【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の概要
本発明は、湿式化学法において腐食耐性を改善するための、クロム仕上げ表面のための後処理としての過マンガン酸塩系配合物の適用に関する。
【0013】
この課題は、腐食耐性を改善するためのクロム仕上げ表面の後処理方法であって、
a) クロム仕上げ表面、および前記クロム仕上げ表面と基材との間の、ニッケル、ニッケル合金、銅および銅合金からなる群から選択される少なくとも1つの中間層を有する基材を準備すること、
ここで、前記クロム仕上げ表面は、三価クロムめっき層の表面であり、前記少なくとも1つの中間層を有する基材を、主たるクロム源としてクロム(III)イオンを含むめっき浴中で電気めっきすることによって得られる、
b) 前記クロム仕上げ表面を、
・ 過マンガン酸塩
・ リン・酸素化合物、水酸化物、ニトレート、ボレート、ホウ酸、シリケートから選択される少なくとも1つの化合物、またはそれらの化合物の2つ以上の混合物
を含む水溶液と接触させること、
c) 段階b)におけるクロム仕上げ表面と水溶液との接触の間に、透明な腐食保護層を前記クロム仕上げ表面上に形成すること
を含む、前記方法によって解決される。
【0014】
高められた腐食耐性を、ISO 9227 NSSに準拠する塩水噴霧試験によって示すことができる。NSSによって示される達成された腐食耐性は少なくとも120時間であり、表面の外観のいかなる変化もない(欠陥面積: 0%)。前記方法は特に、自動車、白物製品および衛生産業用の用途、例えば自動車の外装(客室の外側の)部品、例えばバンパー、装飾用ストリップ、ブランド名の書き込み等; 白物製品、例えば冷蔵庫、電子レンジ、洗濯機等; 自動車の内装(客室内の)部品、例えば装飾用ストリップ、制御ボタン等; および衛生部品、例えばシャワーヘッド、給水栓等の上の、可視の装飾クロム仕上げ表面における基材上のクロム仕上げ表面のために使用される。
【0015】
さらには、本発明の方法により、外観、好ましくは所望の光沢のある外観およびクロム仕上げ表面の色が、後処理後に維持される。
【0016】
本発明に関する「クロム仕上げ表面」または「クロム表面」との用語(本願内では同等に使用される)は、クロム層のクロム仕上げ表面が、人間の肉眼で可視であり(目視検査)、基材上への最後の金属層であることを意味する。この最後の金属層は、段階b)において形成される透明な腐食保護層および任意に透明な有機コーティングによってのみ被覆される。換言すれば、クロム仕上げ表面または腐食保護層上に、さらなる金属層は施与されない。
【0017】
「三価クロムめっき層」と「クロム層」との用語は同等に使用される。「三価クロムめっき層」とは、クロム(III)イオンを主たるクロム源として含むクロム浴からめっきされたクロム層を表す。クロム層は、上述のとおり、「クロム仕上げ表面」または「クロム表面」によってその寸法が制限されている。
【0018】
本発明に関する「透明」との用語は、クロム仕上げ表面の所望の外観、好ましくは光沢のある外観、および色が、後処理後に著しく変えられないことを意味する。換言すれば、処理された表面と未処理の表面との色差ΔE、例えば
【数1】
(LAB色空間、EN ISO 11664−4)が、<2であり、従って肉眼ではほとんど検出できない。それらの結果は特に、光沢のあるクロム仕上げ表面について、透明な腐食保護層の形成後のさらなる処理段階があってもなくても、見出すことができる。以下に説明するように、ダーククロム層の場合、透明な腐食保護層の形成後のさらなる処理段階が好ましいことがある。
【0019】
本発明は、さらなる態様において、クロム仕上げ表面を処理して、前記クロム仕上げ表面上に透明な腐食保護層を形成して特にクロム表面の腐食耐性および/または不動態化を改善するための、
・ 過マンガン酸塩
・ リン・酸素化合物、水酸化物、ニトレート、ボレート、ホウ酸、シリケートから選択される少なくとも1つの化合物、またはそれらの化合物の2つ以上の混合物
を含む水溶液の使用に関する。前記水溶液は好ましくは、自動車、白物製品および衛生産業における基材のための用途における基材上の装飾クロム仕上げ表面としてのクロム仕上げ表面上で使用される。
【0020】
1つの実施態様において、前記水溶液を使用した後に、透明な腐食保護層を有する処理されたクロム仕上げ表面は、少なくとも120時間のNSS試験(ISO 9227)の適用後に表面のいかなる変化も示さない(欠陥面積: 0%)。
