(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態に係るトレランスリングの斜視図である。
【
図3】
図1のトレランスリングの半周分を展開した平面図である。
【
図6】第2実施形態に係るトレランスリングの正面図である。
【
図7】
図6のトレランスリングの半周分を展開した平面図である。
【
図8】
図7のVIII−VIII線断面矢視図である。
【
図9】第3実施形態に係るトレランスリングの正面図である。
【
図10】
図9のトレランスリングの半周分を展開した平面図である。
【
図12】第4実施形態に係るトレランスリングの正面図である。
【
図13】
図12のトレランスリングの半周分を展開した平面図である。
【
図17】第5実施形態に係るトレランスリングの正面図である。
【
図18】
図17のトレランスリングの半周分を展開した平面図である。
【
図20】第6実施形態に係るトレランスリングの正面図である。
【
図21】
図20のトレランスリングの半周分を展開した平面図である。
【
図23】
図1のトレランスリングの径方向の反力のうちX方向半周領域の周方向分布を示すグラフである。
【
図24】
図23の反力のX方向成分の周方向分布を示すグラフである。
【
図25】
図23の反力のY方向成分の周方向分布を示すグラフである。
【
図26】
図1のトレランスリングに係る径方向の反力のX方向成分の総和とY方向成分の総和とを比較した表である。
【
図27】
図6のX方向半周領域に係る径方向の反力のX方向成分の周方向分布を示すグラフである。
【
図28】
図6のX方向半周領域に係る径方向の反力のY方向成分の周方向分布を示すグラフである。
【
図29】
図6のトレランスリングに係る径方向の反力のX方向成分の総和とY方向成分の総和とを比較した表である。
【
図30】
図9のX方向半周領域に係る径方向の反力のX方向成分の周方向分布を示すグラフである。
【
図31】
図9のX方向半周領域に係る径方向の反力のY方向成分の周方向分布を示すグラフである。
【
図32】
図9のトレランスリングに係る径方向の反力のX方向成分の総和とY方向成分の総和とを比較した表である。
【
図33】
図12のX方向半周領域に係る径方向の反力のX方向成分の周方向分布を示すグラフである。
【
図34】
図12のX方向半周領域に係る径方向の反力のY方向成分の周方向分布を示すグラフである。
【
図35】
図12のトレランスリングに係る径方向の反力のX方向成分の総和とY方向成分の総和とを比較した表である。
【
図36】
図17のX方向半周領域に係る径方向の反力のX方向成分の周方向分布を示すグラフである。
【
図37】
図17のX方向半周領域に係る径方向の反力のY方向成分の周方向分布を示すグラフである。
【
図38】
図17のトレランスリングに係る径方向の反力のX方向成分の総和とY方向成分の総和とを比較した表である。
【
図39】
図20のX方向半周領域に係る径方向の反力のX方向成分の周方向分布を示すグラフである。
【
図40】
図20のX方向半周領域に係る径方向の反力のY方向成分の周方向分布を示すグラフである。
【
図41】
図20のトレランスリングに係る径方向の反力のX方向成分の総和とY方向成分の総和とを比較した表である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の1つの実施形態を
図1〜3、
図23〜26に基づいて説明する。
図1に示すように実施形態1のトレランスリング1は、円筒状のリング本体2と複数の突起部4を有する。トレランスリング1は、
図2に示すように軸部材Sと外周部材Hとの間に嵌合されて用いられる。軸部材Sは、例えばスプライン嵌合部を有するロータ軸である。軸部材(ロータ軸)Sは、円柱状で例えば中実の金属部材である。外周部材Hは、例えば円筒状であって、その中心孔に軸部材Sが挿入される。外周部材Hは、ロータ軸と径方向に対向する内周面Haを有し、内周面Haがロータ軸を周方向に囲む。軸部材Sと外周部材Hの間に径方向長さの短い円筒状の隙間が形成される。トレランスリング1はこの円筒状の隙間において圧入された状態で嵌合される。
【0016】
図1に示すようにリング本体2は、例えば、ばね性を有する帯状板材を丸めることで円筒状に形成される。帯状板材は、金属材料から形成され、例えば高炭素鋼やステンレス鋼等の鉄または合金鋼、銅やニッケル等の非鉄金属、金属合金等から形成される。
【0017】
