特許第6957466号(P6957466)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6957466
(24)【登録日】2021年10月8日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】水性防食塗料組成物及び防食塗装方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 179/02 20060101AFI20211021BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20211021BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20211021BHJP
   C09D 5/08 20060101ALI20211021BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20211021BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20211021BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20211021BHJP
【FI】
   C09D179/02
   C09D163/00
   C09D7/61
   C09D5/08
   C09D7/63
   B05D7/24 303A
   B05D7/24 302U
   B05D7/24 301U
   B05D7/24 303B
   B05D7/24 303G
   B05D7/24 303E
   B05D5/00 Z
【請求項の数】11
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2018-527672(P2018-527672)
(86)(22)【出願日】2017年7月13日
(86)【国際出願番号】JP2017025606
(87)【国際公開番号】WO2018012604
(87)【国際公開日】20180118
【審査請求日】2020年4月22日
(31)【優先権主張番号】特願2016-138875(P2016-138875)
(32)【優先日】2016年7月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 伶美
(72)【発明者】
【氏名】木村 友哉
(72)【発明者】
【氏名】松田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】堀 常晃
(72)【発明者】
【氏名】佐野 真
【審査官】 藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−216689(JP,A)
【文献】 特表2014−518909(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/125816(WO,A1)
【文献】 特開2015−28158(JP,A)
【文献】 特開2002−35687(JP,A)
【文献】 特開2004−97945(JP,A)
【文献】 特開2000−226537(JP,A)
【文献】 特開2010−065136(JP,A)
【文献】 特開2007−197688(JP,A)
【文献】 特開2009−149791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00− 10/00
101/00−201/10
B05D 1/00− 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水希釈性ポリアミン樹脂(A)及び防錆顔料成分(B)を含む第1成分(I)並びに水希釈性エポキシ基含有樹脂(C)を含む第2成分(II)を含んでなり、水希釈性ポリアミン樹脂(A)が、エポキシ樹脂(a1)及びポリアミン化合物(a2)を製造原料とする全アミン価が20〜120mgKOH/gの範囲内の樹脂であり、
防錆顔料成分(B)が、その成分の一部としてマグネシウムイオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、ケイ酸イオン、リン酸イオン、バナジン酸イオン及びモリブデン酸イオンから選ばれる少なくとも1種のイオンを溶出可能な防錆顔料(b)を含み、防錆顔料成分(B)の配合量が、水希釈性ポリアミン樹脂(A)100質量部を基準として1〜100質量部にあり、
水希釈性エポキシ基含有樹脂(C)の樹脂の重量平均分子量が水希釈性ポリアミン樹脂(A)より低く、下記要件(1)〜(3)の少なくとも1つを満たす、2液型水性防食塗料組成物
(1)水希釈性ポリアミン樹脂(A)の水分散体の平均粒子径が水希釈性エポキシ基含有樹脂(C)の水分散体の平均粒子径より小さい
(2)第1成分及び/又は第2成分(II)が、繊維状無機化合物(D)をさらに含む
(3)第1成分及び/又は第2成分(II)が、ポリカルボジイミド化合物(E)をさらに含む
【請求項2】
ポリアミン化合物(a2)が、分子両末端に1級アミノ基を有し、少なくとも1個の2級アミノ基を有するポリアミン(a2−1)である請求項1に記載の2液型水性防食塗料組成物。
【請求項3】
水希釈性ポリアミン樹脂(A)が、エポキシ樹脂(a1)及びポリアミン化合物(a2)に加えてケトン化合物(a3)を製造原料とする樹脂である請求項1に記載の2液型水性防食塗料組成物。
【請求項4】
水希釈性ポリアミン樹脂(A)が、1級アミノ基を樹脂末端に有する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の2液型水性防食塗料組成物。
【請求項5】
水希釈性ポリアミン樹脂(A)が、アミノ基と反応可能な官能基を有する長鎖アルキル化合物(a4)を製造原料とする樹脂である請求項1ないし4のいずれかに記載の2液型水性防食塗料組成物。
【請求項6】
防錆顔料(b)が、ケイ酸イオン及び/又はリン酸イオン並びに、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン及び亜鉛イオンから選ばれる少なくとも1種の金属イオンを溶出可能な成分である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の2液型水性防食塗料組成物。
【請求項7】
水希釈性エポキシ基含有樹脂(C)が、その成分の一部としてノボラック型エポキシ樹脂を含有する、請求項1ないしのいずれか1項に記載の2液型水性防食塗料組成物。
【請求項8】
請求項1ないしのいずれか1項に記載の第1成分(I)及び第2成分(II)を混合して得られる水性防食塗料組成物。
【請求項9】
被塗物に、請求項記載の水性防食塗料組成物を塗装することを特徴とする防食塗装方法。
【請求項10】
被塗物が、錆が残存する基材面である請求項記載の防食塗装方法。
【請求項11】
水性防食塗料組成物を塗装する前に、錆を簡易除去する工程を含む請求項10に記載の防食塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性防食塗料組成物及び防食塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼材は、海洋構造物、港湾施設、船舶、建築、土木構造物、自動車など多方面に広く用いられているが、自然環境に曝されると腐食するという問題がある。腐食を防止あるいは抑制する方法として、防食塗装が行われている。
【0003】
近年、鉄橋、プラント、鉄塔、石油施設等をはじめとする鋼構造物は、老朽化の時期を迎えており、改修塗装が必要である。
【0004】
一般に、鋼構造物の改修塗装を行うには、塗装前の下地処理が大切であり、その精度により、塗膜の寿命が左右される。下地処理として具体的には、鋼構造物の発錆部の錆びた部分の除去、旧塗膜表面の面粗らし、防錆効果を失って脆くなった塗膜の除去等が挙げられる。下地処理の程度は「ケレン」という名称で呼ばれており、グレードにより1種ケレンから3種ケレンまで分類され、グレードに応じた処理方法で下地処理が行われている。 ケレンのグレードの分類は一般に明確に定められたものではないが、1種ケレンは錆及び塗膜を完全に除去し、鋼材面を清浄にする本格的な下地処理をいい、一方、3種ケレンは活膜は残し、錆及び劣化塗膜は除去する簡易下地処理であり、2種ケレンはその中間である。
【0005】
そして、鋼構造物の改修塗装において理想とされている1種ケレングレードまで下地処理を行うには、研磨粒子を圧縮空気で吹き付けるサンドブラスト、ショットブラスト等のブラスト法などがある。ブラスト手法では機械騒音、作業騒音、労力、所要時間等に問題がある。
【0006】
例えば、下地処理に1種グレードを採用した場合、改修塗装工事全体に要する費用のうち6〜7割はブラスト法及び産業廃棄物処理費用にかかると言われており、2種ケレンまたは3種ケレン程度の簡易な下地処理でも長期の防食性を発揮できる防食塗り替え工法が必要とされてきた。
【0007】
そうした方策として特許文献1には、錆層を有する金属表面にシランカップリング剤を含有するエポキシ樹脂塗料を塗装するという錆面防食被膜形成方法が提案されている。特許文献1の記載によれば、錆層中の水分によりエポキシ樹脂塗料に含まれるシランカップリング剤と錆層及び金属表面を固定することができ、金属表面に錆が残存していてもその上に設けられた防食被膜が基材を保護することができることが記載されている。
