特許第6957438号(P6957438)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6957438
(24)【登録日】2021年10月8日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】巻上機及びエレベーター
(51)【国際特許分類】
   B66B 11/08 20060101AFI20211021BHJP
   H02K 5/10 20060101ALI20211021BHJP
   H02K 5/173 20060101ALI20211021BHJP
   H02K 7/08 20060101ALI20211021BHJP
【FI】
   B66B11/08 F
   H02K5/10 Z
   H02K5/173 A
   H02K7/08 Z
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-210189(P2018-210189)
(22)【出願日】2018年11月8日
(65)【公開番号】特開2020-75794(P2020-75794A)
(43)【公開日】2020年5月21日
【審査請求日】2021年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 洋嗣
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 章智
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−039619(JP,A)
【文献】 特開2012−153486(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/125285(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 11/08
H02K 5/10
H02K 5/173
H02K 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごに連結されたロープが巻回される巻上機において、
ステータが設けられた筐体と、
前記筐体に取り付けられた主軸と、
前記筐体と対向して配置され、かつ前記主軸に回転可能に支持され、前記ステータと対向する磁石を有するブレーキドラムと、
前記ブレーキドラムに設けられ、前記ロープが巻回される綱車と、
前記ブレーキドラムと前記主軸の間に配置されるオイルシールと、
前記ブレーキドラムにおける前記筐体と対向する端部に形成された固定部と、
前記固定部に固定され、前記オイルシールが接触するオイルシールカラーと、
前記筐体における前記ブレーキドラムと対向する一面から前記ブレーキドラムに向けて突出する円環状の突起と、
前記突起の先端部に固定された油受けカバーと、
前記筐体、前記突起及び前記油受けカバーにより形成され、潤滑剤を溜める油受け部と、を備え、
前記オイルシールカラーと前記固定部が接合する接合面は、前記油受けカバーよりも前記筐体側に形成される
巻上機。
【請求項2】
前記固定部は、前記オイルシールカラーが嵌合する嵌合部を有し、
前記嵌合部は、前記ブレーキドラムにおける前記主軸が挿入される筒孔の内壁面に形成される
請求項1に記載の巻上機。
【請求項3】
前記オイルシールカラーは、
前記嵌合部に嵌合する筒部と、
前記筒部の外周面から半径方向の外側に突出するフランジ部と、を備え、
前記オイルシールは、前記筒部の内壁に接触し、
前記フランジ部は、前記固定部における前記筐体と対向する対向面に接合する
請求項2に記載の巻上機。
【請求項4】
前記固定部における前記対向面には、円環状の取付凹部が形成され、
前記取付凹部には、前記潤滑剤の移動を規制する流出防止体が配置される
請求項3に記載の巻上機。
【請求項5】
前記固定部における前記対向面には、前記フランジ部を固定する固定ボルトが挿入される固定穴が形成され、
前記固定穴は、前記取付凹部よりも前記ブレーキドラムの半径方向の外側に形成される
請求項4に記載の巻上機。
【請求項6】
前記固定部における前記主軸とは反対側の角部には、前記潤滑剤を前記油受け部に導くドラム側油切り溝が形成されている
請求項1に記載の巻上機。
【請求項7】
前記オイルシールカラーの外周面には、前記潤滑剤を前記油受け部に導くカラー側油切り溝が形成されている
請求項6に記載の巻上機。
【請求項8】
昇降路内を昇降する乗りかごと、
前記乗りかごとロープを介して連結される釣合おもりと、
前記ロープを巻き掛けることにより前記乗りかごを昇降させる巻上機と、を備え、
前記巻上機は、
ステータが設けられた筐体と、
前記筐体に取り付けられた主軸と、
前記筐体と対向して配置され、かつ前記主軸に回転可能に支持され、前記ステータと対向する磁石を有するブレーキドラムと、
前記ブレーキドラムに設けられ、前記ロープが巻回される綱車と、
前記ブレーキドラムと前記主軸の間に配置されるオイルシールと、
前記ブレーキドラムにおける前記筐体と対向する端部に形成された固定部と、
