特許第6957354号(P6957354)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6957354
(24)【登録日】2021年10月8日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】ディザなしのバイアス制御
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/01 20060101AFI20211021BHJP
【FI】
   G02F1/01 B
   G02F1/01 C
【請求項の数】30
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-543786(P2017-543786)
(86)(22)【出願日】2016年2月17日
(65)【公表番号】特表2018-505449(P2018-505449A)
(43)【公表日】2018年2月22日
(86)【国際出願番号】GB2016050385
(87)【国際公開番号】WO2016132118
(87)【国際公開日】20160825
【審査請求日】2018年12月6日
(31)【優先権主張番号】1502729.5
(32)【優先日】2015年2月18日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】505318606
【氏名又は名称】ルメンタム・テクノロジー・ユーケー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・グリフィン
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・エル・ヘフナー
【審査官】 坂上 大貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−134047(JP,A)
【文献】 特開2009−145781(JP,A)
【文献】 特開2011−118360(JP,A)
【文献】 特開2007−086790(JP,A)
【文献】 特開2000−180804(JP,A)
【文献】 米国特許第05627929(US,A)
【文献】 特開2012−203339(JP,A)
【文献】 特開2014−206633(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第104238151(CN,A)
【文献】 GRIFFIN, Robert A. et al.,InP Mach-Zehnder Modulator Platform for 10/40/100/200-Gb/s Operation,IEEE Journal of Selected Topics in Quantum Electronics,米国,IEEE,2013年07月10日,vol. 19, Issue. 6,pp.1-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00−1/125
1/21−7/00
H04B 10/00−10/90
H04J 14/00−14/08
JDreamIII
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号を変調するためのマッハツェンダ(MZ)変調器であって、
複数の変調導波路部分と、
前記変調導波路部分のうち1つまたは複数に対して少なくとも1つの電気的バイアス信号を印加するように構成され、少なくとも1つの変調導波路部分と電気通信する少なくとも1つのバイアス電極と、
複数の入力および複数の出力を備える出力光結合器とを備え、前記出力光結合器の前記複数の入力が前記複数の変調導波路部分の出力側と光通信し、前記出力光結合器の複数の前記出力が監視出力であり、
前記出力光結合器がn×nの出力光結合器であってnが3以上であり、
前記変調器は、前記出力光結合器の前記複数の監視出力から受け取った信号に基づいて、前記少なくとも1つの電気的バイアス信号の誤差を決定するように構成されたバイアス信号決定器をさらに備え、前記バイアス信号決定器が、前記出力光結合器の前記監視出力のうち2つの間の差に基づいて前記誤差を決定するように構成されている、変調器。
【請求項2】
前記出力光結合器が3×3の出力光結合器であり、前記3×3の出力光結合器の前記複数の入力のうちの1つが前記変調導波路部分の結合された出力と光通信する請求項1に記載の変調器。
【請求項3】
さらなるn×nの出力光結合器をさらに備え、前記さらなるn×nの出力光結合器が、複数の入力および複数の出力を備え、前記さらなるn×nの出力光結合器の複数の前記入力が、前記出力光結合器の前記監視出力のうち1つまたは複数と光通信し、前記バイアス信号決定器が、前記さらなるn×nの出力光結合器の前記複数の出力から受け取った信号に基づいて、前記少なくとも1つの電気的バイアス信号の前記誤差を決定するように構成されている、請求項2に記載の変調器。
【請求項4】
外側のMZ構造の内部に重ね合わされた請求項1に記載の複数のMZ変調器を備えるI&Q変調器機構であって、前記バイアス信号決定器が、Iの電気的バイアス信号とQの電気的バイアス信号の各々の誤差を決定するように構成されているI&Q変調器機構。
【請求項5】
前記外側のMZ構造が備える出力光結合器が、外側の電気的バイアス信号の誤差を決定するための複数の監視出力を有する請求項4に記載のI&Q変調器機構。
【請求項6】
4つの変調導波路部分を備える変調器であって、前記出力光結合器が4つの入力を備え、前記変調導波路部分の各々が前記出力光結合器の入力と光通信する請求項1から5のいずれか一項に記載の変調器。
【請求項7】
前記出力光結合器が4つの出力を備える請求項6に記載の変調器。
【請求項8】
前記バイアス信号決定器が、少なくとも1つの電気的バイアス信号の誤差を、次式に基づいて決定するように構成されており、
ε=A(p-s)
ここにおいて、εは前記電気的バイアス信号の誤差のベクトルであり、Aは前記変調器の較正中に決定された検知器マトリクスであり、pは前記さらなるn×nの出力光結合器の出力のベクトルを含む請求項3、または、請求項3に従属するときの請求項4から7のいずれか一項に記載の変調器。
【請求項9】
pが、前記さらなるn×nの出力光結合器の前記出力のベクトルをそれらの出力の合計で割ったものを含み、sが、前記変調器の較正中に決定された目標値ベクトルである請求項8に記載の変調器。
【請求項10】
前記バイアス信号決定器が、前記バイアス信号が前記変調器の前記出力を最適化するように設定されている間に前記ベクトルsを決定するように構成されている請求項8または9に記載の変調器。
【請求項11】
前記バイアス信号決定器が、前記バイアス信号がバイアス状態の3つの線型独立の組の各々に設定されている間にp-sを決定することによってマトリクスAを決定し、次式によって疑似逆マトリクスを決定するように構成されている請求項8から10のいずれか一項に記載の変調器。
【数1】
【請求項12】
前記さらなるn×nの出力光結合器の出力が、測定された信号を前記バイアス信号決定器へ伝送するように構成された少なくとも1つの光検知器を使用して測定される請求項3に記載の変調器。
【請求項13】
