特許第6957346号(P6957346)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6957346炭酸塩化可能なケイ酸カルシウム組成物及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6957346
(24)【登録日】2021年10月8日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】炭酸塩化可能なケイ酸カルシウム組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20211021BHJP
   C04B 40/02 20060101ALI20211021BHJP
   C01F 11/18 20060101ALI20211021BHJP
【FI】
   C04B28/02ZAB
   C04B40/02
   C01F11/18 B
【請求項の数】19
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2017-506781(P2017-506781)
(86)(22)【出願日】2015年8月3日
(65)【公表番号】特表2017-527516(P2017-527516A)
(43)【公表日】2017年9月21日
(86)【国際出願番号】US2015043452
(87)【国際公開番号】WO2016022485
(87)【国際公開日】20160211
【審査請求日】2018年8月2日
(31)【優先権主張番号】62/032,862
(32)【優先日】2014年8月4日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515252684
【氏名又は名称】ソリディア テクノロジーズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SOLIDIA TECHNOLOGIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】ヴァヒット アタカン
(72)【発明者】
【氏名】ショーン クイン
(72)【発明者】
【氏名】サダナンダ サフー
(72)【発明者】
【氏名】ディーパク ラヴィクマール
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス デクリストファロ
【審査官】 西垣 歩美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−213559(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/133120(WO,A2)
【文献】 特開2001−302295(JP,A)
【文献】 特開2011−168436(JP,A)
【文献】 特表2014−516023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00−32/02
C04B 40/00−40/06
C01F 1/00−17/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CS(珪灰石又は疑似珪灰石)相、C3S2(ランキナイト)相、C2S(ビーライト、ラルナイト、ブリジガイト)相から選択される1つ以上の個別の結晶性ケイ酸カルシウム相の状態であるケイ酸カルシウムと、
非晶質ケイ酸カルシウム相の状態であるケイ酸カルシウムと、を含む組成物であって、
前記1つ以上の個別の結晶性ケイ酸カルシウム相は、全ての相の30質量%以上で存在し、
元素Ca及び元素Siが、前記組成物内に0.8〜1.2のモル比で存在し、且つ、Al、Fe及びMgの金属酸化物が、前記組成物内に30質量%以下存在し、
それぞれのケイ酸カルシウム相が、COにより炭酸塩化するのに適しており、前記組成物は、30℃〜90℃の温度でCOにより炭酸塩化し、10%の質量増加を伴ってCaCOを形成するのに適する、組成物。
【請求項2】
残留SiO相及び残留CaO相を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
一般組成式(Ca, Na, K)[(Mg, Fe2+, Fe3+, Al, Si)3O7]を有する1つ若しくはそれ以上のメリライト型の相、又は、一般組成式Ca(Al, Fe3+)O5を有するフェライト型の相を有する、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
不純物元素のAl、Fe及びMg又は他の微量不純物が、いずれかの結晶ケイ酸カルシウム内に置換によって存在するか、又は、非晶質ケイ酸カルシウム相内に取り込まれる、請求項1〜3のうちいずれか一項記載の組成物。
【請求項5】
元素Siに対する元素Caのモル比は、0.90〜1.10である、請求項1〜4のうちいずれか一項記載の組成物。
【請求項6】
元素Siに対する元素Caのモル比は、0.95〜1.05である、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
元素Siに対する元素Caのモル比は、0.98〜1.02である、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
全酸化物質量のうち、Al、Fe及びMgの金属酸化物を25質量%以下含む、請求項4〜7のうちいずれか一項記載の組成物。
【請求項9】
全酸化物質量のうち、Al、Fe及びMgの金属酸化物を15質量%以下含む、請求項8記載の組成物。
【請求項10】
全酸化物質量のうち、Al、Fe及びMgの金属酸化物を10質量%以下含む、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
全酸化物質量のうち、Al、Fe及びMgの金属酸化物を5質量%以下含む、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
反応相が30質量%以上存在する、請求項1〜11のうちいずれか一項記載の組成物。
【請求項13】
反応相が50質量%以上存在する、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
反応相が70質量%以上存在する、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
