【文献】
久保亮吾, ほか3名,把持・操り理論に基づくバイラテラル制御系の一構成法,電気学会論文誌D (産業応用部門誌),Vol. 127, No. 6,2007年,p. 563-570
【文献】
和田正義, 亀田藤雄, 斎藤征道,ジョイスティック式自動車運転装置による操舵制御に関する検討,計測自動制御学会論文集,Vol. 49, No. 4,2013年,p. 417-424
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
[基本的概念]
図1は、本発明の基本的概念を示す模式図である。
本発明は、事故や疾患等により身体の部位の機能を喪失した障害者を支援するため、障害者自身の意思で運動可能な部位(健全な部位や比較的障害が軽い部位等)によって、喪失した身体の部位の感覚及び動作を代替する装置を実現するものである。
例えば、
図1に示すように、右手を失った障害者の義手の把持動作を、健全な部位である足首の動作によって制御すると共に、義手に入力される作用を足首に伝達することで、障害者は右手の運動機能及び身体感覚を足首に人工的に移植することができる。
このとき、義手における指の速度(位置)及び力の制御エネルギーと、足首の速度(位置)及び力の制御エネルギーとを、後述する制御則によって相互に変換して分配することで、身体感覚が忠実に伝達される。
これにより、物体との相互作用におけるより適切な位置・力の制御が可能な位置・力制御装置を実現することができる。
ただし、本発明は障害者に限らず、健常者における身体の部位の感覚及び動作を代替する装置として実現することも可能である。さらに、本発明は、身体感覚(力触覚)を忠実に伝達する場合の他、速度(位置)あるいは力を加工して伝達する場合等、物体との相互作用におけるより適切な位置・力の制御(位置に基づく物理量及び力に基づく物理量による制御)を行う装置として実現することが可能である。
以下、本発明の位置・力制御装置の一実施形態である力触覚伝達装置の構成について説明する。
【0010】
[構成]
図2は、本発明を適用した力触覚伝達装置1の構成を示すブロック図である。
図2に示すブロック図は、本発明を適用した力触覚伝達装置1の基本的構成を示しており、具体的装置として実装する場合、各ブロックを装置構成に合わせた形態で、適宜、ユニット化すること等が可能である。
図2に示すように、力触覚伝達装置1は、制御対象システムSと、力・速度割当変換ブロックFTと、理想力源ブロックFCあるいは理想速度(位置)源ブロックPCの少なくとも一つと、逆変換ブロックIFTとを含んで構成される。なお、本実施形態においては、制御対象システムSとして、身体感覚供給側デバイスD1と、身体感覚受容側デバイスD2とが含まれる。
【0011】
制御対象システムSは、アクチュエータによって作動するマニピュレータ(実行装置)あるいはアクチュエータによって操作反力を生成可能な操作装置によって構成され、加速度等に基づいてアクチュエータの制御を行う。
具体的には、制御対象システムSは、障害者等において身体感覚が健全な部位によって操作される身体感覚供給側デバイスD1(操作装置)と、障害者等において身体の機能が失われた部位の機能を代替する身体感覚受容側デバイスD2(実行装置)とを含んで構成される。
身体感覚供給側デバイスD1は、障害者等において身体感覚が健全な部位によって操作可能な操作インターフェースを備える操作装置であり、操作を行う身体の部位に応じた構造で構成される。例えば、足で操作を行う場合、ペダルやボタン等、足で押下可能な構造とすることができる。
身体感覚受容側デバイスD2は、障害者等において身体の機能が失われた部位の機能を代替する構造を有するマニピュレータによって構成される。例えば、失われた手の機能を代替する場合、2本のアームあるいは3本または5本の指等で構成された手の形態を備える把持装置とすることができる。
【0012】
力・速度割当変換ブロックFTは、制御対象システムSに応じて設定される速度(位置)及び力の領域への制御エネルギーの変換を定義するブロックである。具体的には、力・速度割当変換ブロックFTでは、制御対象システムSの機能の基準となる値(基準値)と、アクチュエータの現在位置とを入力とする座標変換が定義されている。この座標変換は、一般に、基準値及び現在速度(位置)を要素とする入力ベクトルを速度(位置)の制御目標値を算出するための速度(位置)からなる出力ベクトルに変換すると共に、基準値及び現在の力を要素とする入力ベクトルを力の制御目標値を算出するための力からなる出力ベクトルに変換するものである。本実施形態において、力・速度割当変換ブロックFTにおける座標変換は、次式(1)及び(2)として表される。
【0014】
ただし、式(1)において、x’
pは速度(位置)の状態値を導出するための速度、x’
fは力の状態値に関する速度である。また、x’
mは基準値(身体感覚供給側デバイスD1からの入力)の速度(身体感覚供給側デバイスD1の現在位置の微分値)、x’
sは身体感覚受容側デバイスD2の現在の速度(現在位置の微分値)である。また、式(2)において、f
pは速度(位置)の状態値に関する力、f
