特許第6957352号(P6957352)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6957352
(24)【登録日】2021年10月8日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】光ファイバセンシング
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/353 20060101AFI20211021BHJP
【FI】
   G01D5/353 A
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-540753(P2017-540753)
(86)(22)【出願日】2016年2月5日
(65)【公表番号】特表2018-504603(P2018-504603A)
(43)【公表日】2018年2月15日
(86)【国際出願番号】GB2016050274
(87)【国際公開番号】WO2016124944
(87)【国際公開日】20160811
【審査請求日】2018年11月9日
(31)【優先権主張番号】1502025.8
(32)【優先日】2015年2月6日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512293220
【氏名又は名称】オプタセンス ホールディングス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ルイス アンドリュー
【審査官】 吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−41847(JP,A)
【文献】 特開2003−344147(JP,A)
【文献】 特表2010−506496(JP,A)
【文献】 特表2015−500483(JP,A)
【文献】 特開2010−236875(JP,A)
【文献】 特表2006−519729(JP,A)
【文献】 特開平9−329415(JP,A)
【文献】 特開2007−187613(JP,A)
【文献】 米国特許第5355208(US,A)
【文献】 特開2003−14418(JP,A)
【文献】 特開平11−160329(JP,A)
【文献】 特開平6−88737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/26−5/38
G01B 11/16
G02B 6/00
H04R 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファイバセンシング装置(100)であって、
光放射を用いてセンシングファイバに問い合わせを行い、該ファイバから戻された光信号を検出する問い合わせユニット(104)と、
予想される信号の少なくとも1つの属性を有する音響試験信号によって励起された前記ファイバの部分から戻された前記光信号を解析し、前記検出された光信号に基づいて前記装置の少なくとも1つの動作特性を決定し、前記属性は、前記予想される信号の、周波数、振幅、周波数特性及び/又は振幅特性のばらつきの少なくとも1つを含むものである、評価モジュール(115)を含む処理回路と、
を備え、
前記評価モジュール(115)は、
前記励起部分からの前記検出された光信号から導出された少なくとも1つの特性を、少なくとも1つの音響信号又は音響信号タイプを特徴付けるシグネチャと比較する、ように構成されることを特徴とする装置(100)。
【請求項2】
ファイバセンシング装置(100)であって、
センシングファイバ(102)と、
前記ファイバ(102)の前記部分を前記音響試験信号によって励起するアクチュエータ(118)と、
を更に備える、請求項1に記載のファイバセンシング装置(100)。
【請求項3】
前記動作特性は、
a.前記センシング装置(100)が機能している旨の指標、
b.前記センシング装置(100)が機能していない旨の指標、
c.少なくとも1つの動作範囲にわたる前記装置(100)の感度の指標、
d.前記装置(100)の較正の指標、
の少なくとも1つであるか、又は
少なくとも1つの所定の特性と比較される、
請求項1から2のいずれかに記載のファイバセンシング装置(100)。
【請求項4】
前記評価モジュール(115)は、
前記励起部分からの前記検出された光信号の少なくとも1つの特性を、前記アクチュエータ(118)試験信号から導出された1又は2以上の特性と比較する、及び/又は
前記検出された信号を解析し、該解析に基づいて、動作パラメータを変化させることによって問い合わせユニット(104)の性能を1又は2以上の動作範囲にわたって最適化する、ように構成される、
請求項3に記載のファイバセンシング装置(100)。
【請求項5】
前記評価モジュール(115)は、前記検出された信号を解析するように構成され、決定された特性が少なくとも1つの所定の基準を満たさない場合、前記装置(100)は、前記解析に基づいて少なくとも1つの動作パラメータを変更するように構成される、
