(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
微小板形状非金属基材および基材に施与されたコーティングを含む赤色効果顔料であって、コーティングが、少なくとも1種の金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物を含み、その金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物の金属イオンが、Fe、Sn、Ti、およびZrからなる金属の群から選択される少なくとも2種の異なる金属イオンを含み、XRFによって決定され、かつ元素鉄として計算される鉄イオンの割合が、赤色効果顔料の合計重量に基づいて、合計で少なくとも17重量%であり、CIE LCh色空間における色相角h*15が、320°〜360°および0°〜60°の範囲内であり、コーティングが、
a)任意選択で、酸化スズ、水酸化スズ、および/または酸化スズ水和物を含むか、またはそれらからなる層1、
b)少なくとも1種の金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物を含み、その際、その金属イオンが、Fe、Sn、Ti、およびZrからなる金属の群から選択される少なくとも1種の金属イオンである層2、
c)少なくとも1種の金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物を含み、その際、その金属イオンが、Fe、Sn、Ti、およびZrからなる金属の群から選択される少なくとも1種の金属イオンである層3を包含し、
層2および3の少なくとも1つが、少なくとも2種の異なる金属イオンを含み、層2および3の少なくとも1つが鉄イオンを含み、微小板形状非金属基材が、コーティングされていない、天然マイカ微小板、合成マイカ微小板、黒雲母微小板、ガラス微小板、SiO2微小板、Al2O3微小板、カオリン微小板、タルク微小板、オキシ塩化ビスマス微小板、およびそれらの混合物からなる群から選択され、層1、2、3のそれぞれは、ドーパントを与えられてもよく、層2および/または層3にドーパントが与えられる際、ドーパントは、金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物を含んでよく、その金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物の金属イオンは、Ca、Mg、Al、Ce、Zr、またはSnからなる金属の群から選択される少なくとも1種の金属イオンであり、ドーパントの割合は、それぞれの場合に赤色効果顔料の合計重量に基づいて、合計で≦1重量%であり、層2および3がスペーサー層によって遮断され、少なくとも1つのスペーサー層が、接続部およびキャビティを包含し、<85%のネットワーク密度を有し、効果顔料が、ΔD=(D90−D10)/D50として定義されるスパンΔDが0.7〜3.0の範囲となる、体積平均サイズ分布関数の累積度数分布のD10、D50、D90値を有する、赤色効果顔料。
それぞれの場合にXRFによって決定され、それぞれの場合に元素金属として計算され、かつそれぞれの場合に赤色効果顔料の合計重量に基づく、スズ、チタン、およびジルコニウムイオンの割合が、合計で≦20重量%である、請求項1に記載の赤色効果顔料。
それぞれの場合にXRFによって決定され、それぞれの場合に元素金属として計算され、かつそれぞれの場合に赤色効果顔料の合計重量に基づく、Sn、Ti、およびZrからなる金属の群から選択される金属イオンの割合が、
i. スズイオンの場合に、合計で≦17重量%であるか、または
ii. チタンイオンの場合に、合計で≦15重量%であるか、または
iii.ジルコニウムイオンの場合に、合計で≦18重量%であるか、または
iv. スズおよびチタンイオンの場合に、合計で≦19重量%
である、請求項1または2のいずれかに記載の赤色効果顔料。
層BおよびC、または層A、B、およびCを生成するために順に施与される2種または3種の金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物が、Si、Mg、およびAlからなる金属の群から選択されるいずれの金属イオンも含まない、請求項6に記載のプロセス。
化粧品配合物、プラスチック、フィルム、テキスタイル、セラミック材料、ガラス、塗料、印刷インク、筆記用インク、ワニス、粉末コーティングにおける、かつ/またはレーザーマーキング添加剤としての、請求項1から5のいずれかに記載の赤色効果顔料の使用。
【発明を実施するための形態】
【0014】
表現「金属イオン」または「鉄イオン」によって意味されることは、本発明によれば、単一の金属イオンまたは鉄イオンではなく、複数の金属イオンまたは鉄イオンである。
【0015】
コーティングされる微小板形状非金属基材は、天然マイカ微小板、合成マイカ微小板、黒雲母微小板、ガラス微小板、酸化鉄微小板、SiO
2微小板、Al
2O
3微小板、カオリン微小板、タルク微小板、およびオキシ塩化ビスマス微小板からなる群から選択してよい。本発明によれば、赤色効果顔料は、上記で指定した微小板形状非金属基材の混合物をベースとしてもよい。上述の微小板形状非金属基材は、高および/または低屈折率の少なくとも1種の金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物から構成されるか、またはそれらを含む1つまたは複数の層を包含してもよい。したがって例えば、使用される基材は、単層または多層コーティングされた真珠光沢顔料または干渉顔料であってもよい。好ましい一実施形態では、本発明に従って使用される基材は、コーティングされていない微小板形状非金属基材である。
【0016】
微小板形状非金属基材は、好ましくは、天然マイカ微小板、合成マイカ微小板、ガラス微小板、SiO
2微小板、Al
2O
3微小板、およびそれらの混合物からなる群から選択される。微小板形状非金属基材は、より好ましくは、天然マイカ微小板、合成マイカ微小板、ガラス微小板、およびそれらの混合物からなる群から選択される。非常に特に好ましい微小板形状非金属基材は、合成マイカ微小板および/またはガラス微小板ならびにそれらの混合物である。特に、ガラス微小板が微小板形状非金属基材として好ましい。
【0017】
基材として使用することができるガラス微小板は、その組成に関して、ソーダ石灰ガラス、鉛クリスタルガラス、Eガラス、Aガラス、Cガラス、ECRガラス、Duranガラス、窓ガラス、実験室用ガラス、アルミノケイ酸ガラス、またはホウケイ酸ガラスなどのケイ酸塩ガラスからなってよい。好ましくは、ガラス微小板は、EP 1 980 594 B1の教示に対応する、特に、主請求項に対応する、より好ましくは、EP 1 829 833 B1またはEP 2 042 474 B1の教示に対応する、特に、それぞれの主請求項による組成を有する。基材として使用することができるガラス微小板は、好ましくは、EP 289 240 B1において記載されているプロセスによって生産される。
【0018】
さらなる一実施形態では、ガラス微小板を、その生産の経過中に、少なくとも1種の無機着色剤の添加によって、制御して着色することができる。適切な着色剤は、ガラス組成物の個々の融解温度で分解しないものである。着色剤の割合は、ここでは、それぞれの場合にガラス組成物の合計重量に基づいて、好ましくは合計で0.1重量%〜50重量%の範囲内、より好ましくは、合計で1重量%〜35重量%の範囲内、最も好ましくは、合計で5重量%〜25重量%の範囲内である。適切な着色剤は特に、Au、Pd、またはPtなどの元素貴金属、元素Cu、Cr、Mn、Fe、Ti、および/またはCoのカチオンまたは錯体アニオン、ならびに上記で列挙した着色剤の混合物である。
【0019】
さらなる一実施形態では、基材として使用することができるガラス微小板の屈折率は、1.45〜1.80の範囲内、好ましくは1.50〜1.70の範囲内である。
【0020】
さらなる一実施形態では、微小板形状基材、特にガラス微小板を、酸化ケイ素、水酸化ケイ素、酸化ケイ素水和物を含むか、またはそれらからなる層によって包み込んでもよい。例えば、ガラス微小板を使用する場合、上述のコーティングは、膨張などの化学的変化、ガラス成分の浸出、または攻撃的な酸被覆溶液中での溶解から、ガラス表面を保護することができる。
【0021】
基材として使用することができる合成マイカ微小板は、CN 102718229 Aの主請求項によるか、またはUS 2014/0251184 A1の主請求項による組成を有してよい。加えて、これは、EP 0 723 997 A1の3頁から4頁の詳細によって生産することができる。
【0022】
基材として使用することができる合成マイカ微小板は、好ましくは、蛍光X線分析(XRF)によると、好ましくはそれぞれの金属酸化物として表1に指定されている成分を、そこに列挙されている範囲内で有する式KMg
3AlSi
3O
10F
2、KMg
2・1/2(Si
4O
10)F
2、またはNaMg
2・1/2(Si
4O
10)F
2のフッ素金雲母、特に、式KMg
3AlSi
3O
10F
2のフッ素金雲母である。
【0024】
コーティングされる微小板形状非金属基材の平均厚さは、好ましくは50nm〜5000nmの範囲内、より好ましくは60nm〜3000nmの範囲内、最も好ましくは70nm〜2000nmの範囲内である。平均厚さとは、別段に示さない限り、本発明によれば、算術平均を意味すると理解される。
【0025】
一実施形態では、コーティングされる微小板形状非金属基材としてのガラス微小板での平均厚さは、750nm〜1500nmの範囲内、好ましくは850nm〜1400nmの範囲内、より好ましくは900nm〜1300nmの範囲内である。微小板形状基材が薄いほど、本発明の赤色効果顔料の全体厚さは小さくなる。したがって、その平均厚さが50nm〜700nmの範囲内、さらに好ましくは101nm〜600nmの範囲内、より好ましくは160nm〜500nmの範囲内、最も好ましくは200nm〜400nmの範囲内にあるガラス微小板も、微小板形状非金属基材として好ましい。さらなる一実施形態では、コーティングされる微小板形状非金属基材としての天然または合成マイカ微小板の平均厚さは、好ましくは80nm〜1300nmの範囲内、さらに好ましくは90nm〜1000nmの範囲内、より好ましくは99nm〜800nmの範囲内、最も好ましくは200nm〜600nmの範囲内である。
【0026】
微小板形状非金属基材が、50nmの平均厚さ未満で、高屈折率の金属酸化物でコーティングされると、例えば、それぞれの施与媒体への導入中でさえ破壊されてしまい、次いで、光沢の著しい低下をもたらす極めて破壊されやすい顔料が得られる。5000nmの平均基材厚さを超えると、その顔料は、全体で厚くなり過ぎ得る。これは、より不十分な比隠ぺい能(本発明の赤色効果顔料の単位重量当たりの被覆面積がより狭いことを意味する)を随伴する。さらに、そのような厚い顔料では、施与媒体中において、基材に対して面平行な配向の程度がより低くなる。次いで、より不十分な配向は、光沢の低下をもたらす。触覚特性に関しても、過度に厚い効果顔料は、施与において不利であり得る。
【0027】
一実施形態では、微小板形状非金属基材の厚さ分布の相対標準偏差は、15%〜100%、好ましくは17%〜70%、より好ましくは19%〜61%、最も好ましくは21%〜41%である。[%]での相対標準偏差は、計算された標準偏差および平均厚さの商である。
【0028】
微小板形状非金属基材の平均厚さは、硬化したラッカーフィルムを使用して決定され、この場合、下記のセクションIIj「微小板形状非金属基材の平均厚さ、層2および3の平均層厚、コーティング全体の平均層厚、スペーサー層の平均高さh
a、ならびにキャビティの平均高さh
Hの決定」における詳細に従って、本発明の赤色効果顔料を、基材に対して本質的に面平行に整列させる。このために、硬化したラッカーフィルムの横断面を走査電子顕微鏡(SEM)下で検査し、その際、微小板形状非金属基材の厚さを少なくとも100の効果顔料について決定し、統計学的に平均する。本発明では、用語「平均」は常に、別段に示さない限り、算術平均を意味する。
【0029】
Supra35走査電子顕微鏡(Zeiss製)を用いて、本発明の赤色効果顔料の横断面を使用して、走査電子顕微鏡写真を得た。
【0030】
本発明の赤色効果顔料は、任意選択で、酸化スズ、水酸化スズ、および/または酸化スズ水和物を含むか、またはそれらからなる層1を含む。層1は、任意選択で、少なくとも部分的に、層1に直接隣接する層、例えば、層2との混合層として存在してよい。
【0031】
か焼後の本発明の赤色効果顔料の層2および3は、好ましくは、それぞれ、高屈折率層であり、その屈折率は、好ましくはn>1.8、より好ましくはn≧1.9、最も好ましくはn≧2.1である。本発明では、層2および3中の少なくとも2種の異なる金属イオン(その2種の異なる金属イオンの少なくとも1種は鉄イオンである)の選択を、層2および/または3においてそれらから形成される金属酸化物(複数可)、金属水酸化物(複数可)、および/または金属酸化物水和物(複数可)が好ましくはそれぞれ、n>1.8の平均屈折率を有するように行う。
【0032】
層2および3の少なくとも1種の金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物は、Fe、Sn、Ti、およびZrからなる金属の群から選択される少なくとも2種の異なる金属イオンを含み、その際、その2種の異なる金属イオンの1種は、鉄イオンである。本発明では、少なくとも2種の異なる金属イオンの選択および鉄イオンの割合はここでは、得られる効果顔料が赤色であるように行うべきである。本発明に関連して「赤色効果顔料」によって意味されることは、CIE LCh色空間におけるそれらの色相角h
*15が、320°〜360°および0°〜60°の範囲内、さらに好ましくは330°〜360°および0°〜55°の範囲内、より好ましくは335°〜360°および0°〜45°の範囲内、最も好ましくは340°〜360°および0°〜400°の範囲内(
図9)であることである。好ましくは、上述の色相角範囲内での彩度C
*15は、>28、より好ましくは>39、最も好ましくは>46である。色相角h
*15および彩度C
*15はここでは、セクションIIb「角度依存性色測定」による詳細に従って、黒色/白色隠ぺいチャート(Byko−Chart 2853、Byk−Gardner製)上のラッカー施与物を使用して決定される。このために、本発明の効果顔料を、従来のニトロセルロースラッカー(Erco 2615e bronze mixing lacquer colorless;Maeder Plastiklack AG製)に、湿潤ラッカーの合計重量に対して6重量%の顔料添加レベルで撹拌添加し、スパイラルアプリケーターで、40μm、76μm、または100μmの湿潤フィルム厚で黒色/白色隠ぺいチャートに施与し、次いで、室温で乾燥させ、BYK−macマルチアングル測色計(Byk−Gardner製)で分析した。
【0034】
CIE LCh色空間は、CIELab色空間であり、その際、直角座標a
*、b
*ではなく、円筒座標C
*(彩度、相対彩度、L軸からの距離)およびh
*(色相角、CIELab色相環における色相の角度)が報告される(
図8)。
【0036】
として定義される本発明の赤色効果顔料の隠ぺい指数D
qは、好ましくは≧0.41、さらに好ましくは≧0.45、より好ましくは≧0.50、最も好ましくは≧0.55である。隠ぺい指数はここでは、セクションIIc「隠ぺい度の比較」による詳細に従って、本発明の特定の効果顔料6重量%と混合されているニトロセルロースラッカー(Erco 2615e bronze mixing lacquer colorless; Maeder Plastiklack AG製)の黒色/白色隠ぺいチャート(Byko Chart 2853、Byk−Gardner製)上のラッカー施与物を使用して決定される。L
*110黒色およびL
*110白色はここでは、好ましくはByk−Gardner製のBYK−macマルチアングル測色計を用いて、黒色/白色隠ぺいチャートの黒色および白色背景上で110°の計測角度で測定された明度値である。
【0037】
本発明による「少なくとも2種の異なる金属イオン」によって意味されることは、異なる元素の少なくとも2種の金属イオン、例えば、チタンおよび鉄イオン、または鉄およびスズイオン、または鉄およびジルコニウムイオンなどが存在するということである。様々な金属イオンが、本発明の赤色効果顔料の層2および/または層3中に、金属酸化物および/もしくは金属水酸化物および/もしくは金属酸化物水和物の混合物で、ならびに/または他に、混合酸化物および/もしくは混合水酸化物および/もしくは混合酸化物水和物で存在してよい。層2および/または層3は、金属酸化物および/もしくは金属水酸化物および/もしくは金属酸化物水和物のこの混合物、ならびに/または混合酸化物および/もしくは混合水酸化物および/もしくは混合酸化物水和物を含むか、またはそれらからなってよい。
