(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コア粒子の表面に炭素前駆体をコートする段階で、前記炭素前駆体コーティング用組成物は、前記コア粒子100重量部に対し、前記炭素前駆体を0.01重量部〜10重量部含む、請求項6に記載のラジカルスカベンジャーの製造方法。
前記炭素前駆体は、ドパミン、アクリロニトリル、ビニルピロリドン、リグニン、これらの重合体及びこれらの混合物からなる群から選択されるいずれか1種である、請求項6に記載のラジカルスカベンジャーの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。ただ、これは例示のために提示するもので、これによって本発明が制限されず、本発明は後述する請求範囲の範疇によって定義されるだけである。
【0038】
本明細書で、特別な言及がない限り、層、膜、領域、板などの部分が他の部分‘上に’あるというとき、これは他の部分‘真上に’ある場合だけでなく、その中間にさらに他の部分がある場合も含む。
【0039】
本発明の一実施例によるラジカルスカベンジャーは、過酸化物又はラジカルを分解することができる、遷移金属、貴金属、これらのイオン、これらの塩、これらの酸化物及びこれらの混合物からなる群から選択されるいずれか1種のコア粒子、及び前記コア粒子の表面に位置する多孔性炭素コーティング層を含む。
【0040】
高分子電解質燃料電池のカソード電極での酸素の還元反応は過酸化水素(H
2O
2)を経て進むから、カソード電極では過酸化水素又は前記生成された過酸化水素から水酸化ラジカル(OH
−)を生成させることができる。また、前記高分子電解質燃料電池のアノード電極では、酸素分子がイオン交換膜を透過することにより、アノード電極でも前記過酸化水素又は水酸化ラジカルが生成され得る。前記生成された過酸化水素又は水酸化ラジカルは前記イオン交換膜又は前記触媒電極に含まれたスルホン酸基を含むポリマーを劣化させる原因となる。
【0041】
よって、前記過酸化物又はラジカルを分解することができるコア粒子を含むことにより、前記過酸化物からラジカルの生成を抑制するか、前記生成されたラジカルを分解して前記イオン交換膜又は前記触媒電極の劣化を防止することにより、前記イオン交換膜又は前記触媒電極の化学的耐久性を向上させることができる。
【0042】
前記過酸化物又はラジカルを分解することができるコア粒子としては、高分子電解質燃料電池の運転中に生成される過酸化物(特に、過酸化水素)又はラジカル(特に、水酸化ラジカル)を早く分解させることができるものであれば特に限定されずに本発明でいずれも使用が可能である。具体的な例を挙げれば、前記過酸化物又はラジカルを分解することができるコア粒子は前記過酸化物又はラジカルを分解することができる転移金属、前記過酸化物又はラジカルを分解することができる貴金属、これらのイオン形態、これらの塩形態、又はこれらの酸化物形態であり得る。
【0043】
具体的に、前記過酸化物又はラジカルを分解することができる転移金属は、セリウム(Ce)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、イリジウム(Ir)、モリブデン(Mo)、ランタン(La)及びネオジム(Nd)からなる群から選択されるいずれか1種であり得る。
【0044】
また、前記過酸化物又はラジカルを分解することができる貴金属は、銀(Au)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)及びロジウム(Rh)からなる群から選択されるいずれか1種であり得る。
【0045】
また、前記過酸化物又はラジカルを分解することができる転移金属又は前記貴金属のイオンは、セリウムイオン、ニッケルイオン、タングステンイオン、コバルトイオン、クロムイオン、ジルコニウムイオン、イットリウムイオン、マンガンイオン、鉄イオン、チタンイオン、バナジウムイオン、イリジウムイオン、モリブデンイオン、ランタンイオン、ネオジムイオン、銀イオン、白金イオン、ルテニウムイオン、パラジウムイオン及びロジウムイオンからなる群から選択されるいずれか1種であり得、具体的にセリウムを例として挙げれば、セリウム3価イオン(Ce
3+)又はセリウム4価イオン(Ce
4+)であり得る。
【0046】
また、前記過酸化物又はラジカルを分解することができる転移金属又は前記貴金属の酸化物は、酸化セリウム、酸化ニッケル、酸化タングステン、酸化コバルト、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化イリジウム、酸化モリブデン、酸化ランタン及び酸化ネオジムからなる群から選択されるいずれか1種であり得る。
【0047】
また、前記過酸化物又はラジカルを分解することができる転移金属又は前記貴金属の塩は、前記転移金属又は前記貴金属の炭酸塩、酢酸塩、塩化塩、フッ化塩、硫酸塩、リン酸塩、タングステン酸塩、水酸化塩、酢酸アンモニウム塩、硫酸アンモニウム塩及びアセチルアセトネート塩からなる群から選択されるいずれか1種であり得、具体的にセリウムを例として挙げれば、炭酸セリウム、酢酸セリウム、
塩化セリウム、硫酸セリウム、酢酸第2アンモニウムセリウム、硫酸第4アンモニウムセリウムなどを挙げることができ、有機金属錯塩としてセリウムアセチルアセトネートなどを挙げることができる。
【0048】
ただ、前記イオン交換膜のラジカルによる劣化を防止するために、前記イオン交換膜又は前記触媒電極に前記過酸化物又はラジカルを分解することができるコア粒子を分散させる場合、燃料電池の運転中に前記過酸化物又はラジカルを分解することができるコア粒子が溶出するという問題がある。
【0049】
よって、前記ラジカルスカベンジャーは、前記過酸化物又はラジカルを分解することができるコア粒子の表面に多孔性炭素コーティング層を形成して前記過酸化物又はラジカルを分解することができるコア粒子のモビリティー(mobility)を減少させて安定化させることにより、前記過酸化物又はラジカルを分解することができるコア粒子の溶出を防止することができる。
【0050】
ただ、前記多孔性炭素コーティング層は、前記ラジカルスカベンジャーが前記過酸化物又はラジカルを分解するのを妨げないように適切な気孔の大きさ、厚さ及び気孔度を有する必要がある。
【0051】
図1〜
図3はそれぞれ気孔の大きさ、厚さ及び気孔度が互いに異なる多孔性炭素コーティング層を含むラジカルスカベンジャーを模式的に示す図である。
図1を参照すると、前記過酸化物又はラジカルを分解することができるコア粒子1の表面に形成された前記多孔性炭素コーティング層2の気孔の大きさ、厚さ又は気孔度が適切であるから、水酸化ラジカル(OH
−)が前記多孔性炭素コーティング層2を通過して前記過酸化物又はラジカルを分解することができるコア粒子1であるセリウムと反応した後、反応生成物であるセリウムイオン(Ce
3+/
