(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る水陸両用車の実施例について、添付図面を参照して詳細に説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各種変更が可能であることは言うまでもない。
【0021】
[実施例1]
本発明の実施例1に係る水陸両用車の構造について、
図1から
図5を参照して説明する。
【0022】
図1に示すように、水陸両用車1は、車両本体11の下部に装輪(または装軌)12を備えており、この装輪12を図示しない駆動源によって駆動することにより、陸上を走行することができるようになっている。また、水陸両用車1は、図示しないプロペラを備えており、このプロペラを図示しない駆動源によって駆動することにより、水上を航行することができるようになっている(
図2参照)。つまり、水陸両用車1は、水上および陸上における移動が可能なものである。
【0023】
図2に示すように、水陸両用車1には、水上航行時において水から揚力を受け易くするためのフラップ(板状部材)13が車両本体11の進行方向前方側(
図2においては、右方側)に設けられている。よって、水陸両用車1は、水上航行時においてフラップ13によって水から揚力を受けることにより、その航行状態を喫水の深い浮航状態から喫水の浅い滑走状態へと移行させて水上を航行することができる。
【0024】
図1および
図2に示すように、フラップ13は、車両本体11に対して展開および収納可能なもの(収納式フラップ)であり、車両本体11の前面11aに近接する(接する)ように収納される下段フラップ21と、車両本体11の上面11bに近接する(接する)ように収納される上段フラップ22とから概略構成されている。
【0025】
図1、
図2および
図4に示すように、下段フラップ21は、略T字形状の板状部材であり、その幅の狭い下端縁21aがヒンジ23を介して車両本体11の進行方向前方側における下端縁11cと接続されて成る。また、下段フラップ21は、当該下段フラップ21を車両本体11に対して回転動作するための第一のフラップ駆動装置41(
図5参照)と機械的に接続されており、車両本体11に対して車両幅方向に延在する回転軸C
1周りに回転されるようになっている。
【0026】
図4に示すように、上段フラップ22は、互いに摺動可能な第一の上段フラップ31と第二の上段フラップ32とから概略構成されており、第一上段フラップ31と第二上段フラップ32との摺動動作により、そのフラップ長さ(車両幅方向と直交して当該フラップ(上段フラップ22)が延在する方向における長さ)が可変に構成されている。
【0027】
第一上段フラップ31は、略長方形状の板状部材であり、その下端縁31aがヒンジ24を介して下段フラップ21における幅の広い上端縁21bと接続されて成る。また、第一上段フラップ31は、当該第一上段フラップ31を下段フラップ21に対して回転動作するための第二のフラップ駆動装置42(
図5参照)と機械的に接続されており、下段フラップ21に対して車両幅方向に延在する回転軸C
2周りに回転されるようになっている。
【0028】
第二上段フラップ32は、略長方形状の板状部材であり、その後面32aが第一上段フラップ31の前面31bと接して第一上段フラップ31に対して摺動可能に接続されて成る。また、第二上段フラップ32は、第二上段フラップ32を第一上段フラップ31に対して摺動動作するための第三のフラップ駆動装置43(
図5参照)と機械的に接続されており、第一上段フラップ31に対してV1軸方向(車両幅方向と直交して上段フラップ22(第一上段フラップ31および第二上段フラップ32)が延在する方向)に摺動されるようになっている。
【0029】
よって、上段フラップ22は、第二上段フラップ32が第一上段フラップ31に対して重なり合うように収納された短尺状態(
図5においては、二点鎖線で示す状態)において、従来のものと略同等のフラップ長さL
22Aを有し、第二上段フラップ32が第一上段フラップ31に対してずれるように展開された長尺状態(
図5においては、実線で示す状態)において、従来のものよりも長いフラップ長さL
22Bを有する。
【0030】
