【実施例】
【0077】
生物学的データ
化合物Aおよび化合物Bが、野生型および発癌性突然変異型のPDGFRキナーゼ、発癌性融合タンパク質型のPDGFRαキナーゼ、ならびにPDGFRα突然変異型または増幅型の癌を阻害することは予想外の発見であった。この予想外の発見の解析を、生化学的アッセイ、細胞アッセイ、および癌患者におけるインビボ臨床評価において行った。
【0078】
本開示は、以下の実施例によってさらに解説されるが、それらは、本明細書に記載される具体的な手順に対し、範囲または主旨において本開示を限定するものとはみなされないものとする。実施例は、特定の実施形態を解説するために提示されるものであり、実施例により本開示の範囲を限定する意図はないことを理解されたい。さらに本開示の主旨、および/または添付の請求の範囲から逸脱することなく、当業者に示唆され得る様々な他の実施形態、改変および均等が再分類されることを理解されたい。
実施例1.野生型PDGFRαの酵素活性の阻害
PDGFRα(GenBankアクセッション番号 NP_006197) に対する生化学アッセイ
【0079】
PDGFRαキナーゼの活性は、NADHのATP加水分解依存性酸化を継続的にモニターするカップリング化ピルビン酸キナーゼ/乳酸デヒドロゲナーゼアッセイを使用して、分光法により決定した(例えば参照によりその全体で本明細書に組み込まれるSchindler et al.Science(2000) 289:1938−1942)。アッセイは、4.8nM PDGFRA(Decode Biostructure社、ワシントン州ベインブリッジ島)、5単位のピルビン酸キナーゼ、7単位の乳酸デヒドロゲナーゼ、1mM ピルビン酸ホスホエノール、0.28mM NADH、2.5mg/mL PolyEYおよび0.5mM ATPのアッセイ緩衝液(90mM Tris、pH7.5、18mM MgCl
2、1mM DTTおよび0.2%オクチル−グルコシド)溶液を使用して、384ウェルプレートにおいて実施された(最終体積は100μL)。連続希釈された被験化合物を添加した後にPDGFRAの阻害が測定された(1%DMSOの最終アッセイ濃度)。マルチモードマイクロプレートリーダー(BioTek社、ウィヌースキ、バーモント州)上で340nmでの吸収の減少が、30℃で6時間、連続的にモニターされた。反応速度は、1〜2時間の時間枠を使用して計算された。化合物の各濃度での反応速度は、対照(すなわち被験化合物無しでの反応、および公知の阻害剤を用いた反応)を使用して阻害割合に変換された。IC
50値は、Prism(GraphPad社、サンディエゴ、カリフォルニア州)を使用したデータに対し、4パラメーターS字曲線に適合させることにより算出された。
PDGFRαのタンパク質配列(550〜1089残基。N末端にGSTタグが付いている;Genbank 配列番号1)。
【化3】
【0080】
化合物Aは、組み換え野生型PDGFRαの酵素活性を、12nMのIC
50値で阻害した。化合物Bは、組み換え野生型PDGFRαの酵素活性を、6nMのIC
50値で阻害した。
実施例2.D842V突然変異型PDGFRαの酵素活性の阻害
PDGFRα D842V(GenBankアクセッション番号 NP_006197)に対する生化学アッセイ
【0081】
PDGFRα D842Vキナーゼの活性は、NADHのATP加水分解依存性酸化を継続的にモニターするカップリング化ピルビン酸キナーゼ/乳酸デヒドロゲナーゼアッセイを使用して、分光法により決定した(例えば参照によりその全体で本明細書に組み込まれるSchindler et al.Science(2000)289:1938−1942)。アッセイは、3nM PDGFRA D842V(Invitrogen社、カールスバッド、カリフォルニア州)、5単位のピルビン酸キナーゼ、7単位の乳酸デヒドロゲナーゼ、1mM ピルビン酸ホスホエノール、0.28mM NADH、2.5mg/mL PolyEYおよび0.5mM ATPのアッセイ緩衝液(90mM Tris、pH7.5、18mM MgCl