【0008】
また、錆層に含まれる水分を利用して錆層を固定化する技術が記載された文献として特許文献2には錆層を有する金属表面にケチミン化合物を硬化剤とするエポキシ樹脂塗料を塗装するという錆面防食被膜形成方法が提案されている。
【0009】
しかしながら特許文献1及び2の手法によれば、基材上に錆が残存している故に防食性及び付着性の点において未だ十分な品質は得られておらず、さらなる改良が必要である。
【0010】
一方、近年、環境に対する配慮から重防食塗料分野でも水性化が進んでいる。
【0011】
水性の重防食塗料として例えば特許文献3には、エポキシ樹脂エマルジョンを含む主剤と、特定の活性水素当量を有する環状ポリアミンを含んでなるアミン硬化剤を含む2液型水性防食塗料が記載されている。特許文献4には、ビスフェノール骨格を有するエポキシ樹脂をアミン化合物で変性して得られたアミン変性エポキシ樹脂と、沸点200℃以上で非水溶性である可塑剤を含む水性塗料組成物が記載されている。
【0012】
これら特許文献記載の塗料は水系であっても防食性に優れる塗膜を形成し得るが、錆面上に適用される場合、海浜等厳しい環境下で長期暴露された場合などの場合は十分な防食性を発揮することができず、塗膜表面に点錆が発生することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】日本国特開平1−25877号公報
【特許文献2】日本国特開昭60−78672号公報
【特許文献3】日本国特開2009−149791号公報
【特許文献4】国際公開WO2011−118790号パンフレット
【特許文献5】国際公開WO2012-150312号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、錆が残存した基材上に塗布しても良好な防食性の塗膜を形成することが可能な水性防食塗料組成物及び防食塗装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記した課題に関して鋭意検討した結果、特定のポリアミン樹脂及び特定の防錆顔料を含む成分を主剤成分とし、エポキシ基含有樹脂を含む成分を硬化剤成分とする2液型の水性防食塗料組成物が、水性の組成物でありながら錆が残存する基材面に対しても優れた防食性を発揮することを見出し、本発明に到達した。
【0016】
即ち本発明は、以下の態様を包含する。
【0017】
項1、水希釈性ポリアミン樹脂(A)及び防錆顔料成分(B)を含む第1成分(I)並びに水希釈性エポキシ基含有樹脂(C)を含む第2成分(II)を含んでなり、
水希釈性ポリアミン樹脂(A)が、エポキシ樹脂(a1)及びポリアミン化合物(a2)を製造原料とする全アミン価が20〜120mgKOH/gの範囲内の樹脂であり、
防錆顔料成分(B)が、その成分の一部としてマグネシウムイオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、ケイ酸イオン、リン酸イオン、バナジン酸イオン及びモリブデン酸イオンから選ばれる少なくとも1種のイオンを溶出可能な防錆顔料(b)を含み、防錆顔料成分(B)の配合量が、水希釈性ポリアミン樹脂(A)100質量部を基準として1〜100質量部にあり、
水希釈性エポキシ基含有樹脂(C)の樹脂の重量平均分子量が水希釈性ポリアミン樹脂(A)より低い、2液型水性防食塗料組成物。
【0018】
項2、ポリアミン化合物(a2)が、分子両末端に1級アミノ基を有し、少なくとも1個の2級アミノ基を有するポリアミン(a2−1)である項1に記載の2液型水性防食塗料組成物。
【0019】
項3、水希釈性ポリアミン樹脂(A)が、エポキシ樹脂(a1)及びポリアミン化合物(a2)に加えてケトン化合物(a3)を製造原料とする樹脂である項1に記載の2液型水性防食塗料組成物。
【0020】
項4、水希釈性ポリアミン樹脂(A)が、1級アミノ基を樹脂末端に有する項1ないし3のいずれか1項に記載の2液型水性防食塗料組成物。
【0021】
項5、水希釈性ポリアミン樹脂(A)が、アミノ基と反応可能な官能基を有する長鎖アルキル化合物(a4)を製造原料とする樹脂である項1ないし4のいずれかに記載の2液型水性防食塗料組成物。
【0022】
項6、防錆顔料(b)が、ケイ酸イオン及び/又はリン酸イオン並びに、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン及び亜鉛イオンから選ばれる少なくとも1種の金属イオンを溶出可能な成分である項1ないし5のいずれか1項に記載の2液型水性防食塗料組成物。
【0023】
項7、水希釈性ポリアミン樹脂(A)の水分散体の平均粒子径が水希釈性エポキシ基含有樹脂(C)の水分散体の平均粒子径より小さいものである項1ないし6のいずれか1項に記載の2液型水性防食塗料組成物。
【0024】
項8、水希釈性エポキシ基含有樹脂(C)が、その成分の一部としてノボラック型エポキシ樹脂を含有する、項1ないし7のいずれか1項に記載の2液型水性防食塗料組成物。
【0025】
項9、第1成分及び/又は第2成分(II)が、繊維状無機化合物(D)をさらに含む項1ないし8のいずれか1項に記載の2液型水性防食塗料組成物。
【0026】
項10、第1成分及び/又は第2成分(II)が、ポリカルボジイミド化合物(E)をさらに含む項1ないし9のいずれか1項に記載の2液型水性防食塗料組成物。
【0027】
項11、項1ないし10のいずれか1項に記載の第1成分(I)及び第2成分(II)を混合して得られる水性防食塗料組成物。
【0028】
項12、被塗物に、項11記載の水性防食塗料組成物を塗装することを特徴とする防食塗装方法。
【0029】
項13、被塗物が、錆が残存する基材面である項12記載の防食塗装方法。
【0030】
項14、水性防食塗料組成物を塗装する前に、錆を簡易除去する工程を含む項13に記載の防食塗装方法。
【発明の効果】
【0031】
本発明の2液型水性防食塗料組成物によれば、塗装前の塗料状態の貯蔵安定性は共に良好であり、両者を混合し、塗装することによって防食性に優れた塗膜を常温乾燥の条件でも得ることができ、海浜等厳しい環境下に長期間曝されても被塗物の美観を長期に渡って維持することができる。
【0032】
また、本発明の水性防食塗料組成物は、新設の基材は勿論、錆が残存した基材上に直接塗装しても十分な防食性を発揮することができる。このため、老朽化し錆が残存した鋼構造物などの塗り替え塗装にも適用可能であり、水性の組成物という環境に配慮されている上に塗装に要するトータルの労力を大幅に削減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の2液型水性防食塗料組成物は、水希釈性ポリアミン樹脂(A)及び防錆顔料成分(B)を含む第1成分(I)並びに水希釈性エポキシ基含有樹脂(C)を含む第2成分(II)から構成される。
【0034】
<水希釈性ポリアミン樹脂(A)>
本発明において、塗膜形成成分となりうる水希釈性ポリアミン樹脂(A)は、エポキシ樹脂(a1)及びアミン化合物(a2)を製造原料とする樹脂であり、全アミン価が20〜120mgKOH/gの範囲内にある樹脂である。
【0035】
水希釈性ポリアミン樹脂(A)の製造原料であるエポキシ樹脂(a1)としては、分子中に少なくとも1個、好ましくは2個以上のエポキシ基を有する樹脂であり、少なくとも160、好ましくは180〜2500の範囲内のエポキシ当量を有するものが適している。
【0036】
エポキシ樹脂(a1)として具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;上記ビスフェノール型エポキシ樹脂を二塩基酸等で変性したエポキシエステル樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;ポリグリコール型エポキシ樹脂;水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル等の脂肪族型エポキシ樹脂、グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有アクリルモノマーを構成成分とするエポキシ基含有アクリル樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂としては、未変性のエポキシ樹脂が好ましい。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0037】