4+)が前記多孔性炭素コーティング層2を通過して排出されることにより、前記ラジカルスカベンジャーが適切に過酸化物又はラジカルを分解することができることが分かる。
【0052】
しかし、
図2及び
図3を参照すると、前記多孔性炭素コーティング層2の気孔の大きさ、厚さ又は気孔度が適切でないから、前記水酸化ラジカル(OH
−)が前記多孔性炭素コーティング層2を通過することができないか、前記セリウムイオン(Ce
3+/
4+)が前記多孔性炭素コーティング層2を通過することができないことにより、前記ラジカルスカベンジャーが適切に過酸化物又はラジカルを分解することができないことが分かる。
【0053】
このように、前記多孔性炭素コーティング層は、前記ラジカルと前記ラジカルの反応生成物の円滑な通過のために、前記多孔性炭素コーティング層の気孔大きさは1オングストローム(Å)〜20オングストローム(Å)であり得る。より具体的に、気孔大きさは3オングストローム(Å)〜5オングストローム(Å)であり得る。また、前記多孔性炭素コーティング層の厚さは0.5nm〜10nmであり得、より具体的に厚さが1nm〜5nmであり得る。前記多孔性炭素コーティング層の気孔の大きさ及び厚さが前記範囲を外れる場合、前記ラジカルと前記ラジカルの反応生成物の円滑な通過が難しくて前記ラジカルスカベンジャーが前記過酸化物又はラジカルを円滑に分解しにくいことがある。
【0054】
本発明の他の一実施例によるラジカルスカベンジャーの製造方法は、過酸化物又はラジカルを分解することができる、遷移金属、貴金属、これらのイオン、これらの塩、これらの酸化物及びこれらの混合物からなる群から選択されるいずれか1種のコア粒子の表面に炭素前駆体をコートする段階、及び前記コア粒子表面の炭素前駆体を炭化させて多孔性炭素コーティング層を形成する段階を含む。
【0055】
前記過酸化物又はラジカルを分解することができるコア粒子と前記多孔性炭素コーティング層についての説明は前述したものと同様であるので繰り返し説明は省略する。
【0056】
一方、前記コア粒子表面に炭素前駆体をコートする段階は、具体的に前記炭素前駆体を溶媒に添加して炭素前駆体コーティング用組成物を製造する段階、及び前記炭素前駆体コーティング用組成物に前記コア粒子を添加して撹拌する段階を含むことができる。
【0057】
前記炭素前駆体は、ドパミン、アクリロニトリル、ビニルピロリドン、リグニン、これらの重合体及びこれらの混合物からなる群から選択されるいずれか1種であり得、より具体的にドパミンを使うことができる。前記炭素前駆体としてドパミンを使う場合、コア粒子の表面でのポリドパミン重合反応によって均一なコーティング厚さを形成することができる。
【0058】
前記炭素前駆体を溶媒に添加して炭素前駆体コーティング用組成物を製造するための前記溶媒としては、水、エタノール、メタノール、アセトン、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、トリス−塩酸バッファー溶液及びこれらの混合物からなる群から選択されるいずれか1種を使うことができる。
【0059】
ここで、前記炭素前駆体コーティング用組成物は、前記コア粒子100重量部に対し、前記炭素前駆体を0.01重量部〜10重量部含むことができ、より具体的に0.1重量部〜1重量部含むことができる。前記炭素前駆体の含量が、前記コア粒子100重量部に対し、0.01重量部未満の場合、均一なコーティングにならないことがあり、10重量部を超える場合、炭素コーティング層によってクラスターが形成され得る。
【0060】
前記炭素前駆体コーティング用組成物に前記コア粒子を添加して撹拌する段階は、0℃〜80℃で0.5時間〜50時間の間に100rpm〜500rpmで行うことができ、より具体的に20℃〜40℃で8時間〜16時間の間に200rpm〜300rpmで行うことができる。前記撹拌が0℃未満、0.5時間未満、又は100rpm未満で行われる場合、不均一な又は薄すぎるコーティング層が形成され、80℃を超えるか50時間を超える場合、厚すぎるコーティング層が形成され得る。
【0061】
ついで、前記コア粒子表面の炭素前駆体を炭化させて多孔性炭素コーティング層を形成する。炭化過程は低温での安定化段階、及び高温での炭化段階からなり、前記安定化は100℃〜400℃で窒素又はアルゴンの雰囲気で行うことができ、より具体的には200℃〜300℃で窒素の雰囲気で行うことができる。前記炭素前駆体の炭化は600℃〜900℃で窒素又はアルゴン雰囲気の条件で行うことができ、より具体的に700℃〜800℃で窒素雰囲気の条件で行うことができる。前記炭化が600℃未満の条件で行われる場合、炭素前駆体が炭素に完全に変換されない場合があり、窒素及びアルゴンの雰囲気でない条件で行われる場合、炭素層の酸化問題があり得る。
【0062】
前記ラジカルスカベンジャーの製造方法により、前記多孔性炭素コーティング層は前記ラジカルスカベンジャーが前記過酸化物又はラジカルを分解するのに妨げられないように適切な気孔の大きさ、厚さ及び気孔度を有するように形成させることができる。
【0063】
本発明のさらに他の一実施例による膜−電極アセンブリーは、イオン交換膜、前記イオン交換膜の両面にそれぞれ配置される触媒電極、及び前記触媒電極内、イオン交換膜内、前記イオン交換膜と触媒電極との間及びこれらの組合せからなる群から選択されるいずれか一つの位置にある前記ラジカルスカベンジャーを含む。
【0064】
図4は前記膜−電極アセンブリーを概略的に示した断面図である。
【0065】
図4を参照して説明すると、前記膜−電極アセンブリー100は、前記イオン交換膜50、及び前記イオン交換膜50の両面にそれぞれ配置される電極20、20’を含む。前記電極20、20’は、電極基材40、40’と、前記電極基材40、40’の表面に形成された触媒電極30、30’とを含み、前記電極基材40、40’と前記触媒電極30、30’との間に、前記電極基材40、40’での物質拡散を容易にするために、炭素粉末、カーボンブラックなどの導電性微細粒子を含む微細気孔層(図示せず)をさらに含めることもできる。
【0066】
前記膜−電極アセンブリー100において、前記イオン交換膜50の一面に配置され、前記電極基材40を通過して前記触媒電極30に伝達された燃料から水素イオンと電子を生成させる酸化反応を引き起こす電極20をアノード電極といい、前記イオン交換膜50の他面に配置され、前記イオン交換膜50を通過して供給された水素イオンと電極基材40’を通過して前記触媒電極30’に伝達された酸化剤から水を生成させる還元反応を引き起こす電極20’をカソード電極という。
【0067】
一方、前記膜−電極アセンブリー100は、前記イオン交換膜50、及び前記触媒電極30、30’の間に位置する界面接着層10、10’をさらに含むことができる。
【0068】
