(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記第1、第2の可溶導体に代えて又は上記第1、第2の可溶導体とともに、複数の第1、第2の可溶導体片が、それぞれ上記第1、第2の電極と上記発熱体引出電極との間に独立して並列されている請求項1又は2に記載の保護素子。
上記第1、第2の可溶導体又は上記第1、第2の可溶導体片は、それぞれ内層を低融点金属層とし、外層を高融点金属層とする積層構造を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の保護素子。
【背景技術】
【0002】
充電して繰り返し利用することのできる二次電池の多くは、バッテリパックに加工されてユーザに提供される。特に重量エネルギー密度の高いリチウムイオン二次電池においては、ユーザ及び電子機器の安全を確保するために、一般的に、過充電保護、過放電保護等のいくつもの保護回路をバッテリパックに内蔵し、所定の場合にバッテリパックの出力を遮断する機能を有している。
【0003】
この種の保護素子には、バッテリパックに内蔵されたFET(Field Effect Transistor)スイッチを用いて出力のON/OFFを行うことにより、バッテリパックの過充電保護又は過放電保護動作を行うものがある。しかしながら、何らかの原因でFETスイッチが短絡破壊した場合、雷サージ等が印加されて瞬間的な大電流が流れた場合、あるいはバッテリセルの寿命によって出力電圧が異常に低下したり、逆に過大な異常電圧を出力したりした場合であっても、バッテリパックや電子機器は、発火等の事故から保護されなければならない。そこで、このような想定し得るいかなる異常状態においても、バッテリセルの出力を安全に遮断するために、外部からの信号によって電流経路を遮断する機能を有する保護素子が用いられている。
【0004】
リチウムイオン二次電池等向けの保護回路の遮断素子としては、
図13(A)(B)に示すように、電流経路上の第1の電極91,発熱体引出電極95,第2の電極92間に亘って可溶導体93を接続して電流経路の一部をなし、この電流経路上の可溶導体93を、過電流による自己発熱、あるいは保護素子内部に設けた発熱体94によって溶断するものがある(特許文献1参照)。このような保護素子90では、溶融した液体状の可溶導体93を発熱体94に繋がる発熱体引出電極95、及び第1、第2の電極91,92上に集めることにより第1、第2の電極91,92間を分離し電流経路を遮断する。
【0005】
保護素子は、発熱体94の発熱によって可溶導体93が溶断し、また過電流による自己発熱によっても可溶導体93は溶断するため、溶断した可溶導体93が飛散しないように外装部品であるカバー部材97で封止している。また、保護素子90は、発熱体94による可溶導体93の溶断作用を安定的に実現させるために、カバー部材97によって可溶導体93が溶融、流動するための内部空間が設けられている。
【0006】
なお、保護素子90は、可溶導体93の表面の酸化を防止して、速溶断性を維持するために可溶導体93の表面の酸化被膜を除去するフラックス98が塗布されている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本技術が適用された保護素子について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本技術は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0020】
本発明が適用された回路モジュール3は、回路基板2に保護素子1が表面実装されたものである。回路基板2は、例えばリチウムイオン二次電池の保護回路等が形成され、保護素子1が表面実装されることにより、リチウムイオン二次電池の充放電経路上に第1、第2の可溶導体31,32が組み込まれる。そして回路モジュール3は、保護素子1の定格を超える大電流が流れると、第1、第2の可溶導体31,32が自己発熱(ジュール熱)によって溶断することにより電流経路を遮断する。また、回路モジュール3は、回路基板2等に設けられた電流制御素子によって所定のタイミングで発熱体14へ通電し、発熱体14の発熱によって第1、第2の可溶導体31,32を溶断させることによって電流経路を遮断することができる。なお、
図1(A)は、本発明が適用された保護素子1を、ケースを省略して示す平面図であり、
