(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも一つのアノード側の広エネルギーギャップ材料は、テトラアリールベンジジン、トリアリールアミン、5,10−二置換アントラセン、オリゴチオフェン、9,9−ジアルキル−フルオレンおよびそのオリゴマー、9,9−ジアリール−フルオレンおよびそのオリゴマー、オリゴフェニレン、スピロ−ビフェニル、およびそれらの誘導体から選択される材料を含む請求項1に記載のデバイス。
【背景技術】
【0005】
光電子デバイスは、電磁放射を電気的に生み出すもしくは検出するために、または周囲の電磁放射から電力を発生させるために、材料の光学および電気的特性に依存する。
【0006】
感光性光電子デバイスは、電磁放射を電気に変換する。光起電力(PV)デバイスとも呼ばれる太陽電池は、電力を発生させるために特に使用される、感光性光電子デバイスの一種である。太陽光以外の光源から電気エネルギーを発生させうるPVデバイスは、たとえば照明や暖房装置を提供するためや、計算機、ラジオ、コンピューターまたは遠隔監視もしくはコミュニケーション装置などの電子回路またはデバイスに電力を供給するためなど、電力を消費する負荷を駆動するために使用されうる。これらの電力発生の用途は、太陽または他の光源からの直接の照射が使用できない場合に動作が継続できるように、また、特定の用途の要求を伴いながら光起電力(PV)デバイスの電力の出力のバランスを保つために、電池または他のエネルギー蓄電デバイスを充電することもしばしば含む。本願で使用される「抵抗負荷」の用語は、任意の電力を消費または蓄電する回路、デバイス、装置またはシステムを意味する。
【0007】
感光性光電子デバイスの他の種類は、光伝導セルである。この作用では、光の吸収による変化を検出するために、信号検出回路がデバイスの抵抗を監視する。
【0008】
感光性光電子デバイスの他の種類は、光検出器である。動作中、光検出器は、光検出器が電磁放射に暴露される際に発生する電流を測定する電流検出回路と併用され、印加バイアス電圧を有してもよい。本願で説明される検出回路は、光検出器にバイアス電圧を供給でき、電磁放射に対する光検出器の電気的応答を測定できる。
【0009】
これらの三種類の感光性光電子デバイスは、以下に定義するような整流接合が存在するかどうかによって、さらに、バイアスまたはバイアス電圧としても知られる外部の印加電圧を用いて動作されるデバイスであるかどうかによって、特徴づけられてもよい。光伝導セルは、整流接合を有さず、通常、バイアスを用いて動作される。PVデバイスは、少なくとも一つの整流接合を有し、バイアスなしで動作される。光検出器は、少なくとも一つの整流接合を有し、常にではないが通常、バイアスを用いて動作される。一般に、光起電力セルは、回路、デバイスまたは装置に電力を供給するが、検出回路または検出回路からの情報の出力を制御するための信号または電流を供給しない。一方で、光検出器または光伝導体は、検出回路または検出回路からの情報の出力を制御するための信号または電流を供給するが、回路、デバイスまたは装置に電力を供給しない。
【0010】
従来、感光性光電子デバイスは、たとえば、結晶シリコン、多結晶シリコンおよびアモルファスシリコン、ヒ化ガリウム、テルル化カドミウムおよびその他の、多くの無機半導体から構成されている。本願における「半導体」の用語は、電荷キャリアが熱的または電磁的励起によって誘導される際に、電気を伝導できる材料を示す。「光伝導性」の用語は、一般に、キャリアが材料中の電荷を伝導、すなわち輸送できるように、電磁放射エネルギーが吸収され、その結果、電荷キャリアの励起エネルギーに変換されるという過程に関連する。「光伝導体」および「光伝導性材料」の用語は、本願では、電荷キャリアを発生させるために、電磁放射を吸収する特性に対して選択される半導体材料を意味するために使用される。
【0011】
PVデバイスは、入射する太陽パワーを有効な電力に変換できる効率によって特徴づけられてもよい。結晶シリコンまたはアモルファスシリコンを使用するデバイスは、商業用途の中心であり、23%以上の効率に達したものもある。しかし、効率のよい結晶ベースのデバイスで、特に大きい表面積のものは、大幅な効率低下の不具合なく大きい結晶を製造する場合に特有の問題により、製造することが難しく高価である。一方で、効率のよいアモルファスシリコンデバイスは、未だに安定性に関する問題を抱えている。安価な製造コストで、許容できる光起電力の変換効率に達するために、最近では有機光起電力セルの使用に対して取り組みが集中している。
【0012】
PVデバイスは、標準照明条件(すなわち、1000W/m
2、AM1.5スペクトルの照射である標準試験条件)の下で、最大の電力を発生させるように、すなわち光電流と光起電力との積が最大となるように、最適化されてもよい。標準照明条件の下での、そのようなセルの電力変換効率は、次の三つのパラメーター、(1)ゼロバイアスの下での電流、すなわち短絡回路電流I
SC[A]、(2)開回路条件の下での光起電力、すなわち開回路電圧V
OC[V]、および(3)曲線因子FF、に依存する。
【0013】
PVデバイスは、それらが負荷を介して接続され、光によって照射される際に、光発生電流を生み出す。無限大の負荷の下で照射される場合、PVデバイスは、その最大可能電圧、V open−circuitまたはV
OCを発生させる。その電気的接続が短絡された状態で照射される場合、PVデバイスは、その最大可能電流、I short−circuitまたはI
SCを発生させる。電力を発生させるために実際に使用される場合、PVデバイスは有限な抵抗負荷に接続され、電力の出力は、電流と電圧との積I×Vによって与えられる。PVデバイスによって発生する最大の全電力は、積I
SC×V
OCを本質的に超えることができない。負荷の値が最大の電力を引き出すために最適化される場合、電流および電圧は、それぞれI
maxおよびV
maxという値を有する。
【0014】
PVデバイスに関する性能指数は、曲線因子FFであり、以下の通り定義される。
【0015】
【数1】
【0016】
ここで、I
SCおよびV
OCは、実際の使用において、決して同時には取得されないため、FFは常に1未満である。そうではあるものの、FFが1に近づくにつれて、デバイスはより小さい直列抵抗または内部抵抗を有するようになり、この結果、最適条件の下で、負荷に対してI
SCとV
OCとの積のより大きい割合を供給する。P
incがデバイスに対する電力の入力である場合、デバイスの電力効率η
Pは、以下によって算出されうる。
【0017】
【数2】
【0018】
半導体の十分な容積を占める、内部に発生する電界を生成するために、通常の方法は、特に分子の量子エネルギー状態の分布に関して、適切に選択された伝導特性を有する二つの材料層を並置することである。これらの二つの材料の接合面は、光起電性接合と呼ばれる。従来の半導体の理論では、PV接合を形成するための材料は、一般に、n型またはp型のいずれかであるものとして示されてきた。ここで、n型は、多数キャリアの型が電子であることを示す。これは、相対的に自由なエネルギー状態において、多くの電子を有する材料として見なされうる。p型は、多数キャリアの型が正孔であることを示す。このような材料は、相対的に自由なエネルギー状態において、多くの正孔を有する。バックグラウンドの型(すなわち、光発生によらない型)において、多数キャリアの濃度は、欠陥または不純物による意図しないドーピングに主に依存する。不純物の型および濃度は、HOMO−LUMOギャップとしても知られる、伝導帯の最低エネルギーと価電子帯の最高エネルギーとの間のギャップ内のフェルミエネルギーまたは準位の値を決定する。フェルミエネルギーは、占有確率が1/2に等しいエネルギーの値によって示される、分子の量子エネルギー状態の統計的な占有を特徴づける。伝導帯の最低(LUMO)エネルギー近傍のフェルミエネルギーは、電子が支配的なキャリアであることを示す。価電子帯の最大(HOMO)エネルギー近傍のフェルミエネルギーは、正孔が支配的なキャリアであることを示す。したがって、フェルミエネルギーは、従来の半導体を最も特徴づける特性であり、プロトタイプのPV接合は、従来からp−n接合面であった。
【0019】
「整流」の用語は、特に、接合面が非対称な伝導特性を有すること(すなわち、接合面が好ましくは一方向における電荷の輸送を担うこと)を示す。整流は、通常、適切に選択された材料の間の接合において発生するビルトイン電界と関連する。
【0020】
有機半導体における重要な特性は、キャリア移動度である。移動度は、電荷キャリアが電界に反応して、伝導材料を通って移動できる容易さを測定する。有機感光性デバイスにおいて、高い電子移動度により、電子によって優先的に伝導する材料を含む層は、電子輸送層またはETLと呼ばれうる。高い正孔移動度により、正孔によって優先的に伝導する材料を含む層は、正孔輸送層またはHTLと呼ばれうる。場合によっては、アクセプタの材料はETLであってもよく、ドナーの材料はHTLであってもよい。
【0021】
従来の無機半導体PVセルは、内部の電界を設置するために、p−n接合を用いうる。しかし、今では、p−n接合の設置に加えて、ヘテロ接合のエネルギー準位のオフセットもまた、重要な役割を果たすことが認識されている。
【0022】
有機ドナー−アクセプタ(D−A)ヘテロ接合におけるエネルギー準位のオフセットは、有機材料における光発生の過程の基本的な性質により、有機PVデバイスの動作に対して重要であると考えられる。有機材料の光励起において、局在するフレンケルまたは電荷移動励起子が発生する。電気的検出または電流の発生が生じるため、結合した励起子は、その構成要素である電子および正孔に解離されなければならない。そのような過程は、ビルトイン電界によって誘導されうるが、有機デバイスにおいて一般に見られる電界(F〜10
6V/cm)における効率は低い。有機材料における最も効率のよい励起子解離は、D−A接合面において発生する。このような接合面において、低いイオン化ポテンシャルを有するドナー材料は、高い電子親和力を有するアクセプタ材料と共に、ヘテロ接合を形成する。励起子の解離は、ドナーおよびアクセプタの材料のエネルギー準位の調整によって、そのような接合面においてエネルギー的に起こりやすくなり、アクセプタ材料における自由電子ポーラロンおよびドナー材料における自由正孔ポーラロンをもたらす。
【0023】
キャリアの発生は、励起子の発生、拡散およびイオン化または収集を必要とする。これらの過程の各々に関連する効率ηがある。添え字は、電力効率のためのP、外部量子効率のためのEXT、光子吸収のためのA、拡散のためのED、収集のためのCCおよび内部量子効率のためのINTとして使用されうる。この表記を用いると、以下のようになる。
【0024】
【数3】
【0025】
励起子の拡散長(L
D)は、一般に、光吸収長(〜500Å)よりかなり短く(L
