特許第6957488号(P6957488)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6957488ショックアブソーバのための2方向緩動開放バルブ機構
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6957488
(24)【登録日】2021年10月8日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】ショックアブソーバのための2方向緩動開放バルブ機構
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/46 20060101AFI20211021BHJP
   F16F 9/34 20060101ALI20211021BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20211021BHJP
【FI】
   F16F9/46
   F16F9/34
   F16F9/32 L
【請求項の数】14
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2018-543613(P2018-543613)
(86)(22)【出願日】2017年2月21日
(65)【公表番号】特表2019-505744(P2019-505744A)
(43)【公表日】2019年2月28日
(86)【国際出願番号】EP2017053894
(87)【国際公開番号】WO2017144445
(87)【国際公開日】20170831
【審査請求日】2020年2月19日
(31)【優先権主張番号】16156682.3
(32)【優先日】2016年2月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509343149
【氏名又は名称】オーリンス・レイシング・エービー
【氏名又は名称原語表記】OEHLINS RACING AB
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】ホベン、アルノルド
【審査官】 杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0341540(US,A1)
【文献】 特開平10−073141(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/170303(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/46
F16F 9/34
F16F 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショックアブソーバのためのバルブ機構(1)であって、前記バルブ機構が、
第1ポート(7)および第2ポート(8)を備えるバルブハウジング(2)と、
前記第1ポートおよび/または前記第2ポートと流体連通するパイロットチャンバ(3)であって、前記パイロットチャンバ内の油圧によってパイロット圧(Pp)が規定されるパイロットチャンバ(3)と、
前記バルブハウジング内に軸方向に移動可能に配置された主バルブ部(4)であって、前記主バルブ部(4)に作用する前記パイロット圧(Pp)に応じて前記第1ポート(7)と前記第2ポート(8)との間の主流体フロー(30)を制限するために、主バルブ座部(9)と相互作用するように配置された主バルブ部(4)と、を備え、
ここにおいて、
圧縮行程中は、前記主流体フロー(30)が第1制限部(R1)および協働して直列的に配置された第2制限部(R2)で制限され、反発行程中は、前記主流体フロー(30)が第3制限部(R3)および協働して直列的に配置された第4制限部(R4)で制限されるように、前記主バルブ座部(9)が第1圧縮行程位置と第2反発行程位置との間で移動可能であり、前記主バルブ部(4)が、径方向内壁(46)および径方向外壁(47)を有する幾何学的に規定された周方向アパーチャ(45)をさらに備え、前記径方向内壁(46)が前記第4制限部(R4)の一部を形成し、前記径方向外壁(47)が前記第3制限部(R3)の一部を形成する、
バルブ機構。
【請求項2】
圧縮流体フロー方向を考慮して、前記第2制限部(R2)に対して上流に前記第1制限部(R1)が配置され、前記第1制限部(R1)は、少なくとも初期行程において少なくとも部分的に開かれたとき、前記第2制限部(R2)のオリフィス(OR2)よりも小さいオリフィス(OR1)を有する、請求項1に記載のバルブ機構。
【請求項3】
反発流体フロー方向を考慮して、前記第4制限部(R4)に対して上流に前記第3制限部(R3)が配置され、前記第3制限部(R3)は、少なくとも初期行程において少なくとも部分的に開かれたとき、前記第4制限部(R4)のオリフィス(OR4)よりも小さいオリフィス(OR3)を有する、請求項1〜2のいずれか一項に記載のバルブ機構。
【請求項4】
前記第2制限部(R2)と直列に配置された第5制限部(R1’)を備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載のバルブ機構。
【請求項5】
前記第5制限部(R1’)は、前記バルブハウジング(3)に対する前記主バルブ部(4)の軸方向位置とは独立した一定のオリフィス(OR1’)を有する、請求項4に記載のバルブ機構。
【請求項6】
前記第4制限部(R4)と直列に配置された第6制限部(R3’)を備える、請求項1〜5のいずれか一項に記載のバルブ機構。
【請求項7】
前記第6制限部(R3’)は、前記バルブハウジング(3)に対する前記主バルブ部(4)の軸方向位置とは独立した一定のオリフィス(OR3’)を有する、請求項6に記載のバルブ機構。
【請求項8】
前記第6制限部(R3’)は、前記主バルブ部内の前記周方向アパーチャ(45)への少なくとも1つの開口である、請求項に記載のバルブ機構。
【請求項9】
少なくとも初期行程において少なくとも部分的に開かれたとき、前記第3制限部が前記第4制限部(R4)のオリフィス(OR4)よりも小さいオリフィス(OR3)を有するように、前記第3制限部の前記周方向オリフィスの少なくとも一部を遮断するための幾何学的に規定された周方向遮断手段をさらに備える、請求項1〜のいずれか一項に記載のバルブ機構。
【請求項10】
前記遮断手段が、径方向外壁(47)の包絡外面を遮断する軸方向に延びる壁である、請求項に記載のバルブ機構。
【請求項11】
前記遮断手段が、前記バルブ座部(9)の一体部分を形成する、請求項9または10に記載のバルブ機構。
【請求項12】
前記遮断手段が、別個の遮断部(10)を構成する、請求項9または10に記載のバルブ機構。
【請求項13】
前記第1制限部(R1)、前記第2制限部(R2)、前記第3制限部(R3)、および/または前記第4制限部(R4)のオリフィス(OR1、OR2、OR3、OR4)のうちの少なくとも一つは、前記バルブハウジング(3)に対する前記主バルブ部(4)の軸方向位置を用いて制御される、請求項1〜5のいずれか一項に記載のバルブ機構。
【請求項14】
車両懸架のための衝撃吸収装置であって、
少なくとも1つの作業チャンバ(101、102)と、
前記少なくとも1つの作業チャンバへの/からの減衰媒体流体のフローを制御し、前記衝撃吸収装置の減衰特性を制御するための、請求項1〜13のいずれか一項に記載のバルブ機構と、を備えた衝撃吸収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、バルブ機構の分野に関する。特に本発明は、ショックアブソーバ内の減衰媒体のフローを制御するためのバルブ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、パイロットバルブを含むショックアブソーバの技術分野内において、ショックアブソーバの減衰媒体充填チャンバにおけるピストンの往復運動中の圧縮チャンバと反発チャンバとの間の減衰媒体のフローを制御するために、圧力調整器、つまりバルブ機構が使用される。ピストンは、ピストンロッドを介してホイールまたはシャーシに接続されるのに対し、チャンバは、ピストンが接続されていないホイールまたはシャーシのうちの一方に接続される。圧縮行程中、ピストンは、圧縮チャンバに向かう方向に軸方向に移動し、それによって圧縮チャンバ内の減衰媒体を加圧する。反発行程中、ピストンは反発チャンバに向かって、つまり反対方向に軸方向に移動し、それによって反発チャンバ内の減衰媒体を加圧する。ショックアブソーバの機能に従い、加圧された減衰媒体は、加圧されたチャンバから他のチャンバへ、つまり圧縮チャンバから反発チャンバへ、またはその逆に移される必要がある。ピストン、ひいてはショックアブソーバの減衰効果を得るために、つまりホイールとシャーシとの間の相対運動を減衰させるために、減衰媒体のフローは制御される必要がある。
