(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記固定金具は、前記第1絶縁部材、前記第2絶縁部材および前記固定金具よりも弾性率が小さい被覆膜によって覆われていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のヒータ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示のヒータ10の一例について図面を参照して説明する。
【0010】
図1に示す様に、ヒータ10は、内部に発熱抵抗体2を有する板状のセラミック体1と、第1絶縁部材3と、第1絶縁部材3の側面の全体を囲む第2絶縁部材4と、板状の支持体5と、第2絶縁部材4をセラミック体1および支持体5に固定する固定部材6とを備えている。
【0011】
セラミック体1は加熱面11において対象を加熱する部材である。セラミック体1は、板状の部材であって、例えば角板状または円板状である。セラミック体1は、内部に発熱抵抗体2を有している。セラミック体1は、一方の主面および他方の主面を有しており、一方の主面が加熱面11となっている。
【0012】
セラミック体1は、例えば酸化物セラミックス、窒化物セラミックスまたは炭化物セラミックス等の電気的な絶縁性を有するセラミック材料からなる。セラミック体1は、例えば窒化珪素質セラミックスであってもよい。窒化珪素質セラミックスは、主成分である窒化珪素が強度、靱性、絶縁性および耐熱性が高いため、ヒータ10の耐久性を高めることができる。セラミック体1の寸法は、例えばセラミック体1が角板状のときは、厚みを0.5〜10mmに、幅を10〜300mmに、長さを10〜300mmにすることができる。
【0013】
なお、セラミック体1として窒化珪素質セラミックスを用い、さらに後述する発熱抵抗体2としてMoまたはW等の化合物を用いる場合には、セラミック体1が、さらにMoSi
2またはWSi
2等を含んでいてもよい。導電層および発熱抵抗体2に用いる金属の珪化物をセラミック体1に分散していることによって、セラミック体1の熱膨張率と発熱抵抗体2の熱膨張率とを近づけることができる。その結果、ヒータ10の耐久性を向上させることができる。
【0014】
発熱抵抗体2は、電流が流れることによって発熱する部材である。発熱抵抗体2は、セラミック体1の内部に設けられている。これにより、発熱抵抗体2が酸化するおそれを低減できる。発熱抵抗体2に電圧が加えられることによって電流が流れ、発熱抵抗体2が発熱する。この発熱によって生じた熱がセラミック体1の内部を伝わって、セラミック体1の加熱面11が高温になる。そして、セラミック体1の加熱面11から被加熱物に対して熱が伝わることによって、ヒータ10が機能する。
【0015】
発熱抵抗体2は、例えば、W、MoまたはTi等の炭化物、窒化物または珪化物等を含んでいてもよい。セラミック体1が窒化珪素質セラミックスから成る場合には、発熱抵抗体2の主成分が炭化タングステンにすることができる。これにより、セラミック体1の熱
膨張率と発熱抵抗体2の熱膨張率とを近づけることができる。そのため、ヒートサイクル下において、セラミック体1に生じる熱応力を低減することができる。その結果、ヒータ10の耐久性を高めることができる。
【0016】
さらに、セラミック体1が窒化珪素質セラミックスからなる場合には、発熱抵抗体2は、炭化タングステンを主成分とするとともに、窒化珪素が20質量%以上添加されていてもよい。発熱抵抗体2に窒化珪素を添加することによって、発熱抵抗体2の熱膨張率とセラミック体1の熱膨張率とを近づけることができる。これにより、ヒータ10の昇温時または降温時に発熱抵抗体2とセラミック体1との熱膨張差によって生じる熱応力を低減することができる。
【0017】
発熱抵抗体2の寸法は、例えば幅を0.05〜5mmに、厚みを0.03〜0.2mmにすることができる。発熱抵抗体2は、複数の折り返し部を有していてもよい。発熱抵抗体2は、例えばセラミック体1の側面に引き出されており、外部装置等に電気的に接続されていてもよい。
【0018】
第1絶縁部材3および第2絶縁部材4は、発熱抵抗体2で生じた熱を断熱するための部材である。第1絶縁部材3および第2絶縁部材4は、主面と側面とを有する板状の部材である。第1絶縁部材3および第2絶縁部材4は、一方の主面がセラミック体1の他方の主面に接して位置している。
【0019】
図2に示すように、第2絶縁部材4は、横断面を見たときに第1絶縁部材3の側面の全体を囲っている。これにより、ヒータ10の中央近傍に位置する第1絶縁部材3と、ヒータ10の外縁に位置する第2絶縁部材4とを分離することができる。これにより、第1絶縁部材3と第2絶縁部材4とが一体となっている場合と比較して、第1絶縁部材3または第2絶縁部材4が熱応力により破損するおそれを低減することができる。その結果、ヒータ10の耐久性を高めることができる。
