特許第6957085号(P6957085)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6957085
(24)【登録日】2021年10月8日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20211021BHJP
   E02F 9/24 20060101ALI20211021BHJP
【FI】
   E02F9/22 J
   E02F9/24 B
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-10288(P2017-10288)
(22)【出願日】2017年1月24日
(65)【公開番号】特開2018-119293(P2018-119293A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2019年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】平沼 一則
【審査官】 高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−163155(JP,A)
【文献】 特開2004−231355(JP,A)
【文献】 特開2011−152703(JP,A)
【文献】 特開平11−034843(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/151917(WO,A1)
【文献】 特表2014−500419(JP,A)
【文献】 特開平08−302750(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/22
E02F 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準面に設置される基体に対する旋回体の減速時において、前記基準面に対する前記基体のスリップの発生、またはスリップ発生の兆候を検出した場合に、メカニカルブレーキの制動力を現時点の制動力より小さくするかまたは解除することにより、スリップが抑制されるように前記旋回体の制動力が変化する作業機械。
【請求項2】
前記メカニカルブレーキは、ブレーキ解除圧が印加されていない状態で作動し、前記ブレーキ解除圧が印加されている状態では作動せず、前記ブレーキ解除圧を制御することにより、前記メカニカルブレーキの制動力を現時点の制動力より小さくするかまたは解除する請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
旋回体の減速時において、スリップの発生、またはスリップ発生の兆候を検出した場合に、メカニカルブレーキの制動力を解除する請求項1または2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記旋回体を旋回可能に搭載し、基準面に設置される基体と、
前記基準面を基準とした前記基体の方位を検出するセンサと
をさらに有し、前記センサによって計測された前記基体の方位に基づいてスリップの発生を検出する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
ショベルの旋回体の旋回速度を減速させるときには、オペレータのレバー操作に応じて旋回モータの制御を行う。旋回モータが油圧モータである場合には油圧制御を行い、旋回モータが電動モータである場合には電気制御を行う。このように、オペレータがレバー操作を行うことにより、旋回体を旋回及び停止させている。旋回体に急制動が加わり、車体(クローラ)が地面に対してスリップすると、車体の転倒等の危険性が高まる。
【0003】
