(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記処理部は、前記受信部が受信した第1信号のMCS(Modulation and Coding Scheme)よりも少ないデータを扱うMCSで、前記送信部が送信する第2信号を構成する、
請求項1乃至5のいずれか1つに記載の無線通信装置。
前記処理部は、CRC(Cyclic Redundancy Check)、SNR(Signal to Noise Ratio)、およびEVM(Error Vector Magnitude)のうち少なくとも1つから前記受信部が受信した第1信号の品質を判定する、
請求項1乃至7のいずれか1つに記載の無線通信装置。
前記処理部は、前記受信部が受信した第1信号の品質によって前記送信部が送信する第2信号の電力を、増加させる、維持させる、低減させる、および停止させる、のうち少なくとも1つから選択する、
請求項8に記載の無線通信装置。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明を実施するための実施形態について説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態における無線通信システムを表す図である。端末50で生成したデータAは、端末50から無線通信装置100および200を経由してコアネットワーク250に届けられる。また、コアネットワーク250から端末50に送られるデータBは、コアネットワーク250から無線通信装置200および100を経由して端末50に届けられる。ここで、無線通信装置100は端末50と通信可能な基地局であって、無線通信装置200とデータAおよびデータBの通信を行うとともに、端末50とも通信を行っている。無線通信装置200は無線通信装置100とコアネットワーク250の通信を中継する中継局であって、無線通信装置100とデータおよびデータBの通信を行うとともに、コアネットワーク250からデータBを受け取り、コアネットワーク250にデータAを伝えている。
【0009】
図2は、本実施形態における無線通信装置100および200の間の通信を表す図である。前提として、この無線通信装置100および200の間の通信は周波数帯α、βを用いた周波数分割複信で行われている。
【0010】
また、無線通信装置100は、無線通信装置200と周波数分割複信を行っている間、周波数帯α、βとは異なる周波数帯で端末50からデータAを受け取り、端末50にデータBを伝えている。この通信では、干渉の低減は適宜行われているものとする。無線通信装置200は、無線通信装置100と周波数分割複信を行っている間、周波数帯α、βとは異なる周波数帯でコアネットワーク250からデータBを受け取り、コアネットワーク250にデータAを伝えている。この通信でも、干渉の低減は適宜行われているものとする。
【0011】
すなわち、無線通信装置100および200の間の通信について具体的に説明すると、無線通信装置100は無線通信装置200に対して、周波数帯βを用いて信号A2を送信している。この信号A2には、端末50から受け取ったデータAが含まれている。一方、無線通信装置200は無線通信装置100に対して、周波数帯αを用いて信号Bを送信している。この信号Bには、コアネットワーク250から受け取ったデータBが含まれている。
【0012】
本実施形態では、無線通信装置100は、無線通信装置200と周波数分割複信を行っている間に、フルデュプレックス通信を開始する。フルデュプレックス通信は、同じ周波数帯において信号の受信を行いながら信号の送信を行う通信である。具体的には、無線通信装置100は、現在信号Bを受信している周波数帯αを用いて、信号Bを受信している間に、信号Bの品質が一定以上であれば信号A1の送信を開始する。すなわち、周波数帯αでは、無線通信装置100による信号A1の送信と、無線通信装置200による信号Bの送信が同時に行われることになる。このフルデュプレックス通信は、無線通信装置100が送信するデータAの伝達速度を向上させることができる。
【0013】
無線通信装置100が信号A1を送信することで、この信号A1が信号Bに対して干渉を与えることになる。そのため無線通信装置100は、まずこの信号A1の電力を、信号BのデータBへの復調に影響がない程度の小さい電力とし、この信号A1が信号Bに対して与える干渉の干渉伝搬路特性を推定し、この干渉を低減させる信号を生成してこの干渉を低減させる。この干渉の低減処理を続け、信号Bの品質が一定以上に改善すれば、信号A1の送信電力を増加させる。
【0014】
また、本実施形態では、無線通信装置100および200は、フルデュプレックス通信を行うための認証を事前に済ませているものとする。
【0015】
無線通信装置100は、信号A1の送信開始以降、信号A1の干渉を受けた信号B(以降、信号Cとする)を受信することになる。無線通信装置100は、信号Cの干渉を処理する信号を生成し、信号Cの干渉を低減させる。無線通信装置100は、干渉を処理した信号Cの信号の品質を判定し、その判定の結果によって信号A1の送信電力を制御する。このようにすることで、周波数分割複信による通信を行っている間にフルデュプレックス通信を開始することができる。
【0016】
この無線通信装置100の構成を、
図3を用いて説明する。無線通信装置100は、処理部110、受信部101、送信部102を有する。処理部110は、復調部111、制御部112、干渉低減部113を有する。
【0017】
受信部101は、無線通信装置100に対する信号を受信する。例えば、無線通信装置100は、端末50からのデータAを含んだ信号(以降、信号A0とする)や、無線通信装置200からの信号B、干渉を受けた信号Cを受信する。これらの信号は復調部111に送られる。また、信号Cは干渉低減部113にも送られ、信号Bに対して干渉する信号A1の干渉伝搬路特性(以降、干渉伝搬路特性I
A1とする)の推定に使われる。受信部101はアンテナを備えており、これらの受信を行う。
【0018】