反応相が90質量%以上存在する、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
CSが10重量%〜60重量%、C3S2が5重量%〜50重量%、C2Sが5重量%〜60重量%、及び、Cが0重量%〜3重量%存在する、請求項1〜15のうちいずれか一項記載の組成物。
【請求項17】
CSが20重量%〜60重量%、C3S2が10重量%〜50重量%、C2Sが10重量%〜50重量%、及びCが0重量%〜3重量%存在する、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物は、30℃〜90℃の温度でCOにより炭酸塩化し、20%の質量増加を伴ってCaCOを形成するのに適する、請求項1〜17のうちいずれか一項記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物は、30℃〜90℃の温度でCOにより炭酸塩化し、25%の質量増加を伴ってCaCOを形成するのに適する、請求項18記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権及び関連特許出願
本件出願は2014年8月4日出願の米国仮出願第62/032,862号(その内容全体は参照により本明細書に組み入れられるものとする)の優先権の恩恵を主張する。
【0002】
本発明は、概してケイ酸カルシウムの組成物に関する。より具体的には、新規な炭酸塩化可能なケイ酸カルシウムの組成物及び相、並びにそれらの製造及び使用のための方法に関する。ケイ酸カルシウムの組成物及び相は、炭酸塩化プロセスによって養生させる非水硬性セメントとしての使用に適する。それらは、インフラ、構造物、舗装道路及び造園産業における様々なコンクリート製コンポーネントに適用することができる。
【背景技術】
【0003】
コンクリートは世界中で最も消費される人工材料である。一般的なコンクリートは、ポートランドセメント、水、並びに砂及び砕石のような骨材を混合することによって形成される。ポートランドセメントは、地上の石灰石及び粘土の混合物、又は類似組成の材料を回転キルン内で1450℃の焼結温度で燃焼させることによって形成した合成材料である。ポートランドセメント製造は、単にエネルギー集約型のプロセスであるだけでなく、温室効果ガス(CO)を大量に放出する。セメント産業は、地球的規模の人為的CO放出のほぼ5%を占める。このCOのうち60%よりも大きい割合は、石灰石の化学分解又は焼成に由来する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セメント産業での全CO放出量を減少する努力が増えてきている。国際エネルギー機関の提案によれば、2007年の2.0Gtから2050年までに2007年の2.0Gtから1.55GtにCO放出量を減少する必要があるとしている。このことは困難な課題を提示するものであり、なぜなら、これと同一期間で、セメント生産は2.6Gtから4.4Gtに増えることが予想されるからである。
【0005】
この厄介な難題に対処するため、セメント工場におけるエネルギー消費量及びCO放出量を大幅に減少するセメント生産の革新的な手法が必要である。理想的には、この新しい手法は、COを恒久的かつ安全に隔離する能力を提供するとともに、機器及び生産要件に適合しかつ融通性があり、従来のセメント生産を新規なプラットフォームに容易に転換できるようにするのが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のケイ酸カルシウム組成物は、エネルギー消費量及びCO放出量を大幅に減少するセメント生産の革新的な手法の基礎を提供する。本発明ケイ酸カルシウム組成物は、広範囲に市販されており低コストの原材料から大量生産に適したプロセスによって形成される。本発明方法は、機器及び生産要件に融通性があり、また普通のセメント製造設備に容易に適合可能である。本発明の新規な手法は、COを恒久的及び安全に隔離する並外れた能力を提供する。
【0007】
これらケイ酸カルシウム組成物は、構造物、舗装道路及び造園、並びにインフラのような様々な用途に、減少した機器要求量、改善したエネルギー消費量、より望ましい二酸化炭素排出量で使用することができる。
【0008】
一態様において、本発明は、概してケイ酸カルシウム組成物及びそれらの化学的性質に関する。本発明組成物は様々なケイ酸カルシウムを含む。本発明組成物内における元素Ca対元素Siのモル比は前記約0.8〜約1.2である。本発明組成物は、さらに、Al、Fe及びMgの金属酸化物を酸化物全体の質量に対して約30質量%以下含むことができる。ケイ酸カルシウム組成物は、CS(珪灰石又は疑似珪灰石)相、C3S2(ランキナイト)相、C2S(ビーライト、又はラルナイト、又はブリジガイト)相、及びすべての相のうち約30質量%以上あるケイ酸カルシウムをベースとした非晶質相から選択される1つ又はそれ以上の個別ケイ酸カルシウム相のブレンドを備える。非晶質相は、付加的にAl、Fe及びMgのイオン及び原材料に存在する他の微量イオンを取り込むことができる。これらケイ酸カルシウム相それぞれは、COで炭酸塩化するのに適する。
【0009】
ケイ酸カルシウム組成物は、さらに、僅かな量の残留CaO(石灰)及び残留SiO(シリカ)を含むことができる。
【0010】
ケイ酸カルシウム組成物は、さらに、僅かな量のC3S(エーライト、CaSiO)を含むことができる。
【0011】
C2S相は、(CaMg(SiO))(ブリジガイト)又はα-CaSiO、β-CaSiO、若しくはγ-CaSiOの任意な多形体又はそれらの組合せとして存在することができる。
【0012】
ケイ酸カルシウム組成物は、さらに、或る量の不活性相(すなわち、一般的な炭酸塩化条件のもとでは炭酸塩化しない)、例えば、一般組成式(Ca, Na, K)[(Mg, Fe2+, Fe3+, Al, Si)3O7]を有するメリライト型無機物(メリライト又はゲーレナイト又はオケルマナイト)、及び一般組成式Ca(Al, Fe3+)O5を有するフェライト型無機物(フェライト又はブラウンミラライト又はC4AF)を含むことができる。
【0013】
本発明ケイ酸カルシウム組成物は、約30℃〜約90℃の温度でCOにより炭酸塩化し、約10%の質量増加を伴ってCaCOを形成するのに適する。
【0014】
他の態様において、本発明は、約8μm〜約25μmの平均粒径(d50)を有する粉末形態の炭酸塩化可能なケイ酸カルシウムの組成物であって、粒子の10%(d10)が約0.1μm〜約3μm未満の粒径、粒子の90%(d90)が約35μm〜約100μmより大きい粒径である、炭酸塩化可能なケイ酸カルシウム組成物に関する。