下記の特許文献1に、旋回用電動モータが正常運転できなくなったときに、メカニカルブレーキを作動させて旋回体を停止させることが可能なショベルが開示されている。特許文献1に開示されたショベルにおいては、旋回体を緊急停止すべき状態が発生した場合、ショベルの作業姿勢に応じてメカニカルブレーキの動作を異ならせる。具体的には、作業姿勢が安定状態である場合には、メカニカルブレーキを通常動作させ、作業姿勢が不安定状態である場合には、メカニカルブレーキによる制動の程度を通常動作時より弱める。このように制御することにより、緊急停止すべき状態が発生した場合に、作業姿勢の安定性を維持しつつ旋回体を停止させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−166511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたショベルにおいては、車体が不安定状態のときに緊急停止させる場合、制動の程度を弱めるため車体のスリップが生じにくくなる。ところが、何らかの要因によって旋回体が停止するまでにスリップが発生してしまう場合もあり得る。スリップが発生してしまうと、車体の安定性が維持されなくなる。また、緊急停止すべき状態ではなくオペレータの通常操作によって旋回体を停止させる場合には、回生ブレーキが用いられ、メカニカルブレーキに対する上述の制御は行われない。このため、通常操作で旋回体を停止させる際に車体が不安定になる場合もあり得る。
【0006】
本発明の目的は、旋回体を停止、または旋回速度を減速させる際にスリップを抑制し、車体を安定させることが可能なショベル等の作業機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によると、
基準面に設置される基体に対する旋回体の減速時において、前記基準面に対する前記基体のスリップの発生、またはスリップ発生の兆候を検出した場合に、メカニカルブレーキの制動力を現時点の制動力より小さくするかまたは解除することにより、スリップが抑制されるように前記旋回体の制動力が変化する作業機械が提供される。
【発明の効果】
【0009】
旋回体への制動力を低下させることにより、スリップの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施例によるハイブリッド型ショベルの側面図である。
図2図2は、実施例によるショベルのブロック図である。
図3図3は、メカニカルブレーキの構成を示す概略図である。
図4図4は、旋回体を停止させるときの制御装置の処理のフローチャートである。
図5図5は、旋回体の旋回速度、及びブレーキ解除圧の時間変化の一例を示すグラフである。
図6図6は、他の実施例によるショベルのブロック図である。
図7図7は、さらに他の実施例によるショベルのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1図5を参照して、実施例による作業機械の例として、ハイブリッド型ショベルについて説明する。
【0012】
図1は、実施例によるハイブリッド型ショベルの側面図である。クローラを含む下部走行体(基体)10に旋回体11が旋回可能に搭載されている。ショベルの動作時には、基体10が基準面例えば地面に設置される。旋回体11に、ブーム12、アーム13、及びバケット14を含むアタッチメント15が取り付けられている。ブーム12、アーム13、及びバケット14は、それぞれ油圧アクチュエータであるブームシリンダ16、アームシリンダ17、及びバケットシリンダ18によって駆動される。
【0013】
旋回体11に、オペレータが搭乗するキャビン20が設けられている。キャビン20内に、オペレータによって操作される操作装置21が配置されている。さらに、旋回体11に、旋回駆動装置としての旋回モータ30、制動装置としてのメカニカルブレーキ31、及び制御装置40が搭載されている。旋回モータ30は、旋回体11に旋回方向の駆動力を与える。メカニカルブレーキ31は、旋回体11に旋回方向の制動力を与える。制御装置40は、旋回モータ30及びメカニカルブレーキ31を制御する。
【0014】
基体10にセンサ35が搭載されている。センサ35は、基準面(地面)に対する基体10のスリップの有無に依存する物理量を計測する。センサ35として、例えば方位計、ジャイロセンサ等を用いることができる。方位計は、スリップの有無に依存する物理量として、基体10の方位を計測する。ジャイロセンサは、スリップの有無に依存する物理量として、旋回体11の旋回軸を回転中心とした基体10の角速度を計測する。
【0015】
制御装置40は、オペレータによる操作装置21の操作、及びセンサ35の計測結果に基づいて、旋回モータ30及びメカニカルブレーキ31を動作させる。
【0016】
図2は、本実施例によるショベルのブロック図である。図2において、機械的駆動系を二重線で表し、高圧油圧ラインを最も太い実線で表し、パイロットラインを破線で表し、電気的駆動系を2番目に太い実線で表し、制御系を細い実線で表している。
【0017】