【0021】
発明の詳細な説明
基材は、限定されない例として、プラスチック、例えばABS、ABS/PC、PA、PI、PP製物品、(プラスチック部品とも称される)、金属製物品、またはセラミック製物品であってよい。クロム表面、および基材とクロム表面との間の、ニッケル、ニッケル合金、銅および銅合金からなる群から選択される少なくとも1つの中間層を有する基材を製造するために、まず前記中間層を基材表面(例えばプラスチック表面)上に堆積し、次いでクロム層を堆積してクロム表面を製造できる。
【0022】
ニッケル、ニッケル合金、銅および銅合金からなる群から選択される少なくとも1つの中間層は、基材と、表面が曝露されているクロム層との間に配置されている。前記中間層は、基材の内側部とクロム層との間に配置されている。いわゆる基材の内側部は基材のバルク部、例えばプラスチック部であり、基材のかさ容積を構成する。
【0023】
1つの実施態様において、銅、半光沢ニッケル、光沢ニッケル(任意に非伝導性粒子含有ニッケル(「微孔質ニッケル」))を備えた中間層、および仕上げのクロム層の順での多層構造を有したABS基材を使用できる。
【0024】
特定の実施例において、クロム表面は、中間層を含む基材をめっき浴中で電気めっきすることによって得られる三価クロムめっき層の表面であり、前記めっき浴は主たるクロム源としてクロム(III)イオンを含み、ここで前記めっき浴は本質的にクロム(VI)イオン不含であり、それはクロム(VI)イオンの含有率が<0.02質量%であることを意味する。好ましくは、クロム(VI)イオンはめっき浴に添加されない。
【0025】
三価クロムめっき層とそれらの組成物の形成は当該技術分野において公知であり、例えば欧州特許出願公開第2201161号明細書(EP2201161 A2)内に記載される。
【0026】
前記方法の好ましい実施態様において、めっき浴は本質的にクロム(VI)イオン不含であり、且つ三価クロムめっき層は、クロムを45〜90at%(原子パーセント)の量で、酸素を5〜20at%の量で含み、ただし全ての化学元素を一緒にした合計量は100at%を上回らず、且つクロムの量は、全ての場合において三価クロムめっき層内で最も多い量である。
【0027】
前記方法のより好ましい実施態様において、めっき浴は本質的にクロム(VI)イオン不含であり、且つ三価クロムめっき層は、クロムを45〜90at%の量で、酸素を5〜20at%の量で、鉄を0〜30at%、好ましくは5〜30at%の量で、炭素を0〜15at%、好ましくは5〜15at%の量で、硫黄を0〜15at%、好ましくは1〜10at%の量で、およびさらなる金属または非金属を0〜1at%の量で含み、ただし全ての化学元素を一緒にした合計量は100at%を上回らず、且つクロムの量は、全ての場合において三価クロムめっき層内で最も多い量である。
【0028】
前記方法の他の好ましい実施態様において、めっき浴は本質的にクロム(VI)イオン不含であり、且つ三価クロムめっき層は、80〜85at%の量のクロム、5〜15at%の量の酸素、5〜10at%の量の炭素、0.5〜2at%の量の硫黄からなり、ただし、前記三価クロムめっき層内で全ての化学元素を一緒にした合計量は100at%を上回らない。
【0029】
前記方法のさらに他の好ましい実施態様において、めっき浴は本質的にクロム(VI)イオン不含であり、且つ三価クロムめっき層は、45〜80at%の量のクロム、5〜20at%の量の酸素、1〜30at%の量の鉄、5〜20at%の量の炭素、0〜10at%の量の硫黄からなり、ただし、前記三価クロムめっき層内で全ての化学元素を一緒にした合計量は100at%を上回らない。
【0030】
前記方法のめっき浴の前記の好ましい実施態様によって製造された三価クロムめっき層は、好ましくは、自動車の外装部品、例えば可視の装飾用クロム仕上げ表面のための用途における基材上のクロム仕上げ表面のために使用される。
【0031】
クロム層は好ましくは厚さ0.1〜0.6μmを有する。
【0032】
少なくとも1つの中間層は、平滑且つ光沢のあるクロム表面を得るために使用され、なぜなら、クロム層自体は非常に薄く、基材表面によってもたらされる凹凸を水平にできないからである。
【0033】