図1(B)は、本発明が適用された回路モジュール3の断面図である。
【0021】
[保護素子]
保護素子1は、
図1(A)に示すように、絶縁基板10と、絶縁基板10に積層され、絶縁部材15に覆われた発熱体14と、絶縁基板10の両端に形成された第1の電極11及び第2の電極12と、絶縁部材15上に発熱体14と重畳するように積層された発熱体引出電極16と、第1の電極11から発熱体引出電極16にわたって搭載された第1の可溶導体31と、第2の電極12から発熱体引出電極16にわたって搭載された第2の可溶導体32とを備える。
【0022】
絶縁基板10は、たとえば、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどの絶縁性を有する部材によって略方形状に形成される。絶縁基板10は、その他にも、ガラスエポキシ基板、フェノール基板等のプリント配線基板に用いられる材料を用いてもよいが、可溶導体13の溶断時の温度に留意する必要がある。
【0023】
[第1、第2の電極]
図2(A)に示すように、第1、第2の電極11,12は、絶縁基板10の表面10a上に、相対向する側縁近傍にそれぞれ離間して配置されることにより開放され、それぞれ後述する発熱体引出電極16との間に第1、第2の可溶導体31,32が搭載されることにより、第1、第2の可溶導体31,32及び発熱体引出電極16を介して電気的に接続されている。また、
図2(B)に示すように、第1、第2の電極11,12は、保護素子1に定格を超える大電流が流れ第1、第2の可溶導体31,32が自己発熱(ジュール熱)によって溶断し、あるいは発熱体14が通電に伴って発熱し第1、第2の可溶導体31,32が発熱体引出電極16との間で溶断することにより、遮断される。
【0024】
図3に示すように、第1、第2の電極11,12は、それぞれ、絶縁基板10の第1、第2の側面10b,10cに設けられたキャスタレーションを介して裏面10fに設けられた外部接続電極11a,12aと接続されている。保護素子1は、これら外部接続電極11a,12aを介して外部回路が形成された回路基板2と接続され、当該外部回路の通電経路の一部を構成する。
【0025】
第1、第2の電極11,12は、CuやAg等の一般的な電極材料を用いて形成することができる。また、第1、第2の電極11,12の表面上には、Ni/Auメッキ、Ni/Pdメッキ、Ni/Pd/Auメッキ等の被膜が、メッキ処理等の公知の手法によりコーティングされていることが好ましい。これにより、保護素子1は、第1、第2の電極11,12の酸化を防止し、導通抵抗の上昇に伴う定格の変動を防止することができる。また、保護素子1をリフロー実装する場合に、第1、第2の可溶導体31,32を接続する接続用ハンダあるいは第1、第2の可溶導体31,32の外層を形成する低融点金属が溶融することにより第1、第2の電極11,12を溶食(ハンダ食われ)するのを防ぐことができる。
【0026】
[発熱体]
発熱体14は、通電すると発熱する導電性を有する部材であって、たとえばW、Mo、Ru、Cu、Ag、あるいはこれらを主成分とする合金等からなる。発熱体14は、これらの合金あるいは組成物、化合物の粉状体を樹脂バインダ等と混合して、ペースト状にしたものを絶縁基板10上にスクリーン印刷技術を用いてパターン形成して、焼成する等によって形成することができる。また、発熱体14は、一端が第1の発熱体電極18と接続され、他端が第2の発熱体電極19と接続されている。
【0027】
保護素子1は、発熱体14を覆うように絶縁部材15が配設され、この絶縁部材15を介して発熱体14に対向するように発熱体引出電極16が形成されている。発熱体14の熱を効率良く第1、第2の可溶導体31,32に伝えるために、発熱体14と絶縁基板10の間にも絶縁部材15を積層しても良い。絶縁部材15としては、例えばガラスを用いることができる。
【0028】
発熱体引出電極16の一端は、第1の発熱体電極18に接続されるとともに、第1の発熱体電極18を介して発熱体14の一端と連続されている。なお、第1の発熱体電極18は、絶縁基板10の第3の側面10d側に形成され、第2の発熱体電極19は、絶縁基板10の第4の側面10e側に形成されている。また、第2の発熱体電極19は、第4の側面10eに形成されたキャスタレーションを介して絶縁基板10の裏面10fに形成された外部接続電極19aと接続されている。
【0029】