前記界面接着層10、10’は、前記膜−電極アセンブリー100が水素イオン伝導度の低下なしに低い水素透過度を有するようにし、前記触媒電極30、30’と前記イオン交換膜50間の界面接合性を向上させて前記膜−電極アセンブリー100の耐久性を向上させることができ、前記膜−電極アセンブリー100の高温/低加湿の条件での性能及び耐久性を向上させることができる。
【0069】
図4には前記界面接着層10、10’が前記イオン交換膜50の両面に配置されたものとして示されているが、本発明がこれに限定されるものではなく、前記界面接着層10、10’は前記イオン交換膜50の一面にのみ位置することもできる。
【0070】
前記界面接着層10、10’はアイオノマー及び前記ラジカルスカベンジャーを含む。
【0071】
前記界面接着層10、10’が含む前記アイオノマーは前記触媒電極30、30’と前記イオン交換膜50間の界面接合性を向上させて前記膜−電極アセンブリー100の耐久性を向上させることができる。
【0072】
前記界面接着層10、10’が含む前記アイオノマーは、当量(equivalent weight、EW)が800g/eq以下、具体的に500g/eq〜1100g/eqであり得る。前記アイオノマーの当量は前記アイオノマーが含むイオン交換基1個当たり前記アイオノマーの分子量(molecular mass)である。
【0073】
前記界面接着層10、10’は、前記アイオノマーの当量調節によって低加湿の条件で前記膜−電極アセンブリー100の水管理に肯定的な効果を与えることができ、前記当量を有するアイオノマーを使う場合、水素イオンの伝導性低下なしに前記膜−電極アセンブリー100の性能を改善することができる。一方、前記アイオノマーの当量が500g/eq未満の場合、アイオノマーの溶出現象が発生するか又は水素燃料の透過度を増加させることができ、1100g/eqを超える場合、高温低加湿の条件で水素イオン伝導性を低下させることができる。
【0074】
前記界面接着層10、10’が含む前記アイオノマーは、フッ素系アイオノマー、炭化水素系アイオノマー及びこれらの混合物からなる群から選択されるいずれか1種であり得る。
【0075】
前記フッ素系アイオノマーは、プロトンのような陽イオンを伝達することができる陽イオン交換基、又はヒドロキシイオン、カーボネート又はバイカーボネートのような陰イオンを伝達することができる陰イオン交換基を有し、主鎖にフッ素を含むフルオロ系高分子;又はポリスチレン−グラフト−エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、又はポリスチレン−グラフト−ポリテトラフルオロエチレン共重合体などの部分フッ素化高分子などを挙げることができ、具体的な例としては、ポリ(ペルフルオロスルホン酸)、ポリ(ペルフルオロカルボン酸)、スルホン酸基を含むテトラフルオロエチレンとフルオロビニルエーテルの共重合体、脱フッ素化硫化ポリエーテルケトン又はこれらの混合物を含むフルオロ系高分子であり得る。前記陽イオン交換基は、スルホン酸基、カルボン酸基、ボロン酸基、リン酸基、イミド基、スルホンイミド基、スルホンアミド基及びこれらの組合せからなる群から選択されるいずれか1種であり得、一般的にスルホン酸基又はカルボン酸基であり得る。また、前記フッ素系アイオノマーは単独で又は2種以上混合して使うこともできる。
【0076】
また、前記炭化水素系アイオノマーは、プロトンのような陽イオンを伝達することができる陽イオン交換基、又はヒドロキシイオン、カーボネート又はバイカーボネートのような陰イオンを伝達することができる陰イオン交換基を有し、主鎖にベンズイミダゾール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテル、
ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリアーリルエーテルスルホン、ポリホスファゼン又はポリフェニルキノキサリンなどの炭化水素系高分子を含むものであり得、具体的な例としては、スルホン化ポリイミド(sulfonated polyimide、S−PI)、スルホン化ポリアーリルエーテルスルホン(sulfonated polyarylethersulfone、S−PAES)、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(sulfonated polyether ether ketone、SPEEK)、スルホン化ポリベンズイミダゾール(sulfonated polybenzimidazole、SPBI)、スルホン化ポリスルホン(sulfonated polysulfone、S−PSU)、スルホン化ポリスチレン(sulfonated polystyrene、S−PS)、スルホン化ポリホスファゼン(sulfonated polyphosphazene)、スルホン化ポリキノキサリン(sulfonated polyquinoxaline)、スルホン化ポリケトン(sulfonated polyketone)、スルホン化ポリフェニレンオキシド(sulfonated polyphenylene oxide)、スルホン化ポリエーテルスルホン(sulfonated polyether sulfone)、スルホン化ポリエーテルケトン(sulfonated polyether ketone)、スルホン化ポリフェニレンスルホン(sulfonated polyphenylene sulfone)、スルホン化ポリフェニレンスルフィド(sulfonated polyphenylenesulfide)、スルホン化ポリフェニレンスルフィドスルホン(sulfonated polyphenylene sulfide sulfone)、スルホン化ポリフェニレンスルフィドスルホンニトリル(sulfonated polyphenylene sulfide sulfone nitrile)、スルホン化ポリアーリレンエーテル(sulfonated polyarylene ether)、スルホン化ポリアーリレンエーテルニトリル(sulfonated polyarylene ether nitrile)、スルホン化ポリアーリレンエーテルエーテルニトリル(sulfonated polyarylene ether ether nitrile)、ポリアーリレンエーテルスルホンケトン(sulfonated polyarylene ether sulfone ketone)、及びこれらの混合物を含む炭化水素系高分子を有することができるが、これに限定されるものではない。また、前記炭化水系アイオノマーは単独で又は2種以上混合して使うことができる。
【0077】
一方、前記膜−電極アセンブリー100は、前記触媒電極30、30’内、イオン交換膜50内、前記イオン交換膜50と触媒電極30、30’との間、及びこれらの組合せからなる群から選択されるいずれか一つの位置に前記ラジカルスカベンジャーを含む。具体的に、前記イオン交換膜50と触媒電極30、30’との間は前記界面接着層10、10’の内部に前記ラジカルスカベンジャーを含むことを意味することができ、あるいは前記イオン交換膜50の表面、前記触媒電極30、30’の表面又は前記界面接着層10、10’の表面に前記ラジカルスカベンジャーを含むことを意味する。