D〜50Å)、多重または高度に折り返された接合面を含み、厚くてそれゆえに抵抗の高いセルを使用するか、または光吸収効率が低くて薄いセルを使用するかといった、トレードオフを要求する。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本願で使用される「有機」の用語は、有機感光性デバイスを作製するために使用されてもよいポリマー材料および小分子有機材料を含む。「小分子」はポリマーでない任意の有機材料を意味し、「小分子」は実際にはかなり大きくてもよい。小分子は、状況次第で繰り返し単位を含んでもよい。たとえば、長鎖アルキル基を置換基として使用しても、分子は「小分子」の分類から除外されない。小分子はまた、たとえばポリマー骨格上のペンダント基として、または当該骨格の一部として、ポリマーに組み込まれてもよい。
【0038】
本発明の有機材料において、「ドナー」および「アクセプタ」の用語は、接合しているが異なる二つの有機材料の、最高被占軌道(HOMO)および最低空軌道(LUMO)エネルギー準位の相対的な位置を意味する。他の材料と接するある材料のLUMOエネルギー準位が真空準位から遠い場合、その材料はアクセプタである。そうでない場合、それはドナーである。外部のバイアスがない場合、ドナー−アクセプタ接合における電子がアクセプタ材料に移動すること、および正孔がドナー材料に移動することは、エネルギー的に起こりやすい。
【0039】
本願では、「カソード」の用語は、次のように使用される。周囲の照射の下で、抵抗負荷に外部の印加電圧なく接続される非積層のPVデバイスまたは積層のPVデバイスの単一ユニット(たとえば太陽電池)において、電子が、隣接する光伝導性材料からカソードに移動する。同様に、「アノード」の用語は、照射の下の太陽電池において、正孔が、隣接する光伝導性材料からアノードに移動するというように本願では使用され、電子が逆に移動することに相当する。なお、「アノード」および「カソード」電極は、直列の光起電力デバイスにおいて使用される電極のように、電荷輸送領域または再結合領域であってもよい。感光性光電子デバイスでは、外部の装置からの周囲の電磁放射の最大量が、光伝導的に活性である内部領域に受け入れられうることが望ましい。つまり、電磁放射は、光伝導性の吸収によってそれが電気に変換されうる場所である、光伝導層に到達しなければならない。これは、電気接点の少なくとも一つが、入力する電磁放射を最小限に吸収し、最小限に反射しているべきであることをしばしば決定づける。場合によっては、そのような接点は、透明または少なくとも半透明であるべきである。電極は、関連する波長において、周囲の電磁放射の少なくとも50%がそれを通して透過されうる場合、「透明」であると言われる。電極は、関連する波長において、周囲の電磁放射の幾分かであるが、50%未満を透過させる場合、「半透明」であると言われる。反射電極は、吸収されることなくセルを通過していた光が、セルを通して逆側に反射されるような、反射性の材料であってもよい。
【0040】
本願で使用される「光活性領域」は、励起子を発生させるために電磁放射を吸収するデバイスの領域を意味する。同様に、層が励起子を発生させるために電磁放射を吸収する場合、層は「光活性」である。励起子は、電流を発生させるために電子および正孔に解離しうる。
【0041】
本願で使用され、説明される「層」は、主な次元がX−Yである(すなわち、自身の長さおよび幅に沿う)感光性デバイスの要素または構成要素を意味する。層の用語は、単層または材料のシートに必ずしも限定されないことを理解されたい。さらに、他の材料または層と、そのような層との接合面を含む、ある層の表面は、不完全であってもよく、ここで、当該表面は、他の材料または層と浸透したり、混在されたり、入り組んだりするネットワークを示すことを理解されたい。同様に、X−Y次元に沿う当該層の連続は、他の層または材料によって妨げられたり、あるいは干渉されたりしてもよいように、層が不連続であってもよいこともまた理解されたい。
【0042】
本願で使用される第1のHOMOまたはLUMOエネルギー準位は、第2のHOMOまたはLUMOエネルギー準位より真空準位に近い場合、第2のHOMOまたはLUMOエネルギー準位「より小さい」。同様に、第1のHOMOまたはLUMOエネルギー準位は、第2のHOMOまたはLUMOエネルギー準位より真空準位から遠い場合、第2のHOMOまたはLUMOエネルギー準位「より大きい」。
【0043】
本願で使用される二つの軌道のエネルギー準位は、それらのエネルギーが小数第10位まで一致する場合に、本願でその用語が使用されるように、互いに「等しい」。たとえば、本発明においては、−3.70eVのLUMOエネルギーは、−3.79eVのLUMOエネルギーに対して、「等しい」とみなされる。
【0044】
本願で使用されるLUMO
AccおよびHOMO
Accは、少なくとも一つのアクセプタ材料の、最低空軌道エネルギー準位および最高被占軌道エネルギー準位を、それぞれ表す。
【0045】
本願で使用されるLUMO
DonおよびHOMO
Donは、少なくとも一つのドナー材料の、最低空軌道エネルギー準位および最高被占軌道エネルギー準位を、それぞれ表す。
【0046】
本願で使用されるLUMO
CS−WGおよびHOMO
CS−WGは、少なくとも一つのカソード側の広エネルギーギャップ材料の、最低空軌道エネルギー準位および最高被占軌道エネルギー準位を、それぞれ表す。
【0047】
本願で使用されるLUMO
AS−WGおよびHOMO
AS−WGは、少なくとも一つのアノード側の広エネルギーギャップ材料の、最低空軌道エネルギー準位および最高被占軌道エネルギー準位を、それぞれ表す。
【0048】
本願で使用されるLUMO
ECおよびHOMO
ECは、少なくとも一つの電子伝導材料の、最低空軌道エネルギー準位および最高被占軌道エネルギー準位を、それぞれ表す。
【0049】
本願で使用されるLUMO
HCおよびHOMO
HCは、少なくとも一つの正孔伝導材料の、最低空軌道エネルギー準位および最高被占軌道エネルギー準位を、それぞれ表す。
【0050】
本願で使用されるHOMO−LUMOギャップは、材料のHOMOおよびLUMOの間のエネルギー差である。
【0051】
本発明のデバイスは、少なくとも一つの励起子阻止電荷キャリアフィルタを含む。例として、本発明に係る有機感光性光電子デバイスの概略図を、
図1に示す。電極110は、アノードまたはカソードを含む。電極110がカソードを含む場合、電極140はアノードを含む。電極110がアノードを含む場合、電極140はカソードを含む。光活性領域は、本願で説明されるように、ドナー/アクセプタ有機層120および130を含み、ドナー−アクセプタヘテロ接合を形成する。光活性領域は、追加のドナーおよび/またはアクセプタ層を含み、たとえばハイブリッド平面混合ヘテロ接合を形成してもよい。有機層120は、少なくとも一つのドナー材料または少なくとも一つのアクセプタ材料を含む。有機層120が少なくとも一つのアクセプタ材料を含む場合、有機層130は、少なくとも一つのドナー材料を含む。有機層120が少なくとも一つのドナー材料を含む場合、有機層130は、少なくとも一つのアクセプタ材料を含む。なお、
図1におけるドナー/アクセプタ層は、平面である必要はない。つまり、本発明は、有機光起電力デバイスに関する技術分野において周知である、あらゆる種類のドナー−アクセプタヘテロ接合を考慮し、特に、本願で説明されるものを含む。
【0052】
図1のデバイスAにおいて、電極110がカソードを含み、有機層120が少なくとも一つのアクセプタ材料を含み、有機層130が少なくとも一つのドナー材料を含み、電極140がアノードを含む場合、層115は、励起子阻止電子フィルタである。電極110がアノードを含み、有機層120が少なくとも一つのドナー材料を含み、有機層130が少なくとも一つのアクセプタ材料を含み、電極140がカソードを含む場合、層115は、励起子阻止正孔フィルタである。
【0053】
いくつかの実施形態において、デバイスは、デバイスBのように、励起子阻止電子フィルタおよび励起子阻止正孔フィルタの両方を含む。電極110がカソードを含み、有機層120が少なくとも一つのアクセプタ材料を含み、有機層130が少なくとも一つのドナー材料を含み、層135が励起子阻止正孔フィルタであり、電極140がアノードを含む場合、層115は、励起子阻止電子フィルタである。電極110がアノードを含み、有機層120が少なくとも一つのドナー材料を含み、有機層130が少なくとも一つのアクセプタ材料を含み、層135が励起子阻止電子フィルタであり、電極140がカソードを含む場合、層115は、励起子阻止正孔フィルタである。
【0054】
図1には示していないが、デバイスAおよびBは、励起子阻止電子/正孔フィルタおよび最も近い電極の間に位置する、追加のバッファ層またはキャップ層を含んでもよい。
【0055】
励起子阻止電子フィルタは、カソードおよび少なくとも一つのアクセプタ材料の間に配置され、少なくとも一つのカソード側の広エネルギーギャップ材料および少なくとも一つの電子伝導材料を含む混合物を含む。少なくとも一つのカソード側の広エネルギーギャップ材料は、
・LUMO
Acc以下である最低空軌道エネルギー準位(LUMO
CS−WG)と、
・HOMO
Acc以上である、またはHOMO
Accより0.3eVの範囲内で小さい最高被占軌道エネルギー準位(HOMO
CS−WG)と、
・HOMO
Acc−LUMO
Accのエネルギーギャップより広いHOMO
CS−WG−LUMO
CS−WGのエネルギーギャップと、を有する。
【0056】
少なくとも一つの電子伝導材料は、LUMO
Acc以上である、またはLUMO
Accより0.3eVの範囲内で小さい(たとえば、0.2eVの範囲内で小さい)最低空軌道エネルギー準位(LUMO
EC)を有する。
【0057】
いくつかの実施形態において、HOMO
CS−WGは、HOMO
Accより大きく、たとえば、少なくとも0.2eV大きく、少なくとも0.3eV大きく、少なくとも0.5eV大きく、少なくとも1eV大きく、少なくとも1.5eV大きく、または少なくとも2eV大きく、LUMO
CS−WGは、LUMO
Accより小さく、たとえば、少なくとも0.2eV小さく、少なくとも0.3eV小さく、少なくとも0.5eV小さく、少なくとも1eV小さく、少なくとも1.5eV小さく、または少なくとも2eV小さい。
【0058】
いくつかの実施形態において、LUMO
ECは、LUMO
Accに等しい。
【0059】
いくつかの実施形態において、LUMO
ECは、LUMO
Accより大きく、たとえば、0.5eVの範囲内で大きく、0.4eVの範囲内で大きく、0.3eVの範囲内で大きく、または0.2eVの範囲内で大きい。
【0060】
いくつかの実施形態において、LUMO
ECは、LUMO
Accより0.1eVだけ小さい、または大きい。
【0061】
いくつかの実施形態において、LUMO
CS−WGは、LUMO
ECより小さく、たとえば、少なくとも0.2eV小さく、少なくとも0.3eV小さく、少なくとも0.5eV小さく、少なくとも1eV小さく、少なくとも1.5eV小さく、または少なくとも2eV小さい。
【0062】
いくつかの実施形態において、LUMO
CS−WGは、LUMO