前記出力光結合器が、少なくとも1つのトリマを介して前記さらなるn×nの出力光結合器と光通信する、請求項3に従属するときの請求項8から12のいずれか一項に記載の変調器。
【請求項14】
前記出力光結合器および/または前記さらなるn×nの出力光結合器が多モード干渉(MMI)結合器を備える請求項1から13のいずれか一項に記載の変調器。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の変調器を複数重ね合わせたものを備えるマッハツェンダ変調器。
【請求項16】
複数の変調導波路部分と、前記変調導波路部分のうち1つまたは複数に対して少なくとも1つの電気的バイアス信号を印加するように構成され、少なくとも1つの変調導波路部分と電気通信する少なくとも1つのバイアス電極とを備えるマッハツェンダ変調器における少なくとも1つの電気的バイアス信号の誤差を決定するための方法であって、
前記複数の変調導波路部分の出力側と光通信する出力光結合器における光信号を受け取って、前記光信号を、前記出力光結合器を通して、その複数の出力へ伝搬させるステップと、
前記変調器の光出力を前記出力光結合器の1つの出力に供給し、複数の監視出力を、前記出力光結合器の前記複数の出力の残りの複数に供給するステップであって、前記出力光結合器がn×nの出力光結合器であってnが3以上である、ステップと、
前記受け取った監視出力に基づいて前記少なくとも1つの電気的バイアス信号の誤差を決定するステップとを含み、
前記少なくとも1つの電気的バイアス信号の前記誤差が、バイアス信号決定器において決定され、前記バイアス信号決定器が前記出力光結合器の前記監視出力のうち2つの間の差に基づいて前記誤差を決定する、方法。
【請求項17】
前記出力光結合器が3×3の出力光結合器であり、前記光信号が、前記変調導波路部分の結合された出力から、前記3×3の出力光結合器の複数の入力のうちの1つにおいて受け取られる請求項16に記載の方法。
【請求項18】
さらなる出力光結合器の複数の入力において複数の監視出力を受け取るステップと、残りの光信号を、その複数の出力へ伝搬させるステップと、前記バイアス信号決定器により、前記さらなる出力光結合器の前記複数の出力から受け取った信号に基づいて、前記少なくとも1つの電気的バイアス信号の前記誤差を決定するステップとをさらに含む請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記変調器が、外側のMZ変調器構造の内部に重ね合わされた請求項16から18のいずれか一項に記載の複数の変調器を備えるI&Q変調器機構と、同相(I)のバイアス電極と、直角位相(Q)のバイアス電極とを備え、前記バイアス信号決定器が、Iの電気的バイアス信号の誤差およびQの電気的バイアス信号の誤差を決定する請求項16から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記外側のMZ構造が、複数の監視出力および位相バイアス電極を有する出力光結合器を備え、前記バイアス信号決定器が、前記複数の監視出力に基づいて前記電気的バイアス信号の誤差を決定する請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記変調器が4つの変調導波路部分を備え、前記出力光結合器が4つの入力を備え、前記変調導波路部分の各々が前記出力光結合器の入力と光通信する請求項16から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記出力光結合器が4つの出力を備える請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記バイアス信号決定器が、少なくとも1つの電気的バイアス信号の誤差を、次式に基づいて決定し、
ε=A(p-s)
ここにおいて、εが前記電気的バイアス信号の誤差のベクトルであり、Aが前記変調器の較正中に決定された検知器マトリクスであり、pが前記さらなる出力光結合器の前記出力のベクトルを含む請求項18、または、請求項18に従属するときの請求項19から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
pが、前記さらなる出力光結合器の前記出力のベクトルをそれらの出力の合計で割ったものを含み、sが、前記変調器の較正中に決定された目標値ベクトルである請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記バイアス信号決定器が、前記バイアス信号が前記変調器の前記出力を最適化するように設定されている間に前記ベクトルsを決定する請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記バイアス信号決定器が、前記バイアス信号がバイアス状態の3つの線型独立の組の各々に設定されている間にp-sを決定することによって前記マトリクスAを決定し、次式によって疑似逆マトリクスを決定する請求項23から25のいずれか一項に記載の方法。
【数2】
【請求項27】
前記さらなる出力光結合器から出力された前記残りの光信号が、少なくとも1つの光検知器を使用して測定され、前記測定された信号が前記バイアス信号決定器に伝送される請求項16に従属するときの請求項18に記載の方法。
【請求項28】
前記出力光結合器が、少なくとも1つのトリマを介して前記さらなる出力光結合器と光通信する、請求項18に従属するときの請求項23から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
少なくとも1つのプロセッサ上で実行されたとき、前記少なくとも1つのプロセッサに、請求項16から28のいずれか一項に記載の方法を実行させる命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項30】
請求項29に記載のコンピュータプログラムを包含する担体であって、電気信号、光信号、無線信号、または非一時的なコンピュータ可読記憶媒体のうちの1つである担体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光変調器のバイアスに関するものである。より詳細には、本発明は、それだけには限らないが、マッハツェンダ光変調器のバイアスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本明細書では、「光」という用語は、光学系において、可視光ばかりでなく可視領域外の波長を有する電磁放射も意味するように使用される。
【0003】
変調器のバイアスに、光検知器と、変調よりもはるかに低い速度で動作する電子回路とを使用して検知され得る低周波数を有する「トーン」を加えることにより、マッハツェンダ(MZ)変調器のバイアス設定を制御することが周知であり、低ノイズおよび低コストが可能になる。この低周波数のトーンは変調器に入力され、光検知器(PD)により、変調器の出力において平均として監視され、最小の光出力が見いだされるまで、変調器のバイアス電圧が調節される。PDによって測定された出力がバイアス電圧の増加または減少に伴って上昇するとき、変調器に印加されるトーンが、最小の光出力が見いだされ得るようにバイアス電圧を増減させる。このプロセスはバイアス電圧の「ディザリング」と称される。
【0004】