復調部111は、信号を復調する。信号A0からはデータAが復調される。フルデュプレックス通信を開始する前は受信部101から信号Bが復調部111に送られ、復調部111はこの信号BをデータBに復調する。フルデュプレックス通信を開始した後は受信部101から信号Cが復調部111に送られる。この信号Cは信号A1からの干渉を受けているが、この干渉は受信および復調に影響を及ぼさない程度であるので、復調部111は信号CをデータBに復調する。また、復調部111は、復調した信号の品質を示す指標を算出する。これらの信号の品質を示す指標は制御部112に送られ、送信部102が送信する信号の電力の決定に使われる。復調した信号の品質を示す指標としては、例えばCRC、SNR、EVMなどである。また、復調部111は、信号を復調したデータを制御部112に送る。これらのデータは制御部112で送信する信号の生成に使われる。
【0019】
制御部112は、復調部111で復調されたデータを変調し、信号として送信部102に送る。データAは無線通信装置200に対する信号A1またはA2として送られ、データBは端末50に対する信号(以降、信号B0とする)として送られる。また、制御部112は、復調部111から送られた信号の品質を示す指標から、送信する信号を送信する電力を決定し、送信部102に送る。また、制御部112はフルデュプレックス通信として送信する信号A1を干渉低減部113に送る。この信号A1は、受信部101が受信した信号Cから信号A1による干渉を減少させる信号(以降、信号Dとする)の生成に使われる。
【0020】
干渉低減部113は、干渉伝搬路特性I
A1の推定を行う。無線通信装置100および200は、フルデュプレックス通信のための認証を事前に済ませているため、干渉低減部113は信号Bに含まれる既知シンボル(パイロット)および信号A1に含まれる既知シンボルを認識している。これらの既知シンボルおよび受信部101から送られた信号Cから、干渉伝搬路特性I
A1の推定を行う。また、干渉低減部113は、この干渉伝搬路特性I
A1および制御部112から送信された信号A1から信号Dを生成し、受信部101が受信した信号Cの信号A1による干渉を低減させる。また、干渉低減部113は信号A0の干渉の低減を行っている。
【0021】
送信部102は、制御部112から送られた信号を、制御部112が決定した電力で送信する。送信部102は信号A1またはA2の場合は無線通信装置200に対して送信し、信号B0は端末50に対して送信する。送信部102はアンテナを備えており、これらの送信を行う。
【0022】
無線通信装置100は、本実施形態では基地局とされているが、LSIなどの回路で実現してもよい。また、この無線通信装置100の構成はそれぞれ独立な構成要素を接続して実現するようにしてもよいし、一部をチップなどでまとめるようにしてもよい。
【0023】
次に、無線通信装置100および200がフルデュプレックス通信を行う信号の構造について説明する。これらの信号は、周波数帯αで通信されるものとする。
【0024】
無線通信装置200が送信し、無線通信装置100が受信する信号Bの構造を、
図4を用いて説明する。
図4では、時間と周波数帯で区切られたリソースエレメントに、データまたは既知シンボルが配置されている。D
RはデータBを含むリソースエレメントであることを表し、P
Rは既知シンボルを含むリソースエレメントであることが表されている。本実施形態では、無線通信装置100および200は、フルデュプレックス通信のための認証を事前に済ませている。そのため、無線通信装置100および200はP
Rについての情報をすでに共有している。一方、D
Rは無線通信装置100にとって未知のリソースエレメントである。
【0025】
無線通信装置100が無線通信装置200に対して送信する信号A1の構造を、
図5〜7を用いて説明する。本実施形態では信号A1として、無線通信装置200に信号a1、a2、およびa3を順に送信している。信号a1は信号Bとのタイミングを合わせるための信号であり、無線通信装置200に伝えるデータAを含んでいない。信号a2は、干渉伝搬路特性I
A1を推定するための信号であり、無線通信装置200に伝えるデータAを含んでいない。この信号a2を用いて推定された干渉伝搬路特性I
A1は、信号a1、a2、a3が信号Bに及ぼす干渉それぞれに適用することが可能である。信号a3は、端末50から受け取ったデータAの一部を含む信号であり、このデータAの一部を無線通信装置200に伝送する。
【0026】
なお、信号A1の干渉を受けた信号Bを信号Cと呼称していたが、以降信号Cを総称として、信号c1、c2、c3を用いることとする。すなわち、信号a1の干渉を受けた信号Bを信号c1、信号a2の干渉を受けた信号Bを信号c2、信号a3の干渉を受けた信号Bを信号c3と呼称する。
【0027】
まず、信号a1の構造を、
図5を用いて説明する。信号a1は、特定のリソースエレメントに既知シンボルP
Tを配置し、残りのリソースエレメントは空(N)とした信号である。本実施形態では、無線通信装置100および200は、フルデュプレックス通信のための認証を事前に済ませている。そのため、無線通信装置100および200はP
Tについての情報をすでに共有している。制御部112が信号a1を生成して、送信部102がこの信号a1を送信すると、受信部101は信号c1を受信することになる。この信号a1は、制御部112が信号a2を送信するタイミングを把握することに使われる。本実施形態では、信号a1の既知シンボルP
Tの個数は、信号Bの既知シンボルの個数P
Rよりも少ないものとする。
【0028】
信号a2の構造を、
図6を用いて説明する。信号a2は、信号Bの既知シンボルと同じリソースエレメントに既知シンボルP
Tを配置し、残りのリソースエレメントは空とした信号である。制御部112が信号a2を生成して、送信部102がこの信号a2を送信すると、受信部101は信号c2を受信することになる。この信号a2は、干渉低減部113が干渉伝搬路特性I
A1を推定することに使われる。本実施形態では、信号a2の既知シンボルP
Tの個数は、信号Bの既知シンボルP
Rの個数と等しい。なお、P
Tの個数およびP
