(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1の実施形態>
以下、図面に沿って、本開示の第1の実施形態に係る画像形成装置について説明する。第1の実施形態に係る画像形成装置は、複写機、プリンタ、ファクシミリ及びこれら複合機器等、シート上に形成されたトナー像を加熱及び加圧によりシートに定着可能な定着装置を備えた画像形成装置である。以下の実施形態においては、画像形成装置の一例として、電子写真方式のカラーレーザビームプリンタとしてのプリンタ1を用いて説明する。プリンタ1は、
図1に示すように、プリンタ本体2に挿入及び引出し可能に設けられた給送カセット10と、給送カセット10から給送されたシートに画像を形成する画像形成部30と、定着部50と、排出ローラ対60と、制御部90と、を有している。ただし、シートとは、用紙又は封筒等の紙、オーバーヘッドプロジェクタ用のプラスチックフィルム(OHT)、布などの薄層状の記録媒体を指す。
【0011】
[プリンタの概略構成]
プリンタ1に画像形成の指令が出力されると、プリンタ1に接続された外部のコンピュータ等から入力された画像情報に基づいて、画像形成部30による画像形成プロセスが開始される。画像形成部30は、感光体ドラム32を有するカートリッジ31と、レーザスキャナ33と、転写ローラ34と、を有している。レーザスキャナ33は、入力された画像情報に基づいて、感光体ドラム32に向けてレーザ光を照射する。このとき感光体ドラム32は、不図示の帯電ローラにより予め帯電されており、レーザ光が照射されることで感光体ドラム32上に静電潜像が形成される。その後、不図示の現像ローラによりこの静電潜像が現像され、感光体ドラム32上にトナー像が形成される。
【0012】
給送カセット10は、シートSが支持される中板11と、中板11を上方へ向けて付勢するバネ12と、を有し、中板11に積載されたシート束の最上位のシートを給送ローラ13に押圧される給送位置に保持する。上述の画像形成プロセスに並行して、中板11に積載されたシートSが給送ローラ13によってシート搬送方向に送り出される。また、給送カセット10には、中板11よりもシート搬送方向の下流において、給送ローラ13に当接する分離バッド14が設けられている。シートSは、給送ローラ13及び分離バッド14によって1枚ずつ分離されて送り出される。そして、給送ローラ13及び分離バッド14によって送り出されたシートSは、搬送ローラ対81を経由してレジストレーションローラ対(レジストローラ対)82に搬送される。シートSは、レジストローラ対82により、斜行が補正されると共に、画像形成部30における作像動作の進行に合わせて転写ローラ34に向けて搬送される。転写ローラ34は、転写バイアスが印加されて感光体ドラム32上に形成されたトナー像をシートSに転写する。
【0013】
転写ローラ34によってトナー像が転写されたシートSは、加熱ローラ51及び加圧ローラ52を有する定着部50によって加熱・加圧処理され、トナー像が定着される。そして、シートSは、定着部50におけるシート搬送方向の下流に配置された搬送ローラ対53により、定着部50から排出される。片面印刷の場合には、定着部50から排出されたシートSは、定着部50よりもシート搬送方向の下流に配置される排出ローラ対60によって排出トレイ61に排出される。
【0014】
一方、両面印刷の場合、定着部50から排出されたシートSは、排出ローラ対60へと搬送され、排出ローラ対60が逆転することで両面搬送ローラ対83に搬送される。シートSは、両面搬送ローラ対83よりもシート搬送方向の下流に配置されるシート搬送装置としての横レジ補正部100に搬送され、横レジ補正部100により、シート搬送方向に直交する幅方向における位置が補正される。横レジ補正部100から排出されたシートSは、横レジ補正部100よりもシート搬送方向の下流に配置される両面搬送ローラ対85により再びレジストローラ対82へと搬送された後に、画像形成部30へと搬送され、裏面に画像を形成される。そして、両面に画像を形成されたシートSは、排出ローラ対60によって排出トレイ61に排出される。
【0015】
制御部90はコンピュータにより構成され、例えばCPUと、各部を制御するプログラムを記憶するROMと、データを一時的に記憶するRAMと、外部と信号を入出力する入出力回路とを備えている。CPUは、プリンタ1の制御全体を司るマイクロプロセッサであり、システムコントローラの主体である。CPUは、入出力回路を介して、各駆動源及びセンサ等に接続され、各部と信号をやり取りすると共に動作を制御する。ROMには、シートSに画像を形成するための画像形成制御シーケンス等が記憶される。
【0016】
[横レジ補正部の詳細構成]
図2(a)は、所定の平面に平行な第3方向としてのシート搬送方向D1及び第1方向としての幅方向D2に直交する直交方向D5から視た横レジ補正部100を示す図である。また、
図2(b)は、横レジ補正部100を、幅方向D2のうち
図2(a)に示す矢印Aから視た矢視図であり、
図2(c)は、横レジ補正部100を、幅方向D2のうち
図2(a)に示す矢印Bから視た矢視図である。横レジ補正部100は、
図2(a)〜
図2(c)に示すように、第1回転体としての搬送ローラ110と、搬送ローラ110に当接し、搬送ローラ110と共にシートSを搬送する第2回転体としての斜送ローラ120と、を備えている。
【0017】
横レジ補正部100に搬送されたシートSは、所定の平面に沿って、搬送ローラ110及び斜送ローラ120により搬送されつつ、
図1に示すシート搬送路84により案内されて、横レジ補正部100から排出される。すなわち、所定の平面は、搬送ローラ110及び斜送ローラ120により搬送されるシートに平行なシート搬送平面となっている。なお、第1の実施形態の横レジ補正部100においては、直交方向D5のうち、搬送ローラ110から斜送ローラ120に向かう方向を上方と定義し、斜送ローラ120から搬送ローラ110に向かう方向を下方と定義して説明する。
【0018】
搬送ローラ110は、プリンタ本体2に支持されていると共に幅方向D2に延びる第1回転軸としての回転軸111と、回転軸111の外周に設けられて斜送ローラ120に当接するローラ部112と、を有している。斜送ローラ120は、プリンタ本体2に対して直交方向D5に揺動可能に支持されている第2回転軸としての回転軸121と、回転軸121の外周に設けられて搬送ローラ110のローラ部112に当接するローラ部122と、を有している。また、回転軸121には、ローラ部112に向かって付勢する第1付勢部としてのバネ130が固定されている。バネ130による付勢力により、ローラ部122は、ローラ部112を押圧する。
【0019】
回転軸111の回転中心としての軸線L1は、幅方向D2に沿って延びている。また、回転軸121の回転中心としての軸線L2は、基本的に、シート搬送方向D1から視て、軸線L1に対して平行に配置されており、シート搬送平面と平行となっている。しかしながら、軸線L2は、直交方向D5から視て、幅方向D2と交差する第2方向としての斜行方向D3に延びており、軸線L1に対して角度θs傾斜している。
