(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6957009
(24)【登録日】2021年10月8日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】姿勢補助具
(51)【国際特許分類】
A61B 90/60 20160101AFI20211021BHJP
A61G 13/00 20060101ALI20211021BHJP
A61F 5/01 20060101ALI20211021BHJP
【FI】
A61B90/60
A61G13/00 Z
A61F5/01 E
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-165122(P2017-165122)
(22)【出願日】2017年8月30日
(65)【公開番号】特開2019-41829(P2019-41829A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年7月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100198029
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 力
(72)【発明者】
【氏名】川平 洋
【審査官】
和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−159113(JP,A)
【文献】
特開2015−039414(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/061269(WO,A1)
【文献】
特開2017−064335(JP,A)
【文献】
特開昭52−137185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 90/60
A61H 3/00
B25J 11/00
A61G 13/00
A61F 5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の胴部に取り付けられる上部胴支持部と、
前記上部胴支持部の下側において使用者の胴部に取り付けられる下部胴支持部と、
前記上部胴支持部と前記下部胴支持部とを使用者の背中側で連結する背部連結部材と、
前記上部胴支持部と前記下部胴支持部とを使用者の体側部側で連結する体側部連結部材とを備え、
前記背部連結部材及び前記体側部連結部材は、それぞれ、伸縮可能な状態と伸縮不可能な状態に切り替えられ、
前記背部連結部材及び前記体側部連結部材の少なくともいずれか一つは、内面に凸部が設けられた筒状の第1部材と、前記第1部材内に挿入され、外面に凹部が設けられた円柱状の第2部材と、を備え、前記伸縮可能な状態において、前記第1部材及び前記第2部材は、互いに対してスライドして相対移動可能であり、前記伸縮不可能な状態において、前記第1部材及び前記第2部材は、前記凸部と前記凹部とが係合することにより、互いに対して固定されることを特徴とする姿勢補助具。
【請求項2】
使用者の胴部に取り付けられる上部胴支持部と、
前記上部胴支持部の下側において使用者の胴部に取り付けられる下部胴支持部と、
前記上部胴支持部と前記下部胴支持部とを使用者の背中側で連結する背部連結部材と、
前記上部胴支持部と前記下部胴支持部とを使用者の体側部側で連結する体側部連結部材とを備え、
前記背部連結部材及び前記体側部連結部材は、それぞれ、伸縮可能な状態と伸縮不可能な状態に切り替えられ、
前記背部連結部材及び前記体側部連結部材の少なくともいずれか一つは、内面に互いに向き合う2つの凸部が設けられた筒状の第1部材と、前記第1部材内に挿入された円柱状の第2部材と、を備え、前記伸縮可能な状態において、前記第1部材及び前記第2部材は、互いに対してスライドして相対移動可能であり、前記伸縮不可能な状態において、前記第1部材及び前記第2部材は、2つの前記凸部が前記第2部材を挟み込むことにより、互いに対して固定されることを特徴とする姿勢補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、姿勢補助具に関するものであり、特に外科医等の立位で長時間作業を行う者が使用するのに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
手術時の外科医や直接介助ナースは、長時間に亙って立位で手術を行う必要があり、疲労が大きい。特に立位で数時間に及ぶ手術では腰部への負担や疲労が大きく、医療資源としての外科医やナースへの身体的悪影響も懸念され、現状でも腰痛から離職したケースもある。このため、外科医や直接介助ナースに対して快適な(負担の少ない)手術環境の確保と体幹の姿勢保持による疲労軽減とが求められる。
【0003】
外科医の姿勢を保持するための従来の姿勢保持器具として、特許文献1に示すように、立位体位の使用者110の腸骨111を左側前方及び右側前方から支持する前支持部と左側方及び右側方から支持する横支持部とを備えて立位体位の使用者110の左右の腸骨111を支持する腸骨支持部101と、当該腸骨支持部101の上方に設けられて使用者110の両腕112を下方から支えるアームレスト102とを有するものがある(特許文献1)。
【0004】
腰部コルセットは戦前から広く普及しており、体幹の姿勢保持効果も持ち合わせるが、特許文献2の身体用サポーターは、体幹を広く覆って32で体幹の姿勢を保持する(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013‐106857号公報