エンジン55と、アシストモータとしての電動発電機56が、それぞれトルク伝達機構57の2つの入力軸に接続されている。メインポンプ60及びパイロットポンプ61が、トルク伝達機構57の出力軸に接続されている。エンジン55及び電動発電機56は、トルク伝達機構57を介してメインポンプ60及びパイロットポンプ61を駆動する。エンジン55には、例えばディーゼルエンジン等の内燃機関が用いられる。電動発電機56には、例えば内部埋込型(IPM)モータが用いられる。ショベルの起動中は、エンジン55が常時運転される。メインポンプ60は、高圧油圧ライン65を介してコントロールバルブ66に接続されておる。パイロットポンプ61は、パイロットライン62を介して操作装置21に接続されている。
【0018】
メインポンプ60の負荷が高い場合(例えば、エンジン55の出力以上の負荷である場合)には、電動発電機56がアシスト運転を行う。これにより、エンジン55の出力に加えて電動発電機56の出力がメインポンプ60に伝達される。一方、メインポンプ60の負荷が低い場合(例えば、エンジン55の出力より低い場合)には、エンジン55の出力の一部がトルク伝達機構57を介して電動発電機56に伝達され、電動発電機56が発電運転を行う。電動発電機56のアシスト運転と発電運転との切り替え制御は、制御装置40により行われる。
【0019】
パイロットポンプ61は、パイロットライン62を介して操作装置21にパイロット圧を供給する。操作装置21は、パイロットポンプ61から供給されるパイロット圧(一次側パイロット圧)を、オペレータの操作に応じたパイロット圧(二次側パイロット圧)に変換する。二次側パイロット圧は、コントロールバルブ66及び圧力センサ22に入力される。
【0020】
圧力センサ22は、オペレータによる操作装置21の操作量に応じた二次側パイロット圧を電気信号に変換する。この電気信号は制御装置40に入力される。
【0021】
コントロールバルブ66は、オペレータの操作量に応じた二次側パイロット圧に基づいて、各油圧アクチュエータに対応するスプール弁を動かし、高圧油圧ライン65を介して供給される高圧の作動油を各油圧アクチュエータに供給する。コントロールバルブ66には、油圧アクチュエータとしてブームシリンダ16、アームシリンダ17、バケットシリンダ18、油圧モータ19A及び19Bが接続されている。油圧モータ19A及び19Bは、それぞれ基体10の左右のクローラを駆動する。
【0022】
電動発電機56はインバータ51を介して蓄電回路50に接続されている。蓄電回路50は、蓄電装置及び昇降圧コンバータを含む。インバータ51は制御装置40によって制御される。電動発電機56をアシスト運転させる場合には、蓄電回路50から電動発電機56に電力を供給する。電動発電機56を発電運転させる場合には、電動発電機56で発電された電力を蓄電回路50に供給する。
【0023】
旋回モータ30がインバータ52を介して蓄電回路50に接続されている。旋回モータ30には、電動モータ、例えばIPMモータが用いられる。旋回モータ30の回転軸にメカニカルブレーキ31、レゾルバ32、及び減速機33が接続されている。メカニカルブレーキ31は、制御装置40から制御されることにより旋回モータ30の回転軸に制動力を与える。レゾルバ32は旋回モータ30の回転軸の回転速度(回転数)を計測する。
【0024】
旋回モータ30は、減速機33を介して旋回体11(図1)を旋回させる力行運転と、減速機33を介して旋回体11に制動力を与える回生運転との双方を実現することができる。力行運転と回生運転との切り替えは、制御装置40によるインバータ52の制御により行われる。力行運転時には、蓄電回路50からインバータ52を介して旋回モータ30に電力が供給される。回生運転時には、旋回モータ30で発生した回生電力がインバータ52を介して蓄電回路50に供給される。
【0025】
基体10(図1)に取り付けられたセンサ35の計測値が制御装置40に入力される。
【0026】
次に、図3を参照してメカニカルブレーキ31の構成及び動作について説明する。
図3は、メカニカルブレーキ31の構成を示す概略図である。図3においてパイロットラインを破線で表し、制御系を細い実線で表している。
【0027】