前記固定部に固定され、前記オイルシールが接触するオイルシールカラーと、
前記筐体における前記ブレーキドラムと対向する一面から前記ブレーキドラムに向けて突出する円環状の突起と、
前記突起の先端部に固定された油受けカバーと、
前記筐体、前記突起及び前記油受けカバーにより形成され、潤滑剤を溜める油受け部と、を備え、
前記オイルシールカラーと前記固定部が接合する接合面は、前記油受けカバーよりも前記筐体側に形成される
エレベーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗りかごを乗降動作させる巻上機及び、この巻上機を備えたエレベーターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の巻上機としては、例えば、特許文献1に記載されているようなものがある。特許文献1には、筺体と軸受ハウジング間の対向部隙間の下方に油落とし空間部を形成し、筺体の綱車と反対側の端面に油落とし空間部の下部に位置して連通した油溜めを形成した巻上機が記載されている。
【0003】
また、軸受部に充填した潤滑油を封入するために、主軸と軸受ハウジングの間には、オイルシールが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−153486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
オイルシールと接触する部分は、炭素鋼であることが望ましいが、特許文献1に記載された技術では、ブレーキドラムである軸受けハウジングにオイルシールが固定されていたため、オイルシールが傷みやすくなる、という問題を有していた。さらに、オイルシールとブレーキドラムの接合面から漏れ出た潤滑剤が、ブレーキの制動面に付着するおそれがあった。
【0006】
本目的は、上記の問題点を考慮し、オイルシールが損傷することを抑制することができると共に潤滑剤がブレーキの制動面に流出することを防ぐことができる巻上機及びエレベーターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、目的を達成するため、巻上機は、乗りかごに連結されたロープが巻回される巻上機である。巻上機は、ステータが設けられた筐体と、筐体に取り付けられた主軸と、筐体と対向して配置され、かつ主軸に回転可能に支持され、ステータと対向する磁石を有するブレーキドラムと、ブレーキドラムに設けられ、ロープが巻回される綱車と、を備えている。また、巻上機は、オイルシールと、固定部と、オイルシールカラーと、突起と、油受けカバーと、油受け部と、を備えている。オイルシールは、ブレーキドラムと主軸の間に配置される。固定部は、ブレーキドラムにおける筐体と対向する端部に形成される。オイルシールカラーは、固定部に固定され、オイルシールが接触する。円環状の突起は、筐体におけるブレーキドラムと対向する一面からブレーキドラムに向けて突出する。油受けカバーは、突起の先端部に固定される。油受け部は、筐体、突起及び油受けカバーにより形成され、潤滑剤を溜める。そして、オイルシールカラーと固定部が接合する接合面は、油受けカバーよりも筐体側に形成される。
【0008】
また、エレベーターは、昇降路内を昇降する乗りかごと、乗りかごとロープを介して連結される釣合おもりと、ロープを巻き掛けることにより乗りかごを昇降させる巻上機と、を備えている。また、巻上機は、上述した巻上機が用いられる。
【発明の効果】
【0009】
上記構成の巻上機及びエレベーターによれば、オイルシールが損傷することを抑制することができると共に潤滑剤がブレーキの制動面に流出することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態例にかかるエレベーターを示す平面図である。
図2】実施の形態例にかかる巻上機を示す断面図である。
図3】実施の形態例にかかる巻上機におけるブレーキドラムを示す断面図である。
図4】実施の形態例にかかる巻上機のオイルシールカラーを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、エレベーター及び巻上機の実施の形態例について、図1図4を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0012】
1.エレベーターの構成
まず、実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかるエレベーターの構成について、図1を参照して説明する。
図1は、本例のエレベーターを示す平面図である。
【0013】
本例のエレベーター1は、建物構造物内に形成された昇降路100の上方に機械室を有しない、いわゆる機械室レスエレベーターである。図1に示すように、エレベーター1は、昇降路100内を昇降する乗りかご110と、巻上機10と、釣合おもり130と、一対のかご用ガイドレール140と、一対のおもり用ガイドレール150と、不図示の主ロープとを備えている。
【0014】
