特許第6957100号(P6957100)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6957100
(24)【登録日】2021年10月8日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】混合材用フライアッシュの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 18/08 20060101AFI20211021BHJP
   C04B 14/02 20060101ALI20211021BHJP
   C04B 20/00 20060101ALI20211021BHJP
   G01N 33/24 20060101ALI20211021BHJP
   G01N 33/38 20060101ALI20211021BHJP
【FI】
   C04B18/08 Z
   C04B14/02 Z
   C04B20/00 B
   G01N33/24 A
   G01N33/38
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-186868(P2017-186868)
(22)【出願日】2017年9月27日
(65)【公開番号】特開2019-59654(P2019-59654A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2020年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141966
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 範彦
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(72)【発明者】
【氏名】桐野 裕介
(72)【発明者】
【氏名】黒川 大亮
(72)【発明者】
【氏名】平尾 宙
【審査官】 内藤 康彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−030885(JP,A)
【文献】 特開2017−124343(JP,A)
【文献】 特開2016−113319(JP,A)
【文献】 豊福俊英、山広隆宏,分級フライアッシュを用いたモルタルの強度と結合材水比との関係,香川大学農学部学術報告,日本,香川大学農学部,1989年,第41巻第2号,P179-P197
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00−32/02
C04B 40/00−40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーン比表面積が4000cm/g未満のフライアッシュを分級して、ブレーン比表面積が4000〜6000cm/g、強熱減量が6.0質量%以下、および20μm以上の粒分が5〜25質量%であり、かつJIS A 6201に規定するフロー値比および活性度指数が前記分級前より向上した混合材用フライアッシュを製造する、混合材用フライアッシュの製造方法であって、
下記(1)式および(2)式を満たすフライアッシュを分級原料として選択する、混合材用フライアッシュの製造方法。
{(1348/B)+0.657}×M ≦ 0.50 ……(1)
(ただし、(1)式中、Bは分級前のフライアッシュのブレーン比表面積(cm/g)を表し、Mは分級前のフライアッシュのメチレンブルーの吸着量(mg/g)を表す。)
{(−366/B)+1.08}×L ≧ 43 (2)
(ただし、(2)式中、Bは分級前のフライアッシュのブレーン比表面積(cm/g)を表し、Lは分級前のフライアッシュを用いたモルタルの表面のハンターLab表色系におけるL値を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートやモルタル(以下「コンクリート等」とも云う。)の流動性と強度発現性が向上し、かつ安定した流動性を有する混合材用フライアッシュの製造方法に関する。なお、フライアッシュは、セメントに混合して混合セメントを製造するための混合材と、コンクリートの混練時にコンクリート等に混和して混練するための混和材の2種類の用途があるが、本願発明で云う混合材用フライアッシュとは、混合材および混和材のいずれのフライアッシュも含む。
【背景技術】
【0002】
フライアッシュは、ボールベアリング作用によりコンクリート等の流動性が向上するため、セメント用混合材や、モルタル・コンクリート用混和材に用いられている。しかし、普通ポルトランドセメントの一部をフライアッシュで置換すると、コンクリート等の強度発現性が低下する場合がある。かかる低下を抑制する方法として、特許文献1では、フライアッシュを改変処理する方法を提案している。この方法は、フライアッシュ、または、粉砕したフライアッシュを、硫酸アンモニウム水溶液等のフライアッシュを浸食する特性を有する処理液に、接触して改変する方法である。
【0003】
しかし、この製造方法は、下記(i)〜(iii)の課題がある。
(i)前記硫酸アンモニウム水溶液を用いたフライアッシュの改変処理期間は、28日間もの長期間を要する(段落0055、0063)。
(ii)粉砕したフライアッシュに改変処理を行う場合、粉砕工程と改変処理工程の少なくとも2工程が必要になるため、手間やコストがかかる。
(iii)引用文献1に記載の処理方法は、フライアッシュを浸食する特性を有する処理液を用いる湿式処理であるため、一般に、排水処理作業や排水処理設備が必要になる。
【0004】