【0020】
回転軸121は、ローラ部122に対して幅方向D2における一方に位置する上流軸部123と、他方に位置する下流軸部124と、を有している。上流軸部123は、回転軸111に対して、シート搬送方向D1の上流に配置されており、下流軸部124は、回転軸111に対してシート搬送方向D1の下流に配置されている。すなわち、上流軸部123は、シート搬送方向D1の上流側に配置されており、下流軸部124は、シート搬送方向D1の下流側に配置されている。なお、第1の実施形態の横レジ補正部100においては、幅方向D2のうち、ローラ部122に対して上流軸部123が配置される方向を左方と定義し、ローラ部122に対して下流軸部124が配置される方向を右方と定義して説明する。
【0021】
搬送ローラ110は、幅方向D2に延びる回転軸111を中心に、シート搬送方向D1にシートSを搬送する第1回転方向R1に回転可能となっている。斜送ローラ120は、斜行方向D3に直交する方向であり、シート搬送方向D1よりも左方を向く斜送方向D4にシートSを搬送するように、斜行方向D3に延びる回転軸121を中心に第2回転方向R2に回転可能となっている。ローラ部122は、直交方向D5から視て、軸線L1と軸線L2とが交差する軸交点C1において、ローラ部112と当接するように配置されている。すなわち、ローラ部122がローラ部112に当接して形成される第1ニップとしてのニップN1は、直交方向D5から視て、軸交点C1を中心として形成される。
【0022】
また、回転軸111には、駆動源としてのモータMが接続されており、モータMの駆動力により第1回転方向R1に駆動回転する。搬送ローラ110が斜送ローラ120に当接した状態で第1回転方向R1に駆動回転した場合に、ローラ部122には、ニップN1におけるローラ部112との間に摩擦が発生する。ローラ部122には、ローラ部112との摩擦により、ローラ部122が第2回転方向R2に回転する方向の第1作用力としての接線力P1が作用する。ローラ部112には、作用反作用の関係から、接線力P1と同じ大きさの力であるが反対方向に作用する力としての接線力P2がモータMの駆動力に対する負荷として作用する。接線力P1及び接線力P2は、ニップN1において作用する力であるので、ニップN1におけるローラ部112及びローラ部122の接線方向であり、シート搬送平面に平行な力である。斜送ローラ120は、接線力P1により第2回転方向R2に従動回転する。
【0023】
また、シートSがニップN1に搬送された場合には、搬送ローラ110とシートSとの間の摩擦により、モータMにより駆動する搬送ローラ110からシートSにシート搬送方向D1の搬送力が付与される。斜送ローラ120には、シートSと斜送ローラ120との間の摩擦により、シートSからシート搬送方向D1の力が付与される。斜送ローラ120は、シートSから付与されたシート搬送方向D1の力により、第2回転方向R2に回転し、斜送ローラ120とシートSとの間の摩擦により、斜送方向D4の搬送力をシートSに付与する。シートSには、シート搬送方向D1の搬送力と斜送方向D4の搬送力とが付与されることにより、シート搬送方向D1の下流かつ左方に向かって搬送される。なお、以下では、斜送ローラ120からシートSに付与する斜送方向D4の搬送力を斜送力とも記載する。
【0024】
また、横レジ補正部100は、ローラ部112及びローラ部122よりも左方に配置される横レジ基準部140を有している。横レジ基準部140は、シート搬送方向D1及び直交方向D5に延びた板形状に形成されており、シートSにおける左方の側部が当接可能なシート規制面としての基準面141が設けられている。横レジ補正部100は、横レジ補正部100に搬送されたシートSを、搬送ローラ110によりシート搬送方向D1に搬送しながら、斜送ローラ120による斜送方向D4の斜送力により基準面141に向かって搬送する。シートSは、
図2(a)において実線で示される位置から破線で示される位置に搬送されて、基準面141に押し付けられることにより、幅方向D2の位置が補正される。基準面141に押し付けられシートSは、左方への移動が規制されるので、シート搬送方向D1に平行に搬送され、横レジ補正部100から排出される。
【0025】
[比較例の説明]
ここで、第1の実施形態の横レジ補正部100に対する比較例として、横レジ補正部500を、
図9を用いて説明する。
図9(a)は、横レジ補正部500を直交方向D5から視た図であり、
図9(b)は、
図9(a)に示すC−C矢視断面図であり、
図9(c)は、
図9(a)に示すD−D矢視断面図である。横レジ補正部500は、
図9(a)に示すように、斜送ローラ120の回転軸121に対して斜行方向D3の両側に、プリンタ本体2に固定されて直交方向D5に延びた形状である軸方向規制部125,126を有している。軸方向規制部125は、回転軸121の斜行方向D3の両端部のうち上流軸部123の端部に当接し、軸方向規制部126は、下流軸部124の端部に当接する。これにより、回転軸121は、斜行方向D3及び直交方向D5に摺動可能に支持されつつ、斜送方向D4への移動が規制される。
【0026】
また、横レジ補正部500は、斜行方向D3において、軸方向規制部125,126の間に配置される搬送方向規制部550を有している。搬送方向規制部550は、プリンタ本体2に固定された搬送方向規制部材551〜554から構成されている。
図8(b)及び
図8(c)に示すように、搬送方向規制部材551,552は、上流軸部123を斜送方向D4の上流及び下流から挟み込むように配置されている。搬送方向規制部材553,554は、下流軸部124を斜送方向D4の上流及び下流から挟み込むように配置されている。
【0027】
また、搬送方向規制部550は、斜送ローラ120が回転可能かつ搬送ローラ110に対して接離可能となるように回転軸121を摺動可能に支持する当接面555を有している。当接面555は、上流側当接面556,557と下流側当接面558,559とから構成されている。上流側当接面556は、搬送方向規制部材551に設けられており、上流軸部123における斜送方向D4の下流に当接し、上流側当接面557は、搬送方向規制部材552に設けられており、上流軸部123における斜送方向D4の上流に当接する。下流側当接面558は、搬送方向規制部材553に設けられており、下流軸部124における斜送方向D4の下流に当接し、下流側当接面559は、搬送方向規制部材554に設けられており、下流軸部124における斜送方向D4の上流に当接する。
【0028】
上流側当接面556,557及び下流側当接面558,559は、斜行方向D3及び直交方向D5に広がる平面形状に形成されている。すなわち、上流側当接面556,557及び下流側当接面558,559は、搬送ローラ110及び斜送ローラ120により搬送されるシートSに対して略直交するように配置されている。バネ130により下方に付勢された斜送ローラ120の押圧力は、上流側当接面556,557及び下流側当接面558,559に沿って、シートSに対して垂直に作用する。
