(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6957441
(24)【登録日】2021年10月8日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】塞栓保護デバイスおよび使用方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/01 20060101AFI20211021BHJP
A61F 2/958 20130101ALI20211021BHJP
【FI】
A61F2/01
A61F2/958
【請求項の数】16
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-225320(P2018-225320)
(22)【出願日】2018年11月30日
(62)【分割の表示】特願2016-501324(P2016-501324)の分割
【原出願日】2014年3月11日
(65)【公開番号】特開2019-63548(P2019-63548A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2018年12月20日
(31)【優先権主張番号】61/782,002
(32)【優先日】2013年3月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520426346
【氏名又は名称】ジェーシー メディカル,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100071010
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 行造
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 千裕
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【弁理士】
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ジー
【審査官】
宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2009/0054969(US,A1)
【文献】
国際公開第2006/031648(WO,A2)
【文献】
特表2008−537891(JP,A)
【文献】
特開2010−57974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/01
A61F 2/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塞栓保護送達デバイスであって、前記塞栓保護送達デバイスが
膨張可能なバルーンと、第1の端と、第2の端とを有するバルーンカテーテル;
第1の端と第2の端とを備えた塞栓保護デバイスであって、前記塞栓保護デバイスが前記バルーンカテーテルと同時に送達されるように構成されており、前記塞栓保護デバイスがフレームと前記フレームに結合されたフィルターシートとを備えており、前記フレームが圧縮状態から拡張された状態まで拡張可能であり、前記拡張された状態では円錐形状を形成するように前記第2の端が前記第1の端よりも大きく、前記フレームが前記塞栓保護デバイスの前記第2の端に配置された複数のU形状部材とそれぞれのU形状部材にそれぞれ固定された複数の脚部材とを備えている、塞栓保護デバイス;
前記塞栓保護デバイスが圧縮状態にあるときに前記塞栓保護デバイスの少なくとも一部を受け入れるように構成された第1の内腔を備えた第1の鞘であって、前記第1の鞘が前記塞栓保護デバイスの遠位に延在しており、前記塞栓保護デバイスが前記拡張された状態に拡張することが可能であるように前記第1の鞘が前記塞栓保護デバイスに対して遠位方向に移動可能である、第1の鞘;および
前記バルーンが膨張していない状態にあるときに前記塞栓保護デバイスの少なくとも一部を受け入れるように構成された第2の内腔を備えた第2の鞘であって、前記バルーンが膨張することが可能であるように前記第2の鞘が前記バルーンに対して近位方向に移動可能である、第2の鞘;
を備えており、
前記拡張された状態において、医師が患者の生来の弁輪の生来の弁尖の洞に前記U形状部材を嵌合させることが可能であるように前記塞栓保護デバイスが触覚的に操作可能であり、その後前記バルーンが前記弁輪を拡げるために生来の弁尖に向かって膨張することが可能であるように前記第2の鞘が近位方向に移動可能であり、前記バルーンが前記弁輪を拡げるために生来の弁尖に向かって膨張することが可能であるように前記第2の鞘が近位方向に移動可能であることによって前記嵌合された塞栓保護デバイスが、血液および血液中に含まれている破片が前記フィルターシートの周囲を流れることによって前記破片が患者の循環系に入ることが可能になる確率を最小化するものである、
塞栓保護送達デバイス。
【請求項2】
前記圧縮状態において、前記塞栓保護デバイスが前記膨張可能なバルーンと軸方向に重なり合うものである、請求項1に記載の送達デバイス。
【請求項3】
前記バルーンの収縮後、前記第1の鞘が、前記塞栓保護デバイスを押し潰すように前記塞栓保護デバイスに対して移動可能である、請求項1または2に記載の送達デバイス。
【請求項4】
前記複数のU形状部材が3個のU形状部材を含み、かつ前記複数の脚部材が3個の脚部材を含むものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の送達デバイス。
【請求項5】
前記脚部材のそれぞれが自由端である近位端を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の送達デバイス。
【請求項6】
前記フィルターシートが前記フレームの全長に結合されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の送達デバイス。
【請求項7】