Accより0.2eVを超えて小さく、たとえば、0.3eVを超えて小さく、0.5eVを超えて小さく、1eVを超えて小さく、1.5eVを超えて小さく、または2eVを超えて小さい。
【0063】
いくつかの実施形態において、少なくとも一つのカソード側の広エネルギーギャップ材料は、バソキュプロイン(BCP)、バソフェナントロリン(BPhen)、p−ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン(UGH−2)、(4,4’−N,N’−ジカルバゾール)ビフェニル(CBP)、N,N’−ジカルバゾリル−3,5−ベンゼン(mCP)、ポリ(ビニルカルバゾール)(PVK)、フェナントレン、アルキルおよび/またはアリール置換フェナントレン、アルキルおよび/またはアリール置換されたベンゼンの誘導体、トリフェニレンならびにアルキルおよび/またはアリール置換トリフェニレン、アザ置換トリフェニレン、オキサジアゾール、トリアゾール、アリール−ベンズイミダゾール、アダマンタンならびにアルキルおよび/またはアリール置換アダマンタン、テトラアリールメタンおよびその誘導体、9,9−ジアルキル−フルオレンおよびそのオリゴマー、9,9−ジアリール−フルオレンおよびそのオリゴマー、スピロ−ビフェニルおよびその置換誘導体、コランニュレンならびにそのアルキルおよび/またはアリール置換誘導体、ならびにそれらの誘導体から選択される材料を含む。
【0064】
いくつかの実施形態において、少なくとも一つのアクセプタ材料は、サブフタロシアニン、サブナフタロシアニン、亜鉛ジピリン錯体などのジピリン錯体、BODIPY錯体、ペリレン、ナフタレン、フラーレンおよびフラーレン誘導体(たとえばPCBM、ICBA、ICMAなど)、ならびにカルボニル置換ポリチオフェン、シアノ置換ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン、またはペリレンジイミド、ベンゾチアジアゾールなどの電子不足のモノマーを含むポリマー、またはフラーレンポリマーなどのポリマーから選択される材料を含む。C
60、C
70、C
76、C
82、C
84またはそれらの誘導体、たとえば、フェニル−C
61−酪酸−メチルエステル([60]PCBM)、フェニル−C
71−酪酸−メチルエステル([70]PCBM)またはチエニル−C
61−酪酸−メチルエステル([60]ThCBM)、ならびに3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸−ビスベンズイミダゾール(PTCBI)、ヘキサデカフルオロフタロシアニン(F
16CuPc)、およびそれらの誘導体などの他のアクセプタから選択されるものに限定されない。
【0065】
いくつかの実施形態において、少なくとも一つの電子伝導材料は、サブフタロシアニン、サブナフタロシアニン、亜鉛ジピリン錯体などのジピリン錯体、BODIPY錯体、ペリレン、ナフタレン、フラーレンおよびフラーレン誘導体(たとえばPCBM、ICBA、ICMAなど)、ならびにカルボニル置換ポリチオフェン、シアノ置換ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレンなどのポリマー、もしくはペリレンジイミド、ベンゾチアジアゾールなどの電子不足のモノマーを含むポリマー、またはフラーレンポリマーから選択される材料を含む。C
60、C
70、C
76、C
82、C
84またはそれらの誘導体、たとえばフェニル−C
61−酪酸−メチルエステル([60]PCBM)、フェニル−C
71−酪酸−メチルエステル([70]PCBM)またはチエニル−C
61−酪酸−メチルエステル([60]ThCBM)、ならびに3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸−ビスベンズイミダゾール(PTCBI)、ヘキサデカフルオロフタロシアニン(F
16CuPc)、およびそれらの誘導体などの他のアクセプタから選択されるものに限定されない。
【0066】
いくつかの実施形態において、少なくとも一つのアクセプタ材料は、フラーレンおよび官能基化フラーレン誘導体から選択される材料を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも一つの電子伝導材料は、フラーレンおよび官能基化フラーレン誘導体から選択される材料を含む。
【0067】
フラーレンは、少なくとも一つの電子伝導材料としての使用に関して、特に興味深い。C
60は、たとえば、長い波長における吸収が対称禁制遷移に起因する一方で、フレンケル型(すなわち単分子)の励起状態をもたらす許容電子遷移に起因する、260nmおよび340nmの波長における二つのピークを有するという特性によって支配される液体において、吸収スペクトルを有する。液体から固体の状態への遷移において、C
60は、たとえば、一つのフラーレンのHOMOからその最も隣接したLUMOに対する電子の励起から生じる、分子間の電荷移動(CT)状態の発生によって、λ=400〜550nm間において、著しい吸収の増加を示す。C
60を、BCPなどのカソード側の広エネルギーギャップ材料と混合する場合、CT状態の吸収は、フレンケル型の特性による吸収よりも急速に減少する。したがって、フラーレンは、カソード側の広エネルギーギャップ材料と混合される場合、デバイスの効率に寄与しないフラーレン電子伝導材料において励起子を発生させないように、(70%のC
60および30%の広ギャップ材料などの、中程度の希釈物であっても)減少した吸収率を有する、優れた電子伝導材料として使用されうる。
【0068】
いくつかの実施形態において、少なくとも一つの電子伝導材料は、C
60およびC
70から選択される材料を含む。
【0069】
いくつかの実施形態において、少なくとも一つのアクセプタ材料および少なくとも一つの電子伝導材料は、同一の材料を含む。ある実施形態において、当該同一の材料は、フラーレンまたは官能基化フラーレン誘導体である。ある実施形態において、当該同一の材料は、C
60またはC
70である。いくつかの実施形態において、少なくとも一つのアクセプタ材料および少なくとも一つの電子伝導材料は、異なる材料を含む。
【0070】
いくつかの実施形態において、少なくとも一つのアクセプタ材料および少なくとも一つの電子伝導材料は、異なるフラーレンおよび官能基化フラーレン誘導体から選択される。
【0071】
いくつかの実施形態において、混合物は、少なくとも一つのカソード側の広エネルギーギャップ材料および少なくとも一つの電子伝導材料を、体積比で約10:1〜1:10、たとえば、体積比で約8:1〜1:8、体積比で約6:1〜1:6、体積比で約4:1〜1:4、または体積比で約2:1〜1:2となる範囲の比率で含む。ある実施形態において、当該比率は、約1:1である。なお、特定される比率は、整数値および非整数値を含む。
【0072】
いくつかの実施形態において、ドナー−アクセプタヘテロ接合は、混合ヘテロ接合、バルクヘテロ接合、平面ヘテロ接合およびハイブリッド平面混合ヘテロ接合から選択される。ある実施形態において、ドナー−アクセプタヘテロ接合は、ハイブリッド平面混合ヘテロ接合(PM−HJ)である。たとえば、PM−HJ構造においては、低いFFをもたらしうる二つの主要な損失機構がある。一つは、速度がk
BM=γ・n・pによって与えられる、PM−HJ構造の広範囲のドナー−アクセプタ混合領域における、自由電荷キャリアの二分子の再結合である。ここで、γはランジュバン再結合定数、n(p)は自由電子(正孔)密度である。二つ目の主要な損失は、純アクセプタ層における、励起子−ポーラロン消光に起因する。電子−ポーラロンの蓄積は、消光、ひいては内部量子効率(IQE)の減少をもたらす、純アクセプタ/阻止層の接合面において、観察されてきた。なお、励起子およびポーラロンの濃度は両方とも、強度に比例するため、励起子−ポーラロン消光は、二分子の再結合と同様の関係に従う。両方の機構は、第四象限における電流密度−電圧(J−V)特性の傾きを増加させる順方向バイアスの下で、光電流の損失をもたらし、最終的に、FFおよびPCEの両方を減少させうる。
【0073】
光活性領域およびカソードの間に配置される励起子阻止電子フィルタは、二重層OPVセルの効率を増加させうる。電子伝導材料は、電子−ポーラロンを効率よく伝導し、広エネルギーギャップ材料は、励起子を阻止する。阻止層の接合面において、励起子およびポーラロンを空間的に分離する電子フィルタの能力によって、電子フィルタを用いる二重層セルにおいては、励起子−ポーラロン消光を著しく減少できる。同様に、これは、V
OCおよびFFが変化しないままである一方で、J
SCの著しい増加をもたらしうる。また、PM−HJセルは、混合光活性層における二分子の再結合の問題を抱える。しかし、本発明の(混合層の)フィルタは、純層である従来の阻止バッファ層と比較して、伝導性を増加させることによって、活性層を含む界面領域の減少をもたらす。結果として生じる、感光性の領域にわたる電界の増加は、より急速な電荷抽出をもたらす。同様に、これは、セルにおける二分子の再結合の減少をもたらす。
【0074】
いくつかの実施形態において、デバイスは、励起子阻止電子フィルタおよびカソードの間に配置される、少なくとも一つの追加のバッファ層またはキャップ層をさらに含む。いくつかの実施形態において、少なくとも一つのキャップ層は、電子をカソードに伝導するために、LUMO
EC以上である、またはLUMO
ECより0.3eVの範囲内で小さい(たとえば、0.2eVの範囲内で小さい)LUMOエネルギー準位を有する。ある実施形態において、キャップ層のLUMOエネルギー準位は、LUMO
ECより0.5eVの範囲内で大きく、たとえば、0.4eVの範囲内で大きく、0.3eVの範囲内で大きく、0.2eVの範囲内で大きい。いくつかの実施形態において、キャップ層は、LUMO
ECより0.1eVだけ小さい、または大きいLUMOエネルギー準位を有する。いくつかの実施形態において、少なくとも一つのキャップ層は、フラーレンおよび官能基化フラーレン誘導体から選択される。いくつかの実施形態において、少なくとも一つのキャップ層は、PTCBIを含む。
【0075】
いくつかの実施形態において、キャップ層は、電子のカソードへの伝導を促さないLUMOエネルギー準位を有する材料を含む。これらの実施形態において、キャップ層は、損傷誘導性の状態を通して電子を輸送するために、十分に薄くてもよい。いくつかの実施形態において、少なくとも一つのキャップ層は、BCP、BPhen、UGH−2およびCBPから選択される材料を含む。
【0076】
いくつかの実施形態において、少なくとも一つのキャップ層および少なくとも一つの電子伝導材料は、同一の材料を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも一つのキャップ層、少なくとも一つの電子伝導材料および少なくとも一つのアクセプタ材料は、同一の材料を含む。
【0077】
いくつかの実施形態において、少なくとも一つのキャップ層および少なくとも一つのカソード側の広エネルギーギャップ材料は、同一の材料を含む。
