特許第6957611号(P6957611)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6957611
(24)【登録日】2021年10月8日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】クロム仕上げ表面の処理方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 5/48 20060101AFI20211021BHJP
   C25D 3/06 20060101ALI20211021BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20211021BHJP
   C25D 5/14 20060101ALI20211021BHJP
   C25D 9/08 20060101ALI20211021BHJP
   C23C 22/05 20060101ALI20211021BHJP
   C23C 22/82 20060101ALI20211021BHJP
【FI】
   C25D5/48
   C25D3/06
   C25D7/00 P
   C25D5/14
   C25D9/08
   C23C22/05
   C23C22/82
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-516472(P2019-516472)
(86)(22)【出願日】2017年9月26日
(65)【公表番号】特表2019-529715(P2019-529715A)
(43)【公表日】2019年10月17日
(86)【国際出願番号】EP2017074305
(87)【国際公開番号】WO2018060166
(87)【国際公開日】20180405
【審査請求日】2020年9月1日
(31)【優先権主張番号】16190870.2
(32)【優先日】2016年9月27日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】300081877
【氏名又は名称】アトテツク・ドイチユラント・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Atotech Deutschland GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーナ プフィルマン
(72)【発明者】
【氏名】ベルケム エズカヤ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ヴァハター
(72)【発明者】
【氏名】ナンシー ボアン
【審査官】 ▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−074170(JP,A)
【文献】 特開2010−185116(JP,A)
【文献】 特開2005−191524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D3/06,5/14,5/48−5/52
C23C22/05−22/68,22/82−22/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腐食耐性を改善するためのクロム仕上げ表面の後処理方法であって、
a) クロム仕上げ表面、および前記クロム仕上げ表面と基材との間の、ニッケル、ニッケル合金、銅および銅合金からなる群から選択される少なくとも1つの中間層を有する基材を準備すること、
ここで、前記クロム仕上げ表面は、三価クロムめっき層の表面であり、前記少なくとも1つの中間層を有する基材を、主たるクロム源としてクロム(III)イオンを含むめっき浴中で電気めっきすることによって得られる、
b) 前記クロム仕上げ表面を、
・ 過マンガン酸塩
・ リン・酸素化合物、水酸化物、ニトレート、ボレート、ホウ酸、シリケートから選択される少なくとも1つの化合物、またはそれらの化合物の2つ以上の混合物
を含む水溶液と接触させること、
c) 段階b)におけるクロム表面と水溶液との接触の間に、透明な腐食保護層を前記クロム仕上げ表面上に形成すること
を含み、
ここで「透明」との用語は、段階c)において形成された透明な腐食保護層と、クロム仕上げ表面の未処理の表面との色差ΔE
【数1】
(LAB色空間、EN ISO 11664−4)が、<2であることを意味する、
前記方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの化合物が、ホスフェート、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、ピロホスフェート、ホスホネートまたはそれらの混合物としての無機のリン・酸素化合物、水酸化物、ボレートまたはニトレートから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記めっき浴がクロム(VI)イオン不含であり、且つ形成される三価クロムめっき層は、クロムを45〜90at%(原子パーセント)の量で、酸素を5〜20at%の量で含み、ただし全ての化学元素を一緒にした合計量は100at%を上回らず、且つクロムの量は、全ての場合において三価クロムめっき層内で最も多い量である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記めっき浴がクロム(VI)イオン不含であり、且つ三価クロムめっき層は、クロムを45〜90at%の量で、酸素を5〜20at%の量で、鉄を0〜30at%の量で、炭素を0〜15at%の量で、硫黄を0〜15at%の量で、およびさらなる金属または非金属を0〜1at%の量で含み、ただし全ての化学元素を一緒にした合計量は100at%を上回らず、且つクロムの量は、全ての場合において三価クロムめっき層内で最も多い量である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
細孔、または細孔とクラックとを有する三価クロムめっき層と直接接触している1つの中間層は、