請求項1から4のいずれかに記載のファイバセンシング装置(100)。
【請求項6】
前記問い合わせユニット(104)は、他のファイバ(102)部分に関してセンシングを実行するように構成される、
請求項1から5のいずれかに記載のファイバセンシング装置(100)。
【請求項7】
分散型音響センサ(DAS)を備える、
請求項1から6のいずれかに記載のファイバセンシング装置(100)。
【請求項8】
センシング装置(100)の少なくとも1つの動作特性を評価する方法であって、
a.光放射を用いて光ファイバ(102)に問い合わせを行うステップと、
b.予想される信号の少なくとも1つの属性を有する音響試験信号によって励起された光ファイバ(102)の部分から戻された光信号を検出するステップと、
c.前記励起部分からの前記検出された光信号を解析して、前記励起部分からの前記検出された光信号から導出された少なくとも1つの特性を、少なくとも1つの音響信号又は音響信号タイプを特徴付けるシグネチャと比較することによって、前記センシング装置の少なくとも1つの動作特性を決定し、前記属性は、前記予想される信号の、周波数、振幅、周波数特性及び/又は振幅特性のばらつきの少なくとも1つを含むものである、ステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
前記試験信号は、1又は2以上の既知の特性を有し、前記解析するステップは、前記検出された光信号が、前記試験信号の少なくとも1つの既知の特性を有する音響信号を示すかどうかを判定するステップを含む、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
決定された特性が少なくとも1つの所定の基準を満たさない場合に警告を発するステップ、及び/又は
前記センシング装置の少なくとも1つの動作パラメータを変更するステップ、を含む、
請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記センシング装置は、システムの監視において使用され、前記試験信号は、前記システムの少なくとも1つの予想音響信号の少なくとも1つの属性を有する少なくとも1つの音響信号を含み、前記システムは、任意的に列車又は線路を含む、請求項8から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの予想音響信号は、前記システムにおける(i)故障、(ii)安全にとって非常に重要なシナリオ、のうちの1つ又は2つ以上を示す信号である、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記検出された信号を解析する前記ステップは、
a.音響信号が受け取られたかどうかを判定するステップと、
b.検出された信号の少なくとも1つの特性を、前記試験信号に基づく少なくとも1つの特性と比較するステップと、
のうちの少なくとも1つを含む、
請求項8から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記音響試験信号によって励起された前記ファイバ(102)の前記部分以外の前記ファイバ(102)の部分について、前記ファイバ(102)のこのような他の部分から戻された光放射を検出することによって音響センシングを実行するステップをさらに含む、請求項8から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記試験信号は、(i)特徴的な振幅及び/又は周波数、(ii)特徴的な変動振幅及び/又は変動周波数、(iii)デジタル信号を提供できる一連のパルス振動、(iv)疑似ランダム信号、(v)音響インパルスの反復シーケンス、のうちの少なくとも1つを含む、
請求項8から14のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバセンシング装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバセンサは、例えば地球物理学的用途(ジオフォン又はハイドロフォンの代わりに、又はこれらと共に)、(周辺セキュリティなどの)セキュリティ用途及び監視用途などの様々な用途で使用することができる。監視機能の一例に、鉄道などの複雑なシステムの監視を含む、インフラストラクチャの監視がある。光ファイバセンサは、例えば線路上の列車又はその他の移動資産の存在及び位置を検出するために使用することができる。また、このようなセンサは、資産状態の監視を行うこともでき、例えば資産によって生じる痕跡の頻度が「通常の」頻度に一致するかどうかを判断することができる。これらのセンサは、例えば落石、土砂崩れ、トンネル及び橋の崩壊シナリオの監視、並びに許可された動き及び許可されていない動きの監視(すなわち、線路上の関係者又は侵入者を「リスン」すること)などの、より一般的なインフラストラクチャ監視を行うこともできる。
【0003】