前記フレームが形状記憶金属を含むものである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の送達デバイス。
【請求項8】
前記拡張された状態の前記フレームが円錐形状を備えている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の送達デバイス。
【請求項9】
前記フィルターシートが、ポリエステルモノフィラメントメッシュ、ナイロン(商標)モノフィラメントメッシュ、スクリーン印刷メッシュ、ナイロンメッシュおよび金属線メッシュから成る群から選ばれた材料を含むものである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の送達デバイス。
【請求項10】
前記フィルターシートが、前記フィルターシートを通って血液が自由に流れることを可能にするが破片は収集する材料を含むものである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の送達デバイス。
【請求項11】
前記圧縮状態において、前記第1の鞘が、前記塞栓保護デバイスの少なくとも遠位の部分および前記バルーンカテーテルの少なくとも遠位の部分を包み込む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の送達デバイス。
【請求項12】
前記圧縮状態において、前記第2の鞘が、前記塞栓保護デバイスの少なくとも近位の部分および前記バルーンカテーテルの少なくとも近位の部分を包み込む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の送達デバイス。
【請求項13】
前記圧縮状態において、前記第1および第2の鞘が長軸に沿って互いに軸方向に隣接しており、前記第1の鞘が前記第2の鞘から遠位にある、請求項1〜12のいずれか1項に記載の送達デバイス。
【請求項14】
前記塞栓保護デバイスの第1の端が、前記塞栓保護デバイスの第2の端の遠位に位置している、請求項1〜13のいずれか1項に記載の送達デバイス。
【請求項15】
前記第1の鞘が、前記塞栓保護デバイスが前記拡張された状態にあるときに、前記塞栓保護デバイスが圧縮状態に押し潰されることが引き起こされるように、前記塞栓保護デバイスに対して近位方向に移動可能である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の送達デバイス。
【請求項16】
前記第1の鞘が、前記バルーンが膨張することが可能になるように前記バルーンに対して遠位方向に移動可能である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の送達デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2013年3月14日に出願された米国特許出願第61/782,002号の米国特許法第119条(e)の基の優先権の利益を主張し、その内容の全体は参照によって本明細書に取り込まれる。
【0002】
本発明は、心臓弁の取り換えもしくは埋め込み処置の間および/またはその後の塞栓症の発生率を低減する装置およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
心臓弁の送達に使用される最小限に侵襲的な処置が、ますます人気を得ているが、疾患のある心臓弁を心肺バイパス法を用いずに取り換えることには、まだ重要な課題が残っている。一つは弁の治療の間の心不全の防止であり、もう一つは取り換え処置が必要になるかもしれない脳卒中または他の虚血性イベントを引き起こさないで弁を治療することである。このような下流の負の効果には即時性のものおよび遅発性のものの両方がある。たとえば、患者内の生来の弁および人口弁を操作している間に放出される微粒子状物質は、遠位の血管床中への塞栓をもたらすことがある。あるいは、このような処置は、塞栓子の生成および/または放出の原因となる可溶性メディエーターの放出を引き起こすことがある。したがって、心臓血管疾患を患う多くの患者は、塞栓症に見舞われる危険性がより高く、これらの患者のかかる危険性が最低限になるように十分なケアがなされなければならない。
【0004】
カテーテルに基づいた治療介入で塞栓保護を提供する4つの主要な方法がある。これらには遠位閉塞、遠位ろ過、近位閉塞および局所的プラークトラップが含まれる。閉塞方法は、標的血管への治療介入の間血流を閉塞し、その後血流を回復する前に破片粒子を排出させることを含む。閉塞方法は簡易で便利であるけれども、該方法の欠点は、側枝中への破片の流入の可能性および治療介入の間ずっと閉塞することに起因する数分間の末端器官虚血の必要があることを含む。遠位ろ過は、破片を捕捉する間灌流を持続させることを可能にするが、フィルターが病変を通り越して前進する間該フィルターのほとんどはその押し潰された状態に保持されるために、概してより大きな直径の鞘が要求されることは、破片がはがれる潜在的可能性および一体化されたフィルターガイドワイヤーシステムの操縦性が低下することとともに、深刻な問題となることがある。
【0005】
塞栓症保護が閉塞方法あるいはろ過方法のどちらによってより良く達成されるかは、まだ明確には分かっていない。しかし、そのどちらも、経皮的方法が必然的に伴う塞栓症の固有の危険性を減少させるデバイスおよび方法の開発によって恩恵を受けることになるだろう。具体的にいえば、該デバイスが血管内を通った後に生じる潜在的な損傷である。したがって、この危険性を最小化するために、鞘直径を減少させること、デバイスの可撓性を高めることおよびデバイスが血管内を通る距離を最小化することのような手段によって、経皮的デバイスをすべて改善することが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
本明細書に開示されているのは、経皮的な治療介入に固有のこれらの危険性を最小化するように設計された、ろ過方法塞栓保護デバイスのためのデバイスおよび方法である。
