【実施例】
【0019】
図1は、本願発明の実施の形態に係る接合処理装置の(a)構成の一例を示すブロック図と、(b)接合処理装置による接合処理の一例を示すフロー図である。
【0020】
図1(a)を参照して、接合処理装置1は、制御部3と、振動処理部5(本願請求項の「振動処理部」の一例)と、加圧部7(本願請求項の「加圧部」の一例)を備える。振動処理部5は、電気信号発振部9と、振動子部11と、右側駆動部13と、左側駆動部15と、ホーン17を備える。
【0021】
制御部3は、制御信号を利用して、接合処理装置1の動作を制御する。
【0022】
振動処理部5は、音波振動(20kHz未満の振動)及び/又は超音波振動(20kHz以上の振動)を利用して、リベット19と母材21を接合する。母材21は、複数の部材を含む。
図1では、第1部材23と第2部材25を含むとする。リベット19は、金属であり、例えば銅、アルミ、鉄(スチール)などである。第1部材23及び第2部材25は、金属(例えばアルミ、鉄(スチール)など)でもよく、無機物(例えばセラミックスなど)でもよい。例えば、第1部材23が金属で、第2部材25が無機物でもよい。
【0023】
第1部材23と第2部材25は、板状のものであり、母材21の表面にあいた一つ又は複数の孔が形成されている。孔は、少なくとも第1部材23を貫通する。孔は、第2部材25にはなくてもよく(
図5(a)など参照)、第2部材25の表面から途中まで形成されたもの(
図5(c)など参照)でもよく、第2部材25を貫通するもの(母材21の貫通孔。
図6(a)など参照)でもよい。孔の内面は、例えば母材21の表面ではない部分である。
【0024】
リベット19は、胴部と、頭部を備える。胴部において、頭部とは反対側の端を先端という。先端は、少なくとも母材21の表面の孔の形状よりも小さい。ただし、孔の深い位置では、先端は、孔の形状よりも小さくてもよい(例えば
図5(d)など参照)。頭部は、少なくとも一部は孔に差し込まれていない状態で、振動が与えられる。
【0025】
振動処理部5において、電気信号発振部9は、音波振動及び/又は超音波振動に対応する電気信号を発振する。振動子部11は、電気信号を、機械振動に変換する。右側駆動部13及び左側駆動部15は、ホーン17を両側から支持して回転させる。右側駆動部13は、振動子部11による機械振動をホーン17に伝える。ホーン17は、リベット19及び母材21の上に位置して共振する。これにより、振動処理部5は、音波振動及び/又は超音波振動を利用して接合処理を実現することができる。
【0026】
加圧部7は、リベット19及び母材21の下に位置して、上下動することができる。また、加圧部7は、必要に応じて、ホーン17の回転に合わせて、母材21などを送ることができる。加圧部7が上昇すると、ホーン17と加圧部7が、リベット19及び母材21を挟んだ状態となる。加圧部7は、ホーン17と加圧部7がリベット19及び母材21を挟んだ状態で、加圧することができる。加圧部7は、下降すると、リベット19及び母材21から離れる。
【0027】
図1(b)は、接合処理装置1による接合処理の一例を示すフロー図である。母材21の孔には、リベット19が差し込まれている(ステップST1)。制御部3は、加圧部7を上昇させる(ステップST2)。制御部3は、ホーン17と加圧部7との間での加圧を開始させる(ステップST3)。
【0028】
制御部3は、振動処理部5に対して音波振動及び/又は超音波振動を利用した接合処理を行わせる(ステップST4)。制御部3は、ホーン17と加圧部7との間での加圧を停止させる(ステップST5)。制御部3は、加圧部7を下降させる(ステップST6)。
【0029】
図2は、
図1(a)の接合処理装置1の実際の機械の一例を説明するための図である。
図2(a)は、実際の機械の全体を示す。
図2(b)は、
図2(a)においてアクチュエータの部分を示す。
