(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則的に繰返さないものとする。
【0014】
図1は、この発明の実施の形態に従う無停電電源装置1の構成を示す回路ブロック図である。無停電電源装置1は、商用交流電源21からの三相交流電力を直流電力に一旦変換し、その直流電力を三相交流電力に変換して負荷22に供給するものである。
図1では、図面および説明の簡単化のため、三相(U相、V相、W相)のうちの一相(例えばU相)に対応する部分の回路のみが示されている。
【0015】
無停電電源装置1は、インバータ給電モードと、バイパス給電モードとを有する。インバータ給電モードは、インバータ10から負荷22に交流電力が供給される運転モードである。バイパス給電モードは、商用交流電源21から半導体スイッチ15を介して負荷22に交流電力が供給される運転モードである。
【0016】
インバータ給電モードでは、商用交流電源21から供給される交流電力をコンバータ6によって直流電力に変換し、その直流電力をインバータ10によって交流電力に変換して負荷22に供給する。そのため、インバータ給電モードは、負荷22への給電安定性に優れている。
【0017】
これに対して、バイパス給電モードでは、商用交流電源21から供給される交流電力を、半導体スイッチ15(第2のスイッチ)を介して、言い換えればコンバータ6およびインバータ10を通さずに負荷22に供給する。そのため、コンバータ6およびインバータ10における電力損失の発生が抑制され、結果的に無停電電源装置1の運転効率を向上させることができる。以下の説明では、バイパス給電モードを、無停電電源装置1の高効率運転を重視した運転モードである「エコモード」とも称する。インバータ給電モードは「第1の給電モード」に対応し、バイパス給電モード(エコモード)は「第2の給電モード」に対応する。
【0018】
図1において、無停電電源装置1は、交流入力端子T1、交流出力端子T2およびバッテリ端子T3を備える。交流入力端子T1は、商用交流電源21から商用周波数の交流電力を受ける。
【0019】
交流出力端子T2は、負荷22に接続される。負荷22は、交流電力によって駆動される。バッテリ端子T3は、バッテリ(電力貯蔵装置)23に接続される。バッテリ23は、直流電力を蓄える。バッテリ23の代わりにコンデンサが接続されていても構わない。
【0020】
無停電電源装置1は、さらに、電磁接触器2,8,14、電流検出器3,11、コンデンサ4,9,13、リアクトル5,12、コンバータ6、双方向チョッパ7、インバータ10、半導体スイッチ15、操作部17、および制御装置18を備える。
【0021】
電磁接触器2およびリアクトル5は、交流入力端子T1とコンバータ6の入力ノードとの間に直列接続される。コンデンサ4は、電磁接触器2とリアクトル5の間のノードN1に接続される。電磁接触器2は、無停電電源装置1の使用時にオンされ、たとえば無停電電源装置1のメンテナンス時にオフされる。
【0022】
ノードN1に現れる交流入力電圧Vinの瞬時値は、制御装置18によって検出される。交流入力電圧Vinの瞬時値に基づいて、瞬時電圧低下および停電の発生の有無などが判別される。電流検出器3は、ノードN1に流れる交流入力電流Iinを検出し、その検出値を示す信号Iinを制御装置18に与える。
【0023】
コンデンサ4およびリアクトル5は、低域通過フィルタを構成し、商用交流電源21からコンバータ6に商用周波数の交流電力を通過させ、コンバータ6で発生するスイッチング周波数の信号が商用交流電源21に通過することを防止する。
【0024】
コンバータ6は、制御装置18によって制御され、商用交流電源21から交流電力が供給されている通常時は、三相交流電力を直流電力に変換(順変換)して直流ラインL1に出力する。商用交流電源21からの交流電力の供給が停止された停電時は、コンバータ6の運転は停止される。コンバータ6の出力電圧は、所望の値に制御可能になっている。
【0025】
コンデンサ9は、直流ラインL1に接続され、直流ラインL1の電圧を平滑化させる。直流ラインL1に現れる直流電圧VDCの瞬時値は、制御装置18によって検出される。直流ラインL1は双方向チョッパ7の高電圧側ノードに接続され、双方向チョッパ7の低電圧側ノードは電磁接触器8を介してバッテリ端子T3に接続される。
【0026】
電磁接触器8は、無停電電源装置1の使用時はオンされ、たとえば無停電電源装置1およびバッテリ23のメンテナンス時にオフされる。バッテリ端子T3に現れるバッテリ23の端子間電圧VBの瞬時値は、制御装置18によって検出される。
【0027】
双方向チョッパ7は、制御装置18によって制御され、商用交流電源21から交流電力が供給されている通常時は、コンバータ6によって生成された直流電力をバッテリ23に蓄え、瞬時電圧低下または停電が発生したときには、バッテリ23の直流電力を直流ラインL1を介してインバータ10に供給する。
【0028】
双方向チョッパ7は、直流電力をバッテリ23に蓄える場合は、直流ラインL1の直流電圧VDCを降圧してバッテリ23に与える。また、双方向チョッパ7は、バッテリ23の直流電力をインバータ10に供給する場合は、バッテリ23の端子間電圧VBを昇圧して直流ラインL1に出力する。直流ラインL1は、インバータ10の入力ノードに接続されている。
【0029】
インバータ10は、制御装置18によって制御され、コンバータ6または双方向チョッパ7から直流ラインL1を介して供給される直流電力を商用周波数の三相交流電力に変換(逆変換)して出力する。すなわち、インバータ10は、通常時はコンバータ6から直流ラインL1を介して供給される直流電力を三相交流電力に変換し、瞬時電圧低下または停電時はバッテリ23から双方向チョッパ7を介して供給される直流電力を三相交流電力に変換する。インバータ10の出力電圧は、所望の値に制御可能になっている。