上記エポキシ樹脂(a1)の市販品としては、例えば、「jER827」、「jER828」、「jER828EL」、「jER828XA」、「jER834」(以上、三菱ケミカル社製)、「EPICLON840」、「EPICLON840−S」、「EPICLON850」、「EPICLON850−S」、「EPICLON850−CRP」、「EPICLON850−LC」(以上、DIC社製)、「エポトートYD−127」、「エポトートYD−128」(以上、東都化成社製)、「リカレジンBPO−20E」、「リカレジンBEO−60E」(以上、新日本理化社製)等のビスフェノールA型エポキシ樹脂;「jER806」、「jER807」(以上、三菱ケミカル社製)、「EPICLON830」、「EPICLON830−S」、「EPICLON835」(以上、DIC社製)、「エポトートYDF−170」(東都化成社製)等のビスフェノールF型エポキシ樹脂;「jER4250」(三菱ケミカル社製)等のビスフェノールA型ビスフェノールF型フェノキシ樹脂、「jER152」(三菱ケミカル社製)等のノボラック型エポキシ樹脂;「jERYX8000」、「jERYX8034」(以上、三菱ケミカル社製)、「エポトートST−3000」(東都化成社製)、「リカレジンHBE−100」(新日本理化社製)「デナコールEX−252」(以上、ナガセケムテックス社製)、「SR−HBA」(阪元薬品工業社製)等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;「YED205」、「YED216M」、「YED216D」(以上、三菱ケミカル社製)、「エポトートYH−300」、「エポトートYH−301」、「エポトートYH−315」、「エポトートYH−324」、「エポトートYH−325」(以上、東都化成社製)、「デナコールEX−211」、「デナコールEX−212」、「デナコールEX−212L」、「デナコールEX−214L」、「デナコールEX−216L」、「デナコールEX−313」、「デナコールEX−314」、「デナコールEX−321」、「デナコールEX−321L」、「デナコールEX−411」、「デナコールEX−421」、「デナコールEX−512」、「デナコールEX−521」、「デナコールEX−611」、「デナコールEX−612」、「デナコールEX−614」、「デナコールEX−614B」、「デナコールEX−622」、「デナコールEX−810」、「デナコールEX−811」、「デナコールEX−850」、「デナコールEX−850L」、「デナコールEX−851」、「デナコールEX−821」、「デナコールEX−830」、「デナコールEX−832」、「デナコールEX−841」、「デナコールEX−861」「デナコールEX−911」、「デナコールEX−941」、「デナコールEX−920」、「デナコールEX−931」(以上、ナガセケムテックス社製)、「SR−NPG」、「SR−16H」、「SR−16HL」、「SR−TMP」、「SR−PG」、「SR−TPG」、「SR−4PG」、「SR−2EG」、「SR−8EG」、「SR−8EGS」、「SR−GLG」、「SR−DGE」、「SR−DGE」、「SR−4GL」、「SR−4GLS」、「SR−SEP」(以上、阪元薬品工業社製)等の脂肪族型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0038】
上記エポキシ樹脂(a1)は、上記例示のエポキシ樹脂を、2官能性のポリエステルポリオール類、2官能性ポリエーテルポリオール類、ビスフェノール類、2塩基性カルボン酸類等とエポキシ基が過剰となるように反応して得られるエポキシ樹脂も包含される。
【0039】
上記水希釈性ポリアミン樹脂(A)を構成するポリアミン化合物(a2)としては、分子両末端に1級アミノ基を有し、少なくとも1個の2級アミノ基を有するポリアミン化合物(a2−1)であることが望ましい。
【0040】
このようなポリアミン化合物(a2−1)としては、例えば、ジメチレントリアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジブチレントリアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミンなどのジアルキレントリアミン;トリエチレンテトラミン、トリプロピレンテトラミンなどのトリアルキレンテトラミン;テトラエチレンペンタミン、テトラプロピルペンタミンなどのテトラアルキレンペンタミン;ペンタアルキレンヘキサミン;ヘキサアルキレンヘプタミンなどが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0041】
特に本発明では、第1成分(I)の製造及び貯蔵安定性及び錆面上の防食性の観点から上記ポリアミン化合物(a2−1)がジアルキレントリアミンであることが好ましく、炭素数が2〜8、好ましくは3〜6のアルキレン基を有するジアルキレントリアミンが特に適している。
【0042】
また、上記ポリアミン化合物(a2−1)以外に適用可能なポリアミンとしては、例えばモノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、モノブチルアミン、モノオクチルアミン、メチルブチルアミン、ジブチルアミンなどのモノ−アルキルアミン又はジ−アルキルアミン;モノエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、ジ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、N−ブチルエタノールアミン、ジプロパノールアミン、モノメチルアミノエタノール、N−(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、3−メチルアミン−1,2−プロパンジオール、3−tert−ブチルアミノ−1,2−プロパンジオール、N−メチルグルカミン、N−オクチルグルカミンなどのアルカノールアミン;ポリメチレンジアミン、ポリエーテルジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ビス(4−アミノブチル)アミンなどのアルキレンポリアミン;メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、メタキシリレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ナフチレンジアミン、ジメチルアミノメチルベンゼンなどの芳香族又は脂環族ポリアミン;ピペラジン、1−メチルピペラジン、3−ピロリジノール、3−ピぺリジノール、4−ピロリジノールなどの複素環を有するポリアミン;上記ポリアミン1モルに対しエポキシ基含有化合物を1〜30モル付加させることによって得られるエポキシ付加ポリアミン;上記ポリアミンと芳香族酸無水物、環状脂肪族酸無水物、脂肪族酸無水物、ハロゲン化酸無水物及び/又はダイマー酸との縮合によって生成するポリアミド樹脂の分子中に1個以上の1級又は2級アミンを含有するポリアミドポリアミン;上記ポリアミン中の1個以上の1級又は2級アミンとケトン化合物とを反応せしめたケチミン化アミン;などが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。
【0043】
エポキシ樹脂(a1)及びポリアミン化合物(a2)の使用割合としては、エポキシ樹脂(a1)1モルに対してアミン化合物が0.2〜3.0モル、好ましくは0.5〜2.5モルとなるような割合にあることが適している。
【0044】
また、上記水希釈性ポリアミン樹脂(A)は、エポキシ樹脂(a1)及びポリアミン化合物(a2)に加えてケトン化合物(a3)を製造原料とする樹脂であることが好ましい。
【0045】
ケトン化合物(a3)としては、メチルイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、エチルブチルケトン、エチルプロピルケトン、ジプロピルケトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。これらを単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。中でも、メチルイソブチルケトンが好ましい。
【0046】
ケトン化合物(a3)を使用する場合、その場合の使用割合としては、アミン化合物(a2)中の一級アミノ基1モルに対して0.2〜3.0モル、好ましくは0.5〜2.5モルとなるような割合にあることが適している。
【0047】
また、上記水希釈性ポリアミン樹脂(A)は、アミノ基と反応可能な官能基を有する長鎖アルキル化合物(a4)(脂肪族モノエポキシ化合物ともいう。)を製造原料として含む樹脂であることが適している。かかる化合物(a4)により、本発明組成物により形成される塗膜の防食性向上に効果がある。
【0048】
上記アミノ基と反応可能な官能基を有する長鎖アルキル化合物(a4)としては炭素数が4以上のアルキル基とカルボキシル基及び/又はグリシジル基等の官能基を有する化合物であることができ、その具体例としては、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシオクタデカン、1,2−エポキシエイコサン、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、tert−ブチルフェニルグリシジルエーテルなどの長鎖アルキルグリシジルエーテル化合物;酪酸グリシジルルエステル、ステアリン酸グリシジルルエステル、ネオデカン酸グリシジルエステルなどの長鎖アルキルグリシジルエステル化合物;ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の長鎖アルキル脂肪酸等を挙げることができる。
【0049】
かかる長鎖アルキル化合物(a4)を使用する場合、その場合の使用割合としては、ポリアミン化合物(a2)に含まれる1級アミノ基1モルに対して当該化合物(a4)に含まれるアミノ基と反応可能な官能基が0.1〜0.8モル、好ましくは0.2〜0.6モルの範囲内にあることが適している。
【0050】
長鎖アルキル化合物(a4)による変性割合が上記範囲内にあることによって、本発明水性防食塗料組成物から形成される塗膜が造膜性に優れ、優れた防食性を発揮することができる。
【0051】