光沢ニッケル層ではない少なくとも1つのさらなる中間層を有する基材を電気めっきすることにより得られる光沢ニッケル層またはサテンニッケル層、または
微細孔質ニッケル層ではない少なくとも1つのさらなる中間層を有する基材を電気めっきすることにより得られる微細孔質ニッケル層
である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
段階b)で、クロム表面と、不活性対向電極との間に電位を印加する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
クロム表面の面積に対して電流密度0.005〜5A/dm2が生成される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記電位を5〜900秒間印加する、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
さらなる段階として、
d) 段階b)において水溶液で処理した後にクロム表面を、MnO2を還元または溶解できる成分で処理すること
を含む、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記成分が過酸化水素、ヒドラジン、ヨウ化カリウム、亜硫酸ナトリウム、硫酸ヒドロキシルアンモニウム、または炭水化物である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
さらなる段階として、
段階b)において水溶液で処理した後且つ段階d)において酸および/または還元剤で処理する前にクロム表面を濯ぐこと、
を含む、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記水溶液中の過マンガン酸塩の濃度が、0.05〜4.5mol/Lである、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記水溶液中のリン・酸素化合物、水酸化物、ニトレート、ボレート、ホウ酸またはシリケートの濃度が、0.05〜2mol/Lである、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法において、クロム仕上げ表面を処理して透明な腐食保護層を前記クロム仕上げ表面上に形成するための、
・ 過マンガン酸塩
・ リン・酸素化合物、水酸化物、ニトレート、ボレート、ホウ酸、シリケートから選択される少なくとも1つの化合物、またはそれらの化合物の2つ以上の混合物
を含む水溶液の使用であって、ここで「透明」との用語は、段階c)において形成された透明な腐食保護層と、クロム仕上げ表面の未処理の表面との色差ΔE
【数2】
(LAB色空間、EN ISO 11664−4)が、<2であることを意味する、前記使用。
【請求項15】
透明な腐食保護層を有する処理されたクロム仕上げ表面は、少なくとも120時間のNSS試験(ISO 9227)の適用後に表面のいかなる変化も示さない(欠陥面積: 0%)、請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腐食耐性を改善するためのクロム仕上げ表面の後処理方法であって、クロム仕上げ表面を水溶液で処理する前記方法、クロム仕上げ表面の腐食耐性および/または不動態化を改善するための前記水溶液の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
クロム表面は様々な用途、例えば、基材、例えば自動車および衛生産業におけるプラスチック部品のための装飾金属仕上げにおいて、またはめっきされた部品、例えば緩衝器のための耐摩耗性コーティングとして使用される。クロム表面は通常、基材の外表面であり、Cr(III)イオン、Cr(VI)イオンのいずれか、またはその両方を含むめっき浴組成物からクロム層を電気めっきすることによって得られる。
【0003】
得られる装飾クロム表面は通常、非常に光沢があり、審美的な要請を満たす。それにもかかわらず、クロム層の装飾クロム表面は、それぞれ基材および基材上の追加的な下にある層に対する腐食保護ももたらす。しかしながら、クロム表面のいくつかの用途において、例えば自動車および衛生産業において、Cr(III)に基づく電解液から堆積されるクロム層によってもたらされる腐食保護は、例えばクロム表面の外観が変化しないことが求められる480時間のISO 9227 NSS試験の場合において十分ではない。この要請は現在のところ、Cr(VI)に基づく電解液からのめっきによって、または有毒なCr(VI)イオンを含む溶液を用いた後処理方法を適用することによってしか満たされ得ない。
【0004】
少なくとも1つの他の金属または金属合金層が、前記クロム層と基材との間に配置されている。前記少なくとも1つの金属または金属合金層は、ニッケル層、ニッケル合金層、銅層および銅合金層の1つ以上から選択される。
【0005】
クロム層は通常、めっきまたは(熱)アニール後にマイクロクラック、または例えば下にある微孔質ニッケル層によって作り出される細孔を含む。従って、クロム層と基材との間の層の材料も環境に曝露される。従って、外表面としてクロム層を有する基材の望ましくない腐食は、下にある層の腐食によって引き起こされる。クロム層の外表面上に形成されたクロム酸化物層は、クロム層の前記外表面を腐食から保護するが、下にある層は保護しない。最外層としてクロム層を含むそのような多層集成体は、例えば米国特許出願公開第2012/0052319号明細書(US2012/0052319 A1)内に開示されている。
【0006】
クロム表面および下にある金属および/または金属合金層の腐食に対する抵抗を高めるための種々の方法が当該技術分野で公知である。
【0007】