【0078】
特に、前記界面接着層10、10’の内部に前記ラジカルスカベンジャーを含む場合、前記ラジカルスカベンジャーが前記イオン交換膜50の内部に分散された形態として存在するものではなく、前記イオン交換膜50と前記触媒電極30、30’との間に挿入される前記界面接着層10、10’内に濃縮されているので、前記イオン交換膜50自体のイオン伝導度損失を最小化しながら前記イオン交換膜50の化学的耐久性を向上させることができる。すなわち、前記触媒電極30、30’で発生したラジカルなどはイオン交換膜50の方向に拡散するが、前記イオン交換膜50以前に前記界面接着層10、10’内に濃縮された前記ラジカルスカベンジャーによって前記イオン交換膜50の劣化を事前に防止することができる。
【0079】
また、前記イオン交換膜50の劣化は前記イオン交換膜50と前記触媒電極30、30’間の界面から進行するので、前記界面接着層10、10’に前記ラジカルスカベンジャーを濃縮させることにより、前記イオン交換膜50内に前記ラジカルスカベンジャーを分散させることに比べ、もっと優れた化学的耐久性を得ることができる。
【0080】
ただ、前記界面接着層10、10’の内部に前記ラジカルスカベンジャーを含む場合、前記燃料電池の運転中に前記ラジカルスカベンジャーの溶出がもっと問題になるが、前記ラジカルスカベンジャーは前記過酸化物又はラジカルを分解することができるコア粒子の表面に多孔性炭素コーティング層を形成して、前記過酸化物又はラジカルを分解することができるコア粒子を安定化させることにより、前記過酸化物又はラジカルを分解することができるコア粒子の溶出を防止することができる。
【0081】
前記界面接着層10、10’は、前記界面接着層10、10’の総重量に対し、前記ラジカルスカベンジャーを0.1重量%〜70重量%含むことができ、具体的に5重量%〜15重量%含むことができる。前記ラジカルスカベンジャーの含量が0.1重量%未満の場合、化学的耐久性の向上効果が小さいことがあり、70重量%を超える場合、前記膜−電極アセンブリー100内のイオン伝達抵抗を大きく増加させることができる。
【0082】
また、前記界面接着層10、10’の厚さは10nm〜10μm、具体的に0.5μm〜2μmであり得、前記界面接着層10、10’のローディング量は0.01mg/cm
2〜2.0mg/cm
2であり得る。前記界面接着層10、10’の厚さが10nm未満又はローディング量が0.01mg/cm
2未満の場合、化学的耐久性の向上効果が小さいことがあり、前記イオン交換膜50と前記触媒層30、30’間の界面接合性を向上させることができないことがあり、厚さが10μmを超えるかローディング量が2.0mg/cm
2を超える場合、前記膜−電極アセンブリー100内のイオン伝達抵抗を増加させることができる。
【0083】
一方、前記イオン交換膜50はイオン伝導体を含む。前記イオン伝導体はプロトンのような陽イオンを伝達することができる陽イオン交換基を有する陽イオン伝導体であるか、又はヒドロキシイオン、カーボネート又はバイカーボネートのような陰イオンを伝達することができる陰イオン交換基を有する陰イオン伝導体であり得る。
【0084】
前記陽イオン交換基は、スルホン酸基、カルボン酸基、ボロン酸基、リン酸基、イミド基、スルホンイミド基、スルホンアミド基及びこれらの組合せからなる群から選択されるいずれか1種であり得、一般的にスルホン酸基又はカルボン酸基であり得る。
【0085】
前記陽イオン伝導体は前記陽イオン交換基を含み、主鎖にフッ素を含むフルオロ系高分子;ンズイミダゾール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテル、
ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリアーリルエーテルスルホン、ポリホスファゼン又はポリフェニルキノキサリンなどの炭化水素系高分子;ポリスチレン−グラフト−エチル共重合体、又はポリスチレン−グラフト−ポリテトラフルオロエチレン共重合体などの部分フッ素化高分子;スルホンイミドなどを挙げることができる。
【0086】
より具体的に、前記陽イオン伝導体が水素イオン陽イオン伝導体の場合、前記高分子は測鎖にスルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、ホスホン酸基及びこれらの誘導体からなる群から選択される陽イオン交換器を含むことができ、その具体的な例としては、ポリ(ペルフルオロスルホン酸)、ポリ(ペルフルオロカルボン酸)、スルホン酸基を含むテトラフルオロエチレンとフルオロビニルエーテルの共重合体、脱フッ素化硫化ポリエーテルケトン又はこれらの混合物を含むフルオロ系高分子;スルホン化ポリイミド(sulfonated polyimide、S−PI)、スルホン化ポリアーリルエーテルスルホン(sulfonated polyarylethersulfone、S−PAES)、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(sulfonated polyether ether ketone、SPEEK)、スルホン化ポリベンズイミダゾール(sulfonated polybenzimidazole、SPBI)、スルホン化ポリスルホン(sulfonated polysulfone、S−PSU)、スルホン化ポリスチレン(sulfonated polystyrene、S−PS)、スルホン化ポリホスファゼン(sulfonated polyphosphazene)、スルホン化ポリキノキサリン(sulfonated polyquinoxaline)、スルホン化ポリケトン(sulfonated polyketone)、スルホン化ポリフェニレンオキシド(sulfonated polyphenylene oxide)、スルホン化ポリエーテルスルホン(sulfonated polyether sulfone)、スルホン化ポリエーテルケトン(sulfonated polyether ketone)、スルホン化ポリフェニレンスルホン(sulfonated polyphenylene sulfone)、スルホン化ポリフェニレンスルフィド(sulfonated polyphenylenesulfide)、スルホン化ポリフェニレンスルフィドスルホン(sulfonated polyphenylene sulfide sulfone)、スルホン化ポリフェニレンスルフィドスルホンニトリル(sulfonated polyphenylene sulfide sulfone nitrile)、スルホン化ポリアーリレンエーテル(sulfonated polyarylene ether)、スルホン化ポリアーリレンエーテルニトリル(sulfonated polyarylene ether nitrile)、スルホン化ポリアーリレンエーテルエーテルニトリル(sulfonated polyarylene ether ether nitrile)、ポリアーリレンエーテルスルホンケトン(sulfonated polyarylene ether sulfone ketone)、及びこれらの混合物を含む炭化水素系高分子を有することができるが、これに限定されるものではない。