【0038】
それぞれの場合にXRFによって決定され、それぞれの場合に元素鉄として計算され、かつそれぞれの場合に本発明の赤色効果顔料の合計重量に対する、本発明の赤色効果顔料における酸化鉄、水酸化鉄、および/または酸化鉄水和物の割合は、好ましくは17重量%〜90重量%の範囲内、より好ましくは20重量%〜86重量%の範囲内、最も好ましくは36重量%〜78重量%の範囲内である。
【0039】
本発明では、赤色効果顔料における、少なくとも1種のその金属イオンがSn、Ti、およびZrからなる金属の群からの1種の金属イオンを含むか、またはそれである金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物の割合は、好ましくは合計で0.5重量%から合計で25重量%までの範囲内、さらに好ましくは合計で0.9重量%から合計で21重量%までの範囲内、より好ましくは合計で1.5重量%から合計で16重量%までの範囲内、最も好ましくは合計で2.0重量%から合計で12重量%の範囲内であり、それぞれの場合にXRFによって決定され、それぞれの場合に金属酸化物として計算され、かつそれぞれの場合に赤色効果顔料の合計重量に基づく、酸化鉄、水酸化鉄、および/または酸化鉄水和物の割合は、好ましくは25重量%〜90重量%の範囲内、さらに好ましくは28重量%〜84重量%の範囲内、より好ましくは30重量%〜76重量%の範囲内、最も好ましくは32重量%〜71重量%の範囲内である。
【0040】
一実施形態では、本発明の赤色効果顔料は、層2および3のいずれにも、酸化スズ、水酸化スズ、および/または酸化スズ水和物のいずれも含まない。この場合、それぞれの場合にXRFによって二酸化スズとして決定され、かつそれぞれの場合に本発明の赤色効果顔料の合計重量に基づく、赤色効果顔料における酸化スズ、水酸化スズ、および/または酸化スズ水和物の割合は、好ましくは0.04重量%〜1.5重量%の範囲内、より好ましくは0.09重量%〜1.3重量%の範囲内、最も好ましくは0.1重量%〜0.9重量%の範囲内である。
【0041】
好ましい一実施形態では、層2および3の少なくとも1つは、金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物を含み、その際、その金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物の金属イオンは、金属TiおよびFeを含むか、またはそれらであり、それぞれの場合にXRFによって決定され、かつそれぞれの場合に元素金属として計算される、Feに対するTiの重量比は、好ましくは<8の範囲内、さらに好ましくは<5の範囲内、より好ましくは<2の範囲内、最も好ましくは<1の範囲内であり、XRFによって決定され、かつ元素金属として計算されるFeの割合は、本発明の赤色効果顔料の合計重量に基づいて、好ましくは18重量%〜85重量%の範囲内である。
【0042】
特に好ましい一実施形態では、層2および3の少なくとも1つは、金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物を含み、その際、その金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物の金属イオンは、金属SnおよびFeを含むか、またはそれらであり、それぞれの場合にXRFによって決定され、かつそれぞれの場合に元素金属として計算される、Feに対するSnの重量比は、好ましくは<5の範囲内、さらに好ましくは<2の範囲内、より好ましくは<1の範囲内、最も好ましくは<0.5の範囲内であり、XRFによって決定され、かつ元素金属として計算されるFeの割合は、本発明の赤色効果顔料の合計重量に基づいて、好ましくは19重量%〜83重量%の範囲内である。
【0043】
さらに特に好ましい一実施形態では、層2および3の少なくとも1つは、金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物を含み、その際、その金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物の金属イオンは、金属ZrおよびFeを含むか、またはそれらであり、それぞれの場合にXRFによって決定され、かつそれぞれの場合に元素金属として計算される、Feに対するZrの重量比は、好ましくは<0.5の範囲内、さらに好ましくは<0.2の範囲内、より好ましくは<0.12の範囲内、最も好ましくは<0.09の範囲内であり、XRFによって決定され、かつ元素金属として計算されるFeの割合は、本発明の赤色効果顔料の合計重量に基づいて、好ましくは19重量%〜61重量%の範囲内である。
【0044】
層2および3からの少なくとも1種の金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物が、少なくとも2種の異なる金属イオンを含み、その際、その2種の異なる金属イオンの1種が鉄イオンである場合、2種の異なる金属イオンは好ましくは、層2および/または3中に均質に分布して存在するか、またはその中で勾配を形成している。例外的な場合には、少なくとも2種の異なる金属イオンは、層2および/または3中に不均質に分布して存在してもよい。
【0045】
一実施形態では、2つの層2および3の1つは、好ましくはFe、Sn、Ti、およびZrからなる、さらに好ましくはFe、Sn、およびZrからなる金属の群から選択される1種のみの金属イオンを含む。対応して、2つの層3および2のそれぞれ他方の層は、好ましくはFe、Sn、Ti、およびZrからなる、さらに好ましくはFe、Sn、およびZrからなる金属の群から選択される少なくとも2種の異なる金属イオンを有する。
【0046】
好ましい一実施形態では、層2および層3の両方は、好ましくはFe、Sn、Ti、およびZrからなる、さらに好ましくはTi、Sn、およびFeからなる金属の群から選択される少なくとも2種の金属イオンから構成されるか、またはそれらを含む少なくとも1種の金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物を含み、その際、層2および層3中の2種の異なる金属イオンの少なくとも1種は、鉄イオンである。
【0047】
好ましい一実施形態では、スペーサー層によって遮断される層2および3は、それぞれの組成に関して同一である。
【0048】
本発明の赤色効果顔料の金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物の含量を蛍光X線分析(XRF)によってそれぞれの金属酸化物として決定し、それぞれの元素金属として計算することができる。このために、赤色効果顔料を、四ホウ酸リチウムガラスタブレットに組み込み、固体サンプル測定カップに固定し、そこから分析する。使用される測定装置は、Thermo Scientific製のAdvantix ARLシステムである。
【0049】
層1の平均層厚は、好ましくは10nm未満、より好ましくは5nm未満、最も好ましくは3nm未満であり、その際、層1は、微小板形状非金属基材または任意選択で存在するコーティングを完全に包み込んでいるか、または不完全に包み込んでいる。
【0050】
本発明の赤色効果顔料の層2および3のそれぞれの平均層厚は、好ましくは30nm〜300nmの範囲内、さらに好ましくは35nm〜290nmの範囲内、さらに好ましくは40nm〜270nmの範囲内、より好ましくは40nm〜275nmの範囲内、最も好ましくは45nm〜210nmの範囲内である。
【0051】
一実施形態では、層2および3の平均層厚は、事実上同一である。「事実上同一の平均層厚」によって意味されることは、本発明によれば、層2の平均層厚および層3の平均層厚の商が、好ましくは0.3〜2.5の範囲内、さらに好ましくは0.4〜2.1の範囲内、より好ましくは0.5〜1.9の範囲内、最も好ましくは0.4〜1.6の範囲内にあるということである。
【0052】
さらなる一実施形態では、層2および3の組成が物質的に異なる場合に、そのそれぞれの光学的層厚は、事実上同一であり、その際、層2および3の光学的層厚は、公知のlambda/4規則に従ってもよいし、または従わなくてもよい。光学的層厚は、それぞれの層の屈折率および平均層厚の積と定義される。
【0053】
本発明の赤色効果顔料のコーティング全体の平均層厚は、好ましくは≦600nmである。コーティング全体の平均層厚は、好ましくは45nm〜550nmの範囲内、より好ましくは65nm〜480nmの範囲内、最も好ましくは75nm〜350nmの範囲内である。「コーティング全体」とは、基材表面から出発して、そこから垂直に一方向に延びる全コーティングを意味すると理解される。
【0054】
一実施形態では、層2および3の層厚分布の相対標準偏差は、2%〜74%、好ましくは3%〜63%、より好ましくは4%〜57%、最も好ましくは5%〜49%であり、コーティング全体の層厚分布の相対標準偏差は、0.3%〜31%、好ましくは1%〜27%、より好ましくは1.2%〜24%、最も好ましくは1.9%〜22%である。[%]での相対標準偏差は、計算された標準偏差および平均厚さの商である。
【0055】
層2および3の間のスペーサー層は、好ましくは、微小板形状非金属基材の表面に対して本質的に平行に配置される。「本質的に平行」によって理解されることは、本発明の文脈では、横断面の走査電子顕微鏡写真において、スペーサー層を通して引かれた回帰線が、微小板形状非金属基材の表面に引かれた回帰線に対して、好ましくはゼロに近い勾配を有するということである。コーティング全体内でのスペーサー層の位置は、様々であり得る。例えば、層2および3の平均層厚が事実上同一である場合、任意選択の層1が好ましくは極めて薄く、より好ましくは数原子の層厚しかないので、スペーサー層は、好ましくは任意選択の層1、さらには層2および3から構成されるコーティング全体に関して、コーティング全体のほぼ中央にある。スペーサー層は、コーティング全体に関して、好ましくはコーティング全体の1/6と6/6との間に配置される。1/6はここでは、微小板形状非金属基材側の割合を指し、6/6は、微小板形状非金属基材とは反対側のコーティング全体の割合を指す(
図7)。
【0056】
層2および3の間に形成されるスペーサー層は、好ましくは、一方では、スペーサー層の両面に隣接する層を接続させ、他方では、それらを間隔を空けて離したままにする、スペーサーとも呼ばれ得る接続部を有する。横断面の走査電子顕微鏡写真から分かるとおり、この接続部またはスペーサーは、例えば、バーまたはカラムの形態で、微小板形状非金属基材の表面に対して約90°、例えば、80°〜100°の角度で配置されてよい。しかしながら、それは、5°〜175°の任意の他の角度を示してもよい。好ましくは、スペーサー、特にバー、好ましくはスペーサー、好ましくはバーの縦軸は、それぞれの場合に微小板形状非金属基材の表面に対して、15°〜150°の範囲の角度で、より好ましくは35°〜135°の範囲の角度で配置される。角度を決定する際に、基材面が第1のアームを形成する。それぞれの場合に該当するバーの外側の一方が、第2のアームを形成する。2つのアームの角度の頂点から出発して、形成された角度が決定され、その際、横断面の走査電子顕微鏡写真を上から見て、基材面で、0°を左に、かつ180°を右に置くことが想定される。
【0057】
接続部またはスペーサーは、種々の幾何学的形状を想定してよく、好ましくはスペーサー層全体上に均一に分布される。例えば、接続部またはスペーサーは、メッシュ、格子、はしご、スポンジ、またはハニカムの形状を取ってよい。例えば、EP 2 371 908 A2、EP 1 546 063 A1、またはEP 1 121 334 A1から公知のとおりのフォトニック結晶または逆フォトニック結晶におけるものと同様であるいくつかの構造要素を同定することも可能である。
【0058】
接続部またはスペーサーは、少なくとも1種の金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物を含む。好ましい一実施形態では、接続部またはスペーサーは、スペーサー層の両面上の層と同一の物質的組成を含む。別法では、接続部またはスペーサー内で、勾配が、様々な金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物の間で形成されていてもよい。
【0059】
好ましい一実施形態では、接続部またはスペーサーは、金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物を含み、その際、その金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物の金属イオンは、Fe、Sn、Ti、およびZrからなる金属の群から、さらに好ましくはFe、Ti、およびSnからなる群から、より好ましくはFeおよびSnからなる群から選択される少なくとも2種の金属イオンを含むか、またはそれらであり、2種の異なる金属イオンの少なくとも1種は、鉄イオンである。
【0060】
本発明者らは、接続部またはスペーサーが、隣接層の、したがって、本発明の赤色効果顔料の機械的安定化ももたらし得ると推測している。おそらく、接続部またはスペーサーの数、接続部またはスペーサーがスペーサー層内でもたらし得る種々の角度および幾何学的形状、ならびにスペーサー層の全面にわたるその好ましい均一な分布によって、機械的に非常に安定な効果顔料が形成される。コーティング全体と、微小板形状非金属基材との間の接着は、本発明の赤色効果顔料では非常に良好である。本発明の赤色効果顔料は、いわゆるワーリングブレンダー試験において起こるような極度のせん断条件にも、検出可能な損傷を伴うことなく耐える。ワーリングブレンダー試験の手順は、下記のセクションIIf「ワーリングブレンダー試験」において記載する。
【0061】
それらの意外に良好な機械的安定性に加えて、本発明の赤色効果顔料は、下記のセクションIIg「化学的安定性の決定」において詳細に説明されるとおりの優れた化学的安定性を有する。
【0062】
本発明の赤色効果顔料のスペーサー層は、好ましくは、3nm〜120nmの範囲、さらに好ましくは6nm〜99nmの範囲、さらに好ましくは14nm〜76nmの範囲、さらに好ましくは21nm〜69nmの範囲、より好ましくは22nm〜62nmの範囲、最も好ましくは26nm〜56nmの範囲の平均高さh
aを有する(
図6)。
【0063】
スペーサー層の平均高さh
a、層2および3の平均層厚、ならびにコーティング全体の平均層厚を決定するために、横断面の走査電子顕微鏡写真を使用して、それぞれの場合に、上部および下部基材表面を基線として確立する。横断面の走査電子顕微鏡写真における上部および下部基材表面によって意味されることは、それぞれの場合に、微小板形状非金属基材の長手側である。基線は、横断面の走査電子顕微鏡写真において、微小板形状非金属基材の表面に沿って引かれる。AxioVision 4.6.3.イメージプロセシングソフトウェア(Zeiss製)を用いて、横断面の走査電子顕微鏡写真を分析した。
【0064】
これらの2つの基線から90°の角度で、十分な数の平行線を50nm間隔で引いて、横断面の走査電子顕微鏡写真において示されている効果顔料上に格子が設けられるようにする(
図4)。横断面の走査電子顕微鏡写真の倍率は、Polaroid545(4インチ×5インチ)に基づいて、好ましくは少なくとも50000倍である。微小板形状非金属基材のそれぞれの基線から出発して、それぞれの外側層3またはそれぞれの最外側の層の方向で、それぞれの基線に直角に配置された平行線と、任意選択の層1と層2との、層2とスペーサー層との、スペーサー層と層3との、および層3と環境またはあり得るさらなる施与層とのそれぞれの境界面との間の交差点を手動で分析する。この場合、50nm間隔で引かれた線の1つが、接続点またはスペーサーのすぐ上にあることもあり得る。この場合、層3と環境またはあり得るさらなる施与層との境界面でのそれぞれの交差点のみを記録する。
【0065】
これらの測定から、差を生じさせることによって、層2および3の層厚、コーティング全体の層厚、任意選択で存在するさらなる層の層厚、およびスペーサー層の高さh
aを得る。層2の層厚は、層2とスペーサー層との境界面で測定された交差点と、任意選択の層1と層2との境界面または基線と層2との境界面で測定された交差点との間の差から計算するが、ただし、微小板形状非金属基材が、さらなる層で以前に被覆されていないことを条件とする。層3の層厚は、層3と環境または任意のさらなる施与層とで測定された交差点と、スペーサー層と層3とで測定された交差点との間の差から計算する。コーティング全体の層厚は、層3と環境または任意のさらなる施与層と環境との交差点と、それぞれの基線との交差点との間の差から計算する。スペーサー層の高さh