関連技術の上記の例およびそれに関連する限界は、例示的なものであり排他的なものではないことが意図されている。関連技術の他の限界は、本明細書を読み図面を検討することによって当業者には明らかとなろう。
【0007】
第1の様相では、塞栓保護デバイスが提供され、これはフィルターフレームおよびフィルターシートを備える。
【0008】
1つの実施態様では、フィルターフレームは少なくとも2個のU形状部材を備える。別の実施態様では、フィルターフレームは、2、3、4または5個のU形状部材を備える。
【0009】
1つの実施態様では、フィルターフレームは少なくとも2個の脚部材を備える。別の実施態様では、フィルターフレームは、2、3、4または5個の脚部材を備える。さらに別の実施態様では、それぞれの脚部材は2個のU形状部材の間にある。
【0010】
1つの実施態様では、少なくとも2個の脚部材のそれぞれは、近位端および遠位端を有し、遠位端はU形状部材に固定され、近位端は自由端である。別の実施態様では、近位端は該少なくとも2個の脚部材のうちの別のものの別の近位端に結合される。
【0011】
1つの実施態様では、フィルターフレームは単一部品で製作される。
【0012】
1つの実施態様では、フィルターフレームの全長は、フィルターシートに結合される。
【0013】
1つの実施態様では、フィルターフレームは金属で構成される。別の実施態様では、フィルターフレームは形状記憶金属で構成される。別の実施態様では、フィルターフレームは、圧縮の立体配置あるいは拡張され展開された立体配置のいずれかを有する。
【0014】
1つの実施態様では、フィルターフレームは、拡張された立体配置にあるときに円錐形状を有する。別の実施態様では、フィルターフレームは近位端および遠位端を有し、該フィルターフレームが拡張された立体配置にあるときに遠位端の直径は近位端の直径よりも大きい。さらに別の実施態様では、フィルターフレームは円錐形状を有する。
【0015】
1つの実施態様では、フィルターフレームは、約5mm〜50mm、15mm〜25mmまたは約10mm〜30mmの範囲の長さを有する。
【0016】
1つの実施態様では、フィルターシートは、フィルターフレームの全長に結合される。
【0017】
1つの実施態様では、フィルターシートは、ポリエステルモノフィラメントメッシュ、ナイロン(商標)モノフィラメントメッシュ、スクリーン印刷メッシュ、ナイロンメッシュおよび金属線メッシュから成る群から選ばれた材料で構成される。
【0018】
1つの実施態様では、フィルターシートは多孔質材料で構成され、該多孔質材料は、血液がそれを通って自由に流れることを可能にするけれども、破片がこの材料を通って流れることを阻む。1つの実施態様では、フィルターシートは50μm超、または100μmもしくは170μmから250μmまでの直径を有する孔を備える。
【0019】
第2の様相では、順行性塞栓保護送達デバイスが提供され、これは第1の鞘および第2の鞘を備え、該第1の鞘および該第2の鞘は長軸に沿って互いに隣接しており、該第1の鞘は該第2の鞘から遠位にあり、該第1の鞘はフィルターフレームの少なくとも遠位の部分およびバルーンの少なくとも遠位の部分を包み込み、該第2の鞘は該フィルターフレームの少なくとも近位の部分および該バルーンの少なくとも近位の部分を包み込む。
【0020】
1つの実施態様では、該送達デバイスは制御ユニットをさらに備え、これは長軸に沿って第2の鞘の近位にある。
【0021】
1つの実施態様では、順行性塞栓保護送達デバイスの第1の鞘は、フィルターフレームの全体を包み込む。別の実施態様では、順行性塞栓送達保護デバイスの第2の鞘は、バルーンの全体を包み込む。
【0022】
1つの実施態様では、順行性塞栓保護送達デバイスの第1の鞘は、約1mm〜30mmまたは約2mm〜約20mmの範囲の直径を有する。別の実施態様では、順行性塞栓保護送達デバイスの直径は、その全長に沿って同じ直径を有してはいない。さらに別の実施態様では、順行性塞栓保護送達デバイスの第1の鞘は、円錐形状を有する。さらに別の実施態様では、第1の鞘は、その近位端およびその遠位端の両方に開口部を有する。
【0023】
1つの実施態様では、順行性塞栓保護送達デバイスの第2の鞘は、約1mm〜30mmまたは約2mm〜約20mmの範囲の直径を有する。
【0024】
1つの実施態様では、順行性塞栓保護送達デバイスの第1のおよび/または第2の鞘は真っすぐである。別の実施態様では、第1のおよび/または第2の鞘は湾曲している。別の実施態様では、第1のおよび/または第2の鞘は可撓性を有し、それは、該第1のおよび/または第2の鞘がその中を前進する血管の湾曲した通路に適合することを可能にする。
【0025】
第3の様相では、逆行性塞栓保護送達デバイスが提供され、これは第1の鞘および第2の鞘を備え、該第1の鞘および該第2の鞘は長軸に沿って互いに隣接しており、該第1の鞘は該第2の鞘から遠位にあり、該第1の鞘は血管フィルターの少なくとも遠位の部分およびバルーンの少なくとも遠位の部分を包み込み、該第2の鞘は該血管フィルターの少なくとも近位の部分および該バルーンの少なくとも近位の部分を包み込み、かつ該第1の鞘および該第2の鞘は長軸に沿って互いに隣接しており、該第1の鞘は該第2の鞘から遠位にある。
【0026】
1つの実施態様では、該送達デバイスは制御ユニットをさらに備え、これは長軸に沿って第2の鞘の近位にある。
【0027】
1つの実施態様では、逆行性塞栓送達保護デバイスの第1の鞘(ノーズコーン)は、約1mm〜30mmまたは約2mm〜約20mmの範囲の直径を有する。別の実施態様では、逆行性塞栓保護送達デバイスの直径は、その全長に沿って同じ直径を有してはいない。
さらに別の実施態様では、逆行性塞栓保護送達デバイスは円錐形状を有する。さらに別の実施態様では、第1の鞘は、その近位端およびその遠位端の両方に開口部を有する。
【0028】
1つの実施態様では、逆行性塞栓保護送達デバイスの第2の鞘は、約1mm〜30mmまたは約2mm〜約20mmの範囲の直径を有する。別の実施態様では、逆行性塞栓保護送達デバイスの直径は、その全長に沿って同じ直径を有してはいない。
【0029】