2、1mM DTTおよび0.2%オクチル−グルコシド)溶液を使用して、384ウェルプレートにおいて実施された(最終体積は100μL)。連続希釈された被験化合物を添加した後にPDGFRA D842Vの阻害が測定された(1%DMSOの最終アッセイ濃度)。マルチモードマイクロプレートリーダー(BioTek社、ウィヌースキ、バーモント州)上で340nmでの吸収の減少が、30℃で6時間、連続的にモニターされた。反応速度は、2〜3時間の時間枠を使用して算出された。化合物の各濃度での反応速度は、対照(すなわち被験化合物無しでの反応、および公知の阻害剤を用いた反応)を使用して阻害割合に変換された。IC
50値は、Prism(GraphPad社、サンディエゴ、カリフォルニア州)を使用したデータに対し、4パラメーターS字曲線に適合させることにより算出された。
PDGFRα D842Vのタンパク質配列(550〜1089残基。N末端にHIS−GSTタグが付いている;Genbank 配列番号2)。
【化4】
【0082】
化合物Aは、組み換えD842V突然変異型PDGFRαの酵素活性を、42nMのIC50値で阻害した。化合物Bは、組み換えD842V突然変異型PDGFRαの酵素活性を、20nMのIC
50値で阻害した。
実施例3.野生型PDGFRβの酵素活性の阻害
PDGFRB(GenBankアクセッション番号 NP_002600)に対する生化学アッセイ
【0083】
PDGFRβキナーゼの活性は、NADHのATP加水分解依存性酸化を継続的にモニターするカップリング化ピルビン酸キナーゼ/乳酸デヒドロゲナーゼアッセイを使用して、分光法により決定した(例えば参照によりその全体で本明細書に組み込まれるSchindler et al.Science(2000)289:1938−1942)。アッセイは、9nM PDGFRB(Decode Biostructure社、ワシントン州ベインブリッジ島)、5単位のピルビン酸キナーゼ、7単位の乳酸デヒドロゲナーゼ、1mM ピルビン酸ホスホエノール、0.28mM NADH、2.5mg/mL PolyEYおよび0.5mM ATPのアッセイ緩衝液(90mM Tris、pH7.5、18mM MgCl
2、1mM DTTおよび0.2%オクチル−グルコシド)溶液を使用して、384ウェルプレートにおいて実施された(最終体積は100μL)。連続希釈された被験化合物を添加した後にPDGFRBの阻害が測定された(1%DMSOの最終アッセイ濃度)。マルチモードマイクロプレートリーダー(BioTek社、ウィヌースキ、バーモント州)上で340nmでの吸収の減少が、30℃で6時間、連続的にモニターされた。反応速度は、2〜3時間の時間枠を使用して算出された。化合物の各濃度での反応速度は、対照(すなわち被験化合物無しでの反応、および公知の阻害剤を用いた反応)を使用して阻害割合に変換された。IC
50値は、Prism(GraphPad社、サンディエゴ、カリフォルニア州)を使用したデータに対し、4パラメーターS字曲線に適合させることにより算出された。
PDGFRβのタンパク質配列(557〜1106残基。N末端にHIS−GST−タグが付いている;Genbank 配列番号3)
【化5】
【0084】
化合物Aは、組み換え野生型PDGFRβの酵素活性を、9nMのIC
50値で阻害した。化合物Bは、組み換え野生型PDGFRβの酵素活性を、5nMのIC
50値で阻害した。
実施例4.Ba/F3細胞で発現されたD842V突然変異型PDGFRαの増殖阻害
BaF3 PDGFRα D842Vの細胞培養
【0085】
D842V PDGFRαをコードする構築体でBaF3細胞をトランスフェクトし、IL−3非依存性に対して選択した。簡潔に述べると、細胞を、10%の特徴解析されたウシ胎仔血清(Invitrogen社、カールスバッド、カリフォルニア州)、1単位/mL ペニシリンG、1μg/mL ストレプトマイシン、および0.29mg/mL L−グルタミンを補充されたRPMI1640培地中、37℃、5%CO2、湿度95%で増殖させた。
BaF3 PDGFRα D842V の細胞増殖アッセイ