【0087】
一方、前記陽イオン伝導体のうち、イオン伝導機能に優れ、価格の面でも有利な炭化水素系イオン伝導体を好ましく用いることができる。
前記陰イオン伝導体はヒドロキシイオン、カーボネート又はバイカーボネートのような陰イオンを移送させることができるポリマーであり、陰イオン伝導体は水酸化物又はハロゲン化物(一般的に、塩化物)の形態が商業的に入手可能であり、前記陰イオン伝導体は産業的浄水(water purification)、金属分離又は触媒工程などに使うことができる。
【0088】
前記陰イオン伝導体としては、一般的に金属水酸化物がドープされたポリマーを使うことができ、具体的に金属水酸化物がドープされたポリ(エーテルスルホン)、ポリスチレン、ビニル系ポリマー、ポリ(ビニルクロリド)、ポリ(ビニルフルオリド)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(ベンズイミダゾール)又はポリ(エチレングリコール)などを使うことができる。
【0089】
一方、前記イオン交換膜50は、e−PTFEのようなフッ素系多孔性支持体又は電界紡糸などによって製造された多孔性ナノウェブ支持体などの空隙を前記イオン伝導体が満たしている強化膜形態であり得る。
【0090】
前記イオン交換膜50は、イオン交換容量(ion exchange capacity、IEC)が0.8meq/g〜4.0meq/g、具体的に1.0meq/g〜3.5meq/gであり得る。前記イオン交換膜50のイオン交換容量が1.0meq/g未満の場合、低加湿の条件で水素イオンの移動を低下させることができ、3.5meq/gを超える場合、加湿度が増加することによって界面での伝達抵抗を増加させることができる。
【0091】
また、前記イオン交換膜50は、厚さが3μm〜25μm、具体的に5μm〜20μmであり得る。前記イオン交換膜50の厚さが3μm未満の場合、高温低加湿の条件で水素燃料の透過度が急激に増加してイオン交換膜の化学的安全性が低下することがあり、25μmを超える場合、低加湿の条件で水素イオンの移動が低下してイオン交換膜の抵抗を増加させてイオン伝導度が減少することがある。
【0092】
前記触媒電極30、30’のコア粒子は、水素酸化反応、酸素還元反応に触媒として使われることができるものであればどれでも使うことができ、好ましくは白金系金属を使うことができる。
【0093】
前記白金系金属は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、白金−M合金(前記Mは、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ガリウム(Ga)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ランタン(La)及びロジウム(Rh)からなる群から選択されるいずれか1種以上)、非白金合金及びこれらの組合せからなる群から選択される1種を含むことができ、より好ましくは前記白金系触媒金属群から選択される2種以上の金属を組み合わせたものを使うことができるが、これに限定されるものではなく、当該技術分野で使用可能な白金系触媒金属であれば制限なしに使うことができる。
【0094】
具体的に、前記白金合金は、Pt−Pd、Pt−Sn、Pt−Mo、Pt−Cr、Pt−W、Pt−Ru、Pt−Ru−W、Pt−Ru−Mo、Pt−Ru−Rh−Ni、Pt−Ru−Sn−W、Pt−Co、Pt−Co−Ni、Pt−Co−Fe、Pt−Co−Ir、Pt−Co−S、Pt−Co−P、Pt−Fe、Pt−Fe−Ir、Pt−Fe−S、Pt−Fe−P、Pt−Au−Co、Pt−Au−Fe、Pt−Au−Ni、Pt−Ni、Pt−Ni−Ir、Pt−Cr、Pt−Cr−Ir及びこれらの組合せからなる群から選択される単独又は2種以上を混合して使うことができる。
【0095】
また、前記非白金合金は、Ir−Fe、Ir−Ru、Ir−Os、Co−Fe、Co−Ru、Co−Os、Rh−Fe、Rh−Ru、Rh−Os、Ir−Ru−Fe、Ir−Ru−Os、Rh−Ru−Fe、Rh−Ru−Os及びこれらの組合せからなる群から選択される単独又は2種以上を混合して使うことができる。
また、前記コア粒子は、金属自体(black)を使うこともでき、触媒金属を担体に担持させて使うこともできる。
【0096】
前記担体は、炭素系担体、ジルコニア、アルミナ、チタニア、シリカ、セリアなどの多孔性無機酸化物、ゼオライトなどから選択することができる。前記炭素系担体は、黒鉛、スーパーピー(super P)、炭素纎維(carbon fiber)、炭素シート(carbon sheet)、カーボンブラック(carbon black)、ケッチェンブラック(Ketjen Black)、デンカブラック(Denka black)、アセチレンブラック(acetylene black)、カーボンナノチューブ(carbon nanotube、CNT)、炭素球体(carbon sphere)、炭素リボン(carbon ribbon)、フラーレン(fullerene)、活性炭素、カーボンナノファイバー、カーボンナノワイヤ、カーボンナノボール、カーボンナノホーン、カーボンナノケージ、カーボンナノリング、規則性ナノ多孔性炭素(ordered nano−/meso−porous carbon)、カーボンエアロゲル、メソポーラスカーボン(mesoporous carbon)、グラフェン、安定化カーボン、活性化カーボン、及びこれらの一つ以上の組合せから選択することができるが、これに限定されるものではなく、当該技術分野で使用可能な担体は制限なしに使うことができる。
【0097】
前記コア粒子は担体の表面上に位置することもでき、担体の内部気孔(pore)を満たしながら担体の内部に浸透することもできる。
【0098】
前記担体に担持された貴金属を触媒として使用する場合には、商用化した市販のものを使うこともでき、また担体に貴金属を担持させて製造して使うこともできる。前記担体に貴金属を担持させる工程は当該分野で広く知られた内容であるので、この明細書で詳細な説明を省略しても、当該分野の当業者に易しく理解可能な内容である。
【0099】
前記コア粒子は、前記触媒電極30、30’の総重量に対し、20重量%〜80重量%含有されることができる。20重量%未満で含有される場合には、活性低下の問題があり得、80重量%を超える場合には、前記コア粒子の凝集によって活性面積が減少して触媒活性が反対に低下することができる。