【特許文献2】特開2014‐000185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の姿勢保持器具では、使用者の腕、特に肘や前鱒をアームレストに載せることはできても、手術中、特に消化器外科手術で必要な軽度の前傾姿勢を保持したり、メスやペアンなどの手術器具を持ち替えたりする際に必要な体をねじったりする姿勢を作る際はむしろ邪魔になり手術の進行を阻害する。このため、特に消化器外科で行うような軽度の前傾姿勢を保持する器具として十全であるとは言い難い場合もある。
【0007】
また、特許文献2は32でサポーター全体を締め上げると途中で体幹を捻る、前傾になる、といった動作を行うことが制限され、手術用サポーターとしては十分とは言い難い。
【0008】
本発明は、上記課題を解決しようとするものであり、長時間立位で作業を行う者の作業動作を制限せず、かつ、腰部の負担を軽減することができる姿勢補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための、本発明の一つの観点によれば、姿勢補助具を、使用者の胴部に取り付けられる上部胴支持部と、上部胴支持部材の下側において使用者の胴部に取り付けられる下部胴支持部と、上部胴支持部材と前記下部胴支持部材とを連結する連結部材と、を備え、連結部材が、伸縮可能な状態と伸縮不可能な状態に切り替えられるものとした。
【0010】
また、本発明の他の観点によれば、姿勢補助具を、使用者の胴部に取り付けられる上部胴支持部と、上部胴支持部材の下側において使用者の胴部に取り付けられる下部胴支持部と、上部胴支持部と下部胴支持部材とを使用者の背中側で連結する背部連結部材と、上部胴支持部と前記下部胴支持部材とを使用者の体側部側で連結する体側部連結部材とを備え、背部連結部材又は体側部連結部材は、伸縮可能な状態と伸縮不可能な状態に切り替えられるものであるものとした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、立位で長時間作業する者の作業動作の支障となることなく、使用者の姿勢を適切に支持することができ、使用者の疲労及び負担を軽減することができる姿勢補助具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の姿勢補助具の概略を背中側から見た図である。
【
図2】実施例1の姿勢補助具を体側部から見た図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明の構成は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
図1に本発明の姿勢補助具の概略を背中側から見た図を示す。上部胴支持部1及び下部胴支持部2は、ベルト状又はリング状(環状)の部材であり、使用者の胴に巻き付けるようにして取り付けられ、使用者の胴部に固定される。上部胴支持部1と下部胴支持部2は、背中側に配置される背部連結部材4と体側部に配置される体側部連結部材3により連結されている。背部連結部材4及び体側部連結部材3は、伸縮可能な状態と伸縮不可能な固定状態(ロック状態)が切り替えられる構造となっている。固定状態に固定する方法は、手動で固定する方法でも、電動で自動的に固定される方法でも良い。また固定方法は、メカニカルロックを使用しても良い。
【0015】
伸縮可能状態と固定状態を切替可能な連結部材3、4の構造の具体例としては、以下のようなものがある。
【0016】
連結部材が2種類の部材(以下、「部材A」、「部材B」という。)で構成され、部材Aは中空棒形状で、部材Bは円柱形状で、部材Aの中空穴部に部材Bを入れるような構造とすることができる。伸縮可能状態では、2種類の部材がスライドして相対的に移動できる状態となっている。他方、固定(ロック)状態とするには、適切な伸縮状態で、部材Aの凸部を部材Bの凹部にはめ込んで、部材Aと部材Bを固定すれば、連結部材が伸縮できない固定状態となる。また、別の固定方法としては、部材Aから内側に2個の凸部が電動により飛び出て、その2個の凸部が部材Bを挟み込み、部材Aが部材Bを固定(ロック)する方法とすることもできる。
【0017】
使用方法としては、まず、背部連結部材4及び体側部連結部材3が伸縮可能な状態で作業者が姿勢を調整し、作業者が維持したい姿勢になったところで、背部連結部材4及び体側部連結部材3を伸縮不可能な状態に固定すると、それ以後作業者のその姿勢を本姿勢補助具が支持し、作業者が長時間その姿勢で作業を行っても疲れにくくなるという効果がある。
【実施例1】
【0018】
図2に実施例1(試作機)を体側部側から見た図を示す。5は使用者、6は上部胴支持部、9は下部胴支持部、7は、上部胴支持部6と下部胴支持部9を背中側で連結する背部連結部材、8は、上部胴支持部材6と下部胴支持部材9を体側部側で連結する体側部連結部材である。使用者の体幹に装着されるボディフレームの背側、あるいは体側部で自由にスライドする連結部材7、8で姿勢保持したい部位でロック機構が機能し体幹を固定する(丸印は背側連結部材7。)。使用者の胴部が任意の位置で固定されることによって、姿勢補助に関して注意を払う必要性が下がる。そのため、姿勢保持に関する体幹筋を休ませることが可能となり、本来行うべき作業に注力可能となる。体幹が長時間安定することによって、本来行うべき作業の高効率化、精度の維持、上昇が期待できる。連結部材の固定機構は止った際に手動あるいは自動でロックする。
【0019】
使用者が支持してほしい姿勢で固定して使用者の腰部を支持するため、使用者が立位で作業を行っても疲れにくくなるという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、姿勢補助具として産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0021】
1 上部胴支持部
2 下部胴支持部
3 体側部連結部材
4 背部連結部材
5 使用者
6 上部胴支持部
7 背部連結部材
8 体側部連結部材
9 下部胴支持部