(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記反射手段は、当該反射手段にて一次反射された前記検出光が、当該一次反射の後に、前記遮光領域内で1回反射されて前記反射手段に戻った場合に、当該戻った前記検出光を前記発光手段側に反射する、
請求項1又は2に記載の散乱光式感知器。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図5】取付面側から見た状態の検煙部カバーの斜視図である。
【
図6】取付面側とは反対側から見た状態の検煙部カバーの斜視図である。
【
図8】
図4において気流を白抜き矢印にて例示した図である。
【
図9】
図7において検出光の進路を矢印にて例示した図である。
【0021】
以下に、本発明に係る散乱光式感知器の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0022】
〔実施の形態の基本的概念〕
まずは、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態は、概略的に、散乱光式感知器に関するものである。
【0023】
ここで、「散乱光式感知器」とは、監視領域を監視する装置であり、具体的には、後述する散乱光を用いて、監視領域の検出対象を検出することにより監視領域の異常を監視するものであり、例えば、設置対象物の設置面に取り付けられるものであり、一例としては、火災等の異常を判定する機器である。この「散乱光式感知器」は、例えば、煙感知器、及び火災感知器等を含む概念である。
【0024】
なお、「監視領域」とは、散乱光式感知器による監視の対象となっている領域であり、具体的には、一定の広がりを持った空間であって、屋内あるいは屋外の空間であり、例えば、建物の廊下、階段、又は部屋等の空間を含む概念である。また、「設置対象物」とは、散乱光式感知器を設置する対象物であって、例えば、監視領域内の天井、壁等が挙げられる。また、「設置面」とは、散乱光式感知器が設置される設置対象物の面であって、例えば、天井における監視領域側の面(つまり、天井の下面)、壁における監視領域側の面(つまり、壁の室内側面)等が挙げられる。
【0025】
また、「監視領域の異常」とは、監視領域が通常とは異なっている状態になっていることであり、例えば、火災発生等を含む概念である。また、「検出対象」とは、散乱光式感知器による検出の対象であり、具体的には、監視領域の異常に関連するものであり、例えば、煙等を含む概念である。
【0026】
そして、以下の実施の形態においては、「散乱光式感知器」が「火災感知器」であり、「監視領域」が「建物の部屋」であり、「設置対象物」が「天井」であり、「監視領域の異常」が「火災発生」であり、「検出対象」が「煙」である場合について説明する。
【0027】
(構成)
まず、本実施の形態に係る感知器の構成について説明する。
図1は、本実施の形態に係る感知器の斜視図であり、
図2は、感知器の底面図であり、
図3は、感知器の側面図であり、
図4は、
図2のA―A矢視断面図である。なお、説明の便宜上、
図2では、
図1の誘導部22及びリブ23が省略されており、また、
図3及び
図4では、
図1のリブ23が省略されている。
【0028】
なお、以下の説明では、各図に示すX―Y―Zが互いに直交する方向であり、具体的には、Z方向が鉛直方向(つまり、重力が働く方向)であって、X方向及びY方向が鉛直方向に対して直交する水平方向(側方側)であるものとして、例えば、Z方向を高さ方向と称し、+Z方向を上側(平面)と称し、−Z方向を下側(底面)と称して説明する。また、以下の「X―Y―Z方向」に関する用語については、図示の感知器100において、各構成品の相対的な位置関係(又は、方向)等を説明するための便宜的な表現であることとし、
図4の遮光空間3の中心位置を基準として、遮光空間3から離れる方向を「外側」と称し、遮光空間3に近づく方向を「内側」と称して、以下説明する。以下では、感知器100全体の構成を説明した後に、特に特徴的な構成の詳細について説明する。
【0029】
これら各図に示す感知器100は、散乱光式感知器であって、気体に含まれている検出対象である煙を検出することにより、火災発生を監視して警報する警報手段であり、具体的には、
図4に示すように、監視領域の天井における下側(−Z方向)の面(つまり、下面)である設置面900に取り付けて用いるものであり、例えば、取付ベース1、外カバー2、遮光空間3、検煙部カバー4、防虫網5、及び回路基板6を備える。