aは、スペーサー層と層3とで測定された交差点と、層2とスペーサー層とで測定された交差点との間の差から計算する。任意のさらなる施与層の層厚を同様に決定することができ、差を生じさせる際に対応して考慮する。
【0066】
平均層厚および平均高さh
aの上記で示した値を決定するために、こうして決定された層厚および高さh
aの個々の値を使用して、それぞれの算術平均値を形成する。統計学的に有意であるように、上記の測定を、少なくとも100の、基線に対して直角に配置された平行線上で行う。
【0067】
高さh
maは、スペーサー層の中心点を指す。それは、任意選択の層1および層2の層厚、ならびにスペーサー層の高さh
aの半分の合計として計算される。スペーサー層の中心点の相対高さh
Rmaは、h
maおよびコーティング全体の層厚の比から生じる。相対高さの標準偏差σh
Rmaは、好ましくは0.2%〜18%の範囲内、さらに好ましくは0.3%〜15%の範囲内、より好ましくは0.4%〜11%の範囲内、最も好ましくは0.5%〜8%の範囲内である。相対高さの標準偏差σh
Rmaは、スペーサー層が、コーティング全体内で、微小板形状非金属基材の表面に対して平行な規定の位置にある程度の尺度である。
【0068】
本発明の赤色効果顔料が少なくとも1つのさらなるスペーサー層を有する場合、その高さh
maおよびその少なくとも1つのさらなるスペーサー層の中心点の相対高さh
Rmaも、横断面の走査電子顕微鏡写真を使用する上記の方法によって確認される。相対高さの標準偏差σh
Rmaについて上記で示した値は、さらなるスペーサー層にも対応して当てはまる。
【0069】
二酸化チタンでコーティングされた真珠光沢顔料が、例えば、コーティング全体にわたって統計学的に分布している空孔をコーティング中に有することを、当業者は承知している(
図5)。この真珠光沢顔料は、スペーサー層を有さない。対照的に、本発明の赤色効果顔料中のスペーサー層およびスペーサー層内に存在するキャビティは、コーティング全体にわたって統計学的に分布するものではなく、コーティング全体に微小板形状非金属基材の表面に対して平行に配置されている。基材表面から、統計学的に分布している空孔の中心点までの距離も、上記の方法によって、横断面の走査電子顕微鏡写真によって決定した。このために、微小板形状基材の2つの表面に対応する上部および下部基線に対して90°の角度で、十分な数の平行線を50nm間隔で引いて、横断面の走査電子顕微鏡写真において示されるスペーサー層を含まない真珠光沢顔料上に格子を設けるようにした。平行線の1つが、1つまたは複数の空孔上にあった場合、その高さ(複数可)、その空孔中心点(複数可)、および基材表面から空孔中心点(複数可)までの距離を決定した。空孔中心点の統計学的分布を使用して、標準偏差を決定することもできる。現況技術からの真珠光沢顔料では、すなわち、スペーサー層を含まない真珠光沢顔料の場合には、基材表面から統計学的に分布する空孔の中心点までの距離の標準偏差は>20%である。基材表面から統計学的に分布する空孔の中心点までの距離の標準偏差は、したがって、その値において、本発明の赤色効果顔料のスペーサー層の中心点の相対高さの標準偏差とは明らかに異なる。したがって、スペーサー層を含まない真珠光沢顔料の基材表面から空孔中心点までの距離の標準偏差は、本発明の赤色効果顔料のスペーサー層の中心点の相対高さの標準偏差と対照をなし得る。
【0070】
加えて、走査電子顕微鏡写真に50nm間隔で引いた上記の線を用いて、マイクロメーター当たりの接続部またはスペーサーの数、および線の本数当たりの接続部またはスペーサーの数として定義される、%でのネットワーク密度を決定する。
【0071】
本発明の赤色効果顔料がコーティング全体内に1つよりも多いスペーサー層を有する場合、個々の層およびスペーサー層を測定するために直前で記載した方法を対応して適用する。
【0072】
一実施形態では、スペーサー層の相対高さの標準偏差σh
Rmaは、<25%、好ましくは0.5%〜23%、より好ましくは1%〜21%、最も好ましくは13%〜60%の範囲内である。
【0073】
好ましい一実施形態では、本発明の赤色効果顔料は、少なくとも1つのスペーサー層内に、マイクロメーター当たり0〜11の範囲、さらに好ましくは0〜9の範囲、より好ましくは1〜7の範囲、最も好ましくは1〜3の範囲の数の接続部またはスペーサーを有する。
【0074】
好ましい一実施形態では、本発明の赤色効果顔料は、少なくとも1つのスペーサー層内に、<85%、好ましくは1%〜75%の範囲、より好ましくは1%〜63%の範囲、最も好ましくは1%〜49%の範囲の、線の本数当たりの接続部またはスペーサーの数としてパーセントで定義されるネットワーク密度を有する。85%のネットワーク密度を超えると、本発明の文脈では、高い割合の接続部またはスペーサーは、まさに実質的に連続コーティングをもたらすので、スペーサー層とはもはや言えない。
【0075】
さらに好ましい一実施形態では、本発明の赤色効果顔料は、微小板形状非金属基材の表面に対して本質的に平行に配置された少なくとも1つのスペーサー層を含み、その際、少なくとも1つのスペーサー層は、それぞれの場合に、5nm〜115nmの範囲、より好ましくは8nm〜76nmの範囲、最も好ましくは16nm〜67nmの範囲の平均高さh
aを有する。
【0076】
特に好ましい一実施形態では、本発明の赤色効果顔料は、5nm〜112nmの範囲、好ましくは9nm〜96nmの範囲、最も好ましくは15nm〜76nmの範囲の平均高さh
aの少なくとも1つのスペーサー層を有し、その際、少なくとも1つのスペーサー層内で、マイクロメーター当たりの接続部またはスペーサーの数は、0〜8の範囲、好ましくは0〜6の範囲、より好ましくは0.1〜5の範囲、最も好ましくは0.3〜4の範囲から選択される。
【0077】
上記の接続部またはスペーサーに加えて、スペーサー層はキャビティを含む。このキャビティは、層2および3、ならびに接続部またはスペーサーによって空間的に区切られている。任意選択で存在するさらなるスペーサー層のキャビティは、類似の境界決定を有する。
【0078】
このキャビティのエネルギー分散型X線微量分析(EDX分析)は、その材料が固体または液体であるかどうかのいずれの結論ももたらさず、したがって、本発明者らは、現在利用可能な分析方法で、スペーサー層内のキャビティがガス、おそらく空気を含むと推測している。対照的に、接続部またはスペーサーは、上記で詳述したとおり、少なくとも1種の金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物を含む。
【0079】
本発明の赤色効果顔料のスペーサー層内のキャビティは、2nm〜119nmの範囲、好ましくは6nm〜105nmの範囲、より好ましくは11nm〜85nmの範囲、最も好ましくは18nm〜53nmの範囲の平均高さh
Hを示し得る。高さh
Hは、最下部および最上部キャビティ境界線の間の最大差を意味すると理解される。これを、高さh
aのために上記した方法によって、横断面の走査電子顕微鏡写真において、微小板形状非金属基材の表面に対して90°の角度で、平行線を50nm間隔で引くことによって決定する。上部および下部キャビティ境界線とのこれらの線の2つの交差点の差が、高さh
Hである。この場合にも、統計学的に有意であるように、上記の測定を少なくとも100の線で行う。したがって、平均高さh
aは、平均高さh
Hでの最大値である。したがって、いくつかのキャビティが、スペーサー層内で上下に存在してもよい。
【0080】
スペーサー層の平均高さh
aおよびキャビティの平均高さh
Hを、硬化したラッカーフィルムを使用して決定し、その際、セクションIIj「微小板形状非金属基材の平均厚さ、層2および3の平均層厚、コーティング全体の平均層厚、スペーサー層の平均高さh
a、ならびにキャビティの平均高さh
Hの決定」において示されている詳細に従って、本発明の赤色効果顔料を、基材に対して本質的に面平行に整列させる。このために、h
aについて上記したとおりに、硬化したラッカーフィルムの横断面を走査電子顕微鏡(SEM)下で検査する。この横断面とは別に、本発明の赤色効果顔料は、FIB法(FIB=集束イオンビーム)によって切断することができる。このために、高度に加速されたイオン(例えば、ガリウム、キセノン、ネオン、またはヘリウム)の微細なビームをイオン光学素子によってあるポイントに集束し、処理すべき効果顔料表面上で線ごとにガイドする。効果顔料表面と衝突すると、イオンは、そのエネルギーの大部分を放射し、このポイントでコーティングを破壊し、それが、線ごとの材料除去をもたらす。また、上記の方法によって、記録された走査電子顕微鏡写真を使用して、平均高さh
a、層2および3の平均層厚、ならびにコーティング全体の平均層厚を決定することができる。また、FIB法によって切断された効果顔料の走査電子顕微鏡写真を使用して、微小板形状非金属基材の平均厚さを決定することができる。
【0081】
さらなる一実施形態では、本発明の赤色効果顔料は、効果顔料全体にわたって分布するスペーサー層内に、横断面の走査電子顕微鏡写真を使用して測定すると、51%〜99%の範囲、好ましくは63%〜96%の範囲、より好ましくは76%〜95%の範囲、最も好ましくは84%〜94%の範囲のキャビティの面積割合、および1%〜49%の範囲、好ましくは4%〜37%の範囲、より好ましくは5%〜24%の範囲、最も好ましくは6%〜16%の範囲の接続部またはスペーサーの面積割合を含む。
【0082】
スペーサー層中で接続部およびスペーサーが占める合計体積が、キャビティが占める合計体積よりも小さいことがさらに好ましい。好ましくは、スペーサー層中で接続部またはスペーサーが占める合計体積は、キャビティが占める合計体積の50体積%未満、さらに好ましくは30体積%未満、より好ましくは20体積%未満、最も好ましくは10体積%未満である。
【0083】
本発明の赤色効果顔料では、EP 1 422 268 A2による教示の空孔とは対照的に、スペーサー層内のキャビティは、明らかに望ましい。EP 1 422 268 A2では、高い彩度および高い輝度を有する顔料を得るためには、低い多孔性および最小数の空孔を有するコーティングが必要である。EP 1 422 268 A2による顔料は、スペーサー層を有さない。本発明では、コーティング全体に無作為に分布してなく、スペーサー層内で微小板形状非金属基材の表面に対して本質的に平行に存在するキャビティは、本発明の赤色効果顔料の光学的特性にいずれの有害な作用も有さない。対照的に、本発明の赤色効果顔料は、単層コーティングを有する顔料と比較すると、もちろん同じ微小板形状非金属基材、同じ粒径、および比較可能なコーティングを想定して、より高い光沢およびより高い彩度を特徴とする。同時に、コーティング厚およびコーティングの種類に応じて、異なる干渉色および/または異なる吸収色を得ることができる。
【0084】
このより高い光沢およびより高い彩度は、スペーサー層とそれに隣接する層との間の屈折率の差が最大であり、それが、フレネルの法則に従って、それぞれの場合に、これらの境界面で最大の光反射をもたらすという事実によって説明され得る。キャビティでは、この場合に使用される基礎は、約1の空気の屈折率である。スペーサー層に衝突する光線は、その境界面で部分的に反射され、フレネルの法則による反射のそれぞれの強度は、スペーサー層からの隣接層の屈折率の差に依存する。そのような部分的な反射がそれぞれ個々の境界面で生じるので、全体反射も、境界面の数に伴って増大する。したがって、本発明の赤色効果顔料では、光線は、複数回部分的に反射され、この作用が、従来の単層コーティングされた顔料と比較して、干渉色のさらにより光沢、および強い強度である。キャビティがコーティング全体に統計学的に分布している場合、すなわち、微小板形状非金属基材に対して本質的に平行ではない場合、光学的経路長は、コーティング全体で様々であろう。この結果、干渉条件が十分に満たされないことになり、したがって、増幅また消失が存在しないこととなる。
【0085】
本発明の赤色効果顔料の光沢は、下記のセクションIId「光沢の測定」において示す詳細に従って、Byk−Gardner製のMicro−Tri−Gloss光沢測定器を用いて白色/黒色隠ぺいカードを使用して決定される。本発明の赤色効果顔料の彩度も、下記のセクションIIb「角度による色の測定」において示す詳細に従って、BYK−macマルチアングル測色計(Byk−Gardner製)を用いて白色/黒色隠ぺいカードを使用して決定される。スパークルおよび粒状度などのさらなる光学的効果は、下記のセクションIIe「効果の測定」において示す詳細に従って決定される。
【0086】
一実施形態では、本発明の赤色効果顔料は、上記の層1、2、および3に加えて、微小板形状非金属基材から観察して、任意選択の層1もしくは層2の下に、および/または層3の上に配置されていてよい高および/または低屈折率のさらなる層を含む。これらのさらなる層は、金属酸化物、金属水酸化物、金属酸化物水和物を含んでよく、その際、その金属酸化物、金属水酸化物、金属酸化物水和物の金属イオンは、Ti、Fe、Sn、Mn、Zr、Ca、Sr、Ba、Ni、Ag、Zn、Cu、Ce、Cr、およびCoからなる金属の群から選択される、好ましくはTi、Fe、Sn、Zr、Ag、Zn、Cu、Ce、Crからなる金属の群から選択される、より好ましくはTi、Fe、およびSnからなる金属の群から選択される、少なくとも1種の金属イオンを含むか、またはそれらである。さらに、これらのさらなる層は、Ag、Al、Cr、Ni、Au、Pt、Pd、Cu、Zn、およびTiからなる群から選択される、好ましくはAg、Au、およびCuからなる群から選択される半透明の金属、それぞれの合金およびまたはそれらの混合物を含んでよい。
【0087】
一実施形態では、本発明の赤色効果顔料の層のそれぞれに、ドーパントを与えることができ、その際、ドーパントは、金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物を含んでよく、その金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物の金属イオンは、Ca、Mg、Al、Ce、Zr、またはSn、好ましくはAl、Zr、またはSnからなる金属の群から選択される少なくとも1種の金属イオンを含むか、またはそれらである。ドーパントの割合は、それぞれの場合に赤色効果顔料の合計重量に基づいて、好ましくは合計で≦1重量%、より好ましくは合計で≦0.5重量%、最も好ましくは合計で≦0.2重量%である。
【0088】
さらなる一実施形態では、本発明の赤色効果顔料のコーティング全体は、スペーサー層に加えて、層2および3の間に、微小板形状非金属基材の表面に対して同じく本質的に平行に配置された少なくとも1つのさらなるスペーサー層を含んでもよい。好ましくは、本発明の赤色効果顔料は、その光学的品質が低下するので、4つ以下のスペーサー層をコーティング全体内に有する。本発明によれば、本発明の赤色効果顔料が1つよりも多いスペーサー層を含む場合にも、コーティング全体に関して、コーティング全体の1/6または6/6のいずれにもスペーサー層は存在しない。
【0089】
本発明の赤色効果顔料は、任意の中央粒径D
50を有してよい。本発明の赤色効果顔料のD
50値は、好ましくは、3μm〜350μmの範囲内である。好ましくは、本発明の赤色効果顔料のD
50値は、4μm〜211μmの範囲内、さらに好ましくは6μm〜147μmの範囲内、より好ましくは7μm〜99μmの範囲内、最も好ましくは8μm〜56μmの範囲内である。極めて好ましくは、本発明の赤色効果顔料は、3μm〜15μmの範囲または10μm〜35μmの範囲または25μm〜45μmの範囲または30μm〜65μmの範囲または40μm〜140μmの範囲または135μm〜250μmの範囲のD
50を有する。本発明の赤色効果顔料のD
10値は、好ましくは、1μm〜120μmの範囲を含む。より好ましくは、本発明の赤色効果顔料のD
10値は、1μm〜5μmの範囲内または5μm〜25μmの範囲内または10μm〜30μmの範囲内または20μm〜45μmの範囲内または25μm〜65μmの範囲内または75〜110μmの範囲内である。本発明の赤色効果顔料のD
90値は、好ましくは、6μm〜500μmの範囲を含む。より好ましくは、本発明の赤色効果顔料のD
90値は、8μm〜250μmの範囲内または10μm〜150μmの範囲内または40μm〜70μmの範囲内または68μm〜110μmの範囲内または120μm〜180μmの範囲内または400μm〜490μmの範囲内である。
【0090】
レーザー回折法によって得られるとおりの体積平均サイズ分布関数の累積度数分布のD