【0029】
ところで、ニップN1は、直交方向D5から視て、軸交点C1の一点に形成されたものではなく、軸交点C1を中心とした軸交点C1付近に形成される。このために、接線力P1は、直交方向D5から視て、軸交点C1の一点において作用する力ではなく、ニップN1において分散している力の合力である。接線力P1は、
図9(a)、
図10(a)及び
図10(b)に示すように、接線力PAと接線力PBとに分解可能である。接線力PAは、斜行方向D3において軸交点C1よりも上流軸部123の側に分散している力の合力であり、上流軸部123に作用する力である。接線力PBは、斜行方向D3において軸交点C1よりも下流軸部124の側に分散している力の合力であり、下流軸部124に作用する力である。
【0030】
ニップN1のうち軸交点C1よりも上流軸部123の側における領域としての左ニップNAでは、直交方向D5から視て、中心CNAが軸線L1よりもシート搬送方向D1の上流に位置する。接線力PAは、軸線L1と左ニップNAの中心CNAと軸線L2とを結ぶ直線L3に直交する力である。直線L3は、幅方向D2から視て、直交方向D5に対して第1回転方向R1とは反対の方向に傾斜しているので、接線力PAは、シート搬送平面、すなわち接線力P1よりも上方を向いた力である。接線力PAは、幅方向D2から視て、上流側当接面556に対して第1回転方向R1に角度θA傾斜した方向を向いており、角度θAは、90度以下となっている。
【0031】
ニップN1のうち軸交点C1よりも下流軸部124の側における領域としての右ニップNBでは、直交方向D5から視て、中心CNBが軸線L1よりもシート搬送方向D1の下流に位置する。接線力PBは、軸線L1と右ニップNBの中心CNBと軸線L2とを結ぶ直線L4に直交する力である。直線L4は、幅方向D2から視て、直交方向D5に対して第1回転方向R1に傾斜しているので、接線力PBは、接線力P1よりも下方を向いた力である。接線力PBは、幅方向D2から視て、下流側当接面558に対して第1回転方向R1に角度θB傾斜した方向を向いており、角度θBは、90度以上となっている。
【0032】
上流軸部123は、上流側当接面556を、接線力PAのうち上流側当接面556に直交する分力、すなわち接線力PAのうち斜送方向D4の分力PANで押圧する。下流軸部124は、下流側当接面558を、接線力PBのうち上流側当接面556に直交する分力、すなわち接線力PBのうち斜送方向D4の分力PBNで押圧する。また、上流軸部123及び下流軸部124は、上流側当接面556及び下流側当接面558から、分力PAN,PBNと同じ大きさの力としての垂直抗力PAN´,PBN´を受ける。これにより、上流軸部123及び下流軸部124は、斜送方向D4の移動が規制される。
【0033】
しかしながら、ローラ部122におけるニップNAには、接線力PAのうち上流側当接面556に平行かつ斜行方向D3に直交する分力、すなわち接線力PAのうち直交方向D5の分力PASが作用する。ローラ部122におけるニップNBには、接線力PBのうち下流側当接面558に平行かつ斜行方向D3に直交する分力、すなわち接線力PBのうち直交方向D5の分力PBSが作用する。分力PASは、角度θAが90度以下であることにより、斜送ローラ120が搬送ローラ110から離間する離間方向である上方の力である。また、分力PBSは、角度θBが90度以上であることにより、斜送ローラ120が搬送ローラ110に接近する接近方向である下方の力である。
【0034】
斜送ローラ120は、基本的に、回転軸121がシート搬送平面に平行となる基準角度に配置されている。しかしながら、斜送ローラ120には、分力PAS及び分力PBSにより、搬送ローラ110を中心に回動する力が作用し、基準角度から下流軸部124が下方に移動する方向、すなわち第1回転方向R1に回動する虞がある。斜送ローラ120が基準角度から第1回転方向R1に回動した場合には、ニップN1の中心が下流軸部124の側に移動するので、右ニップNBが左ニップNAよりも大きくなり、分力PBSが大きくなる。このように、ローラ部112,122では、ニップN1が右側に偏り、偏磨耗し易くなる。また、分力PBSは、ローラ部122がローラ部112に食い込む力としての食い込み力となり、ローラ部112に対するローラ部122の押圧力は、バネ130による付勢力以上に増加する。これにより、ローラ部112,122は、さらに偏磨耗し易くなる虞がある。
【0035】
さらに、下流軸部124は、第2回転方向R2に回転するので、
図11に示すように、下流側当接面558に対する摩擦力PBμが発生する。下流軸部124は、下流側当接面558と当接する箇所において、上方に向かって回動するので、摩擦力PBμは、下流軸部124の動作を妨げる方向である下方を向く力である。従って、ローラ部122には、食い込み力として、分力PBSに加えて摩擦力PBμが作用する。ローラ部112に対するローラ部122の押圧力がさらに増加し、ローラ部112及びローラ部122がさらに偏磨耗し易くなる。
【0036】
下流側当接面558と下流軸部124との間における摩擦係数がμである場合には、摩擦力PBμは、摩擦係数μと分力PBNとの積から求まる。摩擦力PBμは、接線力PBに平行な分力PB2と、分力PB2に直交する分力PBμNと、分力PB2及び分力PBμNに直交する分力(不図示)と、に分解可能である。ローラ部122には、接線力PBに平行な方向において、接線力PBに加えて分力PB2が作用する。角度θBが90度以上であり、摩擦力PBμが下流側当接面558に平行な方向のうち下方に作用する力であるので、幅方向D2から視て、摩擦力PBμは、接線力PBに対して第1回転方向R1に90度以下の角度で傾斜している。従って、分力PB2は、接線力PBと同じ方向の力である。
【0037】
分力PB2は、接線力PBと略同様に、下流側当接面558に直交する分力PB2N(不図示)と、下流側当接面558に平行かつ斜行方向D3に直交する分力PB2S(不図示)と、斜行方向D3の分力(不図示)と、に分解可能である。そして、下流軸部124には、分力PB2Nに対応する摩擦力PBμ2(不図示)が作用する。横レジ補正部500では、食い込み力としての摩擦力PBμにより、分力PB2S及び摩擦力PBμ2が食い込み力として2次的に発生する。この繰り返しにより、食い込み力は、(PBS+PBμ)+(PB2S+PBμ2)+・・・のように、帰納的に発生する力の合力となる。
【0038】
食い込み力は、摩擦係数等の各種パラメータにより所定の値となる。例えば、接線力PBが500gfであり、直線L4に対するシート搬送方向D1の角度θiが80度であり、摩擦係数μが0.3である場合には、食い込み力は、計算上約247gfとなる。一般的な従動ローラに対する付勢力が500〜1000gfであるので、247gfは、無視できない値である。このように、2次的に発生する食い込み力により、ローラ部112及びローラ部122は、さらに偏磨耗し易くなる。