【0030】
(構成‐取付ベース)
取付ベース1は、設置面900に対して、外カバー2を取り付けるための取付手段である。この取付ベース1の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、設置面900と対向する面である取付面11を備えているものであって、外カバー2と設置面900との間において、設置面900に対して公知の固定手段(例えば、ねじあるいは嵌合構造等)によって固定されているものであり、また、全体として円盤形状の樹脂製のものである。
【0031】
(構成‐外カバー)
次に、
図4の外カバー2は、感知器100の構成要素である遮光空間3、検煙部カバー4、防虫網5、及び回路基板6(以下、収容対象物)を覆うカバーであり、具体的には、取付ベース1を介して設置面900に取り付けられるものであり、例えば、全体として円盤形状の樹脂製のものである。この外カバー2の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、本体部21、誘導部22、及び
図1のリブ23を備えているものである。
【0032】
(構成‐外カバー‐本体部)
本体部21は、収容対象物を収容する収容手段であり、具体的には、高さ方向(Z方向)における上側(+Z方向)に設けられている円筒状部分と、この円筒状部分から下側(−Z方向)に向かうにつれて小径となっているテーパ状部分とによって形成されているものであり、例えば、外カバー側流入出開口211を備える。
【0033】
(構成‐外カバー‐本体部‐外カバー側流入出開口)
外カバー側流入出開口211は、煙を含む気体の遮光空間3に対する流入及び/又は流出を可能にする流入出開口であって、取付面11と略直交する方向(Z方向)を基準にして本体部21における取付面11の反対側(−Z方向)に向けて設けられているものである。この外カバー側流入出開口211の具体的な構成は任意であるが、例えば、
図2に示すように区分点21aの周囲に複数設けられているものである。ここで、区分点21aとは、遮光空間3に流入する気体と遮光空間3から流出する気体とを分ける点であり、具体的には、本体部21における下側(−Z方向)の一部であって、例えば、後述する検出点31の直下の本体部21と誘導部22とが相互に接続されている部分である。
【0034】
(構成‐外カバー‐誘導部)
図4の誘導部22は、取付面11と略直交する方向(Z方向)を基準にして本体部21を介して取付面11の反対側(−Z方向)に設けられている誘導部材であり、具体的には、全体としては、本体部21よりも小径のものであり、例えば、誘導部側傾斜部221を備える。
【0035】
(構成‐外カバー‐誘導部‐誘導部側傾斜部)
誘導部側傾斜部221は、気体が外カバー側流入出開口211を介して遮光空間3に流入するように当該気体を誘導する誘導手段であり、具体的には、誘導部22における本体部21側の少なくとも一部を、区分点21a側に向かうにつれて(つまり、XY平面に沿って外側から内側に向かうにつれて)取付面11に近付くように傾斜させることにより形成されるものである。
【0036】
(構成‐外カバー‐誘導部‐リブ)
図1のリブ23は、気体が外カバー側流入出開口211を介して遮光空間3に流入するように当該気体を誘導する誘導手段であり、具体的には、当該誘導手段としての機能と共に、本体部21に対して誘導部22を固定して補強する補強手段として機能するものである。このリブ23の具体的な構成は任意であるが、例えば、本体部21と誘導部22との間に設けられているものであり、また、
図2の複数の外カバー側流入出開口211を半径方向の2個の組み合わせ単位で相互に区画するように、区分点21aを基準に放射状に8個設けられているものである。
【0037】
(構成‐遮光空間)
次に、
図4の遮光空間3は、外部から遮光された遮光領域であり、具体的には、検煙部カバー4及び回路基板6によって囲まれている空間である。この遮光空間3の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、検出点31、及び発生空間32を備える空間である。
【0038】
(構成‐遮光空間‐検出点)
検出点31は、遮光空間3内の点であって、煙を検出する基準となる点であり、例えば、
図2に示す後述の第1発光側光軸611、第2発光側光軸621、及び受光側光軸631が相互に交わる位置であり、一例としては、水平方向(XY平面に平行な方向)において感知器100の中心付近となる位置である。
【0039】
(構成‐遮光空間‐発生空間)
