でも高い脱硝効率を発揮できる。上記効果が得られることの理由としては以下が推察される。脱硝触媒としての酸化バナジウムに不純物として第2の金属が混入すると、アモルファスが形成され、酸化バナジウムの結晶構造において結晶格子中の線や面にひずみが生じる。これにより、酸化バナジウムのルイス酸性が高まり、高い脱硝効率が発揮されるものと考えられる。本実施形態に係る脱硝触媒においては、第2の金属がバナジウムサイトを置き換えることで複合金属の酸化物が形成されていてもよいし、酸化バナジウムを主成分とする脱硝触媒に第2の金属の酸化物が含まれていてもよい。又はこれらの両方であってもよい。
【0020】
上記第2の金属のうち、Co、Mo、Ce、Sn、Ni、及びFeは、五酸化バナジウムの酸化還元サイクルを促進することができる観点から好ましい。上記第2の金属のうち、Coは、酸化力が強いことから好ましい。上記第2の金属のうち、W、Mo、及びNbは、いずれも固体酸として機能すると共に、アンモニアの吸着サイトを提供することで、アンモニアが効率的にNOと接触し反応を促進させる観点から好ましい。上記第2の金属としては、Wであることが好ましい。
【0021】
本実施形態に係る脱硝触媒において、第2の金属の含有量は酸化物換算で1wt%以上40wt%以下である。第2の金属の含有量は酸化物換算で2wt%以上38wt%以下であることが好ましい。第2の金属の含有量は酸化物換算で2wt%以上10wt%以下であることがより好ましい。第2の金属の含有量は酸化物換算で2wt%以上7wt%以下であることがより好ましい。第2の金属の含有量は酸化物換算で3wt%以上7wt%以下であることがより好ましい。第2の金属の含有量は酸化物換算で3wt%以上5wt%以下であることがより好ましい。第2の金属の含有量は酸化物換算で3wt%以上4wt%以下であることがより好ましい。
【0022】
本実施形態に係る脱硝触媒において、第2の金属としてCoを用い、Coの含有量が酸化物換算で1wt%〜10wt%である脱硝触媒を用いた反応温度200℃以下の選択的触媒還元反応においては、水分の共存下でない場合で79%〜100%のNO転化率を示した。同様に、水分の共存下の場合で38%〜90%のNO転化率を示した。例えば、Coの含有量が酸化物換算で3.1wt%の脱硝触媒を用いた場合、同様に、水分の共存下でない場合で89.1%のNO転化率を示した。同様に、水分の共存下の場合で73.7%のNO転化率を示した。
【0023】
本実施形態に係る脱硝触媒において、第2の金属としてWを用い、Wの含有量が酸化物換算で12wt%〜38wt%である脱硝触媒を用いた反応温度200℃以下の選択的触媒還元反応においては、水分の共存下でない場合で83%〜96%のNO転化率を示した。同様に、水分の共存下の場合で43%〜55%のNO転化率を示した。例えば、Wの含有量が酸化物換算で8.4wt%の脱硝触媒を用いた場合、同様に、水分の共存下でない場合で100%のNO転化率を示した。同様に、水分の共存下の場合で92.2%のNO転化率を示した。
【0024】
本実施形態に係る脱硝触媒において、第2の金属としてMoを用い、Moの含有量が酸化物換算で5.4wt%である脱硝触媒を用いた反応温度200℃以下の選択的触媒還元反応においては、水分の共存下でない場合で91.2%のNO転化率を示した。同様に、水分の共存下の場合で71.3%のNO転化率を示した。
【0025】
本実施形態に係る脱硝触媒において、第2の金属としてNbを用い、Nbの含有量が酸化物換算で2wt%〜16wt%である脱硝触媒を用いた反応温度200℃以下の選択的触媒還元反応においては、水分の共存下でない場合で90%〜97%のNO転化率を示した。同様に、水分の共存下の場合で50%〜73%のNO転化率を示した。