たとえば米国特許第6700907号に説明されているように、バイアス電圧をディザリングする方法に対する代案が知られており、コントローラが、変調駆動信号に関する利得設定および直流バイアスレベルに関するバイアスレベル設定を導出するために、MZレーザ変調器の監視された光電流出力信号の監視された値を使用して、交互的直流バイアスおよび利得制御のルーチンを実行する。
【0005】
現在、りん化インジウム(InP)変調器などのデバイスの消費電力を低減することの市場ニーズがあり、そのため、それらの変調器に対してより低い駆動電圧を使用することが望まれている。より低い振幅で駆動された変調器からの信号は、必要なライン伝送パワーに到達するように半導体光増幅器(SOA)によって増幅されてよい。全体として、低電力で駆動されたMZとSOAの組合せは、より低消費電力かつより低放熱のデバイスをもたらす。駆動電圧がより低ければ、MZの出力における信号の振幅がより小さくなり、そのため、バイアス点を制御するためにディザトーンが使用されるとき、出力信号に対してトーンの振幅が著しくなり、伝送問題を招く恐れがある。
【0006】
おおまかには、従来技術は、監視PDの動作点を、位相変調が最小になるように(または相補出力が最大になるように)配置するために制御システムを使用する。制御システムは、最大値/最小値を見いだすためにヒルクライミングまたはディザリングを使用することがある。いずれにせよ、制御システムは、最大値/最小値を検知するために、理想的な動作点からいくらか移動する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6700907号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】http://en.wikipedia.org/wiki/Constellation_diagram
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によって提供される、光信号を変調するためのMZ変調器は、複数の変調導波路部分と、変調導波路部分のうち1つまたは複数に対して少なくとも1つの電気的バイアス信号を印加するように構成され、少なくとも1つの変調導波路部分と電気通信する少なくとも1つのバイアス電極と、複数の入力および複数の出力を備える出力光結合器とを備え、結合器の複数の入力が複数の変調導波路部分の出力側と光通信し、結合器の複数の出力が監視出力である。
【0010】
「電気通信」は、電気的に符号化されたデータを渡すための任意の手段を包含することに留意されたい。電気通信は、有線または無線の通信リンクでよく、当業者に知られている任意の通信プロトコルを利用してよい。
【0011】
「光結合された」という用語は、光学的に符号化されたデータを要素間で転送し得る任意の手段を包含することにさらに留意されたい。光結合は、導波路もしくは類似の伝送媒体によってもたらされてよく、または要素間の間隙にわたってもたらされてもよい。間隙は、空気中、別の気体中または真空中に存在し得る。
【0012】
任意選択で、バイアス信号決定器は、結合器の複数の監視出力から受け取った信号に基づいて、少なくとも1つの電気的バイアス信号の誤差を決定するように構成される。
【0013】
任意選択で、バイアス信号決定器は、結合器の監視出力のうち2つの間の差に基づいて誤差を決定するように構成される。
【0014】
任意選択で、結合器はn×nの結合器であり、nは3以上である。
【0015】
任意選択で、結合器は3×3の結合器であり、3×3の結合器の複数の入力のうち1つは、変調導波路部分の結合された出力と光通信する。
【0016】
任意選択で、さらなるn×nの結合器が、複数の入力および複数の出力を備え、さらなる結合器の複数の入力が、結合器の監視出力のうち1つまたは複数と光通信し、バイアス信号発生器が、さらなる結合器の複数の出力から受け取った信号に基づいて、少なくとも1つの電気的バイアス信号の誤差を決定するように構成されている。
【0017】
任意選択で、変調器は、外側のMZ構造の内部に重ね合わされた前述の複数のMZ変調器を備えるI&Q変調器機構であり、バイアス信号決定器は、Iの電気的バイアス信号とQの電気的バイアス信号の各々の誤差を決定するように構成される。
【0018】
任意選択で、外側のMZ構造が備える光結合器は、外側の位相の(outer phase)電気的バイアス信号の誤差を決定するための複数の監視出力を有する。
【0019】
任意選択で、変調器が4つの変調導波路部分を備え、出力光結合器が4つの入力を備え、変調導波路部分の各々が結合器の入力と光通信する。
【0020】
任意選択で、結合器は4つの出力を備える。
【0021】
任意選択で、バイアス信号決定器は、少なくとも1つの電気的バイアス信号の誤差を、次式に基づいて決定するように構成され、
ε=A(p-s)
ここにおいて、εは電気的バイアス信号の誤差のベクトルであり、Aは変調器の較正中に決定された検知器マトリクスであり、pはさらなる結合器の出力のベクトルを含む。
【0022】
任意選択で、pは、さらなる結合器の出力のベクトルをそれらの出力の合計で割ったものを含み、sは変調器の較正中に決定された目標植ベクトルである。
【0023】
任意選択で、バイアス信号決定器は、バイアス信号が変調器の出力を最適化するように設定されている間にベクトルsを決定するように構成される。
【0024】
任意選択で、バイアス信号決定器は、バイアス信号がバイアス状態の3つの線型独立の組の各々に設定されている間にp-sを決定することによってマトリクスAを決定し、次式によって疑似逆マトリクスを決定するように構成される。
【0025】
【数1】
【0026】
任意選択で、さらなる結合器の出力は、測定された信号をバイアス信号決定器へ伝送するように構成された少なくとも1つの光検知器を使用して測定される。
【0027】
任意選択で、結合器は、少なくとも1つのトリマを介してさらなる結合器と光通信する。
【0028】
任意選択で、結合器および/またはさらなる結合器は、多モード干渉(MMI)結合器を備える。
【0029】
マッハツェンダ変調器は、任意の先行請求項による複数の重ね合わされた変調器を備え得る。
【0030】
本発明の別の態様によれば、複数の変調導波路部分と、変調導波路部分のうち1つまたは複数に対して少なくとも1つの電気的バイアス信号を印加するように構成され、少なくとも1つの変調導波路部分と電気通信する少なくとも1つのバイアス電極とを備える、マッハツェンダ変調器における少なくとも1つの電気的バイアス信号の誤差を決定するための方法が提供され、この方法は、複数の変調導波路部分の出力側と光通信する出力光結合器における光信号を受け取って、光信号を、この結合器を通して、その複数の出力へ伝搬させるステップと、変調器の光出力を結合器の1つの出力に供給し、複数の監視出力を、結合器の複数の出力の残りの複数に供給するステップと、受け取った監視出力に基づいて少なくとも1つの電気的バイアス信号の誤差を決定するステップとを含む。
【0031】
任意選択で、少なくとも1つの電気的バイアス信号の誤差が、バイアス信号発生器において決定される。
【0032】
任意選択で、バイアス信号決定器は、結合器の監視出力のうち2つの間の差に基づいて誤差を決定する。
【0033】