fは力の状態値を導出するための力である。また、f
mは基準値(身体感覚供給側デバイスD1からの入力)の力、f
sは身体感覚受容側デバイスD2の現在の力である。
【0015】
理想力源ブロックFCは、力・速度割当変換ブロックFTによって定義された座標変換に従って、力の領域における演算を行うブロックである。理想力源ブロックFCにおいては、力・速度割当変換ブロックFTによって定義された座標変換に基づく演算を行う際の力に関する目標値が設定されている。この目標値は、実現される機能に応じて固定値または可変値として設定される。例えば、基準値が示す機能と同様の機能を実現する場合には、目標値としてゼロを設定したり、スケーリングを行う場合には、再現する機能を示す情報を拡大・縮小した値を設定したりできる。
【0016】
理想速度(位置)源ブロックPCは、力・速度割当変換ブロックFTによって定義された座標変換に従って、速度(位置)の領域における演算を行うブロックである。理想速度(位置)源ブロックPCにおいては、力・速度割当変換ブロックFTによって定義された座標変換に基づく演算を行う際の速度(位置)に関する目標値が設定されている。この目標値は、実現される機能に応じて固定値または可変値として設定される。例えば、基準値が示す機能と同様の機能を実現する場合には、目標値としてゼロを設定したり、スケーリングを行う場合には、再現する機能を示す情報を拡大・縮小した値を設定したりできる。
【0017】
逆変換ブロックIFTは、速度(位置)及び力の領域の値を制御対象システムSへの入力の領域の値(例えば電圧値または電流値等)に変換するブロックである。
このような基本的構成により、制御対象システムSのアクチュエータにおける位置の情報が力・速度割当変換ブロックFTに入力されると、位置に関する情報に対応する速度(位置)及び力の情報を用いて、力・速度割当変換ブロックFTにおいて、位置及び力の領域それぞれの制御則が適用される。そして、理想力源ブロックFCにおいて、力の演算が行われ、理想速度(位置)源ブロックPCにおいて、速度(位置)の演算が行われ、力及び速度(位置)それぞれに制御エネルギーが分配される。なお、本実施形態においては、アクチュエータ等の位置を検出し、検出した位置から力の情報を取得する場合を例に挙げて説明するが、トルクメータ等、力を検出するセンサによって力の情報を取得することとしてもよい。
【0018】
理想力源ブロックFC及び理想速度(位置)源ブロックPCにおける演算結果は、制御対象システムSの制御目標を示す情報となり、これらの演算結果が逆変換ブロックIFTにおいてアクチュエータの入力値とされて、制御対象システムSに入力される。
その結果、制御対象システムSのアクチュエータは、力・速度割当変換ブロックFTによって定義された機能に従う動作を実行し、目的とする力触覚伝達装置1の動作が実現される。
即ち、本発明においては、物体との相互作用におけるより適切な位置・力の制御が可能な力触覚伝達装置1を実現することが可能となる。
【0019】
[具体的構成]
次に、力触覚伝達装置1の具体的構成について説明する。
図3は、力触覚伝達装置1の具体的構成を示す図である。
なお、
図3においては、具体的な装置として実装される場合の制御系統の一形態を示している。
図4(A)は、力触覚伝達装置1が実現する身体機能の一例を示す外観図であり、
図4(B)は、
図4(A)に示す義手における指の駆動機構を示す模式図である。
図4(A)に示すように、力触覚伝達装置1は、制御対象システムSとして、靴の形態で実現され、内部に設置されたボタンがユーザの健全な足によって操作される身体感覚供給側デバイスD1と、3本の指を備える義手の形態で実現され、ユーザの失われた手の機能を代替する身体感覚受容側デバイスD2とを備えている。なお、
図4(A)において、身体感覚供給側デバイスD1及び身体感覚受容側デバイスD2それぞれには、電流を供給するバッテリと、逆変換ブロックIFTとが備えられ、逆変換ブロックIFTの処理結果に対応する電流が供給される。また、力・速度割当変換ブロックFTと、理想力源ブロックFCあるいは理想速度(位置)源ブロックPCの少なくとも一つとは、身体感覚供給側デバイスD1または身体感覚受容側デバイスD2と一体に設置したり、不図示の別ユニットとして構成したりすることができる。さらに、身体感覚供給側デバイスD1及び身体感覚受容側デバイスD2を含む力触覚伝達装置1の各部は、例えばブルートゥース(登録商標)やWi−Fi等の無線通信によって、制御に関する情報を互いに通信可能な構成とすることができる。
【0020】
以下、
図4(A)に示す外観形態の力触覚伝達装置1が、
図3に示す制御系統の一形態によって制御されるものとして説明する。
図3に示すように、力触覚伝達装置1は、制御対象システムS(身体感覚供給側デバイスD1及び身体感覚受容側デバイスD2)と、身体感覚対応付けユニット10と、応答値取得部20a,20bとを含んで構成される。
これらのうち、制御対象システムSについては、
図2において説明した通りである。ただし、