1つの実施態様では、逆行性塞栓保護送達デバイスの第1のおよび/または第2の鞘は直っすぐである。別の実施態様では、第1のおよび/または第2の鞘は湾曲している。別の実施態様では、第1のおよび/または第2の鞘は可撓性を有し、それは、該第1のおよび/または第2の鞘がその中を前進する血管の湾曲した通路に適合することを可能にする。
【0030】
第4の様相では、サポートフレームに取り付けられた複数の可撓性弁尖部を備えた該サポートフレームであって、該複数の可撓性弁尖部が該サポートフレームがその展開された状態にあるときに開口部において一方向弁を提供する該サポートフレームと、移動可能に取り付けられた弁補握部と、フィルターシートと、を備えた塞栓保護デバイス、を備えた人工弁が提供される。
【0031】
1つの実施態様では、サポートフレームは、圧縮状態と拡張された状態との間において放射状に拡張可能であり、該サポートフレームは外表面を有し、流入−流出方向に沿った軸のまわりに中央開口部を画定する。別の実施態様では、サポートフレームは複数の可撓性の配列された環を備え、該サポートフレームの1つの部分は残りの部分とは無関係に拡張することができる。さらに別の実施態様では、人工弁は非縫合人工心臓弁である。
【0032】
1つの実施態様では、移動可能に取り付けられた補握部は、サポートフレームに取り外し可能に取り付けられ、該補握部はサポートフレームの長軸に沿って該サポートフレームと相対的に移動可能である。別の実施態様では、該長軸方向の移動は、サポートフレームの外表面との入れ子位置から係合位置までの間である。
【0033】
1つの実施態様では、少なくとも1個の弁補握部は、サポートフレームから物理的に分離されている。
【0034】
1つの実施態様では、少なくとも1個の弁補握部は、少なくとも1個のU形状部材で構成される。別の実施態様では、弁補握部は、第1および第2のU形状部材を接続する直線部分をさらに備える。さらに別の実施態様では、少なくとも1個の弁補握部は、U形状部材ならびに第1および第2の脚部材を備える。
【0035】
1つの実施態様では、フィルターシートは、少なくとも1個の弁補握部に取り外せないように取り付けられており、かつサポートフレームにも取り外せないように取り付けられている。別の実施態様では、フィルターシートはサポートフレームの遠位端に取り付けられている。1つの実施態様では、フィルターシートは、サポートフレームに弁補握部を移動可能に取り付けるための手段を提供する。
【0036】
第5の様相では、塞栓保護送達デバイスを備えた人工弁が提供され、これは、第1の鞘、第2の鞘および塞栓保護デバイスを備えた人工弁を備えており、該塞栓保護デバイスを備えた人工弁は、人工弁尖を備えたサポートフレーム、少なくとも1個の移動可能に付属の弁補握部およびフィルターシートを備えている。
【0037】
1つの実施態様では、第1の鞘は、サポートフレームの少なくとも一部を包み込み、第2の鞘は、弁補握部の少なくとも一部を包み込む。
【0038】
1つの実施態様では、第1の鞘は、送達装置の長軸に沿って第2の鞘に隣接しかつそれから遠位にある。
【0039】
1つの実施態様では、送達デバイスは、長軸に沿って第2の鞘の近位にある制御ユニットをさらに備える。
【0040】
1つの実施態様では、送達デバイスは、バルーンカテーテルをさらに備える。
【0041】
第6の様相では、治療対象者の塞栓症または微小塞栓症の発生率を低減する方法が提供され、この方法はその必要のある治療対象者内で順行性塞栓保護送達デバイスを使用することを含み、該順行性塞栓保護送達デバイスは塞栓保護デバイスおよびバルーンカテーテルを包み込んでいる。
【0042】
1つの実施態様では、該方法は、人工心臓弁の送達の前にまたはその間に実施される。
【0043】
1つの実施態様では、該方法は、治療対象者の血管または体室内に順行性塞栓保護送達デバイスの遠位端を導入する工程;該順行性送達デバイスを心臓弁輪に向けて生来の血流の方向に、第1の鞘が該弁輪を通り過ぎ第2の鞘が該弁輪によってほぼ囲まれた空間内に留まるまで前進させる工程;塞栓保護デバイスの近位部分が露出されるまで第1の鞘を遠位方向に押す工程であって、該塞栓保護デバイスの近位部分が展開された立体配置に拡張する工程;該順行性デバイスを近位方向に、該塞栓保護デバイスのU形状部材のそれぞれの近位端が弁尖の洞に接触するまで引く工程;第2の鞘を近位方向に引いて、バルーンカテーテルを完全に露出させる工程;該バルーンカテーテルを膨張させて、生来の血管または弁を拡大する工程;該バルーンカテーテルを収縮させる工程;第1の鞘内に塞栓保護デバイスを包み込むために第1の鞘を静止させたまま、該塞栓保護デバイスを遠位に押す工程;および該順行性送達デバイスを近位に引いて、治療対象者の血管からそれを取り出す工程、を含む。
【0044】
第7の様相では、治療対象者の塞栓症または微小塞栓症の発生率を低減する方法が提供され、この方法はその必要のある治療対象者の体内で逆行性塞栓保護送達デバイスを使用することを含み、該逆行性塞栓保護送達デバイスは塞栓保護デバイスおよびバルーンカテーテルを包み込んでいる。
【0045】
1つの実施態様では、該方法は、治療対象者の血管内に逆行性送達デバイスを導入し、該逆行性装置を心臓弁開口部に向けて生来の血流とは逆の方向に、該デバイスの第1の鞘が該心臓弁開口部から約75mm以内にあるまで前進させる工程;第1の鞘を前進させて、塞栓保護デバイスのU形状部材のそれぞれの一部およびバルーンの一部を露出させる工程;第2の鞘を近位方向に引いて、該バルーンの残りの部分を露出させ、該塞栓保護デバイスのU形状部材を完全に露出させる工程であって、該塞栓保護デバイスのU形状部材が放射状に拡張して拡張された立体配置になる工程;該逆行性送達デバイスを遠位方向に、該塞栓保護デバイスのU形状部材のそれぞれが弁尖の洞に接触するまで前進させる工程;弁輪内でバルーンカテーテルを膨張させる工程;該弁輪内で該バルーンカテーテルを収縮させる工程;第1の鞘を近位方向に引いて、該バルーンカテーテルの遠位部分を包み込む工程;第2の鞘を遠位方向に押して、該塞栓保護デバイスのU形状部材を包み込む工程;および該逆行性送達デバイスを近位方向に引いて、該送達デバイスを治療対象者の血管から取り出す工程、を含む。
