特許第6957769号(P6957769)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6957769車両姿勢偏差に基づく慣性調整アクティブサスペンションシステムおよび制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6957769
(24)【登録日】2021年10月8日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】車両姿勢偏差に基づく慣性調整アクティブサスペンションシステムおよび制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60G 17/018 20060101AFI20211021BHJP
   B60G 17/015 20060101ALI20211021BHJP
【FI】
   B60G17/018
   B60G17/015 B
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-551945(P2020-551945)
(86)(22)【出願日】2019年8月1日
(65)【公表番号】特表2021-522096(P2021-522096A)
(43)【公表日】2021年8月30日
(86)【国際出願番号】CN2019098908
(87)【国際公開番号】WO2020052367
(87)【国際公開日】20200319
【審査請求日】2020年12月23日
(31)【優先権主張番号】201811051382.5
(32)【優先日】2018年9月10日
(33)【優先権主張国】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514276562
【氏名又は名称】燕山大学
【氏名又は名称原語表記】YANSHAN UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】趙丁選
(72)【発明者】
【氏名】鞏明徳
(72)【発明者】
【氏名】劉爽
(72)【発明者】
【氏名】張祝新
(72)【発明者】
【氏名】孫志国
(72)【発明者】
【氏名】楊彬
(72)【発明者】
【氏名】倪濤
(72)【発明者】
【氏名】郭慶賀
(72)【発明者】
【氏名】楊夢軻
【審査官】 浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】 中国実用新案第205930107(CN,U)
【文献】 中国特許出願公開第104442268(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 17/018
B60G 17/015
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両姿勢偏差に基づく慣性調整アクティブサスペンションシステムの制御方法であって、前記慣性調整アクティブサスペンションシステムは、
車体および複数の車輪を含み、慣性測定ユニット、電子制御ユニット、サーボコントローラーグループ、車輪に一対一に対応するサスペンションサーボ作動シリンダーおよび変位センサーをさらに含み、慣性測定ユニット、電子制御ユニットおよびサーボコントローラーグループは、車体に固定され、車輪は、サスペンションサーボ作動シリンダーを介して車体の下方に連結され、変位センサーは、サスペンションサーボ作動シリンダーのストロークを測定するために使用され、前記電子制御ユニットはそれぞれ、慣性測定ユニットおよびサーボコントローラーグループに通信接続され、サーボコントローラーグループは変位センサーに通信接続され、電子制御ユニットは、慣性測定ユニットによって測定された車両姿勢パラメータを読み取り、車両の現在の時刻と前の時刻の姿勢偏差を計算し、姿勢制御パラメータをサーボコントローラーグループに出力し、サーボコントローラーグループは、電子制御ユニットによって出力された姿勢制御パラメータおよび変位センサーの変位フィードバック値に基づいて、各サスペンションサーボ作動シリンダーの動作を制御して、車両の質量中心がほぼ直線または円弧に沿って移動し、車体の姿勢が変化しないようにし