任意選択で、結合器は3×3の結合器であり、光信号は、変調導波路部分の結合された出力から、3×3の結合器の複数の入力のうちの1つにおいて受け取られる。
【0034】
任意選択で、この方法は、さらなる結合器の複数の入力において複数の監視出力を受け取るステップと、残りの光信号を、その複数の出力へ伝搬させるステップと、バイアス信号発生器により、さらなる結合器の複数の出力から受け取った信号に基づいて、少なくとも1つの電気的バイアス信号の誤差を決定するステップとをさらに含む。
【0035】
任意選択で、変調器は、外側のMZ変調器構造の内部に重ね合わされた複数の変調器と、同相(I)のバイアス電極と、直角位相(Q)のバイアス電極とを備えるI&Q変調器機構であり、バイアス信号決定器が、Iの電気的バイアス信号の誤差およびQの電気的バイアス信号の誤差を決定する。
【0036】
任意選択で、外側のMZ構造は、複数の監視出力および位相バイアス電極を有する光結合器を備え、バイアス信号決定器が、複数の監視出力に基づいて、位相電気的バイアス信号の誤差を決定する。
【0037】
任意選択で、変調器が4つの変調導波路部分を備え、出力光結合器が4つの入力を備え、変調導波路部分の各々が結合器の入力と光通信する。
【0038】
任意選択で、結合器は4つの出力を備える。
【0039】
任意選択で、バイアス信号決定器は、少なくとも1つの電気的バイアス信号の誤差を、次式に基づいて決定し、
ε=A(p-s)
ここにおいて、εは電気的バイアス信号の誤差のベクトルであり、Aは変調器の較正中に決定された検知器マトリクスであり、pはさらなる結合器の出力のベクトルを含む。
【0040】
任意選択で、pは、さらなる結合器の出力のベクトルをそれらの出力の合計で割ったものを含み、sは変調器の較正中に決定された目標植ベクトルである。
【0041】
任意選択で、バイアス信号決定器は、バイアス信号が変調器の出力を最適化するように設定されている間にベクトルsを決定する。
【0042】
任意選択で、バイアス信号決定器は、バイアス信号がバイアス状態の3つの線型独立の組の各々に設定されている間にp-sを決定することによってマトリクスAを決定し、次式によって疑似逆マトリクスを決定する。
【0043】
【数2】
【0044】
任意選択で、さらなる結合器から出力された残りの光信号は、少なくとも1つの光検知器を使用して測定され、測定された信号はバイアス信号決定器に伝送される。
【0045】
任意選択で、結合器は、少なくとも1つのトリマを介してさらなると結合器を光通信する。
【0046】
本発明の別の態様によって提供されるコンピュータプログラムが含む命令は、少なくとも1つのプロセッサ上で実行されたとき、少なくとも1つのプロセッサに前述の方法のうち任意のものを実行させる。
【0047】
本発明の別の態様によれば、コンピュータプログラムを包含する担体が提供され、担体は、電気信号、光信号、無線信号、または非一時的なコンピュータ可読記憶媒体のうちの1つである。
【0048】
本発明の例示的実施形態が、本明細書で添付図面を参照しながら開示される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1a】MZ変調器の原理を示す変調導波路部分の概略図である。
図1b】MZ変調器の原理を示す変調導波路部分の概略図である。
図2a】MZ変調器の概略図である。
図2b】MZ変調器の概略図である。
図3】MZ変調器の概略図である。
図4】変調器駆動電圧に対するMZ変調器の光場の強度および光パワーのプロットである。
図5】MZ変調器の概略図である。
図6】I&Q MZ変調器の概略図である。
図7】I&Q MZ変調器の概略図である。
図8】I&Q MZ変調器の概略図である。
図9】MZ変調器の多モード干渉結合器からの4つの出力の各々のコンスタレーションプロットを示す図である。
図10】I&Q MZ変調器の概略図である。
図11】MZ変調器における少なくとも1つのバイアス信号の誤差を決定するための方法を示す図である。
図12】I&Q MZ変調器の概略図である。
図13】I&Q MZ変調器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
一般に、本明細書で開示される方法および装置は、小さい駆動電圧を使用する変調器に対して、制御システムのより優れた信号対雑音比を可能にするものである。従来の完全に駆動される変調器は、2Vπ(以下を参照されたい)のピークツーピークの駆動スイングを必要とするが、本明細書で開示される方法および装置を使用すると、類似の変調器がわずか0.1〜0.6Vπのスイングで駆動され得る。たとえば差動で駆動される32Gb/sのりん化インジウム変調器は1.6Vのシングルエンド(Vse)のVπを有し得、その場合、小さい駆動スイングなら0.16〜0.96Vseの範囲になるはずである。本明細書で開示される方法および装置により、最大信号または最小信号の代わりに中程度の信号をフィードバックに使用することが可能になる。特定の例示的方法および装置では、MZ変調器の変調導波路部分を結合するための結合器は、変調器出力および複数の監視出力を備える。これにより、変調器のバイアス電圧を、監視出力間の差に基づいて決定することが可能になる。特定の方法および装置では、中程度の信号をフィードバックに使用するためには、より多くのPDが必要になることがある。較正された中程度のポイントから離れると、ヒルクライムまたはディザなしで符号付き誤差がもたらされ、ディザまたはヒルクライミングを使用して近辺を探索する必要もなく理想ポイントに位置することができる、より簡単で、「より静かな」制御システムが可能になる。
【0051】
図1aおよび図1bは、マッハツェンダ変調器の動作における基本原理を示す概略図である。導波路100a、100bの材料は、材料に印加される電圧(または電界)の変化に伴って材料の屈折率が変わるように構成されている。変調器は導波路100a、100bならびに、変調電圧を印加するための電極(図示せず)を備え得る。
【0052】
図1aにおいて、導波路100aには変調電圧が印加されず、材料の屈折率における変化がないので、入力光信号102aは影響されることなく導波路100aを通り抜ける。したがって、出力光信号104aは入力光信号102aと実質的に同相である。これは、入力光信号502aと出力光信号504aの波形上の同一の位置に配置された破線103a、105aで示されている。図1aの例示的EO変調器100aでは、変調電圧Vは、ゼロボルトに等しいVonに設定されている。
【0053】
図1bでは、領域106において導波路100bに「逆バイアスがかかる」ように、変調器100bの電極に対して変調電圧が印加される。これは、領域106における材料の屈折率を変化させる効果がある。したがって、入力光信号102bは、導波路100bを通り抜けるとき位相が変化する。これは、入力光信号102bと出力光信号104bの波形上の異なる位置に配置された破線103b、105bで示されている。図5bの例示的EO変調器100bでは、変調電圧Vは、ゼロボルトよりも低いVoffに設定されている。
【0054】
概略図2aの例示的MZ変調器200aと概略図2bの例示的MZ変調器200bとは、異なるバイアス状態の下にある。
【0055】