クロム層は通常、電気めっきの間、または(熱)アニールの後に生じるクラック、好ましくはマイクロクラックを含む。下にある少なくとも1つの中間層(三価クロムめっき層に直接接触する)は、NiまたはCuイオンを含む電気めっき浴によって形成されるニッケル層、ニッケル合金層、銅層または銅合金層である。三価クロムめっき層と直接接触する好ましい中間層は、光沢またはサテンニッケル層であり、それはクロム層に対する犠牲層として機能できる。
【0034】
本発明による他のクロム層は好ましくはクラックを含有せず、細孔も含有しない。
【0035】
クラックを有する、またはクラックを有さないこのクロム層は、白物製品、客室内の自動車部品、および衛生産業のための用途における基材上のクロム仕上げ表面のために、例えば可視の装飾用クロム仕上げ表面のために好ましく使用される。
【0036】
特定の多孔性、例えば微細孔性を有する他のタイプのクロム層は、ニッケルまたはニッケル合金層、または、非伝導性物質、例えば二酸化ケイ素および/または酸化アルミニウムの小さな粒子を含むニッケルまたはニッケル合金層の複合層(いわゆる微細孔質ニッケル「MPSニッケル」層)の上にクロム層を電気めっきすることによって形成される。細孔を有するそれらのクロム層は、客室外の自動車部品のための用途における基材上のクロム仕上げ表面のために、例えば可視の装飾用クロム仕上げ表面のために好ましく使用される。
【0037】
好ましくは、細孔を有する、三価クロムめっき層と直接接触する少なくとも1つの中間層の1つの中間層は、例えばブライトナーを含むニッケル電気めっき浴で基材を電気めっきすることによって得られるニッケル層、例えば光沢ニッケル層、サテンニッケル層またはマットニッケル層; 非伝導性物質、例えば二酸化ケイ素および/または酸化アルミニウムの小さな粒子を含むニッケル電気めっき浴で基材を電気めっきすることによって得られるMPSニッケル層である。前記基材は少なくとも1つのさらなる中間層を有し、前記さらなる中間層は、光沢ニッケルの場合には光沢ニッケル層ではなく、またはMPSニッケル層の場合にはMPSニッケル層ではない。
【0038】
直接接触する下にある光沢またはサテンニッケル層から誘導される三価クロムめっき層内の細孔の数は、約100個の孔/cm
2またはそれより多く、好ましくは100〜2000個の孔/cm
2である。直接接触する下にあるMPSニッケル層から誘導される三価クロムめっき層内の細孔の数は、約10000個の孔/cm
2またはそれより多く、好ましくは20000個の孔/cm
2より多く、さらにより好ましくは20000〜500000個の孔/cm
2である。活性な細孔の平均直径は約2μmである。細孔数は公知の試験、例えば、Dupernell試験、Cass試験または細孔計数試験(未公開の独国特許出願公開第102016013792.4号明細書(DE102016013792.4))によって測定できる。いくつかの場合において、クロム表面層は、約500〜5000/cmの細孔およびクラック(好ましくはマイクロクラック)を含む。
【0039】
光沢ニッケル層は好ましくは厚さ2〜20μmを有する。MPSニッケル層は好ましくは厚さ0.5〜3.5μmを有する。それら全ての場合において、クロム層は、下にある中間金属および/または金属合金層を密封しない。従って、クロム層と直接接触する少なくとも最外の中間層も、環境および腐食媒体に曝露される。その接触は、上述の細孔を通じて生じ得る。
【0040】
水溶液(以下で「溶液」とも称する)中の過マンガン酸塩(つまり、過マンガン酸イオンMnO
4-)の濃度は、好ましくは0.05〜4.5mol/L、より好ましくは0.1〜0.5mol/Lの範囲である。適した過マンガン酸塩は、限定することなく、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カリウムまたは過マンガン酸アンモニウムである。
【0041】
リン・酸素化合物は、無機のリン・酸素化合物または有機のリン・酸素化合物であってよい。
【0042】
好ましい無機のリン・酸素化合物は、リンのオキソ酸またはその塩である。具体的には、無機のリン・酸素化合物は、ホスフェート、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、ピロホスフェート、ホスホネート(つまりホスホン酸の塩)、またはそれらの酸形態から選択され得る。それらの化合物の1つ以上の混合物も本発明に含まれる。