導電性基材のカソード電着のために適用される0.05〜3質量%のスルホネートおよび/またはホスホネート基またはそれらのそれぞれのエステルを含有するポリマーを含む被覆剤が、米国特許第4724244号明細書(US4724244)内に開示されている。前記ポリマーが導電性基材上に堆積され、それによって数μm、例えば18μmの厚さを有する腐食保護層が形成される。腐食耐性は前記処理によって高められるが、クロム表面の光学的な外観および表面の感触は、厚いポリマー層によって劇的に変化し、そのことは例えばクロム表面の装飾用途については受け容れられない。さらにこの方法は、堆積されたポリマーの熱硬化を必要とし、それは高い硬化温度を必要とするので、自動車産業において一般的なプラスチック基材には適用できない。
【0008】
親水性のアニオン性官能基と共に疎水性炭素鎖を有する化合物を含む水溶液を用いた金属表面のアノード処理が、欧州特許出願公開第2186928号明細書(EP2186928 A1)内に開示されている。前記方法によって腐食耐性を高めることができるが、水で濯いだ後でも、曇った外観を作り出す残留物が金属表面上、特にダーククロム表面上に残ったままである。従って、前記方法は、クロム表面の腐食耐性を高め且つ前記クロム表面の光学特性、つまり光沢のある装飾的な光学的外観を保持するためには適していない。
【0009】
欧州特許出願公開第2826890号明細書(EP2826890 A1)は、クロム表面、および基材とクロム層との間の、ニッケル、ニッケル合金、銅および銅合金を含む群から選択される少なくとも1つの中間層を有する基材のカソード腐食保護方法であって、前記クロム表面を、少なくとも1つのホスホネート化合物を含む水溶液と接触させる一方で、前記基材、少なくとも1つのアノードおよび水溶液に電流を通し、その際、前記基材がカソードとしてはたらく、前記方法に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/0052319号明細書
【特許文献2】米国特許第4724244号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第2186928号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第2826890号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、クロム表面を有する基材の腐食保護方法であって、クロム表面の光学的な外観を保持する前記方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の概要
本発明は、湿式化学法において腐食耐性を改善するための、クロム仕上げ表面のための後処理としての過マンガン酸塩系配合物の適用に関する。
【0013】
この課題は、腐食耐性を改善するためのクロム仕上げ表面の後処理方法であって、
a) クロム仕上げ表面、および前記クロム仕上げ表面と基材との間の、ニッケル、ニッケル合金、銅および銅合金からなる群から選択される少なくとも1つの中間層を有する基材を準備すること、
ここで、前記クロム仕上げ表面は、三価クロムめっき層の表面であり、前記少なくとも1つの中間層を有する基材を、主たるクロム源としてクロム(III)イオンを含むめっき浴中で電気めっきすることによって得られる、
b) 前記クロム仕上げ表面を、
・ 過マンガン酸塩
・ リン・酸素化合物、水酸化物、ニトレート、ボレート、ホウ酸、シリケートから選択される少なくとも1つの化合物、またはそれらの化合物の2つ以上の混合物
を含む水溶液と接触させること、
c) 段階b)におけるクロム仕上げ表面と水溶液との接触の間に、透明な腐食保護層を前記クロム仕上げ表面上に形成すること
を含む、前記方法によって解決される。
【0014】
高められた腐食耐性を、ISO 9227 NSSに準拠する塩水噴霧試験によって示すことができる。NSSによって示される達成された腐食耐性は少なくとも120時間であり、表面の外観のいかなる変化もない(欠陥面積: 0%)。前記方法は特に、自動車、白物製品および衛生産業用の用途、例えば自動車の外装(客室の外側の)部品、例えばバンパー、装飾用ストリップ、ブランド名の書き込み等; 白物製品、例えば冷蔵庫、電子レンジ、洗濯機等; 自動車の内装(客室内の)部品、例えば装飾用ストリップ、制御ボタン等; および衛生部品、例えばシャワーヘッド、給水栓等の上の、可視の装飾クロム仕上げ表面における基材上のクロム仕上げ表面のために使用される。
【0015】
さらには、本発明の方法により、外観、好ましくは所望の光沢のある外観およびクロム仕上げ表面の色が、後処理後に維持される。
【0016】
本発明に関する「クロム仕上げ表面」または「クロム表面」との用語(本願内では同等に使用される)は、クロム層のクロム仕上げ表面が、人間の肉眼で可視であり(目視検査)、基材上への最後の金属層であることを意味する。この最後の金属層は、段階b)において形成される透明な腐食保護層および任意に透明な有機コーティングによってのみ被覆される。換言すれば、クロム仕上げ表面または腐食保護層上に、さらなる金属層は施与されない。
【0017】
「三価クロムめっき層」と「クロム層」との用語は同等に使用される。「三価クロムめっき層」とは、クロム(III)イオンを主たるクロム源として含むクロム浴からめっきされたクロム層を表す。クロム層は、上述のとおり、「クロム仕上げ表面」または「クロム表面」によってその寸法が制限されている。
【0018】
本発明に関する「透明」との用語は、クロム仕上げ表面の所望の外観、好ましくは光沢のある外観、および色が、後処理後に著しく変えられないことを意味する。換言すれば、処理された表面と未処理の表面との色差ΔE、例えば
【数1】
(LAB色空間、EN ISO 11664−4)が、<2であり、従って肉眼ではほとんど検出できない。それらの結果は特に、光沢のあるクロム仕上げ表面について、透明な腐食保護層の形成後のさらなる処理段階があってもなくても、見出すことができる。以下に説明するように、ダーククロム層の場合、透明な腐食保護層の形成後のさらなる処理段階が好ましいことがある。
【0019】
本発明は、さらなる態様において、クロム仕上げ表面を処理して、前記クロム仕上げ表面上に透明な腐食保護層を形成して特にクロム表面の腐食耐性および/または不動態化を改善するための、
・ 過マンガン酸塩