変調器200a、200bは、入力導波路部分202および出力導波路部分204を備える。入力導波路部分202と出力導波路部分204は、変調導波路部分206を介して光通信する。変調導波路部分206が備える第1の導波路208および第2の導波路210は、入力光信号212a、212bを分割するように構成されている。入力信号212aと212bは、入力信号212aの第1の部分214aおよび入力信号212bの第1の部分214bが第1の導波路208を通って伝搬し、入力信号212aの第2の部分216aおよび入力信号212bの第2の部分216bが第2の導波路210を通って伝搬するように、分割される。入力信号212aの第1の部分214aと第2の部分216aが再結合されて形成された出力信号218aと、入力信号212bの第1の部分214bと第2の部分216bが再結合されて形成された出力信号218bとが、出力導波路部分204から出力される。これはMZ変調器の一般的な機構である。入力光信号212a、212bの分割と、出力信号218a、218bへの再結合とは、結合器によって行われ得る。
【0056】
図2aを参照して、入力光信号212aが入力導波路部分202に入る。入力光信号はレーザダイオードから放射されたものでよい。入力信号212aが第1の部分214aと第2の部分216aに分割され、前者が変調導波路部分206の第1の導波路208を通って伝搬し、後者が変調導波路部分206の第2の導波路210を通って伝搬する。信号の第1の部分214aと第2の部分216aは、出力導波路部分204において再結合されて出力信号218aを形成する。
【0057】
第1の導波路に配置された少なくとも1つの電極が、変調電圧を印加するように構成されている。変調電圧は、この例ではゼロボルトに等しいVonに設定されている。したがって、変調器200a、より具体的には第1の導波路208には、バイアスがかからない。その結果として、第1の導波路部分214aの屈折率は変化しない。したがって、光信号の第1の部分214aと第2の部分216aは、どちらも位相が変化することなく、それぞれ第1の導波路部分208および第2の導波路部分210を通って伝搬する。これは点線209aによって見られ、信号214aと216aが同相であることを示す。光信号の第1の部分214aと第2の部分216aは、再結合されるとき互いに強め合って干渉して、入力光信号212aと実質的に等しい出力光信号218aを生成し、導波路における通常の位相変化および損失が無視される。
【0058】
図2bを参照して、変調電圧は、この例ではゼロボルト未満であるVoffに設定されている。その結果として、変調器200b、より具体的には第1の導波路208には逆バイアスがかかる。これは、第1の導波路部分208における半導体材料の屈折率を変化させる効果がある。第1の導波路208の屈折率が変化すると、光信号の第1の部分214bの位相シフトをもたらす。したがって、光信号の第1の部分214bと第2の部分216bは、それぞれ第1の導波路部分208または第2の導波路部分210の終端に到達したとき、違相である。これは、光信号の第1の部分214bと第2の部分216bが違相であることを示す破線209bによって示されている。変調器の最大出力パワー218aの状態と最小出力パワー218bの状態の間の遷移に必要とされられる電圧の変化は、Vπ(Vpi)と称され得る。
【0059】
光信号の第1の部分214bと第2の部分216bは、出力導波路部分204において再結合されるとき互いに干渉して、入力光信号212bとは異なる出力光信号218bを生成する。図2bの例示的変調器200bにおいて、出力光信号218bは、入力光信号212bと比較して、より小さい振幅を有する。
【0060】
変調器に、図2aで説明された状態と図2bで説明された状態の間の中ほどのバイアスをかけ、変調器の電極に、Vπのスイングを有する変調信号を印加することにより、出力光信号218a、218bはデータを搬送するように振幅変調され得る。同様に、変調器に、図2bで説明されたゼロ状態のバイアスをかけ、変調器の電極に、2Vπのスイングを有する変調信号を印加することにより、出力光信号218a、218bはデータを搬送するように位相変調され得る。
【0061】
MZ変調器300の実際的な実装形態では、図3に示されるように、データ電極350、352は、第1の導波路208と第2の導波路210の両方と電気通信してよい。次いで、2つの電極は、全体の変調電圧を印加するために共に使用され得る。すなわち、変調器300に対する全体の変調電圧は、各電極によって印加された変調電圧の合計である。さらに、製造公差により、第1の導波路208と第2の導波路210が異なる特性を有する可能性があることに留意されたい。したがって、追加のバイアス電極354、356が、変調器に正確にバイアスをかけるために、第1の導波路208および第2の導波路210と電気通信してよい。
【0062】
変調器300は出力結合器358も備える。結合器358は、それぞれ変調導波路部分308、310と光通信する2つの入力を備える。結合器358は2つの出力360、362も備える。第1の出力360は変調器300の出力であり、第2の出力362は、出力信号460に対する相補(すなわち180度違相)信号であって、バイアス電極354、356のバイアス電圧を決定するために使用される監視出力である。これは、一般的にはディザリングを使用して行われる。
【0063】
図4は、変調器駆動電圧(すなわちバイアス電圧)に対するMZ変調器の光場の強度および光パワーのプロットを示す。図4の例示的プロットでは、バイアス電圧はゼロボルトに設定されてよく、それにより、変調器は、光場がゼロボルトの両側で直線的に変化して、交流結合されたデータ信号が、変調器の出力光場を正負の間でスイングさせる範囲で動作する。
【0064】
この構成では、交流結合された任意の振幅のデータ信号が光出力の位相変調をもたらすことになる。しかしながら、データ信号スイングが低減するのにしたがって光出力パワーが急速に低下し、ディザフィードバック信号の信号対雑音比が劣化する。たとえば半導体光増幅器またはエルビウム添加ファイバ増幅器による光増幅は、光の信号対雑音比におけるいくらかの劣化にもかかわらず、主光出力において失われたパワーを回復することができる。しかしながら、制御システムの、ディザを検出する光検知器の前に光増幅器を配置するには、デバイスのサイズ、複雑さおよびコストが増すかも知れず、かなりの電力を消費する可能性および/または増幅プロセスによって制御システムの信号が劣化する可能性がある。
【0065】
図5はMZ変調器500の概略図を示す。変調器500の機構の多くは、図3に示された変調器300の機構と同一または類似であり、ここで再び詳細に説明されることはない。そのような機構は、対応する参照数字を与えられる。
【0066】
変調器500は出力において結合器558を備える。結合器は、変調導波路部分508、510から光信号を受け取って複数の監視出力562、564を得るように構成されている。2つの監視出力562、564は、変調器出力560に対する相補ではないが、変調器出力560の両側に、それぞれ位相が90度ずれている。したがって、2つの監視出力562、564の間の差が、変調器出力560の情報を与える。このことは、バイアス用電極554、556の正確なバイアス信号を決定するのに使用され得る。例示の方法および装置では、監視出力562、564の間の差がゼロであるとき変調器出力560が最小であると考えられ得る。したがって、バイアス信号は、監視出力562と564の間の差をゼロに保つように決定されてよい。ディザリングは不要である。他の例示的MZ変調器では、出力結合器は3つ以上の監視出力を備え得る。
