特許第6957622号(P6957622)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6957622
(24)【登録日】2021年10月8日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】リレー装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 50/12 20060101AFI20211021BHJP
【FI】
   H01H50/12 G
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-530759(P2019-530759)
(86)(22)【出願日】2017年10月31日
(65)【公表番号】特表2020-501326(P2020-501326A)
(43)【公表日】2020年1月16日
(86)【国際出願番号】KR2017012184
(87)【国際公開番号】WO2018117397
(87)【国際公開日】20180628
【審査請求日】2019年6月7日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0178389
(32)【優先日】2016年12月23日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518073424
【氏名又は名称】エルエス オートモーティブ テクノロジーズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LS AUTOMOTIVE TECHNOLOGIES CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】特許業務法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リン,ジェ−ユン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ヨン−モク
【審査官】 関 信之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−081961(JP,A)
【文献】 特開2007−103193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 50/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルを通じて選択的に電磁気力を発生する電磁ブロック;それぞれ固定接点が設けられる2つの固定接点端子;前記電磁気力によって揺動して前記固定接点と接触または開離する可動接点が先端部に設けられている可動接点アセンブリ;及び前記電磁ブロック、前記固定接点端子及び前記可動接点アセンブリを保持するベースブロック;をカバー内に収納したリレー装置であって、
固定接点と固定接点端子との接合面を基準に前記カバー内の全体空間を2つの部分に分けて、前記接合面を基準に前記電磁ブロックを含む側の部分を第1空間と定義し、残りの部分を第2空間と定義し、
前記カバー内の全体空間を2つの部分に分ける基準である固定接点が、前記電磁気力によって前記可動接点アセンブリの一部が吸引されるとき、可動接点と接触する固定接点であり、
前記カバーの内側全体体積(Vt)のうち前記第2空間が占める体積(Ve)の比率(Ve/Vt)が19%〜27%であり、
前記第2空間の体積(Ve)に対する前記第2空間を占める部品の体積の和(Vr)の比率(Vr/Ve)が21%〜42%であるリレー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リレー装置に関し、より詳しくは、固定接点と可動接点とが揺動によって接触及び開離する構造を有するリレー装置に関する。
【0002】
本出願は、2016年12月23日出願の韓国特許出願第10−2016−0178389号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
リレー装置は、入力信号がある値に達したときに作動して他の電気回路を開閉するスイッチング機具であって、自動車、産業自動化制御機器など各種の産業分野に広く使われている。リレー装置は、大きく、ラダー(ladder)型リレー装置とカンチレバー(cantilever)型リレー装置とに分けられる。
【0004】