【0026】
本実施形態に係る脱硝触媒において、第2の金属としてCeを用い、Ceの含有量が酸化物換算で6.4wt%である脱硝触媒を用いた反応温度200℃以下の選択的触媒還元反応においては、水分の共存下でない場合で82.1%のNO転化率を示した。同様に、水分の共存下の場合で71.7%のNO転化率を示した。
【0027】
本実施形態に係る脱硝触媒において、第2の金属としてSnを用い、Snの含有量が酸化物換算で5.6wt%である脱硝触媒を用いた反応温度200℃以下の選択的触媒還元反応においては、水分の共存下でない場合で82.6%のNO転化率を示した。同様に、水分の共存下の場合で62.4%のNO転化率を示した。
【0028】
本実施形態に係る脱硝触媒において、第2の金属としてNiを用い、Niの含有量が酸化物換算で2.9wt%である脱硝触媒を用いた反応温度200℃以下の選択的触媒還元反応においては、水分の共存下でない場合で80.5%のNO転化率を示した。同様に、水分の共存下の場合で70.1%のNO転化率を示した。
【0029】
本実施形態に係る脱硝触媒において、第2の金属としてFeを用い、Feの含有量が酸化物換算で3.1wt%である脱硝触媒を用いた反応温度200℃以下の選択的触媒還元反応においては、水分の共存下でない場合で80.8%のNO転化率を示した。同様に、水分の共存下の場合で55.1%のNO転化率を示した。
【0030】
本実施形態に係る脱硝触媒において、第2の金属としてCuを用い、Cuの含有量が酸化物換算で3.0wt%である脱硝触媒を用いた反応温度200℃以下の選択的触媒還元反応においては、水分の共存下でない場合で98.8%のNO転化率を示した。同様に、水分の共存下の場合で81.0%のNO転化率を示した。
【0031】
本実施形態に係る脱硝触媒において、第2の金属としてZnを用い、Znの含有量が酸化物換算で3.1wt%である脱硝触媒を用いた反応温度200℃以下の選択的触媒還元反応においては、水分の共存下でない場合で85.8%のNO転化率を示した。同様に、水分の共存下の場合で65.4%のNO転化率を示した。
【0032】
本実施形態に係る脱硝触媒において、第2の金属としてMnを用い、Mnの含有量が酸化物換算で3.3wt%である脱硝触媒を用いた反応温度200℃以下の選択的触媒還元反応においては、水分の共存下でない場合で86.0%のNO転化率を示した。同様に、水分の共存下の場合で66.0%のNO転化率を示した。
【0033】
脱硝触媒として第2の金属が含有されていない脱硝触媒を用いた反応温度200℃以下の選択的触媒還元反応においては、水分の共存下でない場合で82.3%のNO転化率しか示されなかった。同様に、水分の共存下の場合で47.2%のNO転化率しか示されなかった。
【0034】
脱硝触媒において第2の金属としてWを用い、Wの含有量が酸化物換算で62wt%〜100wt%である脱硝触媒を用いた反応温度200℃以下の選択的触媒還元反応においては、水分の共存下でない場合で3%〜69%のNO転化率しか示されなかった。同様に、水分の共存下の場合で0%〜29%のNO転化率しか示されなかった。
【0035】
(複合金属の酸化物)
本実施形態に係る脱硝触媒は、バナジウムと第2の金属との複合金属の酸化物を含有することが好ましい。上記複合金属の酸化物は、例えば第2の金属としてWを用いる場合、前駆体としてメタタングステン酸を用いることによって生成される。上記生成された複合金属の酸化物のTEM画像を確認すると、五酸化バナジウムの結晶格子中のVサイトがWに置き換わっていることが確認できる。即ち、Wが原子状に孤立しており、複合金属の酸化物の生成が確認できる。
