特許第6957103号(P6957103)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6957103
(24)【登録日】2021年10月8日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】合成樹脂製扁平容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20211021BHJP
【FI】
   B65D1/02 221
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-208670(P2017-208670)
(22)【出願日】2017年10月27日
(65)【公開番号】特開2019-81559(P2019-81559A)
(43)【公開日】2019年5月30日
【審査請求日】2020年5月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】津田 直毅
(72)【発明者】
【氏名】富山 茂
【審査官】 種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−062783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の口部と、前記口部に連なる肩部と、該肩部に連なる胴部と、該胴部に連なり閉塞する底部とを備え、前記胴部をスクイズして内容物を吐出する合成樹脂製扁平容器であって、
前記胴部は、前後方向の厚さよりも左右方向の幅が大きい扁平形状となっており、
前記胴部は、該胴部の厚さ方向に対向配置された正面壁及び背面壁と、該胴部の幅方向両端部で前記正面壁及び前記背面壁の境界を構成する左右両側の屈曲部と、を備え、
前記胴部は、該胴部の中心軸線に沿う方向に垂直な横断面において、該胴部の中心軸線上に中心が位置し、前記正面壁の幅方向中心及び前記背面壁の幅方向中心を通る仮想円上に、該胴部の輪郭線が位置する所定形状部を有し、該所定形状部以外の部分は前記仮想円の外側に位置する形状となっており、
前記正面壁及び前記背面壁の少なくとも一部に、前記横断面における輪郭線が直線状となる前後一対の平坦部が左右両側の前記屈曲部にそれぞれ隣接して設けられているとともに、左右の前記平坦部の中央部分には、輪郭線が円弧状となる湾曲部が設けられており、
前記平坦部は、前記湾曲部よりも変形し易くなっている、合成樹脂製扁平容器。
【請求項2】
前記胴部が、前後対称、且つ、左右対称の形状となっている、請求項1に記載の合成樹脂製扁平容器。
【請求項3】
前記横断面において、
前記屈曲部の内角が90°以上、120°以下である、請求項1に記載の合成樹脂製扁平容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状の口部と、当該口部に連なる扁平形状の胴部とを備え、該胴部をスクイズすることにより内容物を吐出する合成樹脂製扁平容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品や化粧料等の様々な内容物を収容するための容器として、筒状の口部と、該口部に連なり内容物の収容空間を形成する胴部と、を備えた合成樹脂製の容器が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、例えば比較的粘度の高い内容物に使用する合成樹脂製扁平容器として、可撓性を有する胴部をスクイズすることにより、内部に収容された内容物を押し出す形態のものがある。そのような容器において、胴部の押し潰し操作を容易に行うため、容器の胴部を、横断面が略楕円形となるような扁平形状とした容器が知られている。胴部を扁平形状とすることで、胴部を厚さ方向の両側から挟んで押し潰し易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4137523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、容器に内容物を充填する際に、予め加熱した高温状態の内容物を容器に充填し、内容物の温度が低下する前にキャップを装着して密封を行う、いわゆる熱充填と呼ばれる充填方法がある。
【0006】
この熱充填においては、加熱された内容物を収容する容器を密封した後で、所定の温度まで冷却する冷却工程を行うことから、内容物の温度低下に伴い容器内部が減圧状態となる。このため、容器の胴部に、意図しない不均一な凹み等の不正変形が生じ、外観を損ねたり、強度の低下を招いたりする虞がある。