ラダー型リレー装置は、固定接点に対して可動接点が同時に直線運動して接点の開閉が行われる。大きい電磁気力によって接点が駆動されるため、大電流の負荷制御用として広く使用される。ラダー型リレー装置に関する技術は、例えば、韓国特許公開第2010−0125806号公報に開示されているが、固定接点と、該固定接点と接触及び分離可能に配置される可動接点と、該可動接点を駆動させる電磁ブロックとを含んで構成される。
【0005】
カンチレバー型リレー装置は、固定接点に対して可動接点が弧状に回動運動して接点の開閉が行われる。カンチレバー型リレー装置は、可動接点を弾性力のある板バネに取り付けた形態である。カンチレバー型リレー装置は、ラダー型リレー装置に比べて簡単な形態で製作可能であるという長所がある。カンチレバー型リレー装置の代表的な例としては、日本特許第3898021号公報が挙げられる。
【0006】
このようにリレー装置は、固定接点に対して可動接点が電磁ブロックの電磁気力によって直線または回動運動し、固定接点と接触または開離する。したがって、リレー装置では、固定接点と可動接点とが開離するとき、アーク(arc)が発生する。このようなアークは、適切に除去できずに、リレー装置の内部空間の温度を上昇させる。また、可動接点を揺動する電磁ブロックは、ボビンにコイルが巻き取られている形態であって、コイルから発生する熱によってリレー装置の内部空間の温度を上昇させる。特に、近年、リレー装置の小型化趨勢によって製品サイズが小さくなっており、それによって接点間のアーク発生による発熱と電磁ブロックで発生する発熱によるリレー装置の内部空間の温度上昇が、リレー装置の駆動に敏感に作用する傾向を見せる。すなわち、リレー装置の内部空間の温度が上昇する場合、接点表面が炭化するか又は融着して、本来の機能である電流の通電が行われなくなる。また、リレー装置の内部温度が上昇すれば、磁気回路の抵抗値が上昇し、これは電磁ブロックの電磁気力の弱化につながって可動接点を引き寄せる力が弱くなり、結局、接点の圧力が低くなる。接点の圧力が低くなれば、接触抵抗が増加するようになってアーク発生が酷くなる。したがって、リレー装置の内部空間で発生する熱を効果的に放熱させるための技術的または設計的要請が増えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、リレー装置における発熱部位は、電磁ブロックのコイル、そして固定接点と可動接点との接触部分である。また、小型化趨勢によってリレー装置のサイズは小くなっている。したがって、リレー装置の内部部品で発生する熱を効果的に輻射と対流によって除去しなければならない。内部部品で発生する熱を効果的に除去する方案として、リレー装置の内部に空いた空間を多く設けることが考えられるが、これは小型化趨勢に反し、また、経済性も低いという問題がある。
【0008】
本発明は、内部部品の発熱を効果的に除去して小型化と経済性を同時に満足できるリレー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施例による、コイルを通じて選択的に電磁気力を発生する電磁ブロック;それぞれ固定接点が設けられる2つの固定接点端子;前記電磁気力によって揺動して前記固定接点と接触または開離する可動接点が先端部に設けられている可動接点アセンブリ;及び前記電磁ブロック、前記固定接点端子及び前記可動接点アセンブリを保持するベースブロック;をカバー内に収納したリレー装置は、固定接点と固定接点端子との接合面を基準に前記カバー内の全体空間を2つの部分に分けて、前記接合面を基準に前記電磁ブロックを含む側の部分を第1空間と定義し、残りの部分を第2空間と定義し、前記カバー内の全体空間を2つの部分に分ける基準である固定接点が、前記電磁気力によって前記可動接点アセンブリの一部が吸引されるとき、可動接点と接触する固定接点であり、前記カバーの内側全体体積(Vt)のうち前記第2空間が占める体積(Ve)の比率(Ve/Vt)が19%〜27%であり、前記第2空間の体積(Ve)に対する前記第2空間を占める部品の体積の和(Vr)の比率(Vr/Ve)が21%〜42%である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の実施例によれば、リレー装置の内部空間の最適化された体積の比率を定義することで、リレー装置の電磁ブロックのコイルから発生する熱を効果的に除去すると同時に、小型化及び経済性を達成することができる。
【0015】
また、本発明の実施例によれば、リレー装置の接点が位置する内部空間の空いた空間及び部品間の最適化された体積の比率を定義することで、リレー装置のコイルまたは接点で発生する熱を効果的に除去すると同時に、小型化及び経済性を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施例によるリレー装置のカバーと本体とを分離したときの斜視図である。