Rの個数が一致していなくても、無線通信装置100および無線通信装置200の間で、P
T、P
Rの内容や個数、位置などの情報が共有されていればよい。
【0029】
信号a3の構造を、
図7を用いて説明する。信号a3は、信号a2の空のリソースエレメントからデータAを含むリソースエレメントD
Tに置き換わった信号である。送信部102がこの信号a2を送信すると、受信部101は信号c3を受信することになる。この信号a3は、無線通信装置200にデータAの一部を届けることに使われる。
【0030】
送信部102が送信する信号をはじめから信号a3としてもよいが、干渉伝搬路特性I
A1を推定する際に信号a2を用いることにより、送信部102が送信する信号による信号Bへの干渉をより小さくすることが可能である。また、信号a2を送信するタイミングの把握のために信号a1を用いなくてもよいが、信号a1を用いることで、送信部102が送信する信号による信号Bへの干渉をより小さくすることが可能である。
【0031】
周波数帯αを用いて同時に信号の送受信を開始した後の無線通信装置100および200の関係の概略を
図8の状態遷移図を用いて説明する。
【0032】
まず、送信部102は信号a1を用いて周波数帯αにおけるフルデュプレックス通信を開始する(状態1)。この信号a1の干渉を受けた信号c1および信号a1から、制御部112は信号a2を送信するタイミングを把握することができる。
【0033】
制御部112が信号a2を送信するタイミングを把握した後、送信部102は信号a1から信号a2に切り替える(状態2)。この信号a2の干渉を受けた信号c2および信号a2から、干渉低減部113は干渉伝搬路特性I
A1の推定を行うことができる。干渉低減部113はこの干渉伝搬路特性I
A1を用いて信号Dの生成を行うことができる。
【0034】
干渉低減部113による信号c2の干渉の低減が進むと、送信部102は信号a2から信号a3に切り替え、周波数帯αでも無線通信装置200に対してデータAが送信される。干渉低減部113は、この信号a3の干渉を受けた信号c3の干渉を低減の処理を継続して行う。
【0035】
以上に概略を説明したが、次にこの無線通信装置100の動作の詳細を説明する。この動作の説明は、フルデュプレックス通信を行う相手である無線通信装置200に関係する動作を説明するものとし、端末50に関係する動作はフローとしては説明しないものとする。
【0036】
まず、無線通信装置100が無線通信装置200とフルデュプレックス通信を開始するまでの動作を、
図9を用いて説明する。なお、
図2に示す通り、無線通信装置100および200は、周波数帯αおよびβで周波数分割複信を行っているものとする。すなわち、無線通信装置100は周波数帯αを用いて無線通信装置200から信号Bを受信している。また、無線通信装置100は周波数帯βを用いて無線通信装置200に対して信号A2を送信している。また、無線通信装置100は端末50とも周波数帯αおよびβ以外で通信を行っており、信号A0を受信し、信号B0を送信している。信号A0の受信に関する干渉の低減は適宜行われているものとする。
【0037】
まず、復調部111は、受信部101が受信した信号Bを復調し、この信号Bの品質を示す指標を算出する(ステップS101)。復調部111は、信号の品質を示す指標として、CRC、SNR、EVMなどの指標を用いる。これらの指標を組み合わせて判定するようにしてもよい。これらの指標の算出結果は制御部112に送られる。また、復調された信号BはデータBとして制御部112に送られる。制御部112はこのデータBを変調して信号B0とし、送信部102を通じて端末50に向けて送信する。
【0038】
次に、制御部112は、復調部111から送られた指標の算出結果から、信号Bの品質が一定以上であるかを判定する(ステップS102)。このしきい値は制御部112が任意に定めてよく、CRC、SNR、EVMなどの指標を組み合わせて判定するようにしてもよい。また、制御部112は信号Bの品質が一定以上の代わりに信号Bのエラーが一定以下であることを判定してもよい。また、制御部112は一定の時間継続して信号Bの品質が一定以上であるかを判定するようにしてもよい。この一定の時間は制御部112によって定められる。制御部112がこの信号Bの品質が一定以上でないと判定した場合(ステップS102:No)、ステップS101に戻る。
【0039】
一方、制御部112がこの信号Bの品質が一定以上であると判定した場合(ステップS102:Yes)、送信部102は周波数帯αを用いて信号a1の送信を開始し、無線通信装置200とのフルデュプレックス通信を開始する(ステップS103)。なお、信号a1を送信することにより、受信部101は信号c1を受信することになる。このときの信号a1を送信する電力はP1であり、復調部111が行う信号c1からデータBへの復調に影響を及ぼさない程度の電力である。なお、説明のために信号a1の干渉を受けた信号Bを信号c1と表記しているが、信号a1を送信する電力P1は信号c1からデータBへの復調に影響を及ぼさない程度の電力であり、実質的には信号Bと信号c1はほとんど同一である。
【0040】
以上のようにして、無線通信装置100および200はフルデュプレックス通信を開始する。
【0041】
次に、フルデュプレックス通信を開始した後の無線通信装置100の動作について、
図10〜
図11を用いて説明する。なお、引き続き無線通信装置100は周波数帯αを用いて無線通信装置200から信号Bを受信している。また、無線通信装置100は周波数帯βを用いて無線通信装置200に対して信号A2を送信している。また、無線通信装置100は端末50とも周波数帯αおよびβ以外で通信を行っており、信号A0を受信し、信号B0を送信している。信号A0の受信に関する干渉の低減は適宜行われているものとする。
【0042】
まず、無線通信装置100の動作として、干渉伝搬路特性I
A1の推定を行う(ステップS201)。この干渉伝搬路特性I
A1の推定における無線通信装置100の動作を、