【0007】
本発明は、前記の課題を解決するために開発されたものであり、扁平形状の容器において、内容物を熱充填した場合の不正変形を防止することが可能な合成樹脂製扁平容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の合成樹脂製扁平容器は、筒状の口部と、前記口部に連なる肩部と、該肩部に連なる胴部と、該胴部に連なり閉塞する底部とを備え、前記胴部をスクイズして内容物を吐出する合成樹脂製扁平容器であって、
前記胴部は、前後方向の厚さよりも左右方向の幅が大きい扁平形状となっており、
前記胴部は、該胴部の厚さ方向に対向配置された正面壁及び背面壁と、該胴部の幅方向両端部で前記正面壁及び前記背面壁の境界を構成する左右両側の屈曲部と、を備え、
前記胴部は、該胴部の前記軸線方向に垂直な横断面において、該胴部の中心軸線上に中心が位置し、前記正面壁の幅方向中心及び前記背面壁の幅方向中心を通る仮想円上に、該胴部の輪郭線が位置する所定形状部を有し、該所定形状部以外の部分は前記仮想円の外側に位置しており、
前記正面壁及び前記背面壁の少なくとも一部に、前記横断面における輪郭線が直線状となる平坦部が左右両側の前記屈曲部にそれぞれ隣接して設けられていることを特徴とする。
【0009】
なお、本発明の合成樹脂製扁平容器にあっては、前記胴部が、前後対称、且つ、左右対称の形状となっていることが好ましい。
【0010】
また、本発明の合成樹脂製扁平容器にあっては、前記横断面において、
前記屈曲部の内角が90°以上、120°以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、扁平形状の容器において、内容物を熱充填した場合の不正変形を防止することが可能な合成樹脂製扁平容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る合成樹脂製扁平容器の正面図である。
図2図1に示す合成樹脂製扁平容器の平面図である。
図3図1に示す合成樹脂製扁平容器の側面図である。
図4図1の合成樹脂製扁平容器におけるA−A断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に例示説明する。
【0014】
図1〜4に示す本実施形態の合成樹脂製扁平容器1(以下、「容器1」とも称する)は、筒状の口部10と、口部10に連なる肩部11bと、肩部11bに連なる胴部11aと、胴部11aに連なる底部11cとを備える。容器1の内部は、内容物の収容空間Sとなっている。本実施形態において口部10は円筒状に形成され、その外周面にはキャップ等を装着可能な雄ねじ10aが設けられている。また、口部10の先端開口10bは、内容物の吐出口となる。
【0015】
図1、3に示すように、胴部11aは、前後方向の厚さTよりも左右方向の幅Wが大きい扁平形状となっている。胴部11aは可撓性を有し、内容物を吐出する際に、厚さ方向(短軸方向)にスクイズすることができるよう構成されている。胴部11aは、中心軸線Oに沿う軸線方向に、真っ直ぐに延びる筒状に形成されている。なお、胴部11aは、中心軸線Oに垂直な断面(横断面)の形状が一定となるようにしてもよいし、例えば横断面の外径が小さくなるくびれ部分をもうけてもよい。
【0016】
胴部11aの中心軸線Oに沿う軸線方向の一方側(上方)に連なる肩部11b(図1においては胴部11aの上側の領域)は、胴部11aへの連結部から徐々に縮径しつつ、その先端が口部10に連なっている。また、胴部11aの軸線方向における他方側(下方)に連なる底部11c(図1においては胴部11aの下側の領域)は、先端に向けて徐々に縮径し、先端で閉塞している。底部11cは、全体として下方側に膨出する湾曲形状となっている。このように、本実施形態の容器1では、閉塞する底部11c全体が下方側に膨出する湾曲形状となっているため、底部が中心軸線Oに垂直な底壁で閉塞された容器と比較して、胴部11aを厚さ方向に押し潰し易くなっている。
【0017】
胴部11a、肩部11b及び底部11cは、中心軸線Oを挟んで厚さ方向に対向配置された正面壁12と背面壁13とを有する。また、胴部11aは、胴部11aの幅方向両端部で正面壁12と背面壁13の境界を構成する左右両側の屈曲部14を有する。屈曲部14は、軸線方向に平行に延在している。本例において屈曲部14は、金型のパーティングラインPLに沿って直線状に延在している。本例において屈曲部14は、胴部11aを厚さ方向に押し潰し、正面壁12及び背面壁13のうちの一方が他方に向けて反転変形する際の起点となるよう構成されている。なお、本例では、正面壁12と背面壁13が前後対称形状となっており、また、左右両側の屈曲部14も対称形状となっている。すなわち、胴部11aは、前後対称、且つ、左右対称の形状となっている。