【0003】
ショックアブソーバにおける減衰媒体のフロー内の圧力の制御は、パイロット制御バルブによって生み出される圧力に依存する。ショックアブソーバの圧力調整器には、座部に対して作用するワッシャ、コーン、ポペットまたはシムのような軸方向に移動可能または偏向可能なバルブ部が通常設けられる。圧力制御は、平衡つまり力のバランス、例えば一方向においてバルブ部に作用する圧力および/またはフローの力と、反対方向においてバルブ部に作用するばね力、摩擦力またはパイロット圧力のうちの1つ以上のような反作用または反対の力との間の平衡によって達成される。圧力および/またはフローの力が反対または反作用の力よりも大きくなるように、ショックアブソーバのピストンが一定の速度で移動するとき、可動バルブ部は座部から離れるように強制され、それによってフロー通路を開く。よって可動バルブ部は、圧力調整器の調整領域に作用する圧力によって生み出されるフローの関数として規定される行程で開くよう強制される。
【0004】
上に記載した圧力調整式の伝統的なバルブ機構は一般に、圧力の閾値に達したとき、バルブ部が開かれ、圧縮チャンバと反発チャンバとの間の減衰媒体のフローが独特な方法で劇的に増大するという欠点を有する。このことは所望されるほど滑らかではない減衰特性を与える。代わりに、このような減衰は、初期のオーバーシュートやその後の振動のような不安定さを通例引き起こす動力として作用する、角を有する鋭動開放(sharp opening)を有する。
【0005】
EP0942195B1に示されているような最先端のショックアブソーバのためのバルブ機構は、緩動開放(soft opening)を可能にするバルブ構造を有し、所望の減衰特性を提供する。しかしながら、この解決策は一方のフロー方向には緩動開放を提供するものの、反対方向の減衰フローは全く望ましいものではない。よって、この解決策は、1方向バルブにおいては良好に働くが、2方向バルブにおいては所望の減衰特性を提供しない。
【0006】
したがって、改良された減衰特性を有するショックアブソーバにおける使用のための2方向バルブ機構の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、従来技術よりも滑らかな改良された減衰特性を提供する改良された2方向バルブ機構を提供することである。
【0008】
本発明は、2方向バルブ機構が緩動開放特性を有するためには、反発行程と比較して圧縮行程において異なる制限境界面をバルブ機構が必要とするという本発明者の洞察に基づいている。この実現はまた、圧縮圧力領域と反発圧力領域との間の領域比が、2つの領域の和がパイロット圧領域に等しいという前提条件なしに設定され得るという驚くべき効果につながった。言い換えれば、圧縮圧力領域は反発圧力領域を減少させることなく増大させ得るし、逆もまた同様である。このことは、減衰特性がさらに改良され得るため、利点である。
【0009】
さらに本発明者は、反発フロー内に協働して直列的に配置された2つの制限部を設けることによって、反発行程においても緩動開放を得ることが可能であることを認識した。
【0010】
上で言及した目的は、ショックアブソーバのためのバルブ機構を通じて実現され、このバルブ機構は、第1ポートおよび第2ポートを備えるバルブハウジングと、第1ポートおよび/または第2ポートと流体連通するパイロットチャンバとを備え、パイロット圧は、パイロットチャンバ内の油圧によって規定される。この機構はさらに、バルブハウジング内に軸方向に移動可能に配置された主バルブ部を備え、主バルブ部は、主バルブ部に作用するパイロット圧に応じて第1ポートと第2ポートとの間の主流体フローを制限するために、主バルブ座部と相互作用するように配置される。また圧縮行程中は、第1制限部および協働して直列的に配置された第2制限部で主流体フローが制限され、反発行程中は、第3制限部および協働して直列的に配置された第4制限部で主流体フローが制限されるように、主バルブ座部が第1圧縮行程位置と第2反発行程位置との間で移動可能である。
【0011】
これにより、圧縮行程中は、流体的に結合され直列的に配置された2つの協働する径方向変位制限部によって有効にされる緩動開放を有し、反発行程中は、流体的に結合され直列的に配置された第3および第4の協働する径方向変位制限部によって有効にされる緩動開放を有するバルブ機構が提供される。よって、圧縮行程において使用される2つの協働する第1および第2制限部とは異なる通路を反発フローに通過させることにより、圧縮行程中の緩動開放を達成し得る。さらに、第3および第4制限部は、反発行程における緩動開放を達成する。反発フローが圧縮と同じ制限部を通過するが反対方向である場合、減衰特性は所望の要件を満たさないであろう。
【0012】
また、この解決策では、パイロット圧領域を変更することなく、圧縮領域と反発領域との間の領域比を調整し得る。主バルブ座が固定されている解決策では、圧縮加圧領域と反発加圧領域との和が常にパイロット加圧領域に等しい。しかしながら、可動主バルブ部を有する場合、この和がパイロット加圧領域よりも大きい可能性がある。これにより、バルブ機構は、圧縮行程と反発行程との両方において、一方の力を損なうことなく所望の減衰力を生成するように形成され得る。
【0013】
本出願の文脈では、いかなる「協働する」制限部も、何らかの方法で互いに依存し合い、ともに働くと理解されるべきである。例えば、2つの協働する制限部のオリフィスは、行程長のような同じパラメータに依存し得る。さらに本出願の文脈において、例えば「直列的に配置された」または「直列に配置された」2つの制限部は、一方の制限部が他方の制限部の上流に設けられると理解されるべきである。すなわち、流体は最初に一方の制限部を通過し、次いで他方の制限部を通過する、つまり、流体は2つの平行な制限部内に制限されない。
【0014】
一実施形態において、第1制限部は、圧縮流体フロー方向を考慮して、第2制限部に対して上流に配置される。さらに、第1制限部は、少なくとも初期行程において少なくとも部分的に開かれたとき、第2制限部のオリフィスよりも小さいオリフィスを有する。それにより、流体は最初に第1制限部によって制限され、続いて第2制限部によって制限されており、このことは圧縮工程中のダンパーの所望の緩動開放特性に寄与する。これにより、第1および第2制限部が初期行程において少なくとも部分的に開いているとき、第1制限部は第2制限部よりも常に小さくなっており、このことも、圧縮工程中のダンパーの所望の緩動開放特性に寄与する。
【0015】
別の一実施形態において、第1および第2制限部は、少なくとも部分的に周方向制限部として形成される。一実施形態において、第1制限部は、第2制限部に対して径方向内側に配置される。これにより、各制限部が径方向に変位され周方向に形成されるとき、第1制限部のオリフィスは、少なくとも部分的に開かれたとき、第2制限部のオリフィスよりも常に小さくなる。
【0016】
別の一実施形態において、反発流体フロー方向を考慮して、第4制限部に対して上流に第3制限部が配置され、第3制限部は、少なくとも初期行程において少なくとも部分的に開かれたとき、第4制限のオリフィスよりも小さいオリフィスを有する。それにより、流体は最初に第3制限部によって制限され、続いて第4制限部によって制限されており、このことは反発工程中のダンパーの所望の緩動開放特性に寄与する。さらに、第3および第4制限部が初期行程において少なくとも部分的に開いているとき、第3制限部は第4制限部よりも小さくなっており、このことも反発工程中のダンパーの所望の緩動開放特性に寄与する。
【0017】
別の一実施形態において、バルブ機構は第2制限部と直列に配置された第5制限部を備える。一実施形態において、第5制限部は第1制限部と平行に配置される。一実施形態において、第5制限部は第1制限部に隣接して配置される。もちろん、これらの実施形態のすべても組み合わせ得る。
【0018】
一実施形態において、第5制限部は、バルブハウジングに対する主バルブ部の軸方向位置に依存しない一定のオリフィスを有する。これにより、いつでも既定のオリフィスを有する第5制限部が達成される。よって第5制限部のオリフィスは行程に依存しない。一実施形態において、第1制限部が少なくとも部分的に開かれているとき、第1および第5制限部が共通制限部として作用するように、第5制限部は第1制限部に隣接して配置される。これにより、第1および第5制限部の合計オリフィスは、行程の開始時においては第2制限部の制限オリフィスよりも大きくなり得るが、より大きな行程においては第2制限部オリフィスよりも小さくなり得る。これにより、圧縮行程における合計制限特性は、圧縮工程におけるダンパーの所望の緩動開放特性に寄与するように制御され得る。