【0036】
本実施形態に係る脱硝触媒において、第2の金属としてWを用い、バナジウムとWの複合金属の酸化物を生成し、Wの含有量が酸化物換算で2.5wt%〜11.8wt%である脱硝触媒を用いた反応温度150℃の選択的触媒還元反応においては、水分の共存下でない場合で85%〜100%のNO転化率を示した。同様に、水分の共存下の場合で62%〜92%のNO転化率を示した。
【0037】
(第3の金属)
本実施形態に係る脱硝触媒において、第2の金属に加えて、更に第3の金属を用いることが好ましい。この場合、第2の金属としてWを用い、第3の金属としてCuを用いることが好ましい。第3の金属としてのCuの酸化物換算の含有量の上限は、13wt%であることが好ましい。
【0038】
本実施形態に係る脱硝触媒において、第2の金属としてWを用い、Wの含有量が酸化物換算で8.4wt%であり、第3の金属としてCuを用い、Cuの含有量が酸化物換算で3.0wt%である脱硝触媒を用いた反応温度200℃以下の選択的触媒還元反応においては、水分の共存下でない場合で89.2%のNO転化率を示した。同様に、水分の共存下の場合で79.2%のNO転化率を示した。
【0039】
(他の物質)
本実施形態に係る脱硝触媒は、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の物質を含有していてもよい。例えば、本実施形態に係る脱硝触媒は、上記以外に更に炭素を含有することが好ましい。脱硝触媒が不純物として炭素を含むことで、上述した酸化バナジウムの結晶構造において結晶格子中の線や面にひずみが生じることにより、低温環境下における高い脱硝効率を発揮できると考えられる。炭素の含有量は、脱硝触媒中において0.05wt%以上3.21wt%以下であることが好ましい。上記炭素の含有量は、0.07wt%以上3.21wt%以下であることがより好ましい。上記炭素の含有量は、0.11wt%以上3.21wt%以下であることがより好ましい。上記炭素の含有量は、0.12wt%以上3.21wt%以下であることがより好ましい。上記炭素の含有量は、0.14wt%以上3.21wt%以下であることがより好ましい。上記炭素の含有量は、0.16wt%以上3.21wt%以下であることがより好ましい。上記炭素の含有量は、0.17wt%以上3.21wt%以下であることがより好ましい。上記炭素の含有量は、0.70wt%以上3.21wt%以下であることがより好ましい。
【0040】
本実施形態に係る脱硝触媒は、焼成温度が300℃前後であることから、300℃以下の脱硝反応に用いられることが好ましい。また、反応温度200℃以下での脱硝反応においても高い脱硝効率が得られるため好ましい。反応温度200℃以下での脱硝反応においては、SO
2からSO
3への酸化が発生しないため好ましい。上記反応温度は100〜200℃であることがより好ましく、上記反応温度は160〜200℃であることが更に好ましい。上記反応温度は80〜150℃であってもよい。
【0041】
<バインダー成分>
バインダー成分は、脱硝触媒と共に脱硝触媒塗布液に含まれる。バインダー成分は、脱硝触媒を後述する担体上に固着させて担持させる。バインダー成分は、Tiを含む。バインダー成分としてTiが含まれることで、脱硝触媒の触媒活性を好ましく維持できる。
【0042】
バインダー成分として含まれるTiは、例えば、酸化物、複合酸化物、窒化物、有機及び無機塩等の化合物として含まれていてもよい。Tiは、二酸化チタン(TiO
2)としてバインダー成分に含まれることが好ましい。二酸化チタン(TiO