【0020】
第1絶縁部材3および第2絶縁部材4は、例えばアルミナまたはガラス等の絶縁材料からなる。また、第1絶縁部材3および第2絶縁部材4は断熱性の材料にすることができる。第1絶縁部材3および第2絶縁部材4は、主成分が同じ材料であってもよいし、主成分が異なる材料であってもよい。第1絶縁部材3の寸法は、例えば厚みを0.5〜10mmに、面積を50〜10000mm
2にすることができる。第2絶縁部材4の寸法は、例えば厚みを0.5〜10mmに、面積を200〜80000mm
2にすることができる。第2絶縁部材4は、例えば
図9および
図10に示すように、複数の部位に分かれていてもよい。第2絶縁部材4は、例えば2〜8個に分かれていてもよい。このときに、第2絶縁部材4は、第1絶縁部材3の側面の全体を完全に囲っていなくてもよく、隙間があってもよい。
【0021】
支持体5は、後述する固定部材6とともに、セラミック体1と第2絶縁部材4とを固定するための部材である。支持体5は、板状の部材であって、例えば角板状または円板状である。支持体5は、一方の主面および他方の主面を有しており、一方の主面が第1絶縁部材3および第2絶縁部材4の他方の主面に接して位置している。
【0022】
支持体5は、例えばアルミナ、窒化ケイ素またはステンレス等の部材からなる。支持体5の寸法は、例えば支持体5が角板状のときは、厚みを0.3〜10mmに、幅を10〜300mmに、長さを10〜300mmにすることができる。
【0023】
固定部材6は、第2絶縁部材4をセラミック体1および支持体5に固定するための部材である。固定部材6は、例えば棒状の部材である。固定部材6は、例えばねじ等のピン状
の部材であって、セラミック体1と第2絶縁部材4と支持体5とを貫通して固定していてもよい。また、固定部材6は、例えばコの字状の金具であって、セラミック体1と第2絶縁部材4と支持体5とを貫通せずに固定していてもよい。これにより、セラミック体1の内部において発熱抵抗体2を広範囲に設けることができる。その結果、加熱面11の均熱性を高めることができる。
【0024】
固定部材6は、例えばステンレスまたはニッケル等の部材からなる。固定部材6は、例えば2〜20個設けられていてもよい。固定部材6は、セラミック体1の外縁部分に位置していてもよい。これにより、セラミック体1の内部において発熱抵抗体2を広範囲に設けることができる。その結果、加熱面11の均熱性を高めることができる。
【0025】
本開示の一例のヒータ10によれば、
図2および
図3に示すように、第1絶縁部材3および第2絶縁部材4の主面には、第1絶縁部材3から第2絶縁部材4にかけて伸びる第1溝部7が設けられており、第1溝部7には、第1絶縁部材3から第2絶縁部材4にかけて、第1絶縁部材3と第2絶縁部材4とを固定する固定金具8が設けられている。これにより、第1絶縁部材3が、第1溝部7が伸びる方向に対して交わる方向に移動しようとしたときに、固定金具8が第1溝部7に引っかかることにより、第1絶縁部材3を固定することができる。そのため、固定部材6を用いずに、第1絶縁部材3を固定することができる。その結果、加熱面11の均熱性を高めることができる。
【0026】
第1溝部7は、例えば深さを0.5〜4mmに、長さを1〜20mmにすることができる。第1溝部7は、例えば
図10および
図11に示すように第1絶縁部材3の中心から第2絶縁部材4の側面にかけて設けられていてもよい。
【0027】
ここで、固定金具8は、例えば長手方向を有する棒状または線状の部材である。固定金具8は、例えば白金、またはNi合金、Ni−Cr合金等の部材からなる。固定金具8の寸法は、例えば長さを5〜100mmにすることができる。
【0028】
また、第1絶縁部材3と第2絶縁部材4とが密着することによって第1溝部7が連続していてもよいし、
図2〜7および
図9〜11に示すように、第1絶縁部材3と第2絶縁部材4との間に少し隙間があってもよい。また、第1溝部7は、第1絶縁部材3と第2絶縁部材4とで、縁が連続していなくてもよい。第1溝部7の縁は、第1絶縁部材3から第2絶縁部材4にかけて固定金具8を設けることができる程度にずれていてもよいものとする。
【0029】
なお、ここでいう「第1絶縁部材3から第2絶縁部材4にかけて」とは、製法(第1溝部7を設ける方向)を限定するものではない。第2絶縁部材4から第1絶縁部材3にかけて溝部が形成されていてもよい。
【0030】
第1溝部7は、
図3(a)に示すように、第1絶縁部材3の他方の主面と第2絶縁部材4の他方の主面とに設けられていてもよいし、
図3(b)に示すように、第1絶縁部材3の一方の主面と第2絶縁部材4の一の主面とに設けられていてもよい。第1溝部7が、第1絶縁部材3の一方の主面と第2絶縁部材4の一方の主面とに設けられていている場合は、固定金具8と発熱抵抗体2との距離を近づけることができる。そのため、固定金具8が第1溝部7において熱膨張することにより、固定金具8が第1溝部7を埋め、第1絶縁部材3と第2絶縁部材4とを強固に固定することができる。