・ リン・酸素化合物、水酸化物、ニトレート、ボレート、ホウ酸、シリケートから選択される少なくとも1つの化合物、またはそれらの化合物の2つ以上の混合物
を含む水溶液の使用に関する。前記水溶液は好ましくは、自動車、白物製品および衛生産業における基材のための用途における基材上の装飾クロム仕上げ表面としてのクロム仕上げ表面上で使用される。
【0020】
1つの実施態様において、前記水溶液を使用した後に、透明な腐食保護層を有する処理されたクロム仕上げ表面は、少なくとも120時間のNSS試験(ISO 9227)の適用後に表面のいかなる変化も示さない(欠陥面積: 0%)。
【0021】
発明の詳細な説明
基材は、限定されない例として、プラスチック、例えばABS、ABS/PC、PA、PI、PP製物品、(プラスチック部品とも称される)、金属製物品、またはセラミック製物品であってよい。クロム表面、および基材とクロム表面との間の、ニッケル、ニッケル合金、銅および銅合金からなる群から選択される少なくとも1つの中間層を有する基材を製造するために、まず前記中間層を基材表面(例えばプラスチック表面)上に堆積し、次いでクロム層を堆積してクロム表面を製造できる。
【0022】
ニッケル、ニッケル合金、銅および銅合金からなる群から選択される少なくとも1つの中間層は、基材と、表面が曝露されているクロム層との間に配置されている。前記中間層は、基材の内側部とクロム層との間に配置されている。いわゆる基材の内側部は基材のバルク部、例えばプラスチック部であり、基材のかさ容積を構成する。
【0023】
1つの実施態様において、銅、半光沢ニッケル、光沢ニッケル(任意に非伝導性粒子含有ニッケル(「微孔質ニッケル」))を備えた中間層、および仕上げのクロム層の順での多層構造を有したABS基材を使用できる。
【0024】
特定の実施例において、クロム表面は、中間層を含む基材をめっき浴中で電気めっきすることによって得られる三価クロムめっき層の表面であり、前記めっき浴は主たるクロム源としてクロム(III)イオンを含み、ここで前記めっき浴は本質的にクロム(VI)イオン不含であり、それはクロム(VI)イオンの含有率が<0.02質量%であることを意味する。好ましくは、クロム(VI)イオンはめっき浴に添加されない。
【0025】
三価クロムめっき層とそれらの組成物の形成は当該技術分野において公知であり、例えば欧州特許出願公開第2201161号明細書(EP2201161 A2)内に記載される。
【0026】
前記方法の好ましい実施態様において、めっき浴は本質的にクロム(VI)イオン不含であり、且つ三価クロムめっき層は、クロムを45〜90at%(原子パーセント)の量で、酸素を5〜20at%の量で含み、ただし全ての化学元素を一緒にした合計量は100at%を上回らず、且つクロムの量は、全ての場合において三価クロムめっき層内で最も多い量である。
【0027】
前記方法のより好ましい実施態様において、めっき浴は本質的にクロム(VI)イオン不含であり、且つ三価クロムめっき層は、クロムを45〜90at%の量で、酸素を5〜20at%の量で、鉄を0〜30at%、好ましくは5〜30at%の量で、炭素を0〜15at%、好ましくは5〜15at%の量で、硫黄を0〜15at%、好ましくは1〜10at%の量で、およびさらなる金属または非金属を0〜1at%の量で含み、ただし全ての化学元素を一緒にした合計量は100at%を上回らず、且つクロムの量は、全ての場合において三価クロムめっき層内で最も多い量である。
【0028】
前記方法の他の好ましい実施態様において、めっき浴は本質的にクロム(VI)イオン不含であり、且つ三価クロムめっき層は、80〜85at%の量のクロム、5〜15at%の量の酸素、5〜10at%の量の炭素、0.5〜2at%の量の硫黄からなり、ただし、前記三価クロムめっき層内で全ての化学元素を一緒にした合計量は100at%を上回らない。
【0029】
前記方法のさらに他の好ましい実施態様において、めっき浴は本質的にクロム(VI)イオン不含であり、且つ三価クロムめっき層は、45〜80at%の量のクロム、5〜20at%の量の酸素、1〜30at%の量の鉄、5〜20at%の量の炭素、0〜10at%の量の硫黄からなり、ただし、前記三価クロムめっき層内で全ての化学元素を一緒にした合計量は100at%を上回らない。
【0030】
前記方法のめっき浴の前記の好ましい実施態様によって製造された三価クロムめっき層は、好ましくは、自動車の外装部品、例えば可視の装飾用クロム仕上げ表面のための用途における基材上のクロム仕上げ表面のために使用される。
【0031】
クロム層は好ましくは厚さ0.1〜0.6μmを有する。
【0032】
少なくとも1つの中間層は、平滑且つ光沢のあるクロム表面を得るために使用され、なぜなら、クロム層自体は非常に薄く、基材表面によってもたらされる凹凸を水平にできないからである。
【0033】
クロム層は通常、電気めっきの間、または(熱)アニールの後に生じるクラック、好ましくはマイクロクラックを含む。下にある少なくとも1つの中間層(三価クロムめっき層に直接接触する)は、NiまたはCuイオンを含む電気めっき浴によって形成されるニッケル層、ニッケル合金層、銅層または銅合金層である。三価クロムめっき層と直接接触する好ましい中間層は、光沢またはサテンニッケル層であり、それはクロム層に対する犠牲層として機能できる。
【0034】
本発明による他のクロム層は好ましくはクラックを含有せず、細孔も含有しない。
【0035】
クラックを有する、またはクラックを有さないこのクロム層は、白物製品、客室内の自動車部品、および衛生産業のための用途における基材上のクロム仕上げ表面のために、例えば可視の装飾用クロム仕上げ表面のために好ましく使用される。
【0036】
特定の多孔性、例えば微細孔性を有する他のタイプのクロム層は、ニッケルまたはニッケル合金層、または、非伝導性物質、例えば二酸化ケイ素および/または酸化アルミニウムの小さな粒子を含むニッケルまたはニッケル合金層の複合層(いわゆる微細孔質ニッケル「MPSニッケル」層)の上にクロム層を電気めっきすることによって形成される。細孔を有するそれらのクロム層は、客室外の自動車部品のための用途における基材上のクロム仕上げ表面のために、例えば可視の装飾用クロム仕上げ表面のために好ましく使用される。