【0043】
有機のリン・酸素化合物は、少なくとも1つの炭化水素基を含むリン・酸素化合物を意味する。好ましい有機のリン・酸素化合物は、少なくとも1つの炭化水素基を含むリンのオキソ酸またはその塩である。具体的には、有機のリン・酸素化合物は、有機ホスホネート(R−PO(OH)
2、R=炭化水素基)、リン酸のエステル、ホスホン酸(亜リン酸も)のエステル、ホスフィットエステルまたはそれらの塩から選択され得る。それらの化合物の1つ以上の混合物も本発明に含まれる。
【0044】
リン・酸素化合物、水酸化物、ニトレート、ボレート、ホウ酸、シリケートから選択される少なくとも1つの化合物、またはそれらの化合物の2つ以上の組み合わせの濃度は、好ましくは0.05〜2mol/L、より好ましくは0.2〜0.6mol/Lの範囲である。この濃度は、1つ以上の化合物が存在する場合、全ての化合物の合計濃度に対する。前記化合物がイオン性化合物である場合、この濃度はアニオン、または上記の化合物中のアニオン、例えばPO
43-、H
2PO
4-、R
1PO(OR
2)O
-(前記式中、R
1=アルキル、アリール、R
2=H、アルキル、アリール)、NO
3-、OH
-、B
4O
72-に関する。前記化合物を、緩衝剤、具体的にはKH
2PO
4、Na
2B
4O
7として、酸、例えばHNO
3として、または塩基またはブライン、例えばNaOHとして添加できる。1つより多くのそれらの化合物が使用される場合、濃度は全てのそれらの化合物の合計濃度を示す。溶液のpHに依存して、1つより多く(つまり、それらの2つ以上)のリン・酸素化合物が存在でき、例えば塩および酸の形態、例えばリン酸((二)水素)および亜リン酸が同時に存在できる。ボレートは、一ホウ酸塩、二ホウ酸塩、三ホウ酸塩および/または四ホウ酸塩として存在し得る。上述の化合物の適したカチオンは、酸でなければ、限定されずにナトリウム、カリウムおよびアンモニウムである。
【0045】
1つの実施態様において、特にH
3PO
4/HPO
4-またはH
2PO
4-/HPO
42-が使用される場合、水溶液のpH値は1〜7の範囲である。
【0046】
他の実施態様において、特にOH
-が使用される場合、水溶液のpH値は7〜11の範囲である。
【0047】
他の実施態様において、特にHNO
3が使用される場合、水溶液のpH値は1〜5の範囲である。
【0048】
段階b)のクロム仕上げ表面と水溶液との接触の間にクロム仕上げ表面上に形成される透明な腐食保護層は、約1〜50nm、好ましくは5〜10nmの厚さを有する。理論に束縛されることを望むものではないが、酸化クロム(III)は、過マンガン酸塩処理によってクロム層のクロムによって形成され、従って透明な腐食保護層は主成分としての酸化クロム(III)(Cr
2O
3)を含むと考えられる。
【0049】
クロム仕上げ表面を含む基材を水溶液と、前記基材を前記水溶液中に浸漬することによって、前記水溶液を前記基材上に噴霧することによって、または前記水溶液を前記基材上に刷毛塗りすることによって、接触させることができる。クロム仕上げ表面と水溶液とを接触させるための接触時間は、5〜900秒、好ましくは10〜400秒、好ましくは浸漬の場合は5〜900秒である。
【0050】
本発明の方法を無電解または電流を印加して実施できる。1つの実施態様において、前記方法の段階b)で、アノードまたはカソードとしてはたらくクロム表面と、不活性対向電極との間に電位を印加し、好ましくはクロム表面がカソードとしてはたらき、且つ対向電極がアノードとしてはたらく。不活性対向電極は、例えばステンレス鋼、グラファイト、混合酸化物被覆チタンまたは白金付きチタンを含む群から選択される材料製であってよい。
【0051】
電位を印加する際、電流がクロム表面を含む基材を通過する。好ましくは、クロム表面はカソードとしてはたらく。
【0052】
電流を追加的に印加することを使用して腐食耐性を改善でき、その際、NSSによって示される達成される腐食耐性は120時間を上回り、好ましくは少なくとも120時間〜240時間、より好ましくは少なくとも120時間〜480時間、表面のいかなる変化もない(欠陥面積: 0%)。理論に束縛されないが、下にある金属層、好ましくは光沢ニッケル層、サテンNi層またはMPSニッケル層(三価クロムめっき層と直接接触している)も影響を受けて、クラックまたは細孔およびクロム層のクラックに隣接する不動態化層を少なくとも部分的に形成すると考えられる。このように、腐食の半反応1)酸素の還元反応(クロム表面上、カソード)と、2)ニッケルの溶解(細孔またはクラックを通じて曝露される下にあるニッケル表面上、アノード)が抑制され、改善された腐食耐性がもたらされる。