【0019】
別の一実施形態において、バルブ機構は第4制限部と直列に配置された第6制限部を備える。一実施形態において、第6制限部は第3制限部と平行に配置される。一実施形態において、第6制限部は第3制限部に隣接して配置される。もちろん、これらの実施形態のすべても組み合わせ得る。
【0020】
一実施形態において、第6制限部はバルブハウジングに対する主バルブ部の軸方向位置に依存しない一定のオリフィスを有する。これにより、いつでも既定のオリフィスを有する第6制限部が達成される。よって、第6制限部のオリフィスは行程に依存しない。一実施形態においては、第3制限部が少なくとも部分的に開かれているとき、第3および第6制限部が共通制限部として作用するように、第6制限部は第3制限部に隣接して配置される。これにより、第3および第6制限部の合計オリフィスは、行程の開始時においては第4制限部の制限オリフィスよりも大きくなり得るが、より大きな行程においては第2制限部オリフィスよりも小さくなり得る。これにより、圧縮行程における合計制限特性は、反発工程におけるダンパーの所望の緩動開放特性に寄与するように制御され得る。
【0021】
別の一実施形態において、主バルブ部は、径方向内壁および径方向外壁を有する幾何学的に規定された周方向アパーチャ(circumferential aperture)をさらに備え、径方向内壁が第4制限部の一部を形成し、径方向外壁が第3制限部の一部を形成する。これにより、主バルブ部の形状によって2つの協働する制限部が達成され得、それによって、それらの協働も達成されるが、これはバルブ座部に対して主バルブ部の軸方向位置を移動させることによって、それらがともに移動され得るためである。
【0022】
別の一実施形態において、第6制限部は、前記主バルブ部の前記周方向アパーチャへの少なくとも1つの開口である。これにより、行程に依存しなくてもよい単純な形で反発フローを達成し得る。
【0023】
別の一実施形態においては、少なくとも初期行程において少なくとも部分的に開かれたとき、第3制限部が第4制限部のオリフィスよりも小さいオリフィスを有するように、バルブ機構が、第3制限部の周方向オリフィスの少なくとも一部を遮断するための幾何学的に規定された周方向遮断手段をさらに備える。初期行程とは、行程がゼロよりも大きいが全行程長ではないときと解釈されるものとする。全行程長を通して、第3制限部は、第4制限部のオリフィスよりも小さいオリフィスを有し得る。しかしながら、緩動開放のために、所望の減衰効果に寄与するのは初期の行程長だけである。したがって、より大きい行程においては、第3制限部は第4制限部のオリフィスよりも大きいオリフィスを有し得る。
【0024】
一実施形態において、遮断手段は、第3オリフィスが行程に対して直線を超えて増大するように形成される。
【0025】
一実施形態においては、バルブ座部の基部からの距離が増大するにつれて寸法が減少する遮断部によってこれが達成される。一実施形態において、対応する中間開口は、バルブ座部の基部からの距離が増大するにつれて寸法が増大する。これにより遮断手段は、行程の下部において最も減衰している流体を遮断し得、行程が増大するにつれて増大したフローを可能にし得る。よって第3制限部のオリフィスは、行程長に対して直線を超えて増大する。
【0026】
別の一実施形態において、第3および第4制限部は、少なくとも部分的に周方向制限部として形成される。一実施形態において、第4制限部は第3制限部に対して径方向内側に配置される。これにより、各制限部が径方向に変位され周方向に形成されるとき、第3制限部のオリフィスは、少なくとも部分的に開かれたとき、第4制限部に対して径方向外側に設置されているにも関わらず、第4制限部のオリフィスよりも小さくなるように遮断手段によって遮断され得る。
【0027】
一実施形態において、遮断手段は、例えば突起または壁であってもよい。
【0028】
別の一実施形態において、遮断手段は、第3制限部の一部を形成する前記主バルブ部の径方向外壁の包絡外面を遮断する軸方向に延びる壁である。
【0029】
別の一実施形態においては、遮断手段がバルブ座部の一体部分を形成する。これにより、別個のユニットである場合よりも少ない部品で遮断部を達成し得る。
【0030】
別の一実施形態においては、遮断手段が別個の遮断部を構成する。別の一実施形態において、遮断部は付勢部を用いてバルブ座部に当接して保持される。これにより遮断部は定位置に保持され得、制御されない形で移動することを回避し得る。
【0031】
別の一実施形態において、可動主バルブ座部はワッシャまたはシムである。これにより、可動バルブ座部を低コストで提供することができる。可動バルブ座部がワッシャである実施形態においては、約0.5〜1.0mm、好ましくは約0.7mmの厚さを有し得る。可動バルブ座部がシムである実施形態においては、約0.1〜0.49mm、好ましくは約0.3mmの厚さを有し得る。
【0032】
一実施形態において、可動主バルブ座部はシムである。一実施形態において、主バルブ部を移動させることなく減衰媒体のフローを可能にするように、シムは、圧縮行程中にその径方向外側端が所定の閾値を超える圧力で曲がることを可能にする可撓性を有する。
【0033】
可動バルブ部であるシムを有することの利点は、圧縮行程中に可動バルブ部に高圧の圧力パルスが加えられたときに、主バルブ部を移動させる必要なしに、減衰媒体が第2制限部を通過することを可能にするように、可動バルブ部の径方向外側端が曲がり得ることである。これにより、主バルブ部を移動させる必要なしに、短く激しい圧力上昇を処理し得る。このことは減衰特性の滑らかさをさらに増大させる。
【0034】
一実施形態において、可動主バルブ座部は、第1および第2制限部が閉じられたときに、シムの外端が少なくともわずかには曲げられるように、バルブハウジングに対して張力をかけたシムである。これにより、可動バルブ部が可撓性を有するとき、可撓性を通して可動バルブ部内の任意の不規則性が補償され得る。よって、公差範囲は生成中に増大し得る。
【0035】
一実施形態において、可動バルブ座部は、反発行程中に周方向アパーチャの上部を閉じるワッシャまたはシムである。これにより可動バルブ座部は、いかなる主流体が第1および第2制限部を過ぎて流れることをも防止し得る。
【0036】
別の一実施形態において、可動バルブ座部は、主バルブハウジングと噛み合う少なくとも3つの径方向指向突起(radial steering projection)を備えるワッシャまたはシムである。これにより、ワッシャ/シムは、ハウジングと噛み合うが可動主バルブ部の非軸方向移動を防止するように設計され得る。ワッシャ/シムは、ワッシャの動きを実質的に軸方向の移動に制限するような3つの指向突起を備える。また、その中心軸の周りの回転移動も許容される。これにより、いかなる「引出し挙動」も低減され得る、つまり、ハウジングに対してワッシャが傾斜してロックされることが防止され得、それにより、いつでも軸方向に移動可能となる。
【0037】
別の一実施形態においては、ワッシャ/シムにおける少なくとも3つの径方向指向突起の間の空間が、圧縮行程中の主流体フローを可能にするためのポートを形成する。
【0038】
一実施形態において、指向突起(steering projection)および中間ポートは、突起のいずれかおよびワッシャの中心を通る直線が中間ポートをも通るように配置される。これにより、ワッシャの直径に沿った2つの正反対の突起が存在しないため、ワッシャ/シムが傾斜している(つまり、その中心軸に垂直な軸の周りを回転する)場合、詰まりが防止される。
【0039】
別の一実施形態において、遮断手段は、複数の遮断部および中間開口を備える。例えば遮断手段は、2〜10個の遮断部および中間開口を備え得る。
【0040】
別の一実施形態においては、第1制限部、第2制限部、第3制限部および/または第4制限部のオリフィスが、前記バルブハウジングに対する前記主バルブ部の軸方向位置を用いて制御される。これにより、各制限部が共通の方法で制御され、単一の制御源によって協働的に制御可能となる。
【0041】
一実施形態において、可動主バルブ座部は受動部材であり、その軸方向位置は流体圧力および/または主バルブ部の位置によって制御される。
【0042】
別の一実施形態において、第1制限部および第2制限部は、主バルブ座部が反発行程位置にあるときに閉じられる。これにより、第1および第2制限部は反発フローに影響を与えないが、第3および第4制限部は反発フローを制限する。