【0046】
第8の様相では、塞栓保護デバイスを備えた人工弁を治療対象者に送達する方法が提供され、この方法は塞栓保護送達デバイスを備えた人工弁の使用を含み、該塞栓保護送達デバイスを備えた人工弁は第1の鞘、第2の鞘を備え、該第1および第2の鞘は塞栓保護デバイスを備えた人工弁を包み込む。該塞栓保護デバイスを備えた人工弁は、サポートフレームに取り付けられた複数の可撓性弁尖部を備えた該サポートフレームであって、該複数の可撓性弁尖部が該サポートフレームがその展開された状態にあるときに開口部において一方向弁を提供する該サポートフレームと、移動可能に取り付けられた弁補握部と、フィルターシートとを備える。
【0047】
1つの実施態様では、該方法は、塞栓保護送達デバイスを備えた人工弁の遠位端を治療対象者の血管または体室内に導入する工程;該送達デバイスの遠位端を血管内を通って心臓に向かって血流の方向に、第2の鞘の遠位端が心臓弁輪を通り過ぎるまで前進させる工程;第2の鞘を近位方向に引いて、弁補握部を露出させる工程であって、該弁補握部のU形状部材のそれぞれが放射状に拡張して展開された立体配置になる工程;第1の鞘を近位方向に、サポートフレームの近位端が該U形状部材の近位端と並ぶまで引く工程;該送達デバイスを近位方向に、該弁補握部のU形状部材のそれぞれが弁尖の洞に接触するまで引く工程;第1の鞘を遠位方向に押して、該サポートフレームを露出させ、展開する工程;および該送達デバイスを近位に引いて、治療対象者の血管からそれを取り出す工程、を含む。
【0048】
代わりの実施態様では、第2の鞘が近位方向に引かれて、弁補握部のU形状部材を露出させた後、該送達デバイスは近位方向に、該弁補握部のU形状部材のそれぞれが弁尖の洞に接触するまで引かれ、そして次に第1の鞘が近位方向に、サポートフレームの近位端が該U形状部材の近位端と並ぶまで引かれ、その後第1の鞘が遠位方向に押されて、該サポートフレームを露出させそして展開させる。
【0049】
本発明の方法および構成のさらなる実施態様等は、以下の記載、図面、実施例および特許請求の範囲から明らかであろう。上記および以下の記載から理解されるように、本明細書に記載されたありとあらゆる特徴およびそのような特徴の2つ以上のありとあらゆる組み合わせは、かかる組み合わせに含まれる特徴が相互に矛盾しない限り本開示発明の範囲内に包含される。さらに、どのような特徴または特徴の組み合わせも、本発明の任意の実施態様から特異的に除外されることができる。とりわけ、添付された実施例および図面とともに検討されたときに、本発明のさらなる様相および利点が以下の記載および特許請求の範囲に述べられている。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1A-1B】塞栓保護デバイスを例示する図である。
【
図2】生来の弁輪構造内にある順行性塞栓保護送達デバイスを例示する図である。
【
図3】生来の弁輪構造内にある順行性塞栓保護送達デバイスを例示する図である。
【
図4】生来の弁輪構造内にある、膨張したバルーンカテーテルを備えた順行性塞栓保護送達デバイスを例示する図である。
【
図5】生来の弁輪構造内にある逆行性塞栓保護送達デバイスを例示する図である。
【
図6】生来の弁輪構造内にある逆行性塞栓保護送達デバイスを例示する図である。
【
図7】生来の弁輪構造内にある逆行性塞栓保護送達デバイスを例示する図である。
【
図8A-8B】塞栓保護デバイスを備えた人工弁を例示する図である。
【
図9】塞栓保護送達デバイスを備えた人工弁を例示する図である。
【
図10】塞栓保護送達デバイスを備えた人工弁を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
様々な様相が、以下にこれからより十分に記載される。しかし、かかる様相は多くの様々な形式で具体化されることができ、本明細書に記載された実施態様に限定されるものと解釈されてはならず、もっと正確に言えば、これらの実施態様は、徹底的かつ完全であるように提供されており、その範囲を当業者に十分に伝えるだろう。
【0052】
I.
定義
この明細書で使用される単数形「a(1つの)」、「an(1つの)」および「the(その)」は、文脈が明白に他様に指示しない限り、複数の指示対象を包含する。したがって、たとえば「ポリマー」への言及は単一のポリマーとともに2つ以上の同じまたは異なるポリマーを包含し、「賦形剤」への言及は単一の賦形剤とともに2つ以上の同じまたは異なるポリマーを包含する等である。
【0053】
記載されたデバイスおよび装置への言及とともに本明細書で使用される用語「近位の」および「遠位の」とは、記載された装置の様々な要素の相対的位置を指す。「近位の」は、装置(たとえば、使用中のその装置の別個の要素を操作するために施術者によって保持された該装置の部分)の制御ユニットに、より近い位置を指す。「遠位の」は、装置の制御ユニットから、より遠い位置を指す。
【0054】
数値の範囲が提示される場合、その範囲の上限と下限との間の任意の介在する数値およびその記載された範囲内の任意の他の記載されたまたは介在する数値が、本開示内に包含される。たとえば、1μm〜8μmの範囲が記載された場合、2μm、3μm、4μm、5μm、6μmおよび7μmとともに1μm以上の数値の範囲ならびに8μm以下の数値の範囲もまた明示的に開示されていることが意図されている。
【0055】
「順行性」送達デバイスとは、患者内に、血管(静脈または動脈)を通してその血管を流れる血流の方向に送達されるデバイスを指す。
【0056】
「逆行性」送達デバイスとは、患者内に、血管(静脈または動脈)を通してその血管を流れる血流と逆の方向に送達されるデバイスを指す。
【0057】
送達デバイスおよびその要素について記載する場合、「近位」とは、そのデバイスの使用者によって保持された操作要素に最も近い位置を指す。「遠位」とは、最初に患者内に入りその患者の血管内を前進する(デバイスの)端に最も近い位置を指す。
【0058】
II.