図5に示すように、水陸両用車1には、フラップ13の動作(展開および収納)を制御するための制御装置44が設けられている。制御装置44は、第一のフラップ駆動装置41、第二のフラップ駆動装置42および第三のフラップ駆動装置43とそれぞれ電気的に接続されており、これら第一のフラップ駆動装置41、第二のフラップ駆動装置42および第三のフラップ駆動装置43の駆動をそれぞれ独立して制御することができるようになっている。
【0031】
ここで、第一のフラップ駆動装置41、第二のフラップ駆動装置42および第三のフラップ駆動装置43としては、種々の駆動源および機構等をそれぞれ採用することができる。例えば、駆動源としての油圧シリンダ(伸縮部材)を部材間(車両本体11と下段フラップ21との間、下段フラップ21と第一上段フラップ31との間、第一上段フラップ31と第二上段フラップ32との間)に設けることにより、油圧シリンダの伸縮動作を利用して部材間の回転動作および摺動動作を行うことができる。また、例えば、駆動源としてのモータ(動力発生機)およびギヤ機構(またはワイヤ機構)を部材間(車両本体11と下段フラップ21との間、下段フラップ21と第一上段フラップ31との間、第一上段フラップ31と第二上段フラップ32との間)に設けることにより、モータの回転動作を利用して部材間の回転動作および摺動動作を行うことができる。
【0032】
また、
図5に示すように、水陸両用車1には、当該水陸両用車1の移動状態(水上航行または陸上走行等)を検出可能な移動状態検出装置45と、水上航行時における水陸両用車1の航行状態を検出可能な航行状態検出装置46とが設けられている。移動状態検出手段45および航行状態検出装置46は、制御装置44とそれぞれ電気的に接続されており、制御装置44は、移動状態検出45および航行状態検出装置46の検出結果に基づいて、第一のフラップ駆動装置41、第二のフラップ駆動装置42および第三のフラップ駆動装置43の駆動をそれぞれ制御するようになっている。
【0033】
ここで、移動状態検出装置45および航行状態検出装置46としては、種々のセンサ等を採用することができる。例えば、移動状態検出装置45としては、乗員が操作するスイッチや水陸両用車1が進水したことを検出する水圧センサ等を採用することができ、航行状態検出装置46としては、水上航行における移動速度を検出する速度センサ等を採用することができる。なお、航行状態検出装置46として速度センサを採用した場合には、制御装置44は、水陸両用車1の水上航行時における移動速度が所定値未満である場合には、水陸両用車1が浮航状態であると判断し、水陸両用車1の水上航行時における移動速度が所定値以上である場合には、水陸両用車1が滑走状態であると判断する。
【0034】
本発明の実施例1に係る水陸両用車の動作について、
図1から
図5を参照して説明する。
【0035】
まず、水陸両用車1が図示しない動力源によって装輪12を駆動して陸上を走行しているとき、フラップ13は全収納状態にある(
図1参照)。
【0036】
全収納状態のフラップ13は、下段フラップ21が車両本体11の前面11aに近接するように収納されると共に、上段フラップ22が短尺状態で車両本体11の上面11bに近接するように収納された状態である。
【0037】
続いて、例えば、水陸両用車1が進水して図示しない動力源によって図示しないプロペラを駆動して水上を航行すると、移動状態検出装置45は、水陸両用車1の移動状態が陸上走行状態から水上航行状態へと移行したことを検出する(
図2および
図5参照)。
【0038】
また、水陸両用車1が陸上走行状態から水上航行状態へと移行した直後は、当該水陸両用車1は喫水の深い浮航状態であるので、航行状態検出装置46は、水陸両用車1の航行状態が浮航状態であることを検出する。
【0039】
よって、制御装置44は、これら移動状態検出装置45および航行状態検出装置46の検出結果に基づいて、第一のフラップ駆動装置41と第二のフラップ駆動装置42と第三のフラップ駆動装置43とをそれぞれ駆動し、フラップ13を全収納状態から全展開状態へ変態する。
【0040】
全展開状態のフラップ13は、下段フラップ21が車両本体11の前面11aから離れるように展開されると共に、上段フラップ22が長尺状態で車両本体11の上面11bから離れるように展開された状態である。
【0041】