発熱体14は、保護素子1が回路基板2に実装されることにより、外部接続電極19aを介して回路基板2に形成された外部回路と接続される。そして、発熱体14は、外部回路の通電経路を遮断する所定のタイミングで外部接続電極19aを介して通電され、発熱することにより、第1、第2の電極11,12を接続している第1、第2の可溶導体31,32を溶断することができる。また、発熱体14は、第1、第2の可溶導体31,32が溶断することにより、自身の通電経路も遮断されることから発熱が停止する。
【0030】
[第1、第2の可溶導体]
第1の可溶導体31は、第1の電極11から発熱体引出電極16にわたって搭載され、第2の可溶導体32は、第2の電極12から発熱体引出電極16にわたって搭載され、好ましくは、これら第1、第2の可溶導体31,32は、発熱体引出電極16上において互いに離間している。
【0031】
第1の可溶導体31は、例えば矩形板状をなし、発熱体引出電極16の第1の電極11側の側縁部と第1の電極11とに接続されている。同様に、第2の可溶導体32は、例えば矩形板状をなし、発熱体引出電極16の第2の電極12側の側縁部と第2の電極12とに接続されている。これにより、保護素子1は、第1の電極11、第1の可溶導体31、発熱体引出電極16、第2の可溶導体32、第2の電極12にわたる通電経路が構成される。
【0032】
このような保護素子1は、第1、第2の電極11,12間の通電経路を構成する可溶導体を、第1、第2の可溶導体31、32に分割して発熱体引出電極16に接続し、発熱体引出電極16を第1、第2の電極11,12間の通電経路として用いている。これにより、保護素子1は、1つの可溶導体を第1、第2の電極間にわたって発熱体引出電極を跨って搭載している従来の保護素子に比して、発熱体引出電極16上の第1、第2の可溶導体31、32間における可溶導体の体積が削減されている。
【0033】
すなわち、従来の保護素子では、第1、第2の電極11,12間の通電経路の遮断には直接寄与しない発熱体引出電極16の中央の可溶導体まで溶融させており、また、この中央の可溶導体は発熱体14の直上に位置することから第1、第2の電極11,12間よりも先に溶融させていた。
【0034】
一方、保護素子1は、第1、第2の可溶導体31,32を発熱体引出電極16上において、好ましくは離間して接続することで、電流遮断時において発熱体14の発熱によって溶融させるべき可溶導体の体積を削減することができるとともに、発熱体の熱を、溶断すべき第1の電極11と発熱体引出電極16との間及び第2の電極12と発熱体引出電極16との間の第1、第2の可溶導体31,32に効率よく伝達させることができ、速やかに第1、第2の電極11,12間の通電経路を遮断することができる。
【0035】
また、発熱体引出電極16を第1、第2の電極11,12間の通電経路として用いた保護素子1は、1つの可溶導体を第1、第2の電極間にわたって発熱体引出電極を跨って搭載している従来の保護素子に比しても、電流定格は維持されている。したがって、同じ電流定格を備える従来の保護素子に対して、溶断すべき可溶導体の体積が削減された分、速やかに第1、第2の電極11,12間の通電経路を遮断することができる。
【0036】
また、保護素子1は、溶断すべき可溶導体の体積が削減されたことで、溶融導体が発熱体引出電極16上から溢れることもなく、確実に第1、第2の電極11,12間の通電経路を遮断できるとともに、通電遮断後における絶縁信頼性を向上することができる(
図2(B)参照)。
【0037】
これら第1、第2の可溶導体31,32は、発熱体14の発熱により速やかに溶断される材料からなり、例えばハンダや、Snを主成分とするPbフリーハンダ等の低融点金属を好適に用いることができる。
【0038】
また、第1、第2の可溶導体31,32は、In、Sn、Pb、Ag、Cu又はこれらのうちのいずれかを主成分とする合金等の金属を用いて形成することができる。また、第1、第2の可溶導体31,32は、