【0043】
一実施形態において、第3および第4制限部は、主バルブ座部が圧縮行程位置にあるときに閉じられる。これにより、第3および第4制限部は圧縮フローに影響を与えず、代わりに第1および第2制限部のみが圧縮フローを制限する。
【0044】
一実施形態において、主バルブ座部は常に、主バルブ部とハウジングのいずれかに対して密接して配置されているか、または主バルブ部とハウジングとの間に挟まれている。これにより、第1および第2制限部および/または第3制限部は、異なるフローで閉じられる。
【0045】
一実施形態において、主バルブ座部は、圧縮行程中、常に主バルブ部に対して密接して配置される。
【0046】
一実施形態において、主バルブ座部は、反発行程中、常にハウジングに対して密接して配置される。
【0047】
一実施形態においては、圧縮行程中に第1ポートからの圧力が閾値圧力値を下回ると、主バルブ座部が主バルブ部とハウジングとの間に挟まれる。さらに、圧縮行程において第1ポートからの圧力が閾値圧力値を上回るとき、主バルブ座部は主バルブ部に対して密接して配置されるが、バルブハウジングからは持上げられる。最後に、反発行程中、主バルブ座部は、第2ポートからの圧力レベルにかかわらず、ハウジングに対して密接して配置される。
【0048】
別の一実施形態において、第1制限部、第2制限部および/または第3制限部のオリフィスは、バルブハウジングに対する主バルブ部の軸方向位置を用いて制御される。
【0049】
これにより、各制限部は、主バルブ部の軸方向位置を制御することによって制御され得る。これは、例えばパイロット圧、ソレノイドのようなアクチュエータ、および/またはばね機構から生成された組み合わせの力によって達成され得る。
【0050】
別の一実施形態において、反発行程中は、可動主バルブ座部と主バルブ部との間の開口によって主流体フローが制限され、圧縮行程中は、可動主バルブ座部と主バルブハウジングとの間の開口によって主流体フローが制限される。
【0051】
別の一実施形態においては、バルブハウジングおよび可動主バルブ座部のうちの少なくとも一方が、径方向内壁および径方向外壁を有する幾何学的に規定された周方向アパーチャをさらに備え、径方向内壁が第1制限部の一部を形成し、径方向外壁が、第2制限部の一部を形成する。
【0052】
これにより、径方向内壁および外壁は、圧縮行程において緩動開放を達成する2つの協働する制限部を構成する。
【0053】
一実施形態において、圧縮行程中の主流体フローを制限するように、バルブハウジング内に周方向アパーチャが形成され、第1制限部および第2制限部を形成するため周方向アパーチャの径方向内壁および径方向外壁と協働するよう可動バルブ座部が寸法決めされ、適合される。
【0054】
これにより、可動バルブ座部は、たとえばワッシャのような単純な部材であり得る。それにより、可動バルブ座部を生産するためのコストを低く抑え得る。さらにバルブハウジングは、既にかなり複雑な形状を有するため、例えば回転旋盤もしくはフライスカッターのような切削作業機械または類似のものにおいて形成されることになり、次いで追加の周方向アパーチャを形成することは、可動バルブ座部内にアパーチャ(aperture)を作るほどにはコストがかからない。よって、全体的により安価な解決策が提供され得る。
【0055】
別の一実施形態において、バルブ機構は、制御バルブ部に作用する作動力に応じて主バルブ部に対して軸方向に移動可能な制御バルブ部をさらに備え、制御バルブ部は、付勢部を用いて作動力の反対方向に弾性的に負荷をかけられ、制御バルブ部と主バルブ部との間の境界面は、第1ポートと第2ポートとの間の減衰媒体のブリードフロー(bleed flow)を制限する開口を備える。
【0056】
本出願の文脈において、ブリードフローは、主流体フローに平行な減衰媒体のフローとして理解されるものである。さらにブリードフローは、最大主流体フローよりも実質的に低いフローである。
【0057】
これにより、この機構は、減衰媒体の第1段階フローであり得る、制御された可変ブリードフローを可能にし得る。圧縮行程において、第1ポートから第2ポートへの減衰媒体のフローは、第1段階ではブリードフローのみであるが、第2段階では、主バルブ部によって制御される第1および第2制限部を主として通るフローに実質的になる。これにより、第1段階と第2段階との間の緩動開放がさらに改良される。
【0058】
別の一実施形態において、制御バルブ部と主バルブ部との間の境界面におけるブリードフローを制限する開口の寸法は、主バルブ部に対する制御バルブ部の軸方向位置を用いて制御される。
【0059】
一実施形態において、主バルブ座部は、第1ポート内の油圧に応じて主バルブ座部を主バルブ部に当接させて保持するように配置された第1持上げ表面領域を備える。
【0060】
別の一実施形態において、主バルブ座部は、第2ポート内の油圧に応じて主バルブ座部を主バルブハウジングに当接させて保持するように配置された第2持上げ表面領域を備える。
【0061】
さらに一実施形態において、主バルブ部は、第1ポート内の油圧に応じて主バルブ部をバルブハウジングに対して軸方向に移動させるように配置された第1持上げ表面領域を備える。
【0062】
一実施形態において、主バルブ部は、第2ポート内の油圧に応じて主バルブ部を主バルブ座部から軸方向に分離するように配置された第2持上げ表面領域を備える。
【0063】
一実施形態において、制御バルブ部は、主バルブ部内に少なくとも部分的に配置される。別の一実施形態においては、制御バルブ部に作用する作動力はソレノイドによって生成される。
【0064】
一実施形態において、パイロット圧は、制御バルブ部内に組み込まれた圧力調整器によって調整される。
【0065】
本発明の一態様においては、車両懸架のための衝撃吸収装置が達成される。この装置は、少なくとも1つの作業チャンバへの/からの減衰媒体流体のフローを制御し、衝撃吸収装置の減衰特性を制御するための、上記実施形態のいずれかに従った少なくとも1つの作業チャンバおよびバルブ機構を備える。これにより、バルブ機構を車両のための衝撃吸収装置内に組み込み得る。
【0066】
一実施形態において、衝撃吸収装置は、バルブ機構の第1ポートに流体接続された第1作業チャンバと、バルブ機構1の第2ポートに流体接続された第2作業チャンバとを備える。
【0067】
本発明のさらなる詳細および態様は、付随の図面を参照した下記の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1a図1aは、バルブ機構の実施形態の分解図を示す。
図1b図1bは、バルブ機構の実施形態の分解図を示す。
図2a図2aは、第1ポートから第2ポートへの主フローを遮断するため、主バルブ部が閉位置にあるときの実施形態の断面を示す。
図2b図2bは、第1ポートから第2ポートへの主フローを遮断するため、主バルブ部が閉位置にあるときの実施形態の断面を示す。
図3a図3aは、図2aの拡大断面を示し、ここで、第1ポートから第2ポートへの主フローを遮断するため、主バルブ部は閉位置にある。
図3b図3bは、図2bの拡大断面を示し、ここで、第1ポートから第2ポートへの主フローを遮断するため、主バルブ部は閉位置にある。
図4a図4aは、図3aにおける装置の拡大であるが、ここで、第1ポートから第2ポートへの調整された主フロー、つまり圧縮行程中のフローを可能にするため、主バルブ部および主バルブ座部が部分的に開いた位置にある。
図4b図4bは、図3bにおける装置の拡大であるが、ここで、第1ポートから第2ポートへの調整された主フロー、つまり圧縮行程中のフローを可能にするため、主バルブ部および主バルブ座部が部分的に開いた位置にある。
図5a図5aは図3aにおける装置の拡大であるが、ここで、第2ポートから第1ポートへの調整された主フロー、つまり反発行程中のフローを可能にするため、主バルブ部が部分的に開いた位置にある。
図5b図5bは図3bにおける装置の拡大であるが、ここで、第2ポートから第1ポートへの調整された主フロー、つまり反発行程中のフローを可能にするため、主バルブ部が部分的に開いた位置にある。
図5c図5cは図3bにおける装置の拡大であるが、ここで、第2ポートから第1ポートへの調整された主フロー、つまり反発行程中のフローを可能にするため、主バルブ部が部分的に開いた位置にある。
図6a図6aは、一実施形態における主バルブ座部の側部の断面を示し、ここで、主バルブ部の閉位置中の持上げ表面領域が例示されている。
図6b図6bは、調整された圧縮行程中の持上げ表面領域が例示されている主バルブ座部の側部の断面を示す。