分散型音響センシング(DAS)は、光学的に問い合わせを受けてその長さに沿った音響/振動活動の検知を行う一定長の縦走ファイバを使用する。ファイバの長さは、一般にシングルモードファイバであり、通常はミラー、反射器、回折格子を含まず、又はその長さに沿った光学特性の変化がない。ファイバの長さは、受信信号を解釈するために処理目的で複数のチャネルに分割される。
【0004】
分散型音響センシングでは、レイリー後方散乱現象を利用することができる。標準的な光ファイバのランダムな不均質性により、ファイバに注入されたパルスからの少量の光がファイバの長さに沿った数多くの位置から後方に反射される結果、単一の入力パルスに応答する連続的な帰還信号が生じる。ファイバに沿って外乱が発生した場合、この外乱がその地点の後方散乱光を変化させる。この変化を受信機において検出し、ここからソース外乱信号を特徴付けることができる。
【0005】
音響センシング装置は、例えば長さ約40kmの縦走ファイバを用いて動作し、検知されたデータを(帰還信号が検出された時間に基づいて)約10mの長さに分解することができる。このような例では、ファイバの長さに沿ったリアルタイムデータを提供するように各10mの長さに問い合わせを行うことができる。
【0006】
ファイバには不連続部がないので、各チャネルに対応するファイバ区分の長さ及び配置は、ファイバの問い合わせによって決まる。これらは、ファイバの物理的配置、適用可能な場合には監視中の資産、さらには必要とされる監視のタイプに応じて選択することができる。各ファイバ区分の長さ(すなわち、チャネル解像度)は、ファイバを何ら変更することなく、入力パルス幅及びデューティサイクルなどのセンシング装置の動作パラメータを調整することによって変更することができる。
【0007】
分散型センシングは、長距離、高分解能、高感度の監視をもたらすことができる。
【0008】
他のファイバセンシング技術としては、ブリルアンに基づくセンシング、(間隔を置いたファイバブラッググレーティングを含むようにファイバを修正した)ファイバブラッググレーティングに基づくセンシング、及び(ファイバの所定の区分を通過した光を通過していない光と干渉させて相互位相差を監視する)ヘテロダイン干渉法が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】英国特許第2442745号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書では、ファイバセンシング装置であって、
センシングファイバと、
ファイバの一部を音響試験信号によって励起するアクチュエータと、
光放射を用いてセンシングファイバに問い合わせを行い、ファイバから戻された光信号を検出する問い合わせユニットと、
ファイバの励起部分から戻された光信号を解析し、この信号に基づいて装置の少なくとも1つの動作特性を決定する評価モジュールを含む処理回路と、
を含むファイバセンシング装置について説明する。
【0011】
1つの例では、評価モジュールを、励起部分から音響外乱を示す信号が戻されるかどうかを評価するように構成することができる。ファイバ部分が励起された時には、音響外乱を示す信号が存在すると想定することができる。従って、このような信号が存在しないということは、装置が予想通りに機能していないことを示す。この原因としては、ファイバが破損したこと、或いは検出器及び/又は光放射源が機能していないことを挙げることができる。このような例では、装置が、装置自体の完全性監視を効果的に実行する。このような場合、装置が機能している旨又は機能していない旨の指示を動作特性とすることができる。
【0012】
いくつかの例では、評価モジュールを、戻された信号を評価して、装置の性能に関する一種の「品質保証」を実行するように構成することができる。このような例では、動作特性が、システムの感度を示すことができる。このような例では、アクチュエータ試験信号を、装置の所定の動作範囲を試験するように構成することができる。1つの例では、アクチュエータ試験信号が、予想信号、すなわち装置が受信及び/又は検出すると予想される音響信号の少なくとも1つの属性(周波数、振幅、周波数特性及び/又は振幅特性のばらつきなど)を有することができる。このような試験信号が正しく検出された場合、オペレータは、試験信号のベースである予想信号がファイバに生じた場合、その予想信号も検出されると確信することができる。
【0013】
これとは別に、又はこれに加えて、評価モジュールは、装置の較正を評価するように構成することもできる。例えば、評価モジュールは、検出された信号を解析し、この解析に基づいて、問い合わせユニットの性能を1又は2以上の動作範囲にわたって最適化するように構成することができる。例えば、問い合わせユニット及び/又は処理回路は、アクチュエータ試験信号が望む通り/予想通りに復号されるまで、問い合わせユニットの動作パラメータ(パルス周波数、パルス間隔、サンプリング周波数、センシングチャネルの長さ、信号復号アルゴリズムなど)を変化させることができる。