図4(A)に示す義手は、3本の指それぞれにアクチュエータが備えられ、これら複数のアクチュエータと、靴の内部に設置されたボタンに備えられた1つのアクチュエータとの間で、力触覚の伝達が行われる。また、
図4(B)に示すように、各指は、アクチュエータの回転が傘歯車を介して開閉動作に変換される機構を備えている。
【0021】
このとき、義手の指の動きのモードに応じて、力・速度割当変換ブロックFTを介した統合的な制御(速度(位置)及び力のバイラテラル制御)と、従来のようなアクチュエータの独立的な制御(速度(位置)または力のインピーダンス制御)とを併せて用いることで、より適切な動作が実現される。なお、インピーダンス制御とは、機械的インピーダンス(剛性、粘性及び慣性)が目的に応じた状態となるように速度(位置)及び力を制御する手法である。具体的には、義手における親指、人差し指及び中指の3本の指の動きには、(1)人差し指及び中指と親指とが互いに近づいて対象物を保持する把持モードと、(2)親指に対して人差し指と中指とが相対的に逆方向に移動する回転モードと、(3)親指、人差し指及び中指が同方向に移動する操りモードと、が成分として含まれている。そして、把持モードには上述のバイラテラル制御を用いると共に、回転モード及び操りモードにはインピーダンス制御を用いることで、種々の環境に応じて適切に対象物を把持する動作が実現される。
【0022】
なお、靴の内部に設置されたボタンに備えられた1つのアクチュエータと、親指、人差し指及び中指それぞれに備えられたアクチュエータとでバイラテラル制御を実行する場合、力の制御に関しては、靴のアクチュエータの力と、指のアクチュエータの力とにおいて作用反作用が成り立つ(即ち、和が0となる)ことが条件である。また、速度(位置)の制御に関しては、靴のアクチュエータの速度(位置)と、指のアクチュエータの速度(位置)とが一致する(即ち、差が0となる)ことが条件である。ただし、力もしくは位置(速度)に対し係数をかける等の加工を施すことも可能である。この場合、靴のアクチュエータの制御と指のアクチュエータの制御との間で、力もしくは位置のスケーリングを行うことができる。そのため、例えば足と手(指)のように、発揮できる力が異なる部位の間で、より柔軟な力触覚の伝達を行うこと等が可能となる。また、靴のアクチュエータの力もしくは位置(速度)を把持モードや回転モード、操りモードといった変換後の空間に対応付けることも可能である。この場合、各指が対象物を把持する動作の成分(モード)を選択してユーザの足に伝達することができる。そのため、装置構成や力触覚の伝達目的等に応じて、把持動作の状況をより適切にユーザに伝達することができる。このような条件に従って制御を実行することで、自由度の異なる身体感覚供給側デバイスD1と身体感覚受容側デバイスD2とでバイラテラル制御を実行することが可能となる。
【0023】
身体感覚対応付けユニット10は、
図2における力・速度割当変換ブロックFTと、理想力源ブロックFCあるいは理想速度(位置)源ブロックPCと、逆変換ブロックIFTとを含むものであり、例えば、これらの機能を実現するソフトウェアを実装したマイクロコンピュータやIC(Integrated Circuit)等の制御装置によって構成される。
応答値取得部20aは、身体感覚供給側デバイスD1のアクチュエータ(またはアクチュエータの制御対象)の位置(または速度あるいは加速度)を検出するセンサであり、検出した位置を示す情報を身体感覚対応付けユニット10に出力する。
応答値取得部20bは、身体感覚受容側デバイスD2のアクチュエータ(またはアクチュエータの制御対象)の位置(または速度あるいは加速度)を検出するセンサであり、検出した位置を示す情報を身体感覚対応付けユニット10に出力する。
【0024】
[動作例]
次に、
図3及び
図4に示す力触覚伝達装置1の動作例を説明する。
力触覚伝達装置1を動作させる場合、靴の形態で実現された身体感覚供給側デバイスD1をユーザの健全な足に装着し、手の形態で実現された身体感覚受容側デバイスD2を、機能を失ったユーザの手に装着する。
そして、身体感覚受容側デバイスD2を、把持対象とする対象物を把持可能な位置に配置させた状態で、ユーザが身体感覚供給側デバイスD1のボタンを踏み込む。
すると、ボタンの踏み込み位置(踏み込みストローク)が応答値取得部20aによって検出され、検出された位置の情報が身体感覚対応付けユニット10に出力される。このとき、身体感覚受容側デバイスD2のアクチュエータの位置も応答値取得部20bによって検出され、検出された位置の情報が身体感覚対応付けユニット10に出力される。
【0025】
身体感覚対応付けユニット10は、力・速度割当変換ブロックFTの機能によって、応答値取得部20aから入力された身体感覚供給側デバイスD1の位置の情報及び応答値取得部20bから入力された身体感覚受容側デバイスD2の位置の情報を基に、(1)式及び(2)式に従う演算を行い、速度(位置)の状態値を導出するための速度x’
p、力の状態値に関する速度x’
f、速度(位置)の状態値に関する力f
p、力の状態値を導出するための力f
fを算出する。
また、身体感覚対応付けユニット10は、理想力源ブロックFCの機能によって、力の状態値に関する速度x’