図2図1のリレー装置の本体の分解斜視図である。
図3図1のリレー装置の部分断面図である。
図4】本発明のリレー装置に対して定義する空間及び体積の比率を説明する概略図である。
図5】一実施例によるリレー装置のカバーの内側全体体積(Vt)のうち第2空間が占める体積(Ve)の比率(Ve/Vt)による性能結果を示した図である。
図6】一実施例によるリレー装置の第2空間の体積(Ve)のうち部品が占める体積(Vr)の比率(Vr/Ve)による性能結果を示した図である。
図7】他の実施例によるリレー装置の第2空間の体積(Ve)のうち部品が占める体積(Vr)の比率(Vr/Ve)による性能結果を示した図である。
図8】接点損傷がA状態であるリレー装置の熱解析結果を示した図である。
図9】接点損傷がB状態であるリレー装置の熱解析結果を示した図である。
図10】接点損傷がC状態であるリレー装置の熱解析結果を示した図である。
図11】接点損傷がD状態であるリレー装置の熱解析結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上述した目的、特徴及び長所は添付された図面と下記の詳細な説明を通じてより明らかになるはずであり、それによって本発明が属する技術分野で通常の知識を持つ者が本発明の技術的思想を容易に実施できるであろう。また、本発明の説明において、本発明に関連する公知技術についての具体的な説明が本発明の要旨を不明瞭にし得ると判断される場合は詳細な説明を省略する。以下、添付された図面を参照して本発明による望ましい一実施例を詳しく説明する。
【0018】
図1は本発明の一実施例によるリレー装置のカバーと本体とを分離したときの斜視図であり、図2図1のリレー装置の本体の分解斜視図である。
【0019】
図1及び図2に示されたように、本実施例において、リレー装置は、リレー本体100、及びリレー本体100を収納するカバー200から構成されている。リレー本体100は、可動接点14a、14bを有する可動接点アセンブリ1、固定接点22a、23aをそれぞれ有する2つの固定接点端子22、23、コイルを有してそのコイルに流れる電流によって電磁気力を発生させる電磁ブロック3、及びこれらを保持するベースブロック2から構成されている。
【0020】
可動接点アセンブリ1は、前記電磁ブロック3によって揺動する可動接点バネ14、その可動接点バネ14の一端に設けられた可動接点14a、14b、前記可動接点バネ14の他端に設けられた可動接点端子14c、14d、前記可動接点バネ14の内側に設けられた板状のアマチュア14eを含む。
【0021】
可動接点バネ14は、弾性変形可能に略L字状に折り曲げられて形成された伝導性を有する帯板部材である。可動接点バネ14は、前記可動接点端子14c、14dから延びた先端部分が2つに分岐した形状を有し、この2つに分岐した形状の2つの先端部にそれぞれ可動接点14a、14bが設けられる。
【0022】
可動接点バネ14は、その一辺の中間領域の内側に磁力によって吸引される板状のアマチュア14eが固定されている。アマチュア14eが電磁ブロック3のコイルアセンブリ31の真上に位置するように、可動接点バネ14はヨーク32の上昇面の背面に固定されている。アマチュア14eは、上述したように、板状であるが、固定接点端子22、23方向の一辺に係止部14fが突出している。該係止部14fは、前記可動接点バネ14の前記2つの分岐点の先端部の隙間方向に突出している。係止部14fは、電磁ブロック3の上部フランジ部34に形成されたストッパ34aに挿入され、可動接点14a、14bの開離の際、前記ストッパ34aに引っ掛かって可動接点バネ14の振動及び騒音の発生を抑制する。
【0023】
固定接点端子22、23は、前記2つの可動接点14a、14bの揺動方向に設けられる。固定接点端子22、23は板状の部材で構成され、その先端部が略L字状に折り曲げられた形状を有し、その折り曲げられた先端部に固定接点22a、23aがそれぞれ設けられる。固定接点端子22、23の一端はベースブロック2に挿入され、他端である前記先端部には固定接点22a、23aが可動接点14a、14bと当接するように配置されて設けられている。固定接点端子22、23は2つから構成され、各固定接点端子22、23のそれぞれの他端に固定接点22a、23aが配置されている。
【0024】
ベースブロック2は、絶縁部材であって、モールド成形によって形成され、上部が開放された略六面体状を有してリレー装置の部品が内側に載置される。すなわち、電磁ブロック3がベースブロック2の開放面に挿入されて載置され、固定接点端子22、23、可動接点端子14c、14d及びコイル端子36、37がベースブロック2の開放面に挿入された後、貫通して外部に露出する。
