特許第6957265号(P6957265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6957265-研磨液組成物 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6957265
(24)【登録日】2021年10月8日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】研磨液組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/14 20060101AFI20211021BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20211021BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20211021BHJP
【FI】
   C09K3/14 550D
   C09K3/14 550M
   H01L21/304 622D
   H01L21/304 622X
   B24B37/00 H
【請求項の数】14
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-161436(P2017-161436)
(22)【出願日】2017年8月24日
(65)【公開番号】特開2018-59054(P2018-59054A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2020年6月2日
(31)【優先権主張番号】特願2016-192159(P2016-192159)
(32)【優先日】2016年9月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】土居 陽彦
(72)【発明者】
【氏名】大山 翼
【審査官】 中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−079879(JP,A)
【文献】 特開2009−087523(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/143797(WO,A1)
【文献】 特開2009−065041(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/046015(WO,A1)
【文献】 特開2015−232083(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/052988(WO,A1)
【文献】 特開2016−199659(JP,A)
【文献】 特表2017−508833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/14
H01L 21/304
B24B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化セリウム粒子Aと、オリゴ糖Bと、水とを含有し、
前記オリゴ糖Bは、3個以上5個以下のグルコースが結合した糖を含み、かつ、8個以上のグルコースが結合した糖の含有量が27質量%以下の環状を除く直鎖又は分岐鎖状のオリゴ糖である、研磨液組成物。
【請求項2】
オリゴ糖Bの構成単位は、グルコースのみである、請求項1に記載の研磨液組成物。
【請求項3】
酸化珪素膜の研磨に用いられる、請求項1又は2に記載の研磨液組成物。
【請求項4】
オリゴ糖Bは、ゲンチオオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、マルトオリゴ糖及びニゲロオリゴ糖から選ばれる少なくとも1種である、請求項1から3のいずれかに記載の研磨液組成物。
【請求項5】
オリゴ糖Bの含有量が、0.1質量%以上2.5質量%以下である、請求項1から4のいずれかに記載の研磨液組成物。
【請求項6】
酸化セリウム粒子Aの含有量に対するオリゴ糖Bの含有量の比B/Aは、0.01以上20以下である、請求項1から5のいずれかに記載の研磨液組成物。
【請求項7】
アニオン性基を有する化合物Cをさらに含有する、請求項1から6のいずれかに記載の研磨液組成物。
【請求項8】
化合物Cが、1価のカルボン酸である、請求項7に記載の研磨液組成物。
【請求項9】
化合物Cが、レブリン酸、プロピオン酸、バニリン酸、p−ヒドロキシ安息香酸、及びギ酸から選ばれる少なくとも1種である、請求項8に記載の研磨液組成物。
【請求項10】
pHが4.0以上9.0未満である、請求項1から9のいずれかに記載の研磨液組成物。
【請求項11】
粒子Aが水に混合された第1液と、オリゴ糖Bが水に混合された第2液とから構成され、使用時に第1液と第2液とが混合される、請求項1から10のいずれかに記載の研磨液組成物。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の研磨液組成物を用いて被研磨基板を研磨する工程を含む、半導体基板の製造方法。
【請求項13】
請求項1から11のいずれかに記載の研磨液組成物を用いて被研磨基板を研磨する工程を含み、前記被研磨基板は、半導体基板の製造に用いられる基板である、基板の研磨方法。
【請求項14】
請求項1から11のいずれかに記載の研磨液組成物の半導体基板の製造への使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、酸化セリウム粒子を含有する研磨液組成物、これを用いた半導体基板の製造方法及び研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケミカルメカニカルポリッシング(CMP)技術とは、加工しようとする被研磨基板の表面と研磨パッドとを接触させた状態で研磨液をこれらの接触部位に供給しつつ被研磨基板及び研磨パッドを相対的に移動させることにより、被研磨基板の表面凹凸部分を化学的に反応させると共に機械的に除去して平坦化させる技術である。
【0003】
現在では、半導体素子の製造工程における、層間絶縁膜の平坦化、シャロートレンチ素子分離構造(以下「素子分離構造」ともいう)の形成、プラグ及び埋め込み金属配線の形成等を行う際には、このCMP技術が必須の技術となっている。近年、半導体素子の多層化、高精細化が飛躍的に進み、半導体素子の歩留まり及びスループット(収量)の更なる向上が要求されるようになってきている。それに伴い、CMP工程に関しても、研磨傷フリーで且つより高速な研磨が望まれるようになってきている。例えば、シャロートレンチ素子分離構造の形成工程では、高研磨速度と共に、被研磨膜(例えば、酸化珪素膜)に対する研磨ストッパ膜(例えば、窒化珪素膜)の研磨選択性(換言すると、研磨ストッパ膜の方が被研磨膜よりも研磨されにくいという研磨の選択性)の向上が望まれている。
【0004】
特許文献1には、素子分離構造の形成に用いられる研磨剤として、酸化セリウム粒子と、分散剤と、―COOM基、フェノール性OH基、―SO3M基、―OSO3H基、―PO42基又は―PO32基等のアニオン性基を有する水溶性有機低分子(MはH,NH4,またはNa,K等の金属原子)から選ばれる添加剤と、水とを含むCMP研磨剤が開示されている。
【0005】