【0030】
インバータ10の出力ノード10aはリアクトル12の一方端子に接続され、リアクトル12の他方端子は電磁接触器14を介して交流出力端子T2に接続される。コンデンサ13は、電磁接触器14と交流出力端子T2との間のノードN2に接続される。
【0031】
電流検出器11は、インバータ10の出力電流(以下、「インバータ出力電流」とも称する)Iinvの瞬時値を検出し、その検出値を示す信号Iinvを制御装置18に与える。ノードN2に現れる交流出力電圧Voutの瞬時値は、制御装置18によって検出される。
【0032】
リアクトル12およびコンデンサ13は、低域通過フィルタを構成し、インバータ10で生成された商用周波数の交流電力を交流出力端子T2に通過させ、インバータ10で発生するスイッチング周波数の信号が交流出力端子T2に通過することを防止する。
【0033】
電磁接触器14は、制御装置18によって制御され、インバータ給電モード時にはオンされ、エコモード時にはオフされる。電磁接触器14は、インバータ10の出力電力を負荷22に供給するための「第1のスイッチ」の一実施例に対応する。
【0034】
半導体スイッチ15は、逆並列に接続された一対のサイリスタを有するサイリスタスイッチであり、交流入力端子T1と交流出力端子T2との間に接続される。半導体スイッチ15は、制御装置18によって制御され、インバータ給電モード時にはオフされ、エコモード時にはオンされる。
【0035】
具体的には、サイリスタスイッチを構成する一対のサイリスタは、制御装置18から入力(オン)されるゲート信号に応答してオンする。そして、オンされたサイリスタはゲート信号が遮断(オフ)された状態において電流がゼロになるのに応じてオフする。一対のサイリスタは、ゲート信号が印加されている間、電流の極性に従って、電流の正弦波波形における半サイクル期間ごとに交互にオン状態となる。半導体スイッチ15は「第2のスイッチ」の一実施例に対応する。例えば、半導体スイッチ15は、インバータ給電モード時にインバータ10が故障した場合は瞬時にオンし、商用交流電源21からの三相交流電力を負荷22に供給する。
【0036】
操作部17は、無停電電源装置1の使用者によって操作される複数のボタン、種々の情報を表示する画像表示部などを含む。使用者が操作部17を操作することにより、無停電電源装置1の電源をオンおよびオフしたり、エコモードおよびインバータ給電モードのうちのいずれか一方のモードを選択することが可能となっている。
【0037】
制御装置18は、操作部17からの信号、交流入力電圧Vin,交流入力電流Iin、直流電圧VDC、バッテリ23の端子間電圧VB、インバータ出力電流Iinv、および交流出力電圧Voutなどに基づいて無停電電源装置1全体を制御する。制御装置18による無停電電源装置1の制御については後述する。
【0038】
制御装置18は、例えばマイクロコンピュータなどで構成することが可能である。一例として、制御装置18は、図示しないメモリおよびCPU(Central Processing Unit)を内蔵し、メモリに予め格納されたプログラムをCPUが実行することによるソフトウェア処理によって、後述する制御動作を実行することができる。あるいは、当該制御動作の一部または全部について、ソフトウェア処理に代えて、内蔵された専用の電子回路などを用いたハードウェア処理によって実現することも可能である。
【0039】
図2は、
図1に示した無停電電源装置1の要部を示す回路図である。
図1では三相交流電圧のうちの一相に関連する部分のみを示したが、
図2では三相に関連する部分を示している。また、電磁接触器2,14、半導体スイッチ15、操作部17、および制御装置18の図示は省略されている。
【0040】
図2において、無停電電源装置1は、交流入力端子T1a,T1b,T1c、交流出力端子T2a,T2b,T2c、電流検出器3,11,コンデンサ4a,4b,4c,13a,13b,13c、リアクトル5a,5b,5c,12a,12b,12c、コンバータ6、直流ラインL1,L2、およびインバータ10を備える。
【0041】
交流入力端子T1a,T1b,T1cは、商用交流電源21(
図1)からの三相交流電圧(U相交流電圧、V相交流電圧、およびW相交流電圧)をそれぞれ受ける。交流出力端子T2a,T2b,T2cには、商用交流電源21からの三相交流電圧に同期した三相交流電圧が出力される。負荷22は、交流出力端子T2a,T2b,T2cからの三相交流電圧によって駆動される。
【0042】
リアクトル5a,5b,5cの一方端子はそれぞれ交流入力端子T1a,T1b,T1cに接続され、それらの他方端子はコンバータ6の入力ノード6a,6b,6cにそれぞれ接続される。コンデンサ4a,4b,4cの一方電極はそれぞれリアクトル5a〜5cの一方端子に接続され、それらの他方電極はともに中性点NPに接続される。
【0043】
コンデンサ4a〜4cおよびリアクトル5a〜5cは、低域通過フィルタを構成し、交流入力端子T1a,T1b,T1cからコンバータ6に商用周波数の三相交流電力を通過させ、コンバータ6で発生するスイッチング周波数の信号を遮断する。リアクトル5aの一方端子に現れる交流入力電圧Vinの瞬時値は制御装置18(
図1)によって検出される。電流検出器3は、ノードN1(すなわち交流入力端子T1a)に流れる交流入力電流Iinを検出し、その検出値を示す信号Iinを制御装置18に与える。
【0044】