【0015】
さらに他の態様において、本発明は、概して、本明細書に記載のケイ酸カルシウム組成物から生産される炭酸を含む材料に関する。
【0016】
本発明の目的及び特徴は、以下に図面につき説明する記載、及び特許請求の範囲からよりよく理解できるであろう。図面は、必ずしも縮尺どおりではなく、本発明の原理を示す際に誇張して示す。図面において、同一参照符号は全体を通して同一部分を示すのに使用する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】CaCO+SiO⇔CaSiO(ケイ酸カルシウム)+COの可逆反応で存在する相を示す圧力−温度状態図である。
図2】3CaCO+2CaSiO⇔2CaSiO・CaCO+COの可逆反応で存在する相を示す圧力−温度状態図である。
図3】圧力100MPa(1キロバール)におけるCaO−SiO−CO系の状態図である。
図4】MgO+CO⇔MgCOの可逆反応で存在する状態を示す圧力−温度状態図である。
図5】MgO+CO⇔MgCOの可逆反応に対する平衡曲線を、不活性ガス内におけるCOの割合の関数として示す圧力−温度状態図である。
図6】CaCO−MgCO系における種々の相に対する安定領域を示す圧力−温度状態図である。
図7】化合物CaO,MgO,SiO2及びCO間の相関係を示す四面体状態図であり、Cc−Di−Wo平面及びCc−Wo−Mo平面(斜線付き)より下側のCO不足領域を示し、Ccは方解石、Woは珪灰石、Akはオケルマナイト、Diは透輝石、及びMoはモンティセライト(CaMgSiO)を示す。
図8】化合物CaO,MgO,SiO及びCO間の相関係を、方解石(Cc)、透輝石(Di)、フォルステライト(Fo)、モンティセライト(Mo)、オケルマナイト(Ak)、及びCOの相を含む四つ一組の不動点から広がるユニバリアント(一変量)曲線とともに示す圧力−温度状態図である。差込図は、CaCO,MgO及びSiOの3化合物系の状態図である。
図9】本発明原理に従って加湿を行うCO複合材料養生チャンバの概略図である。
図10】複数の湿度制御方法、並びに本発明原理に従って温度制御できる一定フロー又は圧力調節を用いてCO制御及び補充する能力を有し、また本発明の原理に従って温度を制御できる養生チャンバの概略図である。
図11】NYAD400鉱物珪灰石の60℃でCOとの反応後における質量増加の代表的結果を示す。
図12】幾つかの回転キルンのサンプル材料の、COとの60℃反応後における質量増加の代表的結果を示す。0時間での質量増加は、粉末を湿らせた後の、遊離石灰の水和反応に起因する質量増加を示す。
図13a】セメントサンプル12に関するリートベルト精密化に使用されるX線回折データ及び結晶学的ピークの代表的結果を示す。
図13b】20時間60℃炭酸塩化後のセメントサンプル12に関するリートベルト精密化に使用されるX線回折データ及び結晶学的ピークの代表的結果を示す。
図14】箱形炉内で高純度化学物質から生成したケイ酸カルシウム相におけるX線回折パターン及び関連した結晶学的ピークの代表的結果を示す。
図15a】1000℃焼成のケイ酸石灰石におけるX線回折パターンの代表的結果を示す。
図15b】1100℃焼成のケイ酸石灰石におけるX線回折パターンの代表的結果を示す。
図15c】1200℃焼成のケイ酸石灰石におけるX線回折パターンの代表的結果を示す。
図16】合成高温珪灰石セメントの代表的結果を示す。そのX線回折パターンは材料が主にアモルファス(非晶質)構造であることを示す。
図17】合成珪灰石ガラス(下側)及び60℃のCO養生後における同一サンプル(上側)のX線回折スペクトルの代表的結果を示す。
図18】ジェットミル粉砕した代表的セメント組成物(SC−C2)の粒径分布を示す。
図19】ジェットミル粉砕+ボールミル粉砕した代表的セメント組成物(SC−C2a)の粒径分布を示す。
図20】水対結合材の比を0.375としたSC−C2モルタル及びCS−C2aモルタルの流動の代表的データであり、(a)はSC−C2及び(b)はSC−C2a
図21】SC−C2(上側)及びSC−C2a(下側)で形成したコンクリート混合物の異なる条件下での4″×8″シリンダの圧縮強度を示す。(乾燥及び24時間浸漬は、5つのサンプルそれぞれの平均であり、真空飽和試験は3個のシリンダで行った。)
図22】閉回路ボールミル内で生成したミル粉砕クリンカーセメントが比較的狭い粒径分布にあることを示す。
図23】市販のミル粉砕した粉末よりも減少した平均粒径となる広範囲の粒径を得るようミル粉砕したクリンカーを示す。
図24】市販のミル粉砕した粉末よりも増加した平均粒径となる広範囲の粒径を得るようミル粉砕したクリンカーを示す。
図25】より粗い粒径及びより細かい粒径となるようミル粉砕した同様の広範囲分布と比較した工業的ミル粉砕セメント(青色)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、従来のセメントに革新的に取って代わる新規な炭酸塩化可能なケイ酸カルシウム組成物を提供する。これら材料は、エネルギー要求量及びCO放出を大幅に減少して生産及び利用できる。本発明による炭酸塩化可能なケイ酸カルシウム組成物は、広範囲に市販されており低コストの原材料から、設備及び生産要件に融通性があって大量生産に適したプロセスによって形成される。この独特な手法は、さらに、COを恒久的及び安全に隔離する著しい能力を伴う。広範囲の様々な用途が、構造物、舗装道路及び造園から、インフラ及び輸送機関にいたるまで、減少した機器要求量、改善したエネルギー消費量、より望ましい二酸化炭素排出量で、本発明から恩恵を受けることができる。
【0019】
一態様において、本発明は、概して、ケイ酸カルシウム組成物及びその化学的要素に関する。組成物は種々のケイ酸カルシウムを含む。組成物における元素Ca対元素Siのモル比は、約0.8〜約1.2である。組成物は、CS(珪灰石又は疑似珪灰石)、C3S2(ランキナイト)、及びC2S(ビーライト又はブリジガイト)のうち1つ又は複数から選択した個別の結晶ケイ酸カルシウム相の混合物から成り、相の総質量が約30%以上となる。このケイ酸カルシウム組成物は、総酸化物質量がAl、Fe及びMgの金属酸化物の約30以下となり、また約30℃〜約90℃の温度でのCOによる炭酸塩化に適し、約10%以上の質量増加でCaCOを形成することによって特徴付けられる。
【0020】