塞栓保護デバイス
弁の修復のために実施される最小限に侵襲的でかつ経皮的な処置は、より侵襲的な形式の外科術よりも好まれることがあるが、それでもなお欠点を抱えている。そのうちの1つは、動脈への治療介入の間の閉塞性プラークまたは血栓の崩壊であり、これは下流の塞栓および微小血管の閉塞に至ることがある。本開示発明では、治療対象者内の血管中を流れる血液を、血流を閉塞しないで、ろ過して、破片、たとえばアテローム動脈硬化性プラークまたはカルシウム沈着物の崩壊から生じるような破片を捕獲し、ある場合には除去する手段を提供する構成物および装置が提供される。
【0059】
塞栓または微小塞栓の問題の1つの解決策は、修復されるべき弁の近くの血管の内径を拡大することであり、それと同時に該弁の近くの適所にフィルターを一時的に設置して、該血管径の拡大の間に生成した何らかの遊離破片を捕獲することである。本明細書に記載されたのは、塞栓保護デバイス10であり、これはフレーム20およびフィルターシート30を備える。フレームは、少なくとも2個の脚部材および少なくとも2個のU形状部材で構成される。フレームは、2、3、4または5個の脚部材および2、3、4または5個のU形状部材でそれぞれ構成されてもよい。好ましい実施態様は
図1Aおよび1Bに示され、同図でフレーム20は3個の脚部材35および3個のU形状部材25を備える。いくつかの実施態様では、フレーム20は、たとえば金属、プラスチックまたは他の可逆的に拡張可能な材料から作られてもよい。他の実施態様では、フレーム20は形形状記憶金属から作られてもよい。フィルターシート30は、
図1Aおよび1Bに示されたように、フィルターフレームの全長に取り付けられる。
【0060】
脚部材35のそれぞれは、遠位端および近接端を備え、遠位端はU形状部材25に固定される。脚部材35のそれぞれの近位端は、他の脚部材35の近位端に取り付けられまたは固定されても、取り付けられまたは固定されなくてもよい。血管フィルターは、以下に、より詳細に記載されるバルーンカテーテルの送達と同時に治療対象者に送達されてもよい。
【0061】
塞栓保護デバイスフレーム20(または塞栓保護デバイス10)は、それが拡張されたまたは展開された立体配置にあるときは円錐形状であり、第1の端が第2の端よりも小さい直径を有する。第2の端はU形状部材(25)を有し、これは対応する生来の弁尖の洞内に嵌ることが可能である。したがって、塞栓保護デバイス10が弁輪の近辺に送達されると、U形状部材25は生来の弁尖の洞内に嵌合されるように操作されることができる。
この特徴は、少なくとも2つの理由で有利である。すなわち、この処置を行なう施術者は、触覚手段を使用して弁輪に近い血管フィルターの適切な位置を決定することができること、および第2の端の弁輪への設計された嵌合は、血液およびその中に含まれる破片がフィルターの周囲を流れてそれによって該破片が循環系に入ることが可能になりそれに伴う塞栓症および脳卒中の危険を増加させる確率を最小化することである。
【0062】
塞栓保護デバイスフレーム20は、自己拡張性であることができる。いくつかの実施態様では、この自己拡張フレームは形状記憶金属で構成されることができ、これは指定された温度または温度範囲で形状を変えることができる。あるいは、この自己拡張フレームは、ばね付勢を備えたものを含むことができる。該サポートフレームが製作される材料は、そのサポートフレームが、展開されたときに、その機能的なサイズおよび形状に自動的に拡張することを可能にするだけでなく、サポートフレームが、患者の血管系を通した送達のために、より小さなプロフィールにまで半径方向に圧縮されることを可能にする。自己拡張フレームに適した材料の例としては、これらに限定されないが、医療グレードのステンレス鋼、チタン、タンタル、白金合金、ニオブ合金、コバルト合金、アルギン酸塩またはこれらの組み合わせが挙げられる。形状記憶材料の例としては、体内で不活性である、形状記憶性のプラスチック、ポリマーおよび熱可塑性材料が挙げられる。ニッケルとチタンとのある割合から一般的に作られる超弾性の特性を有する形状記憶合金であって、ニチノール(Nitinol)として一般に知られているものは、好ましい材料である。
【0063】
以下に、塞栓保護デバイスおよびバルーンカテーテルの順行性ならびに逆行性送達の両方のための立体配置をとる塞栓保護デバイス送達装置が記載される。順行性送達とは、該装置が、血管内を流れる生来の血流と同じ方向にその血管にまで進められる該装置の送達を指すことが理解される。逆行性送達とは、該装置が、血管内を流れる生来の血流と逆の方向にその血管中を進められる該装置の送達を指す。以下に、より詳細に記載されるように、塞栓保護デバイスは、鞘から露出され、拡張された状態にまで展開し、そしてそのU形状部材によって生来の弁尖の洞内に嵌合され、その後にバルーンが膨張(展開)される。バルーンの膨張が、血管の内径または弁輪を拡大させた後、バルーンは収縮され、引き続いてフィルターが鞘に収められ、塞栓保護デバイス送達装置が取出される。
【0064】
III.
順行性塞栓保護送達デバイス
図2に示されたように、順行性塞栓保護送達デバイス50は、第1の鞘70、第2の鞘80、塞栓保護デバイスおよびバルーンカテーテル40を備える。塞栓保護デバイスを送達するために、塞栓保護送達デバイスは、圧縮の立体配置に収められ、第1の鞘70および/または第2の鞘80内に少なくとも部分的に包み込まれる。
【0065】
修復を必要とする弁の内径を開くまたは拡張するために塞栓保護デバイス送達装置を使用する方法が、
図2〜4に示される。順行性塞栓保護デバイス送達装置50は、治療対象者の血管内に導入され、生来の血流の方向に(遠位方向に)血管を通って前進する。1つの実施態様では、該装置は大動脈弁輪の内径を拡張するために使用され、該順行性装置は経心尖部送達法によって運ばれ、同法ではイントロデューサーまたはトロカールが、治療対象者の胸壁を通して、該治療対象者の心臓の左心室内に挿入される。しかし、順行性塞栓保護デバイス送達装置50は、他の心臓弁輪、たとえば肺動脈弁、僧帽弁または三尖弁の心臓弁輪の修復に先立って、それを拡張するために使用されることができることが理解される。
【0066】
図2に示されたように、順行性装置50の遠位端は、生来の弁90を通り過ぎて(たとえば、左心室を通って大動脈弁を通り過ぎて大動脈内に)前進する。第1の鞘70は独立に前進して、塞栓保護デバイス60を露出させ、それによって、塞栓保護デバイスのU形状部材35を放射状に拡張させる(
図3)。塞栓保護デバイス60は次に、バルーンカテーテル40とは独立に、塞栓保護デバイス60のU形状部材35が生来の弁尖の洞に接触するまで動く(
図4)。いくつかの実施態様では、塞栓保護デバイス60の動きは、該デバイスの1つ以上の他の部材と独立ではない。この時に、第2の鞘80は近位方向に独立に動いて、バルーンカテーテル40を露出させ、バルーンカテーテル40は膨張して、生来の弁輪に外向きの圧力をかける(
図4)。フィルターシート30も示されている。バルーンカテーテル40はその後収縮し、第2の鞘80が遠位方向に動いて、バルーンカテーテル40を少なくとも部分的に包み込み、そして第1の鞘70が近位方向に動いて、塞栓保護デバイス60を少なくとも部分的に覆う。この時に、塞栓保護デバイス60およびバルーンカテーテル40は、順行性弁埋め込み装置50の第1の鞘70および第2の鞘80内に包み込まれて、治療対象者からの順行性弁埋め込み装置50の安全かつ容易な取り出しを可能にする。
【0067】
IV.