図6c図6cは、所与の行程長Sでの主バルブ座部ならびに第1、第2および第5オリフィスの例示を示す。
図6d図6dは、オリフィス開口対行程長のグラフを示す。
図6e図6eは、3つの減衰特性シナリオにおけるフロー(q)対圧力(P)のグラフを示す。
図7a図7aは、一体化された遮断手段を有するときの主バルブ座部の2つの例示を示す。
図7b図7bは、遮断手段が別個のユニットであるときの主バルブ座部および遮断手段の例示を示す。
図7c図7cは、所与の行程長Sにおける第3、第4および第6オリフィスの例示を示す。
図7d図7dは、一実施形態における主バルブ座部の上面図を示す。
図8図8は、バルブ機構がその中に設置されたショックアブソーバの側断面例示を示す。
【発明を実施するための形態】
【0069】
本発明の現在好ましい実施形態が示された付随の図面を参照して、以下に本発明をより十分に記載する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形式で実施し得、本明細書に記載された実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、網羅性および完全性のために提供されており、発明の範囲を熟練した受け手に十分に伝えるものである。本願全体を通して、同様の参照記号は同様の要素を指す。しかしながら、主バルブ座部9は、バルブ座部9、9a、9bまたは9cのいずれかで表示されている。代替バージョン(9a、9b、9c)は、以下に記載される異なる実施形態において互いに代用されてもよい。したがって、9、9a、9bまたは9cのいずれになされたいかなる参照も、バルブ座部のすべての代替実施形態のための開示として解釈されるべきである。時には、本文の読解を容易にするために、「9」のみが参照として使用される。
【0070】
発明の概念は、2つの主要な実施形態で記載される。一つ目は、図1a、2a、3a、4a、5aおよび7aに示されており、ここで、可動バルブ部9は、第3制限部R3のオリフィスを規制するための遮断部91と中間開口92とを備える一体化された遮断手段を有する。図1b、図2b、図3b、図4b、図5bおよび図7bに示されるもう一つの主要な実施形態においては、遮断手段10は、遮断部91と中間開口92とを備える別個のユニットであり、これらは、第1実施形態における遮断部および中間開口と同じ機能を有する。これら2つの実施形態は、同じ機能を有し、同じ問題を解決する2つの方法に過ぎない。さらに、第1実施形態に関して記載したいかなることも、第2実施形態に等しく適用可能であり、逆もまた同様である。
【0071】
図1aは、バルブ機構の断面分解図を示す。バルブ機構1はバルブハウジング2を備える。バルブハウジングは、図面の上に上部を、図面の下に下部を有し、これらは図面においては離れているが、使用時には、例えば圧入またはねじ係合によって機械的に結合される。この機構はさらに主バルブ部4および制御バルブ部5を備え、制御バルブ部5の内部には、圧力調整器として作用するパイロットバルブ部6(例えば図2aに示される)がある。バルブ部は、付勢手段14、19(ばねとして示される)によってハウジングの内側で付勢されている。付勢手段は、適切なばね力を提供し、ハウジング空間に嵌合するいかなる種類のばねでもあり得る。
【0072】
図面はさらに、バルブハウジング2の下部内の第2ポート8を例示している。また、この機構は、可動主バルブ座部9を備えており、これは、以下の図面、特に図7bにおいてさらに例示されている。バルブ座部9aは、上で説明したように、遮断部91と中間開口92とを備える一体化された遮断手段を備える。さらに、代替主バルブ座部9bが例示されている。代替主バルブ座部9bは、遮断部91および中間開口92を備える一体化された遮断手段をも備える。違いは、バルブ座部の基部からの距離が増大するにつれて遮断部91の寸法が減少することである。それに対応して、バルブ座部の基部からの距離が増大するにつれて、代替バルブ座部9b内の中間開口92の寸法が増大する。これにより遮断手段は、行程の下部において最も減衰している流体を遮断し得、行程が増大するにつれて増大したフローを可能にし得る。よって、R3のオリフィスOR3は、図6dに例示されるように、行程長に対して直線よりも増大する。図1aのほとんどの詳細は、図3a〜5aに関してさらに説明され、それぞれの機能も記載される。図1aは主に、各構成要素の形状を明確にし、それにより本願の読解および理解を容易にするために、本願に含まれる。
【0073】
図1bは図1aに示されるバルブ機構に対応する例示であるが、ここにおいて、遮断手段10は、遮断部91と中間開口92とを備える別個のユニットである。上で説明したように、これらは第1実施形態における遮断部91および中間開口91と同じ機能を有する。さらに図1bは、遮断ユニット10を定位置に保持するための付勢手段11を備える。図1bにおいては、付勢ユニット11は波状ワッシャとして例示されているが、十分な付勢力を提供し、ハウジングに嵌合させることができるのであれば、ばねまたは弾性材料のような、いかなる種類の付勢手段であってもよい。図1bには例示されていないものの、遮断手段の基部からの距離が増大するにつれて遮断部91の寸法が増大するように遮断手段10の形状を調整することは十分に可能であろう。それに対応して、中間開口92は、遮断手段の基部からの距離が増大するにつれて寸法が減少する。これにより遮断手段は、行程の下部において最も減衰している流体を遮断し得、行程が増大するにつれて増大したフローを可能にし得る。よって、R3のオリフィスOR3は、行程長に対して直線よりも増大する。
【0074】
図2aおよび図3aは、主バルブ部4が第1ポート7から第2ポート8への主フロー(図示せず)を遮断するための閉位置にあるときのバルブ機構1の実施形態の断面を示し、図3aは、図2aの拡大断面である。バルブ機構1は、バルブハウジング2と、パイロットチャンバ3と、主バルブ部4と、制御バルブ部5とを備えている。バルブハウジング2は、第1ポート7と第2ポート8とを備えている。例示された実施形態において、第1および第2ポートは、油圧流体の流入および排出のための流入ポートおよび排出ポートとしてそれぞれ機能する。パイロットチャンバ3は、主バルブ部の上面41とバルブハウジング2の内壁との間に形成される空間によって規定される。パイロットチャンバ3は、主バルブ部4内の第1軸方向貫通孔32を介して第1ポート7と、主バルブ部4内の第2軸方向貫通孔33を介して第2ポート8と、流体連通している。これらの目的のために、主バルブ部内にいくつかの軸方向孔が設けられていてもよい。主バルブ部4の上面41に作用するパイロット圧Ppは、パイロットチャンバ3内の油圧によって規定される。
【0075】
主バルブ部4は、バルブハウジング2内に軸方向に移動可能に配置されており、主バルブ部4の上面41に作用するパイロット圧Ppに応じて、第1ポート7と第2ポート8との間で主流体フロー30(例えば図4aおよび図5aに示される)内の圧力を制限または調整するために、可動主バルブ座部9aと相互作用するように配置されている。本実施形態において、主バルブ部4は閉位置にあるとき、主バルブ座部9aに向かって保持される。主バルブ部は、可動主バルブ座部9aに向かって所望の弾性荷重を達成するため、任意のばね部によって弾性的に負荷をかけられ得る、またはそれ自体が可撓性および/または弾性を有し得る。
【0076】
制御バルブ部5は、実質的に円筒形であり、主バルブ部と同軸かつ部分的にその内部に配置されている。制御バルブ部5はさらにまた、制御バルブ部に作用する作動力に応じて、主バルブ部に対して軸方向に移動可能である。この実施形態においては、作動力は作動ロッド35によって受けられる。作動ロッドは、ソレノイドが電流に応じて力を及ぼす、軸方向に移動可能な部材であり得る。
【0077】
さらに、図2aに示す閉状態は、主バルブ部4がパイロットチャンバ3に向かって持上げられたときにポート7および/または8からの圧力がまだ閾値に達していないことから導き出し得る。この閾値は、第1ポート7または第2ポート8のいずれか一方内の圧力から発生され、主バルブ部4の持上げ領域42、43に作用する持上げ力が、主バルブ部4の上面41に作用するパイロットチャンバ3内のパイロット圧Ppからの反作用力を超えたときに対応する。このことは図4aおよび図5aに関してさらに説明されており、そこで、調整された主フロー30が例示されている。
【0078】