コンバータ6は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)Q1〜Q6およびダイオードD1〜D6を含む。IGBTは「スイッチング素子」を構成する。IGBTQ1〜Q3のコレクタはともに直流ラインL1に接続され、それらのエミッタはそれぞれ入力ノード6a,6b,6cに接続される。IGBTQ4〜Q6のコレクタはそれぞれ入力ノード6a,6b,6cに接続され、それらのエミッタはともに直流ラインL2に接続される。ダイオードD1〜D6は、それぞれIGBTQ1〜Q6に逆並列に接続される。
【0045】
IGBTQ1,Q4はそれぞれゲート信号Au,Buによって制御され、IGBTQ2,Q5はそれぞれゲート信号Av,Bvによって制御され、IGBTQ3,Q6はそれぞれゲート信号Aw,Bwによって制御される。ゲート信号Bu,Bv,Bwは、それぞれゲート信号Au,Av,Awの反転信号である。
【0046】
IGBTQ1〜Q3は、それぞれゲート信号Au,Av,Awが「H(論理ハイ)」レベルにされた場合にオンし、それぞれゲート信号Au,Av,Awが「L(論理ロー)」レベルにされた場合にオフする。IGBTQ4〜Q6は、それぞれゲート信号Bu,Bv,Bwが「H」レベルにされた場合にオンし、それぞれゲート信号Bu,Bv,Bwが「L」レベルにされた場合にオフする。
【0047】
ゲート信号Au,Bu,Av,Bv,Aw,Bwの各々は、パルス信号列であり、PWM(Pulse Width Modulation)信号である。ゲート信号Au,Buの位相とゲート信号Av,Bvの位相とゲート信号Aw,Bwの位相とは120度ずつずれている。ゲート信号Au,Bu,Av,Bv,Aw,Bwは、制御装置18によって生成される。
【0048】
例えば、交流入力端子T1aの電圧レベルが交流入力端子T1bの電圧レベルよりも高い場合は、IGBTQ1,Q5がオンされ、交流入力端子T1aからリアクトル5a、IGBTQ1、直流ラインL1、コンデンサ9、直流ラインL2、IGBTQ5、およびリアクトル5bを介して交流入力端子T1bに電流が流れ、コンデンサ9が正電圧に充電される。
【0049】
逆に、交流入力端子T1bの電圧レベルが交流入力端子T1aの電圧レベルよりも高い場合は、IGBTQ2,Q4がオンされ、交流入力端子T1bからリアクトル5b、IGBTQ2、直流ラインL1、コンデンサ9、直流ラインL2、IGBTQ4、およびリアクトル5aを介して交流入力端子T1aに電流が流れ、コンデンサ9が正電圧に充電される。他の場合も同様である。
【0050】
ゲート信号Au,Bu,Av,Bv,Aw,BwによってIGBTQ1〜Q6の各々を所定のタイミングでオンおよびオフさせるとともに、IGBTQ1〜Q6の各々のオン時間を調整することにより、入力ノード6a〜6cに与えられた三相交流電圧を直流電圧VDC(コンデンサ9の端子間電圧)に変換することが可能となっている。
【0051】
インバータ10は、IGBTQ11〜Q16およびダイオードD11〜D16を含む。IGBTは「スイッチング素子」を構成する。IGBTQ11〜Q13のコレクタはともに直流ラインL1に接続され、それらのエミッタはそれぞれ出力ノード10a,10b,10cに接続される。IGBTQ14〜Q16のコレクタはそれぞれ出力ノード10a,10b,10cに接続され、それらのエミッタはともに直流ラインL2に接続される。ダイオードD11〜D16は、それぞれIGBTQ11〜Q16に逆並列に接続される。
【0052】
IGBTQ11,Q14はそれぞれゲート信号Xu,Yuによって制御され、IGBTQ12,Q15はそれぞれゲート信号Xv,Yvによって制御され、IGBTQ13,Q16はそれぞれゲート信号Xw,Ywによって制御される。ゲート信号Yu,Yv,Ywは、それぞれゲート信号Xu,Xv,Xwの反転信号である。
【0053】
IGBTQ11〜Q13は、それぞれゲート信号Xu,Xv,XwがHレベルにされた場合にオンし、それぞれゲート信号Xu,Xv,XwがLレベルにされた場合にオフする。IGBTQ14〜Q16は、それぞれゲート信号Yu,Yv,YwがHレベルにされた場合にオンし、それぞれゲート信号Yu,Yv,YwがLレベルにされた場合にオフする。
【0054】
ゲート信号Xu,Yu,Xv,Yv,Xw,Ywの各々は、パルス信号列であり、PWM信号である。ゲート信号Xu,Yuの位相とゲート信号Xv,Yvの位相とゲート信号Xw,Ywの位相とは120度ずつずれている。ゲート信号Xu,Yu,Xv,Yv,Xw,Ywは、制御装置18によって生成される。
【0055】
例えば、IGBTQ11,Q15がオンすると、正側の直流ラインL1がIGBTQ11を介して出力ノード10aに接続されるとともに、出力ノード10bがIGBTQ15を介して負側の直流ラインL2に接続され、出力ノード10a,10b間に正電圧が出力される。
【0056】
また、IGBTQ12,Q14がオンすると、正側の直流ラインL1がIGBTQ12を介して出力ノード10bに接続されるとともに、出力ノード10aがIGBTQ14を介して負側の直流ラインL2に接続され、出力ノード10a,10b間に負電圧が出力される。
【0057】
ゲート信号Xu,Yu,Xv,Yv,Xw,YwによってIGBTQ11〜Q16の各々を所定のタイミングでオンおよびオフさせるとともに、IGBTQ11〜Q16の各々のオン時間を調整することにより、直流ラインL1,L2間の直流電圧を三相交流電圧に変換することが可能となっている。
【0058】
リアクトル12a〜12cの一方端子はインバータ10の出力ノード10a,10b,10cにそれぞれ接続され、それらの他方端子はそれぞれ交流出力端子T2a,T2b,T2cに接続される。コンデンサ13a,13b,13cの一方電極はそれぞれリアクトル12a〜12cの他方端子に接続され、それらの他方電極はともに中性点NPに接続される。