ブレーキピストン311がブレーキシリンダ312内に挿入されている。ブレーキピストン311は、旋回モータ30の回転軸と平行な方向に伸縮可能である。ブレーキピストン311は、パイロットポンプ61からパイロット圧(以下、ブレーキ解除圧という。)が供給されると縮小方向に作動する。ブレーキスプリング313が、ブレーキピストン311に対して伸長方向の力を印加する。
【0028】
複数のブレーキディスク314が、旋回モータ30の回転軸に、軸方向に移動可能な状態でスプライン結合している。ブレーキディスク314の各々は、旋回モータ30の回転軸とともに回転する。複数のブレーキプレート315が、旋回モータ30の回転軸の軸方向に移動可能に、固定部であるブレーキケース316の内面にスプライン結合している。複数のブレーキプレート315と複数のブレーキディスク314とは、回転軸方向に交互に積み重ねられている。
【0029】
ブレーキシリンダ312供給するブレーキ解除圧を増加させてブレーキピストン311を縮小方向に移動させると、ブレーキディスク314とブレーキプレート315とが回転軸方向に離れる。これによりメカニカルブレーキ31が解除状態になる。ブレーキ解除圧の印加を停止すると、ブレーキスプリング313によってブレーキピストン311が伸長方向に移動する。これにより、ブレーキディスク314とブレーキプレート315が面接触し、回転軸に制動力(制動トルク)が加わる。ブレーキ解除圧を変化させると、回転軸に加わる制動力も変化する。具体的には、ブレーキ解除圧を低下させるに従って、制動力が大きくなり、ブレーキ解除圧が0の状態、すなわちブレーキ解除圧を印加しない状態で、最大の制動力が発生する。
【0030】
ブレーキシリンダ312へのブレーキ解除圧は、パイロットポンプ61から電磁比例弁317を介して供給される。制御装置40が電磁比例弁317を制御してブレーキシリンダ312に供給するブレーキ解除圧を調整することにより、メカニカルブレーキ31が発生する制動力を変化させることができる。
【0031】
油圧計318がブレーキ解除圧を計測する。油圧計318の計測値が制御装置40に入力される。制御装置40は、油圧計318の計測値に基づいてフィードバック制御を行うことにより、ブレーキシリンダ312に供給するブレーキ解除圧を目標値に近づけることができる。
【0032】
次に、図4を参照して旋回体11の旋回を停止させる操作が行われたときの制御装置40の処理について説明する。
【0033】
図4は、制御装置40の処理のフローチャートである。オペレータが旋回を停止させる操作を行うと、制御装置40はメカニカルブレーキ31を制御して旋回モータ30の回転軸への制動力の印加を開始する(ステップST1)。具体的には、制御装置40は、電磁比例弁317(図3)を制御することにより、ブレーキシリンダ312に供給するブレーキ解除圧を低下させる。その後、センサ35(図1図2)から基体10の方位または角速度の計測値を取得する(ステップST2)。
【0034】
制御装置40は、センサ35から取得した計測値に基づいて、基準面に対して基体10がスリップしているか否かを判定する(ステップST3)。例えば、基体10のクローラが停止しているにも関わらず基体10の方位が変化している場合に、制御装置40は、基体10が基準面に対してスリップしていると判定する。または、基体10のクローラが停止しているにも関わらず基体10の角速度が0ではない場合に、制御装置40は、基体10が基準面に対してスリップしていると判定する。
【0035】
制御装置40は、基体10がスリップしていると判定した場合には、メカニカルブレーキ31の制動力を、現時点の制動力より低下させる(ステップST4)。具体的には、電磁比例弁317(図3)を制御することによりブレーキシリンダ312(図3)に供給するブレーキ解除圧を増加させる。これにより、制動力が弱まるか、または制動力が0になる。
【0036】
その後、制御装置40は、旋回体11が停止したか否かを判定する(ステップST5)。旋回体11が停止したか否かは、レゾルバ32(図2)による旋回速度の計測値に基づいて判定することができる。具体的には、制御装置40は、レゾルバ32によって計測された旋回速度が予め設定されている停止速度以下であれば、旋回体11が停止したと判定する。制御装置40は、旋回体11が停止したと判定した場合には、旋回停止の制御を終了する。
【0037】
ステップST3でスリップが発生していないと判定した場合、及びステップST5で旋回が停止していないと判定した場合には、制御装置40はステップST2からの処理を繰り返す。
【0038】