本発明では、水希釈性ポリアミン樹脂(A)は、上記成分(a1)及び(a2)、並びに必要に応じて(a3)及び/または(a4)を製造原料とするものであり、また、界面活性剤等その他成分を必要に応じて製造原料とすることができる。その製造方法は特に制限はされず、ポリアミン化合物(a2)末端の1級アミンをケトン化合物(a3)と反応させケチミン化した後に2級アミンとエポキシ樹脂(a1)のエポキシ基とを反応させ、次いで、水希釈する際に加水分解によってケチミンを1級アミンに戻す製造方法等が挙げられる。
【0052】
上記製造方法によれば、水希釈性ポリアミン樹脂(A)は、水存在下で樹脂末端に水分散基である1級アミノ基を有することができ、錆面上の防食性に優れた防食塗膜を形成するのに役立つ。
【0053】
上記必要に応じて使用される界面活性剤としては、特に限定されるものではなく、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類、グリセリンエステル類およびその誘導体、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸又はエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和脂肪酸塩、不飽和脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルリン酸エステル又はその塩、アルケニルリン酸エステル又はその塩等のアニオン性界面活性剤;第4級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;カルボキシル型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤等の両性界面活性剤等が挙げられる。
【0054】
上記界面活性剤を配合する場合、樹脂製造段階に限らず、塗料製造工程のどの段階で行ってもよい。配合量としては塗料状態での貯蔵安定性及び形成塗膜の防食性の観点から、水希釈性ポリアミン(A)及び水希釈性エポキシ基含有樹脂の不揮発分合計質量を基準として1〜15質量部、特に3〜8質量部の範囲内が適当である。
【0055】
また、化合物(a4)を製造原料として用いる場合には、水希釈性ポリアミン樹脂(A)の製造においていずれの段階で用いることが可能であるが、ポリアミン化合物(a2)末端の1級アミンをケトン化合物(a3)と反応させケチミン化した後に2級アミンとエポキシ樹脂(a1)のエポキシ基を反応させ、次いで、水希釈する際に加水分解によってケチミンを1級アミンに戻し、次いで化合物(a4)を反応させる方法が好ましい。
【0056】
上記水希釈性ポリアミン樹脂(A)は、中和されていてもよいアミノ基の存在により水系媒体に対して良好に分散又は溶解される。水分散体とした場合は一般に平均粒子径が50〜500nm、特に100〜300nmの範囲内にあることが、常温乾燥での造膜性と硬化性の観点から適している。
【0057】
中和に用いられる中和剤としては、例えば蟻酸、酢酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、グルタール酸、アジピン酸、マレイン酸、乳酸、プロピオン酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸、メタンスルホン酸などの有機酸;塩酸、リン酸、硫酸、ジルコふっ化水素酸、ケイふっ化水素酸、硝酸等の無機酸;等の酸化合物を挙げることができる。
【0058】
上記水希釈性ポリアミン樹脂(A)は全アミン価が20〜120mgKOH/gの範囲にあるものであり、好ましくは40〜100mgKOH/gの範囲内にあることが適している。
【0059】
また、水希釈性ポリアミン樹脂(A)は、重量平均分子量が1000〜20000、好ましくは2000〜8000の範囲内にあることが、常温乾燥性、防食性、耐湿性などの塗膜物性の点から適している。
【0060】
本明細書において、平均粒子径は、測定温度20℃において、コールターカウンター法によって測定された体積平均粒子径の値である。コールターカウンター法による測定は、例えば、「COULTER N4型」(ベックマン・コールター社製、商品名)を用いて行うことができる。
【0061】
また、アミン価はJIS K 7237−1995に準じて測定する。全て樹脂不揮発分当たりのアミン価(mgKOH/g)である。
【0062】
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。カラムは、「TSKgel G−4000H×L」、「TSKgel G−3000H×L」、「TSKgel G−2500H×L」、「TSKgel G−2000H×L」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1ml/分、検出器;RIの条件で行ったものである。
【0063】
<防錆顔料成分(B)>
本発明において、防錆顔料成分(B)は、腐食環境において、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、ケイ酸イオン、リン酸イオン、バナジン酸イオン及びモリブデン酸イオンから選ばれる少なくとも1種のイオンを溶出可能な防錆顔料(b)を含むことを特徴とする。防錆顔料成分(B)が上記特定の防錆顔料(b)を含むことによって、錆面上又は金属基材上に塗装された塗膜が欠損した場合に上記イオンが溶出し、当該欠損部に作用することで防食性をより効果的に発揮することができる。
【0064】
本発明において、防錆顔料(b)のイオン溶出の有無は例えば防錆顔料(b)を塩化ナトリウム水溶液に溶出させ、その溶出量をICP発光分光分析によって測定することによって調べることが可能である。より具体的には、濃度が5質量%塩化ナトリウム水溶液に対して10質量%分の防錆顔料(b)を添加し25℃で6時間撹拌、24時間静置後沈殿物を除去した上澄み液を、ICP発光分光分析によって測定した溶解元素量の有無によって検出する方法等がある。
【0065】
本発明においては上記第1成分(I)が水希釈性ポリアミン樹脂(A)と共に防錆顔料成分(B)を含む形態によって、防錆顔料成分(B)を十分な量で含んでいても第1成分(I)の製造及び貯蔵安定性が良好であり、本発明防食塗料組成物から形成される塗膜が安定した防食性を発揮することができる。
【0066】
上記防錆顔料成分(B)に含まれ得る防錆顔料(b)の具体例としては、上記イオンを溶出可能な成分であれば単独化合物、複合化合物、これら化合物を複数併用した組成物等その形態に制限はなく、具体的には、リン酸亜鉛、リン酸マグネシウム、リン酸マグネシウム・アンモニウム共析物、リン酸一水素マグネシウム、リン酸二水素マグネシウム、リン酸マグネシウム・カルシウム共析物、リン酸マグネシウム・コバルト共析物、リン酸マグネシウム・ニッケル共析物、リン酸カルシウム、リン酸カルシウムアンモニウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸塩化フッ化カルシウム、リン酸アルミニウム、リン酸水素アルミニウム等のリン酸系金属化合物;
亜リン酸マグネシウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸マグネシウム・カルシウム共析物、塩基性亜リン酸亜鉛、亜リン酸バリウム、亜リン酸マンガン、次亜リン酸カルシウム等の亜リン酸系金属化合物;
ケイ酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸アルミニウム、オルトケイ酸アルミニウム、水化ケイ酸アルミニウム、アルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、ベリロケイ酸塩、ケイ酸アルミニウムカルシウム、ケイ酸アルミニウムナトリウム、ケイ酸アルミニウムベリリウム、ケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、ケイ酸カルシウムナトリウム、ケイ酸ジルコニウム、オルトケイ酸マグネシウム、メタケイ酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムカルシウム、ケイ酸マンガン、ケイ酸バリウム等のケイ酸金属塩;マグネシウムイオン交換シリカ、カルシウムイオン交換シリカ等の金属イオン交換シリカ系化合物;
トリポリリン酸ニ水素アルミニウム、トリポリリン酸マグネシウム、トリポリリン酸アルミニウム、トリポリリン酸二水素亜鉛等の縮合リン酸系金属化合物;
五酸化バナジウム、バナジン酸カルシウム、バナジン酸マグネシウム及びメタバナジン酸アンモニウム、酸化マンガンと酸化バナジウムとの焼成物、リン酸カルシウムと酸化バナジウムとの焼成物等のバナジウム系金属化合物;
モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウム、リンモリブデン酸アルミニウム等のモリブデン酸系金属化合物;
亜鉛、酸化亜鉛等の亜鉛系化合物;
シリカ、コロイダルシリカ等のシリカ系化合物;
酸化鉄と酸化マグネシウムとの複合酸化物、酸化鉄と酸化カルシウムとの複合酸化物、酸化鉄と酸化亜鉛との複合酸化物等の複合金属酸化物;
等を挙げることができる。前記したようにこれらは単独で又は2種以上組み合わせたものであってもよいし、2種以上を複合した複合物であることもできる。また、これら例示の化合物をシリカ、ケイ酸カルシウム等のケイ酸化合物や酸化マグネシウム等による変性物もしくは処理物も防錆顔料(b)に包含される。