【0025】
電磁ブロック3は、コイルアセンブリ31、ヨーク32、コア33、フランジ部34、35及びコイル端子36、37を含んでなる。コイルアセンブリ31は、中心部に穴が開いたコイルボビンにコイルが巻き取られており、そのコイルの両端部はコイルボビンの下側フランジ部35の側面に挟み込まれた一対のコイル端子36、37に連結される。ヨーク32は、略直角を形成する2面、すなわちL字状に形成され、下面がベースブロック2に平行に設けられる。ヨーク32の下面にはコア33と係り合わせられる穴32aが形成されている。コア33は、ヘッドと胴体がある軸体であって、ヘッドの直径は胴体の直径より大きく、前記胴体の下端部には直径が縮まる端部が設けられている。コア33のヘッドは、上側フランジ部34の上方に突出しながらその上側フランジ部34に引っ掛かるように、上側フランジ部34の溝の穴より直径が大きい。ヨーク32の下面にコイルアセンブリ31が載せられて、コイルボビンの穴及び前記下面に形成された穴32aにコア33が挿通される。したがって、コイルアセンブリ31、ヨーク32、コア33、フランジ部34、35は、一体になるようにコーキング接合されている。
【0026】
このように構成された電磁ブロック3は、一対のコイル端子36、37に電圧を印加すれば、電磁ブロック3に電磁気力が発生し、上側に位置したアマチュア14eが吸引されて可動接点14a、14bが下方に揺動し、電圧を切る場合、可動接点バネ14のバネ作用によって可動接点14a、14bが上方へと開離する。
【0027】
カバー200は、ベースブロック2と略同じ大きさのすきまばめ可能な開口部を有し、且つ、密閉性を有する箱形であって、熱硬化性樹脂部材によって開口部の内面がベースブロック2の周縁部にシーリングされて覆われている。
【0028】
以上のように構成された本実施例におけるリレー装置は、一対のコイル端子36、37に通電する前はアマチュア14eの係止部14fがストッパ34aに引っ掛かった状態で維持され、したがって可動接点14a、14bは下側の固定接点22a、23aとは開離状態を維持する。そして、一対のコイル端子36、37に通電することで、アマチュア14eが電磁力によってコア33に吸引され、可動接点14a、14bが下側の固定接点22a、23aに加圧した状態で当接して両方の接点が閉鎖される。
【0029】
上述した実施例のリレー装置において、一番目の発熱部位は電磁ブロック3のコイルアセンブリ31であり、二番目の発熱部位は固定接点22a、23aと可動接点14a、14bとの接触面である。一対のコイル端子36、37に通電すれば、コイルアセンブリ31のコイルボビンに巻き取られたコイルから熱が発生する。したがって、コイルで発生する熱を除去するための空間が必要であり、また、固定接点22a、23aと可動接点14a、14bとの接触面で発生する熱を除去するための空間が必要である。以下、このような空間を図3及び図4を参照して定義する。
【0030】
図3は、図1のリレー装置の部分断面図であって、リレー装置の本体100の側面を示している。図3を参照すれば、固定接点22a、23aと固定接点端子22、23との接合面510を基準に前記カバー200内の全体空間を2つの部分に分ける。まず、前記接合面510を基準に下側の空間、すなわち電磁ブロック3を含む空間を第1空間410と定義し、残りの部分、すなわち前記接合面を基準に上側の空間を第2空間420と定義する。このとき、カバー200の内側全体の体積をVtとし、第2空間420の体積をVeとし、第2空間420における部品の体積の和をVrとする。
【0031】
リレー装置において一番目の発熱部位は、電磁ブロック3のコイルアセンブリ31であって、具体的にコイルアセンブリ31のコイルボビンに巻き取られたコイルから主に熱が発生する。したがって、リレー装置の第1空間410内で発生した熱を輻射作用と対流作用によって除去するため、カバー200の内側全体体積(Vt)で第2空間420が占める体積(Ve)の比率(Ve/Vt)を適切に維持しなければならない。第1空間410内に位置するコイルから発生する熱が相対的に空いた空間の多い第2空間420に輻射及び対流作用によって循環するためである。カバー200の内側全体体積(Vt)で第2空間420が占める体積(Ve)の比率(Ve/Vt)が小さい場合、熱が循環する空間が減少して性能に悪影響を及ぼす。一方、カバー200の内側全体体積(Vt)で第2空間420が占める体積(Ve)の比率(Ve/Vt)を大きくすれば、熱を除去する効率は高まるが、製品サイズ及びコストが増加して製品競争力が低下する。望ましくは、カバー200の内側全体体積(Vt)で第2空間420が占める体積(Ve)の比率(Ve/Vt)は19%〜27%である。このとき、カバー200の内側全体体積(Vt)を算出するとき、カバー200の内側に取り付けられるリブ(lib)は除いて算出する。すなわち、リブがない状態を仮定してカバー200の内側全体体積(Vt)を算出する。リブは、後述するように、第2空間420で部品の体積の和(Vr)を算出するときに部品として考慮される。