逆行性塞栓保護送達デバイス
別の実施態様では、バルーンカテーテルを備えた塞栓保護デバイスの逆行性送達のための送達装置が提供される。逆行性送達とは、治療対象者の血管を通してその血管内の生来の血流とは逆の方向に該装置を送達することを指す。たとえば、そのようなデバイスは、大動脈人工弁を送達し展開するのに使用されることができ、保護装置およびバルーンカテーテルは大動脈を通って逆行方式で送達される。塞栓保護デバイスおよび任意的にバルーンカテーテルを備える逆行性弁埋め込み装置は、他の心臓弁、たとえば肺動脈弁、僧帽弁および三尖弁の治療に使用されることができることが注記される。
【0068】
図5〜7に示されたように、逆行性弁埋め込み装置150の遠位端は、生来の弁90を通り過ぎて前進する(たとえば、大動脈を通って大動脈弁を通り過ぎて左心室の中に前進する)。第2の鞘190は独立に引き戻されて、塞栓保護デバイス160を露出させ、それによって塞栓保護デバイスフレーム165のU形状部材168を放射状に拡張させる(
図6)。フィルターシート155も示されている。塞栓保護デバイス160は次に、塞栓保護デバイス160のU形状部材168のそれぞれが、生来の弁尖90の洞と接触するまで遠位方向に独立に動かされる(
図7)。このときに、第1の鞘180は遠位方向に独立に進められて、バルーンカテーテル170を露出させ(
図7)、バルーンカテーテル170は膨張して生来の弁輪に外向きの圧力をかける。バルーンカテーテル170はその後収縮され、第1の鞘180が近位方向に動かされて、バルーンカテーテル170を少なくとも部分的に包み込み、そして第2の鞘190が遠位方向に動かされて、塞栓保護デバイス160を少なくとも部分的に覆う。このとき、塞栓保護デバイス160およびバルーンカテーテル170は、逆行性弁埋め込み装置150の第1および第2の鞘の中に包み込まれて、治療対象者からの逆行性弁埋め込み装置150の安全かつ容易な取出しを可能にする。
【0069】
V.
塞栓保護デバイスを備えた人工弁
1つの様相では、フィルター(塞栓保護材料)を備えた人工弁が提供され、該フィルターは、サポートフレームにおよび少なくとも1個の移動可能に付属の弁補握部に、取り付けられることができる。少なくとも1個の移動可能に付属の弁補握部を備えたサポートフレームは、米国特許第8,366,768号に十分に記載されており、この内容はその全体が参照によって本明細書に取り込まれる。
【0070】
塞栓保護デバイスを人工弁に結合させることは、少なくとも、施術者が人工弁を埋め込む間に該人工弁を埋め込む過程に起因して生じる塞栓の問題に対処することができるという点で有利である。
【0071】
塞栓保護デバイスを備えた人工弁は、
図8A、8Bに例示されている。
図8Aは塞栓保護デバイス250の例を(平面視で)示し、これは圧縮状態と拡張された状態との間において放射状に拡張可能であり、サポートフレームは外表面を有し、流入−流出方向に沿った軸のまわりに中央開口部を画定する。サポートフレームの内表面に取り付けられているのは、人工弁を通る液体が一方向だけに流れるように可逆的に閉止可能な開口部を画定する表面を有する複数の人工弁尖である。この人工弁は、3弁尖配置の場合、3個の弁尖を備えることができる。十分理解できるように、単弁尖、双弁尖および/または多弁尖配置も可能である。たとえば、弁尖は、人工弁の内腔を通る流体の流れを測り制御するように、弁フレームに連結されることができる。
【0072】
いくつかの実施態様では、弁尖は、合成材料、人工生物組織、生物弁尖組織、心膜組織、架橋心膜組織またはこれらの組み合わせを含む。他の実施態様では、心膜組織は、牛、馬、豚、羊、ヒトの組織またはこれらの組み合わせから成る群から選ばれるが、これらに限定されない。いくつかの実施態様では、弁補握部の数が、治療される生来の弁内の生来の弁尖の数に等しくなるであろうと理解される。サポートフレームは、可逆的に拡張可能な材料、たとえば形状記憶金属から作られる。1つの実施態様では、サポートフレームは、管形状であり、格子構造を有し、かつ長さLを有する。別の実施態様では、拡張された状態のサポートフレームは半径rを有する。いくつかの実施態様では、サポートフレームはバルーンで拡張可能である。
【0073】
サポートフレームは、織物または他の類似の材料のような覆いで覆われていてもよいし、覆われていなくてもよい。任意の適当な、軽量で、耐久性、可撓性、流体不浸透性および/または生体適合性の材料が、覆いとして使用されてもよい。覆いは、縫合糸、ステープル、化学/熱結合および/または接着剤を使用してフレームに取り付けられてもよい。
いくつかの実施態様では、覆いは織物である。さらなる実施態様では、該織物は、たとえばナイロン(商標)、ダクロン(商標)もしくはテフロン(商標)から選ばれた商標によって識別される材料で構成され、または発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)および/もしくは他の材料である。
【0074】
塞栓保護デバイスを備えた人工弁は、サポートフレームの外表面による入れ子位置と係合位置との間において軸に沿って移動可能な弁補握部を有する。弁補握部270は、
図8A(平面視)および8Bに例示される。弁補握部270は、フィルターシート300によってサポートフレーム260に「移動可能に接続され」る。弁補握部270は、長軸に沿ってサポートフレーム260を基準として直列に配置されるように設計される。したがって、弁補握部270およびサポートフレーム260の両方は、それらが圧縮状態にあるときに、体内の血管壁内を、該血管に最小限の損傷を及ぼしながらまたはまったく損傷を及ぼさないで、前進することができる鞘またはチューブ構造物内に容易に収まる直径を提供する。サポートフレーム260の展開に先立って、弁補握部270は、サポートフレーム260と同心である位置内に動かされる。サポートフレーム260は次に、生来の弁尖がサポートフレーム260の外表面と弁補握部270のU形状部材280との間に挟まれて、人工弁が生来の弁輪内に確保されるように、展開されることができる。