【0067】
特に本発明では防錆顔料(b)が、ケイ酸イオン及び/又はリン酸イオン並びに、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン及び亜鉛イオンから選ばれる少なくとも1種の金属イオンを溶出可能な成分であることが、点錆抑制性並びに錆面及び金属面露出部に対する防食性に優れており、適している。すなわち、本発明では防錆顔料(b)が[1]ケイ酸イオンを溶出可能な成分であり、かつ、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン及び亜鉛イオンから選ばれる少なくとも1種の金属イオンを溶出可能な成分、[2]リン酸イオンを溶出可能な成分であり、かつ、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン及び亜鉛イオンから選ばれる少なくとも1種の金属イオンを溶出可能な成分、又は[3]ケイ酸イオン及びリン酸イオンを溶出可能な成分であり、かつ、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン及び亜鉛イオンから選ばれる少なくとも1種の金属イオンを溶出可能な成分のいずれかであることが、適している。
【0068】
特に防錆顔料(b)は、ケイ酸イオン及びリン酸イオン並びに、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン及び亜鉛イオンから選ばれる少なくとも1種の金属イオンを溶出可能な成分である態様が特に適している。すなわち、ケイ酸イオン及びリン酸イオンを溶出可能な成分であり、かつ、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン及び亜鉛イオンから選ばれる少なくとも1種の金属イオンを溶出可能な成分であることが、特に適している。
【0069】
このような防錆顔料(b)としては、ケイ酸イオン及び/又はリン酸イオンと上記した如き金属イオンを共に溶出可能であれば、その形態は制限されず、単独化合物又は複合化合物であってもよいし、前記化合物類を複数組み合わせた組成物であってもよい。例えば、トリポリリン酸二水素アルミニウムの酸化マグネシウム処理物とマグネシウムイオン交換シリカとの組み合わせは、ケイ酸イオン及びリン酸イオン並びに、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン及び亜鉛イオンから選ばれる少なくとも1種の金属イオンを溶出可能な防錆顔料(b)の一例である。
【0070】
かかる防錆顔料(b)のうちケイ酸イオンを溶出可能な防錆顔料は、腐食環境下でケイ酸イオンを溶出可能なケイ酸系化合物を含んでいればよい。例えば、シリカ、コロイダルシリカ、上記防錆顔料(b)の説明で列記した化合物をケイ酸化合物による変性物、マグネシウムイオン交換シリカ、カルシウムイオン交換シリカ等の金属イオン交換シリカ系化合物等を挙げることができる。これらを単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0071】
リン酸イオンを溶出可能な防錆顔料は、腐食環境下でリン酸イオンを溶出可能なリン酸系化合物を含んでいればよい。例えば、リン酸マグネシウム、リン酸マグネシウム・アンモニウム共析物、リン酸一水素マグネシウム、リン酸二水素マグネシウム、リン酸マグネシウム・カルシウム共析物、リン酸マグネシウム・コバルト共析物、リン酸マグネシウム・ニッケル共析物、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸マグネシウム・カルシウム共析物、トリポリリン酸マグネシウム、トリポリリン酸二水素アルミニウムの酸化マグネシウム処理物、トリポリリン酸二水素亜鉛の酸化マグネシウム処理物等を挙げることができる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0072】
マグネシウムイオンを溶出可能な防錆顔料は、腐食環境下でマグネシウムイオンを溶出可能なマグネシウム化合物を含んでいればよい。具体的には例えば、上記防錆顔料(b)の説明で列記したごとき化合物を酸化マグネシウムで処理した化合物、リン酸マグネシウム、リン酸マグネシウム・アンモニウム共析物、リン酸一水素マグネシウム、リン酸二水素マグネシウム、リン酸マグネシウム・カルシウム共析物、リン酸マグネシウム・コバルト共析物、リン酸マグネシウム・ニッケル共析物、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸マグネシウム・カルシウム共析物、マグネシウムイオン交換シリカ、トリポリリン酸マグネシウム、バナジン酸マグネシウム、メタケイ酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムカルシウム、酸化鉄と酸化マグネシウム複合酸化物等を挙げることができる。これらを単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0073】
アルミニウムイオンを溶出可能な防錆顔料は、腐食環境下でアルミニウムイオンを溶出可能なアルミニウム化合物を含んでいればよい。例えば、リン酸アルミニウム、リン酸水素アルミニウム、トリポリリン酸ニ水素アルミニウム、トリポリリン酸アルミニウム、モリブデン酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、オルトケイ酸アルミニウム、水化ケイ酸アルミニウム、アルミノケイ酸塩、ケイ酸アルミニウムカルシウム、ケイ酸アルミニウムナトリウム、ケイ酸アルミニウムベリリウム、リンモリブデン酸アルミニウム等を挙げることができる。これらを単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0074】
カルシウムイオンを溶出可能な防錆顔料は、腐食環境下でカルシウムイオンを溶出可能なカルシウム化合物を含んでいればよい。例えば、リン酸マグネシウム・カルシウム共析物、リン酸カルシウム、リン酸カルシウムアンモニウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸塩化フッ化カルシウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸マグネシウム・カルシウム共析物、次亜リン酸カルシウム、カルシウムイオン交換シリカ、バナジン酸カルシウム、リン酸カルシウムと酸化バナジウムとの焼成物、モリブデン酸カルシウム、酸化鉄と酸化カルシウム複合酸化物、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムカルシウム、オルトケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、ケイ酸カルシウムナトリウム、ケイ酸マグネシウムカルシウム、等を挙げることができる。これらを単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0075】
亜鉛イオンを溶出可能な防錆顔料は、腐食環境下で亜鉛イオンを溶出可能な亜鉛化合物を含んでいればよい。例えば、亜鉛、酸化亜鉛、リン酸亜鉛、塩基性亜リン酸亜鉛、トリポリリン酸二水素亜鉛、ケイ酸亜鉛、酸化鉄と酸化亜鉛との複合酸化物等の複合金属酸化物等を挙げることができる。これらを単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0076】
上記本発明に用いられる防錆顔料成分(B)は、防錆顔料(b)以外のその他の防錆顔料を必要に応じて含むことができる。かかるその他の防錆顔料の具体例としては、水酸化コバルト等のコバルト系化合物;メタホウ酸バリウム等のホウ酸系化合物;リン化鉄、リン化マンガン、リン化ニッケル、リン化コバルト、リン化銅等のリン化物等を挙げることができる。
【0077】
その他の防錆顔料を使用する場合、その場合の使用量としては、上記防錆顔料成分(B)中に30質量%以下にすることができる。
【0078】
防錆顔料成分(B)は、単独もしくは複数の組み合わせの市販品を用いることができる。かかる市販品としては、例えば「EXPERT NP−1000」、「EXPERT NP−1020C」、「EXPERT NP−1100」、「EXPERT NP−1102」(以上、東邦顔料工業社製、商品名)、「LFボウセイ CP−Z」、「LFボウセイ MZP−500」、「LFボウセイ CRFC−1」、「LFボウセイ M−PSN」、「LFボウセイ MC−400WR」、「LFボウセイ PM−300」、「LFボウセイ PM−308」(以上、キクチカラー社製、商品名)、「K−WHITE140」「K−WHITE Ca650」、「K−WHITE450H」、「K−WHITE G−105」、「K−WHITE #105」、「K−WHITE #82」(以上、テイカ社製、商品名)、「SHIELDEX C303」、「SHIELDEX AC−3」、「SHIELDEXC−5」(以上、いずれもW.R.Grace&Co.社製)、「サイロマスク52」、「サイロマスク52M」、「サイロマスク22MR-H」(富士シリシア社製)、「ノビノックスACE−110」(SNCZ社製・フランス)等を挙げることができる。
【0079】