【0018】
ここで図4は、図1のA−A線の位置における胴部11aの横断面を示している。図4に示すように、胴部11aの左右両側において、屈曲部14を挟む正面壁12及び背面壁13には、外表面の輪郭線が直線状となる前後一対の平坦部15が設けられている。平坦部15は、屈曲部14に隣接して設けられている。本例の平坦部15は、胴部11aと肩部11bとの境界付近から下方に向けて徐々に幅が拡大し、最大幅位置から下方に向けて徐々に幅が小さくなっている。なお、平坦部15の形状は図示例に限定されず、例えば軸線方向に沿って幅が一定であってもよい。また、平坦部15は、胴部11aの高さ方向の少なくとも一部に設けられていればよい。左右の平坦部15の間の中央部分には、輪郭線が円弧状となる湾曲部16が設けられている。
【0019】
ここで、図4の横断面に示すように、胴部11aは、胴部11aの中心軸線O上に中心が位置し、正面壁12の幅方向中心及び背面壁13の幅方向中心を通る仮想円B上に、該胴部の輪郭線が位置する所定形状部を有する。すなわち、本例においては、正面壁12の幅方向中心及び背面壁13の幅方向中心のみが所定形状部となっている。胴部11aは、横断面における輪郭線が、当該所定形状部以外の部分は仮想円Bの外側に位置する形状となっている。すなわち、仮想円Bの内側に、胴部11aの輪郭線(胴部11aの外表面を構成する輪郭線)は位置しない形状となっている。また、胴部11aの横断面において、所定形状部が前後方向で最も外側に位置する構成となっている。換言すると、胴部11における所定形状部以外の部分は、所定形状部よりも前後方向外側に配置しない形状となっている。なお、本例では、肩部11b、底部11c、及び胴部11aの全体が、横断面における上記仮想円Bの内側に、輪郭線が位置しない形状となっているが、肩部11b及び底部11cの横断面は、当該条件を満たしていなくてもよい。すなわち、少なくとも胴部11aのみが、横断面における仮想円Bの内側に、胴部11aの輪郭線が位置しない形状となっていればよい。
【0020】
このように、本実施形態の容器1にあっては、正面壁12及び背面壁13における屈曲部14に隣接する位置に平坦部15を設けており、当該平坦部15は、正面壁12及び背面壁13の中央の湾曲部16よりも変形し易くなっている。
【0021】
これにより、内容物を容器1に熱充填した後、冷却により減圧した際に、湾曲部16よりも先に平坦部15が容器1の内側に向けて変形することとなり、湾曲部16には変形が生じ難くなる。そのため、胴部11aに不均一な不正変形が生じることを防止することができ、外観の悪化や強度の低下を抑制することができる。
【0022】
また、本例において胴部11aは、前後対称、且つ、左右対称の形状となっている。これにより、胴部11aの前後左右のバランスが均等になるため、胴部11aの不均一な変形をより確実に防止することができる。なお、胴部11aは、前後方向および左右方向に非対称の形状であってもよい。
【0023】
また、胴部11aが前後対称であることにより、胴部11aの正面壁12と背面壁13の何れか一方が他方に向けて反転変形した際に、正面壁12と背面壁13の内面の間に隙間が生じ難くなる。したがって、収容空間S内に残留する内容物の量を低減することができる。
【0024】
容器1は、押し潰し(スクイズ)が可能な薄肉に形成されている。なお、押圧力を解除した後に容器1が復元してもしなくてもよい。容器1は、例えば、PP、PE(LDPE)等のオレフィン系の合成樹脂で形成された筒状のパリソンを用いた押出ブロー成形によって得ることができる。本例においては、ブロー成形の割り金型の食い切りによって形成されるピンチオフ部17が、閉塞する底部11cに設けられている。なお、容器1の製造方法はこれに限定されず、種々の方法を採用可能である。
【0025】
ここで、実際に押出ブロー成形により形成した本例の容器1の各部の肉厚を測定した結果を以下に示す。測定箇所は、軸線方向において、容器1の下端から10mm間隔で165mmの位置までとし(図3参照)、各横断面において周方向にP1〜P6の6箇所について測定した(図4参照)。なお、P2及びP5は、湾曲部16に位置し、P1、P3、P4及びP6は、平坦部15に位置している。
【0026】