また、一般に、フライアッシュの化学組成等が異なれば、フライアッシュの品質がばらつき、コンクリート等の流動性等の物性が変動することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−297148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、前記状況に鑑み、本発明は、フライアッシュの処理時間(すなわち、混合材用フライアッシュの製造時間)が短く、コンクリート等の流動性と強度発現性が向上し、かつ安定した流動性を有する混合材用フライアッシュの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記目的を達成すべく鋭意検討した結果、ブレーン比表面積が特定の範囲にあるフライアッシュを分級して、ブレーン比表面積、および強熱減量が特定の範囲にある混合材用フライアッシュを製造する方法は、前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させた。

すなわち、本発明は下記の構成を有する混合材用フライアッシュの製造方法である。
【0008】
[1]ブレーン比表面積が4000cm/g未満のフライアッシュを分級して、ブレーン比表面積が4000〜6000cm/g、強熱減量が6.0質量%以下、および20μm以上の粒分が5〜25質量%であり、かつJIS A 6201に規定するフロー値比および活性度指数が前記分級前より向上した混合材用フライアッシュを製造する、混合材用フライアッシュの製造方法であって、
下記(1)式および(2)式を満たすフライアッシュを分級原料として選択する、混合材用フライアッシュの製造方法。
{(1348/B)+0.657}×M ≦ 0.50 ……(1)
(ただし、(1)式中、Bは分級前のフライアッシュのブレーン比表面積(cm/g)を表し、Mは分級前のフライアッシュのメチレンブルーの吸着量(mg/g)を表す。)
{(−366/B)+1.08}×L ≧ 43 (2)
(ただし、(2)式中、Bは分級前のフライアッシュのブレーン比表面積(cm/g)を表し、Lは分級前のフライアッシュを用いたモルタルの表面のハンターLab表色系におけるL値を表す。)
【発明の効果】
【0009】
本発明の混合材用フライアッシュの製造方法によれば、製造時間が短く、コンクリート等の流動性と強度発現性が向上し、かつ安定した流動性を有する混合材用フライアッシュを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】分級前後のフライアッシュのブレーン比表面積(ブレーン値)とフロー値比の関係を示す図である。
図2】分級前後のフライアッシュのブレーン比表面積(ブレーン値)と活性度指数の関係を示す図であり、(a)は材齢28日(28d)の活性度指数、(b)は材齢91日(91d)の活性度指数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、前記のとおり、ブレーン比表面積が4000cm/g未満のフライアッシュを分級して、ブレーン比表面積が4000〜6000cm/g、および強熱減量が6.0質量%以下の混合材用フライアッシュを製造する製造する方法である。以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
1.混合材用フライアッシュのブレーン比表面積
本発明で用いる分級前のフライアッシュのブレーン比表面積は4000cm/g未満であり、分級後の混合材用フライアッシュのブレーン比表面積は4000〜6000cm/gである。分級前後のフライアッシュのブレーン比表面積が該範囲にあれば、製造時間が短く、コンクリート等の流動性と強度発現性が向上し、かつ、安定した流動性が得られる。なお、分級後のフライアッシュのブレーン比表面積は、好ましくは4050〜5500cm/g、より好ましくは4100〜5000cm/gである。 また、本発明では、分級後にブレーン比表面積が約2000cm/g以下のフライアッシュが残るが、このフライアッシュはセメントクリンカの原料等として再利用できる。
【0013】
2.強熱減量
混合材用フライアッシュの強熱減量は6.0質量%以下である。強熱減量が6.0質量%以下であれば、コンクリート等の流動性が向上する。なお、該強熱減量は、好ましくは5.5質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下である。前記強熱減量は、JIS A 6201「コンクリート用フライアッシュ」に準拠して測定できる。
【0014】
3.粒分
混合材用フライアッシュの20μm以上の粒分は、好ましくは5〜25質量%である。該粒分が5〜25質量%であれば、コンクリート等の流動性や強度発現性が向上する。なお、該粒分は、より好ましくは7〜23質量%、さらに好ましくは9〜21質量%である。本発明において、前記20μm以上の粒分は、市販の粒度分布測定装置(例えば、製品名 マイクロトラックHRA モデル9320−X100、日機装社製)を用いて測定できる。
【0015】
4.メチレンブルーの吸着量
混合材用フライアッシュのメチレンブルーの吸着量は、混合材用フライアッシュを用いたコンクリート等のAE剤の使用量を減らすため、好ましくは0.50mg/g以下である。混合材用フライアッシュのメチレンブルーの吸着量が0.50mg/g以下であるためには、好ましくは、前記(1)式を満たすフライアッシュを分級原料として選択する。
【0016】
5.ハンターLab表色系におけるL値
混合材用フライアッシュを用いたモルタル表面のハンターLab表色系におけるL値(以下「L値」という。)は、好ましくは43以上である。L値が43以上であれば、混合材用フライアッシュを用いたコンクリート等の美観が、未燃カーボンにより低下することを回避できる。