発生空間32は、遮光空間3内の空間であって、煙が流入する検出空間であり、具体的には、検出点31を取り囲む空間であり、例えば、後述の第1発光部61又は第2発光部62から発光された検出光が照射される空間であって、受光部63にて受光される散乱光が発生し得る空間である。ここで、「検出光」とは、火災発生を判定するために煙を検出するための光であり、具体的には、散乱光の基となる光であり、例えば、第1発光部61又は第2発光部62から発光されて出力される光である。また、「散乱光」とは、火災発生を判定するために煙を検出するための光であり、具体的には、検出光が煙の粒子に照射されることにより散乱され、当該散乱によって生じる光であり、例えば、後述の受光部63にて受光される光である。
【0040】
(構成‐検煙部カバー)
次に、
図4の検煙部カバー4は、遮光空間3を区画する区画手段であり、具体的には、回路基板6と共に遮光空間3を取り囲むものであり、また、当該遮光空間3を形成する遮光領域形成部材である。なお、検煙部カバー4の詳細については後述する。
【0041】
(構成‐防虫網)
次に、
図4の防虫網5は、外カバー2の外部の虫が遮光空間3に侵入するのを防止する防虫手段であり、具体的には、外カバー2の外部から遮光空間3の内部に、防虫網5自身の小孔を介して気体が流入するのを許容する一方で、遮光空間3に虫が入ることを防止するものである。この防虫網5の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、平板状のものであり、また、検煙部カバー4とは別体として形成されているものであり、また、外カバー側流入出開口211全てを覆うように1つのみ設けられてものである。
【0042】
(構成‐回路基板)
次に、
図4の回路基板6は、感知器100の各素子が実装される実装手段であり、また、遮光空間3を区画する区画手段であり、具体的には、検煙部カバー4と共に遮光空間3を取り囲むものである。この回路基板6の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、外カバー2の内部に前述の任意の固定手段を用いて固定されるものであり、また、全体としてXY平面に沿ってひろがっている平板形状のものであり、また、吸収層600、
図2の第1発光部61、第2発光部62、及び受光部63を備えるものである。
【0043】
(構成‐回路基板‐吸収層)
吸収層600は、光を吸収する吸収手段であり、具体的には、遮光空間3の内部で検煙部カバー4によって反射された光を吸収するものであり、また、回路基板6における遮光空間3側に設けられている層である。この吸収層600の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、吸光率の高い公知の黒色の光吸収材料が塗布されている、あるいは、当該吸収材料にて形成されている層である。
【0044】
(構成‐回路基板‐第1発光部)
第1発光部61は、遮光空間3に流入した煙を検出する検出手段であり、具体的には、遮光空間3内の発生空間32に向けて第1発光側光軸611に沿って検出光を発光する第1発光手段であって、回路基板6に実装されているものであり、例えば、任意の発光部品(一例としては、青色発光ダイオード等)及び任意の光学部品(一例としては、プリズム等)を備えて構成されるものである。ここで、第1発光側光軸611は、第1発光部61からの検出光が出力される直進方向を示す軸であり、具体的には、少なくとも受光側光軸631と交わる軸であり、例えば、第1発光部61における検出光を出力する部分と検出点31とを結ぶ直線に対応するものであり、
図2にて仮想的に図示されている直線に対応するものである。
【0045】
(構成‐回路基板‐第2発光部)
第2発光部62は、遮光空間3に流入した煙を検出する検出手段であり、具体的には、遮光空間3内の発生空間32に向けて第2発光側光軸621に沿って検出光を発光する第2発光手段であって、回路基板6に実装されているものであり、例えば、第1発光部61からの検出光とは異なる波長の検出光を発光するように構成されているものであり、一例としては、任意の発光部品(一例としては、赤色発光ダイオード等)及び任意の光学部品(一例としては、プリズム等)を備えて構成されるものである。ここで、第2発光側光軸621は、第2発光部62からの検出光が出力される直進方向を示す軸であり、具体的には、少なくとも受光側光軸631と交わる軸であり、例えば、第2発光部62における検出光を出力する部分と検出点31とを結ぶ直線に対応するものであり、
