【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の仮想通貨管理システムの概略図である。
図に示すように、地域通貨を発行する発行元18のローカルサーバ20と、その地域通貨を現金化するサービスを提供する金融機関14の管理サーバ16とが、ネットワーク12を介して中継機関24に接続されている。この中継機関24は、地域通貨を利用する利用者28が、ATMや通信端末装置30を操作して金融機関14に送金処理をしたとき、地域通貨に相当する仮想通貨をカード等の媒体32にチャージする処理を管理し制御する。
【0020】
例えば、
図1に示した利用者28は、スマートホン等の通信端末装置30を使用してネットバンキングにより金融機関14に送金処理をする。仮想通貨は通信回線を介して通信端末装置30に送信されてチャージされる。この場合、媒体32は通信端末装置30に内蔵されたメモリである。あるいは、利用者28は、金融機関14に設置されたATM等(これも通信端末装置30とする)を利用することができる。ATMに現金を投入して銀行の指定口座に送金処理をし、例えば、スマートホンに仮想通貨のチャージを受ける処理ができる。ホイントカードのようなカード媒体にチャージを受けてもよい。
【0021】
上記のように、本発明では、地域振興券や商品券等の地域通貨を、紙媒体でなく、仮想通貨として取り扱う。本発明のシステムでは、利用者28が希望する金額の地域通貨に相当する仮想通貨を、自分の所持するカードやスマートホン等の媒体32にチャージして使用することができるようにする。この場合に、地域通貨を発行してよいかどうかを、発行元18に照会をする必要がある。チャージ依頼が正当と判断されたときには、金融機関14に対する利用者28による送金と仮想通貨のチャージを許可する。この段階までは送金処理を保留しておき、ここで同時に送金処理とチャージ処理を行う。そして、利用者28の預金残高を更新し、発行元18側の地域通貨発行履歴を更新する。
【0022】
以上のように、金融機関14は利用者28から現金を預かり、利用者の媒体32に仮想通貨をチャージする。利用者28はその仮想通貨を使用して、指定された地域の商店22で買い物をする。利用者28からその仮想通貨を受け取った商店22から請求があると、金融機関14は商店22に現金を支払う。地域経済の活性化のために、商品券の発行元18や商店22と提携をする銀行が増えると、商店22の事務管理も複雑になる。銀行もそれぞれ管理サーバ16に個別に専用のプログラムを設定するので不経済である。全国的に支店を持つ銀行の場合には、地域毎の振興券取扱のための複数のシステム構築が必要になり、さらに管理が煩雑になる。
【0023】
本発明の中継機関24は、
図1に示すように、あらゆる銀行等の金融機関14の管理サーバ16とネットワーク12を通じて接続する。さらに、任意の自治体の商品券の発行元18のローカルサーバ20とネットワーク12を通じて接続する。発行元18のローカルサーバ20は、このチャージ依頼が正当かどうかを判断するために照会処理をする発行元データベース21を保有している。なお、この発行元データベース21が中継機関24にコピーされている場合には、チャージ依頼が正当かどうの判断処理が中継機関24内で実行される。
【0024】
中継機関24は、ネットワークに接続されたサーバ等により構成され、管理サーバ16やローカルサーバ20に対して、いわゆるクラウドにより処理プログラムを提供できる。このために、中継機関24の演算処理装置25には、依頼送信手段36と送金処理手段38とチャージ処理手段40と判定手段42と商店管理手段56とが組み込まれている。また、その処理のために記憶装置26には、チャージ依頼情報34と判定データ44が記憶されている。
【0025】
これらの機能により、例えば、銀行のATMに、利用者の挿入したカードを読み取って仮想通貨をチャージする機能があれば、その管理に必要な処理を全てネットワーク12を通じて中継機関24が直接あるいは間接的に制御することができる。
図1の例では、全ての商店22は中継機関24とのみ提携をすればよい。
【0026】