図5を参照して、旋回体11(図1)の旋回速度、及びブレーキシリンダ312(図3)に供給するブレーキ解除圧の時間変化の一例について説明する。
【0039】
図5は、旋回体11の旋回速度(角速度)、及びブレーキ解除圧の時間変化の一例を示すグラフである。横軸は経過時間を表し、上段のグラフの縦軸は旋回速度を表し、下段のグラフの縦軸はブレーキ解除圧を表す。メカニカルブレーキ31による制動が解除され、制動力が発生しない状態のブレーキ解除圧をP0で表す。ブレーキ解除圧が0の状態は、メカニカルブレーキ31が最大の制動力を発生している状態に相当する。ブレーキ解除圧がP0より低く、0より大きいとき、メカニカルブレーキ31は最大の制動力より小さい制動力を発生する。
【0040】
オペレータが旋回体11の旋回停止操作を行うと、制御装置40は旋回モータ30の制御をオフにし、メカニカルブレーキ31のブレーキ解除圧をP0からP1に低下させる(時刻t1)。低下後のブレーキ解除圧P1は、オペレータの操作量に応じて決定される。旋回モータ30の制御をオフにすると、旋回モータ30は旋回トルク及び制動トルクのいずれも発生しない状態になる。ブレーキ解除圧をP1まで低下させるとメカニカルブレーキ31が旋回モータ30の回転軸に制動力を印加するため、旋回体11の旋回速度が低下し始める。
【0041】
制御装置40は、基体10がスリップしていることを検知すると、ブレーキ解除圧をP0まで増加させ、メカニカルブレーキ31による制動を解除する(時刻t2)。これにより、旋回体11の旋回速度の低下の傾きが緩やかになり(角加速度の絶対値が小さくなり)、基体10のスリップが終息する。基体10のスリップが終息すると、制御装置40はブレーキ解除圧を徐々に低下させる(時刻t3)。これにより、制動力が大きくなり、旋回体11が停止する。(時刻t4)。
【0042】
次に、上記実施例の優れた効果について説明する。
上記実施例では、旋回体11の制動時に基体10がスリップし始めても、制御装置40がスリップの発生を検出して制動力を低下させるため、オペレータが介入することなく、迅速にスリップを終息させることができる。これにより、旋回体11を安全に停止させることが可能になる。
【0043】
次に、上記実施例の変形例について説明する。
上記実施例では、旋回体11を停止させる際に旋回モータ30の制御をオフにし、メカニカルブレーキ31のみで制動力を発生させたが、旋回モータ30による回生ブレーキを併用してもよい。回生ブレーキを併用する場合、ステップST1(図4)において、メカニカルブレーキ31と回生ブレーキとの両方を動作させるとよい。さらに、ステップST4(図4)において、メカニカルブレーキ31による制動力を低下させると共に、回生ブレーキによる制動力も低下させるとよい。
【0044】
旋回体11を停止させる際に、メカニカルブレーキ31を作動させず、回生ブレーキのみを作動させてもよい。この場合には、ステップST1(図4)において、メカニカルブレーキ31は解除状態とし、回生ブレーキのみを動作させるとよい。さらに、ステップST4(図4)において、回生ブレーキの制動力を低下させるとよい。旋回体11が停止した後にメカニカルブレーキ31を作動させることにより、メカニカルブレーキ31をパーキングブレーキとして使用するとよい。
【0045】
図5に示した例では、ステップST4(図4)において制動力を低下させる際(時刻t2)に、一旦メカニカルブレーキ31による制動を完全に解除し、制動力を0にしたが、制動力を完全に0にすることなく制動力を弱めてもよい。制動力を弱める場合には、例えば、現時点のブレーキ解除圧P1からブレーキ解除圧を増加させる割合を予め決めておくとよい。制御装置40は、ステップST4において、現時点のブレーキ解除圧から、予め決められている増加割合だけブレーキ解除圧を増加させる。増加後のブレーキ解除圧がP0を超えた場合には、ブレーキ解除圧をP0にするとよい。
【0046】
ステップST4でメカニカルブレーキ31による制動を完全に解除すると、基体10のスリップをより短時間で終息させることができる。ただし、メカニカルブレーキ31を再作動させるまで旋回体11がほぼ等角速度で旋回するため、旋回体11が停止するまでの旋回角が大きくなる。これに対し、ステップST4でメカニカルブレーキ31による制動力を低下させる場合には、基体10のスリップを終息させるまでの時間が長くなるが、旋回体11に継続して制動力が加わるため、停止するまでの旋回角を小さくすることができる。
【0047】