ケイ酸カルシウム組成物は、アモルファス(非晶質)ケイ酸カルシウム相を上述の結晶相の他に含むことができる。非晶相は、原材料内に存在する付加的にAl、Fe及びMgのイオン及び原材料内に存在する不純物イオンを取り込むことができる。
【0021】
これらケイ酸カルシウムの結晶相及び非晶相それぞれは、COによる炭酸塩化に適している。
【0022】
ケイ酸カルシウム組成物は、さらに、僅かな量の残留CaO(石灰)及びSiO(シリカ)を含むことができる。
【0023】
ケイ酸カルシウム組成物は、さらに、僅かな量のC3S(エーライト、CaSiO)を含むことができる。
【0024】
ケイ酸カルシウム組成物内に存在するC2S相は、α-CaSiO、β-CaSiO、若しくはγ-CaSiOの任意な多形体又はそれらの組合せとして存在することができる。
【0025】
ケイ酸カルシウム組成物は、さらに、或る量の不活性相、例えば、一般組成式(Ca, Na, K)[(Mg, Fe2+, Fe3+, Al, Si)3O7]を有するメリライト型無機物(メリライト又はゲーレナイト又はオケルマナイト)、及び一般組成式Ca(Al, Fe3+)O5を有するフェライト型無機物(フェライト又はブラウンミラライト又はC4AF)を含むことができる。若干の実施形態において、ケイ酸カルシウム組成物は非晶相のみを有する。若干の実施形態において、ケイ酸カルシウム組成物は結晶相のみを有する。若干の実施形態において、ケイ酸カルシウム組成物のうち幾つかは非晶相で存在し、幾つかは結晶相で存在する。
【0026】
若干の好適な実施形態において、ケイ酸カルシウム組成物における元素Ca対元素Siのモル比は約0.80〜約1.20である。若干の好適な実施形態において、組成物におけるCa対Siのモル比は約0.85〜約1.15である。若干の好適な実施形態において、組成物におけるCa対Siのモル比は約0.90〜約1.10である。若干の好適な実施形態において、組成物におけるCa対Siのモル比は約0.95〜約1.05である。若干の好適な実施形態において、組成物におけるCa対Siのモル比は約0.98〜約1.02である。若干の好適な実施形態において、組成物におけるCa対Siのモル比は約0.99〜約1.01である。
【0027】
ケイ酸カルシウム組成物に含まれるAl,Fe及びMgの金属酸化物は、概して約30%未満に制御する。若干の好適な実施形態において、組成物は総酸化物質量に対してAl,Fe及びMgの金属酸化物を約20質量%以下有する。若干の好適な実施形態において、組成物は総酸化物質量に対してAl,Fe及びMgの金属酸化物を約15質量%以下有する。若干の好適な実施形態において、組成物は総酸化物質量に対してAl,Fe及びMgの金属酸化物を約12質量%以下有する。若干の好適な実施形態において、組成物は総酸化物質量に対してAl,Fe及びMgの金属酸化物を約10質量%以下有する。若干の好適な実施形態において、組成物は総酸化物質量に対してAl,Fe及びMgの金属酸化物を約5質量%以下有する。
【0028】
これらケイ酸カルシウム相それぞれは、COによる炭酸塩化に適する。以下に炭酸塩化に適する個別のケイ酸カルシウム相を反応相(reactive phase)と称する。
【0029】
反応相は任意の適当な量で組成物内に存在することができる。若干の好適な実施形態において、反応相は約50質量%以上で存在する。若干の好適な実施形態において、反応相は約60質量%以上で存在する。若干の好適な実施形態において、反応相は約70質量%以上で存在する。若干の好適な実施形態において、反応相は約80質量%以上で存在する。若干の好適な実施形態において、反応相は約90質量%以上で存在する。若干の好適な実施形態において、反応相は約95質量%以上で存在する。
【0030】
種々の反応相は反応相全体における任意の適切な割合を占める。若干の好適な実施形態において、CSの反応相は約10〜約60重量%(例えば、約15重量%〜約60重量%、約20重量%〜約60重量%、約25重量%〜約60重量%、約30重量%〜約60重量%、約35重量%〜約60重量%、約40重量%〜約60重量%、約10重量%〜約50重量%、約10重量%〜約40重量%、約10重量%〜約30重量%、約10重量%〜約25重量%、約10重量%〜約20重量%、)存在し;C3S2の反応相は約5〜約50重量%(例えば、約10重量%〜約50重量%、約15重量%〜約50重量%、約20重量%〜約50重量%、約30重量%〜約50重量%、約40重量%〜約50重量%、約5重量%〜約40重量%、約5重量%〜約30重量%、約5重量%〜約25重量%、約5重量%〜約20重量%、約5重量%〜約15重量%)存在し;及びC2Sの反応相は約5重量%〜約60重量%(例えば、約10重量%〜約60重量%、約20重量%〜約60重量%、約25重量%〜約60重量%、約30重量%〜約60重量%、約35重量%〜約60重量%、約40重量%〜約60重量%、約5重量%〜約50重量%、約5重量%〜約40重量%、約5重量%〜約30重量%、約5重量%〜約25重量%、約5重量%〜約20重量%、約5重量%〜約20重量%)存在し、またCは約0重量%〜約3重量%(例えば、0重量%、1重量%以下、2重量%以下、約3重量%以下、約1重量%〜約2重量%、約1重量%〜約3重量%、約2重量%〜約3重量%)存在する。
【0031】
若干の実施形態において、反応相は、ケイ酸カルシウムベースの非晶相を、例えば、相の全体質量に対して約40質量%以上(例えば、約45質量%以上、約50質量%以上、約55質量%以上、約60質量%以上、約65質量%以上、約70質量%以上、約75質量%以上、約80質量%以上、約85質量%以上、約90質量%以上、約95質量%以上)有する。非晶相は原材料に存在する不純物イオンを付加的に組み入れることができる点を付記する。
【0032】
本発明のケイ酸カルシウム組成物は、COによる炭酸塩化に適する。とくに、ケイ酸カルシウムの組成物は、約30℃〜約90℃の温度でCOにより炭酸塩化し、約20%以上の質量増加でCaCOを形成するのに適する。この質量増加は、炭酸塩生成物内へのCOの正味隔離を反映する。若干の好適な実施形態において、組成物は、約30℃〜約90℃の温度(例えば、約40℃〜約90℃、約50℃〜約90℃、約60℃〜約90℃、約30℃〜約80℃、約30℃〜約70℃、約30℃〜約60℃、約40℃〜約80℃、約40℃〜約70℃、約40℃〜約60℃)の温度でCOにより炭酸塩化し、10%以上(例えば、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上)の質量増加でCaCOを形成するのに適する。
【0033】