特許文献2には、(A)酸化物微粒子、(B)単糖、単糖が2〜20個結合したオリゴ糖、これらの糖アルコール、及びこれらの糖エステルからなる群から選ばれる1種以上、(C)ベンゾトリアゾール系化合物、及び(D)水を含有する研磨剤が開示されている。
【0006】
特許文献3には、水と、酸化セリウム粒子と、炭素数が140以下の糖類と、非イオン性界面活性剤と、有機酸と、を含有する研磨剤が開示されている。
【0007】
特許文献4には、環状オリゴ糖などの水溶性包接化合物、研磨砥粒、及び水を含有する研磨剤が開示されている。
【0008】
特許文献5には、酸化セリウム砥粒と水と多糖類とを含み、更に水溶性有機高分子及び陰イオン性界面活性剤からなる群から選ばれる1種類以上を含む研磨剤が開示されている。
【0009】
特許文献6には、水と、4価金属元素の水酸化物を含む砥粒と、α−グルコース重合物と、陽イオン性ポリマーと、を含有する研磨剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−7060号公報
【特許文献2】特開2004−55861号公報
【特許文献3】特開2015−129217号公報
【特許文献4】特開2011−103410号公報
【特許文献5】WO2010/104085
【特許文献6】WO2015/052988
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
近年の半導体分野においては高集積化が進んでおり、配線の複雑化や微細化が求められている。そのため、CMP研磨では、研磨速度を確保しつつ研磨選択性をさらに向上させることが要求されている。そして、研磨速度の確保及び研磨選択性向上のため、種々の添加剤が検討されているが、研磨液組成物中に添加剤を含有させると、研磨ムラが生じることがあった。
【0012】
本開示は、研磨速度を確保しつつ、研磨選択性の向上及び研磨ムラの抑制が可能な研磨液組成物、これを用いた半導体基板の製造方法及び研磨方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示は、酸化セリウム粒子Aと、オリゴ糖Bと、水とを含有し、前記オリゴ糖Bは、3個以上5個以下のグルコースが結合した糖を含み、かつ、8個以上のグルコースが結合した糖の含有量が27質量%以下のオリゴ糖である、研磨液組成物(以下、「本開示に係る研磨液組成物」ともいう)に関する。
【0014】
本開示は、本開示に係る研磨液組成物を用いて被研磨基板を研磨する工程を含む、半導体基板の製造方法に関する。
【0015】
本開示は、本開示に係る研磨液組成物を用いて被研磨基板を研磨する工程を含み、前記被研磨基板は、半導体基板の製造に用いられる基板である、基板の研磨方法に関する。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、研磨速度を確保しつつ、研磨選択性の向上及び研磨ムラの抑制が可能な研磨液組成物を提供できるという効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施例1の研磨液組成物を用いた研磨後の窒化珪素膜の表面の観察画像の一例を示す図である。
図2図2は、比較例4の研磨液組成物を用いた研磨後の窒化珪素膜の表面の観察画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明者らが鋭意検討した結果、酸化セリウム(以下、「セリア」ともいう)粒子を砥粒として含有する研磨液組成物において、驚くべきことに、所定のオリゴ糖を含有させることで、研磨速度を確保しつつ、研磨選択性の向上及び研磨ムラの抑制が可能となることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0019】
すなわち、本開示は、酸化セリウム粒子Aと、オリゴ糖Bと、水とを含有し、前記オリゴ糖Bは、3個以上5個以下のグルコースが結合した糖を含み、かつ、8個以上のグルコースが結合した糖の含有量が27質量%以下のオリゴ糖である、研磨液組成物に関する。本開示に係る研磨液組成物によれば、研磨速度を確保しつつ、研磨選択性の向上及び研磨ムラの抑制が可能となる。
【0020】
本開示の効果発現のメカニズムの詳細は明らかではないが、以下のように推定される。
通常、酸化セリウム粒子を砥粒として含有する研磨液組成物を用いた研磨では、窒化珪素膜等の研磨ストッパ膜が、水分子による加水分解を受けて酸化珪素膜等の被研磨膜と同等の組成になり、酸化セリウム粒子によって研磨されやすくなると考えられる。これに対し、本開示の研磨液組成物を用いた研磨では、特定のオリゴ糖Bが水分子と水和することにより、窒化珪素膜等の研磨ストッパ膜の加水分解を抑制し、酸化セリウムによる研磨を抑制できると推定される。さらに、本開示の研磨液組成物は、特定のオリゴ糖Bを含有することで、窒化珪素膜等の研磨ストッパ膜に対する研磨抑制能が高くなり、窒化珪素膜等の研磨ストッパ膜の研磨ムラ発生を抑制できると推測される。
但し、本開示は、これらのメカニズムに限定されて解釈されなくてもよい。
【0021】
本開示において「研磨選択性」は、研磨ストッパ膜の研磨速度に対する被研磨膜の研磨速度の比(被研磨膜の研磨速度/研磨ストッパ膜の研磨速度)と同義であり、「研磨選択性」が高いと、前記研磨速度比が大きいことを意味する。
「オリゴ糖」とは、一般に、単糖と多糖との間に分類され、少量数の単糖がグリコシド結合した糖の総称である。オリゴ糖を構成する単糖の数(重合度)としては、例えば、2〜20程度が挙げられる。
【0022】
[酸化セリウム(セリア)粒子A]
本開示に係る研磨液組成物は、研磨砥粒として酸化セリウム粒子A(以下、単に「粒子A」ともいう)を含有する。粒子Aの製造方法、形状、及び表面状態については特に限定されなくてもよい。粒子Aとしては、例えば、コロイダルセリア、不定形セリア、セリアコートシリカ等が挙げられる。コロイダルセリアは、例えば、特表2010−505735号公報の実施例1〜4に記載の方法で、ビルドアッププロセスにより得られうる。不定形セリアは、例えば、炭酸セリウムや硝酸セリウムなどのセリウム化合物を焼成、粉砕して得られうる。セリアコートシリカとしては、例えば、特開2015−63451号公報の実施例1〜14もしくは特開2013−119131号公報の実施例1〜4に記載の方法で、シリカ粒子表面の少なくとも一部が粒状セリアで被覆された構造を有する複合粒子が挙げられ、該複合粒子は、例えば、シリカ粒子にセリアを沈着させることで得られうる。研磨速度向上の観点からは、コロイダルセリアが好ましい。研磨後の残留物低減の観点からは、セリアコートシリカが好ましい。粒子Aは、1種類のセリア粒子であってもよいし、2種以上のセリア粒子の組合せであってもよい。
【0023】
粒子Aの平均一次粒子径は、研磨速度向上の観点から、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、20nm以上が更に好ましく、そして、研磨傷発生の抑制の観点から、300nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、150nm以下が更に好ましい。本開示において粒子Aの平均一次粒子径は、BET(窒素吸着)法によって算出されるBET比表面積S(m2/g)を用いて算出される。BET比表面積は、実施例に記載の方法により測定できる。
【0024】
粒子Aの形状としては、例えば、略球状、多面体状、ラズベリー状が挙げられる。
【0025】