つまり、水陸両用車1が陸上走行状態から水上航行状態(浮航状態)へ移行すると、下段フラップ21が第一のフラップ駆動装置41によって車両本体11の前面11aから離れるように展開されると共に、第一上段フラップ31が第二のフラップ駆動装置42によって車両本体11の上面11bから離れるように展開され、第二上段フラップ32が第三のフラップ駆動装置43によって第一上段フラップ31に対してずれるように展開される。
【0042】
続いて、水陸両用車1が水上航行において増速して浮航状態から滑走状態へ移行すると、航行状態検出装置46は、水陸両用車1の航行状態が浮航状態から滑走状態へと移行したことを検出する(
図3および
図5参照)。
【0043】
よって、制御装置44は、この航行状態検出装置46の検出結果に基づいて、第三のフラップ駆動装置43だけを駆動し、フラップ13を全展開状態から部分展開状態(部分収納状態)へ変態する。
【0044】
部分展開状態(部分収納状態)のフラップ13は、下段フラップ21が車両本体11の前面11aから離れるように展開されると共に、上段フラップ22が短尺状態で車両本体11の上面11bから離れるように展開された状態である。
【0045】
つまり、水陸両用車1が水上航行状態において浮航状態から滑走状態へ移行すると、下段フラップ21および第一上段フラップ31が展開されたままの状態で、第二上段フラップ32が第三のフラップ駆動装置43によって第一上段フラップ31に対して重なり合うように収納される。
【0046】
続いて、水陸両用車1が水上航行において減速して滑走状態から浮航状態へと移行すると、航行状態検出装置46は、水陸両用車1の航行状態が滑走状態から浮航状態へと移行したことを検出する(
図2および
図5参照)。
【0047】
よって、制御装置44は、この航行状態検出装置46の検出結果に基づいて、第三のフラップ駆動装置43だけを駆動し、フラップ13を部分展開状態(部分収納状態)から全展開状態へ変態する。
【0048】
つまり、水陸両用車1が水上航行状態において滑走状態から浮航状態へ移行すると、下段フラップ21および第一上段フラップ31が展開されたままの状態で、第二上段フラップ32が第三のフラップ駆動装置43によって第一上段フラップ31に対してずれるように展開される。
【0049】
続いて、例えば、水陸両用車1が上陸して図示しない動力源によって装輪12を駆動して陸上を走行すると、移動状態検出装置45は、水陸両用車1の移動状態が水上航行状態から陸上走行状態へと移行したことを検出する(
図1および
図5参照)。
【0050】
よって、制御装置44は、この移動状態検出装置45の検出結果に基づいて、第一のフラップ駆動装置41と第二のフラップ駆動装置42と第三のフラップ駆動装置43とをそれぞれ駆動し、フラップ13を全展開状態から全収納状態へ変態する。
【0051】
つまり、水陸両用車1が水上航行状態(浮航状態)から陸上走行状態へ移行すると、第二上段フラップ32が第三のフラップ駆動装置43によって第一上段フラップ31に対して重なり合うように収納され、下段フラップ21が第一のフラップ駆動装置41によって車両本体11の前面11aに近接するように収納されると共に、第一上段フラップ31(上段フラップ22)が第二のフラップ駆動装置42によって車両本体11の上面11bに近接するように収納される。
【0052】
本実施例に係る水陸両用車1によれば、上段フラップ22(フラップ13)がそのフラップ長さを可変に構成されているので、長尺状態の上段フラップ22のフラップ長さL
22Bを従来のものよりも長く設定し、全展開状態のフラップ13のフラップ長さL
13を従来のものよりも長く設定することができる(
図4参照)。このように従来のものよりも長大なフラップ13を備えることにより、水陸両用車1は、水上航行時において従来のものよりも水からの揚力を受け易くなるので、従来のものよりも効率的に浮航状態から滑走状態へと移行して目的地まで早く移動することができる。
【0053】
また、本実施例に係る水陸両用車1によれば、長大なフラップ13を備えているので、フラップ13と水面(喫水線)100との接触角度θ
1を従来のものよりも小さく設定することができる(
図2参照)。このようにフラップ13と水面(喫水線)100との接触角度θ
1を小さく設定することにより、水陸両用車1は、水上航行時において従来のものよりも水の抵抗をより低減して航行することができるので、従来のものよりもより効率的に浮航状態から滑走状態へ移行して目的地までより早く移動することができる。