他の態様において、本発明は、概して、本明細書に記載のケイ酸カルシウム組成物から生成される炭酸塩化材料に関する。
【0034】
さらに他の態様において、本発明は、概して、約8μm〜約25μmの平均粒径(d50)で、粒子の10%(d10)が約0.1μm〜3μm以下のサイズ及び粒子の90%(d90)が約35μm〜100μm以上のサイズを有する粉末形態の炭酸塩化可能なケイ酸カルシウム組成物に関する。
【0035】
若干の好適な実施形態において、d90:d10の比は、改善した粉末フロー又は注型成形のための減少した水要求量が得られるよう選択する。若干の好適な実施形態において、d50:d10の比は、改善した反応性、改善した梱包性、又は注型成形のための減少した水要求量が得られるよう選択する。若干の好適な実施形態において、d90:d50の比は、改善した反応性、改善した梱包性、又は注型成形のための減少した水要求量が得られるよう選択する。
【0036】
任意の適当なケイ酸カルシウム組成物は、結合要素のための前駆体として使用することができる。本明細書で使用する用語「ケイ酸カルシウム組成物」は、概して、CS(珪灰石又は疑似珪灰石、及びときにはCaSiO又はCaO・SiOとして配合されたもの)、C3S2(ランキナイト、及びときにはCaSi又は3CaO・2SiOとして配合されたもの)、C2S(ビーライト、β-CaSiO又はラルナイト、β-CaSiO又はブリジガイト、α-CaSiO若しくはγ-CaSiO、及びときにはCaSiO又は2CaO・SiOとして配合されたもの)、ケイ酸カルシウムベースの非晶相を含むケイ酸カルシウム相の1つ又は複数のグループから構成される天然に存在する鉱物又は合成物質に言及し、これら物質それぞれは、1つ若しくは複数の他の金属イオン及び酸化物(例えば、アルミニウム、マグネシウム、鉄若しくは酸化マンガン)若しくはそれらの混合物を含む、又は微量(1重量%)〜約50重量%以上の範囲にわたる量の天然で存在する若しくは合成の形態におけるケイ酸マグネシウムを含むことができる。
【0037】
好適には、本発明のケイ酸カルシウム組成物は水和させないことに留意されたい。しかし、僅かな量の水和可能なケイ酸カルシウム相(例えば、C2S,C3S及びCaO)は存在することができる。C2Sは、水にさらされるとき、緩慢な動力学の水和反応を呈し、CO養生プロセス中には急速にCaCOに転換する。C3S及びCaO水和物は、水にさらされる際に急速にCaCOに転換し、したがって、5質量%未満(<5質量%)に制限すべきである。
【0038】
ケイ酸カルシウム組成物に含まれるケイ酸カルシウム相は水に晒されるとき水和しない。結合剤としてケイ酸カルシウム組成物を使用して生成されるこの複合物は、水と組み合わさるとき大きな強度を生じない。強度創出は、ケイ酸カルシウム組成物を含む複合物をCOが存在する特定養生状況に晒すことによって制御する。
【0039】
本明細書に記載したケイ酸カルシウム組成物、相及び方法は、ケイ酸カルシウム相の代わりに、又はそれに付加してケイ酸マグネシウム相を使用するのに採用することができると理解されたい。本明細書に使用する用語「ケイ酸マグネシウム」は、例えば、MgSiO(「フォルステライト」としても知られている)及びMgSi10(OH)(「タルク」としても知られている)及びCaMgSiO(「モンティセライト」としても知られている)よりなるグループのうち1つ又は複数のものを含む天然に存在する鉱物又は合成物質であって、これら材料それぞれは、1つ又は複数の他の金属イオン及び酸化物(例えば、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化鉄又は酸化マグネシウム)、若しくはそれらの混合物を含むか、又は天然に存在する若しくは合成の形態としてのケイ酸カルシウムを微量(1重量%)〜約50重量%又はそれ以上にわたる量で含むものとすることができる。
【0040】
本発明による炭酸塩化可能な組成物の大きな実用性は、炭酸塩化して様々な用途に有用な複合材料を形成する点である。炭酸塩化は、例えば、制御した熱水液相焼結(HLPS:Hydrothermal Liquid Phase Sintering)プロセスによりCOと反応させて複合材料の種々の成分を一緒に保持する結合要素を生成することで実施することができる。例えば、本発明の好適な実施形態において、COは、生産される複合材料におけるCO隔離及び結合要素生成を生ずる反応種として使用され、二酸化炭素排出量の点で既存の生産技術とは格段の相違がある。HLPSプロセスは、化学反応の自由エネルギー及び結晶成長で生ずる表面エネルギー(面積)減少によって熱力学的に推進される。HLPSプロセスの反応速度論は低温度かつ適度な速度で進行し、これはすなわち、高融点流体又は高温固相媒体を使用する代わりに、溶液(水性又は非水性)を使用して反応種を輸送するからである。
【0041】
HLPSの様々な特徴の論考は、米国特許第8,114,367号、米国特許出願公開第2009/0143211号(米国特許出願第12/271,566号)、米国特許出願公開第2011/0104469号(米国特許出願第12/984,299号)、米国特許出願公開第2009/0142578号(米国特許出願第12/271,513号)、米国特許出願公開第2013/0122267号(米国特許出願第13/411,218号)、米国特許出願公開第2012/0312194号(米国特許出願第13/491,098号)、国際公開第2009/102360号(PCT/US2008/083606号)、国際公開第2011/053598号(PCT/US2010/054146号)、国際公開第2011/090967号(PCT/US2011/021623号)、2013年10月3日出願の米国仮出願第14/045,758号、同第14/045,519号、同第14/045,766号、同第14/045,540号、2014年3月12日出願の米国特許出願第14/207,413号、同第14/207,421号、2014年3月13日出願の米国特許出願第14/207,920号、同第14/209,238号、2014年6月4日出願の米国特許出願第14/295,601号、同第14/295,402号に見ることができ、これら文献それぞれはあらゆる目的のために参照することにより、表現されたとおりに全体が本明細書に組み入れられるものとする。
【0042】