10、D
50、およびD
90は、それぞれ分析された効果顔料の10%、50%、および90%が、それぞれの場合に示された値以下である体積平均直径を有することを示している。この文脈では、本発明の赤色効果顔料のサイズ分布曲線は、Malvern’s Mastersizer 2000装置を使用して製造者の指示に従って決定される。散乱光シグナルは、フラウンホーファー理論によって評価され、これには、粒子の回折および吸収特性も包含される。
【0091】
好ましい一実施形態では、本発明の赤色効果顔料は、0.7〜3.0の範囲、好ましくは0.7〜2.3の範囲、さらに好ましくは0.8〜1.8の範囲、より好ましくは0.8〜1.4の範囲、最も好ましくは0.85〜1.1の範囲の、
【0093】
として定義されるスパンΔDを有する。得られた効果顔料の色純度および/または光沢に関する狭いサイズ区分の利点は、例えば、EP 2 217 664 A1、EP 2 346 950 A1、EP 2 356 181 A1、EP 2 346 949 A1、EP 2 367 889 A1において記載されている。
【0094】
本発明の赤色効果顔料は、下記のとおりに生産することができる:
−50℃〜100℃の範囲の温度で、微小板形状非金属基材を水中に懸濁させ、
−任意選択で、無機アルカリの同時添加と共に水溶性スズ塩を添加することによって、酸化スズ、水酸化スズ、および/または酸化スズ水和物を含むか、またはそれらからなる非か焼層を施与し、
−それぞれの場合に無機アルカリの同時添加と共に、3つの水溶性金属塩を順に添加することによって、3つの非か焼層A、B、およびCを、金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物の形態で順に施与し、その際、第2の水溶性金属塩(層Bを生成するためのもの)は、金属イオンに関して、層Aおよび層Cを生成するための2つの他の水溶性金属塩とは異なり、層AおよびCを生成するためのそれぞれの水溶性金属塩はそれぞれ、Fe、Ti、およびZrからなる金属の群から選択される少なくとも1種の金属イオンを含むか、またはそれであり、層Bを生成するための水溶性金属塩は、Sn、Ti、およびZrからなる金属の群から選択される少なくとも1種の金属イオンを含むか、またはそれであり、層Aおよび/またはCを生成するための水溶性金属塩(複数可)は、少なくとも1種の鉄イオンを含むか、またはそれであり、
−コーティングされた基材をコーティング溶液(複数可)から分離し、コーティングされた基材を、任意選択で、洗浄し、かつ/または任意選択で、乾燥させ、
400℃〜1100℃の範囲、好ましくは625℃〜930℃の範囲、より好ましくは750℃〜890℃の範囲の温度でコーティングされた基材をか焼して、少なくとも1つのスペーサー層を含む本発明の赤色効果顔料を得る。
【0095】
好ましい一実施形態では、本発明の赤色効果顔料を、上記のプロセスによって生産する。
【0096】
それぞれの金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物の施与、好ましくは堆積を、好ましくは、金属塩に応じて、pH1.4〜10.0の範囲内の一定のpHで行う。
【0097】
少なくとも3つの順に施与される、好ましくは堆積される金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物に加えて、もちろん、さらなる金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物を前に、かつ/または後に施与して、さらなる層を、層配列[任意選択の層1/層2/スペーサー層/層3]の下に、または上に配置することもできる。
【0098】
か焼の経過中に、層B中に存在する金属イオンが意外にも、層Aおよび/または層Cにおそらく拡散して、混合金属酸化物および/もしくは混合金属水酸化物および/もしくは金属酸化物水和物、ならびに/または金属酸化物および/もしくは金属水酸化物および/もしくは金属酸化物水和物の混合物を、層Aおよび/または層C中で形成する。か焼の経過中の層Bから層Aおよび/または層Cへの金属イオンの拡散によって、本発明の層2および3、ならびにその間のスペーサー層が形成され、その際、2つの層2および3の少なくとも1つは、少なくとも2種の異なる金属イオンを含む。したがって、元々は3つの順に堆積された層A、B、およびCから、か焼の経過中に、層2および3、ならびにその間のスペーサー層が得られ、その際、2つの層2および3の少なくとも1つは、Fe、Sn、Ti、およびZrからなる金属の群から選択される少なくとも2種の異なる金属イオンを含み、層2および3の少なくとも1つは、鉄イオンを含む。
【0099】
か焼の経過中の金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物の相互に対して異なる移動度が、スペーサー層の形成を担う因子の1つであると推測される。この文脈では、層B中に存在する金属イオンの移動度は、層Aおよび/またはC中に存在する金属イオンの移動度と競合し、金属イオンが層Bから隣接層Aおよび/またはCの少なくとも1つに拡散し、金属イオンが層Aおよび/またはCの少なくとも1つから層Bに拡散すると推測される。現在、本発明者らは、か焼中の層B中に存在する金属イオンの移動度が層Aおよび/またはC中に存在する金属イオンの移動度よりも高いかどうかが、スペーサー層の形成について可能な説明の1つであると推測している。さらに、金属イオンに関する濃度勾配が、スペーサー層の形成を促進し、すなわち、より移動性な金属イオンは、その逆方向よりも、層Bから隣接層Aおよび/またはCの1つに拡散し得ると推測される。まとめると、スペーサー層の形成は、か焼中に、多種多様な異なるさらなる因子、例えば、エントロピーおよび/またはエンタルピー作用の複雑な相互作用によってもたらされることが判明しているが、しかし、これは、まだ最終的には解明されていない。少なくとも1つのさらなるスペーサー層の形成についてももちろん、上記の考察が対応して当てはまる。
【0100】
3つの順に施与される、好ましくは堆積される金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物の1番目および3番目は、Fe、Ti、およびZrからなる金属の群から選択される少なくとも1種の金属イオンを含み、その際、施与される1番目および/または3番目の金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物は、鉄イオンを含む。施与の後に、第1および第3の金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物は、それぞれ、層Aおよび層Cを生成する。3つの順に施与される、好ましくは堆積される金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物の2番目は、層Bを生成し、層Aおよび層Cを生成するために堆積される金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物の金属イオンとは異なる、Sn、Ti、およびZrからなる金属の群から選択される少なくとも1種の金属イオンを含む。層Aおよび層Cでは、施与される、好ましくは堆積される金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物は、金属イオン(複数可)に関して同一であるか、または異なってよく、その際、層AおよびCの少なくとも1つは、鉄イオンを含む。
【0101】
別法では、本発明の赤色効果顔料は、下記のとおりに生産することができる:
−50℃〜100℃の範囲の温度で、か焼された単層または多層コーティングされた微小板形状非金属基材を水中に懸濁させ、その際、基材方向で施与される層Bに直接隣接する層の金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物の金属イオン(複数可)は、Fe、Ti、およびZrからなる金属の群から選択される少なくとも1種の金属イオンを含むか、またはそれらであり、
−それぞれの場合に無機アルカリの同時添加と共に、2種の水溶性金属塩を順に添加することによって、2つの非か焼層BおよびCを、金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物の形態で順に施与し、その際、第1の水溶性金属塩(層Bを生成するためのもの)は、金属イオンに関して、層Cおよび基材方向で層Bに直接隣接する層を生成するための他の水溶性金属塩とは異なり、層Bを生成するための水溶性金属塩は、Ti、Sn、およびZrからなる金属の群から選択される少なくとも1種の金属イオンを含むか、またはそれであり、層Cを生成するための水溶性金属塩は、Fe、Ti、Zrからなる金属の群から選択される少なくとも1種の金属イオンを含むか、またはそれであり、基材方向で層Bに直接隣接する層および/または層C中の少なくとも1種の金属イオンは、鉄イオンを含むか、またはそれであり、
−コーティングされた基材をコーティング溶液(複数可)から分離し、コーティングされた基材を、任意選択で、洗浄し、かつ/または任意選択で、乾燥させ、
400℃〜1100℃の範囲、好ましくは625℃〜930℃の範囲、より好ましくは750℃〜890℃の範囲の温度でコーティングされた基材をか焼して、少なくとも1つのスペーサー層を含む本発明の赤色効果顔料を得る。
【0102】
この場合も、それぞれの金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物の施与、好ましくは堆積を、好ましくは、金属塩に応じて、pH1.4〜10.0の範囲内の一定のpHで行う。
【0103】
か焼の経過中に、層B中に存在する金属イオンが、少なくとも層Cに拡散して、混合金属酸化物および/もしくは混合金属水酸化物および/もしくは金属酸化物水和物、ならびに/または金属酸化物および/もしくは金属水酸化物および/もしくは金属酸化物水和物の混合物を層C中で形成すると推測される。層Bから層Cへの金属イオンの拡散によって、か焼は、本発明の層3およびスペーサー層を形成する。したがって、元々は2つの順に堆積された層BおよびCから、か焼の経過中に、層3およびスペーサー層が得られ、その際、少なくとも層3は、Fe、Sn、Ti、およびZrからなる金属の群から選択される少なくとも2種の異なる金属イオンを含む。層2はこの場合、すでに存在する。層2は、出発材料として使用される、か焼された単層または多層コーティングされた微小板形状非金属基材の最外側の層を指し、その際、層2の金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物の金属イオン(複数可)は、Fe、Ti、およびZrからなる金属の群から選択される少なくとも1種の金属イオンを含み、層2および3の少なくとも1つは、鉄イオンを含む。
【0104】
エネルギー分散型微量分析器(EDX)を備えた走査電子顕微鏡での、横断面に基づく濃度プロファイル(ライン走査)は、か焼前後でのコーティングの化学的組成における有意な位置依存的変化を示す(
図1および2)。
【0105】
図1は、コーティングおよび乾燥後、ただし、か焼前の実施例1の濃度プロファイルを示している。濃度曲線に関して、Sn最大(Snピーク)が、0.3μmの領域に存在することが分かり得る。このSnピークは、か焼前に、施与されたSn含有層がコーティング内で存在する場所を示している。対照的に、酸素の濃度曲線は、認識可能な最小値または最大値を伴うことなく、実質的に均一な分布を有する。
【0106】
図2も同様に、コーティングおよび乾燥後、ただし、か焼後の実施例1の濃度プロファイルを示している。
図1において存在するSnピークは消失していることが分かる。Snイオンは、周囲のSn含有層に拡散している。強調すべき別の特徴は、酸素および鉄濃度曲線における最小値であり、これは、スペーサー層の位置を示している。
【0107】
特に好ましい一実施形態では、層BおよびC、またはA、B、およびCを生成するために順に施与される、好ましくは堆積される2つまたは3つの金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物は、Si、Mg、およびAlからなる金属の群から選択されるいずれの金属イオン(複数可)も含まない。
【0108】
すでにコーティングされ、かつ任意選択でか焼された基材への2つの非か焼層BおよびCの順次の施与の場合には、層Bが施与される層は、本発明では、高屈折率の金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物を含み、その場合、そのなかの少なくとも1種の金属イオンは、Fe、Ti、およびZrからなる金属の群から選択される金属イオンを含むか、またはそれらである。すでにコーティングされ、かつ任意選択でか焼された基材への3つの非か焼層A、B、およびCの順次の施与の場合には、層Aが施与される層は、本発明では、高または低屈折率の金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物を含んでよい。
【0109】
好ましい一実施形態では、本発明の赤色効果顔料は、それぞれの場合にXRFによって決定され、それぞれの場合に元素金属として計算され、かつそれぞれの場合に赤色効果顔料の合計重量に基づいて、合計で少なくとも17重量%、好ましくは合計で19重量%から合計で76重量%の範囲、さらに好ましくは合計で21重量%から合計で65重量%の範囲、より好ましくは合計で22重量%から合計で56重量%の範囲、より好ましくは合計で23重量%から合計で47重量%の範囲の鉄イオンの割合、および合計で≦20重量%、好ましくは合計で0.5重量%から合計で19重量%の範囲、さらに好ましくは合計で0.8重量%から合計で14重量%の範囲、より好ましくは合計で0.9重量%から合計で15重量%の範囲、最も好ましくは合計で1.3重量%から合計で14重量%の範囲のスズ、チタン、およびジルコニウムイオンの割合を含む。
【0110】
特に好ましい一実施形態では、本発明の赤色効果顔料は、それぞれの場合にXRFによって決定され、それぞれの場合に元素金属として計算され、かつそれぞれの場合に赤色効果顔料の合計重量に基づいて、合計で少なくとも17重量%、好ましくは合計で19重量%から合計で76重量%の範囲、さらに好ましくは合計で21重量%から合計で65重量%の範囲、より好ましくは合計で22重量%から合計で56重量%の範囲、より好ましくは合計で23重量%から合計で47重量%の範囲の鉄イオンの割合、および同時に、
i. 合計で≦17重量%、好ましくは合計で0.3重量%から合計で11重量%の範囲、さらに好ましくは合計で0.4重量%から合計で8.5重量%の範囲、より好ましくは合計で0.5重量%から合計で6重量%の範囲、最も好ましくは合計で0.2重量%から合計で7重量%の範囲のスズイオン、または
ii. 合計で≦15重量%、好ましくは合計で0.1重量%から合計で14重量%の範囲、さらに好ましくは合計で0.2重量%から合計で11重量%の範囲、より好ましくは合計で0.5重量%から合計で9重量%の範囲、最も好ましくは合計で0.8重量%から合計で5重量%の範囲のチタンイオン、または
iii.合計で≦18重量%、好ましくは合計で0.1重量%から合計で13重量%の範囲、さらに好ましくは合計で0.5重量%から合計で12重量%の範囲、より好ましくは合計で0.8重量%から合計で7重量%の範囲、最も好ましくは合計で1.2重量%から合計で10重量%の範囲のジルコニウムイオン、または
iv. 合計で≦19重量%、好ましくは合計で0.3重量%から合計で14重量%の範囲、さらに好ましくは合計で0.5重量%から合計で13重量%の範囲、より好ましくは合計で1.1重量%から合計で9重量%の範囲、最も好ましくは合計で1.5重量%から合計で7重量%の範囲のスズおよびチタンイオン
の割合を含む。
【0111】
一実施形態では、本発明の赤色効果顔料のか焼を、還元条件下で、好ましくはフォーミングガス(N
2/H
2)の存在下で行う。還元条件下でのか焼は、空気中でのか焼の場合よりも、より低い明度値L
*に関連し得る。施与される層A、B、およびC、またはBおよびCに応じて、この実施形態では、還元金属酸化物、例えば、磁鉄鉱またはチタン鉄鉱をか焼の間に生じさせることができる。
【0112】
様々なコーティングを参照する例によって、上記の所見を下記で詳細に説明する。
【0113】