【0075】
弁補握部はそれぞれ、U形状部材(
図8Aおよび8Bにおける280)で構成される。
1つの実施態様では、2個のU形状部材は、脚部分(
図8Aおよび8Bにおける275)によって接続されてもよい。そうすると、たとえば3個のU形状部材を有する弁補握部は、3個の直線状部材を有することになる。あるいは、弁補握部は、U形状部材の各脇に直線状脚部材を有する該U形状部材を有してもよい。そうすると、たとえば3個のU形状部材を有する弁補握部は、6個の脚部材を有することになり、この場合には2個のU形状部材の間に2個の脚部材がある。
【0076】
図8Aおよび8Bに示されたように、フィルターシート300は、サポートフレーム260および弁補握部270の両方に接続される。フィルター材料は、少なくとも1個の弁補握部が長軸に沿ってサポートフレームからずらされるか、放射状の軸に沿ってサポートフレームからずらされるか、あるいはサポートフレームと同心とされることを可能にする寸法を有する。1つの実施態様では、少なくとも1個の弁補握部は、フィルター材料によってサポートフレームに移動可能に取り付けられている。任意の適当な、軽量で、耐久性、可撓性および/または生体適合性の材料が、フィルター材料として使用されてもよい。
フィルター材料は、縫合糸、ステープル、化学/熱結合および/または接着剤を使用してフレームに取り付けられてもよい。フィルターは、フィルターシートを通り抜けるには大きすぎる破片の通過を防ぐような様式で取り付けられる。いくつかの実施態様では、フィルターは織物である。さらなる実施態様では、該織物は、たとえばナイロン(商標)、ダクロン(商標)もしくはテフロン(商標)から選ばれた商標によって識別される材料で構成され、または発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)および/もしくは他の材料である。
【0077】
VI.
塞栓保護送達デバイスを備えた人工弁
上記された塞栓保護デバイスを備えた人工弁は、本明細書に記載された送達デバイスを使用して、必要としている患者に送達されることができる。この送達または埋め込みデバイスは、当業者によって容易に理解されるような最小限に侵襲的な処置を使用して、大動脈弁、肺動脈弁、僧帽弁または三尖弁の順行性または逆行性送達として設計されることができる。
【0078】
塞栓保護送達デバイスを備えた人工弁は、第1の鞘と、第2の鞘と、塞栓保護デバイスを備えた人工弁と、制御ユニットとを備え、この制御ユニットは、少なくとも、たとえば第1および第2の鞘、サポートフレームならびに弁補握部を独立に制御することができる(これは、米国特許第8,366,768号に記載されており、その内容はその全体が参照によって本明細書に取り込まれる。)。
【0079】
塞栓保護デバイスを備えた人工弁を含む送達デバイスの使用方法は、
図9および10に例示される。これらの例示では、送達デバイスは、(生来の血流の方向を有する)順行性送達方法において使用されるが、ここに開示された装置は塞栓デバイスを備えた人工弁の逆行性送達にも使用されることができることが理解される。
【0080】
人工弁の送達に先立って、第1の鞘360は、塞栓保護デバイスを備えた人工弁のサポートフレーム390を包み込み、他方、第2の鞘370は、塞栓保護デバイスを備えた人工弁の弁補握部380を包み込む。したがって、送達の前および該デバイスが治療されるべき弁に向かって進んでいる間は、サポートフレームおよび弁補握部は圧縮の立体配置にあり、該サポートフレームおよび弁補握部は長軸に沿って互いに隣接している。重要なことは、サポートフレームおよび弁補握部が移動可能に接続されていることである。
図8Aおよび8Bに示されたように、サポートフレーム260および弁補握部270は、フィルターシート300を使用して、移動可能に接続されている。
【0081】
塞栓保護送達デバイス350を備えた人工弁は、患者の血管または心腔内に導入され、第1の鞘360の遠位端が生来の弁輪を通り過ぎるように進められる。第2の鞘370が次に、近位方向に独立に引かれて、弁補握部380を露出させ、該補握部のU形状部材400が放射状に展開することを可能にする。第1の鞘360はその後近位方向に動かされて、包み込まれたサポートフレーム390を有する第1の鞘360を生来の弁輪により近づかせ、弁補握部380と並ばせる。送達デバイスはその後近位方向に、U形状部材400のそれぞれが欠陥のある各弁尖90と血管壁100との間の接合部(洞)に接触するまで引かれる。代わりの実施態様では、第1の鞘360が近位方向に動かされてサポートフレーム390を弁補握部380と並ばせる前に、送達デバイス350は近位方向に、U形状部材400のそれぞれが欠陥のある各弁尖90と血管壁100との間の接合部(洞)に接触するまで引かれる。
【0082】
サポートフレームと弁補握部との適切な並びは、サポートフレームの近位端が弁補握部のU形状部材の近位端とほぼ並んだときに達成される。
【0083】
サポートフレーム390が弁補握部380と並んだ後、第1の鞘360は近位方向に動かされて、サポートフレーム390を露出させ展開させる。
【0084】
多数の典型的な様相および実施態様がここまでに検討されてきたが、当業者は、特定の修正、置換、追加およびこれらの部分的組み合わせを認識できるであろう。したがって、添付された特許請求の範囲および今後導入される特許請求の範囲は、それらの真の精神および範囲内であるものとして、そのような修正、置換、追加および部分的組み合わせのすべてを含むように解釈されることが意図されている。