2)の結晶構造は、ルチル型、アナターゼ型及びブルッカイト型のうちいずれであってもよい。二酸化チタン(TiO
2)の粒子径は、特に制限されないが、例えば5〜50nmであることが好ましい。
【0043】
バインダー成分としては、Ti以外の無機成分が含まれていてもよい。例えば、本発明の効果を阻害しない範囲で、Al、Zr、Si等の無機成分が含まれていてもよい。これらの無機成分は、特に制限されず、酸化物、複合酸化物、窒化物、有機及び無機塩等の化合物として含まれていてもよい。上記以外に、バインダー成分には、粘度調整用に有機成分が含まれていてもよい。例えば、有機成分として、エチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールのうち少なくともいずれかが含まれていてもよい。
【0044】
《脱硝触媒塗布液》
上記脱硝触媒と、バインダー成分とを含む脱硝触媒塗布液において、脱硝触媒とバインダー成分との重量比は、脱硝触媒/バインダー成分が100/0〜20/80であることが好ましい。上記重量比は、89/11〜20/80であることがより好ましい。上記重量比は、80/20〜20/80であることが更に好ましい。
【0045】
上記脱硝触媒と、バインダー成分とを含む脱硝触媒塗布液は、pHが2.0以下であることが好ましい。脱硝触媒塗布液のpHが2.0以下であることにより、脱硝触媒の好ましいNO転化率が得られる。脱硝触媒塗布液のpHは、1.5以下であることがより好ましい。
【0046】
上記脱硝触媒と、バインダー成分とを含む脱硝触媒塗布液は、粘度が3.0mPa・s以上であることが好ましい。脱硝触媒塗布液の粘度が3.0mPa・s以上であることにより、脱硝触媒の好ましいNO転化率が得られる。脱硝触媒塗布液の粘度は、8.0mPa・s以上であることがより好ましく、60mPa・s以上であることが更に好ましい。なお、脱硝触媒塗布液の粘度の上限は特に限定されないが、塗布性の観点から430mPa・s以下であることが好ましい。
【0047】
<脱硝触媒成型体>
本実施形態に係る脱硝触媒成型体は、上記脱硝触媒がバインダー成分によりハニカム基材等の担体に担持されてなる。上記担体としては、特に制限されず、従来公知のハニカム基材等の担体を用いることができる。例えば、アルミニウム、スズ、ステンレス等からなる金属製ハニカム基材を用いてもよいし、酸化チタン、コージェライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ゼオライト等を主成分とするセラミックス製ハニカム基材を用いてもよい。
【0048】
《脱硝触媒塗布液の調製方法》
本実施形態に係る脱硝触媒塗布液は、上記脱硝触媒と、バインダー成分とを混合することで調製される。脱硝触媒における酸化バナジウムは、例えば、バナジン酸塩を混合させることで脱硝触媒塗布液中に含有される。上記バナジン酸塩としては、例えば、バナジン酸アンモニウム、バナジン酸マグネシウム、バナジン酸ストロンチウム、バナジン酸バリウム、バナジン酸亜鉛、バナジン酸鉛、バナジン酸リチウム等を用いてもよい。
【0049】
脱硝触媒における第2の金属及び第3の金属は、例えば、各金属のキレート錯体、水和物、アンモニウム化合物、リン酸化合物を混合させることで脱硝触媒塗布液中に含有される。キレート錯体としては、例えば、シュウ酸やクエン酸等の錯体が挙げられる。水和物としては、例えば(NH
4)
10W
12O
41・5H
2OやH
3PW
12O
40・nH
2Oが挙げられる。アンモニウム化合物としては、例えば(NH
4)
10W
12O
41・5H
2Oが挙げられる。リン酸化合物としては、例えばH
3PW
12O
40・nH