【0014】
このような装置は、装置が機能していることや、或いは所望の基準又は所望の態様で機能していることを保証するために容易に試験できるという点で利点がある。
【0015】
1つの例では、評価モジュールを、励起部分から検出された信号の少なくとも1つの特性を少なくとも1つの所定の特性と比較するように構成することができる。
【0016】
いくつかの例では、評価モジュールを、少なくとも1つの信号又は信号タイプを特徴付ける1又は2以上の痕跡(シグネチャ)を保持し、又は受け取るように構成することができる。このような(単複の)痕跡は、信号の表現、及び/又は信号の1又は2以上の特性を含むことができる。評価モジュールが、特定の動作特性を試験するように設計された検出試験信号を信号痕跡に対応するものとして認識できない場合、このことは、動作パラメータを変更すべき旨、及び/又は装置が予想信号を正しく監視するように機能していない旨を示すことができる。しかしながら、他の状況において(例えば、ファイバの別の部分で、又は試験信号を適用していない間に)信号痕跡に対応する信号が検出された場合には、この信号を用いて警告を発することができる。
【0017】
評価モジュールは、検出された試験信号(又は他の信号)の少なくとも1つの特性を(単複の)痕跡と比較して、信号タイプ及び/又はその検出の精度又は感度を決定するように構成することができる。例えば、検出された光信号を、アクチュエータ試験信号から解析的に導出された予想信号と比較することができ、或いはアクチュエータ試験信号から1又は2以上の特性を導出し、検出された光信号から導出された(単複の)特性と比較することができる。
【0018】
試験信号が検出されない場合、或いは(いくつかの例では、少なくとも1回再較正を試行した後に)検出された試験信号が所定のパラメータに対応しない場合、このことは、監視装置の故障又は最適以下の動作を示すことができる。
【0019】
評価モジュールは、動作特性を示す出力を生成するように構成することができる。処理回路は、警告モジュールをさらに含むことができる。このような例では、評価モジュールが、1又は2以上の動作特性が所定の基準を満たす/満たさないことを示す場合に、警告モジュールが警告を発することができる。警告は、試験信号の検出失敗についての警報又は可視表示を含むことができる。
【0020】
これとは別に、又はこれに加えて、警告モジュールは、他の装置又はシステムをフェイルセーフモードに入らせる信号を提供するように構成することができる。例えば、安全にとって非常に重要な監視の文脈では、装置を信頼できない場合、又は適切な動作範囲において信頼できない場合、このことは、例えば装置のいかなる制限によっても不当な安全リスクが生じないことを保証するために被監視システムにおけるフェイルセーフモードの動作を引き起こすことができる重要な情報である。
【0021】
このような例では、警告が行われないことにより、ファイバセンシング装置が使用時に監視機能を実行できるという確信が得られる。
【0022】
1つの実施形態では、アクチュエータが、例えばハンマ又はサンパ装置などの音響源を含むことができる。この音響源は、地面に作用して、例えば埋設されたファイバの近くの地面を励起するように構成することができる。ファイバが線形資産(例えば、線路又はパイプラインなど)などの構造に取り付けられ、又はその近くに配置されている場合、アクチュエータは、その構造又はその近くに作用することができる。アクチュエータは、反復的音響インパルスを供給できる振動音響源とすることができる。アクチュエータの出力は、所望の特性を有する試験信号を生成するように制御することができる。
【0023】
1つの例では、問い合わせユニットが、試験期間中に他のチャネルに関して(すなわち、アクチュエータ試験信号によって励起されたファイバの部分とは異なる、又は離間したファイバ部分について)センシングを実行するように構成される。これにより、アクチュエータ試験信号が検出された(及び/又は正しく検出された)場合には、装置が予想通りに機能しているという高い確信が得られる。当然ながら、このような監視は、他の時点で実行することもできる。試験期間は延長することができ、例えば連続的なもの又は実質的に連続的なものとすることができる。
【0024】
装置は、分散型音響センサ(DAS)を含むことができる。DASは、動作パラメータを容易に変更できる柔軟なファイバセンシング装置を提供する。
【0025】
本発明の第2の態様は、センシング装置の少なくとも1つの動作特性を評価する方法であって、
光放射を用いて光ファイバに問い合わせを行うステップと、試験信号によって励起された光ファイバの部分から戻された光放射を検出するステップと、
検出された光放射を解析して、センシング装置の少なくとも1つの動作特性を決定するステップと、
を含む方法を提供する。
【0026】
1つの例では、試験信号が、1又は2以上の既知の特性を有し、解析するステップが、検出された光信号が試験信号の少なくとも1つの既知の特性を有する音響信号を示すかどうかを判定するステップを含むことができる。