【0078】
励起子阻止正孔フィルタは、アノードおよび少なくとも一つのドナー材料の間に配置され、少なくとも一つのアノード側の広エネルギーギャップ材料および少なくとも一つの正孔伝導材料を含む混合物を含む。少なくとも一つのアノード側の広エネルギーギャップ材料は、
・HOMO
Don以上である最高被占軌道エネルギー準位(HOMO
AS−WG)と、
・LUMO
Don以下である、またはLUMO
Donより0.3eVの範囲内で大きい最低空軌道エネルギー準位(LUMO
AS−WG)と、
・HOMO
Don−LUMO
Donのエネルギーギャップより広いHOMO
AS−WG−LUMO
AS−WGのエネルギーギャップと、を有する。
【0079】
少なくとも一つの正孔伝導材料は、HOMO
Don以下である(真空により近い)、またはHOMO
Donより0.2eVの範囲内で大きい(真空から遠い)最高被占軌道エネルギー準位(HOMO
HC)を有する。
【0080】
いくつかの実施形態において、HOMO
AS−WGは、HOMO
Donより大きく、たとえば、少なくとも0.2eV大きく、少なくとも0.3eV大きく、少なくとも0.5eV大きく、少なくとも1eV大きく、少なくとも1.5eV大きく、または少なくとも2eV大きく、LUMO
AS−WGは、LUMO
Donより小さく、たとえば、少なくとも0.2eV小さく、少なくとも0.3eV小さく、少なくとも0.5eV小さく、少なくとも1eV小さく、少なくとも1.5eV小さく、または少なくとも2eV小さい。
【0081】
いくつかの実施形態において、HOMO
HCは、HOMO
Donに等しい。
【0082】
いくつかの実施形態において、HOMO
HCは、HOMO
Donより小さく、たとえば、0.5eVの範囲内で小さく、0.4eVの範囲内で小さく、0.3eVの範囲内で小さく、または0.2eVの範囲内で小さい。
【0083】
いくつかの実施形態において、HOMO
HCは、HOMO
Donより0.1eVだけ小さい、または大きい。
【0084】
いくつかの実施形態において、HOMO
AS−WGは、HOMO
HCより大きく、たとえば、少なくとも0.2eV大きく、少なくとも0.3eV大きく、少なくとも0.5eV大きく、少なくとも1eV大きく、少なくとも1.5eV大きく、または少なくとも2eV大きい。
【0085】
いくつかの実施形態において、HOMO
AS−WGは、HOMO
Donより0.2eVを超えて大きく、たとえば、0.3eVを超えて大きく、0.5eVを超えて大きく、1eVを超えて大きく、1.5eVを超えて大きく、または2eVを超えて大きい。
【0086】
いくつかの実施形態において、少なくとも一つのアノード側の広エネルギーギャップ材料は、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチル)−1−1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(NPD)およびN,N’−ビス−(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス−(フェニル)−ベンジジン(TPD)などのテトラアリールベンジジン、トリアリールアミン、5,10−二置換アントラセン、オリゴチオフェン、9,9−ジアルキル−フルオレンおよびそのオリゴマー、9,9−ジアリール−フルオレンおよびそのオリゴマー、オリゴフェニレン、スピロ−ビフェニルおよびその置換誘導体、ならびにそれらの誘導体から選択される材料を含む。
【0087】
いくつかの実施形態において、少なくとも一つのドナー材料は、銅フタロシアニン(CuPc)、クロロアルミニウムフタロシアニン(ClAlPc)、スズフタロシアニン(SnPc)、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)および他の修飾されたフタロシアニンなどのフタロシアニン、ホウ素サブフタロシアニン(SubPc)などのサブフタロシアニン、ナフタロシアニン、メロシアニン色素、ホウ素ジピロメテン(BODIPY)色素、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)などのチオフェン、低バンドギャップポリマー、ペンタセンおよびテトラセンなどのポリアセン、ジインデノペリレン(DIP)、スクアライン(SQ)色素、テトラフェニルジベンゾペリフランテン(DBP)、ならびにそれらの誘導体から選択される材料を含む。スクアラインのドナー材料の例は、2,4−ビス[4−(N,N−ジプロピルアミノ)−2,6−ジヒドロキシフェニル]スクアライン、2,4−ビス[4−(N,N−ジイソブチルアミノ)−2,6−ジヒドロキシフェニル]スクアライン、および2,4−ビス[4−(N,N−ジフェニルアミノ)−2,6−ジヒドロキシフェニル]スクアライン(DPSQ)を含むが、これらに限定されない。
【0088】
いくつかの実施形態において、少なくとも一つの正孔伝導材料は、銅フタロシアニン(CuPc)、クロロアルミニウムフタロシアニン(ClAlPc)、スズフタロシアニン(SnPc)、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)および他の修飾されたフタロシアニンなどのフタロシアニン、ホウ素サブフタロシアニン(SubPc)などのサブフタロシアニン、ナフタロシアニン、メロシアニン色素、ホウ素ジピロメテン(BODIPY)色素、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)などのチオフェン、低バンドギャップポリマー、ペンタセンおよびテトラセンなどのポリアセン、ジインデノペリレン(DIP)、スクアライン(SQ)色素、テトラフェニルジベンゾペリフランテン(DBP)、ならびにそれらの誘導体から選択される材料を含む。スクアラインのドナー材料の例は、2,4−ビス[4−(N,N−ジプロピルアミノ)−2,6−ジヒドロキシフェニル]スクアライン、2,4−ビス[4−(N,N−ジイソブチルアミノ)−2,6−ジヒドロキシフェニル]スクアライン、および2,4−ビス[4−(N,N−ジフェニルアミノ)−2,6−ジヒドロキシフェニル]スクアライン(DPSQ)を含むが、これらに限定されない。
【0089】
いくつかの実施形態において、少なくとも一つのドナー材料および少なくとも一つの正孔伝導材料は、同一の材料を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも一つのドナー材料および少なくとも一つの正孔伝導材料は、異なる材料を含む。
【0090】
いくつかの実施形態において、混合物は、少なくとも一つのアノード側の広エネルギーギャップ材料および少なくとも一つの正孔伝導材料を、体積比で約10:1〜1:10、たとえば、体積比で約8:1〜1:8、体積比で約6:1〜1:6、体積比で約4:1〜1:4、または体積比で約2:1〜1:2となる範囲の比率で含む。ある実施形態において、当該比率は、約1:1である。なお、特定される比率は、整数値および非整数値を含む。
【0091】
いくつかの実施形態において、デバイスは、励起子阻止正孔フィルタおよびアノードの間に配置される、少なくとも一つの追加のバッファ層またはキャップ層をさらに含む。
【0092】
本願の有機感光性光電子デバイスは、所望の構造特性を提供する任意の基板上に生成され、配置されうる。したがって、いくつかの実施形態において、デバイスは、基板をさらに含む。たとえば、基板は、フレキシブルでもリジッドでもよく、平面でも非平面でもよい。基板は、透明でも、半透明でも、非透明でもよい。基板は、反射性でもよい。プラスチック、ガラス、金属および石英は、剛直な基板の材料の例である。プラスチック箔、金属箔および薄いガラスは、フレキシブル基板の材料の例である。基板の材料および厚さは、所望の構造特性および光学特性を取得するように選択されてもよい。
【0093】
本発明の有機感光性光電子デバイスは、たとえば、太陽電池、光検出器または光伝導体などの、PVデバイスとして作用してもよい。
【0094】
本願で説明される有機感光性光電子デバイスが、PVデバイスとして作用する場合、光伝導性の有機層において用いられる材料およびそれらの厚さを、たとえば、デバイスの外部量子効率を最適化するように、選択してもよい。たとえば、適切な厚さを、デバイスにおいて所望の光の間隔を達成させ、および/または、デバイスにおいて抵抗を減少させるように、選択できる。本願で説明される有機感光性光電子デバイスが、光検出器または光伝導体として作用する場合、光伝導性の有機層において用いられる材料およびそれらの厚さを、たとえば、所望のスペクトル領域に対するデバイスの感度を最大化させるように、選択してもよい。
【0095】
そして、デバイスは、少なくとも一つの平滑層をさらに含んでもよい。平滑層は、たとえば、光活性層と、電極のいずれか一方または両方との間に位置してもよい。3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホン酸塩(PEDOT:PSS)を含む膜は、平滑層の例である。
【0096】
本発明の有機感光性光電子デバイスは、二つ以上のサブセルを含む直列のデバイスとして存在してもよい。本願で使用されるサブセルは、少なくとも一つのドナー−アクセプタヘテロ接合を含むデバイスの構成要素を意味する。サブセルが有機感光性光電子デバイスとして個別に使用される際、それは、一般に電極一式を含む。直列のデバイスは、直列のドナー−アクセプタヘテロ接合間に、電荷輸送材料、電極、または電荷再結合材料もしくはトンネル接合を含んでもよい。いくつかの直列の構造において、隣接したサブセルは、共有物(すなわち共有された電極、電荷輸送領域または電荷再結合領域)を使用できる。他の場合では、隣接したサブセルは、共通電極または電荷輸送領域を共有しない。サブセルは、並列または直列に、電気的に接続されてもよい。
【0097】
いくつかの実施形態において、電荷輸送層または電荷再結合層は、Al、Ag、Au、MoO
3、Li、LiF、Sn、Ti、WO
3、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化スズ(TO)、ガリウムインジウムスズ酸化物(GITO)、酸化亜鉛(ZO)または亜鉛インジウムスズ酸化物(ZITO)から選択されてもよい。他の実施形態において、電荷輸送層または電荷再結合層は、金属ナノクラスター、ナノ粒子またはナノロッドから構成されてもよい。
【0098】
層および材料は、本技術分野で周知である技術を用いて積層されてもよい。たとえば、本願で説明される層および材料は、溶液、蒸気または両方の組み合わせから、積層または共積層されうる。いくつかの実施形態において、有機材料または有機層は、たとえばスピンコーティング、スピンキャスティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、ドクターブレーディング、インクジェット印刷または転写印刷から選択される1つ以上の技術による溶液処理などによって、積層または共積層されうる。