図2にて仮想的に図示されている直線に対応するものである。
【0046】
(構成‐回路基板‐受光部)
受光部63は、遮光空間3に流入した煙を検出する検出手段であり、具体的には、第1発光部61又は第2発光部62から発光された検出光が遮光空間3の発生空間32に流入した煙により散乱されることで生じる前述の散乱光を、受光側光軸631に沿って受光する受光手段であって、回路基板6に実装されているものであり、例えば、任意の受光部品(一例としては、フォトダイオード等)及び任意の光学部品(一例としては、プリズム等)を備えて構成されるものである。ここで、受光側光軸631は、受光部63が散乱光を受光する方向を示す軸であって、例えば、検出点31にて第1発光側光軸611及び第2発光側光軸621と交わるものであって、受光部63における散乱光を受光する部分と検出点31とを結ぶ直線に対応するものであり、
図2にて仮想的に図示されている直線に対応するものである。そして、この受光側光軸631、第1発光側光軸611、及び第2発光側光軸621の向き及び配置については、少なくとも、受光側光軸631と第1発光側光軸611とが交わる点が遮光空間3の内部になり、且つ、受光側光軸631と第2発光側光軸621とが交わる点が遮光空間3の内部になる限りにおいて任意に設定され得るが、ここでは、例えば、これらの各光軸が相互に1つの点である検出点31にて交わり、且つ、各光軸がXY平面と平行な同一平面上に設けられるように設定されているものとして、以下説明する。また、この受光側光軸631、第1発光側光軸611、及び第2発光側光軸621によって定まる平面を、「光軸画定平面」と称して以下説明する。
【0047】
(構成‐詳細)
次に、検煙部カバー4の詳細について説明する。
【0048】
(構成‐詳細‐検煙部カバー)
図5は、取付面側から見た状態の検煙部カバーの斜視図であり、
図6は、取付面側とは反対側から見た状態の検煙部カバーの斜視図であり、
図7は、
図4の一部の拡大図である。これら各図の検煙部カバー4は、例えば、回路基板6に任意の固定手段(例えば、ネジ、接着剤、係合構造、あるいは、嵌合構造等)を用いて固定されるものであり、また、回路基板6の吸収層600を形成する吸収材料と同様な性質を有する公知の材料によって形成されるものであり、中空部を有する黒色の樹脂製のものであって、また、検煙部カバー側流入出開口41、部品収容部42、及び検煙部カバー側傾斜部43を備えるものである。
【0049】
(構成‐詳細‐検煙部カバー‐検煙部カバー側流入出開口)
図4の検煙部カバー側流入出開口41は、煙を含む気体の遮光空間3に対する流入及び/又は流出を可能にする流入出開口であり、具体的には、検煙部カバー4に設けられている開口であり、例えば、取付面11と略直交する方向(Z方向)を基準にして検煙部カバー4における取付面11の反対側(−Z方向)に向けて設けられている開口であり、1つのみ設けられている開口である。
【0050】
(構成‐詳細‐検煙部カバー‐部品収容部)
図5及び
図6の部品収容部42は、部品を収容する部品収容手段であり、具体的には、第1発光部61、第2発光部62、及び受光部63を各々収容する3つのものであり、例えば、部品収容部42の内部に連通する連通開口42aを介して
図4の回路基板6に実装されている第1発光部61、第2発光部62、及び受光部63を当該部品収容部42の内部に収容しているものである。
【0051】
(構成‐詳細‐検煙部カバー‐検煙部カバー側傾斜部)
図5〜
図7の検煙部カバー側傾斜部43は、第1発光部61及び第2発光部62から発光された検出光を、前述の光軸画定平面と交差する方向に一次反射する反射手段であり、具体的には、検煙部カバー4における少なくとも第1発光側光軸611及び第2発光側光軸621上の一部を傾斜させることにより形成されるものであり、例えば、検煙部カバー4の側壁に対応するものである。なお、「反射手段」とは、発光手段から発光された検出光を、発光側光軸及び受光側光軸によって定まる平面と交差する方向に一次反射するものであり、例えば本実施の形態では、第1発光部61からの検出光を第1発光側光軸611と受光側光軸631によって定まる平面(つまり、光軸画定平面)と交差する方向に一次反射するものであり、また、第2発光部62からの検出光を第2発光側光軸621と受光側光軸631によって定まる平面(つまり、光軸画定平面)と交差する方向に一次反射するものである。また、「光軸画定平面と交差する方向」とは、光軸画定平面に対して平行とならないあらゆる方向であり、例えば、光軸画定平面に対して所定角度(例えば、90度等)となる方向を含む概念である。また、「一次反射」とは、出力された光を最初に反射することであり、例えば、第1発光部61からの検出光であって、遮光空間3の内部で未だ反射されていない当該検出光を最初に反射すること、あるいは、第2発光部62からの検出光であって、遮光空間3の内部で未だ反射されていない当該検出光を最初に反射すること、等を含む概念である。