【0027】
本発明の別の態様は、ファイバセンシング装置であって、
光放射を用いてセンシングファイバに問い合わせを行い、ファイバから戻された光信号を検出する問い合わせユニットと、
ファイバの試験信号によって励起された部分から戻された光信号を解析し、検出された光信号に基づいて装置の少なくとも1つの動作特性を決定する評価モジュールを含む処理回路と、
を含むファイバセンシング装置を提供する。
【0028】
本発明の別の態様は、センシング装置の少なくとも1つの動作特性を決定するための、試験信号によって励起されたセンシングファイバの部分から戻された光信号の使用である。
【0029】
本発明は、実質的に本明細書において添付図面を参照しながら説明するような方法、装置及び/又は使用にまで及ぶ。本発明の1つの態様におけるあらゆる特徴は、本発明の他の態様にあらゆる適切な組み合わせで適用することができる。具体的には、方法の態様を装置の態様に適用することができ、その逆もまた同様である。さらに、一般にハードウェアで実装される特徴は、例えば処理回路によって実行されるソフトウェアで実装することができ、その逆もまた同様である。本明細書におけるソフトウェア及びハードウェアの特徴についてのあらゆる言及は適宜に解釈すべきである。
【0030】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい特徴を純粋に一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の1つの実施形態によるシステムの概観を示す図である。
図2】線路に作用するように構成されたアクチュエータの例を示す図である。
図3】監視される線路の例を示す図である。
図4】本発明の1つの実施形態による方法の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1を参照すると、細長い標準的なシングルモード光ファイバ102を含むセンシング装置100が、分散型音響センシング(DAS)問い合わせユニット104に接続されている。光ファイバ102は、例えば(埋められた又は地表の)境界線及び囲い線などの境界、或いはパイプライン、電路、道路又は線路などの線形資産などの、監視することが望ましいいずれかの経路に沿って配置することができる。経路は、真っ直ぐである必要はない。
【0033】
問い合わせユニット104は、ファイバ102の全長に沿った分散型センシングを提供するように、ファイバ102内に光を発し、ファイバ102から戻された光を検出するように適合される。この例のユニット104は、実質的に英国特許第2442745号に記載されている通りのものであり、光時間領域後方散乱測定法(OTDR)を用いて、長さが10mの約4000個の隣接するセンシング「ビン」の同時独立センシング能力を提供する。英国特許第2442745号に記載されるように、レイリー後方散乱現象によって、ファイバに入力された光の一部が後方に反射して問い合わせユニット104に戻され、問い合わせユニット104がこの光を検出して、ファイバ102の近くの音響外乱を表す出力光信号を提供する。従って、問い合わせユニット104は、既知の光周波数差によって分離された複数の光パルスを生成する、少なくとも1つのレーザ108と、少なくとも1つの光変調器110とを含むことが好都合である。問い合わせユニット104は、ファイバ102内の内在する散乱箇所からレイリー後方散乱された放射を検出するように構成された少なくとも1つの光検出器112も含む。
【0034】
他のレイリー後方散乱DASセンサの問い合わせスキームも知られており、本発明の実施形態の実施において使用することもできる。また、ブリルアン散乱又はラマン散乱に基づくスキームも知られており、ヘテロダイン干渉法に基づくスキームと同様に本発明の実施形態において使用することができる。
【0035】
光検出器112は、検出された光信号を示す信号を処理回路114に送るように構成される。処理回路114は、後述するように信号を解析することができ、警告モジュール116への出力を有する評価モジュール115を含む。処理回路114は、メモリ120を含む。メモリ120は、検出信号と比較される信号の痕跡を保持するように構成される。
【0036】
処理回路114は、問い合わせユニット104と同じ場所に配置することも、又は問い合わせユニット104から離れることもでき、実際には適切に指定されたPCによって実現できるユーザインターフェイス/グラフィックディスプレイを含むことができる。あらゆるユーザインターフェイスは、処理回路114と同じ場所に配置することも、又は処理回路114から離れることもできる。
【0037】