f及び力の状態値を導出するための力f
fを基に、身体感覚供給側デバイスD1が発生する反力の目標値及び身体感覚受容側デバイスD2が発生する力の目標値を算出する。同様に、身体感覚対応付けユニット10は、理想速度(位置)源ブロックPCの機能によって、速度(位置)の状態値を導出するための速度x’
p及び速度(位置)の状態値に関する力f
pを基に、身体感覚供給側デバイスD1の位置の目標値及び身体感覚受容側デバイスD2の位置の目標値を算出する。
【0026】
そして、身体感覚対応付けユニット10は、身体感覚供給側デバイスD1のための逆変換ブロックIFTの機能により、身体感覚供給側デバイスD1が発生する反力の目標値及び身体感覚供給側デバイスD1の位置の目標値から身体感覚供給側デバイスD1への入力(電流値)を算出し、身体感覚供給側デバイスD1に電流を供給する。同様に、身体感覚対応付けユニット10は、身体感覚受容側デバイスD2のための逆変換ブロックIFTの機能により、身体感覚受容側デバイスD2が発生する力の目標値及び身体感覚受容側デバイスD2の位置の目標値から身体感覚受容側デバイスD2への入力(電流値)を算出し、身体感覚受容側デバイスD2に電流を供給する。
このような処理が連続的に繰り返されることで、ユーザによる身体感覚供給側デバイスD1の操作及び身体感覚受容側デバイスD2に対する対象物からの作用に応じた力触覚が、バイラテラル制御によって互いに伝達される。
これにより、ユーザは、自らの足による操作によって、対象物を手で把持する場合と同様の感覚を受けることができると共に、その感覚に応じた接触力で対象物を把持することができる。
したがって、物体との相互作用におけるより適切な位置・力の制御が可能な力触覚伝達装置1を実現することができる。
【0027】
[実施形態の効果]
図5は、本発明の効果の一例を示す模式図であり、
図5(A)は本実施形態に係る力触覚伝達装置1によって木円盤(直径数センチ程度)を移送した場合の位置の追従結果を示す図、
図5(B)は従来の筋電義手によって木円盤を移送した場合の力の追従結果を示す図である。
図5(A)、(B)に示すように、本実施形態に係る力触覚伝達装置1においては、身体感覚受容側デバイスD2に入出力される位置及び力が、身体感覚供給側デバイスD1に入出力される位置及び力に追従していることがわかる。なお、
図5(B)においては、座標設定の都合上、身体感覚供給側デバイスD1と身体感覚受容側デバイスD2とで、力の向きが反転して示されている(以下に示す
図6(B)においても同様である)。
即ち、力触覚伝達装置1においては、木円盤を適切に把持することが可能である。
なお、筋電義手によって同様の作業を行った場合、木円盤を破損したり、途中で落としてしまったりする等、適切に把持することができなかった。また、筋電義手による場合、力触覚伝達装置1による場合に比べて、約2.8倍の作業時間を要した。これは、力触覚伝達装置1においては、対象物の形状に合わせて、各指が柔軟に把持動作を行うことができるのに対し、筋電義手においては、対象物の形状に合わせた把持動作が行えないこと、及び、筋電義手を操作するための筋肉の動作が直感的にわかり難いこと、筋電義手が出力する力の調整ができない(あるいは調整が困難である)こと等が原因であると考えられる。
【0028】
また、
図6は、本発明の効果の他の例を示す模式図であり、
図6(A)は本実施形態に係る力触覚伝達装置1によって直方体(一辺数センチ程度)を移送した場合の位置の追従結果を示す図、
図6(B)は従来の筋電義手によって直方体を移送した場合の力の追従結果を示す図である。
図6(A)、(B)においても、
図5(A)、(B)の場合と同様に、本実施形態に係る力触覚伝達装置1においては、身体感覚受容側デバイスD2に入出力される位置及び力が、身体感覚供給側デバイスD1に入出力される位置及び力に追従していることがわかる。
即ち、力触覚伝達装置1においては、直方体を適切に把持することが可能である。
なお、筋電義手によって同様の作業を行った場合、直方体を把持する動作を成功する割合は高いものの、力触覚伝達装置1による場合に比べて、約1.7倍の作業時間を要した。即ち、筋電義手によって比較的把持し易い形状の対象物であっても、本実施形態に係る力触覚伝達装置1を用いる場合の方が、より効率的に作業を行うことができる。
【0029】
[実現される身体機能の例]
上述の構成により、力触覚伝達装置1は、種々の身体機能を実現可能であり、力触覚伝達装置1の装置形態は、障害者が必要とする身体機能と、その障害者が装置の操作を行う健全な部位との関係で柔軟に設計することが可能である。
以下、力触覚伝達装置1によって実現可能な身体機能の例を説明する。
【0030】
[脇で挟み込む身体感覚供給側デバイスと手の機能を実現する身体感覚受容側デバイス]
図7は、力触覚伝達装置1によって実現される身体機能の一例を示す図であり、脇で挟み込むことにより操作される身体感覚供給側デバイスD1と、手の機能を実現する身体感覚受容側デバイスD2とを示す外観図である。