本開示に係る研磨液組成物中の粒子Aの含有量は、粒子A、オリゴ糖B、及び水の合計含有量を100質量%とすると、研磨速度の確保及び研磨選択性の向上の観点から、0.05質量%以上が好ましく、0.10質量%以上がより好ましく、0.20質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、10.0質量%以下が好ましく、7.5質量%以下がより好ましく、5.0質量%以下が更に好ましく、2.5質量%以下が更により好ましく、1.0質量%以下が更により好ましい。粒子Aが2種以上のセリア粒子の組合せである場合、粒子Aの含有量は、それらの合計含有量をいう。
【0026】
[オリゴ糖B]
本開示に係る研磨液組成物は、オリゴ糖Bを含有する。オリゴ糖Bは、研磨速度の確保、研磨選択性の向上及び研磨ムラ抑制の観点から、3個以上5個以下のグルコースが結合した糖を含み、かつ、8個以上のグルコースが結合した糖の含有量が27質量%以下のオリゴ糖であって、環状を除く直鎖又は分岐鎖状のオリゴ糖であることが好ましい。前記3個以上5個以下のグルコースの結合は、好ましくはグルコシド結合である。前記3個以上5個以下のグルコースが結合した糖は、オリゴ糖Bの有効成分であることが好ましい。本開示におけるオリゴ糖Bを構成する単糖、すなわち、オリゴ糖Bの構成単位としては、研磨速度の確保、研磨選択性の向上及び研磨ムラ抑制の観点から、例えば、グルコースのみが好ましい。オリゴ糖Bは、1種類のオリゴ糖であってもよいし、2種以上のオリゴ糖の組合せであってもよい。本開示において、「8個以上のグルコースが結合した糖の含有量」とは、オリゴ糖B中の8個以上のグルコースが結合した糖の割合をいう。
【0027】
オリゴ糖Bとしては、研磨速度の確保、研磨選択性の向上及び研磨ムラ抑制の観点から、オリゴ糖B中の分子量15,000以上の糖の含有量は、0質量%以上が好ましく、そして、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、4質量%以下が更に好ましい。
【0028】
オリゴ糖Bとしては、研磨速度の確保、研磨選択性の向上及び研磨ムラ抑制の観点から、ゲンチオオリゴ糖B1、イソマルトオリゴ糖B2、マルトオリゴ糖B3及びニゲロオリゴ糖B4から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらの中でも、研磨速度の確保及び研磨選択性の向上の観点から、ゲンチオオリゴ糖B1、イソマルトオリゴ糖B2及びニゲロオリゴ糖B4から選ばれる1種又は2種以上の組合せが好ましく、ゲンチオオリゴ糖B1及びイソマルトオリゴ糖B2の少なくとも一方がより好ましく、ゲンチオオリゴ糖B1がより更に好ましい。
【0029】
本開示におけるゲンチオオリゴ糖B1は、研磨速度の確保及び研磨選択性の向上の観点から、例えば、有効成分として3個以上5個以下のグルコースが主としてβ−1,6−グルコシド結合した直鎖オリゴ糖を含むものが挙げられ、具体的には、有効成分としてゲンチオトリオース(三糖)、ゲンチオテトラオース(四糖)等を含むものが挙げられる。ゲンチオオリゴ糖B1は、例えば、グルコースにβ−グルコシダーゼを作用させることにより製造できる。このような製造方法で得られるゲンチオオリゴ糖B1や、市販のゲンチオオリゴ糖B1には、上記の有効成分以外に、単糖のグルコースやフルクトース、二糖のゲンチビオース、重合度6以上の糖等の他の成分が含まれることがあるが、これら他の成分は、本開示の効果を大きく損なわない範囲で、本開示に係る研磨液組成物に含まれてもよい。そして、ゲンチオオリゴ糖B1は、研磨速度の確保及び研磨選択性の向上の観点から、8個以上のグルコースが結合した糖の含有量が27質量%以下であればよい。
【0030】
本開示におけるイソマルトオリゴ糖B2は、研磨速度の確保及び研磨選択性の向上の観点から、例えば、有効成分として3個以上5個以下のグルコースがα−1,4及び/又はα−1,6−グルコシド結合した分岐鎖オリゴ糖を含むものが挙げられ、具体的には、有効成分としてイソマルトトリオース(三糖)、パノース(三糖)等を含むものが挙げられる。イソマルトオリゴ糖B2は、例えば、デキストランを酸処理してデキストラン分子中のα−1,6−グルコシド結合以外の結合を選択的に分解する工程と、この酸処理したデキストラン溶液に、エンドデキストラナーゼまたは担体に固定化したエンドデキストラナーゼを作用させて酵素反応を行う工程とを含む製造方法により製造できる。このような製造方法で得られるイソマルトオリゴ糖B2や、市販のイソマルトオリゴ糖B2には、上記の有効成分以外に、イソマルトース(二糖)、重合度6以上の糖等の他の成分が含まれることがあるが、これら他の成分は、本開示の効果を大きく損なわない範囲で、本開示に係る研磨液組成物に含まれてもよい。そして、イソマルトオリゴ糖B2は、研磨速度の確保及び研磨選択性の向上の観点から、8個以上のグルコースが結合した糖の含有量が27質量%以下であればよい。
【0031】
本開示におけるマルトオリゴ糖B3は、研磨速度の確保及び研磨選択性の向上の観点から、例えば、有効成分として3個以上5個以下のグルコースがα−1,4グルコシド結合した直鎖オリゴ糖を含むものが挙げられ、具体的には、有効成分としてマルトトリオース(三糖)、マルトテトラオース(四糖)等を含むものが挙げられる。マルトオリゴ糖B3は、例えば、澱粉にマルトオリゴ糖生成アミラーゼを作用させて製造できる。このような製造方法で得られるマルトオリゴ糖B3や、市販のマルトオリゴ糖B3には、上記の有効成分以外に、マルトース(二糖)、重合度6以上の糖等の他の成分が含まれることがあるが、これら他の成分は、本開示の効果を大きく損なわない範囲で、本開示に係る研磨液組成物に含まれてもよい。そして、マルトオリゴ糖B3は、研磨速度の確保及び研磨選択性の向上の観点から、8個以上のグルコースが結合した糖の含有量が27質量%以下であればよい。
【0032】
本開示におけるニゲロオリゴ糖B4は、研磨速度の確保及び研磨選択性の向上の観点から、例えば、有効成分として3個以上5個以下のグルコースがα−1,3及び/又はα−1,4−グルコシド結合した分岐鎖オリゴ糖を含むものが挙げられ、具体的には、有効成分としてニゲロトリオース(三糖)、ニゲロシルグルコース(三糖)、ニゲロテトラオース(四糖)、ニゲロシルマルトース(四糖)等を含むものが挙げられる。ニゲロオリゴ糖B4は、例えば、マルトース溶液を基質とし、ニゲロオリゴ糖生成酵素を作用させて製造できる。このような製造方法で得られるニゲロオリゴ糖B4や、市販のニゲロオリゴ糖B4には、上記の有効成分以外に、ニゲロビオース(二糖)、重合度6以上の糖等の他の成分が含まれることがあるが、これら他の成分は、本開示の効果を大きく損なわない範囲で、本開示に係る研磨液組成物に含まれてもよい。そして、ニゲロオリゴ糖B4は、研磨速度の確保及び研磨選択性の向上の観点から、8個以上のグルコースが結合した糖の含有量が27質量%以下であればよい。
【0033】
オリゴ糖Bの重量平均分子量は、研磨速度の確保、研磨選択性の向上及び研磨ムラ抑制の観点から、800未満が好ましく、750以下がより好ましく、700以下が更に好ましく、600以下が更に好ましく、そして、300以上が好ましく、350以上がより好ましく、400以上が更に好ましい。オリゴ糖Bの重量平均分子量は、後述する化合物Cの重量平均分子量と同様の測定方法により算出できる。
【0034】