【0100】
また、前記触媒電極30、30’は、前記触媒電極30、30’の接着力向上及び水素イオンの伝達のために、バインダーを含むことができる。前記バインダーとしてはイオン伝導性を有するアイオノマーを使うことが好ましく、前記アイオノマーについての説明は前記界面接着層10、10’で説明したものと同様であるので、その反復的な説明は省略する。
【0101】
ただ、前記アイオノマーは単一物又は混合物の形態で使用することができ、また選択的にイオン交換膜50との接着力をより向上させる目的で非伝導性化合物とともに使うこともできる。その使用量は使用目的に合うように調節して使うことが好ましい。
【0102】
前記非伝導性化合物としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン/テトラフルオロエチレン(ethylene/tetrafluoroethylene(ETFE))、エチレンクロロトリフルオロ−エチレン共重合体(ECTFE)、ポリビニリデンフルオリド、ポリビニリデンフルオリド−ヘキサフルオロプロピレンのコポリマー(PVdF−HFP)、ドデシルベンゼンスルホン酸及びソルビトール(sorbitol)からなる群から選択される1種以上を使うことができる。
【0103】
前記バインダーは、前記触媒電極30、30’の総重量に対し、20重量%〜80重量%含まれる。前記バインダーの含量が20重量%未満の場合には、生成されたイオンがよく伝達されることができないことがあり、80重量%を超える場合には、気孔が足りなくて水素又は酸素(空気)の供給が難しく、反応可能な活性面積が減少する。
【0104】
また、前記膜−電極アセンブリー100は、前記触媒電極30、30’の外側に電極基材40、40’をさらに含むことができる。
【0105】
前記電極基材40、40’としては、水素又は酸素の円滑な供給ができるように、多孔性の導電性基材が使われる。その代表的な例として、炭素ペーパー(carbon paper)、炭素布(carbon cloth)、炭素フェルト(carbon felt)又は金属布(纎維状態の金属布で構成される多孔性のフィルム又は高分子纎維から形成された布の表面に金属フィルムが形成されたものをいう)が使われるが、これに限定されるものではない。また、前記電極基材40、40はフッ素系樹脂で撥水処理したものを使うことが、燃料電池の駆動時に発生する水によって反応物の拡散効率が低下することを防止することができるので好ましい。前記フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオリド、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリペルフルオロアルキルビニルエーテル、ポリペルフルオロスルホニルフルオリドアルコキシビニルエーテル、フッ素化エチレンプロピレン(Fluorinated ethylene propylene)、ポリクロロトリフルオロエチレン又はこれらのコポリマーを使うことができる。
【0106】
また、前記電極基材40、40’での反応物拡散効果を増進させるための微細気孔層(microporous layer)をさらに含むこともできる。この微細気孔層は、一般的に粒径の小さな導電性粉末、例えば炭素粉末、カーボンブラック、アセチレンブラック、活性炭素、カーボンファイバー、フラーレン(fullerene)、カーボンナノチューブ、カーボンナノワイヤ、カーボンナノホーン(carbon nano−horn)又はカーボンナノリング(carbon nano ring)を含む。
【0107】
前記微細気孔層は、導電性粉末、バインダー樹脂及び溶媒を含む組成物を前記電極基材40、40’にコートすることにより製造される。前記バインダー樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオリド、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリペルフルオロアルキルビニルエーテル、ポリペルフルオロスルホニルフルオリド、アルコキシビニルエーテル、ポリビニールアルコール、セルロースアセテート又はこれらのコポリマーなどが好ましく使われる。前記溶媒としては、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、ブチルなどのアルコール、水、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフランなどが好ましく使われる。コーティング工程は、組成物の粘性によって、スクリーンプリンティング法、スプレーコーティング法又はドクターブレードを用いるコーティング法などが使われるが、これに限定されるものではない。
【0108】
前記ラジカルスカベンジャーを含む膜−電極アセンブリー100は、前記ラジカルスカベンジャーが含まれる位置によって、前記膜−電極アセンブリー100の各構成の製造の際、前記ラジカルスカベンジャーを添加して製造することができる。
【0109】
例えば、前記ラジカルスカベンジャーが前記イオン交換膜50内に含まれる場合、前記イオン伝導体を含むイオン交換膜形成用組成物に前記ラジカルスカベンジャーを添加した後、前記ラジカルスカベンジャーを含む前記イオン交換膜形成用組成物を塗布及び乾燥して単一膜を製造するか、多孔性支持体に前記ラジカルスカベンジャーを含む前記イオン交換膜形成用組成物を含浸させて強化膜形態のイオン交換膜50を製造することもできる。
【0110】
同様に、前記ラジカルスカベンジャーが前記触媒電極30、30’内に含まれる場合、前記触媒電極形成用組成物に前記ラジカルスカベンジャーを添加した後、前記ラジカルスカベンジャーを含む前記触媒電極形成用組成物を塗布及び乾燥して、前記ラジカルスカベンジャーを含む前記触媒電極30、30’を製造することができる。
【0111】
また、前記ラジカルスカベンジャーが前記イオン交換膜50と触媒電極30、30’との間に含まれる場合、前記ラジカルスカベンジャーを含む溶液を前記イオン交換膜50の表面又は前記触媒電極30、30’の表面に塗布及び乾燥してコーティング層を形成させることができる。
【0112】
また、前記ラジカルスカベンジャーは前記界面接着層10、10’内に含まれる。以下では、前記界面接着層10、10’が前記ラジカルスカベンジャーを含む場合を例として、前記膜−電極アセンブリー100を製造する方法について具体的に説明する。
【0113】
前記ラジカルスカベンジャーを含む界面接着層10、10’の形成は、前記ラジカルスカベンジャーと前記アイオノマーを混合して界面接着層形成用組成物を製造する段階、及び前記界面接着層形成用組成物を前記イオン交換膜50又は触媒電極30、30’の表面に塗布してから乾燥する段階を含む。
【0114】