図1に示すようにリング本体2は、その長手方向である周方向に両端縁部2aを有する。両端縁部2aは、相互に対向し、端縁部2aの間に合口部3が形成される。リング本体2に複数、例えば10個の突起部4が形成される。複数の突起部4は、リング本体2から径方向外側に突出しかつ径方向の剛性による反力を有する。複数の突起部4は、リング本体2の軸方向の中央領域に位置し、周方向に所定の間隔を隔てて1列に配置される。リング本体2は、突起部4の形成されていない外周円筒面5を有する。外周円筒面5は、リング本体2の軸方向の両端縁に沿って延出する領域と、突起部4間において軸方向に延出する領域を有する。
【0018】
図2に示すように外周円筒面5と、リング本体2の内周側である内周部6は、リング本体2の軸中心線2bに対して直交する断面において略円形である。トレランスリング1は、合口部3とリング本体2の軸中心を結んだ線上において合口部3と径方向に相対する対向部7を有する。
【0019】
図2に示すようにトレランスリング1の嵌合状態において、内周部6が軸部材Sの外周部と接触する。突起部4の頂部が外周部材Hの内周面Haから押圧される。軸部材Sと外周部材Hは、リング本体2のばね性と突起部4の径方向の剛性によって反力を受ける。軸部材Sは、その軸中心に向かう方向の反力を受ける。外周部材Hは、軸部材Sが受ける反力と反対方向である径方向外側方向に反力を受ける。反力によって軸部材Sと外周部材Hは変形することがある。軸部材Sは、中実であるため圧縮されることによる変形量が小さい。一方、外周部材Hは、中空状であるため変形量が軸部材Sよりも大きくなる傾向にある。したがってトレランスリング1の反力による変形は、主として外周部材Hに及ぼされる。
【0020】
図1に示すようにトレランスリング1は、相互に直交するX方向とY方向とZ方向を用いて説明できる。Z方向は、リング本体2の軸中心線2bに沿う方向である。Y方向は、リング本体2の軸中心線2bと合口部3を結んだ直線D1に沿う。X方向は、Y方向とZ方向に直交しかつ軸中心線2bを通る直線D2に沿う。換言すると直線D1はY方向に延び、直線D2はX方向に延びる。
【0021】
図2に示すようにリング本体2の軸中心から合口部3へ向かう方向(
図2中上方向)と平行な方向をY1方向と定義する。Y1方向は、直線D2から上方に向いている。リング本体2の軸中心から対向部7へ向かう方向(
図2中下方向)と平行な方向をY2方向と定義する。Y2方向は、直線D2から下方に向いている。リング本体2の軸中心から右方向への向きをX1方向と定義する。X1方向は、直線D1から右方に向いている。リング本体2の軸中心から左方向への向きをX2方向と定義する。X2方向は、直線D1から左方に向いている。
【0022】
図2に示すようにトレランスリング1は、直線D2を境にして合口部半周領域11と対向部半周領域12を有する。合口部半周領域11は、合口部3を含み、例えば合口部3を円弧中心に含む。対向部半周領域12は、対向部7を含み、例えば対向部7を円弧中心に含む。トレランスリング1は、直線D1を境にして第1のX方向半周領域13と第2のX方向半周領域13を有する。第1と第2のX方向半周領域13は、一端に合口部3を有し、他端に対向部7を有する。
【0023】
図2に示すように第1と第2のX方向半周領域13は、直線D1に対して互いに対称である。複数の突起部4は、直線D1に対して互いに対称となる場所に位置する。
図3に示すように突起部4は、平面視で矩形状である。
図4に示すように突起部4は、リング本体2から径方向外方に突出し、Z方向から見て断面が三角形状の山形である。
図5に示すように突起部4は、リング本体2を軸方向に切断した断面において台形状の山形である。
【0024】
図2〜4に示すように第1のX方向半周領域13の外周円筒面5には、周方向に沿って端縁部2aから順番に、小突起部4a、間隔5a、小突起部4a、間隔5b、大突起部4b、間隔5c、大突起部4b、間隔5d、小突起部4a、間隔5eが形成されている。間隔5bは、間隔5aより周方向長さが短い。間隔5cは、間隔5bよりさらに周方向長さが短い。間隔5dは、間隔5bと周方向長さがほぼ同じである。間隔5eは、間隔5aより周方向長さが長い。対向部7を間に置く一対の小突起部4aの距離は、間隔5eの2倍に相当する。
【0025】
図2に示すように小突起部4aと大突起部4bは、径方向の高さがほぼ等しい。したがって小突起部4aの頂部と大突起部4bの頂部は、外周部材Hの断面略円形状の内周面Haに対して均等に接触できる。
図3に示すように大突起部4bは、小突起部4aと軸方向長さがほぼ同じである。一方で大突起部4bは、小突起部4aより周方向長さが長い。例えば大突起部4bは、小突起部4aを基準として周方向長さが例えば10〜50%長い。そのため大突起部4bを含む領域の剛性は、小突起部4aを含む領域の剛性より例えば20〜40%低い。
【0026】