本開示に係る研磨液組成物中のオリゴ糖Bの含有量は、粒子A、オリゴ糖B、及び水の合計含有量を100質量%とすると、研磨ムラ抑制及び研磨ストッパ膜の研磨抑制の観点から、0.2質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.4質量%以上が更に好ましく、0.5質量%以上が更に好ましく、0.8質量%以上が更に好ましく、そして、研磨速度の確保、及び研磨選択性の向上の観点から、2.5質量%以下が好ましく、2.0質量%以下がより好ましく、1.5質量%以下が更に好ましく、1.1質量%以下が更に好ましい。同様の観点から、前記オリゴ糖Bの含有量は、好ましくは0.1質量%以上2.5質量%以下が好ましく、より好ましくは0.3質量%以上2.5質量%以下、更に好ましくは0.4質量%以上2.0質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以上1.5質量%以下である。オリゴ糖Bが2種以上のオリゴ糖の組合せである場合、オリゴ糖Bの含有量は、それらの合計含有量をいう。
【0035】
本開示に係る研磨液組成物中の3個以上5個以下のグルコースが結合した糖の含有量は、粒子A、オリゴ糖B、及び水の合計含有量を100質量%とすると、研磨ムラ抑制及び研磨ストッパ膜の研磨抑制の観点から、0.05質量%以上が好ましく、0.08質量%以上がより好ましく、0.10質量%以上が更に好ましく、0.12質量%以上が更に好ましく、0.15質量%以上が更に好ましく、0.25質量%以上が更に好ましく、0.35質量%以上が更に好ましく、そして、研磨速度の確保、及び研磨選択性の向上の観点から、1.0質量%以下が好ましく、0.7質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が更に好ましい。
【0036】
本開示に係る研磨液組成物中の粒子Aの含有量に対するオリゴ糖Bの含有量の比B/Aは、研磨速度の確保、研磨選択性の向上及研磨ムラ抑制の観点から、0.01以上が好ましく、0.1以上がより好ましく、0.3以上が更に好ましく、そして、20以下が好ましく、10以下がより好ましく、5以下が更に好ましい。
【0037】
[化合物C]
本開示に係る研磨液組成物は、研磨速度の確保及び研磨選択性の向上の観点から、研磨助剤として、アニオン性基を有する化合物C(以下、「化合物C」ともいう)を含有することが好ましい。化合物Cは、1種類でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
【0038】
化合物Cのアニオン性基としては、カルボン酸基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基、ホスホン酸基等が挙げられる。これらのアニオン性基は中和された塩の形態を取ってもよい。アニオン性基が塩の形態を取る場合の対イオンとしては、金属イオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオン等が挙げられ、半導体基板の品質向上の観点から、アンモニウムイオンが好ましい。
【0039】
化合物Cとしては、例えば、1価のカルボン酸、クエン酸及びアニオン性ポリマーから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
化合物Cがアニオン性ポリマーである場合の具体例としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、(メタ)アクリル酸とモノメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの共重合体、アニオン基を有する(メタ)アクリレートとモノメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの共重合体、アルキル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸とモノメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの共重合体、これらのアルカリ金属塩、及びこれらのアンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、半導体基板の品質向上の観点から、ポリアクリル酸及びそのアンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0040】
化合物Cがアニオン性ポリマーである場合、化合物Cの重量平均分子量は、研磨速度の確保及び研磨選択性の向上の観点から、1,000以上が好ましく、10,000以上がより好ましく、20,000以上が更に好ましく、そして、550万以下が好ましく、100万以下がより好ましく、10万以下が更に好ましい。
【0041】
本開示において重量平均分子量は、液体クロマトグラフィー(株式会社日立製作所製、L−6000型高速液体クロマトグラフィー)を使用し、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって下記条件で測定できる。
検出器:ショーデックスRI SE−61示差屈折率検出器
カラム:東ソー株式会社製のG4000PWXLとG2500PWXLを直列につないだものを使用した。
溶離液:0.2Mリン酸緩衝液/アセトニトリル=90/10(容量比)で0.5g/100mLの濃度に調整し、20μLを用いた。
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/min
標準ポリマー:分子量が既知の単分散ポリエチレングリコール
【0042】
化合物Cが1価のカルボン酸である場合、化合物Cとしては、例えば、レブリン酸、プロピオン酸、バニリン酸、p−ヒドロキシ安息香酸、及びギ酸から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。本開示に係る研磨液組成物が化合物Cとして1価のカルボン酸を含む場合、保存安定性が良好になると考えられる。
【0043】
本開示に係る研磨液組成物中の化合物Cの含有量は、研磨速度の確保及び研磨選択性の向上の観点から、0.001質量%以上が好ましく、0.0015質量%以上がより好ましく、0.0025質量%以上が更に好ましく、そして、1.0質量%以下が好ましく、0.8質量%以下がより好ましく、0.6質量%以下が更に好ましい。化合物Cが2種以上の組合せである場合、化合物Cの含有量は、それらの合計含有量をいう。
【0044】
本開示に係る研磨液組成物中の粒子Aの含有量に対する化合物Cの含有量の比(C/A)は、研磨速度の確保及び研磨選択性の向上の観点から、0.0001以上が好ましく、0.0005以上がより好ましく、0.001以上が更に好ましく、そして、1以下が好ましく、0.1以下がより好ましく、0.01以下が更に好ましい。
【0045】
[水]
本開示に係る研磨液組成物は、媒体として水を含有する。該水は、半導体基板の品質向上の観点から、イオン交換水、蒸留水、超純水等の水からなるとより好ましい。本開示に係る研磨液組成物における水の含有量は、粒子A、オリゴ糖B、水、必要に応じて添加される化合物C及び下記任意成分の合計含有量を100質量%とすると、粒子A、オリゴ糖B、化合物C及び任意成分を除いた残余とすることができる。
【0046】
[任意成分]