前記界面接着層形成用組成物は、前記ラジカルスカベンジャーと前記アイオノマーを溶媒に添加してから混合して製造することができる。
【0115】
前記界面接着層形成用組成物は、前記アイオノマーを0.1%〜30%の濃度で含むことができ、具体的に1%〜10%の濃度で含むことができる。本発明の明細書で、濃度はパーセント濃度を意味し、パーセント濃度は溶液の質量に対する溶質の質量の百分率で求めることができる。
【0116】
前記界面接着層形成用組成物が前記アイオノマーを前記濃度範囲で含む場合、前記膜−電極アセンブリーの界面抵抗増加なしに水素イオン伝導性と界面接合性を改善することができる。前記アイオノマーの濃度が0.1%未満の場合、水素イオン伝達能力が低下することがあり、30%を超える場合、アイオノマーが不均一に分布することができる。
【0117】
前記溶媒としては、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、ブチルアルコール、グリセロールなどのアルコール、水、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、及びこれらの混合物からなる群から選択される1種であり得る。
【0118】
前記界面接着層10、10’は、前記界面接着層形成用組成物を前記イオン交換膜50又は前記触媒電極30、30’上に塗布してから乾燥することにより形成されることができる。前記界面接着層形成用組成物を前記イオン交換膜上に塗布する方法としては、スロットダイコーティング、バーコーティング、ディップコーティング、コンマコーティング、スクリーンプリンティング、スプレーコーティング、ドクターブレードコーティング、シルクスクリーンコーティング、グラビアコーティング、ペインティング法などの方法を用いることができる。
【0119】
前記乾燥工程は、25℃〜90℃で12時間以上乾燥させることであり得る。前記乾燥温度が25℃未満であるか乾燥時間が12時間未満の場合には、充分に乾燥された界面接着層10、10’を形成することができないことがあり、90℃を超える温度で乾燥させれば、界面接着層10、10’に亀裂が発生することができる。
【0120】
最後に、前記界面接着層10、10’を含むイオン交換膜50又は触媒電極30、30’を用いて前記膜−電極アセンブリー100を製造する。
【0121】
前記界面接着層10、10’を前記触媒電極30、30’上に形成した場合、前記イオン交換膜50と前記触媒電極30、30’を熱圧着して前記膜−電極アセンブリー100を製造することができ、前記界面接着層10、10’を前記イオン交換膜50に形成した場合、前記イオン交換膜50と前記触媒電極30、30’を熱圧着するか、前記イオン交換膜50に前記触媒電極30、30’をコートして前記膜−電極アセンブリー100を製造することができる。
【0122】
前記触媒電極30、30’と前記イオン交換膜の熱圧着は、80℃〜2000℃及び5kgf/cm
2〜200kgf/cm
2の条件で遂行することができる。80℃、
5kgf/cm2未満の条件で熱圧着を行う場合、離型フィルム上の前記触媒電極30、30’が正常に転写されないおそれがあり、200℃を超える場合には、前記イオン交換膜50の高分子が変性するおそれがあり、200kgf/cm
2を超える条件下では、触媒電極30、30’内の気孔構造の崩壊によって性能低下の要因となることができる。
【0123】
本発明の他の一実施例による燃料電池は前記膜−電極アセンブリーを含む。
【0124】
図5は前記燃料電池の全体的な構成を示す模式図である。
図5を参照すると、前記燃料電池200は、燃料と水が混合された混合燃料を供給する燃料供給部210、前記混合燃料を改質して水素ガスを含む改質ガスを発生させる改質部220、前記改質部220から供給される水素ガスを含む改質ガスが酸化剤と電気化学的反応を引き起こして電気エネルギーを発生させるスタック230、及び酸化剤を前記改質部220及び前記スタック230に供給する酸化剤供給部240を含む。
【0125】
前記スタック230は、前記改質部220から供給される水素ガスを含む改質ガスと酸化剤供給部240から供給される酸化剤の酸化/還元反応を誘導して電気エネルギーを発生させる複数の単位セルを備える。
【0126】
それぞれの単位セルは電気を発生させる単位のセルを意味するものであり、水素ガスを含む改質ガスと酸化剤中の酸素を酸化/還元させる前記膜−電極アセンブリーと、水素ガスを含む改質ガスと酸化剤を膜−電極アセンブリーに供給するための分離板(又はバイポーラプレート(bipolar plate)ともいい、以下‘分離板’という)とを含む。前記分離板は前記膜−電極アセンブリーを挟んでその両側に配置される。ここで、前記スタックの最外側にそれぞれ位置する分離板を特別にエンドプレートということもある。
【0127】
前記分離板のうち、前記エンドプレートには、前記改質部220から供給される水素ガスを含む改質ガスを注入するための管状の第1供給管231と、酸素ガスを注入するための管状の第2供給管232とが備えられ、他のエンドプレートには、複数の単位セルから最終に反応しなくて残った水素ガスを含む改質ガスを外部に排出させるための第1排出管233と、前述した単位セルで最終に反応しなくて残った酸化剤を外部に排出させるための第2排出管234とが備えられる。
【0128】
以下では、本発明の具体的な実施例を提示する。ただ、下記に記載した実施例は本発明を具体的に例示するか説明するためのものに過ぎず、これによって本発明が制限されるものではない。また、ここに記載されていない内容は当該技術分野で熟練した者であれば充分に技術的に類推することができるので、その説明を省略する。
【0129】
[製造例1:ラジカルスカベンジャーの製造]
(実施例1−1)
ドパミンをトリス−塩酸バッファー溶媒に添加して炭素前駆体コーティング用組成物を製造し、前記炭素前駆体コーティング用組成物にCeO
2の過酸化物又はラジカルを分解することができるコア粒子を添加した。この際、前記炭素前駆体コーティング用組成物は、前記コア粒子100重量部に対し、前記炭素前駆体を0.3重量部含んでいる。
【0130】
前記コア粒子が添加された前記炭素前駆体コーティング用組成物を25℃で12時間の間に250rpmで撹拌し、250℃及び窒素雰囲気で前記炭素前駆体を安定化させ、700℃及び窒素雰囲気で前記炭素前駆体を炭化させることにより、前記コア粒子の表面に多孔性炭素コーティング層が形成されたラジカルスカベンジャーを製造した。
【0131】
前記製造されたラジカルスカベンジャーにおいて、前記多孔性炭素コーティング層の厚さは2nm〜5nmであった。
【0132】
(実施例1−2)
前記実施例1−1のような前駆体コーティング用組成物を製造した後、25℃で3時間の間に250rpmで撹拌し、実施例1−1のような炭化段階を経ることにより、多孔性炭素コーティング層が形成されたラジカルスカベンジャーを製造した。