ファイバ102の問い合わせユニット104に対する遠端部にはアクチュエータ118が設けられる(実際には、ファイバ102が折り返されて、ファイバ102の遠端部が問い合わせユニット104に物理的に近くなることもあると理解されるであろう)。アクチュエータ118は、ファイバ102の近くでファイバ102の一部を音響的に励起するように作用できる可動部材を含む。アクチュエータ118は、ファイバ102上の他の場所に位置することもできるが、アクチュエータ118を光学的に越えるファイバ102の部分は、いずれもアクチュエータ118の動作によって試験されず、従ってアクチュエータをファイバ102の端部近くに配置する方が好ましいと考えられる。
【0038】
図2に、線路200に沿った現場に配置されたファイバ102の例を示す。この例では、アクチュエータ118が、電磁コントローラ204に搭載されてプロセッサ206によって制御された形で線路200を打つように制御できるような金属ハンマ202を含む。この例では、アクチュエータ118が、100Hz〜1kHzの領域の振動を生じることができる。
【0039】
他の例では、アクチュエータが、別の電磁アクチュエータ、圧電素子又はモータ素子(例えば、マイクロDCモータ)などを含むことができる。いくつかの例では、アクチュエータを、例えば圧電ファイバストレッチャ又はPZTファイバストレッチャなどの「ファイバストレッチャ」として構成することができる。さらに別の例では、アクチュエータを地上振動源として地上に取り付け、又は少なくとも部分的に地中に埋め込むことができる。アクチュエータを埋め込むことによって良好な音響結合が得られる。
【0040】
従って、一般にアクチュエータは、ハンマ、サンパ、或いは衝撃を生み出して直接的に、或いはプレート又は線路などの中間要素を介してファイバ102内に振動を与えるように動くことができるよう構成された他の装置を含むことができる。しかしながら、他の様々な音響源構成を使用することもでき、音響変換器を含め、DASセンサによって検出できる特徴的な信号を生成するあらゆる物を使用することができる。アクチュエータは、プロセッサ206によって与えられた命令に従って制御することができ、プロセッサ206は、生成すべき信号を指定する命令を保持し、生成し又は受け取ることができる。
【0041】
アクチュエータ118は、ファイバ102内に音響機械的信号を誘起するように構成される。
【0042】
また、ファイバ102は、アクチュエータ118が生成した以外の外乱を検知するために使用することもできる。図2の例を続けると、この例は、線路200の一部に、アクチュエータ118から間隔を空けることができる列車を含むこともできる。このような例では、アクチュエータ118及び列車が、ファイバ102の異なるチャネルに信号を生じる。
【0043】
線路200上を移動する列車がファイバ内に誘起する音響信号を通じて、列車の方向、速度、長さ、完全性(すなわち、全ての車両が確実に正しく連結されているかどうか)及び位置を検出することができる。固定点(例えば、安全にとって非常に重要な出来事の発生場所)までの時間及び距離と同様に、(「運転間隔」として知られている)車両間の距離を求めることもできる。実際に、特定の車両の音響的痕跡を通じてその車両を識別することができ、これをさらに監視して劣化などの変化を検出できることが分かっている。特徴的な音響的「痕跡」は、信号のタイプに関連付けることもでき、すなわち車輪フラット(列車車輪の歪んだ部分)、軸箱発熱などの不良、或いはポイント機械及び踏切機械、並びに発電機、ポンプ及びその他の機械などの線路脇の機械の動作を示す信号の特性が存在することもできる。実際に、このような機械の不良が関連する痕跡を有することもあり、或いは特定の信号パターンからの逸脱自体が不良を示すこともある。
【0044】
線路監視の文脈では(当然ながら、他の文脈に類似の機能が存在することもあるが)、いずれかの方向に最大25km延びる2本のファイバを監視できる問い合わせユニット104を、例えば約50km毎に設けることができる。異なる問い合わせユニット104に接続されたファイバ102の一部(例えば、端部)は、単一のアクチュエータ118によって励起することができる。装置は、線路上の車両の位置を監視する代わりに、又はこれに加えて、(i)許可していない動き及び/又は線路脇の活動の検出(これにより、銅の盗難、破壊行為及び/又は潜在的テロ活動などの問題に対処することができる)、(ii)線路脇の人員の保護(例えば、作業班などの許可された人員の位置の監視)、(iii)公的安全の保護(例えば、無人踏切、プラットフォームなどの監視)、及び/又は(iv)インフラストラクチャの監視(例えば、落石、地滑り、橋梁及びトンネルの崩壊/打撃を検知して警告を発すること)を行うために設けることもできる。
【0045】
これらの機能の多くは、安全にとって非常に重要であり、従ってセンシング装置が機能しており、及び/又は所望の基準で機能していると認識することが望ましい。特に、安全にとって非常に重要な用途では、装置の不具合を素早く検出することが望ましいと考えられる。
【0046】