【0052】
そして、この検煙部カバー側傾斜部43の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、第1発光部61及び第2発光部62から発光された検出光が遮光空間3内で散乱されることなく反射されて、当該反射された検出光が受光部63にて受光されることにより、感知器100による煙の検出に対して与えられる悪影響の度合いを低減するために、以下のように構成される。具体的には、検煙部カバー側傾斜部43の構成は、第1発光部61及び第2発光部62から発光された検出光を、光軸画定平面と交差する方向に一次反射する限りにおいて任意であるが、例えば、第1発光部61及び第2発光部62から発光された検出光を相互に同一の方向に一次反射し、詳細には、第1発光部61及び第2発光部62から発光された検出光を、
図4の取付面11側である上側(+Z方向)に一次反射し、また、第1発光部61及び第2発光部62から発光された検出光を、回路基板6の吸収層600に一次反射し、また、検煙部カバー側傾斜部43にて反射された第1発光部61からの検出光が、当該一次反射の後に、遮光空間3内で1回反射されて検煙部カバー側傾斜部43に戻った場合に、当該戻った検出光を第1発光部61側に反射し、また、検煙部カバー側傾斜部43にて反射された第2発光部62からの検出光が、当該一次反射の後に、遮光空間3内で1回反射されて検煙部カバー側傾斜部43に戻った場合に、当該戻った検出光を第2発光部62側に反射するように構成されているものとして、以下説明する。
【0053】
検煙部カバー側傾斜部43は、全体として傾斜しており、例えば、
図7に示すように、第1発光側光軸611と検煙部カバー側傾斜部43とによって形成される鋭角ADが45度になり、且つ、第2発光側光軸621と検煙部カバー側傾斜部43とによって形成される不図示の鋭角が45度になるように傾斜している。なお、受光側光軸633と検煙部カバー側傾斜部43とよって形成される不図示の鋭角の角度については、任意に設定することができるが、ここでは、例えば、感知器100による煙の検出に対して与えられる悪影響の度合いを確実に低減するために、当該鋭角についても45度となるように、検煙部カバー側傾斜部43が傾斜していることとする。
【0054】
(気流)
次に、このように構成された、感知器100における気流について説明する。
図8は、
図4において気流を白抜き矢印にて例示した図である。なお、感知器100は、火災発生により発生した煙を含む気体が、あらゆる方向から移動してきた場合において、当該気体を遮光空間3に取り込んで検出し、迅速且つ確実に火災発生の判定を行うことができるが、ここでは、
図8を参照して、例えば、火災による煙を含む気体が、図面左側から感知器100に向かって移動する場合の気流の例について説明する。
【0055】
まず、
図8の白抜き矢印が示すように感知器100に向かって移動する気体は、外カバー側流入出開口211、防虫網5、及び検煙部カバー側流入出開口41を介してして遮光空間3の内部に流入する。この後、当該気体は、検煙部カバー側流入出開口41、防虫網5、及び外カバー側流入出開口211を介して遮光空間3の外部に流出することになる。
【0056】
(火災の判定)
次に、このように構成された、感知器100における火災の判定について説明する。
図9は、
図7において検出光の進路を矢印にて例示した図である。なお、感知器100は、第1発光部61又は第2発光部62のうちの少なくとも一方から検出光を発光して、公知の手法にて従来と同様にして煙を検出することにより、火災を判定するが、第1発光部61及び第2発光部62からの各検出光の進路については、相互に同様であるので、ここでは、第1発光部61からの検出光を用いて煙を検出する場合を例示して説明する。
【0057】
まず、