【0099】
他の実施形態において、有機材料は、真空熱蒸着などの真空蒸着、有機気相堆積または有機蒸気ジェット印刷などを用いて、積層または共積層されてもよい。
【0100】
材料の混合物を含む、本発明の励起子阻止電荷キャリアフィルタ
は、積層の条件を変化させることによって作製されてもよい。たとえば、混合物における各材料の濃度は、各材料の積層の速度を変化させることによって制御されうる。
【0101】
なお、本願で説明される実施形態は、多種多様な構造に関連して用いられてもよい。機能的な有機光起電力デバイスは、異なる方法で説明される、様々な層を組み合わせることによって達成されてもよく、あるいは、設計、性能およびコストの要因に基づいて、層が完全に省略されてもよい。具体的に説明されていない追加の層もまた、含まれてもよい。具体的に説明された材料以外の材料が、使用されてもよい。本願において、様々な層に与えられる名称は、厳密に限定することを目的としたものではない。
【0102】
実施例以外、あるいは特に指定された箇所を除いて、本明細書および特許請求の範囲において使用される、成分の量、反応条件、分析の測定結果などを示す全ての数字は、全ての場合において、「約」の用語によって修飾されるものとして理解されたい。したがって、逆に指定されない限り、本明細書および添付された特許請求の範囲において説明される数値パラメーターは、本発明によって取得しようとする所望の特性に応じて、変更してもよい概算値である。少なくとも、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限するための試みとしてではなく、各数値パラメーターは、有効数字および通常の丸め技法による近似の数字を考慮して解釈されたい。
【0103】
本発明の広い範囲を説明する数値的な範囲およびバラメーターは、概算値であるが、特に指定されない限り、具体的な実施例において説明される数値は、可能な限り正確に記録されている。しかしながら、任意の数値は本質的に、それらのそれぞれの試験の測定結果において見られる標準的な誤差から必然的に生じる一定の誤差を含む。
【0104】
本願で説明されるデバイスおよび方法は、単なる例示を目的とした、以下の限定的でない例によってさらに説明される。
【0105】
(実施例)
(実施例1)
C
60およびバソキュプロイン(BCP)を様々な濃度で混合し、励起子阻止電子フィルタを形成した。BCPは、BCPを不活性なドーパントにし、C
60からのエネルギーおよび電子の両方の移動を妨げる、C
60(1.86eVの一重項、1.55eVの三重項)より高い、一重項(3.17eV)および三重項(2.62eV)エネルギーを有する広エネルギーギャップ材料である。ドープされたC
60:BCP膜は、電子をなお伝導する一方で、励起子を効果的に阻止する。これらの特性に基づいて、他のバッファを含むデバイスと比較して、改善されたデバイス性能をもたらすバッファ層/フィルタとして、ドープされた膜を利用した。
【0106】
フラーレンにドーピングするBCPの吸収の効果を、C
60:BCP膜を様々な体積比率で作製することによって調べた。純C
60膜およびドープされたC
60膜の吸収スペクトルを、
図2に示す。C
60の比率が減少すると、吸収は減少し、BCPの吸収に近づく。しかし、
図2の挿入図において示すように、フレンケル励起子および電荷移動(CT)励起子にそれぞれ対応する、340nmおよび450nmにおける二つの吸収のピークの減衰は、それぞれ全く異なる速度を取った。340nmにおける許容フレンケル遷移の吸光係数は、この遷移の単分子の性質を反映し、ベールの法則によって予測されるような、C
60の比率に伴う線形的な減衰に一致している。興味深いことに、450nmにおける分子間のCT吸収の吸光係数は、指数関数的な減衰を示し、xをC
60の体積比率とした場合の式α=x
−2.4に適合した。これは、CT励起子の形成が2〜3の分子を伴うことを意味した。C
60:BCP膜の吸収スペクトルは、ドーピングの濃度がCT励起子に対して有意な効果を示し、適度なドーピングレベルであっても、その形成を抑制することを示した。
【0107】
(実施例2)
デバイスを、次の通りに作製した。パターニングされたITOで覆われたガラス基板(パターニングされたストライプの幅=2mm、厚さ=150nm±10nm、シート抵抗=20±5Ωcm
−2、透過率は550nmにおいて84%、Thin Film Devices社の厚意により作製)を石鹸を用いて洗浄し、テトラクロロエチレン、アセトンおよびプロパノールにおいて(各5分間)煮沸した。ITO基板を、高真空チャンバーの内部に投入する直前に、オゾン雰囲気(UVOCS T10X10/OES)に10分間曝露した。純性の材料の層を積層する速度は、次の通り、MoO
x(0.02nm/s)、NPD(0.1nm/s)、C
60(0.1nm/s)、BCP(0.1nm/s)およびAl(0.2nm/s)とした。ドープされた膜を積層する速度(C
60:BCPの含有量の体積比)に関しては、次の通り、C
60:BCP(2:1)の場合は、C
60(0.08nm/s):BCP(0.04nm/s)の共積層とし、C
60:BCP(1:1)の場合は、C
60(0.06nm/s):BCP(0.06nm/s)の共積層とし、C
60:BCP(1:2)の場合は、C
60(0.04nm/s):BCP(0.08nm/s)の共積層とした。有機層の積層の後、2mmのストライプ幅を有するマスクをN
2の下で基板上に配置し、100nmのAlカソードを積層した。デバイスの面積は4mm
2であった。
【0108】
C
60からのはっきりとした光反応を観察するために、広いギャップの正孔輸送材料である、N,N’−ジ−[(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル]−1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(NPD)をドナーとして用いる、
図3に示す構造を有する二重層デバイスを作製した。デバイス間で観察される全ての変化が、界面効果の代わりに、ドープされた膜の体積に関連するように、D/A接合面におけるC
60の純層は、電荷分離の熱力学および動力学を守ることが意図された。
【0109】
1sunの強度(100mW/cm
2)を有する擬似AM1.5G照射の下での、デバイスの電流−電圧(J−V)特性と、外部量子効率(EQE)曲線とを、
図3に示す。表1に示すように、C
60:BCP層のドーピングの濃度が1:0から1:2に増加すると、短絡回路電流(J
SC)は、3.0±0.1mA/cm
2から1.3±0.1mA/cm
2になり、1.7mA/cm
2ほど減少した。この減少は、EQEの測定結果に反映されるように、C
60の光反応の減少に起因しており、一方で、C
60の比率が減少するにつれて、開回路電圧(V
OC)は、0.87±0.01で大きく変化しないままであり、曲線因子(FF)は、0.45±0.01から0.49±0.01に増加した。EQEの反応の減少は、400nm〜550nmの間における反応の減少が、400nmより短い波長における反応より急速に生じるという、ドープされたC
60膜の吸収のプロファイルと、相互に大きく関連があった。CT励起子の影響は、D1およびD2を比較することによって、最も明確に確認されうる。これらのデバイスにおいて、350nmにおけるEQEの反応は、変化しないままであった一方で、450nmにおけるEQE反応は、23%から15.5%になり、約3分の1に減少した。
【0110】
混合層におけるBCPのドーピングの濃度の増加に伴う、光反応の減少についての観察は、広エネルギーギャップ材料であるUGH2を用いたSubPCの希釈物が、光電流の著しい増加をもたらしたという、Menkeらによる、2012年のJ. Nat. Mater.における観察とは、全く対照的である。SubPcの場合、Menkeは、光電流の増加が、フォルスター半径が平均的な分子の分離距離より高速に増加した濃度の型があったという事実によって引き起こされた、励起子の拡散長の増加に起因したことを示した。拡散長の増加は、ドープされた膜における、フォトルミネッセンスの効率、励起状態の持続時間およびスペクトルの重なり積分の増加、ならびに無放射減衰速度の減少に起因した。これらの結果の間の対照性は、二つのシステムに関する励起子の起源を調べることによって、説明されうる。SubPcにおいては、単分子のフォルスター励起子が形成された。希釈物において、励起子の拡散長の増加が指数関数的である一方で、吸収の減少は、線形的であった。逆に、C
60においては、かなりの数の多分子の、形成されたCT励起子が存在した。希釈物において、これは、拡散長のいかなる増加をも上回るCT励起子の形成の、指数関数的な減衰をもたらした。C
60におけるCTの吸収特性が、高い太陽放射照度の領域において存在するという事実によって、デバイスの全体の性能は低下した。
【0111】
混合デバイスが低い光電流を有する一方で、デバイスのV
OCは変化しないままであり、D/A接合面の維持がその所望の効果を達成したことを示した。C
60の希釈物において、FFが減少しなかったという事実は、混合膜が電子を効率よく輸送できたことを示した。J
SCの減少と組み合わせられた、変化しないV
OCおよびFFの増加は、希釈物において、電力変換効率(η)の50%以上の減少をもたらし、1.14%(D1)から0.56%(D4)になった。しかし、透明度の増加、および混合膜の効率のよい電荷の輸送は、C
60:BCP膜を、バッファ層のための魅力的な候補にする。
【0113】
(実施例3)
図4に示すデバイスを、実施例2に開示する作製方法によって作製した。
図4は、1sun、AM1.5G照射の下でのデバイスのJ−V曲線と、波長の関数としての外部量子効率のプロットとを、挿入図におけるデバイスの構造(x=10nm(D7)、20nm(D6)、30nm(D5)と共に示す。表2は、このデバイスに関する性能データを提供する。
【0115】
(実施例4)
図5に示すデバイスを、実施例2に開示する作製方法によって作製した。
図5は、1sun、AM1.5G照射の下でのデバイスのJ−V曲線と、波長の関数としての外部量子効率のプロットとを、挿入図におけるデバイスの構造(x=0nm(D8)、20nm(D9)、40nm(D10))と共に示す。表3は、このデバイスに関する性能データを提供する。
【0117】
(実施例5)
図6(下図の挿入図)に示す、OPVデバイスを作製した。二つのC
60層(一方は、x≦35nm厚であり、他方は、[40nm−x]厚である)の間に挟まれる、10nm厚のBCP:C
60層を含むOPVを、赤吸収ドナー(2,4−ビス[4−(N,N−ジフェニルアミノ)−2,6−ジヒドロキシフェニル]スクアライン)(DPSQ)を用いて作製した。純C
60およびBCP:C
60膜の合計の厚さは、50nmであった。
図6は、x=5nm〜35nmを有するデバイスD20〜D23の、J−VおよびEQEの特性を示し、他の性能パラメーターを、表4に示す。BCP:C