すべての車輪を3つの車輪グループに分け、各車輪グループ内に1つの車輪または複数の車輪を設置し、ある車輪グループ内の車輪の数が1より大きい場合、前記車輪グループ内のすべてのサスペンションサーボ作動シリンダーの上部チャンバーと下部チャンバーはそれぞれ連通されて、前記車輪グループが車体を支持する1つの支点を構成し、3つの車輪グループが車体の3つの支点を構成するようにし、3つの支点の支持高さを制御することにより、車体の姿勢を制御し、
前記制御方法において、
慣性測定ユニットの中心点Oを座標原点とする座標系OXYZを構築し、車両走行の正方向をY軸正方向、車両走行の右側方向をX軸正方向、XOY平面に垂直な方向をZ軸正方向と定義し、車体質量中心をWと定義し、電子制御ユニットの内部でスキャンサイクルをプリセットし、前記制御方法は、
一定のスキャンサイクルで、慣性測定ユニットによって座標原点Oの垂直変位w、ピッチ角αおよびロール角βを測定して電子制御ユニットに出力するステップ1)と、
電子制御ユニットによって質量中心Wの相対座標原点Oの幾何学的関係と座標原点Oの垂直変位w、ピッチ角αおよびロール角βに基づいて、車両の質量中心Wにおける垂直変位w、ピッチ角αおよびロール角βを計算するステップ2)と、
電子制御ユニットによって垂直変位w、ピッチ角αおよびロール角βに対して遮断周波数がωのハイパスフィルターを行い、フィルター後の垂直変位はwであり、ピッチ角はαであり、ロール角はβであるステップ3)と、
ステップ3)で得られた垂直変位w、ピッチ角αおよびロール角βと前のスキャンサイクルの値を比較して、垂直変位、ピッチ角、ロール角の変化量Δw、Δα、Δβを計算して、−Δw、−Δα、−Δβを姿勢相対補正量とし、車両サスペンション機構の逆運動学のアルゴリズムにより車両の各サスペンションサーボ作動シリンダーの伸縮量の目標値を計算し、前記目標値をサーボコントローラーグループに送信して各サスペンションサーボ作動シリンダーの変位サーボ制御を行い、車両姿勢目標の制御を実現することにより、垂直変位w、ピッチ角αおよびロール角βがほぼ変化しないようにし、車両の質量中心の軌跡が直線または円弧に沿って移動し、車体の姿勢が変化しないようにするステップ4)と、を含むことを特徴とする、車両姿勢偏差に基づく慣性調整アクティブサスペンションシステムの制御方法
【請求項2】
車両の質量中心Wにおける垂直変位w、ピッチ角αおよびロール角βの計算式は以下のとおりであり、
座標系OXYZにおける質量中心Wの座標をx、y、zとすることを特徴とする、請求項に記載の車両姿勢偏差に基づく慣性調整アクティブサスペンションシステムの制御方法。
【請求項3】
遮断周波数ωは、
ステップS1、車両が水平面に静止している時、ハイパスフィルター後に出力される垂直変位w、ピッチ角αおよびロール角βはすべて0に収束されること、
ステップS2、車両を許容限界の横方向勾配および縦方向勾配に静止駐車し、ハイパスフィルター後に出力される垂直変位w、ピッチ角αおよびロール角βは比較的に小さな値に収束され、前記値はシステム安定性制御に必要な誤差範囲内にあること、
ステップS3、S1とS2の2つの条件を満たす場合、遮断周波数ωは低い値を取ることによって決定されることを特徴とする、請求項に記載の車両姿勢偏差に基づく慣性調整アクティブサスペンションシステムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクティブサスペンションシステムおよびその制御方法に関し、特に、アクティブサスペンション車両に基づいて、車両姿勢偏差を測定して、アクティブサスペンション機構を慣性調整するアクティブサスペンションシステムおよびその制御方法に関し、車両制御技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
サスペンションシステムは車両シャーシの重要な部分であり、その性能は車両の乗り心地、操作の安定性、および運転の安全性を直接決定する。従来の車両は主にパッシブサスペンションを使用し、そのサスペンションのパラメーターは特定の道路状況に応じて設計され、一旦選択すると、変更が難しく、道路状況や車速などによって変更できないため、車両の運転性能のさらなる向上には限界がある。
【0003】
電子情報技術の発達と油圧および電気駆動技術の進歩により、車両分野での制御可能なサスペンションの適用が可能になった。現在、アクティブ制御の制御可能なサスペンション技術は、サスペンション性能を向上させる効果的な方法であると一般に考えられている。サスペンションシステムの剛性と減衰特性が車両の運転条件(車両の運動状態や道路条件などを含む)に従って動的に適応調整され、サスペンションシステムが常に最適な減衰状態になる場合、アクティブサスペンションと呼ばれる。アクティブサスペンションには、車両の高さを制御したり、通過性を向上させたり、乗り心地や車両の操縦安定性を考慮したりするなど、多くの利点がある。