例えば、水溶性鉄(III)塩、水溶性スズ(IV)塩、および再び水溶性鉄(III)塩を、任意選択でコーティングされた微小板形状非金属基材の懸濁液に連続的に施与する場合、か焼は、SEM横断面において基材から出発して観察すると、任意選択ですでに存在するコーティングの後に、金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物を含む層2(この際、その金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物の金属イオンは、Fe、Ti、Zr、Snからなる群からものを含むか、またはそれらである)、スペーサー層、ならびに層3(層3の金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物の金属イオンは、Fe、Ti、Zr、Snからなる群からのものを含むか、またはそれらである)をもたらす。金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物を含む層2および3の少なくとも1つは、鉄イオンを含有する。
【0114】
本発明の赤色効果顔料が、少なくとも2種または3種の順に施与される、好ましくは堆積される金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物に加えて、金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物を含むさらなる層を含む場合、さらなるスペーサー層を、さらなる層内に形成してもよいが、ただし、例えば、少なくとも2種または3種の順に施与された、好ましくは堆積された金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物のための上記のプロセスステップを遵守することを条件とする。
【0115】
本発明の赤色効果顔料に、任意選択で、気候安定性および/または化学的安定性をさらに上昇させる少なくとも1つの外側保護層を与えることができる。化学的安定性および凝縮水安定性は、下記のセクションIIg「化学的安定性の決定」およびIIi「凝縮水試験」において示す詳細に従って決定された。
【0116】
任意選択で存在する保護層は、金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物を含み、それらの金属イオンは、Si、Ce、Cr、Al、Zr、Zn、およびそれらの混合物からなる金属の群から、好ましくは、金属Si、Ce、Al、Zr、およびそれらの混合物の群から選択される。この文脈では、任意選択で存在する保護層の割合は、好ましくは、それぞれの場合に本発明の赤色効果顔料の合計重量に基づいて、0.1重量%〜7.0重量%の範囲内、より好ましくは0.2重量%〜5.2重量%の範囲内、最も好ましくは0.3重量%〜3.1重量%の範囲内である。加えて、任意選択で存在する保護層は、例えば、シランによって表面変性されていてよい。シランは、官能性結合基を有さなくてよいし、または1個もしくは複数個の官能性結合基(複数可)を有してよい。少なくとも1個の官能性結合基を有するシランを、下記では有機官能性シランとも称する。
【0117】
例えば、1種または複数種のシランを、この最外側保護層に施与していてよい。シランは、1〜24個の炭素原子、好ましくは6〜18個の炭素原子を有する分枝または非分枝アルキルラジカルを有するアルキルシランであってよい。
【0118】
さらに好ましい一実施形態では、官能性結合基を含まないシランは、アルキルシランである。アルキルシランは、好ましくは、式R
(4−z)Si(X)
zを有する。この式中、zは、1〜3の整数であり、Rは、10〜22個の炭素原子を有する置換または非置換の非分枝または分枝アルキル鎖であり、Xは、ハロゲンおよび/またはアルコキシ基である。少なくとも12個の炭素原子を有するアルキル鎖を有するアルキルシランが好ましい。Rは、Siに環状に結合していてもよく、この場合には、zは、通常2である。
【0119】
さらなる一実施形態では、プラスチック、またはラッカーもしくは塗料のバインダーなどへの化学結合を可能にする少なくとも1種の有機官能性シランを表面変性のために使用することもできる。有機官能性シランのこれらの基は、カップリング基または官能性結合基と称されることもあり、好ましくは、ヒドロキシル、アミノ、アクリロイル、メタクリロイル、ビニル、エポキシ、イソシアネート、シアノ、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0120】
表面変性剤として使用することが好ましい適切な官能基を有する有機官能性シランは、市販されており、例えば、Evonikによって生産され、商品名「Dynasylan」で販売されている。さらなる製品は、Momentive(Silquest silanes)またはWackerから購入することができ、例えば、GENIOSIL製品群からの標準的なシランおよびαシランである。これらの例は、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan MEMO、Silquest A−174NT)、ビニルトリ(メ)エトキシシラン(Dynasylan VTMOおよびVTEO、Silquest A−151およびA−171)、メチルトリ(メ)エトキシシラン(Dynasylan MTMSおよびMTES)、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan MTMO;Silquest A−189)、3−グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan GLYMO、Silquest A−187)、トリス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]イソシアヌレート(Silquest Y−11597)、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル)]テトラスルフィド(Silquest A−1289)、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピルジスルフィド(Silquest A−1589)、ベータ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(Silquest A−186)、ビス(トリエトキシシリル)エタン(Silquest Y−9805)、ガンマ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン(Silquest A−Link 35、GENIOSIL GF 40)、メタクリロイルオキシメチルトリ(メ)エトキシシラン(GENIOSIL XL 33、XL 36)、(メタクリロイルオキシメチル)(メ)エチルジメトキシシラン(GENIOSIL XL 32、XL 34)、(イソシアナトメチル)メチルジメトキシシラン、(イソシアナトメチル)トリメトキシシラン、3−(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物(GENIOSIL GF 20)、(メタクリロイルオキシメチル)メチルジエトキシシラン、2−アクリロイルオキシエチルメチルジメトキシシラン、2−メタクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−アクリルオキシエチルトリメトキシシラン、2−メタクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリプロポキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリアセトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン(GENIOSIL XL 10)、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン(GENIOSIL GF 58)、ビニルトリアセトキシシラン、またはそれらの混合物である。3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan MEMO、Silquest A−174NT)、ビニルトリ(メ)エトキシシラン(Dynasylan VTMOおよびVTEO、Silquest A−151およびA−171)、メチルトリ(メ)エトキシシラン(Dynasylan MTMSおよびMTES)、ベータ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(Silquest A−186)、ビス(トリエトキシシリル)エタン(Silquest Y−9805)、ガンマ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン(Silquest A−Link 35、GENIOSIL GF 40)、メタクリロイルオキシメチルトリ(メ)エトキシシラン(GENIOSIL XL 33、XL 36)、(メタクリロイルオキシメチル)(メ)エチルジメトキシシラン(GENIOSIL XL 32、XL 34)、3−(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物(GENIOSIL GF 20)、ビニルトリメトキシシラン(GENIOSIL XL 10)、および/またはビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン(GENIOSIL GF 58)を、好ましくは、有機官能性シランとして使用する。他の有機官能性シランを本発明の赤色効果顔料に施与することも可能である。加えて、例えば、Degussaから市販されている水性事前加水分解物を使用することも可能である。これらには、水性アミノシロキサン(Dynasylan Hydrosil 1151)、水性アミノ/アルキル官能性シロキサン(Dynasylan Hydrosil 2627または2909)、水性ジアミノ官能性シロキサン(Dynasylan Hydrosil 2776)、水性エポキシ官能性シロキサン(Dynasylan Hydrosil 2926)、アミノ/アルキル官能性オリゴシロキサン(Dynasylan 1146)、ビニル/アルキル官能性オリゴシロキサン(Dynasylan 6598)、オリゴマービニルシラン(Dynasylan 6490)、またはオリゴマー短鎖アルキル官能性シラン(Dynasylan 9896)が包含される。好ましい一実施形態では、有機官能性シラン混合物は、官能性結合基を有さない少なくとも1種のシランに加えて、少なくとも1種のアミノ官能性シランを含む。アミノ官能基は、バインダー中に存在する大抵の基との1つまたは複数の化学的相互作用に入り得る官能基である。これには、例えば、バインダーのイソシアネートもしくはカルボキシレート官能基との共有結合、またはOHもしくはCOOR官能基などとの水素結合、または他にも、イオン相互作用が包含され得る。したがって、アミノ官能基は、顔料をいろいろな種類のバインダーに化学的に結合する目的のために非常によく適している。
【0121】
このために次の化合物を用いることが好ましい:3−アミノプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan AMMO;Silquest A−1110)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(Dynasylan AMEO)、[3−(2−アミノエチル)アミノプロピル]トリメトキシシラン(Dynasylan DAMO、Silquest A−1120)、[3−(2−アミノエチル)アミノプロピル]トリエトキシシラン、トリアミノ官能性トリメトキシシラン(Silquest A−1130)、ビス(ガンマ−トリメトキシシリルプロピル)アミン(Silquest A−1170)、N−エチル−ガンマ−アミノイソブチルトリメトキシシラン(Silquest A−Link 15)、N−フェニル−ガンマ−アミノプロピルトリメトキシシラン(Silquest Y−9669)、4−アミノ−3,3−ジメチルブチルトリメトキシシラン(Silquest A−1637)、((シクロヘキシルアミノ)メチル)(ジエトキシ)メチルシラン(GENIOSIL XL 924)、N−シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン(GENIOSIL XL 926)、N−(フェニルアミノメチル)トリメトキシシラン(GENIOSIL XL 973)、またはそれらの混合物。
【0122】
好ましい一実施形態では、任意選択で存在する保護層は、WO 2006/021386 A1、WO 2012/130897 A1、またはWO 2014/053454 A1のそれぞれの主請求項において開示されている組成を有する。
【0123】
加えて、本発明の赤色効果顔料に、例えば、さまざまな媒体への効果顔料の導入を容易にする表面変性を与えることができる。本発明の赤色効果顔料を粉末コーティングにおいて使用する場合、例えば、効果顔料は、好ましくは、EP 2 698 403 A1またはEP 2 576 702 A1の主請求項において開示されている表面変性の1つを有する。別法では、本発明の赤色効果顔料は、WO 2006/136435 A2の請求項32による最外側のコーティングを有してもよく、これは、好ましくは、WO 2006/136435 A2の請求項1による噴霧乾燥法によって施与される。本発明の赤色効果顔料を化粧品配合物中で使用する場合、O/W、W/O、またはW/Siエマルジョン系へのその組込みを、例えばトリエトキシカプリリルシランでの疎水性表面被覆によって容易にすることができ、より長時間持続するエマルジョン安定性を達成することができる。
【0124】
本発明の赤色効果顔料を、透明および/もしくは隠ぺい性の無機もしくは有機の白色、着色、もしくは黒色の顔料ならびに/または金属効果顔料ならびに/または真珠光沢顔料ならびに/または充填剤との混合物で、それぞれの場合に所望の用途で使用することもできる。本発明の赤色効果顔料を使用する量は、特定の用途に、かつ達成されるべき光学的効果に依存する。
【0125】
本発明の赤色効果顔料は、化粧品配合物、プラスチック、フィルム、テキスタイル、セラミック材料、ガラス、塗料、印刷インキ、筆記用インキ、ラッカー、および粉末コーティングにおいて使用することができる。加えて、本発明の赤色効果顔料を、機能性用途、例えば、レーザーマーキング、温室用フィルム、または農業用フィルムのために使用することもできる。
【0126】
化粧品配合物、例えば、ボディパウダー、フェイスパウダー、プレスドまたはルースパウダー、パウダークリーム、アイメイクアップ、例えば、アイシャドウ、マスカラ、アイライナー、リキッドアイライナー、アイブローペンシル、リップバーム、リップスティック、リップグロス、リップライナー、ヘアスタイリング用組成物、例えば、ヘアスプレー、ヘアムース、ヘアジェル、ヘアワックス、ヘアマスカラ、永続的または半永続的なヘアダイ、一時的なヘアダイ、スキンケア組成物、例えば、ローション、ジェル、乳液、マニキュア組成物では、本発明の赤色効果顔料を、特定の用途に適した原料、補助剤、および活性成分と混合することができる。化粧品配合物中の本発明の赤色効果顔料の合計濃度は、それぞれの場合に配合物の合計重量に基づいて、すすぎ落とす製品での0.001重量%から、つけたままにする製品での40.0重量%までの間であってよい。
【0127】
さらなる一実施形態では、本発明の赤色効果顔料は、圧縮粒子形態であってよい。圧縮粒子形態は、好ましくは円柱および/またはビーズの形態のパレットを意味すると理解される。ここで、その円柱は、好ましくは、0.2cm〜4.2cmの範囲、より好ましくは0.5cm〜2.3cmの範囲、最も好ましくは0.7cm〜1.7cmの範囲の直径、および好ましくは、0.2cm〜7.1cmの範囲、より好ましくは0.6cm〜5.3cmの範囲、最も好ましくは0.8cm〜3.7cmの範囲の長さを有する。ビーズは、好ましくは、≦1cm、より好ましくは0.2cm〜0.7cmの範囲、最も好ましくは0.3cm〜0.5cmの範囲の半径を有する。
【0128】
一実施形態では、本発明は、微小板形状非金属基材、好ましくは合成マイカ微小板またはガラス微小板、およびその基材に施与されたコーティングを含む赤色効果顔料であって、そのコーティングが、少なくとも1種の金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物を含み、その金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物の金属イオンが、Fe、Sn、Ti、およびZrからなる金属の群から選択される少なくとも2種の異なる金属イオンを含み、XRFによって決定され、元素鉄として計算される鉄イオンの割合が、赤色効果顔料の合計重量に基づいて、合計で少なくとも18重量%であり、CIE LCh色空間における色相角h