図4に示すように、内層を低融点金属とし外層を高融点金属とする積層体であってもよい。第1、第2の可溶導体31,32は、例えば、内層の低融点金属層33をハンダ箔等により構成し、外層の高融点金属層34をAgメッキ層等により構成することができる。第1、第2の可溶導体31,32は、内層を低融点金属層33とし、外層を高融点金属層34とする積層構造を有することによって、保護素子1をリフロー実装する場合に、リフロー温度が低融点金属の溶融温度を超えて、低融点金属が溶融しても、低融点金属の外部への流出が抑制され、第1、第2の可溶導体31,32の形状を維持することができる。したがって、第1、第2の可溶導体31,32は、変形に伴って局所的に抵抗値が高く又は低くなる等により所定の温度で溶断しない、あるいは所定の温度未満で溶断する等の溶断特性の変動を防止することができる。また、第1、第2の可溶導体31,32は、溶断時も、低融点金属が溶融することにより、高融点金属を溶食(ハンダ食われ)することで、高融点金属の融点以下の温度で速やかに溶断することができる。
【0039】
なお、第1、第2の可溶導体31,32は、発熱体引出電極16及び第1、第2の電極11,12へ、ハンダ等の接続材料39により接続されている。第1、第2の可溶導体31,32は、リフローはんだ付けによって容易に接続することができる。
【0040】
第1、第2の可溶導体31,32は、低融点金属層33に高融点金属層34をメッキ技術を用いて成膜することにより製造できる。第1、第2の可溶導体31,32は、例えば、長尺状のハンダ箔の表面にAgメッキを施した後、使用するサイズに応じて切断することで、効率よく製造でき、また容易に用いることができる。
【0041】
このような第1、第2の可溶導体31,32は、切断面となる両端面に低融点金属層33が露出されている。第1、第2の可溶導体31,32は、
図4に示すように、この低融点金属層33が露出する端面を第1、第2の電極11,12及び発熱体引出電極16側に向けて載置されてもよく、
図5に示すように、高融点金属層34に被覆された側面を第1、第2の電極11,12及び発熱体引出電極16側に向けて載置されてもよい。なお、遮断後の絶縁信頼性の観点からは、低融点金属層33が露出する端面が第1、第2の電極11,12と発熱体引出電極16との間の領域に臨む
図5に示す構成に比して、低融点金属層33が露出する端面が第1、第2の電極11,12及び発熱体引出電極16側に臨む
図4に示す構成の方が信頼性が高い。
【0042】
また、第1、第2の可溶導体31,32は、
図6、
図7に示すように、低融点金属層33の全面に高融点金属34をメッキ技術を用いて成膜することにより製造してもよい。第1、第2の可溶導体31,32は、例えば使用サイズに成形されたハンダ箔の全面にAgメッキを施すことにより、低融点金属層33の全面に高融点金属層層34を形成することができる。
図6に示す第1、第2の可溶導体31,32によれば、低融点金属層33が表面に露出することが無いため、第1、第2の電極11,12及び発熱体引出電極16へリフロー実装する際や、保護素子1を回路基板にリフロー実装する際において、低融点金属層33の流出を完全に抑えることができ、リフロー加熱による変形が防止され、溶断特性を維持することができる。
【0043】
したがって、保護素子1は、低融点金属層33の全面に高融点金属層層34を形成することで、低融点金属層33が第1、第2の電極11,12と発熱体引出電極16との間の領域に流出することもなく、所定の溶断特性を維持し、確実に第1、第2の電極11,12間の通電経路を遮断できるとともに、通電遮断後における絶縁信頼性を向上することができる(
図7参照)。
【0044】
また、第1、第2の可溶導体31,32、発熱体引出電極16は、酸化防止、濡れ性の向上等のため、フラックス23が塗布されていることが好ましい。
【0045】
[ケース]
また、保護素子1は、内部を保護するために、絶縁基板10の表面10a上にケース20が設けられている。ケース20は、絶縁基板10の形状に応じて略矩形状に形成されている。また、
図1(B)に示すように、ケース20は、可溶導体13が設けられた絶縁基板10の表面10a上に接続される側面21と、絶縁基板10の表面10a上を覆う天面22とを有し、絶縁基板10の表面10a上に、可溶導体13が溶融時に球状に膨張し、溶融導体が発熱体引出電極16や第1、第2の電極11,12上に凝集するのに十分な内部空間を有する。
【0046】
[遮断試験]
本技術が適用された保護素子1と、1つの可溶導体を第1、第2の電極間にわたって発熱体引出電極16を跨って搭載している従来の保護素子について、それぞれ断面積が同じ可溶導体を接続し、発熱体への通電開始からの遮断時間を計測した。可溶導体としては、SnSb合金(Sn:Sb=95:5、液相点240℃)からなる低融点金属箔を用いた。その結果、本技術が適用された保護素子1では、従来の保護素子に比べて遮断時間が40%速くなった。