【0039】
下流側当接面558に平行かつ斜行方向D3に直交する力の合力は、シートSがニップN1に進入することにより解除されるため、比較的製品寿命の短い製品において、問題につながることはない。しかし、高耐久の製品においては、シートSがニップN1に無い状態での回転が断続的に続くことで、搬送ローラ110のローラ部112及び斜送ローラ120のローラ部122が徐々に摩耗していく。食い込み力は、ニップN1において発生し、ニップN1の中心は、上述したように、直交方向D5から視て軸交点C1に対してシート搬送方向D1の下流かつ右方に移動する。従って、ローラ部112及びローラ部122では、直交方向D5から視て軸交点C1に対してシート搬送方向D1の下流かつ右方の位置における磨耗量が大きくなることにより、偏磨耗となり、斜送ローラ120による斜送力が低下する虞がある。斜送力が低下することにより、横レジ補正部500による位置補正が適切に行われず、画像形成部30による画像形成時に、シートSに対してずれた位置に画像が形成される虞がある。
【0040】
[第1の実施形態の詳細構成]
図3(a)は、第1の実施形態における横レジ補正部100を直交方向D5から視た図であり、
図3(b)は、
図3(a)に示すC−C矢視断面図であり、
図3(c)は、
図3(a)に示すD−D矢視断面図である。横レジ補正部100は、
図3(a)〜
図3(c)に示すように、斜送ローラ120が回転可能かつ搬送ローラ110に対して接離可能となるように回転軸121を摺動可能に支持する搬送方向規制部150を有している。搬送方向規制部150は、プリンタ本体2に固定された搬送方向規制部材151〜154から構成されている。
図3(b)及び
図3(c)に示すように、搬送方向規制部材151,152は、上流軸部123を斜送方向D4の上流及び下流から挟み込むように配置されている。搬送方向規制部材153,154は、下流軸部124を斜送方向D4の上流及び下流から挟み込むように配置されている。
【0041】
また、搬送方向規制部150は、回転軸121に当接して支持する第1支持面としての当接面155を有している。当接面155は、第1上流側支持面としての上流側当接面156と、上流側当接面157と、下流側支持面としての下流側当接面158と、下流側当接面159と、から構成されている。上流側当接面156は、搬送方向規制部材151に設けられており、上流軸部123における斜送方向D4の下流に当接し、上流側当接面157は、搬送方向規制部材152に設けられており、上流軸部123における斜送方向D4の上流に当接する。下流側当接面158は、搬送方向規制部材153に設けられており、下流軸部124における斜送方向D4の下流に当接し、下流側当接面159は、搬送方向規制部材154に設けられており、下流軸部124における斜送方向D4の上流に当接する。
【0042】
上流側当接面156は、上流側当接面157と平行に設けられており、幅方向D2から視て、直交方向D5に対して第1回転方向R1に傾斜した角度に配置されている。直線L3は、上述したように、直交方向D5よりも第1回転方向R1とは反対の方向に傾斜している。従って、上流側当接面156は、直線L3よりも第1回転方向R1に傾斜した角度に配置されている。接線力PAは、幅方向D2から視て、上流側当接面156に対して第1回転方向R1に角度θA傾斜した方向を向いており、角度θAは、90度以下となる。なお、第1の実施形態の横レジ補正部100における角度θAは、比較例の横レジ補正部500における角度θAよりも小さい。
【0043】
下流側当接面158は、下流側当接面159と平行に設けられており、幅方向D2から視て、直交方向D5に対して第1回転方向R1に傾斜した角度に配置されている。例えば、幅方向D2から視て、接線力PBがシート搬送方向D1に対して第1回転方向R1に最大角度θBmax傾斜する可能性がある。この場合には、下流側当接面158は、直交方向D5に対して第1回転方向R1に角度θBmax以上傾斜した角度に配置されている。
【0044】
また、直線L4は、接線力PBに直交するので、幅方向D2から視て、直交方向D5よりも第1回転方向R1に角度θBmax傾斜している。下流側当接面158は、上述した角度に配置されているので、幅方向D2から視て、直線L4よりも、第1回転方向R1に傾斜した角度に配置されている。従って、接線力PBは、幅方向D2から視て、下流側当接面158に対して第1回転方向R1に角度θB傾斜した方向を向いており、角度θBは、90度以下となる。なお、下流側当接面158は、上流側当接面156よりも第1回転方向R1に傾斜した角度に配置されており、上流側当接面156よりも、直交方向D5に対する傾斜角度が大きくなるように形成されている。
【0045】
以上のように構成されているので、斜送ローラ120は、
図3(c)に示すように、シート搬送方向D1よりも下方を向く接線力PBを受ける。角度θBが90度以下であるので、摩擦力PBμは、幅方向D2から視て、接線力PBに対して第1回転方向R1に90度以上傾斜している。これにより、摩擦力PBμに含まれる分力PB2の方向は、接線力PBとは反対の方向となる。
【0046】
また、角度θRが90度以下であるので、接線力PBのうち下流側当接面158に平行かつ斜行方向D3に直交する分力PBSは、上方を向く。斜送ローラ120には、分力PBSにより下流軸部124が上方に移動して第1回転方向R1とは反対の方向に回動する力が付与される。これにより、斜送ローラ120には、基準角度から第1回転方向R1に回動することが抑制される。
【0047】
また、斜送ローラ120は、
図3(b)に示すように、幅方向D2から視て、シート搬送方向D1よりも上方を向く接線力PAを受ける。角度θAが90度以下であるので、摩擦力PAμは、幅方向D2から視て、接線力PAに対して第1回転方向R1に90度以上傾斜している。これにより、摩擦力PAμに含まれる分力PA2の方向は、接線力PAとは反対の方向となる。
【0048】
また、角度θAが90度以下であるので、接線力PAのうち上流側当接面156に平行かつ斜行方向D3に直交する分力PASは、上方を向く。斜送ローラ120には、分力PASにより上流軸部123が上方に移動して第1回転方向R1に回動する力が付与される。斜送ローラ120には、分力PBSにより第1回転方向R1とは反対の方向に回動する力が付与されているが、分力PASにより第1回転方向R1に回動する力が付与されているので、基準角度から第1回転方向R1とは反対の方向に回動することが抑制される。このように、接線力P1に含まれる接線力PA及び接線力PBは、当接面155により、回転軸121がシート搬送平面に平行となるように、斜送ローラ120に作用し、斜送ローラ120が基準角度から回動することが抑制する。
【0049】