【0067】
図6が示すI&Q MZ変調器600では、2つのMZ変調器が図3に示されたように重ね合わされている。すなわち、2つのMZ変調器300は、第1の変調器が同相(I)で第2の変調器が直角位相(Q)であるように並行して配置されている。ディザリングされたバイアス機構では、I&Q変調器600の最小の平均出力パワーを見いだすように、IおよびQのバイアス電圧がディザリングされる。IおよびQの変調器の各々の出力に位相(P)バイアス電圧も印加されてよい。ディザリングされたバイアス機構では、Pバイアス電圧は、I変調器とQ変調器の間の無線周波数(RF)干渉を最小化するようにディザリングされる。
【0068】
図7は、複数の重ね合わされたMZ変調器400a、400bを備えるI&Q MZ変調器700を示す。複数のMZ変調器の各々の動作原理は、それぞれが複数の監視出力562a、564a、562b、564bを備えるという点において、MZ変調器400の動作原理と類似または同一である。複数の監視出力562a、564a、562b、564bの対応する対の間の差は、変調器出力560a、560bが最小であるときを決定するように使用され得、したがってバイアス電圧を決定するように使用され得る。
【0069】
図8は、図3のMZ変調器の機構と類似した機構を備える例示的I&Q MZ変調器800を示す。第1の(同相の)MZ変調器802aは、第2の(直角位相の)MZ変調器802bと並行して構成されている。変調器800の説明は、第1の(I)MZ変調器802aに関連して提供されるが、同じ説明が第2の(Q)変調器802bに全体的に当てはまり得ることが留意され、このことを反映して、参照数字は「a」の対の添字として「b」を伴うことになる。
【0070】
図3を参照しながら説明されたように、第1のMZ変調器802aは入力導波路部分804aおよび変調導波路部分806aを備える。変調導波路部分806aが備える第1の導波路808aおよび第2の導波路810aは、入力光信号を分割するように構成されている。入力信号は、入力信号の第1の部分が第1の導波路808aを通って伝搬し、入力信号の第2の部分が第2の導波路810aを通って伝搬するように分割される。第2のMZ変調器802bにも類似の機構が存在する。加えて、共通の入力導波路部分805は、入力信号を受け取って、MZ変調器802aの入力導波路部分804aとMZ変調器802bの入力導波路部分804bとへ分割するように構成されている。
【0071】
I&Q MZ変調器800は多モード干渉(MMI)結合器812も備える。図8の例示的I&Q MZ変調器800では、MMI結合器は4×4(すなわち4入力および4出力)のMMI結合器であるが、他の例示的MZ変調器はMMI結合器の他の構成を備え得る。
【0072】
I&Q MZ変調器800の第1および第2の変調導波路部分808a、808b、810a、810bの各々が、MMI結合器812の入力に対して光結合される。MMI結合器の入力は入力1〜4であると考えられてよく、その場合、以下の光結合が使用され得る。
第2のMZ 802bの第2の変調導波路810b → 入力1
第2のMZ 802bの第1の変調導波路808b → 入力2
第1のMZ 802aの第2の変調導波路810a → 入力3
第1のMZ 802aの第1の変調導波路808a → 入力4
【0073】
そのような構成を使用すると、MMI結合器812の出力も1〜4と番号を付けられ得る。MMI結合器812の入力および出力の番号が図8に示されている。
【0074】
図9は、MMI結合器812の出力1〜4の各々のコンスタレーションプロットを示す。出力1は変調器の出力信号であり、出力2〜4は変調器のバイアスの誤差を決定するために使用され得る監視出力である。コンスタレーション図の紹介については、http://en.wikipedia.org/wiki/Constellation_diagramを参照されたい。光電場の余弦成分および正弦成分が、検出されたシンボルのサンプル時間において、それぞれx軸およびy軸に沿ってプロットされている。ポート1の出力のみを考えると、コンスタレーションプロットの4つの点は、I&Qの4つの異なるシンボルを表す場を示す。
【0075】
図9は、図8の変調器が、MMIの出力1が所望のI&Q変調を生成するようにバイアスされ得ることを示す。したがって、出力1は変調器の出力として使用され得る。この同一のバイアス状態の下では、出力2、3、および4は有効な変調出力をもたらさないが、それらのうちの1つまたは複数がバイアス制御のために使用され得る。たとえば、出力1〜4は、バイアス信号が抽出され得るようにPDに対して光結合されてよい。例示の方法および装置は、経済性および低ノイズのために低速PDを使用してよい。これらのPDはDCから約1MHzまでの周波数応答を有し得、GHzの変調は経験しないであろう。
【0076】
出力1はI&Q MZ変調器800のために必要な光出力を含み、すなわち、出力1におけるコンスタレーションはI&Qのために必要な形である。出力2〜4は、変調器700のバイアス誤差に関する情報を含み、言い換えると、出力2〜4はバイアスが変化するのにつれて変化する。したがって、変調器800の出力はMMI結合器812の出力1から採用されてよく、変調器812のバイアス電圧は、残りの出力のうちの1つまたは複数に基づいて決定されてよい。
【0077】
MMI結合器は、スラブ型導波路における単純な回折に依存して、入力光場と出力光場の間の振幅と位相の関係の所望の組をもたらすものである。
【0078】
図10は例示的I&Q MZ変調器1000を示す。変調器1000の光出力は、図8に関連して上記で説明されたように、第1および第2の変調導波路部分に対して光結合された第1のMMI結合器1012の出力1から得られる。変調器1000は、第1のMMI結合器1012の出力2〜4に対して光結合された第2のMMI結合器1014をさらに備える。図10の例示的変調器1000において、第1のMMI結合器1012の出力2〜4は、(上記で定義されたように)第2のMMI結合器1014の入力1〜3に対して光結合されている。
【0079】
第1のMMI結合器1012は、1つまたは複数のトリマ1016a〜cを介して第2のMMI結合器1014に対して光結合され得る。トリマ1016a〜cは任意選択である。トリマ1016a〜cは、MMI結合器および導波路が製作された後に条件数(下記を参照されたい)を改善するように各トリマの透過位相および/または損失を調節することによって生産収率を改善するために使用され得る。最適化されたマスク設計および反復可能な生産プロセスが、許容できる条件数とともにデバイスの適切な収率をもたらす場合、トリマ1016a〜cが省略され得る。
【0080】
図10では、トリマ1016a〜cは、第1のMMI結合器1012と第2のMMI結合器1014を接続する3つの短い単一モード導波路として示されている。透過光の振幅および位相は、これら3つの導波路の各々を通る伝搬による影響を受けることになる。位相トリマ1016a〜cを通って伝搬した3つの信号の、第2のMMI結合器1014に到着したときの相対的な振幅および位相における変化が、検知器マトリクスA(下記を参照されたい)を変化させることになる。較正を通じて、Aが大きい条件数(下記を参照されたい)を有すると判定された場合、トリマ1016a〜cを通って伝搬する3つの信号のうち1つまたは複数の、振幅または位相のうち1つまたは複数が、調節されてよい。これは、再較正の後に、改善された条件数をもたらし得る。