上記防錆顔料成分(B)の配合量としては、水希釈性ポリアミン樹脂(A)不揮発分質量100質量部を基準として1〜100質量部である。好ましくは5〜90質量部、さらに好ましくは10〜80質量部の範囲内にあることが適している。防錆顔料成分(B)の配合量が100質量部を超えると、錆面上では形成された塗膜の防食性が逆に不足するため、優れた塗料組成物を得ることができない。
【0080】
<水希釈性エポキシ基含有樹脂(C)>
本発明において、水希釈性エポキシ基含有樹脂(C)としては、水などの水系媒体に分散又は溶解可能な、分子中に少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個のエポキシ基を有する樹脂である。その製造原料としては上記エポキシ樹脂(a1)の説明で列記したエポキシ基含有化合物を例示することができる。
【0081】
中でも上記樹脂(A)に含まれるアミノ基と反応し得るエポキシ基を多数有し、硬化性に優れた塗膜が得られる観点から水希釈性エポキシ基含有樹脂(C)はその成分の一部としてノボラック型エポキシ樹脂を含有していることが好適である。
【0082】
また、前記水希釈性エポキシ基含有樹脂(C)のエポキシ当量としては、第1成分(I)と第2成分(II)との相溶性の観点から水希釈性ポリアミン樹脂(A)におけるエポキシ樹脂(a1)よりも低いことが適しており、具体的には、少なくとも50、好ましくは100〜500の範囲内にあることが適している。
【0083】
また、上記水希釈性エポキシ基含有樹脂(C)の樹脂の重量平均分子量は、上記水希釈性ポリアミン樹脂(A)より低い。これにより、本発明組成物の第1成分(I)と第2成分(II)との相溶性がより一層向上すると考えられる。水希釈性エポキシ樹脂(C)の樹脂の重量平均分子量は、特に限定されるものではなく、具体的には500〜10000、好ましくは1000〜5000の範囲内にあることが適している。
【0084】
上記水希釈性エポキシ基含有樹脂(C)は、アニオン性、ノニオン性又はカチオン性の親水性基を有する分散安定剤もしくは界面活性剤により分散されてなるか、樹脂(C)自身がこれら親水性基を有していることが適しており、これらの存在により、水希釈性エポキシ基含有樹脂(C)は水系媒体へ良好に分散又は溶解されてなることができる。
【0085】
本明細書において、「水希釈性」とは、水などの水系媒体に自由に混和することを意味で用いる。「水分散性」なる用語は、樹脂が水などの水系媒体に分散した分散樹脂の平均粒子径が10nm以上のものであるという意味で用いる。「水溶性」なる用語は、樹脂が水などの水系媒体に分散した分散樹脂の平均粒子径が10nm未満、もしくは完全に水などの水系媒体に溶解するという意味で用いる。
【0086】
上記アニオン性の親水性基の例としては、酸性基が挙げられる。該酸性基の例としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、フェノール性水酸基等が挙げられる。
【0087】
前記ノニオン性の親水性基の例としては、ポリオキシアルキレン基、ポリグリセリン基等が挙げられる。
【0088】
前記カチオン性の親水性基の例としては、1〜3級のアミノ基、アンモニウム基、ピリジニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基等が挙げられる。
【0089】
上記水希釈性エポキシ基含有樹脂(C)は水系媒体中に分散されてなる場合、水希釈性エポキシ基含有樹脂(C)水分散体の平均粒子径としては、50〜1500nm、好ましくは200〜1000nmの範囲内にあることができる。平均粒子径がこの範囲内にあることにより、第1成分(I)及び第2成分(II)混合後の組成物の造膜性が優れるという効果がある。特に本発明では水性防食塗料組成物の造膜性の点から記水希釈性ポリアミン(A)の水分散体の平均粒子径よりも水希釈性エポキシ基含有樹脂(C)水分散体の平均粒子径が大きいことが適している。
【0090】
上記水希釈性エポキシ基含有樹脂(C)は市販品を使用することもできる。その具体例としては、ウォーターゾールシリーズ(DIC社製、商品名)、モデピクスシリーズ(荒川化学社製、商品名)、アデカレジン(ADEKA社製、商品名)等を挙げることができる。
【0091】
<水性防食塗料組成物>
本発明の水性防食塗料組成物は、水希釈性ポリアミン樹脂(A)及び防錆顔料成分(B)を含む成分を第1成分(I)とし、水希釈性エポキシ基含有樹脂(C)を含む成分を第2成分(II)とする2液型の塗料組成物である。
【0092】
本発明の水性防食塗料組成物において、第1成分(I)及び/又は第2成分(II)、好ましくは第1成分(I)が繊維状無機化合物(D)をさらに含むことが好ましい。
【0093】
理由は定かではないが繊維状無機化合物(D)によって造膜時における塗膜の収縮を抑制でき、特に錆残存面に対する付着性及び防食性の向上に効果がある。
【0094】
上記繊維状無機化合物(D)はその材質、製法、産地等には特に制限はなく、その具体例としては例えば、ガラス繊維、炭化珪素、窒化珪素、ウオラストナイト、セピオライト、クリソタイル、アモサイト、トレモライト、ゼオライト、カルシウムメタシリケート、ゾノライト、チタン酸カリウム、ロックウール、アルミニウムシリケート、カーボンファイバー、アラミドファイバー、ホウ酸アルミニウム、針状炭酸カルシウム、針状塩基性硫酸マグネシウム、ガラスフレーク、針状酸化亜鉛、アラゴナイト型軽質炭酸カルシウム、紡錘型軽質炭酸カルシウム、サチンホワイト等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0095】
本発明では上記繊維状無機化合物(D)としてアスペクト比が3.5以上、好ましくは4〜25の範囲内にあると尚よい。
【0096】
アスペクト比とは無機針状顔料の長軸径/短軸径の値であり、ここでいう短軸径および長軸径とは、電子顕微鏡観察により一定面積内に存在する100個の一次粒子各々の短軸径および長軸径を測長し、それぞれ平均して求めたものである。
【0097】
また、繊維状無機化合物(D)の平均繊維長としては5〜300μm、特に10〜200μmの範囲内がよい。本明細書において平均繊維長は、アスペクト比の測定において得られた長軸径の平均値とする。
【0098】
本発明において、繊維状無機化合物(D)の配合量としては、塗料中に含まれる樹脂の合計不揮発分100質量部を基準として0.1〜30質量部、好ましくは5〜25質量部の範囲内にあることが適している。
【0099】
また、上記第1成分(I)及び/又は第2成分(II)、好ましくは第2成分(II)はポリカルボジイミド化合物(E)をさらに含むことが好ましい。
【0100】
水性防食塗料組成物にポリカルボジイミド化合物(E)が含まれることによって、形成される塗膜の吸水率を下げる効果がある。
【0101】
かかるポリカルボジイミド化合物(E)としては分子中に−N=C=N−基を有する高分子であり、例えば、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネートの脱炭酸縮合反応によって製造することができる。カルボジイミド化触媒としては、スズ、酸化マグネシウム、カリウムイオン、18−クラウン−6、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレンオキシド等、及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。
【0102】
ジイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキシルジイソシアネート、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、2,4,6−トリイソプロピルフェニルジイソシアネート、1,12−ジイソシアネートドデカン、2,4,−ビス−(8−イソシアネートオクチル)−1,3−ジオクチルシクロブタン、n−ペンタン−1,4−ジイソシアネート等の多官能イソシアネート類の1種または2種以上を脱二酸化炭素縮合反応させることにより、カルボジイミド化し、水希釈性を付与するために末端の残存イソシアネート基を親水性基で封止したものである。
【0103】
封止する親水基としては、アルキルスルホン酸塩の残基、ジアルキルアミノアルコールの残基の四級塩、アルコキシ基末端を封鎖されたポリオキシアルキレンの残基などがあげられる。
【0104】
ポリカルボジイミド化合物としては、例えば、「カルボジライトV−02」、「カルボジライトV−04」、「カルボジライトV−02−L2」、「カルボジライトE−02」、「カルボジライトE−03A」、「Elastostab H01」(以上、製品名、日清紡ケミカル株式会社製)等の市販品を使用することができる。
【0105】
ポリカルボジイミド化合物(E)の配合量としては、水性防食塗料組成物に含まれる樹脂不揮発分100質量部を基準として、0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部の範囲内にあることが塗膜の吸水率及び防食性の点から適している。
【0106】
本発明の水性防食塗料組成物においては、着色顔料、体質顔料、顔料分散剤、有機溶剤、表面調整剤、消泡剤、増粘剤、硬化触媒、界面活性剤、沈降防止剤、軟化剤、可塑剤、反応性希釈剤、凍結防止剤、皮張り防止剤、pH調整剤、防腐剤等の通常の塗料用添加剤を第1成分(I)及び/又は第2成分(II)に配合することができる。
【0107】