【0086】
被験化合物の連続希釈物を、96ウェルの黒色透明底のプレート(Corning社、コーニング、ニューヨーク州)に分注した。1ウェル当たり1万個の細胞を、200μLの完全増殖培地中で添加した。プレートを37℃、5%CO
2、湿度95%で67時間インキュベートした。インキュベーション期間の最後に、40μLの440μMレザズリン(Sigma社、セントルイス、ミズーリ州)のPBS溶液を各ウェルに加え、プレートを37℃、5%CO
2、湿度95%でさらに5時間インキュベートした。プレートは、540nmの励起と600nmの発光を使用して、Synergy2リーダー(Biotek社、ウィヌースキ、バーモント州)上で読み取られた。Prismソフトウェア(GraphPad社、カリフォルニア州サンディエゴ)を使用してデータを分析して、IC
50値を算出した。
【0087】
化合物Aは、36nMのIC
50値で、D842V突然変異型PDGFRαBaF3細胞の増殖を阻害した。化合物Bは、42nMのIC
50値で、D842V突然変異型PDGFRαBaF3細胞の増殖を阻害した。
実施例5.BaF3細胞中で発現されたD842V突然変異型PDGFRαのリン酸化阻害
BaF3 PDGFRα D842Vの細胞培養
【0088】
D842V PDGFRαをコードする構築体でBaF3細胞をトランスフェクトし、IL−3非依存性に対して選択した。簡潔に述べると、細胞を、10%の特徴解析されたウシ胎仔血清(Invitrogen社、カールスバッド、カリフォルニア州)、1単位/mL ペニシリンG、1μg/mL ストレプトマイシン、および0.29mg/mL L−グルタミンを補充されたRPMI1640培地中、37℃、5%CO2、湿度95%で増殖させた。
BaF3 PDGFRα D842V ウェスタンブロット
【0089】
無血清RPMI1640培地中に懸濁された細胞を、1ウェル当たり200万個で24ウェルの組織培養処置プレートに添加した。被験化合物の連続希釈を、細胞を入れたプレートに添加した。プレートを4時間、5%CO
2、湿度95%、37℃でインキュベートした。細胞をPBSで洗浄し、次いで溶解させた。細胞溶解物をSDS−PAGEにより分離させ、PVDFにトランスファーさせた。ホスホ−PDGFRα(Tyr754)は、Cell Signaling Technology社(マサチューセッツ州ベバリー)の抗体、ECL Plus検出試薬(GE Healthcare社、ニュージャージー州ピスカタウェイ)およびMolecular Devices Storm 840 phosphorimagerを蛍光モードで使用して検出した。ブロットを剥がし、Cell Signaling Technology社(マサチューセッツ州ベバリー)の抗体を使用して総PDGFRαに対してプローブした。IC50値は、Prismソフトウェア(GraphPad社、カリフォルニア州サンディエゴ)を使用して算出された。
【0090】
化合物Aは、BaF3細胞中で発現されたD842V突然変異型PDGFRαのリン酸化を、24nMのIC
50値で阻害した。化合物Bは、BaF3細胞中で発現されたD842V突然変異型PDGFRαのリン酸化を、26nMのIC
50値で阻害した。
実施例6.CHO細胞中で発現されたV561D突然変異型PDGFRαのリン酸化阻害
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に、pcDNA3.1プラスミド(Invitrogen社、カリフォルニア州カールスバッド)へとクローニングされたV561D突然変異型PDGFRA cDNA構築体を一過性にトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、様々な濃度の化合物を用いて90分間処置した。細胞由来のタンパク質溶解物を調製し、抗PDGFRA抗体(SC−20、Santa Cruz Biotechnology社、カリフォルニア州サンタクルーズ)を使用して免疫沈降を行い、次いでモノクローナル抗体(PY−20、BD Transduction Labs社、メリーランド州スパークス)または総PDGFRα(SC−20、Santa Cruz Biotechnology社、カリフォルニア州サンタクルーズ)を使用して、ホスホチロシンに対して連続イムノブロッティングを行った。Photoshop5.1ソフトウェアを使用して濃度測定を実行し、薬剤効果を定量して、総タンパク質に対しホスホ−PDGFRαのレベルを標準化した。濃度測定実験の結果は、Calcusyn2.1ソフトウェア(Biosoft社、英国ケンブリッジ)を使用して分析し、数学的にIC