【0081】
導波路およびMMI結合器のすべてが、単一のマスクを使用して製作され得る。製作公差は、「所望の振幅および/または位相が一旦決定されたら、較正後の不適当に大きい条件数による変調器収率の大幅な劣化がないこと」のようなものであり、その場合にはトリマが不要になり得る。代替案には、条件数を低減し、かつ収率を改善するように、各変調器または各生産ランがトリマの調節を必要とする設計がある。
【0082】
図10の例示的変調器1000では、Iバイアス、QバイアスおよびPバイアスの各々のバイアス誤差は、次式によって決定され得る。
ε3x1=A3x4(p4x1-s4x1)
この式で、
ε3x1はバイアス誤差のベクトル
【0083】
【数3】
【0084】
であり、
p4x1は、第2のMMI結合器1014の出力1〜4における光電流のベクトルを、それらの光電流の合計で割ったものであり、
A3x4は、変調器1000の較正中に決定された検知器マトリクスであり、
s4x1は、変調器1000の較正中に決定された目標植ベクトルである。
【0085】
図10の構成は、トリマを最適化した後に、最善の条件数である約1.6に至るものである。両方のMMI結合器を4×4にすることにより、Oclaro社のコヒーレントレシーバ用に開発された既存の4×4の設計の利点を活かしてMMIの単一の設計が再利用され得る。
【0086】
図11は、MZ変調器に関する少なくとも1つのバイアス電圧の誤差信号を決定するための方法を示す。
【0087】
較正は、目標植ベクトルsを決定するステップ1100によって始まる。最初にバイアスフィードバックループがオフにされ、変調器の出力を最適化するために、Iバイアス、QバイアスおよびPバイアスを設定する何らかの方法が使用される。たとえば、Iバイアス、QバイアスおよびPバイアスは、伝送された開眼(eye opening)およびコンスタレーション品質を評価するために、光変調解析器を使用して、変調器の出力を監視しながら試行錯誤することによって設定されてよい。これは、最善の変調をもたらすIバイアス、QバイアスおよびPバイアスの組を決定する。この条件下ではs=pであり、第2のMMI結合器914の出力1〜4における光電流のベクトルを、それらの光電流の合計で割ったものである。理想的なバイアスI0、Q0およびP0も、後に較正で使用するように記録される。
【0088】
次いで、多変数直線回帰を使用して検知器マトリクスAが決定される。非常に大きいバイアス誤差については、PD信号がすべて非線形になることに留意されたい。直線回帰が機能するためには、PD信号がバイアスの変化に対してほぼ直線的に変化するように、バイアス誤差が十分に小さくなくてはならない。一般的にはバイアス誤差は±Vπ/10の範囲であるため、この条件は容易に満たされる。較正中にバイアス誤差が直接制御され、この条件に適合するように十分小さく保たれ得る。動作中に、変調器特性のドリフトは小さいものしか予期されず、それにより、初期の目標値からのバイアス変化は小さいはずである。4つのPD信号をそれらの合計で割ったものは、ベクトルpの要素である。結果を光パワーと無関係に保つために、PD信号はそれらの合計で割られる(正規化される)。
要素pi=PDi/(4つのPDiの合計)、i=1 .. 4
【0089】
たとえばパワー制御フィードバックループのためにレーザパワーがあまり変化しない環境では、PD信号の正規化が不要になり得る。しかしながら、バイアス誤差がp-sの線形関数であり、sは較正の後に変化しないので、正規化は望ましい選択肢であり得る。
【0090】
ステップ1102で、バイアス条件の3つの線型独立の組においてpベクトルが測定される。これをするための最も直接的なやり方は、3つのバイアスの各々を既知の少量だけ変化させ、新規のp-sを毎回測定することである。たとえば、バイアスが、次式で表される第1の既知の誤差ベクトルに対応するI0+dI、Q0、およびP0に設定され得る。
【0091】
【数4】
【0092】
次いで、4×1のベクトルv1=p-sが測定され得、ここで、pは、第2のMMI結合器914の出力1〜4における光電流のベクトルを、それらの光電流の合計で割ったものであり、sは以前に決定された目標植ベクトルである。次いで、次式に対応するI0、Q0+dQ、およびP0のバイアスにおいてベクトルv2が測定され得、
【0093】
【数5】
【0094】
また、次式に対応するI0、Q0、およびP0+dPのバイアスにおいてベクトルv3が測定され得る。
【0095】
【数6】
【0096】
次いで、列ベクトルεnおよびvnがグループ化されてマトリクスを形成し、ステップ1104において、aka Moore-Penroseの疑似逆マトリクスを使用して、次式で表される検知器マトリクスAが計算される。
【0097】
【数7】
【0098】
ステップ1106において、A、pおよびsを使用して計算されたバイアス誤差がI、QおよびPのバイアス回路にフィードバックされ、それらの回路が変調器1000に印加するバイアス電圧が補正され得る。
【0099】
例示的変調器1000は、出力ベクトルpをバイアス信号決定器1016へ伝送するように構成されてよい。バイアス信号決定器1016は、少なくとも1つのメモリ1018および少なくとも1つのプロセッサ1020を備え得る。メモリ1018は不揮発性メモリおよび/または揮発性メモリを備え得る。メモリ1018にはコンピュータプログラム1022が記憶され得る。コンピュータプログラム1022は、本明細書で開示された方法を実施するように構成されてよい。コンピュータプログラム1022が、非一時的なコンピュータ可読媒体1024からメモリ1018にロードされて記憶され得る。プロセッサ1020は、本明細書で説明されたように、バイアス誤差ベクトルpに基づいて、少なくとも各バイアス電極向けのバイアス信号を決定する機能を実施するように構成されている。
【0100】
例示的変調器1000によってもたらされる利点には、電流変調器に見られるような、結合器を介して光を傍受する(tapping off)ことによる光の浪費がなく、第2のMMI結合器1014の出力におけるベクトルpにおいて測定される光電流が大きく、信号対雑音比が増加し、しかも較正がレーザパワーの変動に無関係である、といったことがある。
【0101】
図12に示されるように、第2のMMI結合器は3×3(すなわち3入力および3出力)のMMI結合器でよく、第1のMMIと第2のMMIの間にトリマがなくてよい。これは、必要なPDが3つだけであり、トリマが省かれ、2つのMMI結合器が、4つの入力導波路と、中央の近くにある単一の主出力導波路と、監視PDへの3つの出力導波路とを有する単一のデバイスへと結合され得る、といったいくつかの点で、最も簡単な手法である。モデリングにより、条件数は約53と予測される(較正の段落を参照されたい)。
【0102】
図13に示されるように、第2のMMI結合器は3×3のMMI結合器でよく、第1のMMIと第2のMMIの間にトリマが配置されてよい。この手法は、2つのMMI結合器を分離する必要があり、依然として3つの監視PDを使用するものである。モデリングにより、トリマを最適化した後の条件数は約22と予測される。