【0047】
また、保護素子1と従来の保護素子について、内層を低融点金属層とし外層を高融点金属層とする積層構造を有する可溶導体を接続し、発熱体への通電開始からの遮断時間を計測した。可溶導体として、保護素子1及び従来の保護素子とも同じ断面積を有し、内層としてSnSb合金(Sn:Sb=95:5、液相点240℃)からなる低融点金属箔を用い、外層としてAgメッキ層を形成した積層型の可溶導体を用いた。その結果、本技術が適用された保護素子1では、従来の保護素子に比べて遮断時間が20%速くなった。
【0048】
このことより、本技術を適用した保護素子1は、電流遮断時において発熱体14の発熱によって溶融させるべき可溶導体の体積を削減することができ、第1、第2の電極11,12間の通電経路をより速やかに遮断できることが分かる。
【0049】
[可溶導体片]
また、
図8に示すように、保護素子1は、第1、第2の可溶導体31,32に代えて、複数個(n個)の小さな第1、第2の可溶導体片31A,32Aを、第1、第2の電極11,12と発熱体引出電極16との間にわたって、各々独立して並列に接続してもよい。可溶導体片31A,32Aは、第1、第2の可溶導体31,32と同じ材料で形成され、大きさが第1、第2の可溶導体31,32よりも小さく形成されたものである。
【0050】
保護素子1は、例えば
図9(A)(B)に示すように、第1の可溶導体31として、4個の可溶導体片31A−1,31A−2,31A−3,31A−4を各々所定の間隔をおいて独立して並列させるとともに、第2の可溶導体32として、4個の可溶導体片32A−1,32A−2,32A−3,32A−4を並列させてもよい。
【0051】
保護素子1は、複数の可溶導体片31A,32Aを並列させることにより、可溶導体片31A,32Aの数を調整することで電流容量の調整が容易となる。
【0052】
また、保護素子1は、複数の可溶導体片31A,32Aを並列させることで、1個の可溶導体と同じ電流容量を具備しながら、各可溶導体片31A,32Aの変形を防止して、溶断特性の変動を防止することができる。例えば、上述した内層の低融点金属層を外層となる高融点金属層で被覆した積層型の可溶導体は、平面寸法が大きくなると、リフロー加熱時等において内層の低融点金属層が溶融し流動することで変形が生じやすくなる。これにより、可溶導体は、局所的に厚さが厚くなる部位と薄くなる部位が生じ、抵抗値にばらつきが生じ、溶断特性が維持できなくなる恐れがある。
【0053】
そこで、保護素子1は、複数の可溶導体片31A,32Aを並列させることで、各可溶導体片31A,32Aの平面寸法が小さくなり、リフロー加熱時等においても熱による変形が防止され、溶断特性を維持することができる。
【0054】
また、1つの可溶導体を第1、第2の電極間にわたって発熱体引出電極を跨って搭載している従来の保護素子では、電流容量を大きくすべく可溶導体の平面寸法を大きくすると、発熱体引出電極との接触面積が広くなることから、低融点金属層が加熱、流動することにより高融点金属層が変形すると、跨いでいる発熱体引出電極を破壊してしまう(引き剥がしてしまう)おそれがあった。しかし、保護素子1は、複数の可溶導体片31A,32Aに分割して接続することにより変形が抑制され、発熱体引出電極16を破壊するリスクもなく、熱衝撃の耐性を向上させることができる。
【0055】
なお、可溶導体片31A,32Aに分割数としては、リフロー加熱時等における変形防止による溶断特性の信頼性や、第1、第2の電極11,12及び発熱体引出電極16に対する衝撃緩和のといった面から、例えば
図9に示すように可溶導体片31A,32Aをそれぞれ4つ、又はそれ以上に分割する等、分割数を多くすることが望ましい。一方で、各可溶導体片31A,32Aの分割数を多くすると、各可溶導体片31A,32Aの製造コストや、実装の工数も増える。
【0056】
そのため、各可溶導体片31A,32Aの製造コスト、実装コスト等と溶断特性の信頼性や第1、第2の電極11,12及び発熱体引出電極16に対する衝撃緩和のバランスを考慮すると、可溶導体片31A,32Aをそれぞれ2〜3に分割することが好ましい。
【0057】
なお、保護素子1は、