一対のかご用ガイドレール140及び一対のおもり用ガイドレール150は、昇降路100に設けられており、上下方向に延びている。乗りかご110は、一対のかご用ガイドレール140に案内されて昇降路100内を昇降する。釣合おもり130は、一対のおもり用ガイドレール140に案内されて昇降路100内を昇降する。
【0015】
主ロープの両端は、それぞれ昇降路100の昇降方向の上端部である天井面に固定されている。そして、乗りかご110及び釣合おもり130は、不図示のプーリを介して主ロープに釣り下がっている。
【0016】
巻上機10は、昇降路100の壁面に固定されている。また、巻上機10は、昇降路100の昇降方向の下端部であるピットから所定の高さに設置されている。巻上機10は、筐体2と、この筐体2に回転可能に支持された綱車5とを有している。綱車5には、複数の溝部が形成されている。綱車5の複数の溝部には、主ロープにおける乗りかご110の吊り下げ部と釣合おもり130の吊り下げ部の間の部分が、それぞれ巻き掛けられている。巻上機10は、綱車5を回転させることにより、主ロープを駆動して、乗りかご110及び釣合おもり130を昇降させる。
【0017】
2.巻上機の構成
次に、図2図4を参照して本例の巻上機10について説明する。
図2は、本例の巻上機10を示す断面図である。
【0018】
図2に示すように、巻上機10は、筐体2と、円柱状の主軸3と、ブレーキドラム4と、綱車5と、ブレーキ機構6と、複数のステータ7と、を有している。そして、本例の巻上機10は、複数のステータ7の半径方向の外側にブレーキドラム4が配置されるアウターロータ式の巻上機である。
【0019】
筐体2は、主軸3の軸方向の一端部側に配置され、ブレーキドラム4は、主軸3の軸方向の他端部側に配置される。筐体2は、適当な厚みを有する円板状に形成されている。筐体2は、ボス部11と、取付部12と、連結部13と、突起14と、を有している。筐体2には、油受け部21と、配線収容部22と、油溜部23が形成されている。また、筐体2には、第1油受けカバー24と、第2油受けカバー25が設けられている。
【0020】
ボス部11は、筐体2の半径方向の中心部に形成されている。そして、ボス部11には、主軸3が貫通する貫通孔11aが形成されている。ボス部11の貫通孔11aには、主軸3が挿入されている。これにより、主軸3がボス部11に嵌合されている。
【0021】
取付部12は、筐体2におけるブレーキドラム4と対向する一面、すなわち主軸3の軸方向の他端部側の一面に形成されている。取付部12は、ボス部11の貫通孔11aと同心円上に配置され、円環状に形成された凹部である。取付部12には、複数のステータ7が固定される。複数のステータ7は、鉄芯とこの鉄芯に巻回されたステータコイルにより構成される。そして、複数のステータ7は、取付部12の周方向に沿って環状に配置される。
【0022】
また、筐体2の上下方向の上部と下部には、それぞれブレーキ機構6が設けられている。ブレーキ機構6は、後述するブレーキドラム4に当接することで、ブレーキドラム4及び綱車5の回転動作を制動する。
【0023】
連結部13は、ボス部11と取付部12を連結している。また、連結部13には、突起14が形成されている。突起14は、円環状に形成されている。突起14は、連結部13におけるブレーキドラム4と対向する一面からブレーキドラム4に向けて突出している。図3に示すように、突起14におけるブレーキドラム4側の端部には、第1支持面部14aと、第2支持面部14bが形成されている。
【0024】
第1支持面部14aは、第2支持面部14bよりもブレーキドラム4側に突出している。また、第2支持面部14bは、第1支持面部14aよりも筐体2の半径方向の外側に形成されている。第1支持面部14aには、第1油受けカバー24が固定ねじを介して固定されており、第2支持面部14bには、第2油受けカバー25が固定ねじを介して固定されている。第1油受けカバー24及び第2油受けカバー25は、円形の開口部を有する円板状に形成されている。
【0025】
そして、連結部13と、突起14と、第1油受けカバー24で囲まれた空間が油受け部21として形成される。連結部13の鉛直方向の下方において、油受け部21と連結部13を介して隣接する箇所には、油溜部23が形成されている。
【0026】
さらに、連結部13には、油受け部21と油溜部23を連通する連通孔26が形成されている。油受け部21に流れたグリース等からなる潤滑剤は、連通孔26を通過して油溜部23に流入する。また、連通孔26は、第1油受けカバー24よりも鉛直方向において低い位置から開口している。これにより、油受け部21に溜まった潤滑剤を油溜部23に効果的に導くことができる。さらに、潤滑剤が第1油受けカバー24を超えて第2油受けカバー25に移動することを防ぐことができる。
【0027】
また、油溜部23は、カバー部材27によって覆われている。カバー部材27は、連結部13における主軸3の軸方向の一端部側に固定されている。また、カバー部材27の一部には、油溜部23の内部を視認可能な窓部27aが設けられている。
【0028】