2Oが挙げられる。
【0050】
脱硝触媒におけるTiを含むバインダー成分は、例えば二酸化チタン等のチタン化合物の粉体を用いて脱硝触媒塗布液に混合してもよいし、Tiを含む化合物のゾルやスラリー等の分散体又は流動体を用いて脱硝触媒塗布液に混合してもよい。例えば、二酸化チタン(TiO
2)を分散質として含むゾルとしては、水を分散媒とし、塩酸や硝酸等の強酸を分散安定剤として用いたもの、又はシリカ、アルミニウム化合物、リン酸塩等による表面処理により液性が中性で分散安定性が付与されたもの等が挙げられる。
【0051】
脱硝触媒塗布液を調製する際に、上記以外の成分を含有させてもよい。例えば、脱硝触媒塗布液に、キレート化合物を含有させてもよい。キレート化合物としては、例えば、シュウ酸やクエン酸等の複数のカルボキシル基を有する化合物、アセチルアセトナート、エチレンジアミン等の複数のアミノ基を有する化合物、エチレングリコール等の複数のヒドロキシル基を有する化合物等が挙げられる。また、脱硝触媒塗布液のphを調整するため、硝酸等の酸成分やアンモニア等のアルカリ成分を含有させてもよい。
【0052】
《脱硝触媒成型体の製造方法》
本実施形態に係る脱硝触媒成形体の製造方法は、上記調製した脱硝触媒塗布液をハニカム基材等の担体に塗布する塗布工程と、脱硝触媒塗布液が塗布されたハニカム基材等の担体を乾燥させる乾燥工程と、脱硝触媒塗布液が塗布されたハニカム基材等の担体を焼成する焼成工程と、を含む。
【0053】
塗布工程は、特に制限されないが、例えば、ハニカム基材等の担体を上記調製された脱硝触媒塗布液に浸漬させることで、担体に脱硝触媒塗布液を塗布することができる。
【0054】
乾燥工程は、触媒塗布液に含有される水等の溶媒を蒸発させて乾燥させる工程である。乾燥温度は特に制限されず、例えば120℃とすることができる。
【0055】
焼成工程は、脱硝触媒塗布液が塗布されたハニカム基材等の担体を所定の温度で焼成する工程である。焼成温度は270℃以下であることが好ましい。焼成温度を270℃以下とすることにより、脱硝触媒に含まれる酸化バナジウム結晶の構造が局所的に乱れ、高い脱硝効率が発揮される。具体的には、酸化バナジウムの結晶構造中に酸素原子が欠乏しているサイトが出現することで、高い脱硝効率が発揮されると推察される。
【0056】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0058】
(実施例1)
バナジン酸アンモニウム(NH
4VO
3)とシュウ酸((COOH)
2)とを純水に溶解させ、前駆体錯体を合成した。この前駆体錯体に対し、第2の金属であるタングステン(W)のシュウ酸錯体を、金属原子換算でタングステン(W)が3.5mol%となるように添加した。得られたバナジウム−異種金属錯体混合物を電気炉によって300℃の温度で4時間、2回焼成することにより、タングステン(W)を含有する五酸化バナジウム(V
2O
5)の脱硝触媒を得た。
【0059】
バインダー成分として市販品のTKS−201(二酸化チタンゾル、テイカ株式会社)0.95gを、水約9mlで希釈し、上記脱硝触媒1.2gを添加して混合し、脱硝触媒塗布液を得た。上記脱硝触媒塗布液を120℃で加熱し、水分を蒸発させ、前駆体粉末を得た。上記粉末を300℃で4時間焼成し、実施例1のバインダーを含んだ脱硝触媒を得た。
【0060】
(実施例2〜6、比較例1〜6、参考例1)
バインダー成分として表1に示すものを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で実施例2〜6、比較例1〜6、参考例1のバインダーを含んだ脱硝触媒を得た。表1に略記したバインダー名との対応を以下に示す。参考例1は、バインダー成分の添加を行わなかった。