60層がD/A接合面の方に移動するにつれて(すなわち、xを減少させるにつれて)、J
SCは、6.2±0.3mA/cm
2から4.1±0.2mA/cm
2に減少した。この傾向は、D/A接合面に隣接する純C
60層の厚さが減少するにつれて(表4のD20〜D23)、C
60からの反応が減少したEQEスペクトルにおいても見られた。これらのデータは、金属電極に隣接するC
60膜において発生する励起子が、自由電荷への解離が発生しうるD/A接合面に拡散することを、BCP:C
60が防ぐことを示した。一方で、混合層は、一定の高いFF=0.72±0.01およびV
OC=0.94±0.01Vから推測されるように、電荷の輸送を妨げない。D/A接合面に隣接するC
60層の厚さを、x=5nmから35nmに増加させると、1sun、AM1.5G照射の下での電力変換効率は、2.7±0.1%から4.1±0.1%に増加した。
【0119】
(実施例6)
図7に示すデバイスを、実施例2に開示する作製方法によって作製した。
図7は、1sun、AM1.5G照射の下でのデバイスのJ−V曲線(挿入図は、デバイスの特性を示す)と、波長の関数としての外部量子効率(挿入図は、デバイス構造を示す)とを示す。これらのデバイスは、電荷の収集を改善するための追加の層で覆われた混合バッファ層の性能を、単一の純PTCBIバッファ層と比較した。
【0120】
(実施例7)
図8に示すデバイスを、実施例2に開示する作製方法によって作製した。
図8は、ゼロバイアスにおけるEQEに対して正規化された、印加バイアス(+0.5Vは破線、−1Vは実線)の下での、様々なバッファ層に関する外部量子効率を示す。これらのデータは、混合バッファ層が、デバイスのバイアス依存性を減少させ、活性層/バッファの接合面における電荷の蓄積の減少を示し、結果として、励起子−ポーラロン消光の量を減少させたことを示した。
【0121】
(実施例8)
ドープされた層において用いられる状態の密度の減少が、励起子の移動の速度を減少させるという統計的な方法において、混合層が励起子を阻止する機構を評価できる。混合層においては、エネルギーが移動できる、著しく減少した状態の数があり、それらの過程を効果的に阻止する。状態の密度における変化の効果を、モンテカルロシミュレーションによってモデル化し、その結果を
図9で確認できる。このモデルにおいては、励起子を、混合膜に隣接する純膜においてランダムに発生させた。そして、拡散をシミュレーションするために、励起子は、所定のステップ数の間のランダムウォークによって移動し、それらの最終的な位置を記録した。励起子は、最隣接ホッピングによってのみ移動すると仮定した。ドープされた層および純層の間の接合面において、層間のホッピングに関する確率を、各々の層において用いられるサイトの相対数によって測定した。当該モデルは、等しいサイトの密度を有する二つの材料の間の接合に関して、励起子の50%がバッファに拡散したことを予測した。1:1のC
60:BCPのバッファに近づくC
60のフレンケル励起子の場合に対応した、バッファにおける50%のサイトの減少の場合、励起子の20%のみが移動した。80%のサイトの減少において、1:1のC
60:BCPのバッファに近づくCT励起子の場合をシミュレーションすると、励起子の5%未満が移動した。これらのシミュレーションは、統計的な手段を考慮するのみにすぎないが、ドープされたバッファが、励起子をかなり良好に阻止したことを示した。
【0122】
(実施例9)
図10に示すように、上図において、異なるバッファ層で覆われたC
70の正規化された吸光スペクトルを、波長の関数としてプロットした。これらのデータは、混合するほど、励起子のエネルギーが大きくなり、励起子の阻止に役立つことを示した。下図は、消光層(NPD)、阻止層(BCP)および混合バッファ層で覆われた(450nmで励起された)C
70の、発光スペクトルを示す。
【0123】
(実施例10)
図11に示すように、様々なバッファ層で覆われたデバイスのEQEスペクトル(上図)と、0.8sun、AM1.5G照射の下でのデバイスのJ−V曲線(下図)は、化合物のバッファの含有による性能の改善を、他のバッファ層と比較して示した。
【0124】
(実施例11)
C
60:BCPからなるバッファの使用に関して調べ、その性能を、以前に開発されたバッファであるBCPおよびPTCBIの性能と、C
60:BCPをBCPまたはPTCBIで覆った化合物において比較した。これらのデバイスにおいて、活性層をDPSQ/C
60から構成した。J−V、EQEおよびデバイスの構造を
図12に示し、関連するデータを表5に示す。デバイスのV
OCは、バッファとは無関係に、0.95±0.01Vで一定のままであった。10nmのPTCBIバッファ(D13)で覆われたデバイスは、PTCBI
20からの寄生の光吸収によって、最も小さいJ
SCである7.1±0.1mA/cm
2を示した。PTCBIとは異なり、10nmの厚さを有すその他のバッファである、BCP(D11)およびC
60:BCP(D12)は吸収せず、それぞれ、7.5±0.1mA/cm
2および7.6±0.1mA/cm
2へのJ
SCの増加をもたらした。15nmの厚さを有する化合物のバッファ層である、C
60:BCP/PTCBI(D14)およびC
60:BCP/BCP(D15)は、それぞれ、8.1±0.1mA/cm
2および8.3±0.1mA/cm
2という、よりいっそう高いJ
SCを有した。EQEの測定結果は、光電流の変化が、C
60の反応の変化と、バッファの10nmから15nmへの遷移に対するJ
SCの増加が光学効果に起因したことを確認した、転送行列形式
9を用いた光学モデルとに起因したことを示した。著しい変化はまた、デバイス間のFFにおいても生じた。BCPで覆われたデバイスであるD11およびD15は、それぞれ、0.64±0.01および0.65±0.01という、最も小さいFFを示した。C
60:BCPのみからなるバッファ(D12)は、0.66±0.01という、わずかにより良好なFFを有した。PTCBIで覆われたデバイスであるD13およびD14は、それぞれ、0.68±0.01および0.71±0.01という、最も大きいFFを示した。光電流およびFFの増加によって、C
60:BCP/PTCBIバッファの電力変換効率は、C
60:BCP/BCPの5.0±0.1%、C
60:BCPの4.8±0.1%、PTCBIの4.8±0.1%、BCPの4.8±0.1%と比較して、5.3±0.1%で最も大きかった。
【0125】
印加バイアスの下でのEQEと、照射強度の関数としての応答性(R)とを調べることによって、バッファ層の間における、FFの差分を説明できた。
図13は、様々なバッファ層を含むデバイスに関して、それらの0VのEQEに正規化された−1Vバイアスの下での、EQEを示す。600nm〜825nmの間におけるDPSQ反応が、一定のままである一方で、400nm〜500nmの間におけるC
60からの信号を、外部バイアスを適用することによって調節した。ゼロバイアスのEQEからの偏差の大きさにおいて、バッファ層の効果を確認できた。電圧依存性は、10nmのBCPのバッファで覆われたデバイス(D11)に関して、最も大きく、一方で、10nmのC
60:BCPバッファ(D12)に関して、最も小さかった。
【0126】
10nmのC
60:BCP/5nmのBCPで覆われたデバイス(D15)は、10nmのBCP(D11)より小さい電圧依存性を示した。これは、二つの要因に起因した。第一に、BCP層がより薄く、捕らえられた電子の数を減少させたことである。第二に、上に示したように、電子をなお輸送する一方で、励起子がC
60:BCP/BCP接合面に拡散することを、C
60:BCP層が阻止したことである。これにより、励起子のC
60:BCP/BCP接合面において捕らえられた電子との相互作用が防止された。
【0127】
10nmのPTCBIバッファ(D13)は、C
60からの等エネルギーの電子の輸送を、それらのLUMOの調整によって可能とした。同時に、PTCBI/Ag接合面は、電荷抽出のための双極子またはエネルギー的な障壁を形成しなかった。10nmのC
60:BCP/5nmのPTCBI(D14)は、同様に作用する一方で、励起子がPTCBIに到達することも防いだ。
【0128】
図13に示すように、照射強度の関数としての応答性を調べることによって、ポーラロン−励起子に誘導される励起子の消光を、さらに証明した。応答性を、入力面積の光強度で除算した、デバイスの短絡回路電流密度として定義した。このパラメーターは、様々な照射強度の下で、デバイスの電流効率を比較することを可能とした。BCPで覆われたデバイスであるD11およびD15は、照射が1W/m
2(0.01sun)から100W/m
2(1sun)に増加するにつれて、はっきりとした非線形の応答性の減少を示した。減衰の非線形性は、励起子−ポーラロンに誘導される励起子の消光と整合し、増加した照射強度は、励起子およびポーラロンの両方の数の増加をもたらした。D12、D13およびD14に用いられたその他のバッファは全て、照射強度の関数として応答性の小さい変化を示し、励起子−ポーラロンに誘導される励起子の消光が減少したことを示した。
【0130】
(実施例12)
C
60:BCPの励起子を阻止する特性を調べるために、二つの純C
60層の間に挟まれる、ドープされたC
60層を含むデバイスを、赤吸収ドナー(2,4−ビス[4−(N,N−ジフェニルアミノ)−2,6−ジヒドロキシフェニル]スクアライン)(DPSQ)
20,21を用いて作製した(
図14)。純C
60およびC
60:BCP膜の合計の厚さは一定であり、ドープされた膜の位置のみを、D/A接合面からAg電極の方に移動させた。
【0131】
デバイスD16〜19のJ−VおよびEQEの特性を
図14に示し、関連するデータを表6に示す。D/A接合面に隣接する純C
60層の厚さが、35nmから5nmに減少する(または、C
60:BCP層を、D/A接合面の方に移動させる)につれて、デバイスの光電流は、6.2±0.1mA/cm
2から4.1±0.1mA/cm
2に、著しく減少した。この傾向は、D/A接合面に隣接する純C
60層の厚さが減少するにつれて(D16〜D19)、C
60からの反応が減少した、EQEスペクトルにおいてもみられた。これらの結果は、金属電極に隣接する純C
60膜において発生する励起子が、電荷を分離するためにD/A接合面に拡散することを、効果的に阻止することによって、C
60:BCPが、励起子阻止層として作用したことをはっきりと示した。その励起子を阻止する作用とは対照的に、デバイスのFFは、約0.72±0.01で一定のままであり、ドープされた層は、優れた電荷伝導性を示した。V
OCもまた、0.94±0.01で一定のままであった。全体として、D/A接合面に隣接する純C
60層の厚さを、5nmから35nmに増加させると、ηは、2.7±0.1%から4.1±0.1%に増加した。
【0133】
(実施例13)
図15は、1sun、AM1.5G照射の下でのJ−V曲線を上図に示し、様々なバッファ層を含むデバイスの、波長の関数としての外部量子効率のプロットを下図に示す。これらのデバイスは、混合バッファ層の含有による性能の改善を示した。