また、分力PASは、三角関数に基づいて、角度θAが小さくなるほど大きくなり、分力PBSも、角度θBが小さくなるほど大きくなる。横レジ補正部100においては、下流側当接面158が上流側当接面156よりも直交方向D5に対する傾斜角度が大きくなるように形成されているので、角度θAが角度θBよりも著しく小さくならないように構成されている。これにより、横レジ補正部100は、分力PASが分力PBSに対して著しく大きな力となることを防ぎ、分力PASによって斜送ローラ120が基準角度から第1回転方向R1に回動することを抑制する。
【0050】
また、回転軸121は、たとえ基準角度から第1回転方向R1に回動したとしても、下流軸部124が分力PBSによって上方に移動することにより、第1回転方向R1とは反対の方向に回動して、基準角度に戻る。また、回転軸121は、たとえ基準角度から第1回転方向R1とは反対の方向に回動したとしても、上流軸部123が分力PASによって上方に移動することにより、第1回転方向R1に回動して、基準角度に戻る。
【0051】
このように、横レジ補正部100では、分力PAS及び分力PBSが上方を向くので、食い込み力、すなわちローラ部112に対するローラ部122の押圧力が増加することを防ぐことができる。また、横レジ補正部100では、分力PA2及び分力PB2の方向が接線力PA及び接線力PBの方向とは反対であることにより、食い込み力が帰納的に増加することを防ぐことができる。また、横レジ補正部100では、斜送ローラ120を、基準角度から回動することを抑制すると共に、基準角度から回動したとしても基準角度に戻ることにより、基準角度に保つことができる。これにより、横レジ補正部100では、直交方向D5から視て、ニップN1の中心が軸交点C1からずれることを防ぐことができるので、ローラ部112及びローラ部122が偏磨耗することを防ぐことができる。
【0052】
<第2の実施形態>
続いて、第2の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成については、図示を省略、又は図に同一符号を付して説明省略する。プリンタ1Aは、
図1に示すように、幅方向D2における位置を補正するシート搬送装置としての横レジ補正部100Aを備えている。
図4(a)は、横レジ補正部100Aを直交方向D5から視た図であり、
図4(b)は、
図4(a)に示すC−C矢視断面図であり、
図4(c)は、
図4(a)に示すD−D矢視断面図である。
【0053】
横レジ補正部100Aは、
図4(a)〜
図4(c)に示すように、回転軸121を摺動可能に支持する搬送方向規制部150Aを有している。搬送方向規制部150Aは、プリンタ本体2に固定された搬送方向規制部材151A〜154Aから構成されている。搬送方向規制部材151A〜154Aは、それぞれ直交方向D5に並んで配置される2種類の当接面を有している。搬送方向規制部150Aは、回転軸121に当接して支持する支持面としての当接面155Aと、当接面155Aの上方に配置された直交支持面としての当接面200と、を有している。
【0054】
当接面155Aは、第1上流側支持面としての上流側当接面156Aと、上流側当接面157Aと、下流側支持面としての下流側当接面158Aと、下流側当接面159Aと、から構成されている。また、当接面200は、上流側直交支持面としての上流側当接面201と、上流側当接面202と、下流側直交支持面としての下流側当接面203と、下流側当接面204と、から構成されている。上流側当接面156A,201は、搬送方向規制部材151Aに設けられており、上流側当接面157A,202は、搬送方向規制部材152Aに設けられている。また、下流側当接面158A,203は、搬送方向規制部材153Aに設けられており、下流側当接面159A,204は、搬送方向規制部材154Aに設けられている。
【0055】
上流側当接面156Aは、上流側当接面157Aと平行に配置されており、第1の実施形態における上流側当接面156と略同様に、幅方向D2から視て、直交方向D5に対して第1回転方向R1に傾斜した角度に配置されている。接線力PAは、幅方向D2から視て、上流側当接面156Aに対して第1回転方向R1に角度θA傾斜した方向を向いており、角度θAは、90度以下となる。上流側当接面201は、上流側当接面156Aの上端に連続して形成されており、上流側当接面202は、上流側当接面157Aの上端に連続して形成されている。すなわち、上流側当接面201は、上流側当接面156Aにおける離間方向の下流端に連続し、上流側当接面202は、上流側当接面157Aにおける離間方向の下流端に連続する。
【0056】
下流側当接面158Aは、下流側当接面159Aと平行に配置されており、第1の実施形態における下流側当接面158と略同様に、直線L4よりも第1回転方向R1に傾斜した角度に配置されている。接線力PBは、幅方向D2から視て、下流側当接面158Aに対して第1回転方向R1に角度θB傾斜した方向を向いており、角度θBは、90度以下となる。下流側当接面203は、下流側当接面158Aの上端に連続して形成されており、下流側当接面204は、下流側当接面159Aの上端に連続して形成されている。すなわち、下流側当接面203は、下流側当接面158Aにおける離間方向の下流端に連続し、下流側当接面204は、下流側当接面159Aにおける離間方向の下流端に連続する。
【0057】
上流側当接面201,202及び下流側当接面203,204は、それぞれ斜行方向D3及び直交方向D5に平行に配置されている。従って、接線力PAは、幅方向D2から視て、上流側当接面201,202に対して第1回転方向R1に角度θAよりも大きい角度で傾斜している。また、接線力PBは、下流側当接面203,204に対して第1回転方向R1に90度以上の角度で傾斜している。
【0058】
上流側当接面156A,157A及び下流側当接面158A,159Aは、斜送ローラ120が基準角度に位置していると共にローラ部122がローラ部112に当接している場合に、直交方向D5において、回転軸121が当接する位置に配置されている。また、上流側当接面201,202及び下流側当接面203,204は、ニップN1にシートSが進入している場合に、直交方向D5において、回転軸121が当接する位置に配置されている。
【0059】
以上のように構成されているので、横レジ補正部100Aでは、シートSが搬送されてきていない状態において、第1の実施形態の横レジ補正部100と略同様に、斜送ローラ120を基準角度に保つことができる。これにより、横レジ補正部100Aでは、直交方向D5から視て、ニップN1の中心が軸交点C1からずれることを防ぐことができるので、ローラ部112及びローラ部122が偏磨耗することを防ぐことができる。
【0060】
また、例えば、分力PASに対して分力PBSが大きくなり、斜送ローラ120が基準角度から第1回転方向R1とは反対の方向に回動した場合に、下流軸部124は、下流側当接面203に当接する。接線力PBが下流側当接面203に対して第1回転方向R1に90度以上の角度で傾斜しているので、分力PBSは、下方を向く。これにより、斜送ローラ120は、第1回転方向R1に回動して、基準角度に戻る。