【0054】
また、本実施例に係る水陸両用車1によれば、上段フラップ22がそのフラップ長さを可変に構成されているので、短尺状態の上段フラップ22のフラップ長さL
22Aを従来のものと略同等の長さに設定することができる(
図1および
図4参照)。このように短尺状態の上段フラップ22を従来のものと略同等のフラップ長さL
22Aとすることにより、車両本体11の上面11bから突出して設けられる運転席14等と干渉させることなく、かつ、運転席14の車窓14aからの視界を妨げることなく、上段フラップ22(第一上段フラップ31および第二上段フラップ32)を車両本体11の上面11bに近接するように収納することができる。
【0055】
また、本実施例に係る水陸両用車1によれば、短尺状態の上段フラップ22(第一上段フラップ31および第二上段フラップ32)を車両本体11の上面11bに近接するように収納することができるので、下段フラップ21を車両本体11の前面11aに近接するように収納することができる(
図1参照)。このように下段フラップ21を車両本体11の前面11aに近接するように収納することにより、水陸両用車1は、陸上走行時においてフラップ13(下段フラップ21)を段差等と接触させることなく、陸上(不整地や段差等)を走行することができる。
【0056】
また、本実施例に係る水陸両用車1によれば、上段フラップ22(フラップ13)がそのフラップ長さを可変に構成されているので、水陸両用車1の航行状態が滑走状態に移行した際には、上段フラップ22(フラップ13)を短尺状態とすることにより、フラップ13の水面(喫水線)100から突出する突出量D
1を抑えることができる(
図3参照)。このように滑走状態においてフラップ13の水面100からの突出量D
1を抑えることにより、水陸両用車1は、水上航行時において空気の抵抗を低減して航行することができるので、滑走状態で効率的に航行して目的地まで早く移動することができる。
【0057】
また、本実施例に係る水陸両用車1によれば、滑走状態において車両本体11の前方部が上向き(鉛直方向上側)に傾いたとしても、フラップ13の水面100からの突出量D
1を抑えることにより、運転席14の車窓14aから水平方向における視界を良好に確保することができる(
図3参照)。
【0058】
本実施例においては、上段フラップ22を互いに摺動可能な第一上段フラップ31と第二上段フラップ32とから概略構成し、これら第一上段フラップ31と第二上段フラップ32との摺動動作により、上段フラップ22(フラップ13)のフラップ長さを可変に構成している。もちろん、本発明は、本実施例の構成のものに限定されない。
【0059】
例えば、
図6に示すように、上段フラップ122を互いに回転可能な第一上段フラップ131と第二上段フラップ132とから概略構成し、これら第一上段フラップ131と第二上段フラップ132との回転動作(第一上段フラップ131に対して第二上段フラップ132を折り畳むように回転すること)により、上段フラップ122(フラップ113)のフラップ長さを可変に構成しても良い。このような構成の収納式フラップ113は、図示しない水陸両用車の車両本体とヒンジ123を介して回転軸C
101周りに回転可能に接続される下段フラップ121と、この下段フラップ121とヒンジ124を介して回転軸C
102周りに回転可能に接続される第一上段フラップ131と、この第一上段フラップ131とヒンジ125を介して回転軸C
103周りに回転可能に接続される第二上段フラップ132とを備える。なお、上述した構成の収納式フラップ113を備えた水陸両用車は、実施例1に係る水陸両用車1と同様の作用効果を奏することは言うまでもない。
【0060】
また、本実施例においては、下段フラップ21(下段フラップ121)と装輪12との干渉を回避するために、下段フラップ21を略T字形状に形成して当該下段フラップ21に切り欠き部21c(切り欠き部121c)を設けている。もちろん、本発明は、本実施例の構成のものに限定されない。例えば、装輪との干渉を回避する程度に下段フラップを矩形形状に近い形状で形成しても良く、また、略T字形状に形成した下段フラップの切り欠き部を水上航行時において閉塞可能な構成としても良い。
【0061】