TKS−202(二酸化チタンゾル、テイカ株式会社)
TKS−203(二酸化チタンゾル、テイカ株式会社)
STS−01(二酸化チタンゾル、石原産業株式会社)
STS−02(二酸化チタンゾル、石原産業株式会社)
TTO−W−5(中性二酸化チタンゾル(ルチル結晶)、石原産業株式会社)
ZR−40BL(ジルコニア水性ゾル、日産化学株式会社)
OXS(シリカゾル、日産化学株式会社)
CXS(コロイダルシリカ、日産化学株式会社)
OUP(コロイダルシリカ、日産化学株式会社)
NXS(コロイダルシリカ、日産化学株式会社)
200(アルミナゾル、日産化学株式会社)
【0061】
【表1】
【0062】
[NO転化率測定]
実施例、比較例及び参考例のバインダーを含んだ脱硝触媒を用いて、NO転化率測定を行った。反応条件は、脱硝触媒塗布液をそれぞれ0.375g(触媒のみの参考例1:0.300g)用い、反応温度を150℃、反応ガスを250ppmNO、250ppmNH
3、4.0体積%O
2、10%水蒸気雰囲気下、Ar中とした。ガス流量は250ml/minとし、空間速度は40000mlh
−1g
cat−1とした。結果を
図1に示した。
図1中、縦軸はNO転化率(%)を示す。
【0063】
[脱硝反応速度測定]
実施例、比較例及び参考例のバインダーを含んだ脱硝触媒を用いて、上記NO転化率測定と同様の条件にて脱硝反応速度測定を行った。結果を
図2に示した。
図2中、縦軸は五酸化バナジウム(V
2O
5)重量当たりの反応速度(/molg
−1s
−1E−9)を示す。
【0064】
図1及び
図2の結果から、各実施例に係るTiをバインダー成分として含有する脱硝触媒は、比較例に係る脱硝触媒よりもNO転化率及び脱硝反応速度に優れている結果が確認された。即ち、各実施例に係る脱硝触媒は、バインダー成分を含有しない参考例1の脱硝触媒に対して、バインダー成分が含まれることによるNO転化率や脱硝反応速度の低下を最小限に抑制できていると考えられる。
【0065】
[比表面積測定]
実施例1、2、4、比較例1、4、6及び参考例1のバインダーを含んだ脱硝触媒のBET比表面積を測定した。結果を
図3に示した。
図3中、縦軸はBET比表面積(/m
2g
−1)を示す。
図3の結果から、各実施例に係る脱硝触媒は、比較例及び参考例の脱硝触媒と比較してBET比表面積が大きい結果が示された。
【0066】
[NO転化率測定(脱硝触媒成型体、脱硝触媒/バインダー比変更)]
実施例2のバインダーを含んだ脱硝触媒の、脱硝触媒とバインダー成分との比を変更したサンプルを複数作成し、ハニカム基材に担持させ、複数の脱硝触媒成型体を作製し、NO転化率を測定した。ハニカム基材としては、コージェライト製、目開き200cpsi、孔径1.45mm角、壁厚0.35mmのハニカム基材(株式会社岩谷産業製)を用いた。焼成条件等は上記と同様としたが、塗布及び乾燥を2回繰り返し、2回塗布とした。NO転化率の反応条件は、反応温度を150℃、反応ガスを250ppmNO、250ppmNH
3、4.0体積%O
2、Ar中とした。ガス流量は100ml/minとした。結果を
図4に示した。
図4中、縦軸はNO転化率(%)を示す。横軸は実施例2のバインダーを含んだ脱硝触媒の、脱硝触媒/バインダー成分比(重量比)を示す。
【0067】
[脱硝反応速度測定(脱硝触媒成型体、脱硝触媒/バインダー比変更)]
実施例2のバインダーを含んだ脱硝触媒を用い、上記NO転化率測定と同様に複数の脱硝触媒成型体を作製し、上記NO転化率測定と同様の条件にて脱硝反応速度測定を行った。結果を