*15が、330°〜360°および0°〜50°の範囲内であり、D
50/合計厚さとして定義される赤色効果顔料のアスペクト比が、1〜5000の範囲内、好ましくは5〜1000の範囲内、より好ましくは10〜790の範囲内である赤色効果顔料に関する。
【0129】
さらなる一実施形態では、本発明は、微小板形状非金属基材、好ましくは合成マイカ微小板またはガラス微小板、およびその基材に施与されたコーティングを含む赤色効果顔料であって、そのコーティングが、少なくとも1種の金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物を含み、その金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物の金属イオンが、Fe、Sn、Ti、およびZrからなる金属の群から選択される少なくとも2種の異なる金属イオンを含み、XRFによって決定され、元素鉄として計算される鉄イオンの割合が、赤色効果顔料の合計重量に基づいて、合計で少なくとも18重量%であり、CIE LCh色空間における色相角h
*15が、340°〜360°および0°〜50°の範囲内であり、基材の平均厚さおよびコーティング全体の平均厚さの合計として定義される赤色効果顔料の合計厚さが、100nm〜5000nmの範囲内、好ましくは200nm〜2500nmの範囲内、より好ましくは250nm〜1800nmの範囲内である赤色効果顔料に関する。
【0130】
さらなる一実施形態では、本発明は、微小板形状非金属基材、好ましくは合成マイカ微小板またはガラス微小板、およびそれに施与されたコーティングを含む赤色効果顔料であって、そのコーティングが、
a)任意選択で、酸化スズ、水酸化スズ、および/または酸化スズ水和物を含むか、またはそれらからなる層1、
b)少なくとも1種の金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物を含み、その金属イオンが、Fe、Sn、Ti、およびZrからなる金属の群から選択される少なくとも1種の金属イオンを含むか、またはそれらである層2、
c)少なくとも1種の金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物を含み、その金属イオンが、Fe、Sn、Ti、およびZrからなる金属の群から選択される少なくとも1種の金属イオンを含むか、またはそれらである層3を含み、
その際、層2および3の少なくとも1つが、上記で列挙した群からの少なくとも2種の異なる金属イオンを含み、層2および3の少なくとも1つが鉄イオンを含み、その際、それぞれの場合にXRFによって決定され、かつそれぞれの場合に元素金属として計算される鉄イオンの割合は、効果顔料の合計重量に基づいて22重量%〜79重量%の範囲内であり、層2および3が、5nm〜76nmの範囲の平均高さh
a、相対高さh
Rmaの標準偏差が、0.2%〜11%の範囲内であり、ネットワーク密度が、0.5%〜79%の範囲内であるのスペーサー層によって遮断されている赤色効果顔料に関する。
【0131】
「遮断されている」によって意味されることは、本発明によれば、層2および3が間隔を空けて離れているか、またはスペーサー層によって相互に距離を保っているということである。
【0132】
一般的な表現「金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物」によって意味されることは、本発明によれば、「金属酸化物および/または金属水酸化物および/または金属酸化物水和物」である。これは、金属または金属イオン、例えば、チタン(イオン)、鉄(イオン)、スズ(イオン)、ジルコニウム(イオン)などとして特定される場合にも当てはまる。
【0133】
好ましい一実施形態では、任意選択の層1は、微小板形状非金属基材に直接隣接し、層2は層1にすぐに続き、層3は層2に続き、その際、層2および3は、スペーサー層によって遮断されている。
【0134】
さらなる一実施形態では、層2は、少なくとも1種の金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物でコーティングされている微小板形状非金属基材に直接隣接し、層3は層2に続き、その際、層2および3は、スペーサー層によって遮断されている。微小板形状非金属基材の外側金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物層はこの場合、Fe、Ti、およびZrからなる金属の群から選択される少なくとも1種の金属イオンを含む。
【0135】
さらなる一実施形態では、本発明は、微小板形状非金属基材、好ましくは合成マイカ微小板またはガラス微小板、およびそれに施与されたコーティングを含む赤色効果顔料であって、そのコーティングが、
a)任意選択で、酸化スズ、水酸化スズ、および/または酸化スズ水和物を含むか、またはそれらからなる層1、
b)少なくとも1種の金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物を含み、その金属イオンが、FeおよびSnからなる金属の群から選択される少なくとも1種の非着色性金属イオンを含むか、またはそれらである層2、
c)少なくとも1種の金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物を含み、その金属イオンが、FeおよびSnからなる金属の群から選択される少なくとも1種の非着色性金属イオンを含むか、またはそれらである層3を含み、
その際、層2および3の少なくとも1つが、上記で列挙した群からの少なくとも2種の異なる金属イオンを含み、層2および3の少なくとも1つが鉄イオンを含み、層2および3が、スペーサー層によって遮断されていて、効果顔料が、0.8〜2.5の範囲のスパンΔDを有する赤色効果顔料に関する。
【0136】
好ましい一実施形態では、本発明は、微小板形状非金属基材、好ましくは合成マイカ微小板またはガラス微小板、およびそれに施与されたコーティングを含む赤色効果顔料であって、そのコーティングが、
a)任意選択で、酸化スズ、水酸化スズ、および/または酸化スズ水和物を含むか、またはそれらからなる層1、
b)Ti、Fe、Sn、およびZrからなる金属の群から選択される少なくとも1種の金属イオンから構成されるか、またはそれらを含む少なくとも1種の金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物を含む層2、
c)Ti、Fe、Sn、およびZrからなる金属の群から選択される少なくとも1種の金属イオンから構成されるか、またはそれらを含む少なくとも1種の金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物を含む層3を含み、
かつ層2および3の少なくとも1つが、上記で列挙した群からの少なくとも2種の異なる金属イオンを含み、層2および3の少なくとも1つが鉄イオンを含み、その際、それぞれの場合にXRFによって決定され、かつそれぞれの場合に元素金属として計算される鉄イオンの割合が、それぞれの場合に効果顔料の合計重量に基づいて、合計で21重量%〜78重量%の範囲内、好ましくは25重量%〜72重量%の範囲内であり、層2および3が、スペーサー層によって遮断されていて、効果顔料が、<5、好ましくは<3のdEで、化学的耐性を有する赤色効果顔料に関する。
【0137】
特に好ましい一実施形態では、本発明は、微小板形状非金属基材、好ましくは合成マイカ微小板またはガラス微小板、およびそれに施与されたコーティングを含む赤色効果顔料であって、そのコーティングが、
a)任意選択で、酸化スズ、水酸化スズ、および/または酸化スズ水和物を含むか、またはそれらからなる層1、
b)少なくとも1種の金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物を含み、その金属イオンが、FeおよびSnからなる金属の群から選択される少なくとも2種の金属イオンを含むか、またはそれらである層2、
c)少なくとも1種の金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物を含み、その金属イオンが、FeおよびSnからなる金属の群から選択される少なくとも2種の金属イオンを含むか、またはそれらである層3を含み、
かつ層2および3が、スペーサー層によって遮断されていて、コーティングが、高および/または低屈折率のさらなる層を含み、効果顔料が、微小板形状非金属基材の表面に対して本質的に平行に走り、4nm〜100nmの範囲、好ましくは9nm〜74nmの範囲の平均高さh
aを有する少なくとも1つのさらなるスペーサー層を含む赤色効果顔料に関する。
【0138】
さらなる一実施形態では、本発明は、微小板形状非金属基材、好ましくは合成マイカ微小板またはガラス微小板、およびそれに施与されたコーティングを含む赤色効果顔料であって、そのコーティングが、
a)任意選択で、酸化スズ、水酸化スズ、および/または酸化スズ水和物を含むか、またはそれらからなる層1、
b)少なくとも1種の金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物を含み、その金属イオンが、Zr、Sn、およびFeからなる金属の群から選択される少なくとも1種の金属イオンを含むか、またはそれらである層2、
c)少なくとも1種の金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物を含み、その金属イオンが、Zr、Sn、およびFeからなる金属の群から選択される少なくとも1種の金属イオンを含むか、またはそれらである層3を含み、
その際、層2および3の少なくとも1つが、上記で列挙した群からの少なくとも2種の異なる金属イオンを含み、層2および3の少なくとも1つが鉄イオンを含み、層2の平均層厚および層3の平均層厚の商が、好ましくは0.5〜3.0の範囲内であり、相対高さh
Rmaの標準偏差が、0.2%〜11%の範囲内である赤色効果顔料に関する。
【0139】
さらなる一実施形態では、本発明は、微小板形状非金属基材、好ましくは、合成マイカ微小板またはガラス微小板、およびそれに施与されたコーティングを含む赤色効果顔料であって、そのコーティングが、微小板形状非金属基材の表面に対して本質的に平行である少なくとも1つのスペーサー層を有し、その効果顔料が、i)任意選択で、非か焼酸化スズ、水酸化スズ、および/または酸化スズ水和物層を微小板形状非金属基材に施与するステップと、ii)3つの非か焼金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物を施与し、その際、これらの非か焼金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物の2番目が、物質的に他のものとは異なり、他の非か焼金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物の少なくとも1つに拡散し得るような性質を有し、3つの非か焼金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物の1番目および3番目がそれぞれ、Fe、Ti、およびZrからなる金属の群から選択される少なくとも1種の金属イオンを含むか、またはそれらであり、3つの非か焼金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物の1番目および/または3番目が、鉄イオンを含むか、またはそれであり、3つの非か焼金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物の2番目が、Sn、Ti、およびZrからなる金属の群から選択される少なくとも1種の金属イオンを含むか、またはそれらであるステップと、iii)ステップii)において得た生成物を、任意選択で、還元条件下で、400℃〜980℃の範囲の温度でか焼するステップとによって得られる赤色効果顔料に関する。
【0140】
非常に特に好ましい実施形態では、本発明は、微小板形状非金属基材、好ましくは、合成マイカ微小板またはガラス微小板、およびそれに施与されたコーティングを含む赤色効果顔料であって、そのコーティングが、微小板形状非金属基材の表面に対して本質的に平行であり、14nm〜51nmの範囲の平均高さh
aを有する少なくとも1つのスペーサー層を有し、その効果顔料が、i)任意選択で、水溶性スズ(IV)塩を使用して非か焼酸化スズ、水酸化スズ、および/または酸化スズ水和物層を微小板形状非金属基材に施与するステップと、ii)水溶性鉄(III)塩を使用して第1の層Aを、水溶性スズ(IV)塩および/またはチタン(IV)塩を使用して第2の層Bを、水溶性鉄(III)塩を使用して第3の層Cを順に施与するステップと、iii)ステップii)において得た生成物を、400℃〜910℃の範囲の温度でか焼するステップとによって得ることができる赤色効果顔料に関する。
【0141】
好ましい一実施形態では、本発明の赤色効果顔料のコーティングは、それぞれの場合に、乾燥および/またはか焼の前に、酸化チタン、水酸化チタン、および/または酸化チタン水和物から構成されるか、またはそれらを含む少なくとも1つの高屈折率の層、ならびに酸化鉄、水酸化鉄、および/または酸化鉄水和物から構成されるか、またはそれらを含む少なくとも2つの高屈折率の非隣接層を含み、その際、効果顔料における鉄に対するチタンの重量比は、<1であり、好ましくは0.01〜0.8の範囲内、より好ましくは0.1〜0.5の範囲内、最も好ましくは0.05〜0.19の範囲内である。
【0142】
さらに好ましい一実施形態では、本発明の赤色効果顔料のコーティングは、それぞれの場合に、乾燥および/またはか焼の前に、酸化スズ、水酸化スズ、および/または酸化スズ水和物から構成されるか、またはそれらを含む少なくとも1つの高屈折率の層、ならびに酸化鉄、水酸化鉄、および/または酸化鉄水和物から構成されるか、またはそれらを含む少なくとも2つの高屈折率の層を含み、その際、効果顔料における鉄に対するスズの重量比は、<1であり、好ましくは0.01〜0.9の範囲内、より好ましくは0.1〜0.8の範囲内である。この実施形態では、初めに、酸化鉄、水酸化鉄、および/または酸化鉄水和物の少なくとも1つの高屈折率層、次いで、酸化スズ、水酸化スズ、および/または酸化スズ水和物の少なくとも1つの高屈折率層、ならびに酸化鉄、水酸化鉄、および/または酸化鉄水和物のさらなる高屈折率層を、微小板形状基材に直接、または基材に近いそれぞれの最上層に直接施与することが特に好ましい。加えて、酸化鉄、水酸化鉄、酸化鉄水和物の少なくとも1つの高屈折率層を施与する前に、金属酸化物、金属水酸化物、金属酸化物水和物を含む層または先行する被覆(ここで、金属イオンは、SnおよびSiからなる金属の群から選択される金属イオンを含むか、またはそれらである)を、微小板形状非金属基材に直接か、または基材に近いそれぞれの最上層に直接堆積させることも可能であり、その際、層厚は、数ナノメートル、好ましくは10nm未満、より好ましくは5nm未満、最も好ましくは3nm未満であってよく、その層は、基材を完全に囲っている必要はない。酸化スズ、水酸化スズ、および/または酸化スズ水和物は、少なくとも一部が、酸化鉄、水酸化鉄、および/または酸化鉄水和物を含む混合層で存在してよい。
【0143】
さらなる一実施形態では、本発明は、微小板形状非金属基材、好ましくは合成マイカ微小板またはガラス微小板、およびその基材に施与されたコーティングを含む赤色効果顔料であって、そのコーティングが、微小板形状非金属基材の表面に対して本質的に平行な少なくとも1つのスペーサー層を有し、その効果顔料が、還元条件下でか焼されているか、またはコーティング全体に、好ましくは任意選択で存在する保護層の真下の最外側の層として、半透明の金属層を有する赤色効果顔料に関する。
【0144】
一実施形態では、本発明の赤色効果顔料のコーティングは、少なくとも1種の金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物の代わりに、対応する金属亜酸化物、金属フッ化物、金属窒化物、金属オキシ窒化物、金属オキシハロゲン化物、および/または金属硫化物を含む。
【0145】
一実施形態では、本発明の赤色効果顔料のコーティングは、少なくとも1種の金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物に加えて、少なくとも1種の金属亜酸化物、金属フッ化物、金属窒化物、金属オキシ窒化物、金属オキシハロゲン化物、および/または金属硫化物を含む。
【0146】
下記で、本発明をいくつかの実施例によって説明するが、それらの実施例は、本発明を限定するものではない。実施例および比較例における%数値はすべて、重量%として理解されるべきである。
【0147】
I 本発明の赤色効果顔料の生産