図3aに示す拡大で最も明瞭に例示されているように、バルブハウジング部は、径方向内壁26および径方向外壁27を有する周方向アパーチャ25を備える。径方向内壁26に接続するように、第5制限部R1’を形成する別のアパーチャが存在する。第5制限部R1’は、ポート7内の圧力に応じて可動主バルブ部9を加圧するように、減衰流体が周方向アパーチャ25に入ることを可能にする。遮断部91は、図3aの断面における1枚壁としても例示されている。さらに図3aは、主バルブ部4内の開口を通って第1ポートと第2ポートとの間を流れ、制御バルブ部5内に入り、パイロットバルブ部6に沿って通り、次いで制御バルブ部5および主バルブ部4を通って戻るブリードフロー20を例示する。このブリードフローは、最大の主流体フローよりも実質的に低いフローである限定されたフローである。調整されたブリードフロー20は、図6eにおける第1段階フローq1、つまり3つの曲線が互いから離れる前に対応する。このことは図6eに関してさらに詳述される。
【0079】
図2bおよび図3bはそれぞれ、図2aおよび図3aに対応しているが、遮断手段10は、上で説明したように、遮断部91および中間開口92を備える別個のユニットであるという違いがある。また、付勢手段11が図2bおよび図3bに例示されている。付勢部11は、主バルブ部4の表面からの支持で可動バルブ部9bに対して遮断手段10を保持している。
【0080】
図4aおよび図4bは、2つの実施形態の2つの拡大例示であり、ここにおいて、第1ポート7から第2ポート8への調整された主フロー30、つまり圧縮行程中のフローを可能にするために、主バルブ部4および主バルブ座部9aは部分的に開いた位置にある。例示されているように、可動主バルブ座部9および主バルブ部4は、図2a/2bおよび図3a/3bの閉位置と比較したとき、バルブハウジング2に対して軸方向に変位された位置にともに保持される。この位置において、第1ポート7から第2ポート8への調整された主流体フロー30が可能にされ、まず、第1制限部R1に加えて第5制限部R1’(第1ポートに最も近い上流)によって制限され、次いで、第1制限部R1の下流の第2制限部R2によって制限される。径方向内壁26は、可動バルブ座部9と協働して第1制限部R1の一部を形成し、径方向外壁27は可動バルブ座9とともに、第2制限部R2の一部を形成する。これら2つの制限部は周方向の制限部として形成され径方向に変位されるため、いかなる部分的に開いた状態においても、第1制限部R1のオリフィスが第2制限部R2のオリフィスよりも小さい。第2制限部はより大きい円周を有するため、(可動バルブ座部9の)上方向および(ハウジングの径方向側壁の)下方向に共通の区切りを有して形成されたとき、そのオリフィスは常に第1制限部のオリフィスよりも大きくなる。さらに、第5制限部R1’は一定の開口を有する。これにより、第1制限部R1および第5制限部R1’の和は、初期は第2制限部R2よりも大きいが、行程Sが増大するにつれて、第2制限部は第1および第5制限部の和よりも大きくなる。このことは、図6cおよび図6dに例示されている。
【0081】
よって、図4aおよび図4bにおいて、ポート7内の減衰流体からの圧力は、(持上げ領域42および43に作用する)主バルブ部4および(図6bに例示されるように持上げ領域21aに作用する)主バルブ座部9の開口軸方向変位をもたらす。この移動は、先に説明したように、主バルブ部4に作用するパイロットチャンバ3からの反作用圧力に依存する。これにより、減衰流体の調整された主フローが、第1ポート7から第2ポート8に流れることが可能になる。この種の調整は、図6eにおける第2段階フローq2、つまり3つの曲線が互いから離れた後に対応する。フローを調整するために2つの連続的かつ協働的な制限部R1およびR2が使用されるため、第1段階q1から第2段階q2に向かうときの緩動開放が達成され得る。このことは、前に言及したように、図6eに関してさらに詳述される。
【0082】
図5aおよび図5bも、図2a/2bにおける図の拡大であるが、ここでは、第2ポート8から第1ポート7への調整された主フロー30、つまり反発行程中のフローを可能にするために、主バルブ部4は部分的に開いた位置にある。
【0083】
図5aを図4aと比較すると、主バルブ部4に対して密接して配置された状態から、代わりにバルブハウジング2に対して密接して配置されるように移動されたのは、可動主バルブ座部9のみである。このことは第2ポート8から第1ポート7への減衰流体のフロー(圧力)を通じて達成され、このフローは、可動主バルブ座部9の上面(持上げ領域22である)に作用し、主バルブ部4の持上げ領域43にも作用するが、主バルブ部4と主バルブ座部とが分離されるように、反対方向となる。反発行程を通して、第2ポート8における圧力は、主バルブ座部9をバルブハウジング2に対して押し付けられたままにする。また、圧力のレベルによっては、主バルブ部4と主バルブ座部との間の開口が、第3制限部R3および第4制限部R4の両方のオリフィスOR3、OR4を決定する。第3制限部R3は、反発行程における圧力調整されたフローを可能にする。フローを調整するために2つの連続的かつ協働的な制限部R3およびR4が使用されるため、第1段階q1から第2段階q2に向かうときの緩動開放が達成され得る。第3制限部R3は、遮断部91によってその外包絡面に沿って部分的に遮蔽されている。これによりR3のオリフィスは、行程長にかかわらずR4のオリフィスよりも小さくなる。
【0084】
図5aにさらに示されるように、主バルブ部4は、可動バルブ部と協働して第3および第4制限部R3、R4を構成するためのフランジ部を備えている。フランジ部は、遮断部91と噛み合う。さらに、主バルブ部は、幾何学的に規定された周方向アパーチャ45を備える。このアパーチャは径方向内壁46および径方向外壁47を有する。径方向内壁46は第4制限部R4の一部を形成し、径方向外壁47は可動バルブ部9と協働して第3制限部R3の一部を形成する。さらに、アパーチャ45、内壁46および外壁47は、すべてフランジ部内に配置されてもよい。さらに第6制限部R3’は、アパーチャ45への開口であり、アパーチャ45は第2ポート8を外壁47へと流体接続する。よって、主バルブ部4内のアパーチャ45、内壁46、および外壁47は、上で説明したハウジング内のアパーチャ25、内壁26、および外壁27と類似の機能を有するが、反発フローにおける緩動開放を達成するために、圧縮フローにおいて緩動開放が達成されるのと同様の方法で行われる。
【0085】
図4aと図5aとを比較したとき、可動バルブ座部9を有することにより、圧縮圧力領域と反発圧力領域との間のより可撓性の高い領域圧力比を得るという、上で言及した利点が理解され得る。図示の実施形態においては、パイロット圧領域を変更することなく、圧縮領域と反発領域との間の領域比を調整し得る。主バルブ座が固定されている解決策においては、圧縮加圧領域と反発加圧領域との和がパイロット加圧領域に等しい。しかしながら、可動主バルブ部を有する場合、可動バルブ座部が移動されることにより、圧縮圧力と反発圧力とが異なる表面で作用するため、この和がパイロット加圧領域よりも大きい可能性がある。このことは、圧縮行程と反発行程との両方において、一方の力を損なうことなく所望の減衰力を発生させるためのバルブ機構を形成することを可能にする。
【0086】
さらに、図5bおよび図5cは、同じ実施形態およびバルブ機構の状態の2つの異なる図を示す。図5bは主に、主フロー30(明瞭化を理由として図5cから除かれている)を例示している。図5bおよび図5cの両方において、遮断手段は、可動バルブ座部9と一体化されていない別個のユニットである。左側には第3および第4制限部R3,R4を通るフローが例示されている。右手側には遮断部91を通る断面がとられており、フローは遮断部91の側の通路を進み、常に開いている第6制限部R3’を通る(図面の右部における上の点線通路によって例示される)。
【0087】
さらに図5cは、図5aにも示された詳細を例示しているが、この実施形態においては、遮断手段が別個の遮断ユニット10である。主バルブ部4の内壁46のすぐ下には、遮断ユニット10内の1つの開口92が例示されている。これは図7cの領域OR3に対応しており、バルブが少なくとも部分的に開かれたとき、つまりバルブがゼロよりも大きいとき、主流体フローが流れ得る。
【0088】
図6aおよび図6bは、可動バルブ座部9の加圧領域の原理図をさらに例示する。図6aにおいて、加圧領域21b、21cおよび22は、例えば図2aおよび図3aに例示されるように、主バルブが閉じられたときに可動バルブ座部9に作用する領域に対応する。
【0089】
領域21bは、バルブハウジングから径方向内側方向に突出している可動バルブ座部の部分に対応する。領域21cは、バルブハウジング内の周方向アパーチャ25の上に配置された可動バルブ座部の部分に対応する。すなわち、このアパーチャは加圧された減衰流体で満たされ得る。さらに領域22は、可動バルブ座部9の、主バルブ部の径方向外角から径方向外側方向に延びる部分に対応する。