本開示に係る研磨液組成物は、本開示の効果を損なわない範囲で、pH調整剤、化合物C以外の界面活性剤、増粘剤、分散剤、防錆剤、塩基性物質、研磨速度向上剤等の任意成分を含有することができる。これらの任意成分の含有量は、研磨速度確保の観点から、0.001質量%以上が好ましく、0.0025質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましく、研磨選択性向上の観点から、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が更に好ましい。
【0047】
前記pH調整剤としては、例えば、酸性化合物及びアルカリ化合物が挙げられる。酸性化合物としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸;酢酸、シュウ酸、クエン酸、及びリンゴ酸等の有機酸;等が挙げられる。なかでも、汎用性の観点から、塩酸、硝酸及び酢酸から選ばれる少なくとも1種が好ましく、塩酸及び酢酸から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。アルカリ化合物としては、例えば、アンモニア、及び水酸化カリウム等の無機アルカリ化合物;アルキルアミン、及びアルカノールアミン等の有機アルカリ化合物;等が挙げられる。なかでも、半導体基板の品質向上の観点から、アンモニア及びアルキルアミンから選ばれる少なくとも1種が好ましく、アンモニアがより好ましい。
【0048】
前記化合物C以外の界面活性剤としては、成分C以外のアニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤(非イオン性界面活性剤)等が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルエーテル酢酸塩、アルキルエーテルリン酸塩、及びアルキルエーテル硫酸塩等が挙げられる。ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリアクリルアミド等のノニオン性ポリマー、及びポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル等が挙げられる。
【0049】
本開示の研磨液組成物は、一又は複数の実施形態において、非イオン性界面活性剤を実質的に含まないものとすることができる。本開示において、「非イオン性界面活性剤を実質的に含まない」とは、研磨液組成物中の非イオン性界面活性剤の含有量が、0.1質量%以下であることをいう。酸化珪素膜の研磨速度の確保、及び研磨選択性向上の観点から、本開示の研磨液組成物中の非イオン性界面活性剤の含有量は、0.01質量%未満が好ましく、0.005質量%以下が更に好ましく、実質的に0質量%が更に好ましい。
【0050】
本開示に係る研磨液組成物は、一又は複数の実施形態において、4個以上のアミノ基を有する化合物を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0051】
[研磨液組成物]
本開示に係る研磨液組成物は、粒子A及び水を含むスラリー、オリゴ糖B、並びに、所望により化合物C及び任意成分等を公知の方法で配合する工程を含む製造方法によって製造できる。例えば、本開示に係る研磨液組成物は、少なくとも粒子A、オリゴ糖B及び水を配合してなるものとすることができる。本開示において「配合する」とは、粒子A、オリゴ糖B及び水、並びに必要に応じて化合物C及びその他の任意成分を同時に又は順に混合することを含む。混合する順序は特に限定されない。前記配合は、例えば、ホモミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機及び湿式ボールミル等の混合器を用いて行うことができる。本開示に係る研磨液組成物の製造方法における各成分の配合量は、上述した本開示に係る研磨液組成物中の各成分の含有量と同じとすることができる。
【0052】
本開示に係る研磨液組成物の実施形態は、全ての成分が予め混合された状態で市場に供給される、いわゆる1液型であってもよいし、使用時に混合される、いわゆる2液型であってもよい。2液型の研磨液組成物では、第1液と第2液とに分かれており、研磨液組成物は、例えば、粒子Aが水に混合された第1液と、オリゴ糖Bが水に混合された第2液とから構成され、第1液と第2液とが混合されるものであってもよい。第1液と第2液との混合は、研磨対象の表面への供給前に行われてもよいし、これらは別々に供給されて被研磨基板の表面上で混合されてもよい。
【0053】
本開示に係る研磨液組成物のpHは、研磨速度の確保及び研磨選択性の向上の観点から、4.0以上が好ましく、5.0以上がより好ましく、6.0以上が更に好ましく、そして、9.0以下が好ましく、9.0未満がより好ましく、8.5以下が更に好ましく、8.0以下が更に好ましい。本開示において、研磨液組成物のpHは、25℃における値であって、pHメータを用いて測定した値である。本開示における研磨液組成物のpHは、具体的には、実施例に記載の方法で測定できる。
【0054】
本開示において「研磨液組成物中の各成分の含有量」とは、研磨液組成物を研磨に使用する時点での前記各成分の含有量をいう。本開示に係る研磨液組成物は、その安定性が損なわれない範囲で濃縮された状態で保存および供給されてもよい。この場合、製造・輸送コストを低くできる点で好ましい。そしてこの濃縮液は、必要に応じて前述の水系媒体で適宜希釈して研磨工程で使用することができる。希釈割合としては5〜100倍が好ましい。
【0055】
[被研磨膜]
本開示に係る研磨液組成物が研磨の対象とする被研磨膜としては、例えば、酸化珪素膜が挙げられる。したがって、本開示に係る研磨液組成物は、半導体基板の素子分離構造を形成する工程で行われる酸化珪素膜の研磨に好適に使用できる。
【0056】
[研磨液キット]
本開示は、研磨液組成物を製造するためのキットであって、前記粒子Aを含有する分散液が容器に収納された粒子A分散液、及び、前記粒子A分散液とは別の容器に収納された前記オリゴ糖Bを含む、研磨液キットに関する。本開示に係る研磨液キットによれば、研磨速度を確保しつつ、研磨選択性の向上及び研磨ムラの抑制が可能な研磨液組成物が得られうる研磨液キットを提供できる。
【0057】
本開示に係る研磨液キットとしては、例えば、前記粒子Aを含有する分散液(第1液)と、オリゴ糖Bを含む溶液(第2液)とが、相互に混合されていない状態で保存されており、これらが使用時に混合される研磨液キット(2液型研磨液組成物)が挙げられる。前記第1液と前記第2液とが混合された後、必要に応じて水を用いて希釈されてもよい。第2液には、被研磨物の研磨に用いる研磨液組成物に配合され得る他の成分を含まれていてもよい。研磨液組成物に配合され得る他の成分としては、例えば、前記化合物C、酸、酸化剤、複素環芳香族化合物、脂肪族アミン化合物、脂環式アミン化合物等が挙げられる。前記第1液及び第2液には、各々必要に応じて任意成分が含まれていてもよい。該任意成分としては、例えば、増粘剤、分散剤、防錆剤、塩基性物質、研磨速度向上剤、界面活性剤、高分子化合物等が挙げられる。
【0058】
[半導体基板の製造方法]
本開示は、本開示に係る研磨液組成物を用いて被研磨膜を研磨する工程(以下、「本開示に係る研磨液組成物を用いた研磨工程」ともいう)を含む、半導体基板の製造方法(以下、「本開示に係る半導体基板の製造方法」ともいう。)に関する。本開示に係る半導体基板の製造方法によれば、研磨工程における研磨速度を確保しつつ、研磨選択性の向上と研磨ムラの抑制が可能となるため、基板品質が向上した半導体基板を効率よく製造できるという効果が奏されうる。