【0059】
リアクトル12a〜12cおよびコンデンサ13a,13b,13cは、低域通過フィルタを構成し、インバータ10から交流出力端子T2a,T2b,T2cに商用周波数の三相交流電力を通過させ、インバータ10で発生するスイッチング周波数の信号を遮断する。
【0060】
電流検出器11は、リアクトル12aに流れるインバータ出力電流Iinvを検出し、その検出値を示す信号Iinvを制御装置18に与える。リアクトル12aの他方端子(ノードN2)に現れる交流出力電圧Voutの瞬時値は制御装置18(
図1)によって検出される。
【0061】
次に、
図1に示した無停電電源装置1の動作について説明する。
図3は、エコモードにおける電力の流れを説明するための図である。エコモードでは、半導体スイッチ15がオンされ、電磁接触器14がオフされる。これにより、
図3において黒色矢印で示されるように、商用交流電源21から供給される三相交流電力は半導体スイッチ15を介して負荷22に供給される。すなわち、コンバータ6およびインバータ10を通さずに負荷22に電力が供給される。したがって、コンバータ6およびインバータ10における電力損失の発生が抑制されるため、無停電電源装置1の運転効率を向上させることができる。
【0062】
なお、エコモードにおいても、必要に応じてコンバータ6および双方向チョッパ7を運転させることにより、
図3において白色矢印で示されるように、バッテリ23に直流電力を蓄えておくことができる。
【0063】
図1に戻って、制御装置18は、使用者によって操作部17が操作されたとき、無停電電源装置1をインバータ給電モードからエコモードに切り替える。具体的には、制御装置18は、
図3に示される電力経路が形成されるように、電磁接触器14および半導体スイッチ15のオンオフを制御する。制御装置18は、半導体スイッチ15をオンさせる一方で、電磁接触器14をオフさせる。
【0064】
制御装置18は、エコモード中、バッテリ23の端子間電圧VBが所望の目標電圧VBrになるように、コンバータ6および双方向チョッパ7を制御する。コンバータ6は、商用交流電源21からの三相交流電力を直流電力に変換して直流ラインL1に出力する。双方向チョッパ7は、直流ラインL1の直流電圧VDCを降圧してバッテリ23に与える。
【0065】
エコモード中、制御装置18はさらに、ノードN1に現れる交流入力電圧Vinの瞬時値を検出し、検出値に基づいて商用交流電源21の電圧低下を検出する。具体的には、制御装置18は、交流入力電圧Vinの実効値と基準電圧との偏差に基づいて、商用交流電源21の電圧低下度(単位:%)を算出する。基準電圧は例えば商用交流電源21の定格電圧に設定されている。電圧低下度は、基準電圧に対する交流入力電圧Vinの実効値の偏差/基準電圧で定義される。商用交流電源21の電圧低下度が閾値に達した場合、制御装置18は、無停電電源装置1をエコモードからインバータ給電モードに切り替える。閾値は例えば10%に設定される。
【0066】
図4は、インバータ給電モードにおける電力の流れを説明するための図である。エコモード中に商用交流電源21の電圧低下が検出されると、制御装置18は、電磁接触器14をオンさせる一方で、半導体スイッチ15をオフさせる。
【0067】
制御装置18は、インバータ10を起動させるとともに、直流ラインL1から供給される直流電力を商用周波数の三相交流電力に変換するように、インバータ10を制御する。制御装置18は、さらに、バッテリ23の端子間電圧VBを昇圧して直流ラインL1に出力するように、双方向チョッパ7を制御する。これにより、
図4において黒色矢印で示されるように、バッテリ23の直流電力は商用周波数の三相交流電力に変換され、電磁接触器14を介して負荷22に供給される。なお、コンバータ6の運転は停止されている。制御装置18は、バッテリ23の残容量が予め定められた下限値に達したときにインバータ10の運転を停止する。これにより、無停電電源装置1はインバータ給電を終了する。
【0068】
このようにしてエコモード中に商用交流電源21の電圧低下が検出されると、電磁接触器14をオンさせ、かつ、半導体スイッチ15をオフさせるとともに、インバータ10に逆変換を実行させることにより、エコモードからインバータ給電モードへ無瞬断で切り替えることが可能となる。
【0069】
しかしながら、半導体スイッチ15においては、サイリスタスイッチを構成するサイリスタは、ゲート信号が遮断されると、サイリスタを流れる電流がゼロに至ったときにオフされる。言い換えると、ゲート信号が遮断された後も電流がゼロに至るまではサイリスタスイッチはオン状態となっている。そのため、商用交流電源21の電圧低下が検出されたときに半導体スイッチ15のゲート信号を遮断しても、ゲート信号を遮断するタイミングによっては、半導体スイッチ15が直ちにオフされずに、ノードN1とノードN2とが半導体スイッチ15を介して電気的に接続されている状態が続く場合が起こる。このような場合が生じると、
図5に示すように、半導体スイッチ15がオフされるまでの間、ノードN2からノードN1に向けて電流が流れる可能性がある。
【0070】
図5は、エコモードからインバータ給電モードへの切り替え時における電力の流れを説明するための図である。
図5は、商用交流電源21の電圧低下が検出された後、エコモードからインバータ給電モードへと切り替えるときの電力の流れを示している。
【0071】
図4で説明したように、電磁接触器14をオンしてインバータ10および双方向チョッパ7を起動させることにより、黒色矢印で示されるように、バッテリ23の直流電力が商用周波数の三相交流電力に変換され、電磁接触器14を介して負荷22に供給される。
【0072】