【0090】
さらに図6bは、調整された圧縮行程中の持上げ表面領域が例示されている主バルブ座部の側部の断面を示す。例示されている可動バルブ座部9上の加圧領域21aは、主バルブ部が少なくとも部分的に開かれているときである。この領域は、可動バルブ座部9の下表面全体に対応する。
【0091】
図6dは、行程長Sの関数としてのオリフィス開口OR1+OR1’およびOR2のグラフを示す。第1オリフィスOR1は、第1制限部R1のオリフィスに対応する。このオリフィスOR1は、図6cにおける円の包絡面によっても例示され、OR1で表示されるものであり、よって行程長Sに依存する。行程長は、調節された位置にあるときの可動バルブ座部9と主バルブハウジング2との間の軸方向距離である。例えば図3b内を参照されたい。第2オリフィスOR2は、第2制限部R2のオリフィスOR2に対応する。このオリフィスは、図6cにおける円の包絡面によっても例示され、OR2で表示される。第5オリフィスOR1’は、第5制限部R1’のオリフィスに対応する。このオリフィスOR1’は、OR1’で表示される図6cにおける表面によっても例示されており、主バルブハウジング2内の周方向アパーチャへの開口に対応する。既に上で説明したように、図6cは、主バルブ座部の断面側面図の例示を示しており、第1オリフィスOR1、第2オリフィスOR2、および第5オリフィスOR1’が所与の行程長Sで例示されている。この例示から、いかに第1オリフィスOR1および第2オリフィスOR2は行程長Sとともに変化するが、第5オリフィスOR1’は変化がないかが明らかである。
【0092】
調整された圧縮行程の初期段階においては、つまりR1とR2とが閉位置からちょうど開きはじめているときには、図6dに示すように、第2制限部において制限が行われるが、これは、この初期段階では、第2制限部R2のオリフィスが第1および第5制限部R1+R1’のオリフィスよりも小さいためである。第2制限部OR2のオリフィスが第1制限部および第5制限部を組み合わせたオリフィスOR1+OR1’よりも大きくなるとすぐに、代わりに第1制限部および第5制限部で制限が行われる。
【0093】
さらに、図6dのグラフが例示するように、第1オリフィスOR1および第5オリフィスOR1’の組み合わせは、初期行程中は第2オリフィスOR2よりも大きいが、ある点において、第1オリフィスOR1と第5オリフィスOR1’との組み合わせよりも第2オリフィスOR2が大きくなり、同じ行程長中は、より速く増大する。
【0094】
異なる制限部のオリフィス間の寸法関係は、本発明の概念から逸脱することなく変化させ得る。オリフィス寸法関係を調整することにより、図6dに示される「OR1+OR1’」−曲線と「OR2」曲線との間の交差点を移動させ得る。OR1’のオリフィス寸法は、「OR1+OR1’」−曲線がY軸を横切るところで表される。第1制限部および第2制限部のオリフィスOR1の寸法間の関係は、図6dにおける2つの曲線の異なる傾斜によって例示される。さらに、第1オリフィスOR1の最大オリフィス寸法に対する第5オリフィスOR1’の相対寸法を増大させることによって、緩動開放が長くなる。
【0095】
R3、R3’およびR4のオリフィスは例示がないが、図6dに開示されているのと同じ原理に対応する。ここで、OR3はOR1に対応し、OR3’はOR1’に対応し、OR4はOR2に対応する。
【0096】
図6dにはさらに点線の曲げ線が存在するが、これは代替遮断手段9bが使用されるときのオリフィスOR3+OR’3を表す、つまり遮断手段9bが行程の下部において最も減衰している流体を遮断し、行程が増大するにつれて増大したフローを可能にする。遮断部91の形状は、OR3+OR’3破線の湾曲を決定するものであって、所望の特性に適合させ得る。
【0097】
第1オリフィスOR1の最大オリフィス寸法は、第2オリフィスOR2の最大オリフィス寸法の約50%〜95%であり得る。一実施形態において、第1オリフィスOR1の最大オリフィス寸法は、第2オリフィスOR2の最大オリフィス寸法の約70%〜90%である。別の実施形態において、第1オリフィスOR1の最大オリフィス寸法は、第2オリフィスOR2の最大オリフィス寸法の約75%〜85%である。
【0098】
第5オリフィスOR1’のオリフィス寸法は、第1オリフィスOR1の最大オリフィス寸法の約0.1%〜10%であり得る。一実施形態において、第5オリフィスOR1’のオリフィス寸法は、第1オリフィスOR1の最大オリフィス寸法の約0.3%〜3%である。別の実施形態において、第5オリフィスOR1’のオリフィス寸法は、第1オリフィスOR1の最大オリフィス寸法の約0.5%〜1%である。
【0099】
類推から、第3オリフィスOR3の最大オリフィス寸法は、第4オリフィスOR4の最大オリフィス寸法の約50%〜95%であり得る。一実施形態において、第3オリフィスOR3の最大オリフィス寸法は、第4オリフィスOR4の最大オリフィス寸法の約70%〜90%である。別の実施形態において、第3オリフィスOR3の最大オリフィス寸法は、第4オリフィスOR4の最大オリフィス寸法の約75%〜85%である。
【0100】
第6オリフィスOR3’のオリフィス寸法は、第3オリフィスOR3の最大オリフィス寸法の約0.1%〜10%であってもよい。一実施形態において、第6オリフィスOR3’のオリフィス寸法は、第3オリフィスOR3の最大オリフィス寸法の約0.3%〜3%である。別の実施形態においては、第6オリフィスOR3’のオリフィス寸法は、第3オリフィスOR3の最大オリフィス寸法の約0.5%〜1%である。
【0101】
最後に、図6eは、異なる減衰特性を有する3つの異なるダンパーにおける、圧縮行程中のフローqの関数としての圧力Pのグラフを示す。すべての機能は共通の第1段階q1を備え、ここで、調整されたブリードフローが例示される。3つの機能が互いに分離されるところから始まる第2段階q2は、圧力調整された主流体フローに対応する。第1減衰特性DC1は、鋭動開放を例示しており、これは、今日の2方向バルブにおける通例の挙動である。第2特性DC2および第3特性DC3は、両方とも緩動開放、つまり、本出願に記載されている解決策が使用されるときを例示する。両者の違いは、第5制限部R1’のオリフィス寸法である。すなわち、第5制限部のオリフィスの寸法を変更することにより、緩動開放の特性を調整し得る。第2機能DC2においては、第5オリフィスOR1’が第3機能DC3におけるそれより小さく、第3機能DC3はそれゆえ、より大きいオリフィスOR1’を有する。図示されたフローqの関数としての圧力Pは、反発行程においても適用可能である。しかしながら、第6制限部のオリフィスOR3’の寸法は、緩動開放の特性を調整するために、第3および第4制限部のオリフィスOR3、OR4に対して調整されるべきである。
【0102】
図7aは、一体化された遮断手段を有するときの主バルブ座部9aの例示である。遮断手段は遮断部91から成る。遮断部91は複数存在してもよく、この特定の例では、3つの遮断部が使用され、均等に分配される。他の実施形態においては、例えば4、5、6、7または10以上のより多くの遮断部が使用され得る。遮断部91の間には、減衰流体が第1ポートと第2ポートとの間を流れることを可能にする開口92が存在する。図7aは、一体化された遮断手段を有するときには、代替主バルブ座部9bをも備えるが、ここでは、バルブ座部の基部からの距離が増大するにつれて遮断部91の寸法が減少する。それに対応して、バルブ座部の基部からの距離が増大するにつれて、代替バルブ座部9b内の中間開口92の寸法が増大する。これにより遮断手段は、行程の下部において最も減衰している流体を遮断し得、行程が増大するにつれて増大したフローを可能にし得る。このことは、図6dに関しても記載されている。
【0103】
図7bは、代替実施形態の(下からの)斜視図を示しており、ここにおいて、主バルブ座部と遮断手段とは別個のユニットによって表現されている。遮断ユニット10は、遮断部91と中間開口92とを備える。遮断部91(およびその結果として開口)は複数存在してもよく、例示された例では、3つの遮断部が使用され、均等に分配される。他の実施形態においては、より多くの、例えば4、5、6、7または10以上の遮断部が使用され得る。
【0104】