【0059】
本開示に係る半導体基板の製造方法の具体例としては、まず、シリコン基板を酸化炉内で酸素に晒すことよりその表面に二酸化シリコン層を成長させ、次いで、当該二酸化シリコン層上に窒化珪素(Si34)膜又はポリシリコン膜等の研磨ストッパ膜を、例えばCVD法(化学気相成長法)にて形成する。次に、シリコン基板と前記シリコン基板の一方の主面側に配置された研磨ストッパ膜とを含む基板、例えば、シリコン基板の二酸化シリコン層上に研磨ストッパ膜が形成された基板に、フォトリソグラフィー技術を用いてトレンチを形成する。次いで、例えば、シランガスと酸素ガスを用いたCVD法により、トレンチ埋め込み用の被研磨膜である酸化珪素(SiO2)膜を形成し、研磨ストッパ膜が被研磨膜(酸化珪素膜)で覆われた被研磨基板を得る。酸化珪素膜の形成により、前記トレンチは酸化珪素膜の酸化珪素で満たされ、研磨ストッパ膜の前記シリコン基板側の面の反対面は酸化珪素膜によって被覆される。このようにして形成された酸化珪素膜のシリコン基板側の面の反対面は、下層の凸凹に対応して形成された段差を有する。次いで、CMP法により、酸化珪素膜を、少なくとも研磨ストッパ膜のシリコン基板側の面の反対面が露出するまで研磨し、より好ましくは、酸化珪素膜の表面と研磨ストッパ膜の表面とが面一になるまで酸化珪素膜を研磨する。本開示に係る研磨液組成物は、このCMP法による研磨を行う工程に用いることができる。
【0060】
CMP法による研磨では、被研磨基板の表面と研磨パッドとを接触させた状態で、本開示に係る研磨液組成物をこれらの接触部位に供給しつつ被研磨基板及び研磨パッドを相対的に移動させることにより、被研磨基板の表面の凹凸部分を平坦化させる。本開示に係る半導体基板の製造方法において、シリコン基板の二酸化シリコン層と研磨ストッパ膜との間に他の絶縁膜が形成されていてもよいし、被研磨膜(例えば、酸化珪素膜)と研磨ストッパ膜(例えば、窒化珪素膜)との間に他の絶縁膜が形成されていてもよい。
【0061】
本開示に係る研磨液組成物を用いた研磨工程において、研磨パッドの回転数は、例えば、30〜200r/分、被研磨基板の回転数は、例えば、30〜200r/分、研磨パッドを備えた研磨装置に設定される研磨荷重は、例えば、20〜500g重/cm2、研磨液組成物の供給速度は、例えば、10〜500mL/分以下に設定できる。研磨液組成物が2液型研磨液組成物の場合、第1液及び第2液のそれぞれの供給速度(又は供給量)を調整することで、被研磨膜及び研磨ストッパ膜のそれぞれの研磨速度や、被研磨膜と研磨ストッパ膜との研磨速度比(研磨選択性)を調整できる。
【0062】
本開示に係る研磨液組成物を用いた研磨工程において、被研磨膜(例えば、酸化珪素膜)の研磨速度は、生産性向上の観点から、好ましくは2000Å/分以上、より好ましくは3000Å/分以上、更に好ましくは4000Å/分以上である。
【0063】
本開示に係る研磨液組成物を用いた研磨工程において、研磨ストッパ膜(例えば、窒化珪素膜)の研磨速度は、研磨選択性向上及び研磨時間の短縮化の観点から、好ましくは500Å/分以下、より好ましくは300Å/分以下、更に好ましくは150Å/分以下である。
【0064】
本開示に係る研磨液組成物を用いた研磨工程において、研磨速度比(被研磨膜の研磨速度/研磨ストッパ膜の研磨速度)は、研磨時間の短縮化の観点から、5.0以上が好ましく、10.0以上がより好ましく、20.0以上が更に好ましく、40.0以上が更により好ましい。本開示において研磨選択性は、研磨ストッパの研磨速度に対する被研磨膜の研磨速度の比(被研磨膜の研磨速度/研磨ストッパ膜の研磨速度)と同義であり、研磨選択性が高いとは、研磨速度比が大きいことを意味する。
【0065】
[研磨方法]
本開示は、本開示に係る研磨液組成物を用いた研磨工程を含む、基板の研磨方法(以下、本開示に係る研磨方法ともいう)に関する。
【0066】
本開示に係る研磨方法を使用することにより、研磨工程における研磨速度を確保しつつ、研磨選択性の向上と研磨ムラの抑制が可能となるため、基板品質が向上した半導体基板の生産性を向上できるという効果が奏されうる。具体的な研磨の方法及び条件は、上述した本開示に係る半導体基板の製造方法と同じようにすることができる。
【0067】
本開示は、さらに以下の組成物、製造方法に関する。
<1> 酸化セリウム粒子Aと、オリゴ糖Bと、水とを含有し、
前記オリゴ糖Bは、3個以上5個以下のグルコースが結合した糖を含み、かつ、8個以上のグルコースが結合した糖の含有量が27質量%以下のオリゴ糖である、研磨液組成物。
【0068】
<2> 粒子Aの平均一次粒子径は、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、20nm以上が更に好ましい、<1>に記載の研磨液組成物。
<3> 粒子Aの平均一次粒子径は、300nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、150nm以下が更に好ましい、<1>又は<2>に記載の研磨液組成物。
<4> 研磨液組成物中の粒子Aの含有量は、粒子A、オリゴ糖B、及び水の合計含有量を100質量%とすると、0.05質量%以上が好ましく、0.10質量%以上がより好ましく、0.20質量%以上が更に好ましい、<1>から<3>のいずれかに記載の研磨液組成物。
<5> 研磨液組成物中の粒子Aの含有量は、粒子A、オリゴ糖B、及び水の合計含有量を100質量%とすると、10.0質量%以下が好ましく、7.5質量%以下がより好ましく、5.0質量%以下が更に好ましく、2.5質量%以下が更により好ましく、1.0質量%以下が更により好ましい、<1>から<4>のいずれかに記載の研磨液組成物。
<6> オリゴ糖Bの構成単位は、グルコースのみである、<1>から<5>のいずれかに記載の研磨液組成物。
<7> オリゴ糖Bは、ゲンチオオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、マルトオリゴ糖及びニゲロオリゴ糖から選ばれる少なくとも1種である、<1>から<6>のいずれかに記載の研磨液組成物。
<8> オリゴ糖B中の分子量15,000以上の糖の含有量は、0質量%以上である、<1>から<7>のいずれかに記載の研磨液組成物。
<9> オリゴ糖B中の分子量15,000以上の糖の含有量は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、4質量%以下が更に好ましい、<1>から<8>のいずれかに記載の研磨液組成物。
<10> オリゴ糖Bの含有量は、粒子A、オリゴ糖B、及び水の合計含有量を100質量%とすると、0.2質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.4質量%以上が更に好ましく、0.5質量%以上が更に好ましく、0.8質量%以上が更に好ましい、<1>から<9>のいずれかに記載の研磨液組成物。
<11> オリゴ糖Bの含有量は、粒子A、オリゴ糖B、及び水の合計含有量を100質量%とすると、2.5質量%以下が好ましく、2.0質量%以下がより好ましく、1.5質量%以下が更に好ましく、1.1質量%以下が更に好ましい、<1>から<10>のいずれかに記載の研磨液組成物。