図2に示すように合口部半周領域11には、端縁部2aの近縁に第1の小突起部4aが合口部3を周方向に挟んで一対形成されている。第1の一対の小突起部4aと間隔5aを挟んで第2の小突起部4aが一対形成されている。第2の小突起部4aと間隔5bを挟んで第1の大突起部4bの頂部を含む略半分が一対形成されている。
【0027】
図2に示すように対向部半周領域12には、対向部7に間隔5eが形成されている。間隔5eを周方向に挟んで第3の小突起部4aが一対形成されている。第3の小突起部4aと間隔5dを挟んで第2の大突起部4bが一対形成されている。第2の大突起部4bと間隔5cを挟んで第1の大突起部4bの頂部を含まない略半分が一対形成されている。
【0028】
図2に示すようにトレランスリング1の突起部4の剛性による反力は、トレランスリング1の外周を囲む外周部材Hに対して、突起部4の頂部から径方向に作用する。各突起部4の頂部から作用する反力Fを、Y1方向成分FY1と、Y2方向成分FY2と、X1方向成分FX1と、X2方向成分をFX2にベクトル分解する。この反力のX方向成分及びY方向成分を
図23〜26に示す解析結果に基づいて説明する。
図23〜25において図中右側(横軸の170°側)は合口部3側であり、図中左側(横軸の0°側)は対向部7側である。
【0029】
図2に示すように第1と第2のX方向半周領域13は、直線D1に対して互いに対称である。そのため反力FのX2方向成分FX2は、X1方向成分FX1と周方向分布が対称である。したがって解析結果では反力FのX2方向成分FX2は、X1方向成分FX1からわかるためにFX1の説明のみとし、FX2の説明は省略する。
図24はX方向半周領域13のFX1の周方向分布を示している。
図25において横軸の0〜90°は第1のX方向半周領域13のFY2の周方向分布を示している。横軸の90〜170°は第1のX方向半周領域13のFY1の周方向分布を示している。したがって対向部半周領域12のΣFY2は0〜90°の反力を2倍したもので表される。合口部半周領域11のΣFY1は、90〜170°の反力を2倍したもので表される。
【0030】
図23〜24における比較のトレランスリングは、複数の突起部を有し、各突起部が同じ形状を有する。換言すると、
図23〜24における比較のトレランスリングは、突起部の頂部の位置がトレランスリング1の突起部4の頂部と同じであり、かつトレランスリング1の大突起部4bを全て小突起部4aに代えたものである。
【0031】
図23に示すようにトレランスリング1と比較のトレランスリングのいずれにおいても合口部3の近縁領域(
図23の右端近縁)の径方向の剛性による反力Fは、合口部半周領域11のうちの図中135°〜170°の他の領域と比べて小さい。特に大突起部4bが形成されるトレランスリング1の領域(
図23の約40°〜100°)における径方向の剛性による反力Fは、比較のトレランスリングの対応する領域と比べて弱くなっている。これは大突起部4bの剛性が小突起部4aの剛性より小さいことが起因している。
図24に示すように大突起部4bが形成されるトレランスリング1の領域における反力FのX1方向成分FX1は、比較のトレランスリングの対応する領域と比べて小さい。
【0032】
図26に示すように対向部半周領域12における反力FのY2方向成分FY2の総和ΣFY2は、合口部半周領域11における反力FのY1方向成分FY1の総和ΣFY1より、総和ΣFY2の約0.5%分だけわずかに大きい。第1のX方向半周領域13における反力FのX1方向成分FX1の総和ΣFX1(=ΣFX2)は、総和ΣFY1の99.7%であり、総和ΣFY2の99.2%である。換言すると総和ΣFX1は、総和ΣFY1または総和ΣFY2よりわずかに小さくなるよう設定されている。
【0033】
図2,26を参照するように第1のX方向半周領域13における反力のX1方向成分FX1の総和ΣFX1は、合口部半周領域11における反力のY1方向成分FY1の総和ΣFY1よりわずかに小さい。したがって第1のX方向半周領域13から外周部材Hの内周面Haに作用するX方向の力が、合口部半周領域11から外周部材Hの内周面Haに作用するY方向成分の力と略同一になる。
【0034】
具体的には、合口部半周領域11の特に合口部3の近縁領域は、他の領域と比べて外周部材Hの内周面Haに作用する力が相対的に小さくなる傾向にある。これに対して第1のX方向半周領域13に位置する複数の突起部4におけるX1方向成分の反力FX1の総和ΣFX1を、合口部半周領域11に位置する複数の突起部4におけるY1方向成分の反力FY1の総和ΣFY1以下に設定する。その結果、外周部材Hの内周面Haに実際に加わる力が略均一になることがわかった。すなわち断面真円に近い形状で外周部材Hが変形する。かくして外周部材Hが例えば楕円化するような変形を抑制することができる。