50値を決定した。
【0091】
化合物Aは、CHO細胞中で発現されたV561D突然変異型PDGFR□のリン酸化を、25nMのIC
50値で阻害した。
実施例7.CHO細胞中で発現されたエクソン18 842−845欠失突然変異型PDGFRαのリン酸化阻害
【0092】
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に、pcDNA3.1プラスミド(Invitrogen社、カリフォルニア州カールスバッド)へとクローニングされた突然変異型ΔD842−H845 PDGFRA cDNA構築体を一過性にトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、様々な濃度の化合物を用いて90分間処置した。細胞由来のタンパク質溶解物を調製し、抗PDGFRA抗体(SC−20、Santa Cruz Biotechnology社、カリフォルニア州サンタクルーズ)を使用して免疫沈降を行い、次いでモノクローナル抗体(PY−20、BD Transduction Labs社、メリーランド州スパークス)または総PDGFRα(SC−20、Santa Cruz Biotechnology社、カリフォルニア州サンタクルーズ)を使用して、ホスホチロシンに対して連続イムノブロッティングを行った。Photoshop5.1ソフトウェアを使用して濃度測定を実行し、薬剤効果を定量して、総タンパク質に対しホスホ−PDGFRAのレベルを標準化した。濃度測定実験の結果は、Calcusyn2.1ソフトウェア(Biosoft社、英国ケンブリッジ)を使用して分析し、数学的にIC
50値を決定した。
【0093】
化合物Aは、CHO細胞中で発現されたエクソン18 842−845欠失突然変異型PDGFRαのリン酸化を、77nMのIC
50値で阻害した。
実施例8.EOL−1細胞におけるFIP1L1−PDGFRα融合体の増殖阻害
EOL−1(FIP1L1/PDGFRα融合体)細胞培養
【0094】
EOL−1細胞を、10%の特徴解析されたウシ胎仔血清(Invitrogen社、カールスバッド、カリフォルニア州)、1単位/mL ペニシリンG、1μg/mL ストレプトマイシン、および0.29mg/mL L−グルタミンを補充されたRPMI1640培地中、37℃、5%CO2、湿度95%で増殖させた。
EOL−1細胞増殖アッセイ
【0095】
被験化合物の連続希釈物を、96ウェルの黒色透明底のプレート(Corning社、コーニング、ニューヨーク州)に分注した。1ウェル当たり1万個の細胞を、200μLの完全増殖培地中で添加した。プレートを37℃、5%CO2、湿度95%で67時間インキュベートした。インキュベーション期間の最後に、40μLの440μMレザズリン(Sigma社、セントルイス、ミズーリ州)のPBS溶液を各ウェルに加え、プレートを37℃、5%CO2、湿度95%でさらに5時間インキュベートした。プレートは、540nmの励起と600nmの発光を使用して、Synergy2リーダー(Biotek社、ウィヌースキ、バーモント州)上で読み取られた。Prismソフトウェア(GraphPad社、カリフォルニア州サンディエゴ)を使用してデータを分析して、IC50値を算出した。
【0096】
化合物Aは、0.029nMのIC
50値で、EOL−1細胞中のFIP1L1−PDGFRα融合体の増殖を阻害した。化合物Bは、0.018nMのIC