これらのうち着色顔料としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、黄鉛、黄土、黄色酸化鉄、ハンザエロー、ピグメントエロー、クロムオレンジ、クロムバーミリオン、パーマネントオレンジ、アンバー、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン、ファストバイオレット、メチルバイオレットレーキ、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、ピグメントグリーン、ナフトールグリーン、アルミペーストなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合せて用いることができる。
【0108】
着色顔料の配合量としては、水性防食塗料組成物に含まれる樹脂不揮発分100質量部を基準として5〜90質量部、好ましくは10〜50質量部の範囲内にあることが適している。
【0109】
また、体質顔料としては、例えば、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、マイカ、カオリン、硫酸バリウム、亜鉛華(酸化亜鉛)などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合せて用いることができる。
【0110】
体質顔料の配合量としては、水性防食塗料組成物に含まれる樹脂不揮発分100質量部を基準として10〜100質量部、好ましくは20〜70質量部の範囲内にあることが耐水性の点から適している。
【0111】
本発明の水性防食塗料組成物は、第1成分(I)の水希釈性ポリアミン樹脂(A)、防錆顔料成分(B)及び必要に応じて含むその他の成分、並びに、第2成分(II)の水希釈性エポキシ基含有樹脂(C)及びを含む必要に応じて含むその他の成分が、水系媒体中に溶解ないしは分散している。水系媒体は、水を主成分とするものであり、水であってもよいし、水と有機溶剤との混合物であってもよい。
【0112】
有機溶剤としては従来公知のものを制限なく使用することができるが、特に沸点が300℃以下の有機溶剤の使用が好ましい。具体的には、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコ−ルモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート等を挙げることができる。中でも塗膜の長期の防食性の観点からは上記有機溶剤として沸点が200℃未満のものを使用することが適している。
【0113】
有機溶剤の含有量としては、水希釈性ポリアミン樹脂(A)不揮発分100質量部を基準として0.1〜30質量部、好ましくは3〜25質量部の範囲内にあることができる。
【0114】
また、本発明においては、形成塗膜の耐衝撃性、低温環境での造膜性等の点から、第1成分(I)及び/又は第2成分(II)が軟化剤を含んでいてもよい。かかる軟化剤としては、室温で液状のものが好適に用いられる。
【0115】
このような軟化剤としては、特に制限されるものではなく、例えば、フタル酸系軟化剤、脂肪酸系軟化剤、芳香族ポリカルボン酸系軟化剤、リン酸系軟化剤、ポリオール系軟化剤、エポキシ系軟化剤、ポリエステル系軟化剤;アクリル系モノマー又はそのオリゴマーなどの重合性軟化剤などが挙げられる。
【0116】
これらの中でも形成塗膜の防食性の観点からエポキシ系軟化剤が適している。エポキシ化軟化剤としては、例えば、上記エポキシ樹脂(A)の説明で列記した化合物、上記水希釈性ポリアミン樹脂(A)の説明で列記した如き化合物、エポキシ樹脂(a1)、アミノ基と反応可能な官能基を有する長鎖アルキル化合物(a4)の説明で列記した如き化合物に加えて、エポキシ化大豆油、エポキシブチルステアレート、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ2−エチルヘキシル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジイソデシル、エポキシトリグリセライド、エポキシ化オレイン酸オクチル、エポキシ化オレイン酸デシルなどを挙げることができる。上記軟化剤の配合量としては、水希釈性ポリアミン樹脂(A)及び水希釈性エポキシ基含有樹脂(C)の不揮発分合計質量100質量部を基準として、0.5〜10質量部、特に2〜8質量部の範囲内が適当である。
【0117】
本発明の水性防食塗料組成物は、保存時は、第1成分(I)と第2成分(II)の2液型で保存される。第1成分(I)に含まれる活性水素基と、第2成分(II)に含まれるエポキシ基とが、室温で容易に反応するためである。使用時に第1成分(I)と第2成分(II)とを公知の方法により混合することによって、塗装に用いる水性防食塗料組成物を調製することができる。
【0118】
上記第1成分(I)及び第2成分(II)の配合割合としては、第1成分(I)に含まれる活性水素基1当量に対して第2成分に含まれるエポキシ基が0.3〜1.5当量、好ましくは0.5〜1.2当量の範囲内にあることが適している。
【0119】
また、塗装に際して、必要に応じて脱イオン水で希釈して使用することができる。その際の粘度は、例えばスプレー塗装の場合では、フォードカップ粘度計No.4による測定(20℃)で、20〜60秒に調整することが好ましく、30〜50秒に調整することがより好ましい。この場合、固形分は、35〜65質量%程度であることが好ましく、40〜60質量%程度であることがより好ましい。
【0120】
本発明方法が適用される被塗物としては特に制限はない。通常は鉄鋼であるが、非鉄金属にも適用でき、具体的には、家屋、ビルなどの建築構造物;塔、橋梁、タンクなどの土木構造物;石油掘削プラント等の各種プラント大型構造物;ガードフェンス、産業機械などの屋外器具;及びこれらに、必要に応じて下塗り塗料、中塗り塗料を塗布したものに、上塗り塗料を塗布した塗装物などが挙げられる。
【0121】
特に被塗物として、新設の被塗物は勿論、錆が残存する基材による既設の被塗物に対してその効果を発揮することができる。
【0122】
本発明の水性防食塗料組成物による防食塗装を上記錆が残存した基材面に適用する場合、表面に生じた錆を予め除去してもよい。
【0123】
錆の除去方法としては制限はなく、例えば、ブラスト、スクレーパー、ワイヤブラシ等の手工具あるいはディスクサンダー、ワイヤーカップ、電動タガネ等の電動工具等が挙げられる。これらを単独で又は2種以上組み合わせて行うことができ、また、必要に応じて水洗処理を行ってもよい。
【0124】
特に本発明では、トータルの労力及び防食性の観点から、下地処理方法として、回転可能な円盤状台座に研磨粒子又はブラシを備えた工具を使用することが適している。
【0125】
かかる工具としては、ディスクサンダー、ワイヤーカップ等を挙げることができる。
【0126】
本発明方法において錆を簡易除去する場合は、防食塗装の対象となる基材表面から錆や旧塗膜を完璧に除去し全面を金属が露出する状態にする必要はなく、くぼみ部は勿論、表面部にも錆残存部と活膜(容易に剥離しない旧塗膜)が混在した状態としてもよい。
【0127】
下地処理後の錆発生の程度としては、特に限定されるものではなく、例えば、錆発生面積率が3%以上、特に10%以上の錆発生程度であっても本発明の効果を発揮することができる。
【0128】
錆発生面積率とは、被塗物の面積に対する錆発生部位の面積の百分率であり、下地処理後の写真を無作為に5箇所撮影し、各写真における錆発生部位の面積を算出し、平均することにより得ることができる。
【0129】
本発明の防食塗装方法において、水性防食塗料組成物による防食塗膜の乾燥理論膜厚としては、10〜200μm、好ましくは30〜150μmの範囲内にあることができる。
【0130】
本発明において、乾燥理論膜厚は、下記式によって算出する。
A=(B×NV)/(C×100)
A:理論乾燥膜厚(μm)
B:塗付量(g/m2
NV:塗料の不揮発分濃度(%)
C:塗料の比重(g/cm3
乾燥理論膜厚を求めるための塗料の比重は、K 7232−1986 4.2比重カップ法に準じて測定するものとする。
【0131】
上記水性防食塗料組成物は、エアスプレー、エアレススプレー、刷毛塗り、ローラーなどの従来公知の方法が採用できる。また、乾燥方法としては常温乾燥で1〜48時間、好ましくは2〜16時間が望ましく、必要に応じて強制乾燥または加熱乾燥させることも可能である。
【0132】
本発明の防食塗装方法では、上記防食塗料組成物を用いて形成された防食塗膜上に、該防食塗料組成物とは異なる上塗り塗料を単層で或いは複層で塗り重ねることができる。
【実施例】
【0133】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに説明する。ここで、『部』および『%』はそれぞれ『質量部』および『質量%』を意味する。
【0134】
<水希釈性ポリアミン樹脂(A)の製造>
製造例1
攪拌機、温度計、窒素導入管及び還流冷却機を取り付けたフラスコに、「jER828」商品名、三菱ケミカル社製、ビスフェノールA型樹脂、エポキシ当量190、数平均分子量375)3200部、ビスフェノールA(分子量228)を1700部、メチルイソブチルケトン900部、ベンジルジメチルアミン5.0部を仕込み、不揮発分当たりのエポキシ当量が2500g/当量になるまで120℃で反応させた。
【0135】
次に、3,3´−ジアミノジプロピルアミンのメチルイソブチルケトンによるケチミン化物590部を加え、120℃で1時間反応させた。