【0035】
図2,26を参照するように合口部半周領域11における反力のY1方向成分FY1の総和ΣFY1と、対向部半周領域12における反力のY2方向成分FY2の総和ΣFY2の差は、ΣFY2の10%以下、例えば約0.5%である。したがって合口部半周領域11から外周部材Hの内周面Haに作用するY方向の力が、対向部半周領域12から外周部材Hの内周面Haに作用するY方向成分の力と略同一になる。したがって断面真円に近い形状で外周部材Hが変形する。
【0036】
図2,23を参照するように複数の突起部4は、周方向の幅が異なる小突起部4aと大突起部4bを含む。周方向の幅を小突起部4aのように狭くすることで、突起部4の剛性による径方向の反力を高くできる。かくして比較的容易な構造で突起部4の反力、詳しくはX1方向の反力FX1とY1方向の反力FY1とY2方向の反力FY2を所定の大きさに設定できる。
【0037】
図2を参照するように合口部半周領域11と対向部半周領域13は、単体の剛性が略同一である突起部4aをそれぞれ有する。したがって突起部4の配置によって、反力FのX1方向成分の総和ΣFX1と反力のY1方向成分の総和ΣFY1とをY2方向成分の総和ΣFY2を適宜設定することが容易になる。これにより外周部材Hに及ぼす変形を小さくすることを可能とするトレランスリング1が設計しやすくなる。
【0038】
図6〜8、
図27〜30に基づいて他の実施形態を説明する。
図6〜8に示すトレランスリング20は、
図2に示すトレランスリング1の複数の突起部4と外周円筒面5に代えて、複数、例えば8個の突起部24と外周円筒面25を有する。
図6に示すようにトレランスリング20は、直線D2を境にして合口部半周領域31と対向部半周領域32を有する。合口部半周領域31は、合口部3を含み、例えば合口部3を円弧中心に含む。対向部半周領域32は、対向部7を含み、例えば対向部7を円弧中心に含む。トレランスリング20は、直線D1を境にして第1のX方向半周領域33と第2のX方向半周領域33を有する。第1と第2のX方向半周領域33は、一端に合口部3を有し、他端に対向部7を有する。
【0039】
図6〜8に示すように第1のX方向半周領域33の外周円筒面25には、周方向に沿って端縁部2aから順番に、小突起部24a、間隔25a、小突起部24a、間隔25b、大突起部24b、間隔25c、小突起部24a、間隔25dが形成されている。間隔25bは、間隔25aより周方向長さが長い。間隔25cは、間隔25aと周方向長さがほぼ同じである。間隔25dは、間隔25aより周方向長さが短い。対向部7を間に置く一対の小突起部24aの距離は、間隔25dの2倍に相当する。
【0040】
図6に示すように合口部半周領域31には、端縁部2aの近縁に第1の小突起部24aが合口部3を周方向に挟んで一対形成されている。第1の小突起部24aと間隔25aを挟んで第2の小突起部24aが一対形成されている。第2の一対の小突起部24aの周方向両隣から直線D2をまたいで間隔25bが一対形成されている。
【0041】
図6に示すように対向部半周領域32には、対向部7に間隔25dが形成されている。間隔25dを周方向に挟んで第3の小突起部24aが一対形成されている。第3の小突起部24aと間隔25cを挟んで大突起部24bが一対形成されている。一対の大突起部24bの周方向両隣から直線D2をまたいで間隔25bが一対形成されている。
【0042】
トレランスリング20の突起部24の剛性による反力のX方向成分及びY方向成分について、
図27〜29に示す解析結果に基づいて説明する。
図27,28において図中右側(横軸の170°側)は合口部3側であり、図中左側(横軸の0°側)は対向部7側である。
図27は
図24と同様である。
図27における比較のトレランスリングは、複数の突起部を有し、各突起部が同じ形状を有する。換言すると
図27における比較のトレランスリングは、突起部の頂部の位置がトレランスリング20の突起部24の頂部と同じであり、かつトレランスリング20の大突起部24bを小突起部24aに代えたものである。
【0043】
図27に示すように大突起部24bが形成されるトレランスリング20の領域における反力FのX1方向成分FX1は、比較のトレランスリングの対応する領域と比べて小さい。
【0044】
図29に示すように対向部半周領域32における反力FのY2方向成分FY2の総和ΣFY2は、合口部半周領域31における反力FのY1方向成分FY1の総和ΣFY1より、総和ΣFY2の約2.1%分だけ大きい。第1のX方向半周領域33における反力FのX1方向成分FX1の総和ΣFX1(=ΣFX2)は、総和ΣFY1の99.5%であり、総和ΣFY2の97.4%である。換言すると総和ΣFX1は、総和ΣFY1及び総和ΣFY2よりわずかに小さくなるよう設定されており、すなわち略同一になっている。