50値で、EOL−1細胞中のFIP1L1−PDGFRα融合体の増殖を阻害した。
実施例9.EOL−1細胞におけるFIP1L1−PDGFRα融合体のリン酸化阻害
EOL−1(FIP1L1/PDGFRα融合体)細胞培養
【0097】
EOL−1細胞を、10%の特徴解析されたウシ胎仔血清(Invitrogen社、カールスバッド、カリフォルニア州)、1単位/mL ペニシリンG、1μg/mL ストレプトマイシン、および0.29mg/mL L−グルタミンを補充されたRPMI1640培地中、37℃、5%CO2、湿度95%で増殖させた。
EOL−1ウェスタンブロット
【0098】
無血清RPMI1640培地中に懸濁された細胞を、1ウェル当たり200万個で24ウェルの組織培養処置プレートに添加した。被験化合物の連続希釈を細胞を入れたプレートに添加した。プレートを4時間、5%CO2、湿度95%、37℃でインキュベートした。細胞をPBSで洗浄し、次いで溶解させた。細胞溶解物をSDS−PAGEにより分離させ、PVDFにトランスファーさせた。ホスホ−PDGFRα(Tyr754)は、Cell Signaling Technology社(マサチューセッツ州ベバリー)の抗体、ECL Plus検出試薬(GE Healthcare社、ニュージャージー州ピスカタウェイ)およびMolecular Devices Storm 840 phosphorimagerを蛍光モードで使用して検出した。ブロットを剥がし、Cell Signaling Technology社(マサチューセッツ州ベバリー)の抗体を使用して総PDGFRαに対してプローブした。IC50値は、Prismソフトウェア(GraphPad社、カリフォルニア州サンディエゴ)を使用して算出された。
【0099】
化合物Aは、0.12nMのIC
50値で、EOL−1細胞中のFIP1L1−PDGFRα融合体のリン酸化を阻害した。化合物Bは、0.1nM未満のIC
50値で、EOL−1細胞中のFIP1L1−PDGFRα融合体のリン酸化を阻害した。
実施例10.PDGFRα D842V突然変異を有するヒト癌患者の治療
【0100】
臨床試験プロトコルDCC−2618−01−001“進行性悪性腫瘍を有する患者における安全性、忍容性および薬物動態に関し化合物Aを評価する多施設第I相非盲検試験”は、化合物Aに関する最初のヒト試験である(ClinicalTrials.gov Identifier:NCT02571036)。この用量漸増試験の目的は、化合物Aの安全性、忍容性、薬物動態(PK)、薬力学(PD)および予備的な抗腫瘍活性を評価することである。治験薬は、20mg BIDから200mg BIDの範囲内で用量を漸増させ、1日1回または1日2回のいずれかで経口投与される。予備的な抗腫瘍活性は、RECIST 1.1に従って1サイクルおきに(56日ごと)CTスキャンにより測定された。薬力学的効果は、無細胞血漿(cf)DNA中の突然変異型アレル頻度(MAF:mutation allele frequency)の減少として測定され、Guardant 360 v2.9またはv2.10(Guardant Health社、カリフォルニア州レッドウッドシティ)、73遺伝子の次世代シーケンシングパネルを用いて分析された。
【0101】
すべての患者は、標準治療に対して進行性疾患を有するものとし、治療を行わなければ直ちに進行するであろう。PDGFRα突然変異型消化管間質腫瘍(GIST)を有する3名の患者を本試験に登録した。PDGFRα D842V突然変異は、腫瘍生検によって各患者において特定された。非臨床データ、およびDCC−2618−01−001試験から入手可能な薬物動態データに基づけば、≧50mg BID(1日投与量は100mgに等しい)の用量レベルで、腫瘍制御、すなわちGISTに罹患する患者のPDGFRα D842V突然変異依存性腫瘍のこれら進行性肉腫における増殖停止をもたらすのに充分であった。評価可能な患者3名のうち、2名が標的有効用量レベル(150mg QD、および100mg BID)以上で登録された。その他の患者は30mg BIDで登録され、28日間の2治療サイクル後に進行した。