【0134】
(実施例14)
図16は、C
60対BCPの様々な比率を有する、様々なバッファ層を含むデバイスの、1sun、AM1.5G照射の下でのJ−V曲線を上図に示し、外部量子効率のプロットを下図に示す。これらのデバイスは、体積比で1:1となる、最適な混合比率を示した。
【0135】
(実施例15)
デバイスを、ガラス基板/100nmのITO/10nmのMoO
3/54nmの1:8のDBP:C
70/バッファ/100nmのAgという構造を用いて作製した。
図17は、比較的厚い、DBPとC
70の純層との1:8の体積比を有する活性層を含む平面混合OPVセルに関する、1sun、擬似AM1.5G照射における、照射に対するJ−V(左上)、EQE(右上)および抽出された効率のパラメーター(下)を示す。各バッファに関する厚さ、およびBPhen:C
70の体積比を、表に示す。最も良い曲線因子および効率は、混合領域および接点の間にある、追加のBPhenまたはPTCBI層を含む混合バッファを含むデバイスに関してであり、この接点もまた、混合またはバルクヘテロ接合のデバイスを改善したことを示した。
【0136】
(実施例16)
デバイスを、ガラス基板/100nmのITO/5nmのMoO
3/25nmの1:8のDBP:C
70/バッファ/100nmのAgという構造を用いて作製した。
図18は、比較的薄い、DBPとC
70の純層との1:8の体積比を有する活性層、および様々なバッファを含む平面混合OPVセルに関する、0.7sun、擬似AM1.5G照射における、照射に対するJ−V(左上)、EQE(右上)および抽出された効率のパラメーター(下)を示す。各バッファに関する厚さ、およびBCP:C
70の体積比を、表に示す。最も良い曲線因子および効率は、混合領域および接点の間にある、追加のBPhenまたはPTCBI層を含む混合バッファを含むデバイスに関してであり、この接点もまた、混合またはバルクヘテロ接合のデバイスを改善したことを示し、混合層のデバイスにおいて、指数関数的な曲線因子を取得できた。
【0137】
(実施例17)
デバイスを、
図19において特定される構造を用いて作製した。
図19(a)におけるデバイスは、ITO/MoO
3/DPSQ/C
60/C
60:BPhen(x)/BPhen/Alという構造を有した。
図19(b)におけるデバイスは、ITO/MoO
3/DPSQ/C
60/C
60:BCP(x)/BPhen/Alという構造を有した。
図19(c)におけるデバイスは、ITO/MoO
3/DPSQ/C
60/C
60:UGH2(x)/BPhen/Alという構造を有した。
図19は、BPhen、CBPおよびUGH2を用いた希釈物に関する、EQEおよびJ−V曲線を示す。全ての場合において改善が見られ、C
60/バッファ接合面における電荷の蓄積の減少が、改善をもたらしたことを確認した。
【0138】
(実施例18)
OPVセルを、2×10
−7torrの基準圧における真空熱蒸着(VTE)によって、インジウムスズ酸化物(ITO、シート抵抗:15Ω/□)を用いてプレコートされた基板上に生成した。積層の前に、希釈されたTergitol(登録商標)(タイプNP−10)、脱イオン水、アセトンおよびイソプロピルアルコールにおいて基板を洗浄し、紫外線オゾンに10分間曝露した。MoO
3をAcros Organics社から、C
60をMaterials and Electrochemical Research社から、BPhenおよびDBPをLuminescence Technology社から、C
70をSES Research社から取得した。DBP、C
60およびC
70を、温度勾配昇華によって、一度精製した。
【0139】
MoO
3およびBPhen層を、0.1nm/sの速度で生成し、DBPおよびC
70を、DBPの0.02nm/sの積層速度と、C
70の0.16nm/sの積層速度とを用いて共積層し、1:8の比率を達成した。BPhen:C
60混合バッファを、BPhenおよびC
60をそれぞれ0.05nm/sの速度で共積層することによって生成し、1:1の混合物を作り出した。続いて、100nm厚のAgカソードを、15の配列であり、1mmの直径のデバイス(0.008cm
2のデバイス面積)を定義するシャドーマスクを通して積層した。作製に続いて、J−V特性およびEQEの測定のために、デバイスを、超高純度のN
2で満たされたグローブボックスの中に移動した。測定の間、試験されるデバイスのみを照射の下に置く一方で、他のデバイスを暗闇において保管した。太陽シミュレーターの強度を、NRELにトレースできるSi基準セルを用いて校正し、J
SCを、スペクトル不整合に関して補正した。波長(l)の関数としてのEQEを、ロックインアンプと、200Hzにおいて三角波にされたXeランプからの単色光とを用いて取得した。J
SCおよびPCEの誤差は、光強度およびスペクトル校正の不確実性から主に生じる。
【0140】
混合HJセルを、真空熱蒸着(VTE)によって、MoO
3(10nm)/DBP:C
70(54nm、1:8体積比)/バッファ/Ag(100nm)という構造を用いて生成した。二つの異なるバッファ層として、8nm厚のBPhen(制御)と、5nm厚の純BPhen層で覆われた、10nm厚のBPhen:C
60の、(体積比で)1:1の比率の混合層とを用いた。
図20は、制御および化合物のバッファを用いた混合HJデバイスの、J−V特性およびEQEスペクトルを示す。制御は、上述したように、擬似AM1.5G、1sunの照射(スペクトル不整合率=1.00±0.01)の下で、FF=55±1%、J
SC=12.5±0.3mA/cm
2、V
OC=0.91±0.1VおよびPCE=6.3±0.3%を有した。化合物の電子フィルタのバッファを含むセルは、全ての三つの性能パラメーターにおいて改善を示し、FF=63±1%、J
SC=12.8±0.3mA/cm
2、V
OC=0.93±0.1VおよびPCE=7.5±0.4%をもたらし、後者は、制御と比較して19%の増加に相当した。
【0141】
化合物のバッファを含むデバイスに関するFFの著しい改善を、
図20(a)に(曲線の間の網掛け領域によって)示し、
図20(b)のエネルギー準位の図と共に示す。以前の研究は、エネルギー準位の屈曲がフラーレン/BCP接合面において生じたことを示し、左の挿入図に示すように、電子の蓄積および大きい電圧降下をもたらした。結果として、電圧を再分配するにつれて、活性層にわたる電界を減少させ、電荷抽出時間を増加させ、それゆえに、電子および正孔に関する、それらが再結合する機会を有したドナー−アクセプタヘテロ接合面における、滞留時間を増加させた。化合物のバッファの場合、1:1のBPhen:C
60の混合物の高い伝導性が、より少ない電子の蓄積と、それゆえに、接合面におけるより小さい電圧降下(
図20(b)の右の挿入図)と、DBP:C
70混合領域におけるより高い電界とをもたらした。同様に、これは、減少した二分子の消光をもたらし、結果として、増加したFFと、
図20(b)に示すように、l=400nm〜550nmの間の波長において増加したEQEとをもたらした。
【0142】
両方のセルは、l<400nmおよびλ>550nmにおいて、ほぼ同一のEQEを示した(
図20(b)参照)。λ<400nmにおいては、減少した二分子の再結合によって、内部量子効率(IQE)が増加した一方で、BPhen:C
60混合バッファにおける寄生の吸収率から生じる、化合物のバッファのセルにおける光活性領域の吸収率は、減少した。全体として、化合物のバッファのセルのEQEは、制御セルとほぼ等しかった。λ>550nmにおいては、DBP:C
70の混合領域において発生した励起子が、ほぼすぐに電荷に解離したため、吸収された光学パワーのピークは、電荷分布のピークと同様に、アノードの方に移動した。これは、制御セルにおいて電子が蓄積される、(カソード側に近い)DBP:C
70/BPhen接合面における正孔の数を減少させ、一方で、同時に、正孔の抽出を改善した。より長い励起波長における正孔および電子の空間的な分離は、制御セルにおける二分子の再結合を減少させ、同様に、ほぼ同一のEQEをもたらした。
【0143】
二分子の再結合の役割を理解するために、光強度(I)の関数として、両方のセルに関する応答性(R)を調べた。制御セルは、Iに伴うRの単調な減少を有し、I=0.6sunにおけるR=12.7±0.4A/Wから、I=2.7sunにおける11.8±0.3A/Wとなり、一方で、化合物のバッファのセルに関しては、同一の強度の範囲にわたって、Rは、0.2A/Wだけ減少することがわかった(
図21参照)。一般的に、J
SC=J
G−J
MM−J
BMであり、J
Gは光発生電流密度、J
MMは単分子の再結合電流密度、J
BMは二分子の再結合電流密度である。J
GおよびJ
MMの両方はIに対して線形的に比例し、一方で、J
BM∝γ・n・p∝b・I
2であり、γはランジュバン係数、bは定数である。したがって、R=J
SC/I=R
0−β・Iであり、R
0は、二分子の再結合がない場合における応答性である。この解析に対する線形適合(
図21の破線)は、両方のセルに関して、R
0=12.9A/Wを取得した。両方のセルに関する、ゼロの光強度における同一の切片は、二分子の再結合がない場合にI→0になるにつれて、両方のOPVセルが同一の応答性を有したことを示した。しかし、制御に関するβは、化合物のバッファを含むセルに関するβより、4倍大きかった。化合物のバッファのセルに関するより小さいβは、二分子の再結合が、制御セルのそれのわずか25%であったことを意味し、混合領域における増加した電界によって、電子および正孔の濃度が、それぞれ平均して50%減少したことを示した。供給される外部バイアスに対する、制御の内部電界と比較してより大きい、化合物のバッファのセルにおけるヘテロ接合にわたるこの内部電界は、改善された電荷抽出、ひいてはより高いFFをもたらした。
【0144】
化合物のバッファの電荷の輸送特性を、Matlabにおいてプログラムされた、層の3Dモンテカルロシミュレーションによって、さらに調べた。C
60の分子間の再隣接ホッピングに起因する電子の移動を伴う、立体格子におけるBPhenおよびC
60の分子のランダムな分布として、バッファをモデル化した。このモデルにおいては、電荷間のコロンビウムの相互作用を無視し、格子サイトを等エネルギーであると仮定し、印加電界によって与えられるエネルギー差を除外した。バッファ層の片側に注入された電荷に関する平均抽出時間を取得する、Miller−Abrahamsの理論によって、移動の可能性を算出した。そして、層の移動度を、抽出時間および電界の間の関係から算出し、5.1×10
−2cm
2/V・sという実験値に対して、純C
60層における電子のゼロ電界の移動度を設定することによって、正規化した。1:1の混合バッファに関して、モデルは、4.7×10
−3cm
2/V・sという、純C
60のそれより一桁だけ低い、効果的な移動度を予測した。比較すると、純BPhen膜は、1.9×10
−5cm