また、本実施例においては、水陸両用車1の移動状態が水上航行状態または陸上走行状態へ移行すると、移動状態検出装置45がその移行状態を検出し、制御装置44がその移動状態検出装置45の検出結果に基づいて第一のフラップ駆動装置41、第二のフラップ駆動装置42および第三のフラップ駆動装置43の駆動をそれぞれ制御するようにしている。もちろん、本発明は、本実施例の動作のものに限定されない。例えば、制御装置が移動状態検出装置であるスイッチの操作に基づいて第一のフラップ駆動装置、第二のフラップ駆動装置および第三のフラップ駆動装置の駆動をそれぞれ制御するようにしても良く、また、移動状態検出装置を水陸両用車の移動状態の移行を予測することができるものとし、制御装置が水陸両用車の移動状態の移行前(直前)に第一のフラップ駆動装置、第二のフラップ駆動装置および第三のフラップ駆動装置の駆動をそれぞれ制御するようにしても良い。これらの動作によれば、例えば、水陸両用車が水上に浮いた状態においてフラップを収納することも可能である。
【0062】
[実施例2]
本発明の実施例2に係る水陸両用車の構造について、
図7から
図11を参照して説明する。
【0063】
本実施例に係る水陸両用車は、フラップの構成を除いて、本発明の実施例1に係る水陸両用車と同様な構造を有するものである。よって、本実施例に係る水陸両用車における実施例1と同様な構造についての重複説明は適宜省略する。
【0064】
図7および
図8に示すように、水陸両用車201には、水上航行時において水から揚力を受け易くするためのフラップ(板状部材)213が設けられている。フラップ213は、車両本体211に対して展開および収納可能なもの(収納式フラップ)であり、車両本体211の前面211aに近接する(接する)ように収納される下段フラップ221と、車両本体211の上面211bに近接する(接する)ように収納される上段フラップ222とから概略構成されている。
【0065】
図7、
図8および
図10に示すように、下段フラップ221は、互いに摺動可能な第一下段フラップ231と第二下段フラップ232とから概略構成されており、第一下段フラップ231と第二下段フラップ232との摺動動作により、そのフラップ長さ(車両幅方向と直交して当該フラップ(下段フラップ221)が延在する方向における長さ)が可変に構成されている。
【0066】
第一下段フラップ231は、幅の狭い略長方形状の板状部材であり、その下端縁231aがヒンジ223を介して車両本体211の進行方向前方側における下端縁211cと接続されて成る。また、第一下段フラップ231は、当該第一下段フラップ231を車両本体211に対して回転動作するための第一のフラップ駆動装置241(
図11参照)と機械的に接続されており、車両本体211に対して車両幅方向に延在する回転軸C
201周りに回転されるようになっている。
【0067】
第二下段フラップ232は、幅の広い略長方形状の板状部材であり、その後面232aが第一下段フラップ231の前面231bと接して第一下段フラップ231に対して摺動可能に接続されて成る。また、第二下段フラップ232は、第二下段フラップ232を第一下段フラップ231に対して摺動動作するための第二のフラップ駆動装置242(
図11参照)と機械的に接続されており、第一下段フラップ231に対してV201軸方向(車両幅方向と直交して下段フラップ221(第一下段フラップ231および第二下段フラップ232)が延在する方向)に摺動されるようになっている。
【0068】
よって、下段フラップ221は、第二下段フラップ232が第一下段フラップ231に対して重なり合うように収納された短尺状態(
図10においては、二点鎖線で示す状態)において、従来のものと略同等のフラップ長さL
221Aを有し、第二下段フラップ232が第一下段フラップ231に対してずれるように展開された長尺状態(
図10においては、実線で示す状態)において、従来のものよりも長いフラップ長さL
221Bを有する。
【0069】
図10に示すように、上段フラップ222は、略長方形状の板状部材であり、その下端縁222aがヒンジ224を介して第二下段フラップ232の上端縁232bと接続されて成る。また、上段フラップ222は、当該上段フラップ222を第二下段フラップ232に対して回転動作するための第三のフラップ駆動装置243(