【0037】
好ましくは、細孔を有する、三価クロムめっき層と直接接触する少なくとも1つの中間層の1つの中間層は、例えばブライトナーを含むニッケル電気めっき浴で基材を電気めっきすることによって得られるニッケル層、例えば光沢ニッケル層、サテンニッケル層またはマットニッケル層; 非伝導性物質、例えば二酸化ケイ素および/または酸化アルミニウムの小さな粒子を含むニッケル電気めっき浴で基材を電気めっきすることによって得られるMPSニッケル層である。前記基材は少なくとも1つのさらなる中間層を有し、前記さらなる中間層は、光沢ニッケルの場合には光沢ニッケル層ではなく、またはMPSニッケル層の場合にはMPSニッケル層ではない。
【0038】
直接接触する下にある光沢またはサテンニッケル層から誘導される三価クロムめっき層内の細孔の数は、約100個の孔/cm2またはそれより多く、好ましくは100〜2000個の孔/cm2である。直接接触する下にあるMPSニッケル層から誘導される三価クロムめっき層内の細孔の数は、約10000個の孔/cm2またはそれより多く、好ましくは20000個の孔/cm2より多く、さらにより好ましくは20000〜500000個の孔/cm2である。活性な細孔の平均直径は約2μmである。細孔数は公知の試験、例えば、Dupernell試験、Cass試験または細孔計数試験(未公開の独国特許出願公開第102016013792.4号明細書(DE102016013792.4))によって測定できる。いくつかの場合において、クロム表面層は、約500〜5000/cmの細孔およびクラック(好ましくはマイクロクラック)を含む。
【0039】
光沢ニッケル層は好ましくは厚さ2〜20μmを有する。MPSニッケル層は好ましくは厚さ0.5〜3.5μmを有する。それら全ての場合において、クロム層は、下にある中間金属および/または金属合金層を密封しない。従って、クロム層と直接接触する少なくとも最外の中間層も、環境および腐食媒体に曝露される。その接触は、上述の細孔を通じて生じ得る。
【0040】
水溶液(以下で「溶液」とも称する)中の過マンガン酸塩(つまり、過マンガン酸イオンMnO4-)の濃度は、好ましくは0.05〜4.5mol/L、より好ましくは0.1〜0.5mol/Lの範囲である。適した過マンガン酸塩は、限定することなく、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カリウムまたは過マンガン酸アンモニウムである。
【0041】
リン・酸素化合物は、無機のリン・酸素化合物または有機のリン・酸素化合物であってよい。
【0042】
好ましい無機のリン・酸素化合物は、リンのオキソ酸またはその塩である。具体的には、無機のリン・酸素化合物は、ホスフェート、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、ピロホスフェート、ホスホネート(つまりホスホン酸の塩)、またはそれらの酸形態から選択され得る。それらの化合物の1つ以上の混合物も本発明に含まれる。
【0043】
有機のリン・酸素化合物は、少なくとも1つの炭化水素基を含むリン・酸素化合物を意味する。好ましい有機のリン・酸素化合物は、少なくとも1つの炭化水素基を含むリンのオキソ酸またはその塩である。具体的には、有機のリン・酸素化合物は、有機ホスホネート(R−PO(OH)2、R=炭化水素基)、リン酸のエステル、ホスホン酸(亜リン酸も)のエステル、ホスフィットエステルまたはそれらの塩から選択され得る。それらの化合物の1つ以上の混合物も本発明に含まれる。
【0044】
リン・酸素化合物、水酸化物、ニトレート、ボレート、ホウ酸、シリケートから選択される少なくとも1つの化合物、またはそれらの化合物の2つ以上の組み合わせの濃度は、好ましくは0.05〜2mol/L、より好ましくは0.2〜0.6mol/Lの範囲である。この濃度は、1つ以上の化合物が存在する場合、全ての化合物の合計濃度に対する。前記化合物がイオン性化合物である場合、この濃度はアニオン、または上記の化合物中のアニオン、例えばPO43-、H2PO4-、R1PO(OR2)O-(前記式中、R1=アルキル、アリール、R2=H、アルキル、アリール)、NO3-、OH-、B472-に関する。前記化合物を、緩衝剤、具体的にはKH2PO4、Na247として、酸、例えばHNO3として、または塩基またはブライン、例えばNaOHとして添加できる。1つより多くのそれらの化合物が使用される場合、濃度は全てのそれらの化合物の合計濃度を示す。溶液のpHに依存して、1つより多く(つまり、それらの2つ以上)のリン・酸素化合物が存在でき、例えば塩および酸の形態、例えばリン酸((二)水素)および亜リン酸が同時に存在できる。ボレートは、一ホウ酸塩、二ホウ酸塩、三ホウ酸塩および/または四ホウ酸塩として存在し得る。上述の化合物の適したカチオンは、酸でなければ、限定されずにナトリウム、カリウムおよびアンモニウムである。
【0045】
1つの実施態様において、特にH3PO4/HPO4-またはH2PO4-/HPO42-が使用される場合、水溶液のpH値は1〜7の範囲である。
【0046】
他の実施態様において、特にOH-が使用される場合、水溶液のpH値は7〜11の範囲である。
【0047】
他の実施態様において、特にHNO3が使用される場合、水溶液のpH値は1〜5の範囲である。
【0048】
段階b)のクロム仕上げ表面と水溶液との接触の間にクロム仕上げ表面上に形成される透明な腐食保護層は、約1〜50nm、好ましくは5〜10nmの厚さを有する。理論に束縛されることを望むものではないが、酸化クロム(III)は、過マンガン酸塩処理によってクロム層のクロムによって形成され、従って透明な腐食保護層は主成分としての酸化クロム(III)(Cr23)を含むと考えられる。
【0049】
クロム仕上げ表面を含む基材を水溶液と、前記基材を前記水溶液中に浸漬することによって、前記水溶液を前記基材上に噴霧することによって、または前記水溶液を前記基材上に刷毛塗りすることによって、接触させることができる。クロム仕上げ表面と水溶液とを接触させるための接触時間は、5〜900秒、好ましくは10〜400秒、好ましくは浸漬の場合は5〜900秒である。