実施例1
MALVERN Mastersizer MS 2000によれば粒径分布:D
10=11μm、D
50=21μm、D
90=36μmを有する合成マイカ微小板(フッ素金雲母微小板)200gを脱塩水1300mL中に懸濁させ、乱流撹拌しながら85℃に加熱した。懸濁液のpHをpH2.6に調節した。1.42g/cm
3の密度を有する塩化鉄水溶液570gを添加することによって、酸化鉄の層を合成マイカ微小板の表面上に堆積させた。混合物をさらに60分間にわたって撹拌した後に、懸濁液のpHをpH2.2に低下させ、次いで、Sn30g/Lの濃度を有するSnCl
4の溶液500mLを懸濁液に投与した。次いで、混合物をさらに120分間にわたって撹拌し、次いで、1.42g/cm
3の密度を有する塩化鉄水溶液750gを添加した。添加が終了してから60分後に、懸濁液を濾別し、濾過ケーキを洗浄した。必要な場合には濾過ケーキを乾燥させ、800℃で45分間にわたってか焼した。赤色の吸収色および非常に良好な隠ぺい力を有する、極めて彩度が高く、高光沢の赤色干渉効果顔料が得られた。
【0148】
実施例2
MALVERN Mastersizer MS 2000によれば粒径分布:D
10=10μm、D
50=22μm、D
90=40μmを有する合成マイカ微小板(フッ素金雲母微小板)200gを脱塩水1300mL中に懸濁させ、乱流撹拌しながら85℃に加熱した。懸濁液のpHをpH2.6に調節した。1.42g/cm
3の密度を有する塩化鉄水溶液570gを添加することによって、酸化鉄の層を合成マイカ微小板の表面上に堆積させた。その後、懸濁液のpHをpH1.9に低下させ、次いで、TiCl
4溶液250mL(TiO
2200g/脱塩水L)を懸濁液に投与した。次いで、混合物をさらに120分間にわたって撹拌し、次いで、1.42g/cm
3の密度を有する塩化鉄水溶液600gを添加した。添加が終了してから60分後に、懸濁液を濾別し、濾過ケーキを洗浄した。必要な場合には濾過ケーキを乾燥させ、400℃で60分間にわたってか焼した。赤色の吸収色および非常に良好な隠ぺい力を有する、極めて彩度が高く、高光沢の赤色干渉効果顔料が得られた。
【0149】
実施例3
MALVERN Mastersizer MS 2000によれば粒径分布:D
10=7μm、D
50=20μm、D
90=35μmを有する合成マイカ微小板(フッ素金雲母微小板)200gを脱塩水1300mL中に懸濁させ、乱流撹拌しながら85℃に加熱した。懸濁液のpHをpH2.6に調節し、1.42g/cm
3の密度を有する塩化鉄水溶液530gを添加した。混合物をさらに60分間にわたって撹拌した後に、懸濁液のpHを2.2に低下させ、次いで、Sn315g/Lの濃度を有するSnCl
4溶液17.5mLを懸濁液に投与した。次いで、混合物をさらに120分間にわたって撹拌し、次いで、1.38g/cm
3の密度を有する塩化鉄水溶液1000gを添加した。添加が終了してから60分後に、懸濁液を濾別し、濾過ケーキを洗浄した。必要な場合には濾過ケーキを乾燥させ、780℃で45分間にわたってか焼した。赤色の吸収色および非常に良好な隠ぺい力を有する、極めて彩度が高く、高光沢の赤色干渉効果顔料が得られた。
【0150】
実施例4
MALVERN Mastersizer MS 2000によれば粒径分布:D
10=9μm、D
50=19μm、D
90=37μmを有する合成マイカ微小板(フッ素金雲母微小板)200gを脱塩水1300mL中に懸濁させ、乱流撹拌しながら85℃に加熱した。懸濁液のpHをpH2.2に調節し、次いで、Sn30g/Lの濃度を有するSnCl
4溶液50mLを一定のpHで計量添加した。次いで、混合物をさらに60分間にわたって撹拌し、pHを1.9に調節し、TiCl
4溶液800mL(TiO
2200g/脱塩水L)を添加した。さらに60分間にわたって撹拌した後に、懸濁液のpHをpH2.2に低下させ、次いで、Sn30g/Lの濃度を有するSnCl
4溶液500mLを懸濁液に投与した。次いで、混合物をさらに120分間にわたって撹拌し、次いで、1.38g/cm
3の密度を有する塩化鉄水溶液1200gを添加した。添加が終了してから60分後に、懸濁液を濾別し、濾過ケーキを洗浄した。必要な場合には濾過ケーキを乾燥させ、830℃で45分間にわたってか焼した。赤色の吸収色および非常に良好な隠ぺい力を有する、極めて彩度が高く、高光沢の赤色干渉効果顔料が得られた。
【0151】
実施例5
MALVERN Mastersizer MS 2000によれば粒径分布:D
10=8μm、D
50=20μm、D
90=36μmを有する合成マイカ微小板(フッ素金雲母微小板)150gを脱塩水1200mL中に懸濁させ、乱流撹拌しながら85℃に加熱した。懸濁液のpHをpH2.6に調節し、1.42g/cm
3の密度を有する塩化鉄水溶液350gを添加した。混合物をさらに60分間にわたって撹拌した後に、懸濁液のpHを3.5に調節し、次いで、(ZrCl
4)=20.0重量%の塩化ジルコニウム溶液110mLを懸濁液に投与した。次いで、混合物をさらに120分間にわたって撹拌し、pHをpH2.6に調節し、次いで、1.38g/cm
3の密度を有する塩化鉄水溶液700gを添加した。添加が終了してから60分後に、懸濁液を濾別し、濾過ケーキを洗浄した。必要な場合には濾過ケーキを乾燥させ、800℃で60分間にわたってか焼した。赤色の吸収色および非常に良好な隠ぺい力を有する、極めて彩度が高く、高光沢の赤色干渉効果顔料が得られた。
【0152】
実施例6
MALVERN Mastersizer MS 2000によれば粒径分布:D
10=34μm、D
50=57μm、D
90=95μmを有する合成ホウケイ酸塩ガラス微小板200gを脱塩水1300mL中に懸濁させ、乱流撹拌しながら85℃に加熱した。次いで、次のものを連続的に添加した:pH2.2でSnCl
440mL(濃度53g/l)、pH2.6でFeCl
3122mL(密度1.42g/cm
3)、pH1.9でTiCl
419mL(濃度TiO
2200g/L)、および最後にpH2.6でFeCl
3292mL(密度1.42g/cm
3)。pHを、それぞれの場合に、NaOH水溶液(35%)を同時添加することによって一定に維持した。添加が終了してから60分後に、懸濁液を濾別し、濾過ケーキを洗浄した。必要な場合には濾過ケーキを乾燥させ、650℃で60分間にわたってか焼した。赤色の吸収色および赤色の反射色を有する、極めて彩度が高く、高光沢の赤色スパークリング効果顔料が得られた。
【0153】
実施例7
実施例4からの最終生成物を、還元条件下で、450℃で15分間にわたってか焼した。暗色の吸収色を有する彩度が高く、光沢のある赤色干渉効果顔料が得られた。
【0154】
実施例8
実施例1から得た効果顔料100gを脱塩水850mLに懸濁させ、乱流撹拌しながら85℃に加熱した。pHを、希塩酸でpH4.2に低下させた。次いで、脱塩水40mLに溶かしたCe(NO
3)
3×6H
2O0.93gの溶液を計量添加した。同時に、pHを、10%NaOH溶液の滴下添加によって一定に維持した。溶液を完全に添加したら、混合物をさらに1時間にわたって撹拌し、その後、pHを希水酸化ナトリウム溶液でpH10に調節した。その後、脱塩水24.3gで希釈した5.7gのDynasylan 1146を懸濁液に添加し、懸濁液をさらに180分間にわたって撹拌し、濾過し、濾過ケーキを脱塩水で洗浄した。濾過ケーキを減圧下で95℃で乾燥させた。
【0155】
比較例1
天然マイカ微小板を基材とし、酸化鉄でコーティングされた赤色効果顔料、Merck製のIriodin 504 Red。
【0156】
比較例2
SiO
2微小板を基材とし、酸化鉄でコーティングされた赤色効果顔料、Merck製のIriodin 4504 Lava Red。
【0157】
比較例3
MALVERN Mastersizer MS 2000によれば粒径分布:D
10=10μm、D
50=22μm、D
90=40μmを有する合成マイカ微小板(フッ素金雲母微小板)200gを脱塩水1300mL中に懸濁させ、撹拌しながら85℃に加熱した。懸濁液のpHをpH2.6に調節し、次いで、FeCl
3の溶液60mL(Fe
2O
3280g/脱塩水L)を懸濁液に計量添加した。次いで、懸濁液をさらに60分間にわたって撹拌し、その後、pHを、アルカリで7.5に上げ、混合物をさらに20分間にわたって撹拌した。次いで、水ガラス溶液(水ガラス溶液185g、SiO
224%、脱塩水207gと混合)を懸濁液に徐々に導入した。その後、混合物をさらに60分間にわたって撹拌し、pHを再び、2.6に調節した。次いで、FeCl
3の溶液260mL(Fe
2O
3280g/脱塩水L)を懸濁液に計量添加した。最後に、混合物をさらに60分間にわたって撹拌し、次いで、懸濁液を濾過し、濾過ケーキを洗浄した。濾過ケーキを780℃で45分間にわたってか焼した。比較的低い彩度を有する、赤色干渉性で赤色吸収性の多層真珠光沢顔料が得られた。
【0158】
比較例4
ガラス微小板を基材とし、酸化鉄でコーティングされた赤色効果顔料、ECKART製のMIRAGE Sparkling Red。
【0159】
比較例5
米国特許第8,58,5818B1号の実施例1に従って、脱塩水1785mL中の、35μmのD
50を有する20〜80μm画分の合成マイカの懸濁液を83℃に加熱し、pHをHClで1.4に調節した。20%SnCl
4溶液50gを3.2g/分の計量速度で計量添加し、pHをNaOHで一定に維持した。次いで、混合物をさらに60分間にわたって撹拌し、次いで、40%TiCl
4溶液36gを3g/分で添加した。この場合にも、pHを、NaOHで一定に維持した。次いで、pHを3.0に調節し、その後、(FeCl
3)=39%の塩化鉄溶液を1.2g/分の速度で、一定のpHで添加した。FeCl
3320mLを添加した後に、懸濁液を濾過し、洗浄し、850℃でか焼した。穏やかな効果特性を有するブロンズ顔料が得られた。SEM横断面において、スペーサー層は識別できない。
【0160】
II 赤色効果顔料および比較例からの顔料の特性評価
IIa 粒径の測定
本発明の赤色効果顔料および比較例からの顔料のサイズ分布曲線を、製造者の指示に従ってMalvern Mastersizer 2000装置を使用して決定した。このために、それぞれの顔料約0.1gを水性懸濁液として、分散補助剤を添加することなく、一定の撹拌下で、パスツールピペットによって、測定装置のサンプル調製セル内に入れ、繰り返し分析した。個々の測定結果を使用して、中央値を生じさせた。散乱光シグナルをフラウンホーファー法によって評価した。
【0161】
本発明の文脈では、中央粒径D
50は、レーザー回折法によって得られるとおりの体積平均サイズ分布関数の累積度数分布のD
50を意味すると理解される。D
50は、顔料の50%が、報告されている値、例えば、20μm以下である直径を有することを示す。対応して、D
10およびD
90は、それぞれ、顔料の10%および90%が、それぞれの測定値以下の直径を有することを示す。
【0163】
として定義されるスパンΔDは、粒径分布の幅を示す。
【0165】
IIb 角度による色の測定
色および明度の値を測定するために、本発明の効果顔料および比較例からの顔料を、湿潤ラッカーの合計重量に基づいて、6重量%の顔料添加レベルで、慣用のニトロセルロースラッカー(Erco 2615e bronze mixing lacquer colorless;Maeder Plastiklack AG製)中に撹拌添加した。これを、それぞれの顔料を初めに入れ、次いで、ブラシを用いてラッカー中に分散させることによって行った。完成したラッカーを、アプリケータードローダウン装置(RK Print Coat Instr.Ltd.Citenco K 101ドローダウン装置)上のスパイラルアプリケーターを用いて、黒色/白色隠ぺいチャート(Byko−Chart 2853、Byk−Gardner製)上に40μm、76μm(実施例6)、または100μmの湿潤フィルム厚で施与し、次いで、室温で乾燥させた。スパイラルアプリケーターの選択は、それぞれの場合に、施与される顔料または基材のD
50に応じて、表2によって行われる。BYK−macマルチアングル測色計(Byk−Gardner製)を使用して、隠ぺいチャートの黒色背景上で、45°の一定の入射角度で(製造者指示による)、反射角度に対してさまざまな観察角度で、色値を決定した。色強度の特性決定を、彩度値C
*15を使用して達成したが、これを、黒色/白色隠ぺいチャートの黒色背景上で反射角度から15°離れた測定角度で測定した。強反射性サンプル(理想的な場合には、鏡)は、いわゆる反射角度で、入射光を事実上すべて反射する。ラッカー施与物を反射角度に対してより近くで測定するほど、強い干渉色が出現する。
【0169】
として定義される隠ぺい指数D
qを決定するために、IIbと類似しているが、10重量%の顔料添加レベルのラッカー施与物をスパイラルアプリケーターで、100μmの湿潤フィルム厚で、黒色/白色隠ぺいチャート(Byko−Chart 2853、Byk−Gardner製)に施与し、次いで、室温で乾燥させた。次いで、そのラッカー施与物の明度値L
*110°をBYK−macマルチアングル測色計(Byk−Gardner製)を用いて、黒色/白色隠ぺいチャートの黒色および白色背景上で110°の測定角度で記録した。45°の一定の入射角度では、測定配置110°は、反射角度からの差に関連する。観察角度は、照明面における鏡面反射から離れて測定される。本発明の効果顔料は、良好な隠ぺい力を有する。その隠ぺい指数D
qは、好ましくは≧0.41である。実施例1〜6の本発明の微小板形状赤色効果顔料の隠ぺい指数D
qは、表6から推測され得るとおり、それぞれの場合に、0.41を十分に上回る。
【0170】
IId 光沢の測定
光沢は、定方向反射の尺度である。光沢を決定するために、黒色/白色隠ぺいチャートの白色背景上のIIbからの塗布施与物を、Byk−Gardner製のMicro−Tri−Gloss光沢測定器を用いて、垂直に基づいて60°の測定角度で分析した。本発明の赤色効果顔料および比較例からの顔料の光沢値を表5において列挙する。実施例1〜6からの本発明の微小板形状赤色効果顔料のいくつかは、比較例1および2からの単層コーティングを有する顔料よりも明らかに高い光沢値を示す。表5からの光沢の測定値によって、従来技術と比較しての、本発明の顔料の非常に高い反射性が確認される。
【0172】
IIe 効果の測定
本発明の赤色効果顔料の光学的効果を客観的に記載するために、BYK−mac分光光度計(Byk−Gardner製)を用いて、IIbからのラッカー施与物を使用して効果の測定を実施した(Byk−Gardner Catalogue「Qualitaetskontrolle fuer Lacke und Kunststoffe」[Quality control for Lacquers and Adhesives]、2011/2012、97/98頁を参照されたい)。スパークル強度S_i、スパークル面積S_a、および粒状度Gについての対応する測定値を表6にまとめる。
【0174】
実施例1〜6からの本発明の微小板形状赤色効果顔料の効果値S_i、S_a、およびGは通常、比較例での値よりも高い。本発明の微小板形状赤色効果顔料の達成可能な光学的効果は、比較例1および2からの単層コーティングを有する従来の効果顔料の場合においてよりもかなり顕著である。
【0175】
IIf ワーリングブレンダー
工業界では、多くのラッカーが、循環系で加工される。この場合、ラッカー成分は、高いせん断力を受ける。ワーリングブレンダー試験は、これらの条件をシミュレーションし、かつ環状回路安定性/せん断安定性を評価するために役立つ。この試験では、具体的には、そのコーティングが支持材料に十分に係留されていない顔料は、未処理の施与物と比較すると、明度値の著しい偏差を示す。したがって、ワーリングブレンダー試験は、せん断力に関する顔料コーティングの相互接着についての尺度としてみなすことができる。このために、本発明の赤色効果顔料または比較例からの顔料を下記の処方に従って秤量し、880mLビーカー内で、慣用のアクリルラッカーを用いて、段階的にペーストに変換した。その後、粘度を、1:1の酢酸ブチル/キシレンを用いてDIN 4mmカップにおいて17秒に調節した。合計で600gのラッカーを生産し、そのうちの400gを、ジャケット付きの水冷1kg容器に導入し、特殊なアタッチメントを用いて、Dispermat(Waring Blenders製)のもとで撹拌した。撹拌時間は、13,500rpmで8分間であり、次いで、ラッカー200gを除去し、残りをさらに12分間にわたって撹拌した。
処方:6%顔料
8%酢酸ブチル85
86%無色のアクリルラッカー
1:1の30%ブチル85/キシレン
次の設定に従って噴霧マシンおよびSata LP−90スプレーガンを用いて、それぞれ未処理および処理済みラッカー200gを試験シートに施与した:
設定:針:1.3.4
圧力:4バール
操作:15〜20μmの乾燥ラッカー層厚が存在するように、スプレー操作の回数を選択した。
慣習的に、ワーリングブレンダー試験後の施与物において、反射角度近くで測定される光沢の差および色の差が相対的に小さい場合に、効果顔料は、せん断安定とみなされる。未処理サンプルに対するΔC
*15°値は、理想的には、2未満であるべきである。表7は、本発明の実施例1および3での未処理サンプルに対する、ワーリングブレンダー試験に掛けたサンプルの色の変化ΔC
*15°および光沢の変化Δ60°光沢を示している。
【0177】
実施例1および3からの本発明の赤色効果顔料は、試験の基準を満たしている。色の差は、無視できるほどに小さい。顕微鏡下でも、生じたコーティングの剥離または他の表面欠陥などの何らかの変化をほとんど検出することができなかった。本発明の赤色効果顔料は、そのスペーサー層にも関わらず、極めてせん断に安定であると見出されている。
【0178】
IIg 化学的安定性の決定
プラスチックパネルへのラッカーの施与物に関して、本発明の赤色効果顔料および比較例からの顔料の化学的安定性を決定した。それぞれの顔料6gを、90gの慣用の無色のアクリルラッカーおよび10gの酢酸ブチル85の混合物中に撹拌添加した。その後、1:1の比の酢酸ブチル85およびキシレンの混合物を用いて、粘度をDIN 4mmカップにおいて17秒に調節した。それぞれの場合に、このラッカー100gを、噴霧マシンを用いてIIfと同様に隠ぺい施与でパネルに施与した。コーティングの後に、パネルを80℃で30分間にわたって焼き付けた。24時間後に、パネルを10%水酸化ナトリウム溶液中に、その半分の高さまで浸漬させた。7日間の接触時間の後に、パネルを脱塩水ですすぎ、次いで、2時間の乾燥時間の後に、損傷および/または退色について視覚的に評価した。加えて、退色を、BYK−mac(Byk−Gardner製)を用いて分析した。色の変化を、15°の測定角度で、対応する非曝露サンプルに対する曝露サンプルのΔE値を使用して特徴づけた。結果を、下記の表8に示す。
【0180】
ΔE(15°)<3を有する顔料を、薬品に対して安定とみなすことができる。実施例1からの本発明の赤色効果顔料は、限界値未満である一方で、比較例3からの顔料は明らかに、限界値を越えている。
【0181】
IIh 蛍光X線分析(XRF)
本発明の赤色効果顔料および比較例からの顔料の金属酸化物、金属水酸化物、および/または金属酸化物水和物の含量を、蛍光X線分析(XRF)によって決定した。このために、それぞれの顔料を、四ホウ酸リチウムガラスタブレットに組み込み、固体サンプル測定カップに固定し、そこから分析した。使用された測定装置は、Thermo Scientific製のAdvantix ARLシステムであった。測定値を表9に示す。さまざまな含量の値を、ここでは、チタンではTiO
2として、鉄ではFe
2O
3として、ZrではZrO
2として、SiではSiO
2として、およびスズではSnO
2として報告する。
【0183】
IIi 凝縮水試験
凝縮水安定性を決定するために、本発明の赤色効果顔料および比較例からの顔料を水性ラッカー系に組み込み、試験施与物を、アルミニウムシート上への噴霧塗装によって生成した。ベースコートを慣用の一成分クリアコートで上塗りし、次いで、焼き付けた。これらの施与物を、DIN 50 017(水凝縮−一定気圧)に従って試験した。接着強度を、試験の終了直後に、非曝露サンプルと比較して、DIN EN ISO 2409に従う碁盤目試験によって試験した。この文脈において、Cc0は、変化なしを意味し、Cc5は、非常に重大な変化を意味する。DIN 53230に従って、凝縮水曝露の直後に、膨張特性を視覚的に評価した。この文脈において、指数0は、変化なしを意味し、指数5は、非常に重大な変化を意味する。最後に、DOI(
distinctness
of
image)を、Byk−Gardner製のWave−scan IIを用いて決定した。
【0185】
比較例2からの顔料は、著しい膨張特性および不十分な中間層接着を有した。DOIは、凝縮水曝露後の高度な微細構造によって、もはや測定することができなかった。対照的に、実施例8からの本発明の赤色効果顔料は、安定していることが見出され、試験の前後で、事実上変化を示さなかった。
【0186】
IIj 微小板形状非金属基材の平均厚さ、層2および3の平均層厚、コーティング全体の平均層厚、スペーサー層の平均高さh
a、ならびにキャビティの平均高さh
Hの決定
このために、本発明の赤色効果顔料を、10%の濃度で、スリーブブラシを用いて、2成分クリアコートであるSikkens GmbH製のAutoclear Plus HS中に組み込み、スパイラルアプリケーターを用いてフィルムに施与し(26μm湿潤フィルム厚)、乾燥させた。24時間の乾燥時間の後に、このアプリケータードローダウンの横断面を生じさせた。その横断面を、SEMによって分析し、その際、微小板形状非金属基材の平均厚さの決定について統計学的に有意であるように、少なくとも100のそれぞれの顔料を分析した。層2および3の平均層厚、コーティング全体の平均厚さ、スペーサー層の平均高さh
a、ならびにキャビティの平均高さh
Hを決定するために、上部および下部基材表面、すなわち、それぞれの場合に、SEM横断面において認識可能な微小板形状非金属基材の長手側を、それぞれ、基線として使用した。この場合、横断面の走査電子顕微鏡写真において、微小板形状基材の表面に沿って、横断面の走査電子顕微鏡研写真の左および右側エッジから他方へと、直線によって、微小板形状非金属基材−任意選択の層1または微小板形状非金属基材−層2の2つの交差点を接続することによって、基線を引いた。AxioVision 4.6.3.イメージプロセシングソフトウェア(Zeiss製)を用いて、横断面の走査電子顕微鏡写真を分析した。
【0187】
これらの2つの基線から90°の角度で、十分な数の平行線を50nm間隔で引いて、効果顔料の横断面の全走査電子顕微鏡写真上に格子を設けるようにした(
図4)。横断面の走査電子顕微鏡写真の倍率は、Polaroid545(4インチ×5インチ)に基づいて好ましくは少なくとも50,000倍とした。微小板形状非金属基材のそれぞれの上部および下部基線から出発して、それぞれの場合に層3の方向で、任意選択の層1と層2との、層2とスペーサー層との、スペーサー層と層3との、および層3と環境とのそれぞれの境界面でのこれらの線との交差点との間の距離を手動で測定した。この場合、50nm間隔で引かれた線の1つが、接点またはスペーサーのすぐ上にあることがあった。この場合、線3と環境との境界面でのそれぞれの交差点のみを記録した。これらの測定値から、差を生じさせることによって、層2および3の層厚、コーティング全体の厚さ、任意選択で存在するさらなる層の層厚、ならびにスペーサー層の高さh
aを得た。
【0188】
キャビティの平均高さh
Hを決定するために、これらの平行線と、スペーサー層内の上部および下部キャビティ境界との交差点を使用した。平均層厚、平均高さh
H、および平均高さh
aの上記で示した値を決定するために、こうして決定された層厚、高さh
a、および高さh
Hの個々の値を使用して、それぞれの算術平均を生じさせた。統計学的に有意であるように、上記の測定を、少なくとも100の線上で実施した。用語「平均」は、すべての場合において、算術平均を意味する。
【0189】
スペーサー層を有さないが、統計学的に分布した空孔をコーティング内に有し得る比較例からの顔料の横断面も、横断面の走査電子顕微鏡写真を使用して、上記の方法によって検査した。この場合、平行線の1つが、1個または複数の空孔の上に生じていた場合、その空孔(複数可)の高さ、それらの空孔中心点(複数可)、および基材表面から空孔中心点(複数可)までの距離を決定した。
【0190】
横断面とは別に、本発明の赤色効果顔料を、FIB法(FIB=集束イオンビーム)によって切断することもできる。このためには、高度に加速されたイオン(例えば、ガリウム、キセノン、ネオン、またはヘリウム)の微細なビームをイオン光学素子によってあるポイントに集束し、処理すべき効果顔料表面上で線ごとにガイドする。効果顔料表面と衝突すると、イオンは、そのエネルギーの大部分を放射し、このポイントでコーティングを破壊し、それが、線ごとの材料除去をもたらす。また、次いで記録された走査電子顕微鏡写真を使用して、上記の方法によって、平均高さh
a、層2および3の平均層厚、ならびにコーティング全体の平均層厚を決定することができる。また、FIB法によって切断された効果顔料の走査電子顕微鏡写真を使用して、微小板形状非金属基材の平均厚さを決定することができる。
【0191】
したがって、本発明の赤色効果顔料の利点は、様々な特性のすべての合計から明らかである。本発明の赤色効果顔料は、高い透明性、非常に良好な機械的および化学的安定性、ならびに高い光沢および色強度を有する。比較顔料は、全体で考慮すると、不十分にしか上述の特性を有しない。
【0193】
表11は、検査した顔料のスペーサー層の平均高さh
aを示している。比較例1〜5からの顔料とは対照的に、本発明の赤色効果顔料はすべて、スペーサー層を有する。
【0194】
比較例1〜5からの顔料は、いずれのスペーサー層も有さない。表11において、比較例1では、σh
Rma[%]欄の値は、基材表面から空孔中心点までの標準偏差を意味する。しかしながら、比較例1からの顔料は、統計学的に分布する空孔をわずかしか含有しないので、ネットワーク密度S
Dは、65.0%である。基材表面から空孔中心点までの標準偏差は、24.7%であり、これは、その空孔が、コーティング全体内に統計学的に分布していることを実証している。この状況は、実施例1〜4からの本発明の赤色効果顔料とは異なる。この場合は、スペーサー層の中心点の相対高さh
Rmaの標準偏差は、それぞれの場合に、<5%であり、これは、そのそれぞれのスペーサー層が、コーティング内の規定の位置にあることを示している。したがって、比較例1からの顔料の基材表面から空孔中心点までの距離の標準偏差を、本発明の赤色効果顔料のスペーサー層の中心点の相対高さの標準偏差と比較することができる。
【0195】
IIK 走査電子顕微鏡写真
Supra35走査電子顕微鏡(Zeiss製)を用いて、本発明の赤色効果顔料の横断面を使用して、走査電子顕微鏡写真を得た。エネルギー分散型X線微量分析(EDX分析)を、EDAX製のEDAX Sapphire装置を用いて実施した。
【0196】
III 用途例
用途例1:ボディローション
【0198】
実施例1からの効果顔料を、ボディローション配合物の合計重量に基づいて0.1%〜2.5重量%の範囲内で使用することができる。配合物100重量%までの補充は、水で行うことができる。Keltrol CG−Tを相Aに分散させ、75℃に加熱した。相Bを別に、75℃に加熱した。次いで、相Bを相Aに徐々に添加した。撹拌下で、エマルジョンを室温に冷却し、相Cを個々に添加した。
【0201】
実施例3からの効果顔料を、アイシャドウ配合物の合計重量に基づいて5%〜30.0重量%の範囲内で使用することができる。配合物100重量%までの補充は、イソヘキサデカンで行うことができる。相Aを混合し、85℃に加熱し、次いで、相Bを撹拌下で相Aに添加した。適切な容器に分注した後に、混合物を室温に冷却する。
【0204】
実施例5からの効果顔料を、シャワージェル配合物の合計重量に基づいて0.01%〜1.0重量%の範囲内で使用することができる。配合物100重量%までの補充は、水で行うことができる。相Aを撹拌し、次いで、相Bを添加し、均一な外観が達成されるまで撹拌した。相Cを別々に秤量し、短時間混合し、相ABに添加した。次いで、再び混合物を撹拌し、相Dを個々に添加した。
【0207】
実施例7からの効果顔料を、アイシャドウ配合物の合計重量に基づいて5.0%〜40.0重量%の範囲内で使用することができる。配合物100重量%までの補充は、タルクで行うことができる。相Aを高速ミキサー内で2500rpmで30秒間にわたって混合した。次いで、相Bを添加し、混合物を同じミキサー内で3000rpmで60秒間にわたって撹拌した。最後に、粉末混合物を、アイシャドウプレスを用いて100バールで30秒間にわたって形状にプレスする。
【0210】
実施例7からの効果顔料を、マスカラ配合物の合計重量に基づいて1.0%〜10.0重量%の範囲内で使用することができる。配合物100重量%までの補充は、相Aからの水で行うことができる。相Aを、高せん断下で撹拌した。相Bを別々に秤量した。相Aおよび相Bを別々に85℃に加熱し、次いで、相Bを相Aに添加した。次いで、相ABを45℃に冷却し、冷却中に、相Cを撹拌下で徐々に添加した。
【0213】
実施例6からの効果顔料を、ヘアジェル配合物の合計重量に基づいて0.01%〜2.0重量%の範囲内で使用することができる。配合物100重量%までの補充は、水で行うことができる。相Aが透明になるまで、Laponite XLGを水と共に撹拌した。次いで、撹拌しながら、実施例6からの効果顔料を相Bに添加した。次いで、相Bの残りの成分を徐々に添加した。
【0216】
実施例5からの効果顔料を、ボディパウダー配合物の合計重量に基づいて0.2%〜5.0重量%の範囲内で使用することができる。配合物100重量%までの補充は、Synafil S 1050で行うことができる。相Aを混合し、次いで、パウダーを適切な容器に分注した。
【0219】
実施例6からの効果顔料を、リップグロス配合物の合計重量に基づいて0.10%〜8.00重量%の範囲内で使用することができる。配合物100重量%までの補充は、Versagel ME 750で行うことができる。相Aを85℃に加熱し、次いで、実施例6からの効果顔料を相Bに添加し、稠度が均一になるまで撹拌し、次いで、リップグロス容器に分注した。
【0222】
実施例10からの効果顔料を、リップスティック配合物の合計重量に基づいて0.5%〜20.0重量%の範囲内で使用することができる。配合物100重量%までの補充は、Eutanol Gで行うことができる。相Aを85℃に加熱し、次いで、相Bを相Aに添加し、混合した。次いで、この混合物を75℃の温度でリップスティック金型に分注した。
【0225】
実施例2からの効果顔料を、アイライナー配合物の合計重量に基づいて0.5%〜8.0重量%の範囲内で使用することができる。配合物100重量%までの補充は、水で行うことができる。Optigel WX−PCを相Aの水に分散させ、10分間にわたって撹拌した。相Aおよび相Bを別々に80℃に加熱した。その後、相Bを、撹拌下で相Aに徐々に添加した。45℃に冷却した後に、相Cの成分を徐々に添加し、混合物を適切なパッケージに分注した。
【0228】
実施例4からの効果顔料を、ムース配合物の合計重量に基づいて0.1%〜8.0重量%の範囲内で使用することができる。配合物100重量%までの補充は、Dow Corning 9041 Elastomerで行うことができる。相Aを混合し、すべてが溶融するまで加熱した。相Bを別々に秤量し、高速ミキサーで2400rpmで60秒間にわたって混合した。溶融相Aの半分を相Bに添加し、混合物を再び、ミキサー内で2400rpmで30秒間にわたって混合した。次いで、相Bの残りも、相Aに添加し、混合物を再び、2400rpmで30秒間にわたって混合した。最後に、相Cを相ABに添加し、混合物を再び、高速ミキサー内で2400rpmで30秒間にわたって混合する。
【0231】
実施例6からの効果顔料を、マニキュア配合物の合計重量に基づいて0.1%〜8.0重量%の範囲内で使用することができる。配合物100重量%までの補充は、International Lacquers Nailpolishで行うことができる。相Aおよび相Bを混合し、次いで、適切な容器に分注した。
【0232】
用途例13:ソフトタッチ効果を有するマニキュア
【0234】
実施例1からの効果顔料を、マニキュア配合物の合計重量に基づいて0.1%〜8.0重量%の範囲内で使用することができる。配合物100重量%までの補充は、International Lacquers Nailpolishで行うことができる。相Aを混合し、相Bに添加し、次いで、マニキュアを適切な容器に分注した。
【0235】
用途例14:水性マニキュア
実施例1〜7からの効果顔料を、WO 2007/115675 A2の実施例1による水性マニキュアにおいて使用することができる。この場合の顔料添加レベルは、配合物の合計重量に基づいて0.1%〜10.0重量%である。
【0238】
実施例7からの効果顔料を、アイシャドウ配合物の合計重量に基づいて0.10%〜20.00重量%の範囲内で使用することができる。配合物100重量%までの補充は、水で行うことができる。相Aを撹拌し、次いで、相Bの成分を個々に相Aに添加し、稠度が均一になるまで撹拌した。その後、相Cの成分を相ABに個々に添加し、混合物を、再び稠度が均一になるまで撹拌した。