【0061】
また、例えば、分力PBSに対して分力PASが大きくなり、斜送ローラ120が基準角度から第1回転方向R1に回動した場合に、上流軸部123は、上流側当接面201に当接する。接線力PAが上流側当接面201に対して第1回転方向R1に角度θAよりも大きい角度で傾斜しているので、分力PASは、小さくなる。これにより、斜送ローラ120は、第1回転方向R1とは反対の方向に回動して、基準角度に戻る。横レジ補正部100Aでは、斜送ローラ120を基準角度に保つことができ、ローラ部112及びローラ部122が偏磨耗することを防ぐことができる。
【0062】
また、シートSがニップN1に進入した場合に、
図5(a)及び
図5(b)に示すように、斜送ローラ120は、シートSの厚さ分上方に移動する。これにより、回転軸121は、上流側当接面201,202及び下流側当接面203,204に当接する位置まで移動する。また、上流側当接面201,202及び下流側当接面203,204が直交方向D5に平行である。これにより、斜送ローラ120は、上流側当接面201,202及び下流側当接面203,204に沿って移動したとしても、直交方向D5から視た搬送ローラ110に対する角度が変動せず、角度θsに保持される。横レジ補正部100Aは、シートSの搬送時に、シートSの厚さに応じて斜送ローラ120による斜送力の向きが変化することを防ぐことができる。
【0063】
<第3の実施形態>
続いて、第3の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成については、図示を省略、又は図に同一符号を付して説明省略する。プリンタ1Bは、
図1に示すように、幅方向D2における位置を補正するシート搬送装置としての横レジ補正部100Bを備えている。
図6(a)は、横レジ補正部100Bを直交方向D5から視た図であり、
図6(b)は、
図6(a)に示すC−C矢視断面図である。横レジ補正部100Bは、
図6(a)及び
図6(b)に示すように、回転軸121を摺動可能に支持する搬送方向規制部150Bを有している。搬送方向規制部150Bは、プリンタ本体2に固定された搬送方向規制部材151B,152B,153,154から構成されている。
【0064】
また、搬送方向規制部150Bは、回転軸121に当接して支持する支持面としての当接面155Bを有している。当接面155Bは、第2上流側支持面としての上流側当接面156Bと、上流側当接面157Bと、下流側当接面158,159と、から構成されている。上流側当接面156Bは、搬送方向規制部材151Bに設けられており、上流側当接面157Bは、搬送方向規制部材152Bに設けられている。
【0065】
上流側当接面156Bは、上流側当接面157Bと平行に設けられており、幅方向D2から視て、直交方向D5に対して第1回転方向R1とは反対の方向に傾斜した角度に配置されている。例えば、幅方向D2から視て、接線力PAがシート搬送方向D1に対して第1回転方向R1とは反対の方向に最大角度θAmax傾斜する可能性がある。この場合には、上流側当接面156Bは、幅方向D2から視て、直交方向D5に対して第1回転方向R1とは反対の方向に角度θAmax以上傾斜した角度に配置されている。
【0066】
また、直線L3は、接線力PAに直交するので、幅方向D2から視て、直交方向D5よりも第1回転方向R1とは反対の方向に角度θAmax傾斜している。上流側当接面156Bは、上述した角度に配置されているので、幅方向D2から視て、直線L3よりも、第1回転方向R1とは反対の方向に傾斜した角度に配置されている。従って、接線力PAは、幅方向D2から視て、上流側当接面156Bに対して第1回転方向R1に角度θA傾斜した方向を向いており、角度θAは、90度以上となる。
【0067】
以上のように構成されているので、斜送ローラ120は、
図5(b)に示すように、シート搬送方向D1よりも上方を向く接線力PAを受ける。角度θAが90度以上であるので、接線力PAのうち上流側当接面157Bに平行かつ斜行方向D3に直交する分力PASは、下方を向く。斜送ローラ120には、分力PASにより上流軸部123が下方に移動して第1回転方向R1とは反対の方向に回動する力が付与される。これにより、斜送ローラ120には、基準角度から第1回転方向R1に回動することが抑制され、基準角度から回動することが抑制される。横レジ補正部100Bでは、直交方向D5から視て、ニップN1の中心が軸交点C1からずれることを防ぐことができるので、ローラ部112及びローラ部122が偏磨耗することを防ぐことができる。
【0068】
<第4の実施形態>
続いて、第4の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成については、図示を省略、又は図に同一符号を付して説明省略する。プリンタ1Cは、
図1に示すように、両面搬送ローラ対83よりもシート搬送方向の下流において、シート搬送装置100Cを備えている。
図7(a)は、シート搬送装置100Cを直交方向D5から視た図であり、
図7(b)は、
図7(a)に示す矢印EからシートSを視た矢視図である。シート搬送装置100Cは、
図7に示すように、搬送ローラ110、斜送ローラ120及びシート搬送路84と共に、第3回転体としての搬送ローラ110C及び第4回転体としての斜送ローラ120Cを有している。斜送ローラ120は、第1の実施形態の斜送ローラ120と略同様に、バネ130によって搬送ローラ110に向かって付勢されており、
図3(a)に示す搬送方向規制部150により、回転可能かつ搬送ローラ110に接離可能に支持されている。
【0069】
搬送ローラ110C及び斜送ローラ120Cは、搬送ローラ110及び斜送ローラ120の右方に配置されており、シート搬送路84の幅方向D2における中心CSに対して搬送ローラ110及び斜送ローラ120と対称となるように構成されている。搬送ローラ110Cは、プリンタ本体2に支持されていると共に幅方向D2に延びる第3回転軸としての回転軸111Cと、回転軸111Cの外周に設けられて斜送ローラ120Cに当接するローラ部112Cと、を有している。回転軸111Cは、中心CSに対して回転軸111と対称に配置されており、回転軸111と共に一本の回転軸から構成されている。
【0070】
斜送ローラ120Cは、プリンタ本体2に対して直交方向D5に揺動可能に支持されている第4回転軸としての回転軸121Cと、回転軸121Cの外周に設けられて搬送ローラ110Cのローラ部112Cに当接するローラ部122Cと、を有している。回転軸121Cは、直交方向D5から視て、中心CSに対して回転軸121と対称に配置されている。また、回転軸121Cには、ローラ部112Cに向かって付勢する第2付勢部としてのバネ130Cが固定されている。バネ130Cによる付勢力により、ローラ部122Cは、ローラ部112Cを押圧する。
【0071】