2/V・sという著しく低い電子移動度を有し、消光を促進する、バッファ接合面における電荷の蓄積をもたらした。
【0145】
1:1の混合バッファの異なる厚さに関する予測を調べることによって、モデルを分析し、結果を
図22(a)に示す。一定の電荷密度(すなわち一定の照射強度)を仮定すると、供給電圧における(膜の移動度に対応する)抽出時間と、混合層の厚さとの間に、線形的な関係、言い換えれば直列抵抗の線形的な増加があることを確認した。混合バッファのDBP:C
60 OPVに関する実験データに対する適合を、
図22(a)の挿入図に示す。純BPhen層は、金属を積層する間に誘導される欠陥状態を通して、電子を伝導し、その結果、厚さおよび抵抗の間に、超線形的な関係をもたらした。一方で、混合バッファの抵抗は、厚さに伴い、20nmまでも線形的に増加し、混合バッファにおける電子が、混合物におけるC
60によって、主に伝導されることを示した。
【0146】
石英上における1:1のBPhen:C
60の混合物で覆われた40nm厚のC
70膜の、フォトルミネッセンス(PL)励起スペクトルを用いて、励起子を阻止する効率を、実験的に調べた。検討中の混合物の表面に積層された層のPL強度を、「完全なる」阻止層または消光層のいずれかのそれと比較することによって、これらの過程の相対的な重要性を確認できた。したがって、これに関して、8nm厚のBPhen、またはN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチル)−1−1’−ビフェニル−4,4’ジアミン(NPD)層を、基準の、完全なる励起子阻止層、または消光層としてそれぞれ用いた。混合バッファのPL強度は、基準の阻止層に関して見られた強度とほぼ同一であり(
図22(b)参照)、BPhen:C
60の混合層が、効率よく励起子を阻止できたことを示した。BPhen:C
60の混合物は、比較的高い電子移動度を有し、混合バッファ層は、効果的なフィルタとして作用し、励起子およびポーラロンを空間的に分離でき、純フラーレン層の内部における、励起子−ポーラロン消光の減少をもたらした。
【0147】
(実施例19)
ハイブリッド平面混合ヘテロ接合(PM−HJ)を含むOPVセルを、実施例18に開示する実験によって作製した。OPVセルにおいて、DBPおよびC
70を、それぞれドナーおよびアクセプタとして用いた。OPVセルは、インジウムスズ酸化物(ITO)/MoO
3(10nm)/DBP:C
70(54nm、体積比で1:8)/C
70(9nm)/バッファ/Ag(100nm)というデバイス構造を有した。DBP:C
70のPM−HJ OPVセルにおいて、次の三つの異なるバッファ層、(1)8nm厚のバソフェナントロリン(BPhen)(制御)、(2)10nm厚のBPhen:C
60の1:1の比率での混合層、(3)5nm厚の純BPhen層で覆われた(2)と同一の混合バッファ、を用いた。
【0148】
図23は、(1)〜(3)のバッファ層の構造を用いたデバイスに関する性能を比較して、電圧に対する電流密度(J−V)の特性と、外部量子効率であるEQEのスペクトルとを示し、表7のまとめと共に示した。
【0150】
制御セルは、以前の結果に相当する、あるいは以前の結果よりわずかに良好な、FF=56%および短絡回路電流J
SC=13.8±0.4mA/cm
2を有した。したがって、制御セルは、擬似AM1.5G、1sunの照射の下で、電力変換効率PCE=7.1±0.2%を示した。BPhen:C
60(1:1)のフィルタのみを含むセルは、制御セルと比較して、同様の開回路電圧(V
OC)=0.91±0.01Vを有したが、減少したポーラロン−励起子消光に起因する、増加したFF=62±1%を有した。しかし、
図23(b)に示すように、上記に起因してわずかに小さくなったJ
SC=12.8±0.3mA/cm
2は、λ<420nmおよびλ>550nmに関して、減少したEQEをもたらした。全体として、PCEは、1sunの照射の下で、7.2±0.2%にわずかに増加した。
【0151】
BPhen:C
60/BPhenの化合物のバッファを含むOPVセルは、制御と比較して18%改善した、FF=66±1%を有した。また、V
OCは、制御に関する0.91±0.1Vから、BPhen:C
60/BPhenバッファを含むセルに関する0.93±0.1Vに増加した。しかし、J
CSは、制御と比較して5%減の、13.2±0.4mA/cm
2に減少した。全体として、BPhen:C
60/BPhenバッファを含むOPVセルは、擬似AM1.5G、1sunの照射の下で、制御セルと比較して14%増加した、PCE=8.1±0.4%を示した。
【0152】
図24において、有機光活性領域(すなわち、DBP:C
70の混合層および純C
70のキャップ層)の吸収率η
Aを、転送行列法
4’5を用いて算出し、両方のセルに関する内部量子効率(IQE)も算出した。覆われたバッファのセルの吸収は、上記の通り
3、BPhen:C
60の混合バッファの吸収によって、λ=350nm〜500nmの間で減少した。λ>500nmにおいては、混合バッファが透明であったため、二つのセルは、ほぼ同一の吸収スペクトルを有した。
【0153】
同様に、IQEは、BPhen:C
60/BPhenのバッファを含むセルに関して、制御セルと比較して、λ=350nm〜550nmの間で増加した。たとえば、BPhen:C
60/BPhenのバッファを含むセルに関するIQEは、λ=350nm〜500nmの間でEQEの〜90%を有し、λ=430nmにおいて〜100%に達し、吸収された全ての光子が、電極によって収集される電荷キャリアに変換されたことを示した。
【0154】
BPhen:C
60/BPhenのフィルタ化されたセルおよび制御に関する、0.4sunから2.7sunまでの範囲の光強度の関数として、応答性(R)およびPCEを調べた(
図25)。制御セルの応答性は、0.4sunにおけるR=14.9±0.4A/Watから、2.7sunにおける13.0±0.4A/Wに、強度に伴い単調に減少した一方で、フィルタ化されたセルは、この太陽強度の同一の範囲にわたって、変化しないままであった。制御セルはまた、
図25に示すように、応答性の単調な減少によって、光強度が増加するにつれて、PCEのロールオフを示した。BPhen:C
60/BPhenバッファを含むセルのPCEは、1sunにおいて、わずかに増加して最大になり、FFの減少によって、高い光強度において促進された二分子の再結合によって恐らく生じた、より高い光強度におけるロールオフを開始した。
【0155】
BPhen:C
60/BPhenバッファを含むDBP:C
70 PM−HJセルにおける、混合バッファ層の厚さも変化させた。1sunの照射の下でのJ−V特性およびEQEスペクトルを
図26に示し、デバイス性能を表8にまとめる。
【0157】
混合バッファ層の厚さが増加するにつれて、J
SCは単調に減少した。
図26(b)に示すように、混合層の厚さが増加するにつれて、可視スペクトルにわたって、EQEは減少した。V
OCは、混合バッファ層を含まないセルに関する0.91±0.01Vから、10nm厚の混合バッファを含むセルに関する0.93±0.01Vに、わずかに増加し、より厚い混合バッファ層に関しては、一定のままであった。FFは、制御セルに関する0.56±0.01から、10nm厚の混合バッファに関する0.66±0.01に増加し、より厚い混合バッファに関しては、表8に示すように、増加した直列抵抗に起因して、ロールオフした。
【0158】
一方で、C
60およびBPhenの分子のランダムな分布としてモデル化された混合層を含む、立体格子における再隣接ホッピングの輸送についての3Dモンテカルロシミュレーションを用いて、混合バッファ層を通した電荷の輸送をモデル化した。電荷間のコロンビウムの相互作用を無視し、格子サイトを等エネルギーであると仮定し、印加電界によるエネルギー差を除外した。サイト間の相対的なホッピングの確率を、Miller−Abrahamsの式を用いて算出した。モデルの各々の時間ステップの間、電荷は、相対的なホッピングの確率によって重み付けされた、ホッピングするためのランダムな再隣接を選択した。選択されたサイトがBPhen分子を含む場合、電荷は、代わりに、そのステップの間動かないままであった。混合層および純層における電荷の動きは、その他の点では同一であった。
【0159】
電界の下で、サイトの100×100の擬似格子の片側に電荷を注入し、反対側から電荷が逃げる時間を測定することによって、異なる厚さに関する平均抽出時間を算出した。
図27は、混合層の厚さの関数として、電界に対する平均抽出時間を示す。電界は、与えられた混合層の厚さに対して、混合層における電荷の輸送を加速し、それゆえに、電界が増加するにつれて、平均抽出時間を減少させた。混合バッファの厚さが増加するにつれて、電荷が混合層を通って移動するための時間が、より長くかかった。したがって、混合層の厚さが増加するにつれて、平均抽出時間はより長くなった。
【0160】
モデルの予測を分析するために、表8に示すような、暗闇におけるJ−V特性の適合によって取得される直列抵抗を、異なる混合層の厚さを有するPM−HJセルに関するモデル化からの値と比較した。異なる厚さを有する混合層の移動度を、抽出時間の電界依存性から、1/抽出時間の電界依存性、とすることで算出し、全てのシミュレーションされた層は、4.7x10
−3cm
2/V・sという効果的な移動度を示した。これは、
図27の挿入図に示すように、層の抵抗が、厚さに対して線形的に依存するはずであることを予測した。1:1の混合バッファ層の予測された移動度は、有機としては比較的高く、純C
60より一桁だけ小さく、これらの層が、いかに電荷を純層から効率よく抽出できたかを説明した。上記のシミュレーションに示すように、これらの層は、励起子の阻止において効果的であり、消光を抑制する、励起子およびポーラロンの空間的な分離をもたらした。
【0161】
(実施例20)
図28に示すデバイスを、説明した通りに作製した。全体の構造は、ガラス基板/ITO(100nm)/MoO
3(100nm)/バッファ1/DBP(20nm)/C
60(40nm)/バッファ2/Ag(100nm)であり、バッファ1およびバッファ2、ならびに対応する測定された効率のパラメーターを、表9に示す。
図28(a)は、1sun、擬似AM1.5G照射の下での、照射に対するJ−Vを示し、挿入図はNPDを示し、
図28(b)は、DBPおよびC
60からなる活性層、ならびに様々なバッファを含むOPVセルに関する、外部量子効率を示す。
【0163】
各フィルタに関する厚さ、組成および測定された効率パラメーターを表9に示す。基準と比較して、フィルタとしてのNPDの純層の含有は、FFの減少を伴い、J
SCの著しい増加をもたらした。DBPおよびNPDの1:1の混合物からなるフィルタの使用は、基準デバイスと比較して、未だJ
CSを改善しながらも、NPD単体の使用と比較して、FFを改善することに役立った。カソードにおける電子フィルタと併用すると、NDP:DBP正孔フィルタは、PCEの10%の増加をもたらした。