図9(A)に示すように、可溶導体片31A,32Aを平面視で略矩形状に形成するとともに、通電方向に沿って長手方向を向けるように接続されているが、通電方向に対して長手方向が任意の角度をなすように傾けて接続してもよい。保護素子1は、可溶導体片31A,32Aを通電方向に対して傾けて接続することにより、第1、第2の電極11,12及び発熱体引出電極16への設置面積が変わり、素子全体の電流容量を調整することができる。
【0058】
また、保護素子1は、
図10に示すように、可溶導体片31A,32Aを、低融点金属の内層と高融点金属の外層からなる積層体として形成してもよい。可溶導体片31A,32Aは、上述した積層型の第1、第2の可溶導体31,32と同様に、例えば、内層の低融点金属層33をハンダ箔等により構成し、外層の高融点金属層34をAgメッキ層等により構成することができる。可溶導体片31A,32Aは、内層を低融点金属層33とし、外層を高融点金属層34とする積層構造を有することによって、小型化と高定格化を実現できるととともに、保護素子1をリフロー実装する場合に、リフロー温度が低融点金属の溶融温度を超えて低融点金属が溶融しても形状を維持することができ、溶断特性の変動を防止することができる。また、可溶導体片31A,32Aは、溶断時も、低融点金属が溶融することにより、高融点金属を溶食(ハンダ食われ)することで、高融点金属の融点以下の温度で速やかに溶断することができる。
【0059】
なお、保護素子1は、各可溶導体片31A,32Aを、全て同一形状で形成し、第1の可溶導体31と第2の可溶導体32とを同数の可溶導体片31A,32Aで構成してもよく、あるいは可溶導体片31Aと可溶導体片32Aとで形状、大きさ、数を異ならせてもよい。また、保護素子1は、複数の可溶導体片31Aの中で形状や大きさを異ならせてもよく、複数の可溶導体片32Aの中で形状や大きさを異ならせてもよい。また、保護素子1は、第1、第2の可溶導体31,32の一方のみを可溶導体片によって形成してもよく、あるいは第1、第2の可溶導体31,32と可溶導体片31A,32Aを併用してもよい。保護素子1は、各可溶導体片31A,32Aの大きさや個数を適宜変更することにより、各可溶導体片31A,32Aの抵抗値を場所ごとに変化させ、第1、第2の可溶導体31,32の溶断の順序、あるいは複数の可溶導体片31A,32A内における各可溶導体片の溶断の順序や速度等を調整することができる。
【0060】
[回路基板]
次いで、保護素子1が実装される回路基板2について説明する。回路基板2は、例えばガラスエポキシ基板やガラス基板、セラミック基板等のリジッド基板や、フレキシブル基板等、公知の絶縁基板が用いられる。また、回路基板2は、
図1(B)に示すように、保護素子1がリフロー等によって表面実装される実装部を有し、実装部内に保護素子1の絶縁基板10の裏面10fに設けられた外部接続端子11a,12a,19aとそれぞれ接続される接続電極が設けられている。なお、回路基板2は、保護素子1の発熱体14に通電させるFET等の素子が実装されている。
【0061】
[回路モジュールの使用方法]
次いで、保護素子1及び保護素子1が回路基板2に表面実装された回路モジュール3の使用方法について説明する。
図11に示すように、回路モジュール3は、例えば、リチウムイオン二次電池のバッテリパック内の回路として用いられる。
【0062】
たとえば、保護素子1は、合計4個のリチウムイオン二次電池のバッテリセル41〜44からなるバッテリスタック45を有するバッテリパック40に組み込まれて使用される。
【0063】
バッテリパック40は、バッテリスタック45と、バッテリスタック45の充放電を制御する充放電制御回路50と、バッテリスタック45の異常時に充電を遮断する本発明が適用された保護素子1と、各バッテリセル41〜44の電圧を検出する検出回路46と、検出回路46の検出結果に応じて保護素子1の動作を制御する電流制御素子47とを備える。
【0064】
バッテリスタック45は、過充電及び過放電状態から保護するための制御を要するバッテリセル41〜44が直列接続されたものであり、バッテリパック40の正極端子40a、負極端子40bを介して、着脱可能に充電装置55に接続され、充電装置55からの充電電圧が印加される。充電装置55により充電されたバッテリパック40の正極端子40a、負極端子40bをバッテリで動作する電子機器に接続することによって、この電子機器を動作させることができる。
【0065】