全ての金融機関14は、中継機関24に管理と処理を依頼するので、専用プログラムは不要である。地域通貨の発行者も、中継機関24とのみ提携すればよく複数の銀行との提携処理等が不要になる。地域通貨の使用に協力する商店が中継機関24と提携していれば、仮想通貨の現金化時の確認も容易になる。始めに仮想通貨をチャージする処理の説明をし、その後、商店の仮想通貨の現金化処理例について説明する。
【0027】
まず、上記の説明中の主要な言葉の意味を明らかにする。「送金処理」とは、仮想通貨チャージのための送金のことである。ATMを使用した預金口座から金融機関14への送金や、ATMへ現金を投入して、金融機関14の該当する口座への送金や、ネットバンキングによる金融機関14の該当する口座への送金を含む処理のことである。
【0028】
「仮想通貨」とは、例えば地域通貨のことである。これは発行総額が限定され、地域振興等のために該当する地域の住民等が該当する地域で使用する場合にのみ有効な仮想通貨である。仮想通貨が使われたときに仮想通貨を受け取った業者が現金化できる仕組みもこのシステムで提供する。仮想通貨には商品券のみならず、現金と等価なポイントやビットコイン等も含まれる。
【0029】
「発行元」とは、地域通貨に相当する仮想通貨を発行し管理する地方自治体等の機関のことである。その管理には地域通貨の発行総額を計算し記憶するローカルコンピュータ等が使用される。ここに、「利用者28を特定する情報」からその利用者28が地域通貨を利用する資格を持つかどうかを判定するのに必要な発行元データベース21等が記憶されている。また、誰に対して地域通貨を発行したかもこの発行元データベース21に記憶しておくとよい。「送金処理を受け付ける金融機関14を特定する情報」から、地域通貨の発行や現金化に協力する金融機関14であることを判断する。
【0030】
なお、利用者28が地域通貨を利用する資格を持つかどうかの最終的な判定は、例えば、関連する情報を保持している発行元18で行う。しかし、後で説明するように、ほぼ全ての判定を発行元データベース21の一部または全部を利用して中継機関24で簡単に行うことができる。金融機関14は、発行をした仮想通貨の額に相当する金額の送金を受けているので、その仮想通貨が使用された商店22等から請求があったとき、仮想通貨を現金化して商店22に送金する。この処理を中継機関24が管理し制御することもできる。
【0031】
図2は発行元のローカルサーバ20に記憶された管理データ例説明図である。
図に示すように、発行元18のローカルサーバ20には、仮想通貨の発行に協力する金融機関リスト50とその利用に協力する協力商店リスト53とが記憶されている。例えば、これらのデータは予め中継機関24に転送され、中継機関24はそれらのデータについて、発行元18に問い合わせをしなくて判断ができるとよい。さらに発行元18のデータベースには、利用者に仮想通貨を発行するたびに、その発行日と発行金額と発行金融機関と利用者名と利用者住所等のデータを記録する。この発行金額を合計したものが発行総額である。また、予め規定された仮想通貨の発行限度額もローカルサーバ20に記憶されている。
【0032】
[利用者28による送金処理の依頼に対して、利用者28に入力を要求する事項]は、チャージを要求する仮想通貨の種別46や利用者28の資格である。仮想通貨の種別46は、地域通貨の名称や発行元18の名称等である。利用者28の資格は、住所や勤務先である。これらの項目をチェックするウインドウをATMに表示するとよい。この金融機関14が取り扱える仮想通貨の種別46も表示して、選択させるとよい。
【0033】
図3はATMやスマートフォンに表示される地域通貨チャージ申し込み画面例である。
この画面で、利用者の住所氏名と地域通貨の種類と送金先である取扱銀行と、送金希望金額等を入力すると、送金処理やチャージ処理が開始される。
【0034】
中継機関24が、このウインドウを遠隔制御によりATMやスマートフォンに表示させる制御をするとよい。このウインドウへの入力事項の適否を、中継機関24で自動判定してから、仮想通貨の発行元48に発行依頼をすることで、発行元18のローカルコンピュータの処理負担を軽減できる。中継機関24から発行元18に送信される[チャージ依頼情報34]は、ウインドウで入力された、送金処理を受け付ける金融機関14(取扱銀行)を特定する情報と、利用者28を特定する情報と、チャージ希望金額だけでよい。
【0035】