回転軸121Cの回転中心としての軸線L5は、基本的に、シート搬送方向D1から視て軸線L1に対して平行に配置されており、シート搬送平面と平行となっている。しかしながら、軸線L5は、上方から視て幅方向D2及び斜行方向D3と交差し、中心CSに対して斜行方向D3と対称な方向としての斜行方向D6に延びている。第4の実施形態において、軸線L2は、軸線L1に対して
図7(a)から視て反時計回りに角度θs傾斜しており、軸線L5は、軸線L1に対して
図7(a)から視て時計回りに角度θs傾斜している。従って、回転軸121Cの上流軸部123Cは、幅方向D2における右側に配置され、回転軸121Cの下流軸部124Cは、幅方向D2における左側に配置される。
【0072】
図8(a)は、シート搬送装置100Cを直交方向D5から視た図であり、
図8(b)は、
図8(a)に示すC−C矢視断面図であり、
図8(c)は、
図8(a)に示すD−D矢視断面図である。搬送ローラ110Cは、
図8(a)〜
図8(c)に示すように、回転軸111Cを中心に第1回転方向R1に回転可能となっている。斜送ローラ120Cは、斜行方向D6に直交する方向であり、シート搬送方向D1よりも右方を向く斜送方向D7にシートSを搬送するように、斜行方向D6に延びる回転軸121Cを中心に順回転方向R3に回転可能となっている。ローラ部122Cは、直交方向D5から視て、軸線L1と軸線L5とが交差する軸交点C2において、ローラ部112Cと当接するように配置されている。すなわち、ローラ部122Cがローラ部112Cに当接して形成される第2ニップとしてのニップN2は、直交方向D5から視て、軸交点C2を中心として形成される。
【0073】
回転軸111Cは、モータMの駆動力により第1回転方向R1に駆動回転する。搬送ローラ110Cが斜送ローラ120Cに当接した状態で第1回転方向R1に駆動回転した場合に、ローラ部122Cには、ローラ部122Cが順回転方向R3に回転する方向の第2作用力としての接線力P3が作用する。ローラ部112Cには、作用反作用の関係から、接線力P3と同じ大きさの力であるが反対方向に作用する力としての接線力P4がモータMの駆動力に対する負荷として作用する。接線力P3及び接線力P4は、ニップN2において作用する力であるので、ニップN2におけるローラ部112C及びローラ部122Cの接線方向であり、シート搬送平面に平行な力である。斜送ローラ120Cは、接線力P3により順回転方向R3に従動回転する。
【0074】
シートSがニップN2に搬送された場合には、搬送ローラ110CとシートSとの間の摩擦により、モータMにより駆動する搬送ローラ110CからシートSにシート搬送方向D1の搬送力が付与される。斜送ローラ120Cは、順回転方向R3に回転し、斜送ローラ120CとシートSとの間の摩擦により、斜送方向D7の搬送力をシートSに付与する。なお、以下では、斜送ローラ120CからシートSに付与する斜送方向D7の搬送力を斜送力とも記載する。斜送ローラ120と斜送ローラ120CとのシートSに付与する斜送力は、中心CSに対して互いに離れる方向を向いている。
【0075】
また、シート搬送装置100Cは、斜送ローラ120Cの回転軸121Cに対して斜行方向D6の両側に、プリンタ本体2に固定されて直交方向D5に延びた形状である軸方向規制部125C,126Cを有している。シート搬送装置100Cは、斜行方向D6において、軸方向規制部125C,126Cの間に配置される搬送方向規制部150Cを有している。搬送方向規制部150Cは、中心CSに対して搬送方向規制部150と対称に配置されており、搬送方向規制部材151〜154に対応する搬送方向規制部材151C〜154Cから構成されている。
図8(b)及び
図8(c)に示すように、搬送方向規制部材151C,152Cは、上流軸部123Cを斜送方向D7の上流及び下流から挟み込むように配置されている。搬送方向規制部材153C,154Cは、下流軸部124Cを斜送方向D7の上流及び下流から挟み込むように配置されている。
【0076】
また、搬送方向規制部150Cは、回転軸121Cに当接して支持する第2支持面としての当接面155Cを有している。当接面155Cは、中心CSに対して当接面155と対称に配置されており、上流側当接面156,157及び下流側当接面158,159に対応する上流側当接面156C,157C及び下流側当接面158C,159Cから構成されている。
【0077】
ところで、ニップN2は、ニップN1と略同様に、直交方向D5から視て、軸交点C2を中心とした軸交点C2付近に形成される。接線力P3は、斜行方向D6において軸交点C2よりも上流軸部123Cの側に分散している力の合力である接線力PCと、下流軸部124Cの側に分散している力の合力である接線力PDと、に分解可能である。接線力PCは、上流軸部123Cに作用する力であり、接線力PDは、下流軸部124Cに作用する力である。
【0078】
ニップN2のうち軸交点C2よりも上流軸部123Cの側における領域としての右ニップNCでは、直交方向D5から視て、中心CNCが軸線L1よりもシート搬送方向D1の上流に位置する。接線力PCは、軸線L1と右ニップNCの中心CNCと軸線L5とを結ぶ直線L6に直交する力である。直線L6は、幅方向D2から視て、直交方向D5に対して第1回転方向R1とは反対の方向に傾斜しているので、接線力PCは、シート搬送平面、すなわち接線力P3よりも上方を向いた力である。
【0079】
また、ニップN2のうち軸交点C2よりも下流軸部124Cの側における領域としての左ニップNDでは、直交方向D5から視て、中心CNDがシート搬送方向D1の下流に位置する。接線力PDは、軸線L1と左ニップNDの中心CNDと軸線L5とを結ぶ直線L7に直交する力である。直線L7は、幅方向D2から視て、直交方向D5に対して第1回転方向R1に傾斜しているので、接線力PDは、接線力P3よりも下方を向いた力である。
【0080】
上流側当接面156Cは、上流側当接面157Cと平行に設けられており、幅方向D2から視て、直交方向D5に対して第1回転方向R1に傾斜した角度に配置されている。直線L6は、上述したように、直交方向D5よりも第1回転方向R1とは反対の方向に傾斜している。従って、上流側当接面156Cは、直線L6よりも第1回転方向R1に傾斜した角度に配置されている。接線力PCは、幅方向D2から視て、上流側当接面156Cに対して第1回転方向R1に角度θC傾斜した方向を向いており、角度θCは、90度以下となる。
【0081】
下流側当接面158Cは、下流側当接面159Cと平行に設けられており、幅方向D2から視て、直交方向D5に対して第1回転方向R1に傾斜した角度に配置されている。例えば、幅方向D2から視て、接線力PDがシート搬送方向D1に対して第1回転方向R1に最大角度θDmax傾斜する可能性がある。この場合には、下流側当接面158Cは、幅方向D2から視て、直交方向D5に対して第1回転方向R1に角度θDmax以上傾斜した角度に配置されている。
【0082】