図9の矢印が示すように第1発光部61は、第1発光側光軸611に沿って検出光を出力する。この検出光は、発生空間32を通過して検煙部カバー側傾斜部43に照射され、当該検煙部カバー側傾斜部43にて上側(+Z方向)に一次反射されて回路基板6の吸収層600に照射される。なお、ここでは、検煙部カバー側傾斜部43が前述のように構成されているので、一次反射された検出光は回路基板6の吸収層600に対して90度となる状態で照射される。そして、この検出光の少なくとも一部は、吸収層600にて吸収されて、吸収層600に照射された検出光のうちの吸収層600にて吸収されたもの以外が、当該吸収層600にて反射されて吸収層600に対して90度となった状態で反射されて、検煙部カバー側傾斜部43に照射される。次に、この検煙部カバー側傾斜部43に照射された検出光は、検煙部カバー側傾斜部43にて反射されて、発生空間32を通過して第1発光部61側に戻ることなる。
【0058】
そして、例えば、
図8を参照して説明した気流によって、発生空間32に煙が流入した場合には、当該発生空間32にて散乱光が発生して当該散乱光が
図2の受光部63にて受光されることになり、感知器100は、当該散乱光の受光量により煙を検出して火災を判定する。特に、
図9の矢印を参照して説明したように、第1発光部61からの検出光は、遮光空間3内で散乱されることなく反射されて、受光部63にて受光されることが防止されているので、感知器100は、煙を正確に検出して火災を確実に判定することが可能となる。
【0059】
(実施の形態の効果)
このように本実施の形態によれば、第1発光部61及び第2発光部62から発光された検出光を、第1発光側光軸611、第2発光側光軸621、及び受光側光軸631によって定まる平面と交差する方向に一次反射することにより、例えば、第1発光部61及び第2発光部62からの検出光が遮光空間3内で1回のみ反射した後に受光部63に直接的に入射するのを防止することができるので、検出光による火災の判定への悪影響の度合いを低減することが可能となる。
【0060】
また、遮光空間3を形成する検煙部カバー4における少なくとも第1発光側光軸611及び第2発光側光軸621の一部を傾斜させることにより反射手段が形成されることにより、例えば、検煙部カバー4を発光手段としても用いることができるので、反射手段を構成するための専用部品が不要となり、感知器100の部品点数を削減することができ、感知器100の軽量化及び低コスト化を図ることが可能となる。
【0061】
また、反射手段である検煙部カバー側傾斜部43にて一次反射された検出光が、当該一次反射の後に、遮光空間3内で1回反射されて検煙部カバー側傾斜部43に戻った場合に、当該戻った検出光を第1発光部61及び第2発光部62側に反射することにより、例えば、検煙部カバー側傾斜部43に戻った検出光が受光部63に入射するのを防止することができるので、検出光による火災の判定への悪影響の度合いを一層低減することが可能となる。また、例えば、検出対象である煙が発生空間32に存在する場合に、検煙部カバー側傾斜部43にて一次反射する前の検出光に加えて一次反射の後に戻る検出光も発生空間32を通過させることができるので、発生空間32の光量を増加させることができ、比較的高感度な散乱光式感知器を提供することが可能となる。
【0062】
また、第1発光部61及び第2発光部62から発光された検出光を吸収層600に一次反射することにより、例えば、検出光を吸収層600にて吸収することができるので、一次反射した後の検出光の強度を弱めることができ、検出光による火災の判定への悪影響の度合いをより一層低減することが可能となる。
【0063】
また、第1発光部61及び第2発光部62から発光された検出光を取付面11側に一次反射することにより、例えば、一般的に塵埃が堆積し易い側である下側(−Z方向)とは反対の上側(+Z方向)に向かって検出光を一次反射することができるので、検出光の塵埃による反射によって当該検出光が受光部63に入射するのを防止することができ、検出光による火災の判定への悪影響の度合いを更に一層低減することが可能となる。
【0064】
また、検出対象が煙であることにより、例えば、煙を検出することができるので、当該煙の検出により火災を確実に判定することが可能となる。
【0065】
〔実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0066】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、上述の内容に限定されるものではなく、発明の実施環境や構成の詳細に応じて異なる可能性があり、上述した課題の一部のみを解決したり、上述した効果の一部のみを奏したりすることがある。
【0067】
(分散や統合について)