図1図8は、上述の材料の幾つかにおける様々な相の相関関係を示す相状態図である。図9は、本発明の原理による加湿を行うCO複合材料養生チャンバの概略図である。図9において、水源を設け、また水蒸気を、養生チャンバ内を循環している空気に添加する。図10は、複数の湿度制御方法並びに一定フロー又は圧力調節でCOを制御及び補充する能力を有し、本発明の原理によって温度制御することができる養生チャンバの概略図である。このシステムは、閉ループ制御又はフィードバック使用の制御を行うシステムの一例であり、特定時点で望ましいCO濃度、湿度、及び温度のような動作パラメータの設定値を設け、また制御しているパラメータの実際値が所望値であるか否かを見る測定値をとる。
【0043】
本発明組成物の炭酸塩化における幾つかの実施形態において、すりつぶしたケイ酸カルシウム組成物を使用する。すりつぶしたケイ酸カルシウムは、約1μm〜約100μmにわたる範囲(例えば、約1μm〜約80μm、約1μm〜約60μm、約1μm〜約50μm、約1μm〜約40μm、約1μm〜約30μm、約1μm〜約20μm、約1μm〜約10μm、約5μm〜約90μm、約5μm〜約80μm、約5μm〜約70μm、約5μm〜約60μm、約5μm〜約50μm、約5μm〜約40μm、約10μm〜約80μm、約10μm〜約70μm、約10μm〜約60μm、約10μm〜約50μm、約10μm〜約40μm、約10μm〜約30μm、約10μm〜約20μm、約1μm、約10μm、約15μm、約20μm、約25μm、約30μm、約40μm、約50μm、約60μm、約70μm、約80μm、約90μm、約100μm)の中央値粒径と、約0.5g/mL〜約3.5g/mL(ルーズな、約0.5g/mL、約1.0g/mL、約1.5g/mL、約2.0g/mL、約2.5g/mL、約2.8g/mL、約3.0g/mL、約3.5g/mL)及び約1.0g/mL〜約1.2g/mL(タップした)のかさ密度と、約150m/kg〜約700m/kg(例えば、150m/kg、200m/kg、250m/kg、300m/kg、350m/kg、400m/kg、450m/kg、500m/kg、550m/kg、600m/kg、650m/kg、700m/kg)のブレーン比表面積と、を有することができる。
【0044】
任意の適当な骨材、例えば、酸化カルシウム含有又はシリカ含有の複合材料を使用して、本発明の炭酸塩化可能な組成物から複合材料を形成することができる。代表的な骨材としては、トラップ岩、建設用の砂、玉砂利のような不活性材料がある。若干の好適な実施形態において、パーライト又はバーミキュライトのような軽量骨材も骨材として使用することができる。産業廃棄材(例えば、フライアッシュ、スラグ、シリカヒューム)のような材料も微細増量剤として使用することができる。
【0045】
複数種類の骨材は任意の適当な平均粒径及びサイズ分布を有することができる。若干の実施形態において、複数種類の骨材は、約0.25mm〜約25mmにわたる範囲内(例えば、約5mm〜約20mm、約5mm〜約18mm、約5mm〜約15mm、約5mm〜約12mm、約7mm〜約20mm、約10mm〜約20mm、約1/8″、約1/4″、約3/8″、約1/2″、約3/4″)における平均粒径を有する。
【0046】
化学的混和剤、例えば、可塑剤、遅延剤、促進剤、分散剤、及び他のレオロジー変性剤を複合材料に含ませることができる。若干の市場で入手可能な化学的混和剤としては、例えば、BASF(登録商標)ケミカル社によるGlenium(商標名)7500及びダウ・ケミカル社によるAcumer(商標名)がある。若干の実施形態において、所望の複合材料に基づいて、1つ又は複数の顔料を結合母材に均一に分散又はほぼ不均一に分散させることができる。顔料は、任意の適当な顔料、例えば、種々の金属酸化物(例えば、黒色酸化鉄、酸化コバルト、及び酸化クロム)とすることができる。顔料は、黒、白、青、グレー、ピンク、緑、赤、黄、及び茶から選択した任意な色とすることができる。顔料は、所望の複合材料に基づいて、任意の適当な量、例えば、約0.0重量%〜約10重量%の範囲にわたる量にして存在させることができる。
【0047】
様々な複合材製品は、本発明の炭酸塩化可能なケイ酸カルシウム組成物からオートクレーブを必要とせず、また連続大量生産に適したプロセスによって生産することができる。この生産方法は、経済性及び環境インパクトの点で従来の透過性コンクリートよりも大きな改善がなされている。
【実施例】
【0048】
炭酸塩化可能なケイ酸カルシウム組成物及び相
NYAD400鉱物珪灰石製品(CaSiO3、NYCO鉱物)は、特注したリアクタ(化学反応炉)内でCO2養生状況に晒し、この組成物の炭酸塩化する能力を実証した。このリアクタは、39リットルの殺菌消毒容器であり、水中に浸漬させた抵抗加熱素子を有するステンレス鋼タンクから構成する。容器に対する蓋はCOガスを注入及び放出できるよう機械加工する。容器の蓋はファンを有し、このファンは外部撹拌装置によって制御することができる。サンプルは、水面レベルより上方かつ水滴のランダム落下がプロセスを干渉しないようにする金属コーン下方において、ワイヤトレイ上で反応させた。サンプルは、60℃で水が部分的に飽和した撹拌CO雰囲気の下に炭酸塩化した。サンプルは、時間の長さが変動して反応させることができ、またCO被曝からの質量増加を決定するよう分析した。これらの実験結果を図11に示す。
【0049】
実験用回転キルン内における石灰石、粘度及び砂からのケイ酸カルシウム組成物合成
天然資源の石灰石、粘度及び砂を使用して直接燃焼式回転キルン内でケイ酸カルシウム組成物を合成した。3つの異なる原材料混合物は平均粒径(d50)が〜30μmになるようすりつぶした。これら混合物は以下の表2に記載する。表2における「ミル設定」は、原材料混合物を一斉にすりつぶしたか、又は個別成分材料のミル粉砕後にブレンドしたかを示す。
【0050】
【表1】
【0051】
原材料のすりつぶしに続いて、粒状化プロセスを採用して実験用回転キルン内に適正な材料フローを生ずることができるようにする。
【0052】
粒状化した原材料を、表3に記載の寸法及び動作パラメータを有する天然ガス直接燃焼回転キルン内に送給した。回転キルン内で生じたケイ酸カルシウム組成物は、「クリンカー」形態、すなわち、直径が約1〜4mmの小さい顆粒となって出現した。このクリンカーは、分析前に約12μmの平均粒径(d50)の粉末になるようすりつぶした。
【0053】
【表2】
【0054】
すりつぶしたクリンカーのサンプルを特注したリアクタ内でCO2養生状況に晒した。サンプルは、60℃で水が部分的に飽和した撹拌CO雰囲気の下に炭酸塩化した。サンプルは、時間の長さが変動して反応させることができ、またCO被曝からの質量増加を決定するよう分析した。これらの実験結果を図12に示す。