図11参照)と機械的に接続されており、下段フラップ221(第二下段フラップ231)に対して車両幅方向に延在する回転軸C
202周りに回転されるようになっている。
【0070】
図11に示すように、水陸両用車201には、フラップ213の動作(展開および収納)を制御するための制御装置244が設けられている。制御装置244は、第一のフラップ駆動装置241、第二のフラップ駆動装置242および第三のフラップ駆動装置243とそれぞれ電気的に接続されており、これら第一のフラップ駆動装置241、第二のフラップ駆動装置242および第三のフラップ駆動装置243の駆動をそれぞれ独立して制御することができるようになっている。ここで、第一のフラップ駆動装置241、第二のフラップ駆動装置242および第三のフラップ駆動装置243としては、実施例1と同様に、種々の駆動源および機構等をそれぞれ採用することができる。
【0071】
また、
図11に示すように、水陸両用車201には、当該水陸両用車201の移動状態(水上航行または陸上走行等)を検出可能な移動状態検出装置245と、水上航行時における水陸両用車201の航行状態を検出可能な航行状態検出装置246が設けられている。移動状態検出手段245および航行状態検出装置246は、制御装置244とそれぞれ電気的に接続されており、制御装置244は、移動状態検出245および航行状態検出装置246の検出結果に基づいて、第一のフラップ駆動装置241、第二のフラップ駆動装置242および第三のフラップ駆動装置243の駆動をそれぞれ制御するようになっている。ここで、移動状態検出装置245および航行状態検出装置246としては、実施例1と同様に、種々のセンサ等を採用することができる。
【0072】
本発明の実施例2に係る水陸両用車の動作について、
図7から
図11を参照して説明する。
【0073】
まず、水陸両用車201が図示しない動力源によって装輪(または装軌)212を駆動して陸上を走行しているとき、フラップ213は全収納状態にある(
図7参照)。
【0074】
全収納状態のフラップ213は、下段フラップ221が短尺状態で車両本体211の前面211aに近接するように収納されると共に、上段フラップ222が車両本体211の上面211bに近接するように収納された状態である。
【0075】
続いて、例えば、水陸両用車201が進水して図示しない動力源によって図示しないプロペラを駆動して水上を航行すると、移動状態検出装置245は、水陸両用車201の移動状態が陸上走行状態から水上航行状態へと移行したことを検出する(
図8および
図11参照)。
【0076】
また、水陸両用車201が陸上走行状態から水上航行状態へと移行した直後は、当該水陸両用車201は喫水の深い浮航状態であるので、航行状態検出装置246は、水陸両用車201の航行状態が浮航状態であることを検出する。
【0077】
よって、制御装置244は、これら移動状態検出装置245および航行状態検出装置246の検出結果に基づいて、第一のフラップ駆動装置241と第二のフラップ駆動装置242と第三のフラップ駆動装置243とをそれぞれ駆動し、フラップ213を全収納状態から全展開状態へ変態する。
【0078】
全展開状態のフラップ213は、下段フラップ221が長尺状態で車両本体211の前面211aから離れるように展開されると共に、上段フラップ222が車両本体11の上面211bから離れるように展開された状態である。
【0079】
つまり、水陸両用車201が陸上走行状態から水上航行状態(浮航状態)へ移行すると、下段フラップ221(第一下段フラップ231)が第一のフラップ駆動装置241によって車両本体211の前面211aから離れるように展開されると共に、第二下段フラップ232が第二のフラップ駆動装置242によって第一下段フラップ231に対してずれるように展開され、上段フラップ222が第三のフラップ駆動装置243によって車両本体211の上面211bから離れるように展開される。
【0080】
続いて、水陸両用車201が水上航行において増速して浮航状態から滑走状態へ移行すると、航行状態検出装置246は、水陸両用車201の航行状態が浮航状態から滑走状態へと移行したことを検出する(
図9および
図11参照)。
【0081】
よって、制御装置244は、この航行状態検出装置246の検出結果に基づいて、第二のフラップ駆動装置242だけを駆動し、フラップ213を全展開状態から部分展開状態(部分収納状態)へ変態する。