インバータ10は、ノードN2に出力する交流出力電圧Voutを、商用交流電源21の健全時において商用交流電源21から供給される交流電圧に同期するように制御することができる。これにより、エコモードからインバータ給電モードへの切り替え時において、交流出力端子T2に出力される電圧(交流出力電圧Vout)が瞬間的に低下することを抑制することができる。
【0073】
その一方で、半導体スイッチ15はゲート信号が遮断されたものの、電流がゼロになっていないため、未だオン状態となっているものとする。
図5では、半導体スイッチ15を流れる電流を「Ists」と表記する。ノードN1からノードN2へと向かう方向を電流Istsの正方向とし、ノードN2からノードN1への向かう方向を電流Istsの負方向とする。
【0074】
商用交流電源21の電圧低下が生じたことにより、ノードN1に現れる交流入力電圧Vinは、商用交流電源21の健全時の交流入力電圧Vinに比べて低下している。そのため、ノードN2に現れる交流出力電圧Voutと、ノードN1に現れる交流入力電圧Vinとの間には、Vout>Vinの関係が生じている。
【0075】
半導体スイッチ15がオンの状態でVout>Vinの関係が生じることにより、
図5において破線矢印で示されるように、インバータ出力電流Iinvの一部がノードN2からノードN1に向かって流れる場合がある。インバータ出力電流Iinvの一部は半導体スイッチ15およびノードN1を介して交流入力端子T1に導かれることにより、負荷22に供給される電流(以下、「負荷電流」とも称する)Ioutが減少してしまう。この結果、負荷22において電力不足を招くおそれがある。
【0076】
図6は、エコモードからインバータ給電モードへの切り替え時における無停電電源装置1の動作を説明するための波形図である。
図6には、交流出力電圧Vout、交流入力電圧Vin、半導体スイッチ15に印加されるゲート信号、半導体スイッチ15を流れる電流Ists、インバータ出力電流Iinvおよび負荷電流Ioutの波形が示されている。
【0077】
図6を参照して、時刻t0〜t1までの期間は、商用交流電源21が健全であり、エコモードが実行されているものとする。当該期間では、半導体スイッチ15を構成する一対のサイリスタにはゲート信号が印加される。一対のサイリスタは、ゲート信号が印加されている状態において、電流Istsの極性に従って、電流Istsの正弦波波形における半サイクル期間ごとに交互にオン状態となる。これにより、ノードN2には、交流入力電圧Vinに同期した交流出力電圧Voutが現われる。電流Istsは負荷電流Ioutとして負荷22に供給される。
【0078】
時刻t1において、商用交流電源21の電圧低下(例えば停電)が発生したものとする。制御装置18は、商用交流電源21の電圧低下を検出すると、電磁接触器14をオンするとともに、半導体スイッチ15のゲート信号を遮断する。制御装置18は、さらに、インバータ10を起動させる。インバータ10は、バッテリ23に蓄えられた直流電力を商用周波数の三相交流電力に変換する。インバータ10は、電圧低下発生前に商用交流電源21から供給されていた交流電圧に同期した交流電圧を出力する。したがって、時刻t1以降においても、交流出力電圧Voutを維持することができる。ただし、時刻t1以降、交流入力電圧Vinと交流出力電圧Voutとの間には、Vout>Vinの関係が生じている。
【0079】
半導体スイッチ15においては、ゲート信号が遮断された時刻t1において、電流Istsの極性に従って、一対のサイリスタの一方がオン状態となっている。
図6の例では、電流Istsの負の半サイクル期間において一方のサイリスタがオン状態となっている。時刻t1よりも後に電流Istsが0になると、この一方のサイリスタがオフされるため、半導体スイッチ15がオフ状態となる。なお、
図6の波形k1は、時刻t1より前の電流Istsと同じ周波数および振幅で電流Istsが変化する様子を示している。この場合、時刻t1からほぼ負の半サイクル期間が経過した時刻t2において、電流Istsがゼロとなり、半導体スイッチ15がオフされることになる。
【0080】
しかしながら、実際には、時刻t1以降はVout>Vinの関係が生じているため、
図5に破線矢印で示したように、インバータ出力電流Iinvの一部がノードN2から半導体スイッチ15を介してノードN1に向かって流れ込む。その結果、
図6の波形k2のように、負方向の電流Istsが増加する。そして、時刻t2よりも後の時刻t3において、電流Istsがゼロとなると、半導体スイッチ15がオフされる。
【0081】
このように半導体スイッチ15のゲート信号が遮断された時点(時刻t1)での電流Istsの位相によって、この時点から電流Istsがゼロになる時点までに時間差が生じる。そして、この時間差に相当する期間において、Vout>Vinの関係に起因して、インバータ出力電流Iinvが半導体スイッチ15に流れ込むため、一時的に負荷電流Ioutが減少してしまう。負荷電流Ioutが一時的に減少することで、負荷22では電力不足を招く可能性がある。
【0082】
そこで、本実施の形態に従う無停電電源装置1においては、エコモード中に商用交流電源21の電圧低下が検出されると、コンバータ6を用いて、交流入力電圧Vinの瞬時値を交流出力電圧Voutの瞬時値以上にまで一時的に増加させる。すなわち、交流入力電圧Vinと交流出力電圧Voutとの間に、Vin≧Voutの関係を一時的に作り出すこととする。なお、「一時的」とは、商用交流電源21の電圧低下が検出された時点から半導体スイッチ15がオフする時点までの期間において上記関係を作り出すことを意図している。半導体スイッチ15がオフした後は、最早インバータ出力電流Iinvが半導体スイッチ15に流れ込むことがないためである。