【0053】
カソードとしてはたらくクロム表面の面積に対して0.005〜5A/dm
2、好ましくは0.02〜1.5A/dm
2の電流密度が生成され得る。
【0054】
アノードとしてはたらくクロム表面の場合、0.5A/dm
2未満、好ましくは0.005〜0.5A/dm
2の電流密度が好ましい。
【0055】
電解法が使用される場合、物品と溶液との接触時間は、無電解法と同じ範囲であってよい。クロム表面がカソードとしてはたらく場合、電位または電流は、5〜900秒、好ましくは10〜400秒間印加され得る。
【0056】
クロム表面がアノードとしてはたらく場合、電位または電流は、100秒未満、好ましくは60秒未満、最も好ましくは5〜60秒間印加され得る。
【0057】
クロム表面と水溶液との接触は、前記溶液の温度20〜100℃、好ましくは25〜50℃で行うことができる。
【0058】
電解法の間、クロム表面を含む基材を水溶液と、前記基材を前記水溶液中に浸漬することによって、前記水溶液を前記基材上に噴霧することによって、または前記水溶液を前記基材上に刷毛塗りすることによって、好ましくは浸漬によって、接触させることができる。
【0059】
段階c)の後、透明な腐食保護層を有する処理されたクロム表面に、水、好ましくはDI水での濯ぎ段階を適用して、前記水溶液を濯いでよい。
【0060】
過マンガン酸塩での処理の間、MnO
2が透明な腐食保護層上に形成されることがある。好ましくは、形成された透明腐食保護層は、段階c)の後、本質的にMnO
2不含である。
【0061】
「本質的にMnO
2不含」とは、透明な腐食保護層の表面または前記表面の一部の上のMnO
2の量が、クロム仕上げ表面、特に光沢クロム仕上げ表面の外観上の変色が人間の肉眼によって観察されないほど少ないことを意味する(目視検査)。
【0062】
いくつかの場合、例えばダーククロム表面の場合、形成された透明な腐食保護層は目視検査によって検出可能なMnO
2を含み得る。
【0063】
従って、1つの実施態様において、本発明の方法はさらなる段階として、
d) 段階b)において水溶液で処理した後に、クロム表面を、MnO
2を還元または溶解できる成分で、特に酸および/または還元剤で処理すること
を含む。
【0064】
前記成分での、特に還元剤での処理によって、過マンガン酸塩での処理後のクロム仕上げ表面の外観および色を改善できるか、または再構築でき、その際、透明な腐食保護層は変化されず、120時間のNSS後の腐食耐性を達成する。
【0065】
還元段階の後にクロム表面の外観上の色の変化は観察されないことが示された。リン・酸素化合物を含む溶液が段階b)において使用された場合、段階d)において、MnO
2層が還元され、リンを多く含む酸化クロム(III)層を得ることができることが示されている。そのようなリンを多く含む層が有益な不動態化特性を有することがわかった。理論に束縛されることを望むものではないが、酸化クロム(III)は過マンガン酸塩処理によって形成されると考えられる。しかしながら、本方法によって、段階b)およびd)の後に、酸化物層が形成され、その酸化物の厚さは、変性されていない表面(つまり、段階b)およびd)によって処理されていない表面)に比して厚いことが示された。
【0066】
前記成分、特に還元剤は過酸化水素、ヒドラジン、ヨウ化カリウム、亜硫酸ナトリウム、硫酸ヒドロキシルアンモニウムまたは炭水化物、好ましくは還元炭化水素、好ましくは還元糖、さらにより好ましくは単糖類、例えばグルコースであってよい。
【0067】
前記の酸は硫酸、硝酸、アスコルビン酸および酢酸から選択できる。
【0068】
酸および/または還元剤が好ましくは溶液に適用される。
【0069】
前記成分、例えば酸および/または還元剤での処理温度は、25〜45℃であってよい。適用時間は好ましくは10〜600秒である。
【0070】
1つの実施態様において、本発明による方法はさらなる段階として、
段階b)での水溶液での処理後且つ段階d)での成分での処理前にクロム表面を濯ぐこと
を含む。
【0071】
前記水溶液は電導度塩および/または界面活性剤を含み得る。