例えば、監視上の不具合が検出された場合、システムは、故障した監視装置が存在しなければ安全と認定されるフェイルセーフモードに入ることができる。1つの例を検討すると、鉄道信号では、移動ブロック信号システムが、各列車の周囲の安全な線路間隔の「ブロック」を識別することにより、他のシステムを用いて達成できるよりも列車同士を近付けて運行することができる。移動ブロックシステムとして運用するために、鉄道オペレータには、列車速度及び列車分離検出器が正しく機能しているという高い確信度合いが必要になる。障害時には、システムが「固定ブロック」システムに戻り、これによって列車が減速又は停止することもある一方で、列車間の間隔は解消する(「固定ブロック」モードでは、常に各所定の線路ブロック内に1本の列車しか許可されないので、一般に列車間の距離はさらに離れる)。
【0047】
アクチュエータ118は、アクチュエータと問い合わせユニット104との間のファイバ102の長さの稼働状況を「確認する」ために容易に使用することができる。アクチュエータ118は、既存のファイバセンサ装置に容易に後付けすることができる。
【0048】
いくつかの例では、装置100を、アクチュエータ118が実質的に連続して(或いは、装置100を用いて監視機能を実行している間は実質的に連続して)動作するように構成することができる。このような構成は、ファイバ102の完全性と、いくつかの例では問い合わせユニット104の性能とを絶え間なく試験し、従って処理回路114が監視機能の正しい動作を肯定的に確認できない場合には、素早く警告を発することができる。いくつかの実例では、このような警告の結果、監視システムを「フェイルセーフ」モードで動作させることができる。
【0049】
アクチュエータ118が生成する信号は、検出しやすいように構成することができる。このような信号を提供することにより、「誤認警報」の発生を最小限に抑えることができる。このような信号は、装置100の同じチャネルで発生し得る他の音響ノイズ源から容易に識別可能であり(例えば、予想される背景信号又はその他の信号とは異なる周波数痕跡又は範囲を有し)、及び/又は少なくとも1つの閾値強度を有することが好ましい。いくつかの例では、異なる「仮想」センサ、すなわち異なるセンサ機能を試験するために、アクチュエータ信号が、時間と共に異なる信号を利用することができる。例えば、列車の速度及び時間、線路脇の機械及び装置の動作、踏切又はポイントの周囲の特定の構成、列車の長さなどを検出する装置100の機能、又は装置の他のいずれかのセンサ機能を確認することが望ましいと考えられる。従って、予想信号を模倣し(又は、複数の信号を順に模倣し)、又はファイバの長さにわたって異なるアクチュエータを動作させてこのような機能を試験することができる。
【0050】
従って、プロセッサ206は、特徴的な振幅及び/又は周波数、特徴的な変動振幅及び/又は変動周波数を有する、又はデジタル信号を提供できる一連のパルス振動を含むことができる音響信号を生成するようにアクチュエータを制御するよう構成することができる。いくつかの例では、信号がランダムに又は擬似ランダムに変化することができる。試験信号は、反復試験信号とすることができる。場合によっては、反復試験信号を提供することによって信号の検出可能性及び識別を支援することもできる。試験信号の特徴は、異なる監視機能を試験できるように時間と共に変化することができる。
【0051】
次に、図3及び図4のフローチャートを参照しながら特定の例について説明する。図3には、線路200沿いに配置されたファイバ102の様々なチャネルにおいて生成される強度信号を示す。ファイバ102は、アクチュエータ118の領域と、列車300の領域とにおいて励起される。
【0052】
図4に示すように、第1のステップにおいて、アクチュエータ118は、「完全性試験」信号を発するように制御される(ブロック402)。この試験信号は、線路200に所定の反復パターンを適用する連続振動を含み、装置100の動作状況の指標(インジケーション)を提供するように構成される。この目的のために、ブロック404において、問い合わせユニットが、アクチュエータ118に近いファイバ102の部分から音響信号を示す光信号が受け取られたことを確認する。
【0053】
励起部分から信号が受け取られた場合、オペレータは、問い合わせユニット104とアクチュエータ118との間のファイバセンサが動作していると強く確信することができる。ブロック406において、検出された信号を予想信号と比較する。信号が認識された(すなわち、問い合わせユニット104によって検出された信号が、所定の反復パターンを有する完全性試験信号に対応する)場合、オペレータは、問い合わせユニット104が正しく機能していると強く確信することができる。この「認識」ステップは、システムノイズ、スペクトル、待ち時間、又はシステムの動作特性についての他のいずれかの指標の評価を含むこともできる。
【0054】