【0055】
表4は、すりつぶしたクリンカー(サンプル12;as-is)に存在する鉱物学的相の、及びCO養生状況に晒したすりつぶしクリンカーのX線回折(XRD)定量化値を列挙する。(サンプル12;炭酸塩化(20時間))。サンプル12は、〜1220℃のピークキルン温度で燃焼させた、石灰石、粘度及び砂をブレンドした2Tに言及する。
【0056】
【表3】
【0057】
箱形炉内における純化学試薬から生成したケイ酸カルシウム組成物合成
合成したケイ酸カルシウム組成物は、さらに、形成されるケイ酸カルシウム相及びそれらの炭酸塩化の際における挙動を究明するため、純化学試薬からも生成した。サンプルは、60gのSiO(エボニック・インダストリーズ社からのヒュームド・シリカ、Aerosil98)及び100gのCaCO(シグマ アルドリッチ社、C6763)により合成した。それら成分は、焼成後におけるCaSiOのバルク化学量論を得るため比例配分した。それら成分は、PTFE容器内で水と混合させまた転動させて顆粒化した。この湿った顆粒は、次に対流オーブン内で乾燥し、また箱形炉(セントロテック社、ST-1500C-121216)内で10℃/分の加熱速度で1200℃にし、また1時間にわたりピーク温度を保持して燃焼させた。ケイ酸カルシウム組成物は、次にミル粉砕し(レッチ社、PM100)、また60℃で水が部分的に飽和した撹拌CO雰囲気の下に炭酸塩化した。ミル粉砕したケイ酸カルシウム組成物及び炭酸塩化したケイ酸カルシウム組成物をXRDによって分析した。図13aに示すXRDデータは、CaSiOのバルク化学量論を有する混合物内においてさえも生ずる、3つすべての結晶炭酸塩化可能な種(珪灰石/疑似珪灰石、ランキナイト、ラルナイト)の展開を示す。図13bは、CO2内での養生後の炭酸塩化した種である、方解石、アラゴナイト及びバテライトの存在を示す。
【0058】
箱形炉内におけるケイ酸石灰石からのケイ酸カルシウム組成物合成
天然資源のケイ酸石灰石を用いて、不純物がある天然資源材料から高温で形成されるケイ酸カルシウム相を究明した。石灰石は、天然で元素Ca対元素Siのモル比(Ca:Si)が1.12であり、したがって、ケイ酸カルシウム組成物合成用の唯一の原材料として作用することができる。石灰石の化学的要素を表5に示す。
【0059】
【表4】
【0060】
石灰石はすりつぶして粉末にし、次いで顆粒化した。顆粒化した材料は、箱形炉内で10℃/分の割合で1000℃〜1250℃の間における温度にし、3時間その温度を保持して燃焼させた。炉実験の生成物をすりつぶして粉末にし、XRDで分析し、炭酸塩化したケイ酸カルシウム相の展開を定量化した。異なる温度で焼成したケイ酸石灰石におけるX線回折定量化結果を表6及び図15a〜15cに示す。
【0061】
【表5】
【0062】
これら実験に続いて、この石灰石を多量に調合し、また粉砕の箱形炉内で上述したように処理した。次いでこの材料をミル粉砕して約12μmの平均粒径(d50)の粉末にし、コンクリート配合物(ミックス)内に組み入れた。この配合物は、4″×8″シリンダ内に振動投入によって形成した。このシリンダは、60℃のCO環境で炭酸塩化した。養生後、サンプルの圧縮強度を試験した。コンクリートサンプルは、10818±872psiの平均強度を示した。コンクリートの設計を表7に示す。
【0063】
【表6】
【0064】
非晶質ケイ酸カルシウム相の調合及び炭酸塩化
結晶ケイ酸カルシウム相の炭酸塩化に加えて、非晶質(アモルファス)状態のケイ酸カルシウムを炭酸塩化することができる。合成ケイ酸カルシウム組成物は高純度石灰石及び高純度砂の1500℃での燃焼により生成した。この結果生じた材料を約12μmの平均粒径(d50)の粉末にミル粉砕した。このケイ酸カルシウム組成物は、X線蛍光で測定するとCa:Siモル比が1.08であることを示し(表8)、このことは、上述のサンプルで説明したケイ酸カルシウム組成物に類似する。それでも、図16に示すこのケイ酸カルシウム組成物のXRDパターンは、大部分が非晶質であることを表している(リートベルト精密化によれば>95%の非晶質)。
【0065】
この組成物を水が部分的に飽和した撹拌CO2雰囲気の下に60℃で反応させることによって炭酸塩化した。18時間にわたる炭酸塩化後には、サンプルは有意な結晶ケイ酸カルシウム相がない状態にも係わらず25%の質量増加を示した。
【0066】
【表7】

【0067】
Ca:Siモル比1:1のAl2O3含有非晶質ケイ酸カルシウム組成物調製及び炭酸塩化
Alを含有する非晶質ケイ酸カルシウム組成物を、その炭酸塩化の潜在能力を検証するため、化学等級試薬から調製した。サンプルは、60gのSiO(USシリカ社、Min-u-sil 5)、100gのCaCO(シグマアルドリッチ社、C6763)、及び可変量のAl(OH)(シグマアルドリッチ社、239186)から形成した。この原材料を手作業で混合し、また底部負荷炉(セントロテック社、ST-1600C101012-BL)で10℃/分の速度で1600℃にして燃焼させた。1時間にわたり最大温度に保持した後、材料を炉から取り出し、また即座にスチール製プレート上に流し載せることによって急冷した。結果として生じた非晶質ケイ酸カルシウム組成物を約12μmの平均粒径(d50)の粉末にミル粉砕し、また水が部分的に飽和した撹拌CO2雰囲気の下に60℃で20時間にわたり炭酸塩化した。ケイ酸カルシウム組成物サンプルは、炭酸塩化前及び後にXRDによって分析し、それらの結晶化度を決定し、また炭酸塩化生成物を同定
した。これらの実験結果を表9にまとめた。サンプル1に関して炭酸塩化の前及び後に得られたXRDパターンの比較を図17に示す。
【0068】
【表8】
【0069】
様々な不純物を含むケイ酸カルシウムの合成及び炭酸塩化
ケイ酸カルシウムは、一連のAl、Fe、及びMgOの不純物を有して、Ca:Siモル比が1.1となるサンプルが得られ、ケイ酸カルシウム組成物におけるこれら不純物の効果を決定するため、化学等級試薬を様々な割合で混合することによって調製した。CaCO(シグマアルドリッチ社、C6763)、SiO(USシリカ社、Min-u-sil 5)、Al(OH)(シグマアルドリッチ社、239186)、Fe(フィッシャー・サイエンティフィック社、I116)、及びMgCO(シグマアルドリッチ社、342793)をサンプル合成に使用した。これらサンプルにおける不純物レベルの明細を図10に示す。サンプルは手作業で調合及び混合し、油圧プレスを用いて25.4mm(1インチ)直径のペレットにプレス加工した。これらペレットを箱形炉内で10℃/分の速度で1150℃及び1250℃の温度にし、その温度を1時間保持して燃焼させた。この燃焼に続いて、サンプルを粉末になるまでミル粉砕した。ミル粉砕したセメントをX線回折によって分析した。XRD分析結果を、1150℃サンプルに関する表11、及び1250゜に関する表12に示す。