【0083】
図7は、エコモードからインバータ給電モードへの切り替え時における無停電電源装置1の動作を説明するための図である。
図7は、エコモードからインバータ給電モードへの切り替え時における電力の流れを示す図であって、
図5と対比される図である。
【0084】
エコモード中に商用交流電源21の電圧低下が検出されると、制御装置18は、電磁接触器14をオンするとともに、インバータ10および双方向チョッパ7を起動させる。これにより、黒色矢印で示されるように、バッテリ23の直流電力は商用周波数の三相交流電力に変換され、電磁接触器14を介して負荷22に供給される。一方、半導体スイッチ15はゲート信号が遮断されたものの、電流Istsがゼロになっていないため、未だオン状態となっている。
【0085】
このような状態において、制御装置18は、双方向チョッパ7から直流ラインL1を介して供給される直流電力を三相交流電力に変換(逆変換)するように、コンバータ6を制御する。コンバータ6の交流出力電圧が所望の値に制御可能になっている。
図7において白色矢印で示されるように、バッテリ23の直流電力はコンバータ6で三相交流電力に変換されてノードN1に供給される。
【0086】
ここで、制御装置18は、ノードN1に現れる交流入力電圧Vinの瞬時値が、交流出力電圧Voutの瞬時値以上となるように、コンバータ6における逆変換を制御する。コンバータ6から出力される交流電圧によって商用交流電源21の瞬時電圧低下または停電による交流入力電圧Vinの低下をバックアップすることにより、交流入力電圧Vinの低下を遅らせることができる。さらに、Vin≧Voutの関係を作り出すことによって、半導体スイッチ15がオン状態であっても、ノードN2からノードN1に向かって電流Istsが流れることを抑制することができる。この結果、
図7に黒色矢印で示すように、インバータ出力電流Iinvをそのまま負荷電流Ioutとして負荷22に供給することができるため、負荷22の電力不足を回避することができる。
【0087】
図8は、エコモードからインバータ給電モードへの切り替え時における無停電電源装置1の動作を説明するための波形図であって、
図6と対比される図である。
図8には、交流出力電圧Vout、交流入力電圧Vin、半導体スイッチ15に印加されるゲート信号、半導体スイッチ15を流れる電流Ists、インバータ出力電流Iinvおよび負荷電流Ioutの波形が示されている。
【0088】
図8を参照して、時刻t0〜t1までの期間は、商用交流電源21が健全であり、エコモードが実行されているものとする。半導体スイッチ15にはゲート信号が印加される。半導体スイッチ15がオンすることにより、商用交流電源21および負荷22が半導体スイッチ15を介して電気的に接続される。これにより、ノードN2には、交流入力電圧Vinに同期した交流出力電圧Voutが現われる。半導体スイッチ15を流れる電流Istsは負荷電流Ioutとして負荷22に供給される。
【0089】
時刻t1において、商用交流電源21の電圧低下が発生すると、制御装置18は、電磁接触器14をオンするとともに、半導体スイッチ15のゲート信号を遮断する。制御装置18はさらに、インバータ10を起動させる。インバータ10は、バッテリ23に蓄えられた直流電力を商用周波数の三相交流電力に変換する。ノードN2には、電圧低下発生前に商用交流電源21から供給されていた交流電圧(交流入力電圧Vin)に同期した交流出力電圧Voutが出力される。したがって、時刻t1以降においても、交流出力電圧Voutを維持することができる。
【0090】
半導体スイッチ15においては、ゲート信号が遮断された時刻t1において、電流Istsの極性に従って、一対のサイリスタの一方がオン状態となっている。時刻t1よりも後に電流Istsが0になると、この一方のサイリスタがオフされて半導体スイッチ15全体がオフ状態となる。
図8の波形k1,k2はそれぞれ、
図6に示した波形k1,k2と同じものである。
図6で説明したように、時刻t1以降においてVout>Vinの関係が生じると、インバータ出力電流Iinvの一部が半導体スイッチ15に流れ込むため、負の電流Istsが増加してしまう。
【0091】
図8の例では、時刻t1以降、制御装置18は、交流入力電圧Vinの瞬時値と交流出力電圧Voutの瞬時値との間にVin>Voutの関係が作られるように、コンバータ6における逆変換を制御する。これにより、ノードN1がノードN2に比べて電圧レベルが高くなるため、インバータ出力電流Iinvは、半導体スイッチ15に流れ込むことが抑制され、結果的に交流出力端子T2から負荷電流Ioutとして出力される。
【0092】
なお、Vin>Voutとしたことで、負方向の電流Istsとは逆向き(正方向)の電流が増えるため、電流Istsを減少させることができる。その結果、
図8の波形k3で示すように、波形k1に比べて電流Istsがゼロになることを早めることができる。したがって、半導体スイッチ15のゲート信号が遮断された時点(時刻t1)から電流Istsがゼロになる時点までの時間差を短縮することができる。これにより、商用交流電源21の電圧低下が発生してから迅速に半導体スイッチ15をオフすることができる。
【0093】
なお、
図8に示すように、コンバータ6における逆変換は、半導体スイッチ15のゲート信号を遮断してから半導体スイッチ15がオフされるまでの期間、一時的に行なえば足りる。本実施の形態では、コンバータ6における逆変換を行なう時間を予め設定しておき、制御装置18は、商用交流電源21の電圧低下が検出されると、この所定時間だけコンバータ6を運転させるものとする。所定時間は、例えば、商用交流電源21から供給される交流電圧の1/2周期以下の長さに設定することができる。所定時間の最大値を交流電圧の1/2周期としたのは、ゲート信号を遮断してから半導体スイッチ15のサイリスタの電流Istsが0となるまでに、長くても半サイクル期間が必要となるためである。好ましくは、所定時間は商用交流電源21から供給される交流電圧の1/4周期以上かつ1/2周期以下の長さに設定される。