前記製造されたラジカルスカベンジャーにおいて、前記多孔性炭素コーティング層の厚さは1〜2nmであった。
【0133】
(実施例1−3)
前記実施例1−1のような前駆体コーティング用組成物を製造した後、25℃で24時間の間に250rpmで撹拌し、実施例1−1のような炭化段階を経ることにより、多孔性炭素コーティング層が形成されたラジカルスカベンジャーを製造した。
【0134】
前記製造されたラジカルスカベンジャーにおいて、前記多孔性炭素コーティング層の厚さは5nm以上であり、炭素クラスターが形成された。
【0135】
[製造例2:膜−電極アセンブリーの製造]
(実施例2−1〜実施例2−4:ラジカルスカベンジャーを含む界面接着層を含む膜−電極アセンブリー)
界面接着層形成用組成物を製造するために、前記実施例1−1で製造されたラジカルスカベンジャーとナフィオン(Nafion)アイオノマーを下記の表1のような組成比で混合してIPAに分散させた。この際、前記溶媒に対して固形分の含量は10重量%に調節した。
【0136】
イオン交換膜を準備するために、スルホン化PAESの10重量%をDMACに溶解させた。準備されたイオン交換膜形成用組成物をブレードコーティング法でガラス板上にコートした後、60℃のオーブンで24時間乾燥させてイオン交換膜を製造した。
【0137】
前記製造されたイオン交換膜を前記界面接着層形成用組成物にディップコーティングし、前記イオン交換膜の表面に界面接着層形成用組成物をコートし、60℃のオーブンで24時間乾燥させた。その後、120℃のオーブンで2時間の間に界面接着層をアニーリング(Annealing)した。
【0139】
(比較例2−1:ラジカルスカベンジャーを含んでいない界面接着層を含む膜−電極アセンブリー)
界面接着層形成用組成物を製造するために、ナフィオン(Nafion)アイオノマーをIPAに10重量%分散させた。
【0140】
イオン交換膜を準備するために、スルホン化PAESの10重量%をDMACに溶解させた。準備されたイオン交換膜形成用組成物をブレードコーティング法でガラス板上にコートした後、60℃のオーブンで24時間乾燥させてイオン交換膜を製造した。
【0141】
前記製造されたイオン交換膜を前記界面接着層形成用組成物にディップコーティングし、前記イオン交換膜の表面に界面接着層形成用組成物をコートし、60℃のオーブンで24時間乾燥させた。その後、120℃のオーブンで2時間の間に界面接着層をアニーリング(Annealing)した。
(比較例2−2:ラジカルスカベンジャーがイオン交換膜内に分散された膜−電極アセンブリー)
【0142】
界面接着層形成用組成物を製造するために、ナフィオン(Nafion)アイオノマーをIPAに10重量%分散させた。
【0143】
ラジカルスカベンジャーが分散されたイオン交換膜を準備するために、スルホン化PAESとCeO
2をDMACに溶解させた。この際、前記イオン交換膜形成用組成物の固形分の含量は10重量%であり、前記固形分中のCeO
2の含量は2重量%であった。
【0144】
前記準備されたイオン交換膜形成用組成物をブレードコーティング法でガラス板上にコートした後、60℃のオーブンで24時間乾燥させてイオン交換膜を製造した。
【0145】
前記製造されたイオン交換膜を前記界面接着層形成用組成物にディップコーティングして、前記イオン交換膜の表面に界面接着層形成用組成物をコートし、60℃のオーブンで24時間乾燥させた。その後、120℃のオーブンで2時間の間に界面接着層をアニーリング(Annealing)した。
【0146】
[実験例:製造された膜−電極アセンブリーの評価]
前記実施例及び比較例で製造されたイオン交換膜の化学的耐久性向上効果を確認するために、前記製造されたイオン交換膜をフェントン溶液に浸した後、60℃で放置し、16時間後に取り出し、残存質量を測定して化学的耐久性を確認し、その結果を
図6に示した。この際、前記フェントン溶液は、H
2O
2 3重量%、FeSO
4 4ppmからなる水溶液であった。
【0147】
図6は前記実施例及び比較例で製造されたイオン交換膜の化学的耐久性を残余質量で示した結果であり、化学的耐久性に優れるほどフェントン溶液に溶解される高分子量が減少して残余質量が大きく維持される。
図6を参照すると、ラジカルスカベンジャーを含んでいない比較例2−1のイオン交換膜が最も低い残余質量を示し、イオン交換膜全体に2重量%のラジカルスカベンジャーを分散させた比較例2−2がその次に低い残余質量を示した。一方、界面接着層が前記ラジカルスカベンジャーを含む実施例2−1〜実施例2−4のイオン交換膜の場合、いずれも比較例2−1より大きい残余質量を示し、界面接着層内のラジカルスカベンジャーの含量が高いほど大きな残余質量を示した。これから、ラジカルスカベンジャーを含む界面接着層がイオン交換膜の化学的耐久性をもっと向上させることができることが分かる。
【0148】
また、前記実施例及び比較例で製造された膜−電極アセンブリーのイオン伝導度保存効果を確認するために、前記製造された膜−電極アセンブリーを燃料電池単位セル評価装置に締結し、80℃で相対湿度によってインピーダンスを用いて水素イオン伝導度を測定し、その結果を
図7に示した。
【0149】
図7は前記実施例及び比較例で製造された膜−電極アセンブリーの80℃での相対湿度による水素イオン伝導度を示す結果である。前記ラジカルスカベンジャーを含んでいない比較例2−1が最高の水素イオン伝導度を示し、イオン伝導体全体に2重量%のラジカルスカベンジャーを分散させた比較例2−2が最低の水素イオン伝導度を示した。一方、ラジカルスカベンジャーを前記界面接着層内に4重量%に濃縮させた実施例2−1の場合、ラジカルスカベンジャーを含むにもかかわらず、比較例2−1と比較すると、水素イオン伝導度がほぼ同一であることを確認することができる。また、前記界面接着層内のラジカルスカベンジャーの含量が増加するにつれて水素イオン伝導度が少しずつ減少する傾向を観察することができる。前記実施例2−4を除いた実施例2−1〜実施例2−3の場合、
比較例2より高い水素イオン伝導度を示す結果から、本発明のラジカルスカベンジャーを含む界面接着層のイオン伝導度損失最小化の効果を確認することができる。
【0150】
図6及び
図7の結果から、界面接着層が適用された実施例2−1〜実施例2−3は、前記ラジカルスカベンジャーをイオン交換膜全体に分散させた比較例2−2に比べ、高い化学的安全性及び水素イオン伝導度を示すことを観察し、これから本発明のラジカルスカベンジャーを含む界面接着層が水素イオン伝導度の損失を最小化するとともに化学的耐久性を大きく向上させることができることを確認することができる。
【0151】
以上で本発明の好適な実施例について詳細に説明したが、前述した実施例は本発明の特定の一例として提示するものであり、これによって本発明が制限されなく、本発明の権利範囲は後述する請求範囲で定義している本発明の基本概念を用いた当業者の様々な変形及び改良形態も本発明の権利範囲に属するものである。