また、測定した容器1の軸線方向の全長は190mm、胴部11aの軸線方向の長さは170mm、また、容器1の下端からの距離が50mm〜140mmまでの範囲が胴部11aとなっている。また、胴部11aの厚さTは44mm、幅Wは67mmである。
【0027】
【表1】
【0028】
表1に示す通り、湾曲部16の中心の肉厚に比べて、平坦部15の位置では肉厚が薄く形成される。これにより、熱充填後の冷却時に、湾曲部16よりも平坦部15が先に変形するため、不均一な不正変形がより生じ難くなる。
【0029】
本例の容器1において、胴部11aの剛性を測定した。測定条件は、φ15mmの丸棒にて、容器1の下端からの距離が100mmの位置で、図4に示すP2及びP5の点を両側から中心軸線Oに向けて押し込んで、所定の変位が生じた際の力を測定することにより行った。なお、前後それぞれの丸棒を胴部11aに押し込む際の速度は、13mm/minとした。厚さ方向に胴部11aを10mmの変位させた際の力の平均値(n=5で測定)は、4.79N(0.49kgf)であった。
【0030】
本例の容器1にあっては、胴部11aの輪郭線を仮想円Bの外側に位置させることで、容器1の押圧(スクイズ)方向への胴部11aの急激な形状変化を抑制している。そのためスクイズに対し胴部11aの形状が抵抗になり難く、スクイズの際に必要な押圧力が小さくなる。
【0031】
容器1の収容空間Sに収容された内容物を口部10の先端開口10bから吐出する際には、胴部11aにおける正面壁12と背面壁13を指で挟み、厚さ方向にスクイズしていくことで容易に内容物を吐出することができる。
【0032】
特に、本例では容器1左右両側において正面壁12と背面壁13の境界に屈曲部14を設けたことにより、胴部11aの幅方向両側の端部を鋭角に折り畳むことができる。その結果、正面壁12の内面と背面壁13の内面とが密着するように、容器1を隙間なく押し潰すことができるので、収容空間Sに残留する内容物の量を低減することができる。特に、収容する内容物の粘度が高い程、容器の内部に留まり易く最後まで内容物を使い切ることが難しくなるため、本実施形態の容器1は、粘度の高い内容物に使用する場合により効果的である。
【0033】
ここで、本実施形態の容器1は、図1に示すように、胴部11aにおける短軸の延在方向(厚さ方向)から見た正面視において、胴部11aの閉塞する底部11cの輪郭線が、胴部11aの最大幅Wを直径とする略半円状となっている。このような構成により、閉塞する底部11cを厚さ方向に押し潰した際によりスムーズに反転変形させることができ、また、反転変形した形状を維持し易くなる。その結果、収容空間S内に残留する内容物の量を低減することができる。
【0034】
また、図4に示すように、屈曲部14の内角θは、90°以上、120°以下であることが好ましい。このような構成により、胴部11aの不正変形を防止する効果を高めつつ、収容空間Sの容積も適切に確保することができる。また、屈曲部14の内角θを上記の範囲とした場合には、胴部11aをスクイズして反転変形させることも容易になり、反転変形した形状を維持し易くなる。その結果、収容空間S内に残留する内容物の量を低減する本発明の効果を高めることができる。さらに、屈曲部14の内角θは、鋭角(90°未満)であることがより好ましく、この場合、胴部11aの不正変形防止効果がさらに高まる。
【0035】
また、胴部11aの扁平度は、0.15以上、且つ、0.65以下であることが好ましい。このような構成とすることにより、胴部11aの不正変形を防止する効果を高めることができる。ここで、胴部11aの扁平度とは、胴部11aの最大の厚さTに対する胴部11aの最大の幅Wの割合で示される値であり、すなわち扁平度=(W−T)/Tで求められる値である。なお、本例において、胴部11aの最大の厚さTは44mm、胴部11aの最大の幅Wは67mmであり、扁平度は0.34となっている。
【0036】
前述したところは本発明の一実施形態を示したにすぎず、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。例えば、容器1は単層でもよいし、積層構造であってもよい。また、印刷やラベル等の加飾も可能である。
【符号の説明】
【0037】
1:合成樹脂製扁平容器
10:口部
10a:雄ねじ
10b:先端開口
11a:胴部
11b:肩部
11c:底部
12:正面壁
13:背面壁
14:屈曲部
15:平坦部
16:湾曲部
17:ピンチオフ部
P1〜P6:測定箇所
O:中心軸線
S:収容空間
T:胴部の厚さ
W:胴部の幅
図1
図2
図3
図4