図11を用いて説明する。なお、送信部102は信号a1の送信を開始しているため、信号Bは信号a1により干渉を受ける。すなわち、受信部101は信号c1を受信している。この信号c1は復調部111および干渉低減部113に送られている。信号c1は、データBへの復調に影響がない程度の干渉しか受けていないため、復調部111でデータBに復調され、信号の品質を示す指標が算出される。フルデュプレックス通信を開始する前と同様に、復調されたデータBは制御部112で信号B0に変調され、送信部102を通じて端末50に送信される。
【0043】
まず、干渉低減部113は、受信部101から送られた信号c1と、事前に認識している信号Bの既知シンボルP
Rおよび信号a1の既知シンボルP
Tの情報から、信号a2を送信するタイミングを決定する(ステップS301)。具体的には、信号Bの既知シンボルP
Rが配置されたリソースエレメントのうち、信号a1の既知シンボルP
Tによる干渉によって、信号Bの一部のリソースエレメントは既知シンボルP
Rではなくなる(この信号をc1としている)。干渉低減部113は、このリソースエレメントの位置から、信号a2を送信するタイミングを決定する。このタイミングは、制御部112に伝えられる。
【0044】
次に、制御部112は、干渉低減部113から送られたタイミングで信号a1に替えて信号a2の送信を開始するように送信部102に指示し、送信部102は制御部112の指示の通りに信号a1から信号a2に替えた送信を開始する(ステップS302)。ここで、信号Bは信号a2からの干渉を受けるようになるので、受信部101は信号c2を受信するようになる。このときの信号a2を送信する電力P2は、電力P1と同様に、復調部111が行う信号c2からデータBへの復調に影響を及ぼさない程度の電力である。電力P2は、復調部111が行う信号c2からデータBへの復調に影響を及ぼさない程度の電力であれば、電力P1と同じでなくてもよく、例えば電力P1よりも大きくしてもよい。なお、説明のために信号a2の干渉を受けた信号Bを信号c2と表記しているが、信号a2を送信する電力P2は信号c2からデータBへの復調に影響を及ぼさない程度の電力であり、実質的には信号Bと信号c2はほとんど同一である。
【0045】
また、この信号c2も信号c1の場合と同様に、復調部111および干渉低減部113に送られる。復調部111に送られた信号c2は、信号c1の場合と同様に、データBへの復調に影響がない程度の干渉しか受けていないため、復調部111でデータBに復調され、信号の品質を示す指標が算出される。復調されたデータBは制御部112で信号B0に変調され、送信部102を通じて端末50に送信される。無線通信装置100および端末50との通信は、周波数帯αおよびβとは異なる周波数帯なので、信号B0の電力は端末50に伝えられる電力である。
【0046】
次に、干渉低減部113は、受信部101から送られた信号c2と、事前に認識している信号Bの既知シンボルP
Rおよび信号a1の既知シンボルP
Tの情報から、干渉伝搬路特性I
A1を推定する(ステップS303)。具体的には、信号a1によって、信号a2を送信するタイミングを合わせているので、受信部102が受信する信号c2は、既知シンボルP
Rが信号a2の既知シンボルP
Tによる干渉を受ける。干渉低減部113は、信号c2から既知シンボルP
Rを減算し、既知シンボルP
Tと比較することで、干渉伝搬路特性I
A1を推定する。
【0047】
以上のようにして、ステップS201の干渉伝搬路特性I
A1の推定を行う。
【0048】
図10に戻ると、制御部112は干渉低減部にデータAを含むリソースエレメントD
Tが配置された信号a3を干渉低減部113に送る。干渉低減部113は、この干渉伝搬路特性I
A1および信号a3から、干渉を低減させる信号Dを生成する(ステップS202)。この干渉は、送信部102が信号a3の送信を開始した場合に、受信部101が受信する信号c3が受ける干渉である。なお、制御部112は、信号a3を送信部102にも送り、信号a2に替えて信号a3の送信を開始するように指示する。
【0049】
次に、送信部102は制御部112の指示の通りに信号a2から信号a3に替えた送信を開始する(ステップS203)。この際、a2のときに合わせたタイミングを使用して、信号a3の送信を開始する。
なお、信号a3を送信することにより、受信部101は信号c3を受信することになる。このときの信号a3を送信する電力P3は、復調部111が行う信号c3からデータBへの復調に影響を及ぼさない程度の電力である。電力P3は、復調部111が行う信号c3からデータBへの復調に影響を及ぼさない程度の電力であれば、電力P1、電力P2と同じでなくてもよく、例えば電力P2よりも小さくしてもよい。なお、説明のために信号a3の干渉を受けた信号Bを信号c3と表記しているが、信号a3の送信を開始するときの電力P3は信号c3からデータBへの復調に影響を及ぼさない程度の電力であり、実質的には信号Bと信号c3はほとんど同一である。
【0050】
次に、干渉低減部113は、生成した信号Dを用いて、受信部101が受信する信号c3から、送信部102が送信する信号a3による干渉を低減させる処理を開始する(ステップS204)。なお、信号a3の送信に切り替わった後も、復調部111は信号Dによって干渉を低減させる処理を受けた信号c3を受け取り、データBに復調している。復調部111は信号Dを用いて干渉の低減処理された信号c3について、信号の品質を示す指標を算出し、制御部112へ送っている。制御部112は、復調されたデータBを信号B0に変調し、送信部102を通じて端末50に送信している。
【0051】
次に、干渉低減部113は、干渉伝搬路特性I
A1の更新を開始する(ステップS205)。この干渉伝搬路特性I
A1の更新は、一定時間おきに行われる。この一定時間は干渉低減部113によって定められるが、一定時間おきに限定されない。干渉低減部113が定める任意のタイミングで更新されるようにしてもよい。この干渉伝搬路特性I
A1の更新は、信号a3を用いて行われる。具体的には、受信部102が受信する信号c3は、既知シンボルP
Rが信号a3の既知シンボルP
Tによる干渉を受ける。干渉低減部113は、信号c2から既知シンボルP