一方で、アクチュエータ118に近いファイバ102の部分から信号が受け取られず、又は信号が認識されない場合には、警告を発する(ブロック408)。この警告により、列車システムは「フェイルセーフ」モードで動作するようになり、例えば車両の動きを低減又は停止することなどができる。この理由は、もはや装置100が目的通りに動作しているとは想定できないからである。信号の欠如は、問い合わせユニットの異常、問い合わせユニット104において最適以下の動作パラメータが使用されていること、ファイバ102の破損、過度のシステムノイズ、アクチュエータ118の異常、又は他の何らかの理由によって生じることがある。しかしながら、安全にとって非常に重要な機能では、有効な監視システムの保証がない時にはフェイルセーフ状態を取ることができる。このような警告は、直ちに発することも、又は検出に失敗した一定期間後に発することもでき、この期間は、動作の安全重要性に応じて1秒未満から数分に及ぶことができる。
【0055】
この例では、ファイバ102の別の部分によって列車300が検出されるまで完全性試験信号が適用される。
【0056】
問い合わせユニット104によって列車が検出されると(ブロック410)、アクチュエータ118は、試験信号を、車輪のメンテナンス又は交換を実行又は予定すべき旨を示すことができる「車輪フラット」、すなわち列車車輪の局所的平坦領域の痕跡に一致する信号に変更するように制御される(ブロック412)。
【0057】
次に、問い合わせユニット104は、光信号内の「車輪フラット」を検出しようと試みる(ブロック414)。この場合、問い合わせユニット104は、障害イベント及び安全にとって非常に重要なイベントを含む考えられるイベントに関する異なる信号タイプの複数の「痕跡」を有することができる。これらの痕跡は、車輪フラットに加え、信号扱い所の切替え、線路脇の人員、落石、運行機械などの他のイベントの存在を含むことができる。
【0058】
「実際の」信号の場合には、いずれかのこのような信号の検出によって警告を発することができるが、試験信号の場合には、信号認識の欠如が重要である。この場合、ファイバ102の励起部分からの光信号を記憶されている痕跡と比較し、信号が正しく認識されない場合には、問い合わせユニット104を再較正する(ブロック416)。この再較正は、いずれかの動作パラメータを再較正するステップを含むことができる。例えば、パルス幅、パルス間隔、パルスタイミング、検出器の感度、検出器のゲート信号、又はチャネル長さ(すなわち、信号の処理において戻される信号「ビン」のサイズを変更することによる)などを単独で又は組み合わせて変更することができる。特定の例では、受け取られた信号が、車輪フラットを模倣する信号の「信号ラッピング」の特性を示すことができる。この結果、ビンサイズが装置の感度を低下させるように変化し、ラップが減少し、装置100の車輪フラットを検出する性能が向上することができる。
【0059】
この例では、較正が最大10回試行されるが、当然ながらこの回数は一例にすぎない。他の例では、所定の時間にわたって再較正を行うことができる。問い合わせユニット104が、アクチュエータ118の位置について正常に「車輪フラット」を示す場合、このことは、問い合わせユニット104がこのようなイベントを検出するように正しく較正されていることを示す。従って、ブロック418において、列車300の位置から「車輪フラット」信号が受け取られていないと判断された場合、オペレータは、列車が車輪フラットを有していないと強く確信して、完全性試験信号を再開することができる。一方で、再較正の試行にもかかわらず試験信号が認識されない場合、又は列車によって生成された信号内に車輪フラットが検出された場合、列車の手動検査を計画することができる(ブロック420)。
【0060】
以上、本発明を純粋に一例として説明したが、本発明の範囲内で細部の修正を行うことができると理解されるであろう。
【0061】
(例えば、特定の一連の事実を所与とした時に予想されるイベント及び/又は必要とされる保証レベルに関する頻度で)試験信号を連続的に適用できる例も存在すれば、完全性試験信号を定期的に適用できる例も存在する。
【0062】
完全性試験信号は、一部又は全部の意図する監視機能を試験するために変化するように構成することができる。例えば、安全にとって非常に重要な複数の警告の各々を発するように特別に設計されたテスト信号を生成し、これらの信号のいずれかを認識できない場合に警告状態を引き起こすことができる。
【0063】
この信号は、時間の少なくとも一部にわたってランダムに変化することができる。このような信号は、信号の認識を可能にする所定の望ましいパラメータを依然として有することができる。いくつかの例では、この信号が、問い合わせユニット104が認識しているシーケンスに従って擬似ランダムに変化することができる。
【0064】
本明細書、並びに(必要に応じて)特許請求の範囲及び図面に開示する各特徴は、単独で提供することも、又はいずれかの適切な組み合わせで提供することもできる。
【符号の説明】
【0065】
100 センシング装置
102 光ファイバ
104 問い合わせユニット
108 レーザ
110 光変調器
112 光検出器
114 処理回路
115 評価モジュール
116 警告モジュール
118 アクチュエータ
120 メモリ
図1
図2
図3
図4