100mg BIDの患者はサイクル11(>40週間)で現在進行中であり、治療からの利益を受け続けている。最新の腫瘍評価は、RECIST 1.1に従い「安定疾患」を確認した。試験全体を通した腫瘍評価は、サイクル9(36週)後の最も直近の評価を含み、いくらかの腫瘍減少(5〜10%)を明らかにした。150mg QDの用量レベルで治療された患者はサイクル6(>20週)で現在進行中であり、RECISTでの安定疾患であり、なんらかの腫瘍減少が観察された。この2名の患者はそれぞれ過去にチロシンキナーゼ阻害剤を用いた治療を1回および3回受けている。
【0102】
今日までのところ、血漿中のPDGFRα D842V突然変異アレル頻度に関するcfDNAフォローアップデータは、100mg BIDの患者のみ利用可能である。PDGFRα D842V突然変異は、基準時にはcfDNAで検出されなかった。しかしサイクル3の治療後1日目(8週)で、0.59%の頻度が検出された。基準時にD842V突然変異が検出されなかったのは、データ解釈性能の限界である可能性がある。しかし腫瘍組織中に存在する突然変異が「検出不可能」である、すなわち2回の連続的解析ポイント(サイクル5の1日目(16週)およびサイクル7の1日目(24週))で検出限界以下であるという事実は、化合物Aを用いてヒト癌患者を治療することによって、このPDGFRα D842V突然変異が抑制されたことを強く支持するものである。
実施例11.PDGFRα増幅を伴うヒトグリア芽腫患者の治療
【0103】
臨床試験プロトコルDCC−2618−01−001“進行性悪性腫瘍を有する患者における安全性、忍容性および薬物動態に関し化合物Aを評価する多施設第I相非盲検試験”は、化合物Aに関する最初のヒト試験である(ClinicalTrials.gov Identifier:NCT02571036)。この用量漸増試験の目的は、化合物Aの安全性、忍容性、薬物動態(PK)、薬力学(PD)および予備的な抗腫瘍活性を評価することである。治験薬は、20mg BIDから200mg BIDの範囲内で用量を漸増させ、1日1回または1日2回のいずれかで経口投与される。予備的な抗腫瘍活性は、RANO(Revised Assessment in Neuro−Oncology)基準に従い、1サイクルおきにCTスキャンにより測定され、その後3サイクルごとに測定された(56日または84日ごと)。薬力学的効果は、循環腫瘍細胞(CTC)の減少として測定された。全血は、OncoQuickチューブ中でCTC用に富化された。CTC層は、高レベルのテロメラーゼを有する細胞中でGFPを複製し、発現するアデノウイルスとともにインキュベートされた(Oncolys BioPharma Inc.)。次いで、細胞を蛍光標識抗体とインキュベートし、固定して、DAPI染色を行った。DAPI、GFP、PDGFRαおよびGFAP蛍光に関して陽性の細胞は、BioTek Cytation 5撮像装置を使用して、循環グリア芽腫腫瘍細胞として計数された。グリア線維酸性タンパク質(GFAP:glial fibrillary acidic protein)は、グリア細胞に明確に起因する。
【0104】
すべての患者は、標準治療に対して進行性疾患を有するものとし、治療を行わなければ直ちに進行するであろう。PDGFRα増幅グリア芽腫(GBM;6x増幅、12コピー)を有する1名の患者を、20mg BIDの用量レベルで本試験に登録した。患者は放射線−化学療法の併用を用いて最初に治療された後、テモゾロミド単独で治療され、3カ月後に進行した。GBM患者はサイクル19(>17か月、試験中)で現在進行中であり、治療からの利益を受け続けている。サイクル12(48週間)後の腫瘍評価以降、患者はRANO基準による「部分奏功」を有している。
図1は、基準時(
図1A)およびサイクル12後(
図1C)のMRIスキャンを示す。
図1Bは、サイクル9後の腫瘍減少に関する追加的な立証を提供した。
【0105】