【0030】
図2(c)は、音波ロータリーシステムの概要を示す図である。横振動(水平方向)又は縦振動(ラジアル方向)のモードで振動するホーンがパーツに音波エネルギーを伝えることで、金属を利用した接合処理を実現することができる。
【0031】
図2(d)及び(e)は、それぞれ、横振動及び縦振動を説明するための図である。ホーンの振動モードは、ホーンの形状により変化する。振動モードは、例えば、横振動モードと縦振動モードがある。横振動モードは、一波長を基本としたホーンのセンターの振動振幅最大点を中心として、振動が平行する水平方向の横振動として伝達される。縦振動モードは、半波長を基本としたホーンのセンターの応力最大点を中心として、振幅がラジアル方向の縦振動へ分岐される。
【0032】
続いて、出願人が行った実験を参照しつつ具体的に説明する。実験に使用したアルミの材質は、純アルミがA1050、ジュラルミンがA2017、超々ジュラルミンがA7075である。
【0033】
図3及び
図4は、出願人独自の技術である三次元金属構造体の完全封止(シール)接合(特許文献1参照)の実験結果を示す。
図3及び
図4は、それぞれ、振動方向が加圧方向と平行(縦振動)及び垂直(横振動)である。水中封止テストをクリアしている。
【0034】
図3を参照して、縦振動の場合について説明する。
図3(a)及び(b)は、接合前の状態を示し、
図3(c)及び(d)は接合後の状態を示す。この例では、丸形ケースを接合処理している。蓋(Lid)はod=54、t=6mmであり、本体(Body)はod=54、id=48、h=50mm、t=3mmである。
【0035】
図3(e)、(f)及び(g)は、直径150mmのアルミどうしの三次元金属構造体の封止接合例である。
図3(f)及び(g)は、それぞれ、接合部の破壊がない場合とある場合を示す。いずれの実験結果でも、接合時に溶解した跡が認められず、拡散接合でインゴット化している。拡散接合は、接合面に生じる原子の拡散を利用して接合するものであり、例えば、母材を溶融させることなく加熱・加圧保持し、接合面を横切って接合界面の原子を拡散させ、金属学的に完全な接合部を得る。
【0036】
図4を参照して、横振動の場合について説明する。
図4(a)及び(b)は、接合前の状態を示し、
図4(c)及び(d)は接合後の状態を示す。この例では、角形ケースを接合処理している。蓋(Lid)はA6063S−T5□50、t=12mmであり、本体(Body)はADC12□50 h=20mmである。
【0037】
図4(e)は、断面の顕微鏡観察である。顕微鏡観察で、接合界面が確認困難であり、拡散接合でインゴット化させている。
【0038】
図5及び
図6は、本願発明による接合処理の一例を示す。
【0039】
図5(a)は、横振動による接合処理の一例を示す。母材は、2つの板状部材が上下に重ねられたものであり、上側の板状部材に貫通孔が形成され、下側の板状部材には孔はない。下の板状部材に対して下側から加圧し、孔に挿入されたリベットの頭部に対して横振動を与えることにより、接合処理を行う。
図5(b)は、接合した断面の顕微鏡観察である。この例では、2つの板状部材はHTSSであり、リベットは鉄(スチール)である。
図3及び
図4と同様に、拡散接合によりインゴット化されている。
【0040】
図5(c)、(d)及び(e)は、縦振動による接合処理の一例を示す。この場合、孔の形状は、例えば、表面ではリベットの先端よりも大きく、深くなるにつれて小さくなり、最も深い個所ではリベットの先端よりも小さくする。この場合、リベットの先端が差し込まれた状態で、リベットの先端は、孔の内側の側面に接した状態になる。母材は、2つの板状部材が上下に重ねられたものである。
【0041】
図5(c)では、孔を、上側の板状部材を貫通して、下側の板状部材の表面から途中まで形成する。このように形成することにより、接合後に、母材表面でのリベットによる盛り上がりを小さくすることができる。