【0045】
図2,6,26,29を参照するようにトレランスリング20は、
図1に示すトレランスリング1と同様の作用効果を奏する。したがって断面真円に近い形状で外周部材Hが変形する。かくして外周部材Hが例えば楕円化するような変形を抑制することができる。
【0046】
図9〜11、
図30〜32に基づいて他の実施形態を説明する。
図9〜11に示すトレランスリング40は、
図2に示すトレランスリング1の複数の突起部4と外周円筒面5に代えて、複数、例えば6個の突起部44と外周円筒面45を有する。
図9に示すようにトレランスリング40は、直線D2を境にして合口部半周領域51と対向部半周領域52を有する。合口部半周領域51は、合口部3を含み、例えば合口部3を円弧中心に含む。対向部半周領域52は、対向部7を含み、例えば対向部7を円弧中心に含む。トレランスリング40は、直線D1を境にして第1のX方向半周領域53と第2のX方向半周領域53を有する。第1と第2のX方向半周領域53は、一端に合口部3を有し、他端に対向部7を有する。
【0047】
図9〜11に示すように第1のX方向半周領域53の外周円筒面45には、周方向に沿って端縁部2aから順番に、小突起部44a、間隔45a、大突起部44b、間隔45b、小突起部44a、間隔45cが形成されている。間隔45bは、間隔45aより周方向長さが長い。間隔45cは、間隔45aより周方向長さが短い。対向部7を間に置く一対の小突起部44aの距離は、間隔45cの2倍に相当する。
【0048】
図9に示すように合口部半周領域51には、端縁部2aの近縁に第1の小突起部44aが合口部3を周方向に挟んで一対形成されている。第1の小突起部44aと間隔45aを挟んで一対の大突起部44bが位置する。大突起部44bの頂部を含む約4分の3が合口部半周領域51に位置し、残りの約4分の1が対向部半周領域52に位置する。
【0049】
図9に示すように対向部半周領域52には、対向部7に間隔45cが形成されている。間隔45cを周方向に挟んで第2の小突起部44aが一対形成されている。第2の小突起部44aと間隔45bを挟んで大突起部44bが一対形成されている。
【0050】
トレランスリング40の突起部44の剛性による反力のX方向成分及びY方向成分について、
図30〜32に示す解析結果に基づいて説明する。
図30,31において図中右側(横軸の170°側)は合口部3側であり、図中左側(横軸の0°側)は対向部7側である。
図30は
図24と同様である。
図30における比較のトレランスリングは、複数の突起部を有し、各突起部が同じ形状を有する。換言すると
図30における比較のトレランスリングは、突起部の頂部の位置がトレランスリング40の突起部44の頂部と同じであり、かつトレランスリング40の大突起部44bを小突起部44aに代えたものである。
【0051】
図30に示すように大突起部44bが形成されるトレランスリング40の領域における反力FのX1方向成分FX1は、比較のトレランスリングの対応する領域と比べて小さい。
【0052】
図32に示すように対向部半周領域52における反力FのY2方向成分FY2の総和ΣFY2は、合口部半周領域51における反力FのY1方向成分FY1の総和ΣFY1より、総和ΣFY2の約0.4%分だけわずかに小さい。第1のX方向半周領域53における反力FのX1方向成分FX1の総和ΣFX1(=ΣFX2)は、総和ΣFY1の99.5%であり、総和ΣFY2の99.9%である。換言すると総和ΣFX1は、総和ΣFY1及び総和ΣFY2よりわずかに小さくなるよう設定されており、すなわち略同一になっている。
【0053】
図2,9,26,32を参照するようにトレランスリング40は、
図1に示すトレランスリング1と同様の作用効果を奏する。したがって断面真円に近い形状で外周部材Hが変形する。かくして外周部材Hが例えば楕円化するような変形を抑制することができる。
【0054】
図12〜16、
図33〜35に基づいて他の実施形態を説明する。
図12〜16に示すトレランスリング60は、
図2に示すトレランスリング1の複数の突起部4と外周円筒面5に代えて、複数、例えば6個の突起部64と外周円筒面65を有する。
図12に示すようにトレランスリング60は、直線D2を境にして合口部半周領域71と対向部半周領域72を有する。合口部半周領域71は、合口部3を含み、例えば合口部3を円弧中心に含む。対向部半周領域72は、対向部7を含み、例えば対向部7を円弧中心に含む。トレランスリング60は、直線D1を境にして第1のX方向半周領域73と第2のX方向半周領域73を有する。第1と第2のX方向半周領域73は、一端に合口部3を有し、他端に対向部7を有する。