[チャージ金額の判定]は発行元18がするとよい。発行元18は、
図2に示すように仮想通貨の発行総額と発行上限額を管理している。発行元18のローカルコンピュータが既発行仮想通貨の総額と上限額とを比較して発行許可をすることが好ましい。チャージ可能な金額は、送金金額の範囲内であるが、発行元18の発行総額との関係があるため、発行元18で最終的に決定するとよい。送金金額どおりの場合には、送金要求をそのまま許可し、該当する金額をチャージする。最後に
図3のメッセージ60をATM等に表示する。送金要求金額とチャージ可能な金額が相違するときは、チャージ可能な金額の送金を許可してその後チャージ処理をする。仮想通貨の発行を終了しているときは、その旨のメッセージ62をATM等に表示する。
【0036】
図4は、中継機関24の記憶装置26に記憶された判定データの説明図である。
中継機関24における利用者の申込時の資格判断のために、判定データには、発行元毎に、その発行元の名称や、適用される地域(市町村)名と、仮想通貨の発行に協力する金融機関名と、協力商店名等が含まれている。また、各種管理のために、この例では、各金融機関の仮想通貨発行総額や、各協力商店に対して使用された仮想通貨の通貨利用累積額及び現金化済み額が記録されている。
【0037】
従って、
図3に示したウインドウにより利用者が送金先の銀行と仮想通貨の発行元と住所氏名を入力したとき、中継機関24の判定手段42は、利用者が該当する仮想通貨を利用する資格があるかを簡単に判定して、依頼送信手段36が発行元へチャージ依頼情報34を送信することができる。地域通貨の発行元では、念のために利用者の資格確認をし仮想通貨の発行の可否を判断し、その後はチャージ依頼情報34からの完了報告を待つだけでよいから、その処理負荷が軽減される。
【0038】
また、金融機関14も、中継機関24の送金処理手段38から、発行元18の仮想通貨発行の可否判断に基づいて送金処理要求があったときに、利用者の送金を受け付ければよい。さらに、中継機関24のチャージ処理手段40からチャージ要求があったときのみ媒体32へのチャージ処理をすればよい。従って、金融機関の処理負荷も軽減される。
【0039】
次に、商店に対する換金処理について説明する。利用者が商店で仮想通貨を使用すると、利用者のPOS端末から仮想通貨による取引データが中継機関24に送信される。中継機関24は、協力商店リスト53の該当箇所に、その商店に使用された仮想通貨の通貨利用累積額を記録する。そして、その後、その商店が金融機関14に対して仮想通貨を提示して換金を要求したとき、中継機関24はその商店の通貨利用累積額と現金化済み総額を比較して要求の可否判定をすればよい。これにより、金融機関14は中継機関24からの要求に従って換金処理を行えばよく、金融機関による商店に関するデータ管理の負荷が軽減される。
【実施例2】
【0040】
図5は利用者による地域通貨のチャージ申し込み処理フローチャートである。
まず、利用者は、例えば、ATMに表示された案内画面で、「地域通貨のチャージ申し込み」を選択する(ステップS11)。これで、
図3に示した画面が表示される(ステップS12)。利用者は地域通貨IDを保持した非接触ICをかざしたり、カードやスマートホンに表示した2次元コードを、ATMに読込ませる。非接触で仮想通貨がチャージできる場合はこれでよい。チャージ用カードをATMに挿入してもよい。
【0041】
この処理で、利用者の住所氏名と地域通貨の種類が自動的に「地域通貨のチャージ申し込み」画面に入力される(ステップS13)。利用者は、取扱銀行を選択して地域通貨取得のために送金する送金金額を入力する(ステップS14)。これらの入力が完了すると、利用者は申し込みボタンをクリックする(ステップS15)。その後中継機関24の処理が開始される。
【0042】
図6は中継機関24と発行元18の動作フローチャートである。
ステップS21において、中継機関24は
図4に示した地域通貨発行元毎の記録データを参照して、「地域通貨のチャージ申し込み」画面に入力された利用者の資格等を確認する。該当する「市」の発行する地域通貨発行をその市に住所のある市民が申し込んでいる場合にはステップS22でOKとなり、ステップS23に進む。それ以外の場合には、ATMの画面に資格確認メッセージを表示してデータの再入力等を求める。