また、連結部13と、突起14と、第2油受けカバー25で囲まれた空間が配線収容部22として形成される。配線収容部22には、ステータ7を構成するステータコイルに接続する配線18が配置される。
【0029】
次に、ブレーキドラム4及び綱車5について説明する。
ブレーキドラム4は、略円環状に形成されている。ブレーキドラム4は、支持部41と、ドラム側ボス部42と、支持部41とドラム側ボス部42とを接続する接続部43と、を有している。
【0030】
支持部41は、ブレーキドラム4の半径方向の外側に設けられている。支持部41は、円環状に形成されており、筐体2の取付部12に固定されたステータ7と、ブレーキ機構6の間に挿入される。
【0031】
支持部41の内壁面は、筐体2に設けたステータ7と対向する。そして、支持部41の内壁面には、所定の間隔をあけて環状のモータ回転子コア9が配置されている。モータ回転子コアは、磁石により構成されている。そして、モータ回転子コア9は、ブレーキドラム4の周方向に沿ってN極とS極が交互に配置される。
【0032】
支持部41における上下方向の上部と下部の外周面は、ブレーキ機構6のブレーキパッド6aと対向する。ブレーキ機構6は、巻上機10の制動時に、ブレーキパッド6aを支持部41の外周面側に移動させる。これにより、ブレーキパッド6aがブレーキドラム4の支持部41の外周面を押圧し、ブレーキドラム4及び綱車5の制動が行われる。
【0033】
ドラム側ボス部42は、ブレーキドラム4における半径方向の中心部に設けられている。ドラム側ボス部42は、円筒状に形成されているドラム側ボス部42の外周面には、綱車5が嵌合されて、固定されている。ドラム側ボス部42における筒孔42aの内壁面には、軸受け部30が配置されている。ドラム側ボス部42の筒孔42aには、主軸3が挿入される。そして、ブレーキドラム4は、軸受け部30を介して主軸3に回転可能に支持されている。
【0034】
ドラム側ボス部42における筐体2とは反対側、主軸3の軸方向の他端部側の端部には、封止板19が固定されている。これにより、封止板19は、円板状に形成されている。そして、封止板19は、ドラム側ボス部42の筒孔42aにおける主軸3の軸方向の他端部側の端部の開口を塞ぐ。
【0035】
また、主軸3と軸受け部30との間には、グリースなどの潤滑剤が介在されている。この潤滑剤がブレーキ機構6の制動面に漏れ出ることを防止するために、主軸3とブレーキドラム4の間には、円環状のオイルシール61が設けられている。オイルシール61は、主軸3における軸受け部30よりも筐体2側に配置されている。そして、オイルシール61と封止板19により、主軸3とドラム側ボス部42で形成された空間が密閉される。そして、オイルシール61と封止板19は、軸受け部30と主軸3との間に塗布された潤滑剤を封入する。また、オイルシール61におけるブレーキドラム4側には、オイルシールカラー60が配置されている。
【0036】
図3及び図4は、本例の巻上機10におけるブレーキドラム4とオイルシールカラー60を示す断面図である。
図3及び図4に示すように、オイルシールカラー60は、円筒状に形成されている。また、オイルシールカラー60は、例えば、炭素鋼により形成される。オイルシールカラー60は、筒部66と、フランジ部67とを有している。円筒状の筒部66は、後述するドラム側ボス部42に設けた固定部50に嵌合される。また、筒部66の内壁面には、オイルシール61が配置される。
【0037】
また、筒部66の外周面には、カラー側油切り溝66aが形成されている。カラー側油切り溝66aは、筒部66における筐体2側に先端部に形成されている。カラー側油切り溝66aは、筒部66の外周面において周方向に沿って連続して形成された凹部である。カラー側油切り溝66aは、オイルシール61と筒部66の内壁面との間を伝って移動した潤滑剤を油受け部21に導く。これにより、潤滑剤が、筒部66の外周面を伝ってドラム側ボス部42に移動することを規制することができる。
【0038】
フランジ部67は、筒部66の外周面から半径方向の外側に向けて突出している。フランジ部67は、筒部66の軸方向の中間部に形成されている。筒部66を固定部50に嵌合した際、フランジ部67は、固定部50における筐体2と対向する対向面80に接合する。この対向面80がオイルシールカラー60と後述する固定部50の接合面となる。また、フランジ部67は、固定ボルト65によって固定部50に固定される。
【0039】
このように、オイルシール61をブレーキドラム4に接触させることなく、炭素鋼からなるオイルシールカラー60に接触させている。これにより、オイルシール61をブレーキドラム4に直接接触させる場合よりもオイルシール61が損傷することを抑制することができる。
【0040】
次に、オイルシールカラー60が固定される固定部50について説明する。
固定部50は、ドラム側ボス部42における筐体2と対向する側の端部(以下、対向端部と称す)に形成されている。固定部50は、嵌合部51と、円環状の取付凹部52と、固定ボルト65が挿入される固定穴53と、ドラム側油切り溝54とを有している。
【0041】