【0031】
また、
図4に示すように、セラミック体1の他方の主面には、第1溝部7に繋がる凹部12が設けられており、固定金具8は、凹部12に入り込んでいてもよい。これにより、第1絶縁部材3が、第1溝部7が伸びる方向に向かって移動しようとしたときに、固定金
具8が凹部12に引っかかることにより、第1絶縁部材3を固定することができる。その結果、加熱面11の均熱性を高めることができる。
【0032】
凹部12は、例えば深さを0.5〜4mmに、幅を0.5〜8mmにすることができる。凹部12は、例えばセラミック体1の他方の主面のうち、中心近傍に設けられていてもよい。
【0033】
また、
図5に示すように、セラミック体1の他方の主面には、第1溝部7に沿って重なる第2溝部13が設けられており、固定金具8は、第1溝部7と第2溝部13とに位置していてもよい。これにより、第1絶縁部材3が、第1溝部7が伸びる方向に対して交わる方向に移動し、固定金具8が第1溝部7および第2溝部13に引っかかったときに生じる応力を、第1溝部7および第2溝部13に分散させることができる。そのため、固定金具8が破損するおそれを低減することができる。その結果、ヒータ10の耐久性を高めることができる。
【0034】
第2溝部13は、例えば深さを0.5〜4mmに、長さを1〜20mmにすることができる。第2溝部13は、例えばセラミック体1の他方の主面のうち、中心から側面にかけて設けられていてもよい。
【0035】
なお、
図11に示すように、セラミック体1の他方の主面には、凹部12と第2溝部13が設けられており、これらが繋がっていてもよい。
【0036】
また、
図6に示すように、固定金具8は、長さ方向を有する複数の部材であって、それぞれが隣り合って並んでいることを特徴とする。これにより、第1絶縁部材3が、第1溝部7が伸びる方向に対して交わる方向に移動し、固定金具8が第1溝部7に引っかかったときに生じる応力を、複数の部材のそれぞれに分散させることができる。そのため、固定金具8が破損するおそれを低減することができる。その結果、ヒータ10の耐久性を高めることができる。
【0037】
また、
図7に示すように、固定金具8は、第1絶縁部材3、第2絶縁部材4および固定金具8よりも弾性率が小さい被覆膜9によって覆われていてもよい。これにより、第1絶縁部材3が、第1溝部7が伸びる方向に対して交わる方向に移動したときに、固定金具8が第1溝部7に引っかかったときに被覆膜9が変形することができる。そのため、固定金具8に生じる応力を低減することができる。その結果、ヒータ10の耐久性を高めることができる。
【0038】
被覆膜9は、例えばガラス、ガラス繊維、またはフッ素系樹脂等の部材からなる。例えば被覆膜9がフッ素系樹脂からなり、第1絶縁部材3がアルミナからなり、第2絶縁部材4がアルミナからなり、固定金具8がNi合金からなる場合においては、被覆膜9のヤング率を0.5GPaに、第1絶縁部材3のヤング率を300GPaに、第2絶縁部材4のヤング率を300GPaに、固定金具8のヤング率を150GPaにすることができる。
【0039】
また、固定金具8は、熱電対であってもよい。これにより、ヒータ10の耐久性を高めつつ、ヒータ10中心近傍の温度を測定することができる。具体的には、固定金具8は、2つの種類が異なる金属線が回路を形成するものであり、電位差により温度を測定する機能を有していてもよい。
【0040】
また、本開示の別の例のヒータ10によれば、
図8に示すように、第1絶縁部材3および第2絶縁部材4には、第1絶縁部材3から第2絶縁部材4にかけて孔部71が設けられており、孔部71には、第1絶縁部材3から第2絶縁部材4にかけて、第1絶縁部材3と
第2絶縁部材4とを固定する固定金具8が設けられていてもよい。これにより、第1絶縁部材3が移動しようとしたときに、固定金具8が孔部71に引っかかることにより、第1絶縁部材3を固定することができる。そのため、固定部材6を用いずに、第1絶縁部材3を固定することができる。その結果、加熱面11の均熱性を高めることができる。
【0041】
孔部71は、第1絶縁部材3と第2絶縁部材4とが密着することによって連続していてもよいし、
図8に示すように、第1絶縁部材3と第2絶縁部材4との間に少し隙間があってもよい。また、孔部71は、第1絶縁部材3と第2絶縁部材4とで、縁が連続するように位置していなくてもよい。孔部71の縁は、第1絶縁部材3から第2絶縁部材4にかけて固定金具8を設けることができる程度にずれていてもよいものとする。
【0042】
なお、ここでいう「第1絶縁部材3から第2絶縁部材4にかけて」とは、製法(孔部71を設ける方向)を限定するものではない。第2絶縁部材4から第1絶縁部材3にかけて孔部71が形成されていてもよい。