【0094】
なお、Vin=Voutの関係が作られるようにコンバータ6における逆変換を制御した場合には、理想的には時刻t1以降においても交流入力電圧Vinと交流出力電圧Voutとを同期させることができる。したがって、
図8の例では、波形k1のように、時刻t1からほぼ負の半サイクル期間が経過した時刻において電流Istsがゼロとなり、半導体スイッチ15がオフされることになる。
【0095】
次に、
図9および
図10を用いて、制御装置18による無停電電源装置1の制御構成について説明する。
【0096】
図9は、制御装置18による無停電電源装置1の制御構成を説明するためのブロック図である。
図9に示される各ブロックの機能は、制御装置18によるソフトウェア処理およびハードウェア処理の少なくとも一方によって実現することができる。
【0097】
図9を参照して、制御装置18は、電圧低下検出部30と、コンバータ制御部32と、チョッパ制御部34と、インバータ制御部36と、スイッチ制御部38とを含む。
【0098】
電圧低下検出部30は、ノードN1に現れる交流入力電圧Vinの瞬時値を検出し、検出値に基づいて商用交流電源21の電圧低下を検出する。電圧低下検出部30は、交流入力電圧Vinの実効値と基準電圧(定格電圧)との偏差に基づいて、商用交流電源21の電圧低下度を算出する。エコモード中、電圧低下検出部30は、電圧低下度と閾値(例えば10%)とを比較する。商用交流電源21の電圧低下度が閾値に達した場合、電圧低下検出部30は、検出信号DTをコンバータ制御部32、チョッパ制御部34、インバータ制御部36およびスイッチ制御部38に与える。
【0099】
コンバータ制御部32は、操作部17からの信号、交流入力電圧Vin、交流出力電圧Voutおよび直流電圧VDCに基づいてコンバータ6を制御する。具体的には、コンバータ制御部32は、インバータ給電モード中、直流電圧VDCが所定の参照電圧VDCrになるようにコンバータ6における順変換を制御する。ただし、インバータ給電モード中に電圧低下検出部30から検出信号DTを受けた場合(例えば商用交流電源21の停電時)には、コンバータ制御部32はコンバータ6の運転を停止する。
【0100】
これに対して、エコモード中は、コンバータ制御部32は、コンバータ6の運転を停止させる。ただし、必要に応じてコンバータ6を運転させることにより、バッテリ23に直流電力を蓄えておくことができる。コンバータ制御部32は、さらに、エコモード中に電圧低下検出部30から検出信号DTを受けた場合には、交流出力電圧Vout以上の交流入力電圧Vinがコンバータ6からノードN1に出力されるように、コンバータ6における逆変換を制御する。コンバータ制御部32は、検出信号DTを受けてから所定時間だけコンバータ6における逆変換を制御し、その後コンバータ6の運転を停止する。
【0101】
チョッパ制御部34は、操作部17からの信号、直流電圧VDCおよびバッテリ23の端子間電圧VBに基づいて双方向チョッパ7を制御する。具体的には、インバータ給電モード中、チョッパ制御部34は、バッテリ23の端子間電圧VBが目標電圧VBrになるように双方向チョッパ7における降圧動作を制御する。インバータ給電モード中に電圧低下検出部30から検出信号DTを受けると、チョッパ制御部34は、直流電圧VDCが参照電圧VDCrになるように双方向チョッパ7における昇圧動作を制御する。
【0102】
これに対して、エコモード中は、チョッパ制御部34は、双方向チョッパ7の運転を停止させる。ただし、コンバータ6の運転とともに双方向チョッパ7を運転させることにより、バッテリ23に直流電力を蓄えておくことができる。チョッパ制御部34は、エコモード中に電圧低下検出部30から検出信号DTを受けた場合には、直流電圧VDCが参照電圧VDCrになるように双方向チョッパ7における昇圧動作を制御する。
【0103】
インバータ制御部36は、操作部17からの信号、交流出力電圧Voutおよびインバータ出力電流Iinvに基づいてインバータ10を制御する。具体的には、インバータ給電モード中、インバータ制御部36は、商用交流電源21から供給される交流電圧と同期した交流電圧がインバータ10から出力されるように、インバータ10を制御する。
【0104】
これに対して、エコモード中は、インバータ制御部36は、インバータ10を構成する半導体スイッチング素子をオンオフするためのゲート信号を生成する。インバータ制御部36は、商用交流電源21から供給される交流電圧と同期した交流電圧がインバータ10から出力されるように、ゲート信号を生成する。ただし、インバータ制御部36は、エコモード中は生成したゲート信号をインバータ10へ出力しない。そのため、インバータ10は、エコモード中は運転されず、インバータ制御部36からゲート信号が入力されるまでの待機状態となる。
【0105】
エコモード中に電圧低下検出部30から検出信号DTを受けると、インバータ制御部36は、待機状態のインバータ10を起動し、生成したゲート信号をインバータ10へ出力する。これにより、インバータ10が起動し、エコモードからインバータ給電モードに切り替えられる。
【0106】