上記実施例では、旋回体11を旋回させる旋回駆動装置として電動の旋回モータ30を用いたが、旋回駆動装置として油圧モータを用いてもよい。油圧モータは回生ブレーキの機能を持たないため、旋回体11を停止させる際にはメカニカルブレーキ31を作動させる。
【0048】
次に、図6を参照して、他の実施例によるショベルについて説明する。以下、図1図5に示した実施例と共通の構成については説明を省略する。
【0049】
図6は、本実施例によるショベルのブロック図である。図1図5に示した実施例では、基体10に取り付けたセンサ35によって基体10のスリップの発生を検出したが、本実施例では、レゾルバ32で計測される回転速度(角速度)に基づいて、スリップの発生、または発生の兆候を検出する。レゾルバ32は、旋回体11の角速度を計測するセンサとして機能する。
【0050】
旋回体11に大きな制動力を加えて急停止させると、その反力により基体10が基準面に対してスリップする場合がある。基体10に加わる反力は旋回体11の角速度の変化に依存するため、旋回体11の角速度を検出することにより、基体10にスリップが発生しているか、またはスリップ発生の兆候があるかを判定することができる。
【0051】
本実施例においては、制御装置40が旋回体11の角速度の変化の大きさ(角加速度)を算出し、角速度の変化の大きさが判定基準値を超えたら、スリップ発生の兆候があると判定する。制御装置40は、スリップ発生の兆候があると判定した場合には、旋回モータ30の回転軸に与える制動力を低下させるか、または制動力を0にする。
【0052】
本実施例においては、基体10の方位または角速度を計測するセンサ35(図1図2)を取り付けることなく、基体10のスリップ発生の兆候を検出することができる。図1図5に示した実施例では、基体10にスリップが発生した後に、迅速にスリップを終息させたが、本実施例では、スリップが発生する前にスリップ発生の兆候を検出し、スリップの発生を防止することも可能である。
【0053】
次に、図7を参照して、さらに他の実施例によるショベルについて説明する。以下、図6に示した実施例と共通の構成については説明を省略する。
【0054】
図7は、本実施例によるショベルのブロック図である。図6に示した実施例では、旋回モータ30の回転軸に取り付けられたレゾルバ32で計測された回転速度に基づいてスリップ発生の兆候を検出した。本実施例では、センサ38がメカニカルブレーキ31のブレーキ軸の回転速度を計測する。制御装置40は、メカニカルブレーキ31のブレーキ軸の回転速度に基づいて、スリップ発生の兆候を検出する。
【0055】
本実施例においても、基体10のスリップ発生の兆候を検出することができるため、図6に示した実施例と同様の効果が得られる。
【0056】
上記実施例ではショベルを例に取り上げたが、上記実施例の技術的思想は、ショベルをベースとした作業機械、例えばリフティングマグネット、林業機、クレーン等に適用することも可能である。
【0057】
上述の各実施例及び変形例は例示であり、異なる実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。複数の実施例の同様の構成による同様の作用効果については実施例ごとには逐次言及しない。さらに、本発明は上述の実施例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0058】
10 下部走行体(基体)
11 旋回体
12 ブーム
13 アーム
14 バケット
15 アタッチメント
16 ブームシリンダ
17 アームシリンダ
18 バケットシリンダ
19A、19B 油圧モータ
20 キャビン
21 操作装置
22 圧力センサ
30 旋回モータ
31 メカニカルブレーキ
32 レゾルバ
33 減速機
35 センサ
38 センサ
40 制御装置
50 蓄電回路
51、52 インバータ
55 エンジン
56 電動発電機
57 トルク伝達機構
60 メインポンプ
61 パイロットポンプ
62 パイロットライン
65 高圧油圧ライン
66 コントロールバルブ
311 ブレーキピストン
312 ブレーキシリンダ
313 ブレーキスプリング
314 ブレーキディスク
315 ブレーキプレート
316 ブレーキケース
317 電磁比例弁
318 油圧計
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7