<12> オリゴ糖Bの含有量が、好ましくは0.1質量%以上2.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以上2.5質量%以下、更に好ましくは0.4質量%以上2.0質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以上1.5質量%以下である、<1>から<11>のいずれかに記載の研磨液組成物。
<13> 3個以上5個以下のグルコースが結合した糖の含有量は、粒子A、オリゴ糖B、及び水の合計含有量を100質量%とすると、0.05質量%以上が好ましく、0.08質量%以上がより好ましく、0.10質量%以上が更に好ましく、0.12質量%以上が更に好ましく、0.15質量%以上が更に好ましく、0.25質量%以上が更に好ましく、0.35質量%以上が更に好ましい、<1>から<12>のいずれかに記載の研磨液組成物。
<14> 3個以上5個以下のグルコースが結合した糖の含有量は、1.0質量%以下が好ましく、0.7質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が更に好ましい、<1>から<13>のいずれかに記載の研磨液組成物。
<15> 粒子Aの含有量に対するオリゴ糖Bの含有量の比B/Aは、0.01以上が好ましく、0.1以上がより好ましく、0.3以上が更に好ましい、<1>から<14>のいずれかに記載の研磨液組成物。
<16> 粒子Aの含有量に対するオリゴ糖Bの含有量の比B/Aは、20以下が好ましく、10以下がより好ましく、5以下が更に好ましい、<1>から<15>のいずれかに記載の研磨液組成物。
<17> 粒子Aの含有量に対するオリゴ糖Bの含有量の比B/Aは、0.01以上20以下である、<1>から<16>のいずれかに記載の研磨液組成物。
<18> オリゴ糖Bの重量平均分子量は、800未満が好ましく、750以下がより好ましく、700以下が更に好ましく、600以下が更に好ましい、<1>から<17>のいずれかに記載の研磨液組成物。
<19> オリゴ糖Bの重量平均分子量は、300以上が好ましく、350以上がより好ましく、400以上が更に好ましい、<1>から<18>のいずれかに記載の研磨液組成物。
<20> アニオン性基を有する化合物Cをさらに含有する、<1>から<19>のいずれかに記載の研磨液組成物。
<21> 化合物Cの重量平均分子量は、1,000以上が好ましく、10,000以上がより好ましく、20,000以上が更に好ましい、<20>に記載の研磨液組成物。
<22> 化合物Cの重量平均分子量は、550万以下が好ましく、100万以下がより好ましく、10万以下が更に好ましい、<20>又は<21>に記載の研磨液組成物。
<23> 化合物Cが、1価のカルボン酸である、<20>に記載の研磨液組成物。
<24> 化合物Cが、レブリン酸、プロピオン酸、バニリン酸、p−ヒドロキシ安息香酸、及びギ酸から選ばれる少なくとも1種である、<23>に記載の研磨液組成物。
<25> 研磨液組成物中の化合物Cの含有量は、0.001質量%以上が好ましく、0.0015質量%以上がより好ましく、0.0025質量%以上が更に好ましい、<20>から<24>のいずれかに記載の研磨液組成物。
<26> 研磨液組成物中の化合物Cの含有量は、1.0質量%以下が好ましく、0.8質量%以下がより好ましく、0.6質量%以下が更に好ましい、<20>から<25>のいずれかに記載の研磨液組成物。
<27> 研磨液組成物中の粒子Aの含有量に対する化合物Cの含有量の比(C/A)は、0.0001以上が好ましく、0.0005以上がより好ましく、0.001以上が更に好ましい、<20>から<26>のいずれかに記載の研磨液組成物。
<28> 研磨液組成物中の粒子Aの含有量に対する化合物Cの含有量の比(C/A)は、1以下が好ましく、0.1以下がより好ましく、0.01以下が更に好ましい、<20>から<27>のいずれかに記載の研磨液組成物。
<29> 酸化珪素膜の研磨に用いられる、<1>から<28>のいずれかに記載の研磨液組成物。
<30> pHは、4.0以上が好ましく、5.0以上がより好ましく、6.0以上が更に好ましい、<1>から<29>のいずれかに記載の研磨液組成物。
<31> pHは、9.0以下が好ましく、9.0未満がより好ましく、8.5以下が更に好ましく、8.0以下が更に好ましい、<1>から<30>のいずれかに記載の研磨液組成物。
<32> pHが4.0以上9.0未満である、<1>から<31>のいずれかに記載の研磨液組成物。
<33> 粒子Aが水に混合された第1液と、オリゴ糖Bが水に混合された第2液とから構成され、使用時に第1液と第2液とが混合される、<1>から<32>のいずれかに記載の研磨液組成物。
<34> <1>から<33>のいずれかに記載の研磨液組成物を用いて被研磨基板を研磨する工程を含む、半導体基板の製造方法。
<35> <1>から<33>のいずれかに記載の研磨液組成物を用いて被研磨基板を研磨する工程を含み、前記被研磨基板は、半導体基板の製造に用いられる基板である、基板の研磨方法。
<36> <1>から<33>のいずれかに記載の研磨液組成物の半導体基板の製造への使用。
【実施例】
【0069】
1.研磨液組成物の調製(実施例1〜23及び比較例1〜20)
水と砥粒(粒子A)と添加剤(オリゴ糖B、化合物C)とを下記表1及び2に示す含有量となるように混合して実施例1〜23及び比較例1〜20の研磨液組成物を得た。研磨液組成物のpHは、0.1Nアンモニウム水溶液を用いて調整した。
【0070】
粒子Aとしては、コロイダルセリア(「ZENUS HC90」、阿南化成社製、平均一次粒径:99nm、BET比表面積:8.4m2/g)、不定形セリア(焼成粉砕セリアGPL−C1010、昭和電工製、平均一次粒径:70nm、BET比表面積:11.8m2/g)、セリアコートシリカ(平均一次粒径:92.5nm、BET比表面積:35.5m2/g)及び水酸化セリウム(平均一次粒径:5nm、BET比表面積:165m2/g)を使用した。
化合物Cとしては、ポリアクリル酸アンモニウム塩(重量平均分子量:21,000)、クエン酸、レブリン酸、プロピオン酸、バニリン酸、p−ヒドロキシ安息香酸、及びギ酸を使用した。
【0071】
オリゴ糖B(B1〜B16)としては、以下のものを使用した。主構成単位とは、オリゴ糖の構成単位の中で重合度2以上を占める単糖、すなわち、オリゴ糖中の重合度2以上の糖の構成単位となる単糖を指す。
B1:ゲンチオオリゴ糖類(製品名:ゲントース#45、日本食品化工製、構成成分:単糖〜五糖の直鎖オリゴ糖、主構成単位:グルコース)
B2:イソマルトオリゴ糖類(製品名:バイオトース#50、日本食品化工製、構成成分:三糖〜五糖の分岐鎖オリゴ糖、主構成単位:グルコース)
B3:イソマルトオリゴ糖(製品名:日食ブランチオリゴ、日本食品化工製、構成成分:三糖〜四糖の分岐鎖オリゴ糖、主構成単位:グルコース)
B4:マルトオリゴ糖類(製品名:フジオリゴ#450、日本食品化工製、構成成分:二糖〜十糖の直鎖オリゴ糖、主構成単位:グルコース)
B5:ニゲロオリゴ糖(製品名:テイストオリゴ、日本食品化工製、構成成分:単糖〜四糖の直鎖オリゴ糖、主構成単位:グルコース)
B6:グルコース(単糖)
B7:ガラクトース(単糖)
B8:キシリトール(単糖、糖アルコール、環状構造なし)
B9:D−マンニトール(単糖、糖アルコール、環状構造なし)