【0050】
本発明の方法を無電解または電流を印加して実施できる。1つの実施態様において、前記方法の段階b)で、アノードまたはカソードとしてはたらくクロム表面と、不活性対向電極との間に電位を印加し、好ましくはクロム表面がカソードとしてはたらき、且つ対向電極がアノードとしてはたらく。不活性対向電極は、例えばステンレス鋼、グラファイト、混合酸化物被覆チタンまたは白金付きチタンを含む群から選択される材料製であってよい。
【0051】
電位を印加する際、電流がクロム表面を含む基材を通過する。好ましくは、クロム表面はカソードとしてはたらく。
【0052】
電流を追加的に印加することを使用して腐食耐性を改善でき、その際、NSSによって示される達成される腐食耐性は120時間を上回り、好ましくは少なくとも120時間〜240時間、より好ましくは少なくとも120時間〜480時間、表面のいかなる変化もない(欠陥面積: 0%)。理論に束縛されないが、下にある金属層、好ましくは光沢ニッケル層、サテンNi層またはMPSニッケル層(三価クロムめっき層と直接接触している)も影響を受けて、クラックまたは細孔およびクロム層のクラックに隣接する不動態化層を少なくとも部分的に形成すると考えられる。このように、腐食の半反応1)酸素の還元反応(クロム表面上、カソード)と、2)ニッケルの溶解(細孔またはクラックを通じて曝露される下にあるニッケル表面上、アノード)が抑制され、改善された腐食耐性がもたらされる。
【0053】
カソードとしてはたらくクロム表面の面積に対して0.005〜5A/dm2、好ましくは0.02〜1.5A/dm2の電流密度が生成され得る。
【0054】
アノードとしてはたらくクロム表面の場合、0.5A/dm2未満、好ましくは0.005〜0.5A/dm2の電流密度が好ましい。
【0055】
電解法が使用される場合、物品と溶液との接触時間は、無電解法と同じ範囲であってよい。クロム表面がカソードとしてはたらく場合、電位または電流は、5〜900秒、好ましくは10〜400秒間印加され得る。
【0056】
クロム表面がアノードとしてはたらく場合、電位または電流は、100秒未満、好ましくは60秒未満、最も好ましくは5〜60秒間印加され得る。
【0057】
クロム表面と水溶液との接触は、前記溶液の温度20〜100℃、好ましくは25〜50℃で行うことができる。
【0058】
電解法の間、クロム表面を含む基材を水溶液と、前記基材を前記水溶液中に浸漬することによって、前記水溶液を前記基材上に噴霧することによって、または前記水溶液を前記基材上に刷毛塗りすることによって、好ましくは浸漬によって、接触させることができる。
【0059】
段階c)の後、透明な腐食保護層を有する処理されたクロム表面に、水、好ましくはDI水での濯ぎ段階を適用して、前記水溶液を濯いでよい。
【0060】
過マンガン酸塩での処理の間、MnO2が透明な腐食保護層上に形成されることがある。好ましくは、形成された透明腐食保護層は、段階c)の後、本質的にMnO2不含である。
【0061】
「本質的にMnO2不含」とは、透明な腐食保護層の表面または前記表面の一部の上のMnO2の量が、クロム仕上げ表面、特に光沢クロム仕上げ表面の外観上の変色が人間の肉眼によって観察されないほど少ないことを意味する(目視検査)。
【0062】
いくつかの場合、例えばダーククロム表面の場合、形成された透明な腐食保護層は目視検査によって検出可能なMnO2を含み得る。
【0063】
従って、1つの実施態様において、本発明の方法はさらなる段階として、
d) 段階b)において水溶液で処理した後に、クロム表面を、MnO2を還元または溶解できる成分で、特に酸および/または還元剤で処理すること
を含む。
【0064】
前記成分での、特に還元剤での処理によって、過マンガン酸塩での処理後のクロム仕上げ表面の外観および色を改善できるか、または再構築でき、その際、透明な腐食保護層は変化されず、120時間のNSS後の腐食耐性を達成する。
【0065】
還元段階の後にクロム表面の外観上の色の変化は観察されないことが示された。リン・酸素化合物を含む溶液が段階b)において使用された場合、段階d)において、MnO2層が還元され、リンを多く含む酸化クロム(III)層を得ることができることが示されている。そのようなリンを多く含む層が有益な不動態化特性を有することがわかった。理論に束縛されることを望むものではないが、酸化クロム(III)は過マンガン酸塩処理によって形成されると考えられる。しかしながら、本方法によって、段階b)およびd)の後に、酸化物層が形成され、その酸化物の厚さは、変性されていない表面(つまり、段階b)およびd)によって処理されていない表面)に比して厚いことが示された。
【0066】
前記成分、特に還元剤は過酸化水素、ヒドラジン、ヨウ化カリウム、亜硫酸ナトリウム、硫酸ヒドロキシルアンモニウムまたは炭水化物、好ましくは還元炭化水素、好ましくは還元糖、さらにより好ましくは単糖類、例えばグルコースであってよい。
【0067】
前記の酸は硫酸、硝酸、アスコルビン酸および酢酸から選択できる。
【0068】
酸および/または還元剤が好ましくは溶液に適用される。
【0069】
前記成分、例えば酸および/または還元剤での処理温度は、25〜45℃であってよい。適用時間は好ましくは10〜600秒である。
【0070】
1つの実施態様において、本発明による方法はさらなる段階として、
段階b)での水溶液での処理後且つ段階d)での成分での処理前にクロム表面を濯ぐこと
を含む。
【0071】
前記水溶液は電導度塩および/または界面活性剤を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1図1は、めっきされた時点のクロム表面、後処理後のクロム表面、および例6による後処理および還元段階後のクロム表面上で実施されたXPS分析結果を示す。
図2図2は、めっきされた時点のクロム表面、後処理後のクロム表面、および例6による後処理および還元段階後のクロム表面の、表面の元素組成を示す。