【0103】
本明細書で説明された光変調器のどれも、2つの光出力が偏光結合器を使用して多重化された状態で、対で使用され得る。もたらされる二重偏波信号は、個々の変調器の各々のデータレートの2倍を搬送し得る。
【0104】
コンピュータプログラムは、前述の方法のうちのいずれかを提供するように構成されてよい。コンピュータプログラムは、コンピュータ可読媒体で提供され得る。コンピュータプログラムはコンピュータプログラム製品でよい。コンピュータプログラム製品は、非一時的なコンピュータ使用可能記憶媒体を備え得る。コンピュータプログラム製品は、方法を行うように構成された媒体に収録されているコンピュータ可読プログラムコードを有し得る。コンピュータプログラム製品は、方法のいくつかまたはすべてを、少なくとも1つのプロセッサに行わせるように構成されてよい。
【0105】
本明細書では、コンピュータで実施される方法、装置(システムおよび/またはデバイス)および/またはコンピュータプログラム製品のブロック図もしくは流れ図を参照しながら、様々な方法および装置が説明されている。ブロック図および/または流れ図のブロックと、ブロック図および/または流れ図におけるブロックの組合せとは、1つまたは複数のコンピュータ回路によって行われるコンピュータプログラム命令によって実施され得ることが理解される。これらのコンピュータプログラム命令は、コンピュータおよび/または他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサ、変換および制御のトランジスタ、メモリロケーションに記憶された値、およびそのような回路の内部の他のハードウェア要素を介して実行する命令が、ブロック図および/または流れ図の1つまたは複数のブロックにおいて規定された機能/行為を実施することにより、ブロック図および/または流れ図の1つまたは複数のブロックにおいて規定された機能/行為を実施するための手段(機能)および/または構造を生成するように、汎用コンピュータ回路のプロセッサ回路、専用コンピュータ回路、および/またはマシンを製作するための他のプログラマブルデータ処理回路に供給されてよい。
【0106】
コンピュータプログラム命令は、特定のやり方で機能するために、コンピュータ可読媒体に記憶された命令が、ブロック図および/または流れ図の1つまたは複数のブロックで規定された機能/行為を実施する命令を含む製品をもたらすように、コンピュータまたは他のプログラマブルデータ処理装置に指令することができるコンピュータ可読媒体に記憶されてもよい。
【0107】
有形の非一時的なコンピュータ可読媒体は、電子的、磁気的、光学的、電磁的、または半導体の、データを記憶するシステム、装置またはデバイスを含み得る。コンピュータ可読媒体のより具体的な例は、携帯用コンピュータディスケット、ランダムアクセスメモリ(RAM)回路、読取り専用メモリ(ROM)回路、消去可能プログラム可能読取り専用メモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)回路、携帯用コンパクトディスクの読取り専用メモリ(CD-ROM)、および携帯用デジタルビデオディスクの読取り専用メモリ(DVD/ブルーレイ)を含むことになる。
【0108】
コンピュータプログラム命令は、コンピュータおよび/または他のプログラム可能な装置上で行われるべき一連の動作ステップに、コンピュータで実施されるプロセスを生成させるために、コンピュータまたは他のプログラム可能な装置上で動作する命令が、ブロック図および/または流れ図の1つまたは複数のブロックにおいて規定された機能/行為を実施するためのステップをもたらすように、コンピュータおよび/または他のプログラム可能なデータ処理装置にもロードされ得る。
【0109】
したがって、本発明は、ハードウェアおよび/または総体として「回路」、「モジュール」もしくはその変形と称され得るプロセッサ上で作動するソフトウェア(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)で具現されてよい。
【0110】
いくつかの代替実装形態では、ブロックにおいて言及された機能/行為が、流れ図において言及された順番から外れて現れ得ることにも留意されたい。たとえば、連続して示された2つのブロックが、実際には実質的に同時に実行されてよく、または、ブロックが、含まれる機能/行為に応じて逆順で実行されることもある。さらに、流れ図および/またはブロック図の所与のブロックの機能が複数のブロックに分離されてよく、かつ/または、流れ図および/またはブロック図の2つ以上のブロックの機能が少なくとも部分的に統合されてもよい。最後に、示されたブロックの間に、他のブロックが追加/挿入されてよい。
【0111】
当業者なら、添付の特許請求の範囲の範囲から逸脱することなく他の実施形態を想定することができるであろう。
【符号の説明】
【0112】
100a 導波路
100b 導波路
102a 入力光信号
102b 入力光信号
103a 破線
103b 破線
104a 出力光信号
104b 出力光信号
105a 破線
105b 破線
200a MZ変調器
200b MZ変調器
202 入力導波路部分
204 出力導波路部分
206 変調導波路部分
208 第1の導波路
210 第2の導波路
212a 入力光信号
212b 入力光信号
214a 入力信号212aの第1の部分
214b 入力信号212bの第1の部分
216a 入力信号212aの第2の部分
216b 入力信号212bの第2の部分
218a 出力信号
218b 出力信号
300 MZ変調器
308 変調導波路部分
310 変調導波路部分
350 データ電極
352 データ電極
354 追加のバイアス電極
356 追加のバイアス電極
358 出力結合器
360 結合器358の出力
362 結合器358の出力
400a MZ変調器
400b MZ変調器
500 MZ変調器
508 変調導波路部分
510 変調導波路部分
554 バイアス用電極
556 バイアス用電極
558 結合器
560 変調器出力
560a 変調器出力
560b 変調器出力
562 監視出力
562a 監視出力
562b 監視出力
564 監視出力
564a 監視出力
564b 監視出力
600 I&Q MZ変調器
700 I&Q MZ変調器
800 I&Q MZ変調器
802a 第1の(同相の)MZ変調器
802b 第2の(直角位相の)MZ変調器
804a 入力導波路部分
804b 入力導波路部分
805 共通の入力導波路部分
806a 変調導波路部分
808a 第1の導波路
808b 第1の導波路
810a 第2の導波路
810b 第2の導波路
812 多モード干渉(MMI)結合器
1000 MZ変調器
1012 第1のMMI結合器
1014 第2のMMI結合器
1016 トリマ
1016a トリマ
1016b トリマ
1016c トリマ
1018 メモリ
1020 プロセッサ
1022 コンピュータプログラム
1024 非一時的なコンピュータ可読媒体
図1(a)】
図1(b)】
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13