また、上述した構成は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、任意の単位で機能的または物理的に分散又は統合して構成できる。例えば、上述の各特徴のうちの任意のものを従来のものに置き換えてもよい。例えば、第1発光部61又は第2発光部62のうちの一方を省略して発光部を1個用いる構成にしたり、あるいは、これらの発光部に加えて他の発光部を設けて発光部を3個以上用いる構成にしたりしてもよい。
【0068】
(反射手段について(その1))
また、上記実施の形態では、検煙部カバー4の検煙部カバー側傾斜部43を用いて反射手段を構成する場合について説明したが、これに限らない。例えば、検煙部カバー4とは別体の反射部材を遮光空間3に設けて当該反射部材にて反射手段を構成してもよい。この場合、例えば、発生空間32を基準にして第1発光部61の反対側の反対側、及び発生空間32を基準にして第2発光部62の反対側に、反射部材を設けてもよい。
【0069】
この場合の反射部材については、任意に構成してよいが、例えば、実施の形態で説明したように、検出光が上側(+Z方向)に反射されるように構成したり、あるいは、当該反射部材にて一次反射された検出光が、当該一次反射の後に、遮光空間3内で1回反射されて反射部材に戻った場合に、当該戻った検出光が反射部材にて発光手段(つまり、第1発光部61及び第2発光部62)側に反射されるように構成したりしてもよい。また、例えば、実施の形態で説明した場合とは異なり、検出光が下側(−Z方向)に反射されるように構成したり、あるいは、当該反射部材にて一次反射された検出光が、当該一次反射の後に、遮光空間3内で1回反射されて反射部材に戻った場合に、当該戻った検出光が反射部材にて発光手段側以外の方向(受光部63側を除く)に反射されるように構成したりしてもよい。検煙部カバー側傾斜部43も、この反射部材と同様な機能を発揮するように構成してもよい。
【0070】
(反射手段について(その2))
また、上記実施の形態では、第1発光側光軸611、第2発光側光軸621、及び受光側光軸631が相互に同一平面上に設けられる場合について説明したが、これに限らず各光軸が同一平面上に設けられない場合については、以下のように構成してもよい。具体的には、2つの相互に交わる直線によって平面が定まるという概念に着目して、反射手段が、第1発光側光軸611と受光側光軸631とによって定まる平面と交差する方向に第1発光部61からの検出光を一次反射し、また、第2発光側光軸621と受光側光軸631とによって定まる平面と交差する方向に第2発光部62からの検出光を一次反射するように、つまり、第1発光部61からの検出光と第2発光部62からの検出光とを、相互に異なる方向に一次反射するように構成してもよい。
【0071】
(感知器の設置について)
また、感知器100を設置対象物である壁における側方側の設置面である監視領域側の面(つまり、壁の室内側面)に取り付けてもよい。この場合、第1発光部61及び第2発光部62から発光された検出光を取付面11側(つまり、XY平面に平行な方向)に一次反射することにより、例えば、一般的に塵埃が堆積し易い側である下側(−Z方向)とは異なる側方側に向かって検出光を一次反射することができるので、検出光の塵埃による反射によって当該検出光が受光部63に入射するのを防止することができ、検出光による火災の判定への悪影響の度合いを更に一層低減することが可能となる。また、検煙部カバー側傾斜部43の形状を変更することにより、第1発光部61及び第2発光部62から発光された検出光を取付面11側とは反対側に一次反射させてもよい。このように構成した場合も、一般的に塵埃が堆積し易い側である下側(−Z方向)とは異なる側方側に向かって検出光を一次反射することができる。また、検煙部カバー側傾斜部43の形状を変更することにより、第1発光部61の検出光と第2発光部62の検出光を相互に逆方向に一次反射させてもよい。
【0072】
(付記)
付記1の散乱光式感知器は、外部から遮光された遮光領域内に設けられ、検出対象が流入する検出空間と、前記検出空間に向けて発光側光軸に沿って検出光を発光する発光手段と、前記発光手段から発光された前記検出光が前記検出空間に流入した前記検出対象により散乱されることで生じる散乱光を、受光側光軸であって前記発光側光軸と交わる前記受光側光軸に沿って受光する受光手段と、前記発光手段から発光された前記検出光を、前記発光側光軸及び前記受光側光軸によって定まる平面と交差する方向に一次反射する反射手段と、を備える。
【0073】
付記2の散乱光式感知器は、付記1に記載の散乱光式感知器において、前記反射手段は、前記遮光領域を形成する遮光領域形成部材における少なくとも前記発光側光軸上の一部を傾斜させることにより形成される。