【0055】
図12〜16に示すように第1のX方向半周領域73の外周円筒面65には、周方向に沿って端縁部2aから順番に、小突起部64a、間隔65a、大突起部64b、間隔65b、小突起部64a、間隔65cが形成されている。間隔65bは、間隔65aより周方向長さが長い。間隔65cは、間隔65aより周方向長さが長く間隔65bより周方向長さが短い。対向部7を間に置く一対の小突起部64aの距離は、間隔65cの2倍に相当する。
【0056】
図13〜16に示すように大突起部64bは、小突起部64aより軸方向長さが長く、小突起部64aより周方向長さも長い。そのため大突起部64bの剛性は、小突起部64aの剛性より低い。
【0057】
図12に示すように合口部半周領域71には、端縁部2aの近縁に第1の小突起部64aが合口部3を周方向に挟んで一対形成されている。第1の小突起部64aと間隔65aを挟んで大突起部64bが一対形成されている。大突起部64bの頂部を含む大部分は合口部半周領域71に位置し、残りのわずかな部分は対向部半周領域72に位置する。
【0058】
図12に示すように対向部半周領域72には、対向部7に間隔65cが形成されている。間隔65cを周方向に挟んで第2の小突起部64aが一対形成されている。第2の小突起部64aの周方向両隣から合口部半周領域71との境界にかけて間隔65bが一対形成されている。
【0059】
トレランスリング60の突起部64の剛性による反力のX方向成分及びY方向成分について、
図33〜35に示す解析結果に基づいて説明する。
図33,34において図中右側(横軸の170°側)は合口部3側であり、図中左側(横軸の0°側)は対向部7側である。
図33は
図24と同様である。
図33における比較のトレランスリングは、複数の突起部を有し、各突起部が同じ形状を有する。換言すると
図33における比較のトレランスリングは、突起部の頂部の位置がトレランスリング60の突起部64の頂部と同じであり、かつトレランスリング60の大突起部64bを小突起部64aに代えたものである。
【0060】
図33に示すように大突起部64bが形成されるトレランスリング60の領域における反力FのX1方向成分FX1は、比較のトレランスリングの対応する領域と比べて小さい。
【0061】
図35に示すように対向部半周領域72における反力FのY2方向成分FY2の総和ΣFY2は、合口部半周領域71における反力FのY1方向成分FY1の総和ΣFY1より、総和ΣFY2の約0.3%分だけわずかに大きい。第1のX方向半周領域73における反力FのX1方向成分FX1の総和ΣFX1(=ΣFX2)は、総和ΣFY1の98.0%であり、総和ΣFY2の97.7%である。換言すると総和ΣFX1は、総和ΣFY1及び総和ΣFY2よりわずかに小さくなるよう設定されており、すなわち略同一になっている。
【0062】
図2,12,26,35を参照するようにトレランスリング60は、
図1に示すトレランスリング1と同様の作用効果を奏する。したがって断面真円に近い形状で外周部材Hが変形する。かくして外周部材Hが例えば楕円化するような変形を抑制することができる。
【0063】
図17〜19、
図36〜38に基づいて他の実施形態を説明する。
図17〜19に示すトレランスリング80は、
図2に示すトレランスリング1の複数の突起部4と外周円筒面5に代えて、複数、例えば9個の突起部84と外周円筒面85を有する。
図17に示すようにトレランスリング80は、直線D2を境にして合口部半周領域91と対向部半周領域92を有する。合口部半周領域91は、合口部3を含み、例えば合口部3を円弧中心に含む。対向部半周領域92は、対向部7を含み、例えば対向部7を円弧中心に含む。トレランスリング80は、直線D1を境にして第1のX方向半周領域93と第2のX方向半周領域93を有する。第1と第2のX方向半周領域93は、一端に合口部3を有し、他端に対向部7を有する。この実施形態は突起部を奇数個配置した場合でも、突起部の剛性による反力のバランスをとれる例である。
【0064】
図17〜19に示すように第1のX方向半周領域93の外周円筒面85には、周方向に沿って端縁部2aから順番に、小突起部84a、間隔85a、小突起部84a、間隔85b、小突起部84a、間隔85c、大突起部84b、間隔85d、小突起部84aが形成されている。間隔85bは、間隔85aより周方向長さが長い。間隔85cは、間隔85aより周方向長さが短い。間隔85dは、間隔85aと周方向長さがほぼ同じである。
【0065】