【0070】
【表9】
【0071】
【表10】

【0072】
【表11】
【0073】
様々なCa:Siモル比のケイ酸カルシウムの合成及び炭酸塩化
ケイ酸カルシウムは、Ca:Siモル比が0.8〜1.2にわたり変動するサンプルが得られ、ケイ酸カルシウム組成物におけるその効果を決定するため、化学等級試薬を様々な割合で混合することによって調製した。CaCO(シグマアルドリッチ社、C6763)及びSiO(USシリカ社、Min-u-sil 5)をサンプル合成に使用した。サンプルは手作業で調合及び混合し、油圧プレスを用いて25.4mm(1インチ)直径のペレットにプレス加工した。これらペレットを箱形炉内で10℃/分の速度で1250℃の温度にし、その温度を1時間保持して燃焼させた。この燃焼に続いて、サンプルを粉末になるまでミル粉砕した。ミル粉砕したセメントをX線回折によって表13に示すように分析した。
【0074】
【表12】
【0075】
粒径分布統計値
図18及び19は、狭域粒径分布及び広域粒径分布となるようミル粉砕した2種類のケイ酸カルシウム組成物の粒径分布曲線のプロファイルを示す。SC-C2はジェットミルで粗く粉砕した粉末によって生成し、またSC-C2aはボールミルで粗く粉砕した粉末によって生成した。
【0076】
【表13】
【0077】
SC-C2及びSC-C2aの粉末のパッキング特性を、モルタルで行った以下の試験によって測定した。モルタルは、実験用ケイ酸カルシウム組成物をASTM C109標準砂(フンボルト・マニファクチャリング社、H-3825)と混合して、ケイ酸カルシウム組成物対砂の質量比が1:3、水対ケイ酸カルシウム組成物の質量比が0.375となるように生成した。モータ作動フローテーブル上における20回タップ後のモルタルの流動を測定した。図20はSC-C2aで調製したモルタルの流動特性の大きな改善を示す。この結果は、広域SC-C2aで調製した混合物の方が狭域SC-C2で形成した比較コンクリートよりも望ましい流動挙動を得るのに水が少なくて済むことを示す。
【0078】
炭酸塩化したコンクリートの乾燥状態及び水飽和状態における圧縮強度を測定するため、直径10.16cm×高さ20.32cm(4″D×8″H)の寸法のコンクリートシリンダを調製した。コンクリートサンプルの乾燥成分を表15に列挙した比率で混合した。
【0079】
【表14】
【0080】
Glenium7500(BASF社)を減水混和材として使用し、低い水対ケイ酸カルシウム組成物比でケイ酸カルシウム組成物を分散させ易くした。結合材を10mL/Kgの投与量ですべての混合物に使用した。0.271の水対ケイ酸カルシウム組成物比を用いた。
【0081】
コンクリートシリンダを60℃の高濃度CO環境下で養生させた。結果として生じたコンクリートシリンダを、適用可能なASTM C-39につき乾燥状態及び湿潤状態の双方で試験した。水を飽和させた試験に関しては、シリンダを24時間にわたり水に浸し、その微細構造に水を飽和させた。さらに、SC-C2aサンプルは24時間真空飽和に晒し、微細構造まで完全真空飽和させた。この試験結果は、広域SC-C2aケイ酸カルシウム組成物で作製したサンプルの圧縮強度が向上したことを示す(図21参照)。さらに、サンプルに水を飽和させる際の圧縮強度の相対変化は、広域分布ケイ酸カルシウム組成物を使用するとき減少することが分かる。
【0082】
SC-L−超広域分布
図22は、目標粒径分布を得るため工業用閉回路ボールミル内でミル粉砕したケイ酸カルシウム組成物クリンカーの粒径分布曲線プロファイルを示す。このケイ酸カルシウム組成物を生成するのに使用した同一クリンカーを、図23の場合はより高い平均粒径(d50)となり、図24の場合は広域粒径(d50)となるよう広域粒径を生成するのに異なる媒剤を充填したバッチ式ボールミルでミル粉砕した。これら分布は図25で重ね合わせて示す。
【0083】
【表15】
【0084】
【表16】
【0085】
本明細書及び特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」及び「the」は文脈がそうでないと明示しない限り、複数言及を含む。
【0086】
それ以外を定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術的及び科学的用語は、当業者が共通して理解されるものと同一の意味を持つ。本明細書に記載したのと類似又は等価である任意の方法及び材料は本発明の実施又は試験に使用することもできるが、好適な方法及び材料を説明した。本明細書に記載の方法は、本明細書に記載の特定の順序の他に論理的に可能である任意な順序で実施することができる。
【0087】
参照による組み入れ
特許、特許出願、特許刊行物、定期刊行物、書籍、新聞、ウェブコンテンツのような他の文献に対する参照及び引用を本明細書で行った。このような文献のすべては、参照によってすべての目的のために全体を本明細書に組み入れられるものとする。参照により本明細書に組み入れられる任意の資料又はその一部は、本明細書で明確に述べた現行の定義、ステートメント、又は他の開示資料と矛盾することがあっても、組み入れられた資料と本明細書の資料との間で矛盾が生じない程度にのみ組み入れられるものとする。矛盾を生じた場合、この矛盾は、好適な開示として本発明に有利となるよう解決される。
【0088】
均等物
本明細書に記載の代表的実施例は、本発明を説明するのに役立てることを意図し、本発明の範囲を制限することは意図しない、又は制限すると解すべきではない。実際、本明細書に示しまた記載した他に、本発明の種々の変更例及びその他多くの実施形態も、当業者にとっては、後続の実施例並びに本明細書に引用した科学的文献及び特許文献に対する参照も含めて本明細書の全内容から明らかであろう。後続の実施例は、種々の実施形態及びその均等物として本発明を実施するのに適用できる重要な付加的情報、例証、及びガイダンスを含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13a
図13b
図14
図15a
図15b
図15c
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25