Rを減算し、既知シンボルP
Tと比較することで、干渉伝搬路特性I
A1を新たに推定する。この際、一時的に信号a2に切り替えて干渉伝搬路特性I
A1を新たに推定するようにしてもよい。干渉低減部113は、制御部112から信号a3を受け取り、新たに推定した干渉伝搬路特性I
A1を用いて、新たに信号Dを生成する。干渉低減部113は、この新たに生成した信号Dに切り替えて、受信部101が受信する信号c3から送信部102が送信する信号a3による干渉を低減させる処理を継続する。
【0052】
次に、制御部112は、復調部111から送られた信号の品質を示す指標から、この信号の品質が一定以上かどうか判定する(ステップS206)。この信号とは、干渉低減部113が信号Dを用いて干渉の低減処理された信号c3である。制御部112が、この信号の品質が一定未満であると判定した場合(ステップS206:No)、干渉伝搬路特性I
A1の更新、信号c3が受けた信号a3による干渉の低減処理が進むのを待ち、再びステップS206に戻る。
【0053】
一方、制御部112が、この信号の品質が復調部111によるデータBの復調に影響がない程度の一定以上であると判定した場合(ステップS206:Yes)、制御部112は送信部102に対して信号a3を送信する電力P3を増加させるように指令する。送信部102は制御部から受けた指令の通りに、信号a3を送信する電力P3を増加させる(ステップS207)。
【0054】
信号a3はデータAを含んでいるが、送信を開始した当初の電力は受信部101による信号の受信および復調部111によるデータBへの復調に影響を及ぼさない程度であるので、無線通信装置200にデータAが届く可能性は低い。干渉低減部113が信号c3に含まれる干渉の低減を行い、制御部112が信号の品質が一定以上であると判定したタイミングで信号a3を送信する電力P3を増加させることで、復調部111によるデータBへの復調を確保しつつ、無線通信装置200にデータAが届く可能性を高めることが可能である。
【0055】
また、ステップS207にて信号a3を送信する電力P3を増加させることで、信号a3を送信する電力P3は信号c3からデータBへの復調に影響を及ぼす電力となり、実質的に信号Bと信号c3はほとんど同一ではなくなる。
【0056】
次に、干渉低減部113は、推定した干渉伝搬路特性I
A1が定常化したかを判定する(ステップS208)。具体的には、
図12を用いて説明する。
【0057】
図12には、周波数fに対する干渉伝搬路特性I
A1の周波数応答が表されている。1つは時刻T
1に推定された干渉伝搬路特性I
A1について実線で表されており、もう1つは時刻T
2に推定された干渉伝搬路特性I
A1について破線で表されている。時刻T
1に推定された干渉伝搬路特性I
A1は、直近に干渉低減部113が推定したものであり、時刻T
1に推定された干渉伝搬路特性I
A1は、1つ前に干渉低減部113が推定したものである。なお、時刻T
1とT
2の間の時間は干渉低減部113によって定められている。
【0058】
干渉低減部113は、この2つの干渉伝搬路特性I
A1の差分を周波数帯ごとに算出する。ある周波数帯におけるこの差分の絶対値を、e
T1−T2(f)と表す。干渉低減部113は、それぞれの周波数帯ごとにe
T1−T2(f)を算出する。干渉低減部113は、それぞれの周波数帯についてe
T1−T2(f)が干渉低減部113によって定められるしきい値以下であるかを判定する。干渉低減部113は、しきい値以下であると判定された周波数帯の数が、干渉低減部113が定めた一定以上であれば、干渉伝搬路特性I
A1が定常化したと判定する。干渉低減部113は、フルデュプレックス通信を行う周波数帯の数に対するしきい値以下であると判定された周波数帯の数の割合によって、干渉伝搬路特性I
A1が定常化したと判定するようにしてもよい。
【0059】
干渉低減部113が、干渉伝搬路特性I
A1が定常化したと判定したことをもって、信号c3が受けた信号a3による干渉の低減が定常的に行われたとする。
【0060】
なお、干渉伝搬路特性I
A1が定常化したかの判定については、しきい値の定め方は様々に考えられる。干渉低減部113は、それぞれの周波数帯ごとにe
T1−T2(f)を算出し、これらの和を取ってしきい値を比較してもよいし、e
T1−T2(f)の最大値や平均値としきい値を比べるようにしてもよい。また、2つの干渉伝搬路特性I
A1の比較にも限定されない。3つ以上の干渉伝搬路特性I
A1を対象にしてもよい。例えば、それぞれの周波数帯ごとに最大の干渉伝搬路特性I
A1の周波数応答と、最小の干渉伝搬路特性I
A1の周波数応答を抜き出し、差分を取るようにしてもよい。
【0061】
図10に戻ると、干渉低減部113が、干渉伝搬路特性I
A1が定常化していると判定した場合(ステップS208:Yes)、ステップS211に進む。一方、干渉低減部113が、干渉伝搬路特性I
A1が定常化していないと判定した場合(ステップS208:No)、干渉低減部113は、干渉伝搬路特性I
A1が一定時間に定常化したと判定されたことがあるかを確認する(ステップS209)。一定時間内に2つ干渉伝搬路特性I
A1を推定していない場合も、ステップS208:Noに含まれる。
【0062】
干渉低減部113が、干渉伝搬路特性I
A1が一定時間内に定常化したと判定したことがある場合(ステップS209:Yes)、干渉伝搬路特性I
A1の更新を待ち、再びステップS208に戻る。一定時間内に定常化したことがある場合は、干渉伝搬路特性I
A1の更新を続けていれば定常化するであろうと考えられるためである。また、一定時間内に2つ干渉伝搬路特性I
A1を推定していない場合も、ステップS209:Yesに含まれる。干渉伝搬路特性I
A1の更新が行われなければ、ステップS208の干渉伝搬路特性I
A1が定常化したか判別できないためである。
【0063】
一方、干渉低減部113が、干渉伝搬路特性I
A1が一定時間内に定常化したと判定したことがない場合(ステップS209:Yes)、干渉低減部113は干渉伝搬路特性I
A1の推定をやり直す準備を行う(ステップS210)。具体的には、干渉低減部113は干渉伝搬路特性I