図5に示した。
図5中、縦軸は反応速度(/10
−7mol
NOs
−1g
−1)を示す。横軸は実施例2のバインダーを含んだ脱硝触媒の、脱硝触媒/バインダー成分比(重量比)を示す。横軸は実施例2のバインダーを含んだ脱硝触媒の、脱硝触媒/バインダー成分比(重量比)を示す。なお、
図5の横軸中、80/20_2は塗布回数を2回とし、80/20_1は塗布回数を1回とした脱硝触媒成型体を示す。80/20_1以外の脱硝触媒成型体は塗布回数を2回とした。
【0068】
図4及び
図5の結果から、脱硝触媒/バインダー比を100/0〜20/80とすることで、好ましいNO転化率及び脱硝反応速度が得られることが確認された。
【0069】
[脱硝触媒塗布液のpHとNO転化率との関係]
実施例、比較例及び参考例の脱硝触媒塗布液のpHを測定し、上記
図4と同様に脱硝触媒をハニカム基材に担持させて脱硝触媒成型体を製造した。焼成条件等は上記と同様としたが、塗布及び乾燥を4回繰り返し、4回塗布とした。脱硝触媒塗布液のpHとNO転化率との関係を
図6〜
図9に示した。
図6は
図4のNO転化率測定と同一の条件で、NO転化率を測定した結果を示す。
図7は
図4のNO転化率測定と同様の条件であるが、水蒸気雰囲気下で測定を行った結果を示す。
図8及び
図9は、実施例2の脱硝触媒塗布液のpHを硝酸及びアンモニアで調整して、2回塗布として脱硝触媒成型体を作製し、NO転化率を測定した結果を示す。
図8は
図6のNO転化率と同一の条件で、
図9は
図7のNO転化率と同一の条件で、それぞれNO転化率を測定した結果を示す。
図6〜
図9の縦軸はNO転化率(%)を示し、横軸は脱硝触媒塗布液のpHを示す。
【0070】
図6〜
図9の結果から、脱硝触媒塗布液のpHを2.0以下とすることで、好ましいNO転化率が得られることが確認された。
【0071】
[脱硝触媒塗布液の粘度とNO転化率との関係]
実施例、比較例及び参考例の脱硝触媒塗布液の粘度を測定し、上記
図4と同様に脱硝触媒をハニカム基材に担持させて脱硝触媒成型体を製造した。焼成条件等は上記と同様としたが、塗布及び乾燥を4回繰り返し、4回塗布とした。脱硝触媒塗布液の粘度とNO転化率との関係を
図10〜
図13に示した。
図10は
図4のNO転化率測定と同一の条件で、NO転化率を測定した結果を示す。
図11は
図4のNO転化率測定と同様の条件であるが、水蒸気雰囲気下で測定を行った結果を示す。
図12及び
図13は、実施例2の脱硝触媒塗布液の粘度を水の添加量で調整して、2回塗布として脱硝触媒成型体を作製し、NO転化率を測定した結果を示す。
図12は
図10のNO転化率と同一の条件で、
図13は
図11のNO転化率と同一の条件で、それぞれNO転化率を測定した結果を示す。
図10〜
図13の縦軸はNO転化率(%)を示し、横軸は脱硝触媒塗布液の粘度(mPa・s)を示す。
【0072】
図10〜
図13の結果から、脱硝触媒塗布液の粘度を3.0mPa・s以上とすることで、好ましいNO転化率が得られることが確認された。
アンモニアを還元剤とする選択的触媒還元反応の際、低温での脱硝効率に優れた脱硝触媒が担持されてなる脱硝触媒成型体を製造する際に、最適な脱硝触媒塗布液を提供する。
脱硝触媒が担持されてなる脱硝触媒成型体の製造に用いられる、バインダー成分を含む脱硝触媒塗布液であって、脱硝触媒は、酸化バナジウムを主成分として、第2の金属を含有し、第2の金属の酸化物換算の含有量が1wt%以上40wt%以下であり、第2の金属が、Co、W、Mo、Nb、Ce、Sn、Ni、Fe、Cu、Zn、及びMnからなる群から選ばれる少なくとも一つであり、バインダー成分は、Tiを含む、脱硝触媒塗布液。