図7に示すように、身体感覚供給側デバイスD1は、ヒンジによって回転可能に連結された第1の部材P1及び第2の部材P2を備え、第1の部材P1と第2の部材P2との相対的な回転角度は、ロータリーエンコーダ等のセンサによって検出される。また、身体感覚供給側デバイスD1は、第1の部材P1と第2の部材P2との相対的な回転に対して反力を発生するアクチュエータを備えている。なお、第1の部材P1はユーザの胴体側に固定され、第2の部材P2はユーザの腕側に固定される。
一方、身体感覚受容側デバイスD2は、親指に相当する1本の指と、これに対向して物体を把持可能な2本の指とを備え、これらの指における関節の動作を制御するアクチュエータをさらに備えている。また、各指の関節の角度は、ロータリーエンコーダ等のセンサによって検出される。
このような構成の下、ユーザが身体感覚供給側デバイスD1を脇に挟み込んで操作すると、第1の部材P1と第2の部材P2との相対的な回転角度が検出され、身体感覚受容側デバイスD2の各指の角度と共に、身体感覚対応付けユニット10に入力される。
すると、バイラテラル制御によって、ユーザによる身体感覚供給側デバイスD1の操作及び身体感覚受容側デバイスD2に対する対象物からの作用に応じた力触覚が互いに伝達される。
即ち、ユーザは、物体との相互作用における力触覚を脇で感じながら、対象物を手による場合と同様に取り扱うことができる。
これにより、例えば手の機能を失ったユーザにおいて、脇の力触覚を利用して自らの手の感覚に近い手の機能を代替することが可能となる。
【0031】
[首で挟み込む身体感覚供給側デバイスと手の機能を実現する身体感覚受容側デバイス]
図8は、力触覚伝達装置1によって実現される身体機能の一例を示す図であり、首で挟み込むことにより操作される身体感覚供給側デバイスD1と、手の機能を実現する身体感覚受容側デバイスD2とを示す外観図である。
図8に示すように、身体感覚供給側デバイスD1は、ヒンジによって回転可能に連結された第1の部材P3及び第2の部材P4を備え、第1の部材P3と第2の部材P4との相対的な回転角度は、ロータリーエンコーダ等のセンサによって検出される。また、身体感覚供給側デバイスD1は、第1の部材P3と第2の部材P4との相対的な回転に対して反力を発生するアクチュエータを備えている。なお、第1の部材P3はユーザの肩に固定され、第2の部材P4はユーザの顎に当接される。
身体感覚受容側デバイスD2は、
図7に示す構成と同様である。
このような構成の下、ユーザが身体感覚供給側デバイスD1を首に挟み込んで操作すると、第1の部材P3と第2の部材P4との相対的な回転角度が検出され、身体感覚受容側デバイスD2の各指の角度と共に、身体感覚対応付けユニット10に入力される。
すると、バイラテラル制御によって、ユーザによる身体感覚供給側デバイスD1の操作及び身体感覚受容側デバイスD2に対する対象物からの作用に応じた力触覚が互いに伝達される。
即ち、ユーザは、物体との相互作用における力触覚を首で感じながら、対象物を手による場合と同様に取り扱うことができる。
これにより、例えば手の機能を失ったユーザにおいて、首の力触覚を利用して自らの手の感覚に近い手の機能を代替することが可能となる。
【0032】
[指に装着される身体感覚供給側デバイスと膝の機能を実現する身体感覚受容側デバイス]
図9は、力触覚伝達装置1によって実現される身体機能の一例を示す図であり、指に装着することにより操作される身体感覚供給側デバイスD1と、膝の機能を実現する身体感覚受容側デバイスD2とを示す外観図である。
図9に示すように、身体感覚供給側デバイスD1は、親指、人差し指及び中指に装着される指型の操作子P5〜P7を備え、これらの操作子P5〜P7における反力を発生するアクチュエータをさらに備えている。また、各操作子P5〜P7の関節の角度は、ロータリーエンコーダ等のセンサによって検出される。
一方、身体感覚受容側デバイスD2は、ヒンジによって回転可能に連結された第1の部材P8及び第2の部材P9を備え、第1の部材P8と第2の部材P9との相対的な回転角度は、ロータリーエンコーダ等のセンサによって検出される。また、身体感覚受容側デバイスD2は、第1の部材P8と第2の部材P9との相対的な回転を制御するアクチュエータをさらに備えている。なお、第1の部材P8はユーザの大腿部側に固定され、第2の部材P9はユーザの下腿部側に固定される。
このような構成の下、ユーザが身体感覚供給側デバイスD1を、指を折り曲げる動作によって操作すると、指型の操作子P5〜P7の関節の角度が検出され、身体感覚受容側デバイスD2の第1の部材P8と第2の部材P9との相対的な回転角度と共に、身体感覚対応付けユニット10に入力される。
すると、バイラテラル制御によって、ユーザによる身体感覚供給側デバイスD1の操作及び身体感覚受容側デバイスD2に対する対象物(地面等)からの作用に応じた力触覚が互いに伝達される。
即ち、ユーザは、物体との相互作用における力触覚を指で感じながら、対象物に対して脚による場合と同様の動作を行うことができる。
これにより、例えば膝の機能が低下したユーザにおいて、指の力触覚を利用して自らの脚の感覚に近い膝の機能を代替することが可能となる。