B10:スクロース(二糖の直鎖オリゴ糖、構成単位:グルコース+フルクトース)
B11:トレハロース(二糖の直鎖オリゴ糖、主構成単位:グルコース)
B12:ラフィノース(三糖の直鎖オリゴ糖、構成単位:フルクトース+ガラクトース+グルコース)
B13:ガラクトオリゴ糖(二〜五糖の直鎖オリゴ糖、主構成単位:ガラクトース)
B14:ショ糖ステアリン酸エステル(製品名:S−970、三菱化学フーズ製、二糖の直鎖オリゴ糖、構成単位:グルコース+フルクトース)
B15:α−シクロデキストリン(六糖の環状オリゴ糖、主構成単位:グルコース)
B16:キチンオリゴ糖(N−アセチルグルコサミンが数個連なったオリゴ糖)
【0072】
研磨液組成物のpH、粒子Aの平均一次粒径及びBET比表面積は以下の方法により測定した。pHの測定結果を表1及び2に示す。
【0073】
(a)研磨液組成物のpH測定
研磨液組成物の25℃におけるpH値は、pHメータ(東亜電波工業株式会社、HM−30G)を用いて測定した値であり、電極の研磨液組成物への浸漬後1分後の数値である。
【0074】
(b)粒子Aの平均一次粒径
粒子Aの平均一次粒径(nm)は、下記BET(窒素吸着)法によって得られる比表面積S(m2/g)を用い、セリア粒子の真密度を7.2g/cm3として算出した。
【0075】
(c)粒子AのBET比表面積の測定方法
比表面積は、セリア粒子A分散液を120℃で3時間熱風乾燥した後、メノウ乳鉢で細かく粉砕しサンプルを得た。測定直前に120℃の雰囲気下で15分間乾燥した後、比表面積測定装置(マイクロメリティック自動比表面積測定装置 フローソーブIII2305、島津製作所製)を用いて窒素吸着法(BET法)により測定した。
【0076】
オリゴ糖B1〜B16の構成成分については、下記の条件でHPLCを用いて分離し、LC−MSを用いて分析した。
<HPLC条件>
・カラム:ShodexAsahipak NH2P−50
・溶離液:アセトニトリルと水との混合溶液
・流速:0.8mL/min
・温度:30℃
・試料濃度:0.1%(溶媒:アセトニトリルと水との混合溶液)
・注入量:30μL
・検出:Q−Exactive(FT−MS)
【0077】
2.研磨液組成物(実施例1〜23及び比較例1〜20)の評価
[試験片の作製]
シリコンウェーハの片面に、TEOS−プラズマCVD法で厚さ2000nmの酸化珪素膜を形成したものから、40mm×40mmの正方形片を切り出し、酸化珪素膜試験片を得た。
同様に、シリコンウェーハの片面に、CVD法で厚さ300nmの窒化珪素膜を形成したものから、40mm×40mmの正方形片を切り出し、窒化珪素膜試験片を得た。
【0078】
[酸化珪素膜(被研磨膜)の研磨速度の測定]
研磨装置として、定盤径300mmのムサシノ電子社製「MA−300」を用いた。また、研磨パッドとしては、ニッタ・ハース社製の硬質ウレタンパッド「IC−1000/Sub400」を用いた。前記研磨装置の定盤に、前記研磨パッドを貼り付けた。前記試験片をホルダーにセットし、試験片の酸化珪素膜を形成した面が下になるように(酸化珪素膜が研磨パッドに面するように)ホルダーを研磨パッドに載せた。さらに、試験片にかかる荷重が300g重/cm2となるように、錘をホルダーに載せた。研磨パッドを貼り付けた定盤の中心に、研磨液組成物を50mL/分の速度で滴下しながら、定盤及びホルダーのそれぞれを同じ回転方向に90r/分で1分間回転させて、酸化珪素膜試験片の研磨を行った。研磨後、超純水を用いて洗浄し、乾燥して、酸化珪素膜試験片を後述の光干渉式膜厚測定装置による測定対象とした。
【0079】
研磨前及び研磨後において、光干渉式膜厚測定装置(大日本スクリーン社製「ラムダエースVM−1000」)を用いて、酸化珪素膜の膜厚を測定した。酸化珪素膜の研磨速度は下記式により算出し、下記表1及び2に示した。
・酸化珪素膜の研磨速度(Å/分)
=[研磨前の酸化珪素膜厚さ(Å)−研磨後の酸化珪素膜厚さ(Å)]/研磨時間(分)
【0080】
[窒化珪素膜(研磨ストッパ膜)の研磨速度の測定]
試験片として酸化珪素膜試験片の代わりに窒化珪素膜試験片を用いること以外は、前記[酸化珪素膜の研磨速度の測定]と同様に、窒化珪素膜の研磨及び膜厚の測定を行った。窒化珪素膜の研磨速度は下記式により算出し、下記表1及び2に示した。
・窒化珪素膜の研磨速度(Å/分)
=[研磨前の窒化珪素膜厚さ(Å)−研磨後の窒化珪素膜厚さ(Å)]/研磨時間(分)
【0081】
[研磨速度比]
窒化珪素膜の研磨速度に対する酸化珪素膜の研磨速度の比を研磨速度比とし、下記式により算出し、下記表1及び2に示した。研磨速度比の値が大きいほど、研磨選択性が高いことを示す。
・研磨速度比=酸化珪素膜の研磨速度(Å/分)/窒化珪素膜の研磨速度(Å/分)
【0082】
[研磨ムラの評価方法]
研磨後の窒化珪素膜試験片上のムラの個数を測定するために、下記評価方法を用いた。まず窒化珪素膜試験片をNIKON製 COOLPIXS3700を用いて下記の条件に写真を撮影した。
・ISO感度:400
・画像モード:2M(1600×1200)
・ホワイトバランス:蛍光灯
・AFエリア選択:中央
・AFモード:AF−S シングルAF
・AF補助光:なし
・電子ズーム:しない
・マクロ:ON
【0083】
続いて撮影した写真を、MITANI製 画像解析ソフトWinROOF2013を使用して、下記条件で研磨ムラの個数を測定した。
測定基準単位を1pixelに設定し、撮影した写真をモノクロ画像化し、トリミングによりウェーハ内部の514pixed×514pixelの正方形領域を解析領域(以下、指定領域)に指定した。そして、指定領域の内側(実面積263952pixel)のグレースケール256階調を反転させ、研磨ムラが生じた部分の認識を容易にするため強調し、強調した部分を、ソフト機能「2つのしきい値による二値化」にて、しきい値80から184、透明度127で二値化した。その後、二値領域の形状特徴を計測し、色度の異なるムラの部分を研磨ムラの個数として測定した。測定結果を表1及び2に示す。
【0084】
[安定性の評価]
実施例15〜23の研磨液組成物を60℃で1ヶ月間静置させたときのpHを測定した。測定結果を表2に示した。1ヶ月経過後の研磨液組成物の研磨性能が確保されている場合には、保存安定性が良好であると判断できる。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
表1及び2に示されるように、所定のオリゴ糖Bを含有する実施例1〜23は、研磨速度を確保しつつ、研磨選択性が向上し、さらに研磨ムラが抑制されていた。化合物Cとしてポリアクリル酸アンモニウム又はクエン酸を含む実施例10〜13は、研磨選択性がより向上していた。化合物Cとしてレブリン酸、プロピオン酸、バニリン酸、p−ヒドロキシ安息香酸又はギ酸を含む実施例16〜23は、保存安定性が良好であった。
【0088】
さらに、実施例1及び比較例4の研磨液組成物を用いて研磨した窒化珪素膜の表面の観察画像を図1及び2に示す。図1に示すように、実施例1の研磨液組成物で研磨した窒化珪素膜の表面には目視でも研磨ムラは確認されなかった。一方、図2に示すように、比較例4の研磨液組成物で研磨した窒化珪素膜の表面には目視でも研磨ムラが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本開示に係る研磨液組成物は、高密度化又は高集積化用の半導体基板の製造方法において有用である。
図1
図2