図17に示すように合口部半周領域91には、端縁部2aの近縁に第1の小突起部84aが合口部3を周方向に挟んで一対形成されている。第1の小突起部84aと間隔85aを挟んで第2の小突起84aが一対形成されている。第2の小突起部84aの周方向両隣から対向部半周領域72との境界にかけて間隔85bが一対形成されている。
【0066】
図17に示すように対向部半周領域92には、対向部7に頂部を有する第4の小突起部84aが1つ形成されている。第4の小突起部84aの周方向両隣に間隔85dを挟んで大突起部84bが一対形成されている。大突起部84bと間隔85cを挟んで第3の小突起部84cが一対形成されている。
【0067】
トレランスリング80の突起部84の剛性による反力のX方向成分及びY方向成分について、
図36〜38に示す解析結果に基づいて説明する。
図36,37において図中右側(横軸の170°側)は合口部3側であり、図中左側(横軸の0°側)は対向部7側である。
図36は
図24と同様である。
図36における比較のトレランスリングは、複数の突起部を有し、各突起部が同じ形状を有する。換言すると
図36における比較のトレランスリングは、突起部の頂部の位置がトレランスリング80の突起部84の頂部と同じであり、かつトレランスリング80の大突起部84bを小突起部84aに代えたものである。第4の小突起部4aの剛性による反力については、第1と第2のX方向半周領域93それぞれに2分の1の大きさで作用しているものとして解析した。
【0068】
図36に示すように大突起部84bが形成されるトレランスリング80の領域における反力FのX1方向成分FX1は、比較のトレランスリングの対応する領域と比べて小さい。
【0069】
図38に示すように対向部半周領域92における反力FのY2方向成分FY2の総和ΣFY2は、合口部半周領域91における反力FのY1方向成分FY1の総和ΣFY1より、総和ΣFY2の約0.1%分だけわずかに小さい。第1のX方向半周領域93における反力FのX1方向成分FX1の総和ΣFX1(=ΣFX2)は、総和ΣFY1の99.0%であり、総和ΣFY2の99.1%である。換言すると総和ΣFX1は、総和ΣFY1及び総和ΣFY2よりわずかに小さくなるよう設定されており、すなわち略同一になっている。
【0070】
図2,17,26,38を参照するようにトレランスリング80は、
図1に示すトレランスリング1と同様の作用効果を奏する。したがって断面真円に近い形状で外周部材Hが変形する。かくして外周部材Hが例えば楕円化するような変形を抑制することができる。
【0071】
図17を参照するように合口部半周領域91の突起部84の数は例えば4個であり、対向部半周領域92の突起部84の数は例えば5個である。したがって対向部7の近縁領域に形成される突起部84は他の領域と比べて密に配置される。具体的には、合口部半周領域91の特に合口部3の近縁領域は、他の領域と比べて外周部材Hの内周面Haに作用する力が相対的に小さくなる傾向にある。対向部半周領域92の特に対向部7の近縁領域も、合口部3の近縁領域に準じて、他の領域と比べて外周部材Hの内周面Haに作用する力が相対的に小さくなる傾向にある。そのため合口部半周領域91に剛性の高い突起部84が形成され、対向部7の近縁領域に突起部84が密に形成される。この構成によって外周部材Hが特にX方向に延びた楕円化するような変形を抑制することができる。
【0072】
図20〜22、
図39〜41に基づいて他の実施形態を説明する。
図20〜22に示すトレランスリング100は、
図2に示すトレランスリング1の複数の突起部4と外周円筒面5に代えて、複数、例えば10個の突起部104と外周円筒面105を有する。
図20に示すようにトレランスリング100は、直線D2を境にして合口部半周領域111と対向部半周領域112を有する。合口部半周領域111は、合口部3を含み、例えば合口部3を円弧中心に含む。対向部半周領域112は、対向部7を含み、例えば対向部7を円弧中心に含む。トレランスリング100は、直線D1を境にして第1のX方向半周領域113と第2のX方向半周領域113を有する。第1と第2のX方向半周領域113は、一端に合口部3を有し、他端に対向部7を有する。この実施形態は突起部を連続形成した場合でも、突起部の剛性による反力のバランスをとれる例である。
【0073】
図20〜22に示すように第1のX方向半周領域113の外周円筒面105には、周方向に沿って端縁部2aから順番に、小突起部104a、小突起部104a、大突起部104b、大突起部104b、小突起部104aが形成されている。突起部104同士の間には間隔が形成されていない。小突起部104aは、
図2〜5に示すトレランスリング1の小突起部4aと同様の形状であるが、小突起部4aよりも周方向長さが長い。大突起部104bは、