図7cは、所与の行程長Sでの第3、第4および第6オリフィスの例示を示す。この図面は図6cに対応するが、反発行程における各制限部のためのオリフィスを表現する。オリフィスOR3は下の円の包絡面によって例示されているが、遮断部91に対応する縞模様の領域91を有する。よって、第3オリフィスOR3は行程長Sに依存する。反発フローにおける行程長は、調節された位置にあるときの可動バルブ座部9と主バルブ部4との間の軸方向距離である。例えば図5a/5bを参照されたい。第4オリフィスOR4は、第4制限部R4のオリフィスに対応する。このオリフィスは上の円の包絡面によって例示され、OR4で表示される。第6オリフィスOR3’は第6制限部R3’のオリフィスに対応する。このオリフィスOR3’は、図7cにおける表面によっても例示されており、アパーチャ45への周方向アパーチャへの開口に対応する。図7cから、いかに第3および第4オリフィスOR3、OR4は行程長Sと協動して変化するが、第6オリフィスOR3’は変化がなく行程に依存しないかが明らかである。
【0105】
図7dは、シムまたはワッシャである場合の可動バルブ座部9cを上方視点から例示する。可動バルブ座部9cは外径D1と内径D2とを有することが示されている。さらにまた、ワッシャは3つの径方向指向突起93を備える。指向突起は、主バルブハウジング2と噛み合うように寸法決めされ、適合される。さらにまた、ワッシャ内の少なくとも3つの径方向指向突起93の間の空間は、圧縮行程中に、第1ポート7から第2ポート8に主流体フロー30が通ることを可能にするための中間ポート94を形成する。本実施形態の指向突起93および中間ポート94は、ひとつの指向突起93も、対向する指向突起をワッシャの反対側に有さないように配置されている。言い換えれば、突起93のいずれかとワッシャの中心とを通る直線は、第2指向突起93を通過せず、代わりに中間ポート94を通過する。この設計の理由は、ワッシャの直径沿いには2つの正反対の突起が存在しないため、可動バルブ座部9が傾斜している(つまり、その中心軸に垂直な軸の周りを回転する)場合、その詰まりが防止され得るからである。傾斜している場合の詰まりを回避するように可動バルブ座部9の円周に沿って分布されてさえいれば、より多くの径方向指向突起を有することも可能であろう。指向突起は、ワッシャ形のバルブ座部9cに関してのみ例示されているが、突起は、バルブ座部9a、9bの他の実施形態にも適用することができよう。
【0106】
最後に、図8は、バルブ機構がその中に設置されたショックアブソーバ100の側断面例示を示す。従来技術に属するため、ショックアブソーバの全ての詳細が示されているわけではない。代わりに図8は、本明細書に記載されたバルブ機構がショックアブソーバにおいてどのような方法で実施され得るかを示すための例示に過ぎない。ショックアブソーバは、第1作動チャンバ101と第2作動チャンバ102とを備えている。さらにショックアブソーバ100は、バルブ機構1のハウジングに取り付けられたピストンロッド103を備えている。封止部104はバルブハウジングに配置され、第1作動チャンバ101を第2作動チャンバ102から分割する。第1作業チャンバ101はバルブ機構の第1ポート7に流体接続され、第2作業チャンバ102はバルブ機構1の第2ポート8に流体接続される。さらに図1のショックアブソーバは、バルブ機構1が、例えば車両のためのフロントフォークまたは等価減衰機器にいかに搭載されるかも例示していることが理解されるものである。
【0107】
本発明の例示的な実施形態が示され、記載されてきたが、本明細書に記載されたような本発明の数多くの変更および修正または改変がなされ得ることは、当業者には明らかであろう。また、上に記載した異なる実施形態は、本発明の概念の範囲から逸脱することなく、異なる方法で組み合わせ得る。よって、本発明の上述の記載および付随の図面は、その非限定的な例とみなされるものであり、本発明の範囲は、添付された特許請求の範囲において規定されることが理解されるものである。

以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] ショックアブソーバのためのバルブ機構(1)であって、前記バルブ機構が、
第1ポート(7)および第2ポート(8)を備えるバルブハウジング(2)と、
前記第1ポートおよび/または前記第2ポートと流体連通するパイロットチャンバ(3)であって、前記パイロットチャンバ内の油圧によってパイロット圧(Pp)が規定されるパイロットチャンバ(3)と、
前記バルブハウジング内に軸方向に移動可能に配置された主バルブ部(4)であって、前記主バルブ部(4)に作用する前記パイロット圧(Pp)に応じて前記第1ポート(7)と前記第2ポート(8)との間の主流体フロー(30)を制限するために、主バルブ座部(9)と相互作用するように配置された主バルブ部(4)と、を備え、
ここにおいて、
圧縮行程中は、前記主流体フロー(30)が第1制限部(R1)および協働して直列的に配置された第2制限部(R2)で制限され、反発行程中は、前記主流体フロー(30)が第3制限部(R3)および協働して直列的に配置された第4制限部(R4)で制限されるように、前記主バルブ座部(9)が第1圧縮行程位置と第2反発行程位置との間で移動可能である、バルブ機構。
[2] 圧縮流体フロー方向を考慮して、前記第2制限部(R2)に対して上流に前記第1制限部(R1)が配置され、前記第1制限部(R1)は、少なくとも初期行程において少なくとも部分的に開かれたとき、前記第2制限部(R2)のオリフィス(OR2)よりも小さいオリフィス(OR1)を有する、[1]に記載のバルブ機構。
[3] 反発流体フロー方向を考慮して、前記第4制限部(R4)に対して上流に前記第3制限部(R3)が配置され、前記第3制限部(R3)は、少なくとも初期行程において少なくとも部分的に開かれたとき、前記第4制限部(R4)のオリフィス(OR4)よりも小さいオリフィス(OR3)を有する、[1]〜[2]のいずれか一項に記載のバルブ機構。
[4] 前記第2制限部(R2)と直列に配置された第5制限部(R1’)を備える、[1]〜[3]のいずれか一項に記載のバルブ機構。
[5] 前記第5制限部(R1’)は、前記バルブハウジング(3)に対する前記主バルブ部(4)の軸方向位置とは独立した一定のオリフィス(OR1’)を有する、[4]に記載のバルブ機構。
[6] 前記第4制限部(R4)と直列に配置された第6制限部(R3’)を備える、[1]〜[5]のいずれか一項に記載のバルブ機構。
[7] 前記第6制限部(R3’)は、前記バルブハウジング(3)に対する前記主バルブ部(4)の軸方向位置とは独立した一定のオリフィス(OR3’)を有する、[6]に記載のバルブ機構。
[8] 前記主バルブ部(4)が、径方向内壁(46)および径方向外壁(47)を有する幾何学的に規定された周方向アパーチャ(45)をさらに備え、前記径方向内壁(46)が前記第4制限部(R4)の一部を形成し、前記径方向外壁(47)が前記第3制限部(R3)の一部を形成する、[1]〜[7]のいずれか一項に記載のバルブ機構。
[9] 前記第6制限部(R3’)は、前記主バルブ部内の前記周方向アパーチャ(45)への少なくとも1つの開口である、[7]を引用する[8]に記載のバルブ機構。
[10] 少なくとも初期行程において少なくとも部分的に開かれたとき、前記第3制限部が前記第4制限部(R4)のオリフィス(OR4)よりも小さいオリフィス(OR3)を有するように、前記第3制限部の前記周方向オリフィスの少なくとも一部を遮断するための幾何学的に規定された周方向遮断手段をさらに備える、[1]〜[9]のいずれか一項に記載のバルブ機構。
[11] 前記遮断手段が、径方向外壁(47)の包絡外面を遮断する軸方向に延びる壁である、[10]に記載のバルブ機構。
[12] 前記遮断手段が、前記バルブ座部(9)の一体部分を形成する、[10]〜[11]のいずれか一項に記載のバルブ機構。
[13] 前記遮断手段が、別個の遮断部(10)を構成する、[10]〜[11]のいずれか一項に記載のバルブ機構。
[14] 前記第1制限部(R1)、前記第2制限部(R2)、前記第3制限部(R3)、および/または前記第4制限部(R4)のオリフィス(OR1、OR2、OR3、OR4)のうちの少なくとも一つは、前記バルブハウジング(3)に対する前記主バルブ部(4)の軸方向位置を用いて制御される、[1]〜[5]のいずれか一項に記載のバルブ機構。
[15] 車両懸架のための衝撃吸収装置であって、
少なくとも1つの作業チャンバ(101、102)と、
前記少なくとも1つの作業チャンバへの/からの減衰媒体流体のフローを制御し、前記衝撃吸収装置の減衰特性を制御するための、[1]〜[14]のいずれか一項に記載のバルブ機構と、を備えた衝撃吸収装置。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図5c
図6a
図6b
図6c
図6d
図6e
図7a
図7b
図7c
図7d
図8