スイッチ制御部38は、操作部17からの信号に基づいて電磁接触器14および半導体スイッチ15のオンオフを制御する。インバータ給電モードを実行する場合、スイッチ制御部38は、電磁接触器14をオンし、半導体スイッチ15をオフする。具体的には、スイッチ制御部38は、半導体スイッチ15を構成する一対のサイリスタに印加されているゲート信号を遮断する。ゲート信号の遮断後、サイリスタを流れる電流がゼロになると半導体スイッチ15がオフする。これに対して、エコモードを実行する場合には、スイッチ制御部38は、各サイリスタにゲート信号を印加することにより半導体スイッチ15をオンし、電磁接触器14をオフする。これにより、商用交流電源21および負荷22の間に
図2に示した電力経路が形成される。
【0107】
エコモード中に電圧低下検出部30から検出信号DTを受けると、スイッチ制御部38は、電磁接触器14をオンし、半導体スイッチ15をオフする。なお、上述したように、スイッチ制御部38が半導体スイッチ15の各サイリスタのゲート信号を遮断してから所定時間の間、コンバータ制御部32がコンバータ6における逆変換を制御する。これにより、交流入力電圧Vinが交流出力電圧Vout以上の電圧レベルに増加するため、インバータ出力電流Iinvが半導体スイッチ15を介してノードN1に流れ込むことを抑制することができる。
【0108】
図10は、制御装置18による無停電電源装置1の制御処理を説明するフローチャートである。
図10に示される制御処理を制御装置18が実行することにより、無停電電源装置1では、
図9に示した制御装置18の機能が実現される。
【0109】
図10を参照して、制御装置18は、ステップS01により、無停電電源装置1がエコモード中であるか否かを判定する。使用者が操作部17を操作することによりエコモードが選択されている場合、制御装置18は無停電電源装置1がエコモード中であると判定する。無停電電源装置1がエコモード中でない場合、以降のステップS02〜S015の処理はスキップされる。
【0110】
無停電電源装置1がエコモード中である場合(S01のYES判定時)、制御装置18は、ステップS02により、商用交流電源21の電圧低下が検出されたか否かを判定する。制御装置18は、商用交流電源21の電圧低下度が閾値に達していない場合、商用交流電源21の電圧低下が検出され
ていないと判定する。
【0111】
商用交流電源21の電圧低下が検出されていない場合(S02のNO判定時)、制御装置18は、エコモードの実行を継続させる。具体的には、制御装置18は、ステップS03により、半導体スイッチ15にゲート信号を印加するとともに、ステップS04により、電磁接触器14をオフさせる。制御装置18はさらに、ステップS05により、インバータ10の運転を停止させる。ただし、制御装置18は、商用交流電源21から供給される交流電圧と同期した交流電圧がインバータ10から出力されるようにゲート信号を生成する。制御装置18は、生成したゲート信号をインバータ10へ出力せず、インバータ10をゲート信号が入力されるまでの待機状態とする。
【0112】
次に、制御装置18は、ステップS06により、バッテリ23の端子間電圧VBと目標電圧VBrとを比較する。バッテリ23の端子間電圧VBが目標電圧VBrよりも低い場合(S06のYES判定時)、制御装置18は、ステップS07に進み、バッテリ23の端子間電圧VBが目標電圧VBrになるようにコンバータ6における順変換を制御する。制御装置18はさらにステップS08により、バッテリ23の端子間電圧VBが目標電圧VBrになるように双方向チョッパ7における降圧動作を制御する。
【0113】
これに対して、ステップS02に戻って、商用交流電源21の電圧低下が検出された場合(S02のYES判定時)、制御装置18は、エコモードからインバータ給電モードに切り替える。具体的には、制御装置18は、ステップS09により、電磁接触器14をオンさせるとともに、ステップS10により、半導体スイッチ15のゲート信号を遮断する。
【0114】
次に、制御装置18は、ステップS11により、インバータ10を運転させる。制御装置18は、待機状態のインバータ10を起動し、生成したゲート信号をインバータ10へ出力する。制御装置18はさらに、ステップS12により、直流電圧VDCが参照電圧VDCrになるように双方向チョッパ7における昇圧動作を制御する。
【0115】
制御装置18は、ステップS13により、交流出力電圧Vout以上の交流入力電圧Vinがコンバータ6からノードN1に出力されるように、コンバータ6における逆変換を制御する。制御装置18は、ステップS14により、商用交流電源21の電圧低下が検出されてから所定時間が経過したか否かを判定する。電圧低下から所定時間が経過していない場合(S14のNO判定時)、制御装置18はステップS13に戻り、コンバータ6における逆変換を制御する。一方、電圧低下から所定時間が経過していれば(S14のYES判定時)、制御装置18はコンバータ6の運転を停止させる。
【0116】
このように本発明の実施の形態に従う無停電電源装置によれば、エコモード中に商用交流電源21の電圧低下が検出されると、半導体スイッチ15のゲート信号を遮断するとともに、所定時間だけコンバータ6に逆変換を実行させて、交流入力電圧Vinの瞬時値を交流出力電圧Voutの瞬時値以上にまで増加させる。このようにすると、半導体スイッチ15のゲート信号を遮断してから半導体スイッチ15がオフするまでに時間差があっても、インバータ出力電流Iinvが半導体スイッチ15を介して入力側に流れることを抑制することができる。したがって、エコモードからインバータ給電モードへの切り替え時において、インバータ出力電流Iinvをそのまま負荷22に供給することができるため、負荷22の電力不足を回避することができる。
【0117】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。