嵌合部51は、ドラム側ボス部42の対向端部における主軸3と対向する筒孔42aの内壁面に周方向に沿って形成されている。また、嵌合部51は、筒孔42aの内壁面から主軸3と離反する方向に凹んだ凹部である。この嵌合部51には、オイルシールカラー60の筒部66が嵌合する。これにより、オイルシールカラー60におけるブレーキドラム4に対する位置決めを容易に行うことができ、オイルシール61がオイルシールカラー60に片当たりすることを防止することができる。
【0042】
取付凹部52は、固定部50における対向面80に形成されている。取付凹部52は、対向面80から筐体2と離反する方向に凹んだ凹部である。また、取付凹部52は、ドラム側ボス部42の筒孔42aの同心円上に形成されている。この取付凹部52には、流出防止体62が配置される。流出防止体62としては、例えば、Oリングやガスケット等が適用される。流出防止体62は、オイルシールカラー60と固定部50との接合面である対向面80に漏れ出た潤滑剤の移動を規制する。
【0043】
また、対向面80には、固定穴53が形成されている。固定穴53は、取付凹部52よりもドラム側ボス部42の半径方向の外側に形成されている。この固定穴53には、オイルシールカラー60を固定するための固定ボルト65が螺合される。固定穴53を取付凹部52よりも半径方向の外側に形成したことで、対向面80を伝って移動する潤滑剤が固定穴53や固定ボルト65まで移動することを抑制することができる。これにより、固定穴53や固定ボルト65の周囲にシール機構を設ける必要がなく、部品点数を削減することができる。
【0044】
固定部50における筒孔42a側の角部とは反対側の角部、すなわち主軸3とは反対側の角部には、ドラム側油切り溝54が形成されている。ドラム側油切り溝54は、筐体2と離反する方向に凹んだ凹部であり、円環状に形成されている。
【0045】
図4に示すように、オイルシールカラー60のフランジ部67とドラム側ボス部42の接合面である対向面80は、第1油受けカバー24よりも筐体2側に形成されている。すなわち、対向面80は、筐体2に形成された油受け部21の鉛直方向の上方に配置される。これにより、オイルシールカラー60とドラム側ボス部42の接合面に入り込んだ潤滑剤が、流出防止体62の経年劣化により、流出防止体62を通過した場合でも、潤滑剤を油受け部21に導くことができる。その結果、潤滑剤がブレーキ機構6の制動面まで移動することを防ぐことができる。
【0046】
さらに、上述したように、固定部50の対向面80には、ドラム側油切り溝54が形成されている。このドラム側油切り溝54により、対向面80を移動した潤滑剤を油受け部21に導くことができる。その結果、潤滑剤がブレーキドラム4の外周面に沿ってブレーキ機構6の制動面まで移動することを規制することができる。
【0047】
ここで、オイルシールカラー60が嵌合する嵌合部51を、本例とは反対側、すなわち固定部50における主軸3とは反対側の角部に形成した場合について説明する。この場合、オイルシールカラー60と固定部50との接合面における半径方向の外側の端部は、本例よりも主軸3の軸方向の他端部側に形成される。
【0048】
そのため、接合面から漏れ出た潤滑剤を受けるためには、突起14の突出長さを長く形成し、第1油受けカバー24を設置する位置を本例よりも筐体2から離れた位置にする必要がある。その結果、巻上機における厚さが増加し、巻上機全体が大型化するおそれがある。
【0049】
これに対して、本例では、嵌合部51をブレーキドラム4の筒孔42aの内壁面に形成することで、巻上機10の厚さを薄くすることができ、巻上機10の小型化を図ることができる。
【0050】
なお、上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0051】
なお、本明細書において、「平行」及び「直交」等の単語を使用したが、これらは厳密な「平行」及び「直交」のみを意味するものではなく、「平行」及び「直交」を含み、さらにその機能を発揮し得る範囲にある、「略平行」や「略直交」の状態であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…エレベーター、 2…筐体、 3…主軸、 4…ブレーキドラム、 5…綱車、 6…ブレーキ機構、 6a…ブレーキパッド、 7…ステータ、 9…モータ回転子コア(磁石)、 10…巻上機、 11…ボス部、 13…連結部、 14…突起、 14a…第1支持面部、 14b…第2支持面部、 18…配線、 19…封止板、 21…油受け部、 22…配線収容部、 23…油溜部、 24…第1油受けカバー(油受けカバー)、 25…第2油受けカバー、 26…連通孔、 30…軸受け部、 41…支持部、 42…ドラム側ボス部、 42a…筒孔、 43…接続部、 50…固定部、 51…嵌合部、 52…取付凹部、 53…固定穴、 54…ドラム側油切り溝、 60…オイルシールカラー、 61…オイルシール、 62…流出防止体、 65…固定ボルト、 66…筒部、 66a…カラー側油切り溝、 67…フランジ部、 80…対向面(接合面)、 100…昇降路、 110…乗りかご、 130…釣合おもり
図1
図2
図3
図4