なお、このような構成の場合、複数の指型の操作子P5〜P7の複数の関節のうち、いずれか一つの動きを身体感覚受容側デバイスD2の動作と対応付けたり、複数の指型の操作子P5〜P7全体の動きを身体感覚受容側デバイスD2の動作と対応付けたりすることが可能である。
【0033】
[脇で挟み込む身体感覚供給側デバイスと操作対象の機能を実現する身体感覚受容側デバイス]
本実施形態における力触覚伝達装置1によって、身体機能を実現する場合の他、実現された身体機能による操作対象物に直接作用する装置とすることも可能である。
図10は、力触覚伝達装置1によって実現される、身体機能による操作対象物に直接作用する装置の一例を示す図であり、脇で挟み込むことにより操作される身体感覚供給側デバイスD1と、手の機能による操作対象物である電動ステアリング装置に直接作用する身体感覚受容側デバイスD2とを示す外観図である。
図10において、身体感覚供給側デバイスD1は、
図7に示す構成と同様である。
一方、身体感覚受容側デバイスD2は、電動ステアリング装置(具体的には、ステアリング操作を制御するアクチュエータ)として構成される。
このような構成の下、ユーザが身体感覚供給側デバイスD1を脇に挟み込んで操作すると、第1の部材P1と第2の部材P2との相対的な回転角度が検出され、身体感覚受容側デバイスD2のアクチュエータの位置の情報と共に、身体感覚対応付けユニット10に入力される。
図10に示す構成では、例えば、脇を基準位置から開くと左に転舵する操作、脇を基準位置から閉じると右に転舵する操作に設定することができる。
すると、バイラテラル制御によって、ユーザによる身体感覚供給側デバイスD1の操作及び身体感覚受容側デバイスD2に対する対象物(操向輪)からの作用に応じた力触覚が互いに伝達される。
即ち、ユーザは、物体との相互作用における力触覚を脇で感じながら、対象物を手による場合と同様に取り扱うことができる。
これにより、例えば手の機能を失ったユーザにおいて、脇の力触覚を利用して自らの手でハンドルを操作する場合と同様の感覚で、自動車の操舵操作を行うことが可能となる。
【0034】
[デバイスの構成例]
次に、本発明の身体感覚供給側デバイスD1及び身体感覚受容側デバイスD2を実現する具体的なデバイスの構成例について説明する。
[身体感覚供給側デバイスの構成例]
図11は、身体感覚供給側デバイスD1の具体的な構成例を示す図であり、
図11(A)は指先側を前方として身体感覚供給側デバイスD1を左後方から見た斜視図、
図11(B)は指先側を前方として身体感覚供給側デバイスD1を左前方から見た斜視図である。
図11に示す身体感覚供給側デバイスD1は、例えば、
図9に示す身体機能を実現するための身体感覚供給側デバイスD1として用いることができる。
図11において、身体感覚供給側デバイスD1は、操作子P5〜P7を備え、これら操作子P5〜P7は、それぞれ親指、人差し指及び中指に装着される指先形状のカバーを有している。また、身体感覚供給側デバイスD1は、これらの操作子P5〜P7それぞれにおける反力を発生するアクチュエータM1〜M3をさらに備えている。そして、傘歯車等を用いたギア機構G1〜G3を介してアクチュエータM1〜M3と操作子P5〜P7(カバー)とが連結されることで、ユーザの親指、人差し指及び中指と操作子P5〜P7とが、リンク構造上、同軸に関節(可動軸)を配置された構造となっている。なお、各操作子P5〜P7の関節の角度は、ロータリーエンコーダ等のセンサによって検出される。
このような構成により、ユーザは、指先形状を有する3本のカバーに指を入れて操作子P5〜P7を装着することにより、人間本来の動きを阻害されることなく、身体感覚供給側デバイスD1との間で動きを伝達することが可能となる。
ちなみに、アクチュエータM1〜M3を、
図11のように関節を同軸とすることなく取り付けると、指の関節と外骨格ロボットである身体感覚供給側デバイスD1の関節との位置がずれ、違和感が生じてしまう。
これに対し、
図11に示すデバイスの構成例では、傘歯車等を用いたギア機構G1〜G3を介することで、指の関節と身体感覚供給側デバイスD1の関節とが同軸上に配置されるため、ユーザは、身体感覚供給側デバイスD1との間で違和感なく動作の伝達を行うことができる。
【0035】
また、
図12は、身体感覚供給側デバイスD1の具体的な他の構成例を示す図である。
なお、
図12においては、指先側を前方として身体感覚供給側デバイスD1を左前方から見た斜視図を示している。
図12に示す構成例では、
図11に示す構成例に対し、操作子P5〜P7が、指先形状のカバー部材に代えて、リング部材を有していると共に、リンク機構を介してアクチュエータM1〜M3と操作子P5〜P7(リング部材)とが連結されることで、ユーザの親指、人差し指及び中指と操作子P5〜P7とが、リンク構造上、実質的に同軸に関節(可動軸)を配置されたものとなっている。
図12に示す構成例においても、
図11に示す構成例と同様に、ユーザは、リング部材に3本の指を入れて操作子P5〜P7を装着することにより、人間本来の動きを阻害されることなく、身体感覚供給側デバイスD1との間で動きを伝達することが可能となる。