図2〜5に示すトレランスリング1の大突起部4bと同様の形状であるが、大突起部4bよりも周方向長さが長い。そのため小突起部104aの剛性は、小突起部4aの剛性より小さい。大突起部104bの剛性は、大突起部4bの剛性より小さい。
図20に示すように小突起部104aと大突起部104bは、径方向の高さがほぼ等しい。したがって小突起部104aの頂部と大突起部104bの頂部は、外周部材Hの断面略円形状の内周面Haに対して均等に接触できる。
【0074】
図20に示すように合口部半周領域111には、端縁部2aの近縁に第1の小突起部104aが合口部3を周方向に挟んで一対形成されている。第1の小突起部104aと隣接して第2の小突起104aが一対形成されている。第2の小突起部104aと隣接して一対第1の大突起部104bが形成される。大突起部104bの頂部を含む略半分が合口部半周領域111に位置し、大突起部104bの頂部を含まない残りの略半分が対向部半周領域112に位置する。
【0075】
図20に示すように対向部半周領域112には、対向部7を介して横並びに第3の小突起部104aが一対形成されている。第3の小突起部104aと隣接して第2の大突起部104bが一対形成されている。第2の大突起部104bと隣接して一対の第1の大突起部104bが形成されている。
【0076】
トレランスリング100の突起部104の剛性による反力のX方向成分及びY方向成分について、
図39〜41に示す解析結果に基づいて説明する。
図39,40において図中右側(横軸の170°側)は合口部3側であり、図中左側(横軸の0°側)は対向部7側である。
図39は
図24と同様である。
図39における比較のトレランスリングは、複数の突起部を有し、各突起部が同じ形状を有する。換言すると
図39における比較のトレランスリングは、突起部の頂部の位置がトレランスリング100の突起部104の頂部と同じであり、かつトレランスリング100の大突起部104bを小突起部104aに代えたものである。
【0077】
図39に示すように大突起部104bが形成されるトレランスリング100の領域における反力FのX1方向成分FX1は、比較のトレランスリングの対応する領域と比べて小さい。
【0078】
図41に示すように対向部半周領域112における反力FのY2方向成分FY2の総和ΣFY2は、合口部半周領域111における反力FのY1方向成分FY1の総和ΣFY1より、総和ΣFY2の約5.5%分だけ大きい。第1のX方向半周領域113における反力FのX1方向成分FX1の総和ΣFX1(=ΣFX2)は、総和ΣFY1の99.4%であり、総和ΣFY2の94.9%である。換言すると総和ΣFX1は、総和ΣFY1及び総和ΣFY2よりわずかに小さくなるよう設定されており、すなわち略同一になっている。
【0079】
図2,20,26,41を参照するようにトレランスリング100は、
図1に示すトレランスリング1と同様の作用効果を奏する。したがって断面真円に近い形状で外周部材Hが変形する。かくして外周部材Hが例えば楕円化するような変形を抑制することができる。
【0080】
以上説明したトレランスリング1,20,40,60,80,100には種々変更を加えることができる。X方向半周領域における突起部の剛性による反力のX方向成分FXの総和ΣFXは、合口部半周領域における突起部の剛性による反力のY1方向成分FY1の総和ΣFY1に対する比率が1に近いことが好ましく、かつ対向部半周領域における突起部の剛性による反力のY2方向成分FY2の総和ΣFY2との比率が1に近いことが好ましい。ΣFY1に対するΣFXの比率及びΣFY2に対するΣFXの比率は、0.77〜1.2の間で適宜変更することができる。比率が0.77よりも小さい場合、外周部材HがY方向へ無視できない程度の楕円変形する場合がある。比率が1.2よりも大きい場合、外周部材HがX方向へ無視できない程度の楕円変形する場合がある。
【0081】
トレランスリングの周方向に1列に突起部が並んだ各実施形態を説明したが、突起部の配置はこれに限定されない。例えば周方向に並んだ突起部の列が、軸方向に2列以上並列される構成としてもよい。突起部の形状について適宜変更してもよく、例えば突起部4aや4bの周方向長さや軸方向長さを変更させた突起部を採用してもよい。例えば突起部4に代えて径方向から見て三角形状や六角形状といった形状を採用してもよい。トレランスリングに形成する突起部の個数や、小突起部あるいは大突起部といった突起部の種類、隣接する突起部同士の間隔等については、各実施形態に限定されることなく選択することができる。軸部材Sと外周部材Hとの間に嵌合される状態で使用するトレランスリングであれば、例えばスプライン嵌合を有する軸部材Sに嵌合する場合に限らず、様々なトレランスリングに本発明を適用させることができる。