【0032】
また、リレー装置において二番目の発熱部位は、固定接点22a、23aと可動接点14a、14bとの間である。したがって、前記第2空間420の体積(Ve)で部品が占める体積(Vr)の比率(Vr/Ve)が大きくなって空いた空間が足りなくなれば、固定接点22a、23aと可動接点14a、14bとの開離時に発生するアークによって発生する熱が輻射や対流によって循環する空間が減るようになる。さらに、前記一番目の発熱部位、すなわちコイルアセンブリ31のコイルから発生する熱も第2空間420の空いた空間を循環しなければならないが、第2空間420の体積(Ve)で部品が占める体積(Vr)の比率(Vr/Ve)が大きくなって空いた空間が足りなくなれば、接点間の熱だけでなくコイルで発生する熱も加えられてリレー装置の性能に悪影響を与える。一方、カバー200のサイズを増やして前記第2空間420の体積(Ve)を増加させることで、第2空間420の体積(Ve)で部品が占める体積(Vr)の比率(Vr/Ve)を小さくして空いた空間を増加させる場合は、製品サイズ及びコストが増加して製品競争力が低下する。したがって、望ましくは、第2空間420の体積(Ve)で部品が占める体積(Vr)の比率(Vr/Ve)は21%〜42%である。このとき、第2空間420を占める部品には、代表的に、可動接点アセンブリ1の一部、固定接点22a、23a、電磁ブロック3の上側フランジ部34に形成されたストッパ34a、カバー200の内側に形成されるリブが含まれる。
【0033】
一方、リレー装置において、第2空間420の体積(Ve)で部品が占める体積(Vr)の比率(Vr/Ve)が21%〜42%であるときは、カバー200の内側全体体積(Vt)で第2空間420が占める体積(Ve)の比率(Ve/Vt)が19%〜27%を超えても、リレー装置としての機能を正常に果たし、接点の損傷も僅かである。すなわち、カバー200の内側全体体積(Vt)で第2空間420が占める体積(Ve)の比率(Ve/Vt)が19%〜27%を超えても、第2空間420の体積(Ve)で部品が占める体積(Vr)の比率(Vr/Ve)が21%〜42%であれば、リレー装置は本来の機能を正常に果たして接点の損傷も僅かである。これについては実験例をもって後述する。
【0034】
図4は、本発明のリレー装置に対して定義する空間及び体積の比率を説明する概略図である。図4において、Vtはリレー装置のカバー200の内側全体体積を示す。カバー200は、一般にプラスチック樹脂を用いて射出成形で製造され、このときカバー200の内側表面にはリブが一緒に成形される。このようなリブは、カバー200の内側全体体積(Vt)で考慮せず、部品として考慮する。図4に示されたVrは第2空間420に存在するリブの体積である。上述したように、リレー装置のカバー200の内側全体空間は、固定接点22a、23aと固定接点端子22、23との接合面を基準に第1空間410と第2空間420とに分けられる。図4の510は第1空間410と第2空間420とを分けるベースラインを示す。すなわち、固定接点22a、23aと固定接点端子22、23との接合面を含む平面が第1空間410と第2空間420とを分ける基準になる。第2空間420の体積は、図4に示されたようにVeである。また、図4に示されたように、第2空間420に4つの部品がある場合、第2空間420で部品が占める体積(Vr)はその4つの部品の体積の和(Vr+Vr+Vr+Vr)である。
【0035】
上述した実施例のリレー装置は、基本的な構成のみを示す。変形実施例として、リレー装置は、第2空間420にアーク消弧部材をさらに含むことができる。アーク消弧部材は、永久磁石及びこれらを収容するフレームを含む。具体的に、各固定接点22a、23aの両側に互いに対面するように永久磁石を設ければ、固定接点22a、23aと可動接点14a、14bとの接触及び開離過程で発生するアークを消弧することができる。このようにリレー装置は、製品設計方式によって第2空間420に多様な部品を追加又は省略可能であって、このような部品の体積を考慮して上述したような第2空間420の体積(Ve)で部品が占める体積(Vr)の比率(Vr/Ve)を調節することができる。第2空間420の体積(Ve)で部品が占める体積(Vr)の比率(Vr/Ve)は、カバー200の大きさを調節して調節することができる。また、上述した実施例のリレー装置は、カンチレバー型を基準に説明しているが、異なるタイプのリレー装置であるラダー型リレー装置などにも同様の原理が適用できる。