また、
図12に示す構成例では、ギア機構を削減できるため、省スペース化を図ることができる。
【0036】
[身体感覚供給側デバイスの構成例]
図13は、身体感覚受容側デバイスD2の具体的な構成例を示す図である。
図13に示す身体感覚受容側デバイスD2は、例えば、
図7に示す身体機能を実現するための身体感覚受容側デバイスD2として用いることができる。
図13に示すように、身体感覚受容側デバイスD2は、人間の腕の構造を模した腕型マニピュレータに設置された構成とすることができる。
図13に示す構成例では、右腕及び左腕に相当する2つの腕型マニピュレータMP1,MP2が一組とされ、各腕型マニピュレータMP1,MP2は、支持部材31と、ブラケット32と、第1腕部材33と、第2腕部材34と、ハンド部材35(身体感覚受容側デバイスD2)とを有している。
ブラケット32は、支持部材31に鉛直方向の回転軸を介して取り付けられ、支持部材31に対し、アクチュエータM4によって鉛直方向の回転軸周りに回転可能となっている。また、第1腕部材33は、ブラケット32に水平方向の回転軸を介して取り付けられ、ブラケット32に対し、アクチュエータM5によって水平方向の回転軸周りに回転可能となっている。また、第2腕部材34は、第1腕部材33に水平方向の回転軸を介して取り付けられ、第1腕部材33に対し、ベルト等を介して第2腕部材34と連結されているアクチュエータM6によって水平方向の回転軸周りに回転可能となっている。ハンド部材35(身体感覚受容側デバイスD2)は、第2腕部材34に対し、第2腕部材34の長手方向の回転軸を介して取り付けられ、第2腕部材34に対し、第2腕部材34に内蔵されたアクチュエータM7によって長手方向の回転軸周りに回転可能となっている。また、ハンド部材35は、親指、人差し指及び中指に相当する指先形状の指部材35a〜35cを有している。そして、ハンド部材35は、これらの指部材35a〜35cの動作を制御するアクチュエータM8〜M10をさらに備えている。
このような腕型マニピュレータMP1,MP2は、人間に近い関節構造(肩関節、肘関節、手首関節及び指関節)を持ち、片腕に7自由度を有するものとなる。そして、腕型マニピュレータMP1,MP2においては、ハンド部材35(身体感覚受容側デバイスD2)によって対象物を把持する場合に、より自然な姿勢での把持動作を行うことができる。
即ち、腕の機能を失ったユーザにおいて、自らの腕の感覚に近い腕の機能を代替することが可能になる。
【0037】
[応用例]
力触覚伝達装置1の構成として、障害者等の食事を支援する装置を構成することができる。
図14は、障害者等の食事を支援する装置として構成した力触覚伝達装置1の外観図である。
図14に示す力触覚伝達装置1において、身体感覚供給側デバイスD1は、
図9に示す構成と同様である。
一方、身体感覚受容側デバイスD2は、スタンド100と、操作部200と、伸縮部300と、転回部400と、ピックアップ部500とを含んで構成される。
これらのうち、操作部200は、スタンド100に連結され、スタンド100に対して鉛直方向及び水平方向に回転可能に支持されている。操作部200の上端部は、ユーザが顎を当接させてピックアップ部500の方向を定めるためのインターフェースを構成している。また、操作部200には、伸縮部300のラックギアを移動させるピニオンギア及びアクチュエータが内蔵されている。
【0038】
伸縮部300は、操作部200に内蔵されたアクチュエータによって操作部200から進退可能に構成されたラックギアを備えている。
転回部400は、伸縮部300とピックアップ部500とを連結し、伸縮部300に対してピックアップ部500を、操作部200側及び操作部200と反対側に180度回転させる。また、転回部400には、このような転回動作を制御するアクチュエータが内蔵されている。
ピックアップ部500は、転回部400と連結された支持部材501の先端に、食物を突き刺して保持可能な銛部材502を備えている。
【0039】
図14に示す力触覚伝達装置1では、例えば、身体感覚供給側デバイスD1において、人差し指の動きが伸縮部300の進退動作に対応し、親指の動きがピックアップ部500により食物を突き刺す動作(所定の反力まで、あるいは、ユーザの親指に力触覚を伝達して伸縮部300を伸長させる動作)に対応し、中指の動きが転回部400の転回動作に対応する構成とできる。
このような構成の下、ユーザが食物を視認しながら顎でピックアップ部500の方向を定め、指型の操作子P5〜P7を指で操作することで、ピックアップ部500によって食物を刺す動作を行わせる。
例えば、初めに、ユーザは、中指の動きにより、折り畳まれたピックアップ部500を食物方向に転回させる。
【0040】
さらに、ユーザは、食物を視認しながら顎でピックアップ部500の方向を定め、人差し指の動きにより、伸縮部300を伸長させて、ピックアップ部500を目的とする食物付近に配置させる。
そして、ユーザは、親指の動きにより、ピックアップ部500を目的とする食物に突き刺す。
これにより、力触覚伝達装置1が食物を保持した状態となる。