【0082】
部分展開状態(部分収納状態)のフラップ213は、下段フラップ221が短尺状態で車両本体211の前面211aから離れるように展開されると共に、上段フラップ222が車両本体211の上面211bから離れるように展開された状態である。
【0083】
つまり、水陸両用車201が水上航行状態において浮航状態から滑走状態へ移行すると、下段フラップ221(第一下段フラップ231)および上段フラップ222が展開されたままの状態で、第二下段フラップ232が第二のフラップ駆動装置242によって第一下段フラップ231に対して重なり合うように収納される。
【0084】
続いて、水陸両用車201が水上航行において減速して滑走状態から浮航状態へと移行すると、航行状態検出装置246は、水陸両用車201の航行状態が滑走状態から浮航状態へと移行したことを検出する(
図8および
図11参照)。
【0085】
よって、制御装置244は、この航行状態検出装置246の検出結果に基づいて、第二のフラップ駆動装置242だけを駆動し、フラップ213を部分展開状態(部分収納状態)から全展開状態へ変態する。
【0086】
つまり、水陸両用車201が水上航行状態において滑走状態から浮航状態へ移行すると、下段フラップ221(第一下段フラップ231)が展開されたままの状態で、第二下段フラップ232が第二のフラップ駆動装置242によって第一下段フラップ231に対してずれるように展開される。
【0087】
続いて、例えば、水陸両用車201が上陸して図示しない動力源によって装輪212を駆動して陸上を走行すると、移動状態検出装置245は、水陸両用車201の移動状態が水上航行状態から陸上走行状態へと移行したことを検出する(
図7および
図11参照)。
【0088】
よって、制御装置244は、この移動状態検出装置245の検出結果に基づいて、第一のフラップ駆動装置241と第二のフラップ駆動装置242と第三のフラップ駆動装置243とをそれぞれ駆動し、フラップ213を全展開状態から全収納状態へ変態する。
【0089】
つまり、水陸両用車201が水上航行状態(浮航状態)から陸上走行状態へ移行すると、第二下段フラップ232が第二のフラップ駆動装置242によって第一下段フラップ231に対して重なり合うように収納され、下段フラップ221(第一下段フラップ231)が第一のフラップ駆動装置241によって車両本体211の前面211aに近接するように収納されると共に、上段フラップ222が第三のフラップ駆動装置243によって車両本体211の上面211bに近接するように収納される。
【0090】
本実施例に係る水陸両用車201によれば、下段フラップ221(フラップ213)がそのフラップ長さを可変に構成されているので、下段フラップ221(長尺状態)のフラップ長さL
221Bを従来のものよりも長く設定し、フラップ213(全展開状態)のフラップ長さL
213を従来のものよりも長く設定することができる(
図10参照)。このように従来のものよりも長大なフラップ213を備えることにより、水陸両用車201は、水上航行時において従来のものよりも水からの揚力を受け易くなるので、従来のものよりも効率的に浮航状態から滑走状態へと移行して目的地まで早く移動することができる。
【0091】
また、本実施例に係る水陸両用車201によれば、長大なフラップ213を備えたことにより、フラップ213と水面(喫水線)100との接触角度θ
201を従来のものよりも小さく設定することもできる(
図8参照)。このようにフラップ213と水面(喫水線)100との接触角度θ
201を小さく設定することにより、水陸両用車201は、水上航行時において従来のものよりも水の抵抗をより低減して航行することができるので、従来のものよりもより効率的に浮航状態から滑走状態へ移行して目的地までより早く移動することができる。
【0092】
また、本実施例に係る水陸両用車201によれば、下段フラップ221がそのフラップ長さを可変に構成されているので、短尺状態の下段フラップ221のフラップ長さL
221Aを従来のものと略同等の長さに設定することができる(
図7および
図10参照)。このように短尺状態の下段フラップ221を従来のものと略同等のフラップ長さL