図3図3は、XPSスパッタプロファイリングを用いて取得された、めっきされた時点の表面、後処理され還元された表面の深さ方向のプロファイルを示す図である。破線はCrとO濃度とが交差する点を示し、それは例6による酸化膜厚の定性的な指標として捉えることができる。
図4図4は、ISO 9227に準拠した480時間後の塩水噴霧試験のパネルを示す。例1に従い(後処理なし)および例2に従い(後処理あり)、上方のパネルは表面上に可視の腐食生成物を有する後処理なしのクロム表面を示し、下方のパネルは後処理された表面を示す。
【実施例】
【0073】
ここで、本発明を以下の限定されない例を参照して説明する。
【0074】
多層の銅、半光沢ニッケル、光沢ニッケル、任意の非伝導性粒子含有ニッケル(「微孔質ニッケル」)および仕上げのクロム層を含む同じ大きさのABS基材、並びに光沢ニッケル層および仕上げのクロム層を含む真鍮パネル(10×10mm)を、実施例のために使用した。クロム層は、それぞれの例で示されるとおり、光沢クロム層またはダーククロム層のいずれかであり、それは三価クロムに基づく電解質から堆積された。
【0075】
クロム表面の光学的な外観を、塩水噴霧試験前に視覚的に検査した。
【0076】
塩水噴霧(NSS)試験を、ISO 9227に準拠して実施した。それらの結果をそれぞれの例と共に示す。
【0077】
例1(比較):
光沢クロム表面(真鍮パネル)を後処理なしで、ISO 9227 NSSに準拠する塩水噴霧試験によって調査した。
【0078】
未処理の光沢クロム表面は、120時間後のクロム表面が視覚的に検査された際に、外観の著しい変化(欠陥面積>5〜10%)を有する。
【0079】
例2
光沢クロム表面(真鍮パネル)を、40g/Lの過マンガン酸カリウム(KMnO4)および50g/Lのリン酸二水素一カリウム(KH2PO4)を含む水溶液で、90秒間、25℃で処理しながら、カソードとしてのクロム表面に電流密度1A/dm2を印加した。その後、クロム表面をDI水で濯ぎ、H2SO4およびH22からなる溶液中に5秒間、25℃で浸漬した。
【0080】
光学的な外観は後処理後に著しく変化しておらず、且つ処理されたクロム表面は、480時間の塩水噴霧試験後に視覚的に検査された際にいかなる変化もなく、腐食試験に合格した(欠陥面積: 0%)。
【0081】
例3(比較)
光沢クロム表面(多層構造内で非伝導性粒子含有ニッケルを有する、ABSキャップ)を後処理なしで、ISO 9227 NSSに準拠する塩水噴霧試験によって調査した。
【0082】
未処理の光沢クロム表面は、120時間後に視覚的に検査された際に、クロム表面の外観の著しい変化を有した(欠陥面積>10〜25%)。
【0083】
例4
光沢クロム表面(多層構造内で非伝導性粒子含有ニッケルを有さない、ABSキャップ)を、40g/Lの過マンガン酸カリウム(KMnO4)および50g/Lのリン酸二水素一カリウム(KH2PO4)を含む水溶液で、90秒間、25℃で処理しながら、カソードとしてのクロム表面に電流密度1A/dm2を印加した。その後、クロム表面をDI水で濯ぎ、H2SO4およびH22からなる溶液中に5秒間、25℃で浸漬した。
【0084】
光学的な外観は後処理後に著しく変化しておらず、且つ処理されたクロム表面は、480時間の塩水噴霧試験後に視覚的に検査された際にいかなる変化もなく、腐食試験に合格した(欠陥面積: 0%)。
【0085】
例5
光沢クロム表面(多層構造内で非伝導性粒子含有ニッケルを有する、ABSキャップ)を、40g/Lの過マンガン酸ナトリウム(NaMnO4)および50g/Lのリン酸二水素一カリウム(KH2PO4)を含む水溶液で、10分間、50℃で処理し、前記クロム表面に外部電流は印加しなかった。
【0086】
光学的な外観は後処理後に著しく変化しておらず、且つ処理されたクロム表面は、120時間の塩水噴霧試験後に視覚的に検査された際にいかなる変化もなく、腐食試験に合格した(欠陥面積: 0%)。
【0087】
例6
光沢クロム表面(多層構造内で非伝導性粒子含有ニッケルを有する、ABSキャップ)を、40g/Lの過マンガン酸ナトリウム(NaMnO4)および50g/Lのリン酸二水素一カリウム(KH2PO4)を含む水溶液で、60秒間、25℃で処理しながら、カソードとしてのクロム表面に電流密度0.5A/dm2を印加した。その後、クロム表面をDI水で濯ぎ、H2SO4およびH22からなる溶液中に5秒間、25℃で浸漬した。
【0088】
光学的な外観は後処理後に著しく変化しておらず、且つ処理されたクロム表面は、120時間の塩水噴霧試験後に視覚的に検査された際にいかなる変化もなく、腐食試験に合格した(欠陥面積: 0%)。480時間の塩水噴霧試験後であっても、そのクロム表面は、クロム表面のわずかな変化しか示さなかった(欠陥面積<0.5%)。
【0089】
例7
光沢クロム表面(多層構造内で非伝導性粒子含有ニッケルを有する、ABSキャップ)を、40g/Lの過マンガン酸カリウム(KMnO4)および50g/Lのリン酸二水素一カリウム(KH2PO4)を含む水溶液で、3分間、25℃で処理しながら、カソードとしてのクロム表面に電流密度0.5A/dm2を印加した。その後、クロム表面をDI水で濯ぎ、H2SO4およびH22からなる溶液中に5秒間、25℃で浸漬した。
【0090】
光学的な外観は後処理後に著しく変化しておらず、且つ処理されたクロム表面は、480時間の塩水噴霧試験後に視覚的に検査された際にいかなる変化もなく、腐食試験に合格した(欠陥面積: 0%)。
【0091】
例8
光沢クロム表面(多層構造内で非伝導性粒子含有ニッケルを有する、ABSキャップ)を、40g/Lの過マンガン酸ナトリウム(NaMnO4)および50mL/Lの水酸化ナトリウム溶液(NaOH、30質量%)を含む水溶液で、30秒間、50℃で処理しながら、カソードとしてのクロム表面に電流密度0.5A/dm2を印加した。その後、クロム表面をDI水で濯ぎ、H2SO4およびH22からなる溶液中に5秒間、25℃で浸漬した。
【0092】
光学的な外観は後処理後に著しく変化しておらず、且つ処理されたクロム表面は、120時間の塩水噴霧試験後に視覚的に検査された際にいかなる変化もなく、腐食試験に合格した(欠陥面積: 0%)。
【0093】
例9