【0074】
付記3の散乱光式感知器は、付記1又は2に記載の散乱光式感知器において、前記反射手段は、当該反射手段にて一次反射された前記検出光が、当該一次反射の後に、前記遮光領域内で1回反射されて前記反射手段に戻った場合に、当該戻った前記検出光を前記発光手段側に反射する。
【0075】
付記4の散乱光式感知器は、付記1から3の何れか一項に記載の散乱光式感知器において、前記遮光領域の少なくとも一部は回路基板によって囲まれており、前記回路基板は、光を吸収する吸収層、を備え、前記反射手段は、前記発光手段から発光された前記検出光を、前記吸収層に一次反射する。
【0076】
付記5の散乱光式感知器は、付記1から4の何れか一項に記載の散乱光式感知器において、前記散乱光式感知器は、設置対象物の下側の設置面に取り付けられ、前記散乱光式感知器は、前記設置面と対向する取付面、を備えており、前記反射手段は、前記発光手段から発光された前記検出光を、前記取付面側に一次反射する。
【0077】
付記6の散乱光式感知器は、付記1から4の何れか一項に記載の散乱光式感知器において、前記散乱光式感知器は、設置対象物の側方側の設置面に取り付けられ、前記散乱光式感知器は、前記設置面と対向する取付面、を備えており、前記反射手段は、前記発光手段から発光された前記検出光を、前記取付面側又は当該取付面側とは反対側に一次反射する。
【0078】
付記7の散乱光式感知器は、付記1から6の何れか一項に記載の散乱光式感知器において、前記検出対象は、煙である。
【0079】
(付記の効果)
付記1に記載の散乱光式感知器によれば、発光手段から発光された検出光を、発光側光軸及び受光側光軸によって定まる平面と交差する方向に一次反射することにより、例えば、発光手段からの検出光が遮光領域内で1回のみ反射した後に受光手段に直接的に入射するのを防止することができるので、検出光による火災の判定への悪影響の度合いを低減することが可能となる。
【0080】
付記2に記載の散乱光式感知器によれば、遮光領域を形成する遮光領域形成部材における少なくとも発光側光軸上の一部を傾斜させることにより反射手段が形成されることにより、例えば、遮光領域形成部材を反射手段としても用いることができるので、反射手段を構成するための専用部品が不要となり、散乱光式感知器の部品点数を削減することができ、散乱光感知器の軽量化及び低コスト化を図ることが可能となる。
【0081】
付記3に記載の散乱光式感知器によれば、反射手段にて一次反射された検出光が、当該一次反射の後に、遮光領域内で1回反射されて反射手段に戻った場合に、当該戻った検出光を発光手段側に反射することにより、例えば、反射手段に戻った検出光が受光手段に入射するのを防止することができるので、検出光による火災の判定への悪影響の度合いを一層低減することが可能となる。また、例えば、検出対象が検出空間に存在する場合に、反射手段にて一次反射する前の検出光に加えて一次反射の後に戻る検出光も検出空間を通過させることができるので、検出空間の光量を増加させることができ、比較的高感度な散乱光式感知器を提供することが可能となる。
【0082】
付記4に記載の散乱光式感知器によれば、発光手段から発光された検出光を吸収層に一次反射することにより、例えば、検出光を吸収層にて吸収することができるので、一次反射した後の検出光の強度を弱めることができ、検出光による火災の判定への悪影響の度合いをより一層低減することが可能となる。
【0083】
付記5に記載の散乱光式感知器によれば、発光手段から発光された検出光を取付面側に一次反射することにより、例えば、一般的に塵埃が堆積し易い側である下側とは反対の上側に向かって検出光を一次反射することができるので、検出光の塵埃による反射によって当該検出光が受光手段に入射するのを防止することができ、検出光による火災の判定への悪影響の度合いを更に一層低減することが可能となる。
【0084】
付記6に記載の散乱光式感知器によれば、発光手段から発光された検出光を取付面側又は当該取付面側とは反対側に一次反射することにより、例えば、一般的に塵埃が堆積し易い側である下側とは異なる側方側に向かって検出光を一次反射することができるので、検出光の塵埃による反射によって当該検出光が受光手段に入射するのを防止することができ、検出光による火災の判定への悪影響の度合いを更に一層低減することが可能となる。
【0085】
付記7に記載の散乱光式感知器によれば、検出対象が煙であることにより、例えば、煙を検出することができるので、当該煙の検出により火災を確実に判定することが可能となる。