【0036】
以下、図1を参照して説明したリレー装置の体積の比率による性能実験の結果を説明する。
【0037】
<サンプル製作>
まず、リレー装置のカバー200の内側全体体積(Vt)で第2空間420が占める体積(Ve)の比率(Ve/Vt)による性能を実験するため、図1を参照して説明した構造のリレー装置を用意する。このとき、第2空間420にある部品による性能への影響を最小化するため、第2空間420の体積(Ve)で部品が占める体積(Vr)の比率(Vr/Ve)は21.5%にする。そして、リレー装置のカバー200の内側全体体積(Vt)で第2空間420が占める体積(Ve)の比率(Ve/Vt)を16%から34%まで0.5%ポイントずつ増加させた総37個のリレー装置を用意する。このような37個のリレー装置の性能実験データは図5に示されたようである。図5において、Vtはカバー200の内側全体体積であり、Veは第2空間420の体積である。
次いで、カバー200の内側全体体積(Vt)で第2空間420が占める体積(Ve)の比率(Ve/Vt)を23%にした状態で、第2空間420の体積(Ve)で部品が占める体積(Vr)の比率(Vr/Ve)を16%から45.5%まで0.5%ポイントずつ増加させた総60個のリレー装置を用意する。このような60個のリレー装置の性能実験データは図6に示されたようである。図6において、Veは第2空間420の体積であり、Vrは第2空間420の部品の体積の和である。
【0038】
最後に、カバー200の内側全体体積(Vt)で第2空間420が占める体積(Ve)の比率(Ve/Vt)を18%にした状態で、第2空間420の体積(Ve)で部品が占める体積(Vr)の比率を16%から45.5%まで0.5%ポイントずつ増加させた総60個のリレー装置を用意する。このような60個のリレー装置の性能実験データは図7に示されたようである。図7において、Veは第2空間420の体積であり、Vrは第2空間420の部品の体積の和である。
【0039】
<性能測定>
上記のように多数個のリレー装置のサンプルを用意した後、電圧を12V、電流を17Aにして通電し、2秒単位でオン/オフを100,000回実施する。負荷はランプ負荷を用いる。性能は、リレー装置の通電如何、接点の焼損状態、そして接点の接触抵抗を測定する。接点の焼損状態は、A/B/C/Dの4つに区分する。A状態は、接点の炭化痕が僅かであって、接点部分及びその外の部品の温度差が僅かな状態である。図8は、A状態のリレー装置の熱解析結果を示した図である。B状態は、接点の炭化痕が僅かであるものの、接点部分のみ温度が上昇した状態である。図9は、B状態のリレー装置の熱解析結果を示した図である。C状態は、接点の炭化痕が顕微鏡で識別可能であって、接点部分及び隣接部分まで温度が上昇した状態である。図10は、C状態のリレー装置の熱解析結果を示した図である。D状態は、接点の炭化痕が目視で識別可能であって、接点部分、可動接点バネ14及び固定接点端子22、23の殆どの温度が上昇した状態である。図11は、D状態のリレー装置の熱解析結果を示した図である。図8図11において、凡例の単位は℃である。
【0040】
図5は、一実施例によるリレー装置のカバー200の内側全体体積(Vt)で第2空間420が占める体積(Ve)の比率(Ve/Vt)による性能結果を示した図である。図5に示されたように、リレー装置のカバー200の内側全体体積(Vt)で第2空間420が占める体積(Ve)の比率(Ve/Vt)が19%〜27%(サンプル7〜サンプル23)であるとき、リレー装置が通電可能であって、接点損傷が最上の状態であるA状態になる。しかし、リレー装置のカバー200の内側全体体積(Vt)で第2空間420が占める体積(Ve)の比率(Ve/Vt)が19%未満(サンプル1〜サンプル6)になれば、コイルアセンブリ31のコイルから発生する熱が第2空間420を通じて十分除去されず、接点焼損がB状態及びC状態になる。一方、リレー装置のカバー200の内側全体体積(Vt)で第2空間420が占める体積(Ve)の比率(Ve/Vt)が27%を超過(サンプル24〜サンプル37)すれば、コイルから発生する熱は十分除去できるものの、その分カバー200が大きくなって製品サイズ及コストが上昇して製品競争力が低下する。したがって、リレー装置のカバー200の内側全体体積(Vt)で第2空間420が占める体積(Ve)の比率(Ve/Vt)は19%〜27%であることが望ましいことが分かる。