【0042】
図5(d)では、孔を、上側の板状部材の貫通孔として、下側の板状部材には形成しない。
図5(d)にあるように、縦振動でも
図5(a)と同様の接合処理を実現することができる。
【0043】
図5(e)では、複数の孔を形成する。各孔は、上側の板状部材の貫通孔として、下側の板状部材には形成しない。複数の孔に差し込まれた複数のリベットに対して、
図5(d)と同様にして縦振動を与えて接合処理を行う。例えばプラスチック溶着では、溶かして溶着するため、溶解個所を起点として発生する溶解バリが溶けて接着剤のように広がることを利用する。本願発明では、エネルギーを集中させたところ以外でも音波が伝達する広い範囲で拡散接合できる。本願発明では、拡散接合は、リベット母材との間に加えて、部材間でも生じさせることができる。そのため、それぞれ孔に差し込まれたリベットにおいて接合処理を実現できるとともに、複数の孔の間での部材の間でも接合処理を実現して、封止接合を実現することができる。
【0044】
図6は、母材の貫通孔による接合処理の一例を示す。この例では、母材は、2つの板状部材が上下に重ねられたものであり、貫通孔が形成されている。
【0045】
図6(a)及び(b)は、それぞれ、接合前及び接合後の一例を示す図である。この例では、上側の板状部材51、下側の板状部材53及びリベット55は金属である。リベット55は、孔の下側から差し込まれている。リベット55の頭部に対して下側から加圧し、リベット55の胴部の先端に対して上側から音波振動及び/又は超音波振動を与える。
図6(b)にあるように拡散接合が生じ、リベット55と板状部材51とは接合箇所が観察できなくなり、板状部材51と板状部材53との間でも音波振動及び/又は超音波振動が伝わる範囲(例えば孔の周りなど)で拡散接合が生じる。
【0046】
図6(c)〜(f)は、実際の処理の一例を示す。対象57及び対象59は、それぞれ、接合前及び接合後の状態を示す。
図6(c)及び(d)は、それぞれ、表側及び裏側から見たものである。Aはアルミ5052(t=3mm)であり、Bはアルミ1050(t=1mm)であり、Cはアルミリベット1000系である。
【0047】
図6(e)は、断面を顕微鏡観察したものである。拡散接合によりインゴット化されている。
図6(f)は折り曲げ実験を示す。このように、アルミのリベットインゴット接合の多点同時接合を実現することができる。ここで、接合で緩まないアルミかしめ固定を実現できる。さらに、音のみのエネルギーで介在物は不要である。大気中常温接合で、インゴット接合である。接合時間は、約3〜5秒である。音波ツールやアンビルの発熱は、ほぼ認められなかった。
【0048】
一般のかしめ工法では、リベットを貫通穴に通して表裏両側から圧縮することで複層のプレート等を挟み固定する。このような接合では、
図5のように貫通孔を利用しないものは実現することができない。また、貫通孔を利用しても、
図6のような固定を行うことは困難であった。
【0049】
本願発明によれば、例えば、次のような事項を実現することができる。接合部が圧縮ではなくてインゴット・合金化で全体が一体化できる。接合後の経時変化がなく、かしめより接合強度を出すことができる。縦振動でも横振動でも接合が可能である。例えば、横振動では、セラミックス等の脆い素材の固定にも対応することができる。複数箇所の同時接合が可能である。例えば複数リベット間のピッチを狭めて固定することにより、リニア状・三次元3D構造体のハーメチック封止接合が可能である。リベットの突起(凹凸)がない平面接合が可能である。剛性があるプレート上の接合は受け治具が不要である。基本型の組み合わせで様々な設計が可能である。
【0050】
なお、音波振動及び/又は超音波振動は、例えば特許文献2や特許文献3などに記載された装置により与えることができる。