PDGFRα増幅の関連性を、小児および成人のグリア芽腫を含む高グレード星状細胞腫(HGA)において評価した。当初のヒト組織に対する大規模試験では、PDGFRαが増幅したHGAの有意な関連性が提唱されており、PDGFRα増幅がグレードを高め、IDH1突然変異型デノボGBMにおいて良好な予後が少ないことと関連性があると示唆されていた(その全体で参照により本明細書に組み込まれるPhilips et al.,Brain Pathol.(2013)23(5):565−73)。Dunnらは、PDGFRα増幅が、GBMのゲノム改変の誘導要因であることの追加的な照明を提供している(Dunn et al.,Genes Dev.(2012)26(8):756−84)。これらの発見に基づくと、化合物Aを用いた治療後にGBM患者において観察されたCTCの減少として測定された薬力学的な効果は、GBM患者で観察された部分奏功が、化合物Aを用いてPDGFRα増幅腫瘍を治療した結果であることを強く支持するものである。二重陽性CTC(PDGFRα+/GFAP+)はサイクル7(28週)で最初に測定され、頻度は2.22 CTC/mLであった。サイクル13(52週)およびサイクル17(68週)で頻度はそれぞれ1.11および0.58 CTC/mLにまで低下した。
実施例12 化合物Bは、化合物Aの経口投与後に生合成的に形成される。
【0106】
臨床試験プロトコルDCC−2618−01−001“進行性悪性腫瘍を有する患者における安全性、忍容性および薬物動態に関し化合物Aを評価する多施設第I相非盲検試験”は、化合物Aに関する最初のヒト試験である(ClinicalTrials.gov Identifier:NCT02571036)。この用量漸増試験の目的は、化合物Aの安全性、忍容性、薬物動態(PK)、薬力学(PD)および予備的な抗腫瘍活性を評価することである。治験薬は、20mg BIDから200mg BIDの範囲内で用量を漸増させ、1日1回または1日2回のいずれかで経口投与される。化合物Aを患者に経口投与することにより、化合物Aの全身暴露と、インビボN−脱メチル化による化合物Aから化合物Bへの生体内変化が生じる。薬物動態(PK)解析については、サイクル1、15日目に化合物Aを午前中に投与する直前に、および投与後0.5、1、2、4、6、8、および10〜12時間後に、血液サンプルが採取された。化合物A、およびその活性代謝物である化合物Bを、認証された生物分析法を使用して評価した。Phoenix WinNonlin バージョン6.3を使用して時間データに対する血漿濃度を分析し、標準的なノンコンパートメントPKパラメーターを算出した。すべてのPK算出は、予定上のサンプル採取時間を使用して完了させた。
【0107】
例としては、化合物Aを1日2回150mgまたは1日1回150mgの投与量で患者コホートに投与すると、以下の表に示されるように化合物Aに対し、そして化合物Bに対しても、サイクル1、15日目で安定的な暴露状態が生じる。
【0108】
5名の患者コホートに対し、150mg用量の化合物AをBID(1日2回)で15日間、経口投与することにより、平均Cmax=1,500ng/mLおよび平均曲線下面積(AUC)=11,400ng*h/mLの化合物Aに対する暴露がもたらされた。この15日間の投与により、平均Cmax=1,520ng/mLおよび平均AUC=15,100ng*h/mLで化合物Bへの生体内変化が生じた。4名の患者コホートに対し、150mg用量の化合物AをQD(1日1回)で15日間、経口投与することにより、平均Cmax=861ng/mLおよび平均曲線下面積(AUC)=8,070ng*h/mLの化合物Aに対する暴露がもたらされた。この15日間の投与により、平均Cmax=794ng/mLおよび平均AUC=8,600ng*h/mLで化合物Bへの生体内変化が生じた。
表1
【表1】
【0109】
均等
当分野の当業者であれば、本開示に具体的に記載される特定の実施形態に対する多数の均等を、通常の実験の範囲内で認識することができ、または確認することができるであろう。かかる均等は、以下の請求の範囲に包含されることが意図される。