【0041】
図6は、一実施例によるリレー装置の第2空間420の体積(Ve)で部品が占める体積(Vr)の比率(Vr/Ve)による性能結果を示した図であって、カバー200の内側全体体積(Vt)で第2空間420が占める体積(Ve)の比率(Ve/Vt)を23%にした状態で、第2空間420の体積(Ve)で部品が占める体積(Vr)の比率(Vr/Ve)を変化させて性能を実験した結果である。カバー200の内側全体体積(Vt)で第2空間420が占める体積(Ve)の比率(Ve/Vt)が23%である場合は、図5に示されたように、リレー装置が通電可能であって、接点損傷が最上の状態であるA状態である。しかし、図6を参照すれば、カバー200の内側全体体積(Vt)で第2空間420が占める体積(Ve)の比率(Ve/Vt)が23%であっても、第2空間420の体積(Ve)で部品が占める体積(Vr)の比率(Vr/Ve)が42%を超過(サンプル54〜サンプル60)すれば、リレー装置の通電は可能であるものの、接点損傷がB状態になり、さらに接触抵抗も26.8mΩ以上にある。一方、第2空間420の体積(Ve)で部品が占める体積(Vr)の比率(Vr/Ve)が42%以下(サンプル11〜サンプル53)になれば、リレー装置が通電可能であって接点損傷がA状態になり、さらに接触抵抗も最大13.2mΩと大幅に減る。一方、第2空間420の体積(Ve)で部品が占める体積(Vr)の比率(Vr/Ve)が21%未満(サンプル1〜サンプル10)になれば、接点損傷がA状態であるものの、その分カバー200が大きくなって、製品サイズ及びコストが増加して製品競争力が低下する。したがって、リレー装置のカバー200の内側全体体積(Vt)で第2空間420が占める体積(Ve)の比率(Ve/Vt)が19%〜27%であり、且つ、第2空間420の体積(Ve)で部品が占める体積(Vr)の比率(Vr/Ve)が21%〜42%であることが最も望ましい。
【0042】
図7は、他の実施例によるリレー装置の第2空間420の体積(Ve)で部品が占める体積(Vr)の比率(Vr/Ve)による性能結果を示した図であって、カバー200の内側全体体積(Vt)で第2空間420が占める体積(Ve)の比率(Ve/Vt)を18%にした状態で、第2空間420の体積(Ve)で部品が占める体積(Vr)の比率(Vr/Ve)を変化させて性能を実験した結果である。カバー200の内側全体体積(Vt)で第2空間420が占める体積(Ve)の比率(Ve/Vt)が18%である場合、図5に示されたように、リレー装置が通電可能であって、接点損傷がB状態である。しかし、図7を参照すれば、カバー200の内側全体体積(Vt)で第2空間420が占める体積(Ve)の比率(Ve/Vt)が18%であっても、第2空間420の体積(Ve)で部品が占める体積(Vr)の比率(Vr/Ve)が42%を超過(サンプル54〜サンプル60)すれば、リレー装置は通電できず、接点損傷はD状態になる。すなわち、接点の炭化痕を目視で識別できるほど炭化粉が多量発生して、通電自体が不可能であって動作しない。第2空間420で部品が占める空間が大きくなって熱が循環する空間が減ったためである。一方、第2空間420の体積(Ve)で部品が占める体積(Vr)の比率(Vr/Ve)が21%未満(サンプル1〜サンプル10)になれば、通電可能であって、接点損傷がB状態であるとしても、その分カバー200が大きくなり、製品サイズ及びコストが増加して製品競争力が低下する。したがって、リレー装置のカバー200の内側全体体積(Vt)で第2空間420が占める体積(Ve)の比率(Ve/Vt)に関係なく、第2空間420の体積(Ve)で部品が占める体積(Vr)の比率(Vr/Ve)は少なくとも21%〜42%であること(サンプル11〜サンプル53)が望ましい。
【0043】
本明細書は多くの特徴を含んでいるが、これら特徴が本発明の範囲または特許請求の範囲を制限すると解析されてはならない。また、本明細書で個別的な実施例として説明された特徴は、単一実施例として組み合わせられて具現できる。逆に、本明細書で単一実施例として説明された多様な特徴は、個別的に多様な実施例で具現されるか、または、適切に組み合わせられて具現できる。
【0044】
以上の本発明は、本発明が属する技術分野で通常の知識を持つ者によって本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で様々な置換、変形及び変更が可能であり、上述した実施例及び添付される図面によって限定されるものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11