光沢クロム表面(多層構造内で非伝導性粒子含有ニッケルを有する、ABSキャップ)を、40g/Lの過マンガン酸ナトリウム(NaMnO4)および15g/Lの四ホウ酸ナトリウム(Na247・10H2O)を含む水溶液で、10分間、50℃で処理し、前記クロム表面に外部電流は印加しなかった。その後、クロム表面をDI水で濯ぎ、H2SO4およびH22からなる溶液中に5秒間、25℃で浸漬した。
【0094】
光学的な外観は後処理後に著しく変化しておらず、且つ処理されたクロム表面は、未処理に比較して腐食耐性の強化を示し、120時間の塩水噴霧試験後に視覚的に検査された際に、処理されたクロム表面は、クロム表面のわずかな変化しか示さない(欠陥面積<0.25%)。
【0095】
例10(比較)
ダーククロム表面(多層構造内で非伝導性粒子含有ニッケルを有する、ABSキャップ)を後処理なしで、ISO 9227 NSSに準拠する塩水噴霧試験によって調査した。
【0096】
未処理のダーククロム表面は、120時間後に視覚的に検査された際に、クロム表面の外観の著しい変化を有する(欠陥面積>50%)。
【0097】
例11
ダーククロム表面(多層構造内で非伝導性粒子含有ニッケルを有さない、ABSキャップ)を、40g/Lの過マンガン酸カリウム(KMnO4)および50g/Lのリン酸二水素一カリウム(KH2PO4)を含む水溶液で、90秒間、25℃で処理しながら、カソードとしてのクロム表面に電流密度1A/dm2を印加した。その後、クロム表面をDI水で濯ぎ、H2SO4およびH22からなる溶液中に5秒間、25℃で浸漬した。
【0098】
光学的な外観は後処理後に著しく変化しておらず、且つ処理されたクロム表面は、120時間の塩水噴霧試験後に視覚的に検査された際にいかなる変化もなく、腐食試験に合格した(欠陥面積: 0%)。480時間の塩水噴霧試験後であっても、そのクロム表面は、クロム表面のわずかな変化しか示さない(欠陥面積<0.25%)。
【0099】
例12
ダーククロム表面(真鍮パネル)を、40g/Lの過マンガン酸カリウム(KMnO4)および50g/Lのリン酸二水素一カリウム(KH2PO4)を含む水溶液で、90秒間、25℃で処理しながら、カソードとしてのクロム表面に電流密度1A/dm2を印加した。その後、クロム表面をDI水で濯ぎ、H2SO4およびH22からなる溶液中に5秒間、25℃で浸漬した。
【0100】
光学的な外観は後処理後に著しく変化しておらず、且つ処理されたクロム表面は、120時間の塩水噴霧試験後に視覚的に検査された際にいかなる変化もなく、腐食試験に合格した(欠陥面積: 0%)。240時間の塩水噴霧試験後に、そのクロム表面は、クロム表面のわずかな変化しか示さない(欠陥面積<0.1%)。
【0101】
例13
ダーククロム表面(多層構造内で非伝導性粒子含有ニッケルを有する、ABSキャップ)を、40g/Lの過マンガン酸カリウム(KMnO4)および50g/Lのリン酸二水素一カリウム(KH2PO4)を含む水溶液で、10分間、50℃で処理し、前記クロム表面に外部電流は印加しなかった。その後、クロム表面をDI水で濯ぎ、H2SO4およびH22からなる溶液中に5秒間、25℃で浸漬した。
【0102】
光学的な外観は後処理後に著しく変化しておらず、且つ処理されたクロム表面は、未処理に比較して腐食耐性の著しい強化を示し、480時間の塩水噴霧試験後に視覚的に検査された際に、処理されたクロム表面は、クロム表面のわずかな変化しか示さなかった(欠陥面積<0.1%)。
【0103】
例14
ダーククロム表面(多層構造内で非伝導性粒子含有ニッケルを有する、ABSキャップ)を、40g/Lの過マンガン酸カリウム(KMnO4)および50g/Lの硝酸(HNO3)を含む水溶液で、10分間、50℃で処理し、前記クロム表面に外部電流は印加しなかった。その後、クロム表面をDI水で濯ぎ、H2SO4およびH22からなる溶液中に5秒間、25℃で浸漬した。
【0104】
光学的な外観は後処理後に著しく変化しておらず、且つ処理されたクロム表面は、120時間の塩水噴霧試験後に視覚的に検査された際にいかなる変化もなく、腐食試験に合格した(欠陥面積: 0%)。240時間の塩水噴霧試験後に、そのクロム表面は、クロム表面のわずかな変化しか示さない(欠陥面積<0.1%)。
【0105】
例15
光沢クロム表面(多層構造内で非伝導性粒子含有ニッケルを有する、ABSキャップ)を、40g/Lの過マンガン酸カリウム(KMnO4)および50g/Lのリン酸二水素一カリウム(KH2PO4)を含む水溶液で、90秒間、25℃で処理しながら、カソードとしてのクロム表面に電流密度0.1A/dm2を印加した。その後、クロム表面をDI水で濯いだ。
【0106】
光学的な外観は後処理後に著しく変化しておらず、且つ処理されたクロム表面は、480時間の塩水噴霧試験後に視覚的に検査された際に表面のいかなる変化もなく、腐食試験に合格した(欠陥面積: 0%)。
【0107】
例16
光沢クロム表面(多層構造内で非伝導性粒子含有ニッケルを有する、ABSキャップ)を、40g/Lの過マンガン酸カリウム(KMnO4)および50g/Lのリン酸二水素一カリウム(KH2PO4)を含む水溶液で、90秒間、25℃で処理しながら、カソードとしてのクロム表面に電流密度1.5A/dm2を印加した。その後、クロム表面をDI水で濯いだ。
【0108】
光学的な外観は後処理後に変化しておらず、且つ処理されたクロム表面は、480時間の塩水噴霧試験後に視覚的に検査された際に表面のいかなる変化もなく、腐食試験に合格した(欠陥面積<0.1%)。
【0109】
例17
光沢クロム表面(多層構造内で非伝導性粒子含有ニッケルを有する、ABSキャップ)を、40g/Lの過マンガン酸カリウム(KMnO4)および50g/Lのリン酸二水素一カリウム(KH2PO4)を含む水溶液で、90秒間、25℃で処理しながら、カソードとしてのクロム表面に電流密度1.0A/dm2を印加した。その後、クロム表面をDI水で濯いだ。
【0110】
光学的な外観は後処理後に変化しておらず、且つ処理されたクロム表面は、480時間の塩水噴霧試験後に視覚的に検査された際に表面のいかなる変化もなく、腐食試験に合格した(欠陥面積: 0%)。
図1
図2
図3
図4