混合材用フライアッシュ用いたモルタル表面のL値を43以上にするためには、より好ましくは、前記(2)式を満たすフライアッシュを分級原料として選択する、
【0017】
6.L値の測定方法
モルタル表面のL値の測定は、下記(a)〜(d)の手順に従って行う。
(a)普通ポルトランドセメントにフライアッシュを混合する割合は、フライアッシュと普通ポルトランドセメントの合計を100質量%として、フライアッシュは2.5質量%である。
(b)測定に供するモルタルの配合(消泡剤を除く。)は、JIS R 5201「セメントの物理試験方法 11.3.1モルタルの配合」を参考にして、普通ポルトランドセメントとフライアッシュの合計100質量部に対し、細骨材が300質量部、水が50質量部である。消泡剤の配合量は、モルタル中の空気量を2.5%未満にするために、フライアッシュと普通ポルトランドセメントの合計100質量部に対し、0.03質量部である。
(c)モルタルの混練と成形は、前記JIS R 5201に準拠して行う。混練に際し、消泡剤は、水とともにミキサーに投入する。モルタルを成形した後は、20℃で3日間湿空養生を行う。
(d)モルタルの表面のL値の測定は、モルタルの表面に斑状に発生した黒点の中から、目視により黒い順に15個選択し、選択した黒点の中心部分におけるL値を測定し、これらのL値の平均値をモルタルのL値として採用する。L値の測定には、分光色差計(例えば、製品名 NR−3000、日本電色工業社製)を用いることができる。
【実施例】
【0018】
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
1.使用材料
(1)フライアッシュ
表1に記載のFA1〜7のフライアッシュ
(2)セメント
JIS A 6201に規定する普通ポルトランドセメント。ただし、該セメントは、太平洋セメント社、宇部三菱セメント社、および住友大阪セメント社の普通ポルトランドセメントを等量混合してなるセメントである。
(3)細骨材
JIS R 5201に規定する標準砂
(4)消泡剤
製品名 フォームレックス747(日華化学社製)
【0019】
2.フライアッシュの分級
気流分級機(製品名 クラッシールN−01型、セイシン企業株式会社製)を用いて、FA1〜7のフライアッシュを、原料投入量4kg/hr、ローター回転数1500/min、風量1.7〜1.8m/minの条件で分級して、分級したフライアッシュ(FA1〜7、ただし、これらの記号は分級する前のフライアッシュの記号にも対応する。)を得た。分級した(混合材用)フライアッシュの製造量は約2.5kg/hrであった。分級したフライアッシュのブレーン比表面積と20μm以上の粒分を表1に示す。なお、20μm以上の粒分は粒度分布測定装置(製品名 マイクロトラックHRA モデル9320−X100、日機装社製)を用いて求めた。
なお、前記のとおり、本願発明の製造方法によれば、混合材用フライアッシュを約2.5kg/hrという高速度で短時間に製造できるから、特許文献1に記載の改変処理期間の28日間と比べ製造上の有用性に顕著な差がある。
【0020】
3.測定項目
前記分級前後の各フライアッシュを用いて、下記(1)〜(4)の物性を測定した。
(1)フライアッシュのフロー値比と活性度指数
JIS A 6201 附属書2 「コンクリート用フライアッシュ」に準拠して、分級前後の各フライアッシュのフロー値比および活性度指数を求めた。
(2)強熱減量
JIS A 6201 「コンクリート用フライアッシュ」に準拠して、分級後の各フライアッシュの強熱減量を求めた。
(3)メチレンブルー吸着量
JCAS I−61「フライアッシュのメチレンブルー吸着量試験方法」に準拠して、分級前後の各フライアッシュのメチレンブルー吸着量を測定した。
(4)モルタル表面のL値
前記のL値の測定方法を用いて、分級前後の各フライアッシュを用いたモルタルの表面のL値を測定した。
以上の測定結果を表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
4.測定結果について
表1や図1、2に示すように、分級後のフライアッシュのブレーン比表面積が4000〜6000cm/gの範囲、および強熱減量が6.0質量%以下であるフライアッシュ(実施例1〜6)を用いたモルタルは、フロー値比(流動性)および活性度指数(強度発現性)が向上した。これに対し、比較例では、強熱減量が6.0質量%を超えて7.7質量%になると、フロー値比が低下し、また、材齢28日および91日における活性度指数の伸びは、実施例と比べ鈍化した。また、ブレーン比表面積が4000〜6000cm/gの範囲、および強熱減量が6.0質量%以下であるフライアッシュ(実施例1〜6)を用いたモルタルは、フライアッシュの化学組成が変動しても、フロー値比や活性度指数のバラツキは小さい。
したがって、本発明の製造方法によれば、表1に示すようにフライアッシュの化学組成が変動しても、この変動に影響されることなく、安定した流動性を有するモルタルを製造できる。
【0023】
また、例えば、(1)の不等式を満たすフライアッシュを分級して得た、実施例2のフライアッシュのメチレンブルーの吸着量(0.47mg/g)は、0.50mg/g以下であった。これに対し、(1)の不等式を満たさないフライアッシュを分級して得た、比較例のフライアッシュのメチレンブルーの吸着量(0.79mg/g)は、0.50mg/gを越えていた。
さらに、例えば、(2)の不等式を満たすフライアッシュを分級して得た、実施例2のフライアッシュを使用したモルタルのL値(45)は43以上であった。これに対し、(2)の不等式を満たさないフライアッシュを分級して得た、比較例のフライアッシュを使用したモルタルのL値(39)は43未満であった。
図1
図2