【0043】
ステップS23では送金金額を読み取って、例えば、その利用者の口座の預金残高を超えていないかの確認を、金融機関に求める。また、ATMに現金が投入された場合にはその金額の確認を求める。金融機関から正常な応答があった場合には、ステップS25からステップS26に進む。それ以外の場合には、ATMの画面に金額確認を促すメッセージを表示する。
【0044】
ステップS26で中継機関24は、地域通貨発行元18のローカルサーバ20に対して、チャージ依頼情報を含む電文(銀行番号、店番号、号機番号、地域通貨種類、金額を含む)を送信する。
【0045】
地域通貨発行元18のローカルサーバ20は、受信した銀行番号、店番号等と、
図2に示したデータベースを参照して、その金融機関14が地域通貨発行の協力金融機関かどうかの確認を行う。同時に、利用者28の資格を確認する(ステップS27)。
【0046】
その後、
図2に示したデータベースにより、地域通貨の発行限度額の計算をする。その結果正当と判断するとステップS29からステップS30に進む。それ以外の場合には、中継機関24に対して地域通貨発行不可のメッセージを送信する。図示していないが、このメッセージを受け取った中継機関24はその旨をATMの画面に表示する。
【0047】
ステップS30では、発行元18で
図2に示した地域通貨発行総額の更新をする。ステップS31では、発行履歴データの更新をする。そして、ステップS32で中継機関24に対して地域通貨発行許可メッセージを送信して、発行元側の処理を終える。
【0048】
図7は、地域通貨発行許可後の中継機関24と金融機関14側の処理フローチャートである。
ステップS41において、中継機関24は、発行許可に基づいて、発行元18に対して
図3で入力された金額の送金を実行するための依頼を送信する。さらに、ステップS42で該当する仮想通貨のチャージ依頼を金融機関14に送信する。なお、仮想通貨のチャージ制御は、中継機関24がATMを遠隔制御して実行しても構わない。
【0049】
金融機関14の管理サーバ16は、送金依頼に従って、例えば、利用者の口座から該当する金額を自行の仮想通貨用の口座に送金処理する。同時に、金融機関は有り高更新処理を実行する(ステップS43)。このとき、中継機関24側の
図4に示したデータも更新しておく。これにより、金融機関14の管理データと発行元18の管理データとの照合ができ、確実に仮想通貨の管理ができる。また、金融機関14や発行元18に代わって一切の仮想通貨管理をすることもできる。
【0050】
図8は、商店で使用された仮想通貨の現金化管理フローチャートである。
利用者が商店22(
図1)で仮想通貨を使用したとき、商店22のPOSレジから該当するデータが中継機関24に送信される。中継機関24では、ステップS52で、
図4に示した通貨利用累積額を更新して、仮想通貨の使用状態を管理する。
【0051】
ここで、商店22が中継機関24に対してネットワークを通じて現金化を依頼したとする。この場合、中継機関24では、
図4に示した現金化済み額の更新をし、ステップS55で、金融機関14に該当する現金の送金依頼をする。図示していないがその後金融機関は商店22の預金口座に該当する金額を送金する。
【0052】
以上のように、中継機関24が地域通貨の発行を総合的に管理することにより、様々な種類の地域通貨の発行管理サービスが可能になる。即ち、様々な地域通貨発行元と接続し、地方銀行や全国に支店を持つ様々な銀行と接続して、一括して仮想通貨の発行管理を行うことができる。これにより、金融機関が地域通貨発行元や協力商店等と提携して専用のシステムを構築するといった作業が不要になる。また、発行元も、仮想通貨の発行や管理を中継機関24にほぼ全面的に委託することができる。
【0053】
なお、上記のシステムは、地域通貨の発行処理のみでなく、特定の利用者に対して特定の発行元から仮想通貨を提供するサービスに広く応用できる。例えば、ビットコインについても、本発明のシステムが利用者うできる。ビットコインの場合には、金融機関を介さないため、送金先は、ビットコインの取引所あるいは交換所になる。仮想通貨の発行元も、取引所あるいは交換所になる。その他は上記のシステムで同様に運用できる。