【0136】
その後、脱イオン水54部、ネオデカン酸グリシジルエステル380部を仕込み、100℃で2時間反応させた。
【0137】
その後、酢酸90部、脱イオン水70部を加えて内液を攪拌混合し、脱イオン水6500部を加えて水分散した後、減圧してメチルイソブチルケトンを除去し、脱イオン水にて固形分を調整し、乳白色で不揮発分が45%の、樹脂末端に1級アミノ基を有するアミノ基含有樹脂エマルション(A−1)を得た。
【0138】
エマルション(A−1)は樹脂の重量平均分子量が7000であり、平均粒子径は250nm、不揮発分当たりのアミン価は60mgKOH/gであった。
【0139】
製造例2〜8
配合組成を下記表1とする以外は同様にして水希釈性ポリアミン樹脂(A−2)〜(A8)を製造した。
【0140】
【表1】
【0141】
製造例9
攪拌機、温度計、窒素導入管及び還流冷却機を取り付けたフラスコに、「jER828」商品名、三菱ケミカル社製、ビスフェノールA型樹脂、エポキシ当量190、数平均分子量375)2438部、ビスフェノールA(分子量228)を1254部、メチルイソブチルケトン678部、ベンジルジメチルアミン3.8部を仕込み、固形分当たりのエポキシ当量が1800g/当量になるまで120℃で反応させた。
【0142】
次に、3,3´−ジアミノジプロピルアミンのメチルイソブチルケトンによるケチミン化物296部およびアミン化合物(a)78部を加え、120℃で1時間反応させた。
【0143】
その後、脱イオン水27部、ネオデカン酸グリシジルエステル188部を仕込み、100℃で2時間反応させた。
【0144】
その後、酢酸43部、脱イオン水45部を加えて内液を攪拌混合し、脱イオン水4918部を加えて水分散した後、減圧してメチルイソブチルケトンを除去し、乳白色で固形分が45%の、樹脂内部に1級アミノ基を有するアミノ基含有樹脂エマルション(A−9)を得た。
【0145】
エマルション(A−9)は樹脂の重量平均分子量が9000であり、平均粒子径は300nm、固形分当たりのアミン価は55mgKOH/gであった。
【0146】
(*)ケチミン化合物(a)
攪拌機、温度計、窒素導入管及び還流冷却機を取り付けたフラスコに、1,3−ジアミノプロパン74部およびメチルイソブチルケトン100部を仕込み、生成する水を共沸により除去しながら、ケトンが還流する温度にて12時間を行った後、減圧蒸留で溶剤を除去することによりケチミン化合物(a)を得た。
【0147】
<水性防食塗料組成物の製造>
実施例1
容器に、アミノ基含有樹脂エマルション(A−1)222部(不揮発分100部)、防錆顔料(B−4)50部、防錆顔料(B−5)20部、ガラス繊維(*)20部、酸化チタン40部、タルク60部、エチレングリコールモノブチルエーテル20部を配合し、攪拌混合することにより主剤成分を得た。別の容器に、エポキシ樹脂エマルション(C−1)を35.2部(不揮発分17.6部)、ポリカルボジイミドエマルション7.5部(不揮発分3部)添加し、攪拌混合して水性防食塗料組成物(I−1)を得た。
【0148】
実施例2〜37及び比較例1〜5
配合組成を下記表2とする以外は実施例1と同様にして水性防食塗料組成物(I−2)〜(I−42)を得た。得られた各塗料に対して下記方法、基準にて評価試験を行った。結果を表2に併せて示す。
尚、表2の配合量は不揮発分表示である。
【0149】
<錆残存面上に塗装した試験板の作成>
幅70mm×長さ150mm×板厚み3mmの軟鋼板をショットブラストしたものを、千葉県千倉町の太平洋沿岸(離岸距離30m)にて4ヶ月、南向き30°の角度にて開放ばくろ試験を行い、錆発生面積が100%の錆鋼板を作製し、ワイヤカップにて錆鋼板の表面を削り、簡易素地調整板を得た。当該簡易素地調整板の錆発生面積は85%であった。
【0150】
次いで、素地調整板の板全面に各水性防食塗料組成物(I−1)〜(I−42)を、理論乾燥膜厚が100μmとなるようにエアースプレー塗装をし、23℃で24時間乾燥させた。次いで、弱溶剤可溶形エポキシ樹脂系中塗塗料「セラテクトマイルド中塗り(E)」(商品名、関西ペイント社製、主剤/硬化剤質量比17/1)を乾燥膜厚が30μmとなるようにスプレー塗装し、23℃で24時間乾燥させた。次いで、低汚染形弱溶剤可溶イソシアネート硬化ポリウレタン樹脂上塗塗料「セラテクトUマイルド上塗」(商品名、関西ペイント社製、主剤/硬化剤質量比6/1)を乾燥膜厚が25μmとなるようにスプレー塗装し、23℃、湿度50%恒温室内で7日間養生し、錆残存面上に塗装した試験塗板を得た。
【0151】
<軟鋼板面上に塗装した試験板の作成>
幅70mm×長さ150mm×板厚み3mmの軟鋼板をショットブラストした錆が残存していないものを基材面とし、該基材面の全面に各水性防食塗料組成物(I−1)〜(I−42)を、理論乾燥膜厚が100μmとなるようにエアースプレー塗装をし、23℃、湿度50%恒温室内で7日間養生し、軟鋼板面上に塗装した試験塗板を得た。
【0152】
【表2】
【0153】
【表3】
【0154】
【表4】
【0155】
(*)防錆顔料(B−1):「LFボウセイ MZP−500」、商品名、キクチカラー社製、リン酸マグネシウム、
(*)防錆顔料(B−2):りん酸亜鉛四水和物、米山薬品社製、試薬、リン酸亜鉛、
(*)防錆顔料(B−3):「EXPERT NP−1000」東邦顔料工業社製、商品名、リン酸カルシウム、
(*)防錆顔料(B−4):「K−WHITE G-105」テイカ社製、商品名、トリポリリン酸二水素アルミニウムの酸化マグネシウム処理物、酸化マグネシウム処理量15%、
(*)防錆顔料(B−5):「サイロマスク22MR−H」富士シリシア化学社製、商品名、マグネシウムイオン交換シリカ、
(*)防錆顔料(B−6):「SHIELDEX C303」W.R.Grace & Co.社製、商品名、カルシウムイオン交換シリカ、
(*)防錆顔料(B−7):バナジン酸カルシウム、
(*)繊維状無機化合物:ガラス繊維、アスペクト比20、平均繊維長80μm
(*)エポキシ樹脂エマルション(C−1):ノニオン性フェノールノボラック型エポキシ樹脂エマルション、不揮発分50%、不揮発分あたりのエポキシ当量200、重量平均分子量1200、平均粒子径550nm、
(*)エポキシ樹脂エマルション(C−2):ノニオン性ビスフェノールA型エポキシ樹脂エマルション、不揮発分50%、不揮発分あたりのエポキシ当量200、重量平均分子量1200、平均粒子径550nm、
(*)エポキシ樹脂エマルション(C−3):エポキシ樹脂エマルション(C−3):ノニオン性ノボラック型エポキシ樹脂エマルション、不揮発分50%、不揮発分あたりのエポキシ当量200、重量平均分子量21000、平均粒子径550nm、
(*)ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル:エポキシ当量300、水溶性
(*)ポリカルボジイミドエマルション:不揮発分40%、カルボジイミド当量365。
【0156】
(*)貯蔵安定性
実施例及び比較例で得られた各水性塗料において、第1成分及び第2成分をそれぞれ40℃の恒温室に密閉貯蔵し、60日間貯蔵した後の状態を次の基準により評価した。
S:変化なし、
A:極めて僅かに凝集が認められるが、試料を手攪拌すると直ぐに貯蔵前の状態に戻り、問題なし、
B:凝集が認められ、試料を手攪拌しても貯蔵前の状態に戻らない。
C:凝集ブツが著しく認められる。
(*)点錆抑制性
実施例及び比較例で得られた各水性防食塗料を錆が残存した簡易素地調整板に乾燥膜厚100μmとなるように塗装し、室温乾燥に至ったときの塗膜を目視にて判定し、下記基準で評価した。
S:錆の発生が確認できない、
A:点錆がわずかに発生し、その程度は、10cm2あたり平均5個未満、
B:点錆の発生が認められ、その程度は、10cm2あたり平均5〜20個、
C:著しい点状あるいは流れ跡状の錆の発生が認められる。
【0157】
(*)防食性
錆残存面上並びに軟鋼板面上に各水性防食塗料組成物が塗装された各試験塗板に対し、JIS K 5621に規定されている5%食塩水を使用した複合サイクル腐食試験を900時間実施し、試験塗板の一般部とカット部の表面観察により下記基準にて評価した。
(一般部)
S:さびの発生が認められない、
A:試験体に1〜5点の直径5mm未満のさび発生が認められる、
B:試験体に1〜5点のさび発生が認められかつその大きさが5mmを超える、またはさびの大きさに関係なく6〜15点のさび発生が認められる、
C:試験体に15点以上のさび発生が認められる。
(カット部)
S:カット部より進行するさび、フクレの最大幅がカットをまたいで10mm以下、
A:カット部より進行するさび、フクレの最大値がカットをまたいで10mmを超え20mm以下、
B:カット部より進行するさび、フクレの最大値がカットをまたいで20mmを超え30mm以下、
C:カット部より進行するさび、フクレの最大値がカットをまたいで30mmを超える。
(*)吸水率
ポリプロピレン板(300×100×5mm)上に、試料を乾燥膜厚が40μmになるように均一に塗装し、気温23℃、相対湿度60%の条件下で7日間乾燥させ、塗膜を得る。その後、該塗膜から任意に3cm四方にフリー塗膜を切り取り、20℃の脱イオン水に24時間没水させた後、表面の水滴を拭き取った後すみやかに秤量し、下記式に従って、吸水率を測定する。
吸水率(%)=〔(b−a)/a〕×100
但し、a:没水前のフリー塗膜の質量(g)
b:没水後のフリー塗膜の質量(g)。