この後、ユーザは、人差し指の動きにより、伸縮部300を収縮させる。
さらに、ユーザは、中指の動きにより、ピックアップ部500を折り畳む方向(操作部200側)に転回させる。
【0041】
これにより、ピックアップ部500に保持された食物が、ユーザの口元付近に移動される。
すると、ユーザは目的とする食物を食べることができる。
このような動作を繰り返すことで、食物を手で食べることができないユーザが、自力で食物を食べることが可能になり、自らの力で食事をしているという達成感を得ながら食事を行うことが可能となる。
【0042】
以上のように構成される力触覚伝達装置1は、身体感覚供給側デバイスD1と、身体感覚受容側デバイスD2と、身体感覚対応付けユニット10とを備える。
身体感覚供給側デバイスD1は、身体の部位によって操作され、操作反力を生成する機能を有する操作装置を備えている。
身体感覚受容側デバイスD2は、身体の部位の機能または身体の部位によって操作される装置の機能を有する実行装置を備えている。
身体感覚対応付けユニット10は、身体感覚供給側デバイスD1の操作位置に関する情報に対応する速度(位置)及び力の情報と、身体感覚受容側デバイスD2の出力位置に関する情報に対応する速度(位置)及び力の情報とに基づいて、身体感覚供給側デバイスD1及び身体感覚受容側デバイスD2の出力における速度または位置の制御量と力の制御量とを算出する。
また、身体感覚対応付けユニット10は、身体感覚供給側デバイスD1及び身体感覚受容側デバイスD2の出力における速度または位置の制御量と力の制御量とを統合し、その出力を身体感覚供給側デバイスD1及び身体感覚受容側デバイスD2に戻すべく速度または位置の制御量と力の制御量とを逆変換して、身体感覚供給側デバイスD1及び身体感覚受容側デバイスD2への入力を決定する。
これにより、ユーザによる身体感覚供給側デバイスD1の操作及び身体感覚受容側デバイスD2に対する対象物からの作用に応じた力触覚が互いに伝達される。
これにより、ユーザは、自らの身体の健全な部位等による操作によって、身体の部位の機能で対象物を取り扱う場合、または、身体の部位によって操作される装置を自らの身体で操作する場合と同様の感覚を受けることができると共に、その感覚に応じて対象物を取り扱うことができる。
したがって、物体との相互作用におけるより適切な位置・力の制御が可能な力触覚伝達装置1を実現することができる。
【0043】
また、身体感覚対応付けユニット10は、力・速度割当変換ブロックFTと、理想速度(位置)源ブロックPCと、理想力源ブロックFCとを備える。
力・速度割当変換ブロックFTは、身体感覚供給側デバイスD1の操作位置に関する情報に対応する速度(位置)及び力の情報を基準として、身体感覚供給側デバイスD1の操作位置に関する情報に対応する速度(位置)及び力の情報と身体感覚受容側デバイスD2の出力位置に関する情報に対応する速度(位置)及び力の情報とに基づいて、身体感覚供給側デバイスD1における操作と身体感覚受容側デバイスD2の出力とをバイラテラル制御するように、制御エネルギーを速度または位置のエネルギーと力のエネルギーとに割り当てる変換を行う。
理想速度(位置)源ブロックPCは、力・速度割当変換ブロックFTによって割り当てられた速度または位置のエネルギーに基づいて、速度または位置の制御量を算出する。
理想力源ブロックFCは、力・速度割当変換ブロックFTによって割り当てられた力のエネルギーに基づいて、力の制御量を算出する。
これにより、身体感覚供給側デバイスD1の操作位置に関する情報に対応する速度(位置)及び力の情報を基準として、身体感覚供給側デバイスD1における操作と身体感覚受容側デバイスD2の出力とをバイラテラル制御することが可能となるため、身体感覚受容側デバイスD2を介してユーザの身体と同様の感覚で対象物を取り扱うことができる。
【0044】
身体感覚供給側デバイスD1は、ヒンジによって回転可能に連結された第1の部材P1及び第2の部材P2を備え、第1の部材P1に対する第2の部材P2の回転位置を変化させることによって操作が行われる。
これにより、単純な動作によって身体感覚受容側デバイスD2を操作することができるため、身体に障害を有するユーザ等においても、容易に身体感覚受容側デバイスD2を操作することができる。
【0045】
身体感覚受容側デバイスD2は、複数の指を備え、物体を把持可能な手の形状を有するマニピュレータとして構成される。
これにより、手の機能を失ったユーザにおいて、自らの手の感覚に近い手の機能を代替することが可能となる。
【0046】
身体感覚供給側デバイスD2は、指に装着される操作子を備え、指の可動軸と、当該指の可動軸に対応する操作子の可動軸とのうち、少なくともいずれかが同軸に配置されている。
これにより、ユーザは、人間本来の動きを阻害されることなく、身体感覚供給側デバイスとの間で動きを伝達することが可能となる。
【0047】
身体感覚受容側デバイスD2は、自動車の操舵操作を行うための電動ステアリング装置として構成される。
これにより、手の機能を失ったユーザにおいて、自らの手でハンドルを操作する場合と同様の感覚で、自動車の操舵操作を行うことが可能となる。