A1の更新を停止する。また、干渉低減部113は、制御部112に干渉伝搬路特性I
A1の再推定を行うとする情報を伝える。この情報を受けた制御部112は、送信部102に信号a3から信号a1に切り替えて送信し、送信する電力を、信号a1の送信を開始した電力P1に落とすように指示する。送信部102は、制御部112の指令の通りに信号a1を、フルデュプレックス通信を開始したときの電力P1に落として送信する。その後、ステップS201に戻る。
【0064】
次に、ステップS208:Yes以降を説明すると、制御部112は、復調部111から送られる信号の品質を示す指標から、送信する信号の電力を制御する。(ステップS211〜S218)。具体的には、
図13を用いて説明する。
【0065】
図13は、時刻Tと信号の品質を表す指標(以降、指標とする)の関係を表す図である。この指標にはしきい値L
1、L
2、L
3が制御部112により設定されている。この指標がしきい値L
1であれば、制御部112は信号の品質が第1の状態であると判定する。この指標がしきい値L
2以上L
1未満であれば、制御部112は信号の品質が第2の状態であると判定する。この指標がしきい値L
3以上L
2未満であれば、制御部112は信号の品質が第3の状態であると判定する。この指標がしきい値L
3未満であれば、制御部112は信号の品質が第4の状態であると判定する。
【0066】
図10に戻ると、信号の品質が第1の状態である場合(ステップS211:Yes)、復調部111による信号の復調に影響がないため、制御部112は送信部102に対して、信号a3を送信する電力P3を増加させるように指示する。送信部102は、制御部112の指示の通りに電力P3を増加させて信号A3を送信する(ステップS212)。
【0067】
信号の品質が第2の状態である場合(ステップS211:No、ステップS213:Yes)、制御部112は、信号a3を送信する電力P3に関する指示を送信部102に送らない。送信部102は、現在の電力P3を維持して信号a3の送信を続ける。
【0068】
信号の品質が第3の状態である場合(ステップS213:No、ステップS214:Yes)、復調部111による信号の復調に影響が出ているため、制御部112は送信部102に対して信号a3を送信する電力P3を減少させるように指示する。送信部102は、制御部112の指示の通りに電力P3を減少させて信号a3を送信する(ステップS215)。
【0069】
信号の品質が第4の状態である場合(ステップS214:No)、復調部111による信号の復調に深刻な影響が出ているため、制御部112は送信部102に対して信号a3の送信を停止するように指示する。送信部102は、制御部112の指示の通りに信号a3の送信を停止する(ステップS216)。また、制御部112は干渉低減部113に対して干渉伝搬路特性I
A1および信号Dの更新を停止させ、信号c3が受けている干渉を低減させる処理を停止させるように指示する。干渉低減部113は制御部112からの指示の通りに干渉伝搬路特性I
A1および信号Dの更新を停止し、信号c3が受けている干渉を低減させる処理を停止する(ステップS217)。
【0070】
以上のようにして、制御部112は、復調部111から送られる信号の品質を示す指標から、送信する信号の電力を制御する。ここで、本実施形態では、信号の品質の高さによって状態を分けていたが、信号a3を送信する電力を制御する方法はこの方法に限定されない。信号のエラーの少なさを指標とするようにしてもよいし、しきい値を細分化または統合するようにしてもよい。信号の品質を表す指標から判定される第1の状態、第3の状態、第4の状態が、一定時間継続した場合に信号a3を送信する電力P3を制御するようにしてもよい。
【0071】
ステップS212、ステップS213:Yes、ステップS215以降を説明すると、制御部112は、無線通信装置100の動作を終了させる終了指令が届いていないかを確認する(ステップS218)。この終了指令は、無線通信装置100の動作を本フローで終了させる指令であり、ユーザによる入力や、終了指令を含んだ信号を受信部101が受信するなどして制御部112に伝えられる。この終了指令は、直ちに無線通信装置100の動作を終了させる指令であってもよい。
【0072】
制御部112にこの終了指令が届いていない場合(ステップS218:No)、ステップS208に戻る。一方、制御部112にこの終了指令が届いている場合(ステップS218:Yes)またはステップS217の後は、フローは終了し、無線通信装置100は動作を終了する。
【0073】
制御部112による信号a3を送信する電力P3の制御の一例を、
図14を用いて説明する。なお、干渉伝搬路特性I
A1は定常化しているものとし、時刻T
1〜T
7の間に終了指令はないものとする。また、既に干渉伝搬路特性I
A1の更新は開始されているので、時刻T
1〜T
7の間にも干渉伝搬路特性I
A1および信号Dの更新が行われているものとする。
【0074】
まず時刻T
1では、制御部112は信号の品質が第2の状態であると判定する。送信部102は信号a3を送信する電力P3を維持しながら信号a3の送信を継続する。干渉低減部113による信号c3が受ける干渉の低減も引き続き行われる。
【0075】
次に時刻T
2では、制御部112は信号の品質が第1の状態であると判定する。制御部112は送信部102に対して信号a3を送信する電力P3を増加させる。信号a3を送信する電力P3を増加させると、信号c3が受ける干渉の影響も増大するので、信号の品質を表す指標は悪化することになる。
【0076】
続く時刻T
3およびT
4では、制御部112は信号の品質が第2の状態であると判定する。干渉伝搬路特性I
A1および信号Dの更新により、信号の品質を表す指標は改善する。
【0077】
次に時刻T
5では、制御部112は信号の品質が第1の状態であると判定する。時刻T
2の時と同様に、制御部112は送信部102に対して信号a3を送信する電力P3を増加させる。
【0078】
時刻T