また、直線L7は、接線力PDに直交するので、幅方向D2から視て、直交方向D5よりも第1回転方向R1に角度θDmax傾斜している。下流側当接面158Cは、上述した角度に配置されているので、幅方向D2から視て、直線L7よりも、第1回転方向R1に傾斜した角度に配置されている。従って、接線力PDは、幅方向D2から視て、下流側当接面158Cに対して第1回転方向R1に角度θD傾斜した方向を向いており、角度θDは、90度以下となる。なお、下流側当接面158Cは、上流側当接面156Cよりも第1回転方向R1に傾斜した角度に配置されており、上流側当接面156Cよりも、直交方向D5に対する傾斜角度が大きくなるように形成されている。
【0083】
以上のように構成されているので、接線力P1と略同様に、接線力P3に含まれる接線力PC及び接線力PDは、当接面155Cにより、回転軸121Cがシート搬送平面に平行となるように、斜送ローラ120Cに作用する。これにより、シート搬送装置100Cは、斜送ローラ120と共に斜送ローラ120Cが基準角度から回動することを抑制することができる。シート搬送装置100Cは、直交方向D5から視て、ニップN1の中心が軸交点C1からずれることを防ぐと共に、ニップN2の中心が軸交点C2からずれることを防ぐことができる。シート搬送装置100Cは、ローラ部112,122,112C,122Cが偏磨耗することを防ぐことができる。
【0084】
また、シート搬送装置100Cは、
図7(a)及び
図7(b)に示すように、斜送ローラ120と斜送ローラ120Cとの斜送力により、搬送されてきたシートSを幅方向D2における外側に向かって伸ばしながらシート搬送方向D1に搬送する。例えば、シートSには、定着部50によって加熱・加圧処理されることにより、うねり300が発生する虞がある。しかしながら、シート搬送装置100Cは、斜送ローラ120及び斜送ローラ120Cの斜送力により、うねり300を解消することができ、画像形成部30により形成された画像がずれることを防ぐことができる。
【0085】
なお、第1〜第4の実施形態における横レジ補正部100〜100B及びシート搬送装置100Cでは、搬送ローラ110,110CがモータMにより駆動回転し、斜送ローラ120,120Cが従動回転するように構成されているが、これに限らない。シート搬送装置は、斜送ローラ120,120CがモータMにより駆動回転して、搬送ローラ110,110Cが従動回転するように構成されていてもよい。
【0086】
この場合には、搬送ローラ110,110Cから斜送ローラ120,120Cに作用する接線力は、接線力P2,P4と略同様に、接線力P1,P3とは反対方向の力となる。すなわち、斜送ローラ120,120Cには、接線力PA,PB,PC,PDとは反対方向の接線力PA´,PB´,PC´,PD´が作用する。この場合には、当接面155,155A,155B,155Cにおける各上流側当接面及び下流側当接面が直交方向D5に対して、第1〜第4の実施形態における方向とは反対の方向に傾斜される。これにより、接線力PA´,PB´,PC´,PD´は、回転軸121,121Cがシート搬送平面に平行となるように、斜送ローラ120,120Cに作用し、ローラ部112,122,112C,122Cが偏磨耗することを防ぐことができる。
【0087】
また、第1〜第4の実施形態における横レジ補正部100〜100B及びシート搬送装置100Cでは、斜送ローラ120,120Cがバネ130,130Cにより付勢されるように構成されているが、これに限らない。シート搬送装置は、搬送ローラ110,110Cが付勢部により斜送ローラ120,120Cに向かって付勢されるように構成されていてもよい。シート搬送装置は、第1回転体の第1回転軸及び第3回転体の第3回転軸が斜行方向D3,D6に延び、第1付勢部及び第3付勢部に付勢される第2回転体の第2回転軸及び第4回転体の第4回転軸が幅方向D2に延びるように構成されていてもよい。また、シート搬送装置は、直交方向D5から視て、第1回転軸〜第4回転軸の全てが、幅方向D2と交差する方向に延びるように構成されていてもよい。
【0088】
また、第1〜第4の実施形態横レジ補正部100〜100B及びシート搬送装置100Cは、上流側当接面156〜156C,157〜157C及び下流側当接面158,158A,158C,159,159A,159Cを有するが、これに限らない。シート搬送装置は、直交方向D5と平行な上流側当接面と、下流側当接面158,158A,158C,159,159A,159Cと、を有するように構成されていてもよい。また、シート搬送装置は、上流側当接面156B,157Bと、直交方向D5と平行な下流側当接面と、を有するように構成されていてもよい。
【0089】
また、第1〜第4の実施形態における横レジ補正部100〜100B及びシート搬送装置100Cは、斜送ローラ120,120Cがバネ130により搬送ローラ110に向かって付勢されているが、これに限らない。シート搬送装置は、斜送ローラ120,120Cがゴム等の弾性部材により付勢されているように構成されていてもよい。また、シート搬送装置は、斜送ローラ120,120Cが自重により搬送ローラ110に向かって付勢されており、斜送ローラ120,120C自身が付勢部を兼ねるように構成されていてもよい。
【0090】
また、第1〜第4の実施形態における横レジ補正部100〜100B及びシート搬送装置100Cは、定着部50から搬送されたシートSを、画像形成部30に搬送するように構成されているが、これに限らない。シート搬送装置は、給送カセット10から給送されたシートSを、画像形成部30に搬送するように構成されていてもよい。また、シート搬送装置は、定着部50から排出されたシートSを、排出ローラ対60に搬送するように構成されていてもよい。また、シート搬送装置は、排出ローラ対60の代わりに配置されていてもよい。
【0091】
また、第1〜第3の実施形態における横レジ補正部100〜100Bは、横レジ基準部140を有するように構成されているが、これに限らない。シート搬送装置は、横レジ基準部140を有さないことにより、幅方向D2におけるシートSの位置を補正せず、シートSに斜送力を付与するように構成されていてもよい。
【0092】
また、第1、第2及び第4の実施形態における横レジ補正部100,100A及びシート搬送装置100Cは、当接面155,155A,155Cにおける上流側当接面と下流側当接面とが異なる角度で配置されているが、これに限らない。シート搬送装置は、支持面でおける第1上流側支持面と下流側支持面とが平行に配置されるように構成されていてもよい。
【0093】
また、第2の実施形態における横レジ補正部100Aでは、上流側当接面201,202及び下流側当接面203,204が直交方向D5と平行に設けられているが、これに限らない。シート搬送装置は、上流側当接面201,202及び下流側当接面203,204が直交方向D5に対して傾斜するように構成されていてもよい。この場合には、シートSの厚さに応じて、直交方向D5から視て回転軸111に対する回転軸121の角度を変化させることができる。