221Aとすることにより、運転席214の車窓214aからの視界を妨げることなく、下段フラップ221(第一下段フラップ231および第二下段フラップ232)を車両本体211の前面211aに近接するように収納することができると共に、上段フラップ222を運転席14(車窓14a)からの視界を妨げることなく車両本体11の上面11bに近接するように収納することができる。
【0093】
また、本実施例に係る水陸両用車201によれば、下段フラップ221を車両本体211の前面211aに近接するように収納することができるので、水陸両用車201は、陸上走行時においてフラップ213(下段フラップ221)を段差等と接触させることなく、陸上(不整地や段差等)を走行することができる。
【0094】
また、本実施例に係る水陸両用車201によれば、下段フラップ221(フラップ213)がそのフラップ長さを可変に構成されているので、水陸両用車201の航行状態が滑走状態に移行した際には、下段フラップ221(フラップ213)を短尺状態とすることにより、フラップ213の水面(喫水線)100から突出する突出量D
201を抑えることができる(
図9参照)。このように滑走状態においてフラップ213の水面100からの突出量D
201を抑えることにより、水陸両用車201は、水上航行時において空気の抵抗を低減して航行することができるので、滑走状態で効率的に航行して目的地まで早く移動することができる。
【0095】
また、本実施例に係る水陸両用車201によれば、滑走状態において車両本体211の前方部が上向き(鉛直方向上側)に傾いたとしても、フラップ213の水面100からの突出量D
201を抑えることにより、運転席214の車窓214aから水平方向における視界を良好に確保することができる(
図9参照)。
【0096】
本実施例においては、下段フラップ221を互いに摺動可能な第一下段フラップ231と第二下段フラップ232とから概略構成し、これら第一下段フラップ231と第二下段フラップ232との摺動動作により、下段フラップ221(フラップ213)のフラップ長さを可変に構成している。もちろん、本発明は、本実施例の構成のものに限定されるものではない。例えば、下段フラップを互いに回転可能な複数枚(例えば、三枚)のフラップ(板状部材)で構成し、これら複数枚のフラップの回転動作により、下段フラップ(フラップ)のフラップ長さを可変に構成しても良い。
【0097】
また、本実施例においては、下段フラップ221と装輪212との干渉を回避するために、第一下段フラップ231と第二下段フラップ232との車両幅方向の長さを異に形成し、下段フラップ221を略T字形状に形成して当該下段フラップ221に切り欠き部221cを設けている。もちろん、本発明は、本実施例の構成のものに限定されない。例えば、装輪との干渉を回避する程度に第一下段フラップと第二下段フラップとの車両幅方向の長さを略同じに形成しても良く、また、略T字形状に(車両幅方向の長さを異にして)形成した下段フラップの切り欠き部を水上航行時において閉塞可能な構成としても良い。
【0098】
また、本実施例においては、水陸両用車201の移動状態が水上航行状態または陸上走行状態へ移行すると、移動状態検出装置245がその移行状態を検出し、制御装置244がその移動状態検出装置245の検出結果に基づいて第一のフラップ駆動装置241、第二のフラップ駆動装置242および第三のフラップ駆動装置243の駆動をそれぞれ制御するようにしている。もちろん、本発明は、本実施例の構成のものに限定されない。例えば、制御装置が移動状態検出装置であるスイッチの操作に基づいて第一のフラップ駆動装置、第二のフラップ駆動装置および第三のフラップ駆動装置の駆動をそれぞれ制御するようにしても良く、また、移動状態検出装置を水陸両用車の移動状態の移行を予測することができるものとし、制御装置が水陸両用車の移動状態の移行前(直前)に第一のフラップ駆動装置、第二のフラップ駆動装置および第三のフラップ駆動装置の駆動をそれぞれ制御するようにしても良い。これらの構成によれば、例えば、水陸両用車が水上に浮いた状態においてフラップを収納することも可能である。
【0099】
また、例えば、実施例1と実施例2とを組み合わせ、下段フラップおよび上段フラップのそれぞれフラップ長さを可変に構成しても良い。このような構成の収納式フラップを備えた水陸両用車は、実施例1および実施例2に係る水陸両用車1と同様の作用効果を奏することは言うまでもない。