6では、制御部112は信号の品質が第3の状態であると判定する。信号a3を送信する電力P3の増加とともに、信号c3が受ける干渉の影響が増大し、復調部111による復調に影響を及ぼすと考えられる場合には、制御部112は送信部102に対して信号a3を送信する電力P3を減少させる。信号a3を送信する電力P3を減少させると、信号c3が受ける干渉の影響も減少するので、信号の品質を表す指標は良化することになる。
【0079】
時刻T
7では、制御部112は信号の品質が第2の状態であると判定する。信号a3を送信する電力P3を減少させたことで、信号の品質を表す指標は良化している。制御部112は送信部102に対して信号a3を送信する電力P3の増減の指示は行わない。
【0080】
以上のようにして、制御部112は送信部102が信号a3を送信する電力P3の制御を行う。
【0081】
以上に本実施形態を説明したが、変形例は様々に実装、実行可能である。例えば、
図1に示す本実施形態の無線通信システムでは、端末50、無線通信装置100、無線通信装置200が1台ずつであったが、2台以上としてもよい。無線通信装置100は複数の端末50と通信するものでもよいし、無線通信装置200は複数の無線通信装置100と通信するものでもよい。無線通信装置200と複数の無線通信装置100の通信の一部もしくは全部が、本実施形態で説明したフルデュプレックス通信でもよい。コアネットワーク250は複数の無線通信装置200と通信するものでもよい。
【0082】
また、
図2に示す無線通信装置100および200の通信システムにおいて、本実施形態では、信号Bを受信している周波数帯αのすべてを用いてフルデュプレックス通信を行っているが、一部の周波数帯でフルデュプレックス通信を行うようにしてもよい。例えば、周波数帯αを周波数帯α
1、α
2に細分化できる場合、信号Bは周波数帯α
1、α
2を用いて無線通信装置200から送信されるが、無線通信装置100は周波数帯α
1を用いて信号A1を送信してフルデュプレックス通信を行い、周波数帯α
2は信号Bの受信に用いるとしてもよい。
【0083】
また、本実施形態では、無線通信装置100および200は周波数帯αを用いてフルデュプレックス通信を開始していたが、さらに周波数帯βを用いてフルデュプレックス通信を行うようにしてもよい。例えば、無線通信装置200を無線通信装置100と同様の装置とする。この無線通信装置200は周波数帯α、βによる信号A1、A2の受信および周波数帯αによる送信を継続したまま、周波数帯βを用いて信号B
2の送信を開始するようにしてもよい。すなわち、無線通信装置100および200は周波数帯αおよびβでフルデュプレックス通信を開始するようにしてもよい。この場合の無線通信装置200の動作は、本実施形態で説明した無線通信装置100の動作と同様である。
【0084】
また、本実施形態では、
図2に示す無線通信装置100および200の通信システムにおいて、フルデュプレックス通信を行っていたが、フルデュプレックス通信を行うことは基地局である無線通信装置100および中継局である無線通信装置200に限定されない。例えば、本実施形態で説明した方法を用いて、端末50および無線通信装置100でフルデュプレックス通信が行われてもよいし、無線通信装置200およびコアネットワーク250でフルデュプレックス通信が行われるようにしてもよい。
【0085】
また、本実施形態における無線通信装置100は基地局であり、無線通信装置200は中継局であるとしていたが、これらに限定されない。本実施形態で説明した無線通信装置100の機能を有する装置を備えることで、無線通信装置100と同様の動作を行うようにしてもよい。この装置は外付けでもよいし、内蔵されていてもよい。
【0086】
また、本実施形態では、無線通信装置100は送信する信号A1の電力P1を増加させることで無線通信装置200に信号A1を届ける可能性を高めているが、信号A1の種類を選択することによって無線通信装置200に届く可能性を高めるようにしてもよい。例えば、信号には様々なMCS(Modulation and Coding Scheme)が存在する。一般に、より多くのデータを扱うことができるMCSであるほど、送信先の無線通信装置に届きにくい信号となる。制御部112は、データBから信号Bが用いたMCSを判定し、そのMCSよりも少ないデータを扱うMCSを用いて信号A1を構成するようにしてもよい。このようにすることで、無線通信装置200に信号A1が届く可能性を高めることができる。
【0087】
また、本実施形態では、無線通信装置100は送信する信号A1の電力P1を減少させることや、信号A1の送信を停止することで信号C(無線通信装置100が信号A1を送信していない場合は信号B)の品質を高めている。制御部112は、無線通信装置200に対して信号Bを送信する電力を増加させる指示を含んだ信号を生成し、送信部102に送信させるようにしてもよい。この際、制御部112はこの信号を、フルデュプレックス通信を行っていない周波数帯で送信させるようにしてもよい。例えば、制御部112は、本実施形態における周波数帯βを用いて送信部102にこの信号を送信させる。この信号を受けた無線通信装置200は信号Bを送信する電力を増加させる。このようにすることで、受信部101は信号BまたはCの受信を行いやすくすることができ、復調部111はデータBへの復調を行いやすくすることができる。
【0088】
また、干渉伝搬路特性I
A1の推定の方法は、本実施形態で説明した
図11に示す方法に限定されない。例えば、本実施形態で説明した方法では、信号a1およびa2を用いて干渉伝搬路特性I
A1の推定を行ったが、これらの信号a1、a2の代わりに、信号a4を用いて干渉伝搬路特性I
A1の推定を行うようにしてもよい。
【0089】
この信号a4の構造図を
図15に示す。信号a4には、特定の周波数帯のリソースエレメントに既知シンボルP
Tを割り当てることで、時間合わせの必要なく干渉伝搬路特性I
A1の推定を行うことができる。一方、本実施形態で説明した方法では、信号a2および信号c2によって、特定の周波数帯だけでなくフルデュプレックス通信を行う周波数帯における干渉伝搬路特性I