充放電制御回路50は、バッテリスタック45から充電装置55に流れる電流経路に直列接続された2つの電流制御素子51、52と、これらの電流制御素子51、52の動作を制御する制御部53とを備える。電流制御素子51、52は、たとえば電界効果トランジスタ(以下、FETと呼ぶ。)により構成され、制御部53によりゲート電圧を制御することによって、バッテリスタック45の電流経路の導通と遮断とを制御する。制御部53は、充電装置55から電力供給を受けて動作し、検出回路46による検出結果に応じて、バッテリスタック45が過放電又は過充電であるとき、電流経路を遮断するように、電流制御素子51、52の動作を制御する。
【0066】
保護素子1は、たとえば、バッテリスタック45と充放電制御回路50との間の充放電電流経路上に接続され、その動作が電流制御素子47によって制御される。
【0067】
検出回路46は、各バッテリセル41〜44と接続され、各バッテリセル41〜44の電圧値を検出して、各電圧値を充放電制御回路50の制御部53に供給する。また、検出回路46は、いずれか1つのバッテリセル41〜44が過充電電圧又は過放電電圧になったときに電流制御素子47を制御する制御信号を出力する。
【0068】
電流制御素子47は、たとえばFETにより構成され、検出回路46から出力される検出信号によって、バッテリセル41〜44の電圧値が所定の過放電又は過充電状態を超える電圧になったとき、保護素子1を動作させて、バッテリスタック45の充放電電流経路を電流制御素子51、52のスイッチ動作によらず遮断するように制御する。
【0069】
以上のような構成からなるバッテリパック40において、保護素子1の構成について具体的に説明する。
【0070】
まず、本発明が適用された保護素子1は、
図12に示すような回路構成を有する。すなわち、保護素子1は、発熱体引出電極16を介して直列接続された第1、第2の可溶導体31,32と、第1の可溶導体31及び第2の可溶導体32と接続された発熱体引出電極16を介して通電して発熱させることによって第1、第2の可溶導体31,32を溶融する発熱体14とからなる回路構成である。また、保護素子1では、たとえば、第1、第2の可溶導体31,32が充放電電流経路上に直列接続され、発熱体14が電流制御素子47と接続される。保護素子1の第1の電極11は、外部接続電極11aを介してバッテリスタック45の開放端と接続され、第2の電極12は、外部接続電極12aを介してバッテリパック40の正極端子40a側の開放端と接続される。また、発熱体14は、発熱体引出電極16を介して第1、第2の可溶導体31,32と接続されることによりバッテリパック40の充放電電流経路と接続され、また第2の発熱体電極19及び外部接続電極19aを介して電流制御素子47と接続される。
【0071】
このようなバッテリパック40は、保護素子1の発熱体14が通電、発熱されると、第1、第2の可溶導体31,32が溶融し、その濡れ性によって、発熱体引出電極16上に引き寄せられる(
図2(B)参照)。その結果、保護素子1は、第1、第2の可溶導体31,32が溶断することにより、確実に電流経路を遮断することができる。また、第1、第2の可溶導体31,32が溶断することにより発熱体14への給電経路も遮断されるため、発熱体14の発熱も停止する。
【0072】
また、バッテリパック40は、充放電経路上に保護素子1の定格を超える予期しない大電流が流れた場合に、第1、第2の可溶導体31,32が自己発熱(ジュール熱)により溶断することによって、電流経路を遮断することができる。
【0073】
このとき、保護素子1は、第1、第2の可溶導体31,32が発熱体引出電極16に、好ましくは互いに離間して接続されることにより、1つの可溶導体を第1、第2の電極間にわたって発熱体引出電極を跨って搭載している従来の保護素子に比して、発熱体引出電極16上の可溶導体の体積が削減されているため、電流遮断時において発熱体14の発熱によって溶融させるべき可溶導体の体積を削減することができ、速やかに第1、第2の電極11,12間の通電経路を遮断することができる。
【0074】
また、保護素子1は、溶断すべき可溶導体の体積が削減されたことで、溶融導体が発熱体引出電極16上から溢れることもなく、確実に第1、第2の電極11,12間の通電経路を遮断できるとともに、通電遮断後における絶縁信頼性を向上することができる(
図2(B)参照)。
【0075】
なお、本技術が適用された保護素子1は、リチウムイオン二次電池のバッテリパックに用いる場合に限らず、ICの異常過熱等、電気信号による電流経路の遮断を必要とする様々な用途にももちろん適用可能である。