A1の推定を、より精度よく行うことができる。
【0090】
また、干渉伝搬路特性I
A1の推定の方法として、無線通信装置200が送信した信号Bのレプリカを作る方法もある。この場合、無線通信装置100は新たに処理部110に再変調部114を有する無線通信装置となる。この無線通信装置150の構成を、
図16に示す。なお、無線通信装置150は、再変調部114以外の構成要素は
図3で説明した無線通信装置100と同様であるため、同じ符号を付して説明を省略する。以降、
図3で説明した無線通信装置100の構成要素と異なる部分を説明する。
【0091】
まず、本実施形態では、信号a1、a2を用いて干渉伝搬路特性I
A1の推定を行っていたが、信号Bのレプリカを作る方法の場合は、はじめから信号a3を用いることが可能である。信号a1、a2を用いることもできるが、以下に信号a3を用いた場合を説明する。すなわち、無線通信装置150の受信部101は信号c3を受信する。信号a3を送信する電力は、本実施形態と同様に電力P3とする。
【0092】
無線通信装置150の復調部111は、復調したデータBを、干渉低減部113ではなく再変調部114に送る。復調したデータBは、信号Bのレプリカの生成に使われる。
【0093】
再変調部114は、復調部111から送られたデータBを、信号Bに再変調し、信号Bのレプリカを生成する。この信号Bのレプリカは、干渉低減部113に送られ、干渉伝搬路特性I
A1の推定に使われる。
【0094】
無線通信装置150の干渉低減部113は、受信部101から送られた信号c3と、再変調部から送られた信号Bのレプリカと、制御部112から送られた信号a3を用いて、干渉伝搬路特性I
A1の推定を行う。
【0095】
この無線通信装置150の動作は、
図9、
図10で説明した無線通信装置100の動作と大枠では同様であるが、この説明では信号a1、a2を用いていないため、送信する信号ははじめから信号a3である点が異なっている。また、この無線通信装置150の干渉伝搬路特性I
A1の推定の方法と、
図11で説明した干渉伝搬路特性I
A1の推定の方法が異なる点である。無線通信装置150による干渉伝搬路特性I
A1の推定の方法を、
図17を用いて説明する。なお、前提は無線通信装置100の動作で説明した前提と同様である。
【0096】
まず、再変調部114は復調部111から送られたデータBから信号Bを再変調し、信号Bのレプリカを生成する(ステップS401)。この信号Bのレプリカは干渉低減部113に送られる。なお、干渉低減部113には、受信部101から信号c3および制御部112から信号a3も送られている。
【0097】
次に、干渉低減部113は、信号Bのレプリカ、信号a3、および信号c3から、干渉伝搬路特性I
A1の推定を行う(ステップS402)。具体的には、信号c3から信号Bのレプリカを減算し、その信号と信号a3を比較することで干渉伝搬路特性I
A1を推定する。干渉低減部113は、信号Bの既知シンボルP
Rの情報だけでなく、信号Bのレプリカの生成によって信号Bのデータを含むリソースエレメントD
Rの情報も把握しているため、干渉伝搬路特性I
A1の推定を行うことが可能である。
【0098】
以上から、信号Bのレプリカを用いて干渉伝搬路特性I
A1の推定を行う。
【0099】
また、本実施形態では、干渉低減部113は信号a2を用いて干渉伝搬路特性I
A1の推定を行い、信号a3に切り替えた後に信号c3の干渉を低減させている。干渉低減部113は、信号a2を送信している間に信号c2の干渉を低減させるようにしてもよい。送信部102が信号a2から信号a3に切り替える前に、復調部111が復調した信号の品質が一定以上となる場合、制御部112は信号a2を送信する電力P2を増加させるようにしてもよい。電力P2が増加されると、信号c2が受ける干渉の影響も増大し、信号Bと信号c2は実質的に同一とはいえない。この状態から送信部102が信号a2から信号a3に切り替える場合、信号a3を送信する電力P3は電力P2と同等以上であってもよい。送信部102が信号a2を行っている際に、電力P2を増加させるほどに復調部111が復調した信号の品質が高いと考えられるためである。また、この場合、電力P3は電力P2と同等以上であるため、信号c3が受ける干渉の影響も大きく、信号Bと信号c3は実質的に同一とはいえない。
【0100】
また、本実施形態における無線通信装置100の機能は、プログラムによっても実現可能である。このプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD−ROM、メモリカード、CD−RおよびDVD(Digital Versatile Disk)などのコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由で提供されるようにしてもよいし、ROM、HDD、SSDなどの記憶媒体に組み込んで提供されるようにしてもよい。
【0101】
以上説明したように、本実施形態の無線通信装置100は、無線通信装置200との周波数分割複信を行っている間に、信号を受信している周波数帯を用いて信号の送信を開始し、フルデュプレックス通信を開始する。無線通信装置100はフルデュプレックス通信を開始した後に干渉伝搬路特性I
A1を推定し、受信した信号から無線通信装置100が送信した信号による干渉を低減させる。無線通信装置100は、干渉伝搬路特性I
A1が定常化する前に信号を送信する電力を増加させ、干渉伝搬路特性I
A1が定常化した後は復調する信号の品質から信号を送信する電力を制御する。このようにすることで、無線通信装置100は信号を受信している間に、この信号の受信と同じ周波数帯を用いてフルデュプレックス通信を開始することができる。また、無線通信装置100が送信する信号による干渉の干渉伝搬路特性を事前に推定しなくともフルデュプレックス通信を開始することができる。
【0102】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規の実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。