【0004】
アクティブサスペンションは、主に制御メカニズムと制御戦略との2つの部分がある。アクチュエータが制御戦略の要件に応じてメインパワーを出力するため、アクティブサスペンション設計の鍵は、車両に優れたパフォーマンスを提供できる制御戦略を選択することである。異なる制御戦略は、異なるサスペンション特性と減衰効果を生み出す。
【0005】
現在のアクティブサスペンション制御戦略は主に、最適制御、プレビュー制御、適応制御、ファジー制御、ニューラルネットワーク制御、天井減衰制御、スライディングモード制御、免疫進化制御などを含む。文献によると、どの制御方法を採用しても、車両の性能はある程度向上するが、さまざまな制御方法にはいくつかの問題があり、十分に解決されなかった。特に、車両のサスペンションシステムは、典型的な多入力多出力の複雑なシステムであり、このような複雑なシステムを制御するための重要な問題の1つは、非干渉制御であるが、現在の制御戦略では、車両のサスペンションシステムの非干渉制御は解決できなかった。
【0006】
車両の姿勢調節と乗り心地の制御は、サスペンション設計で考慮する必要のある2つの重要な側面であり、既存の研究結果のほとんどは、さまざまなニーズに応じたさまざまな数学モデルの確立に基づいており、それらは独立して設計されており、車両の全体的なパフォーマンスはこれらのサブシステムパフォーマンスの合計であると見なされ、または数学モデルを分解し、それを組み合わせて制御した。数学的モデルを確立するとき、姿勢制御と乗り心地制御は同時に考慮せずに設計し、設計プロセスは複雑であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする技術的問題は、アクティブサスペンションの伸縮を制御することにより、車両が凹凸のある道路を走行する時、その質量中心がほぼ直線または円弧に沿って移動し、車体の姿勢が変化しないようにすることにより、走行するときの車体の振動を低減し、オフロード走行時の車速、操縦安定性、乗り心地を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の技術的問題を解決するために、本発明によって採用される技術的解決策は以下のとおりである。
【0009】
車両姿勢偏差に基づく慣性調整アクティブサスペンションシステムであって、車体および複数の車輪を含み、慣性測定ユニット、電子制御ユニット、サーボコントローラーグループ、車輪に一対一に対応するサスペンションサーボ作動シリンダーおよび変位センサーをさらに含み、慣性測定ユニット、電子制御ユニットおよびサーボコントローラーグループは、車体に固定され、車輪は、サスペンションサーボ作動シリンダーを介して車体の下方に連結され、変位センサーは、サスペンションサーボ作動シリンダーのストロークを測定するために使用され、前記電子制御ユニットはそれぞれ、慣性測定ユニットおよびサーボコントローラーグループに通信接続され、サーボコントローラーグループは変位センサーに通信接続され、電子制御ユニットは、慣性測定ユニットによって測定された車両姿勢パラメータを読み取り、車両の現在の時刻と前の時刻の姿勢偏差を計算し、姿勢制御パラメータをサーボコントローラーグループに出力し、サーボコントローラーグループは、電子制御ユニットによって出力された姿勢制御パラメータおよび変位センサーの変位フィードバック値に基づいて、各サスペンションサーボ作動シリンダーの動作を制御して、車両の質量中心がほぼ直線または円弧に沿って移動し、車体の姿勢が変化しないようにする。
【0010】
車両姿勢偏差に基づく慣性調整アクティブサスペンションシステムの制御方法であって、慣性測定ユニットの中心点Oを座標原点とする座標系OXYZを構築し、車両走行の正方向をY軸正方向、車両走行の右側方向をX軸正方向、XOY平面に垂直な方向をZ軸正方向と定義し、車体質量中心をWと定義し、電子制御ユニットの内部でスキャンサイクルをプリセットし、制御方法は、
一定のスキャンサイクルで、慣性測定ユニットによって座標原点Oの垂直変位w、ピッチ角αおよびロール角βを測定して電子制御ユニットに出力するステップ1)と、
電子制御ユニットによって質量中心Wの相対座標原点Oの幾何学的関係と座標原点Oの垂直変位w、ピッチ角α与ロール角βに基づいて、車両の質量中心Wにおける垂直変位w、ピッチ角αおよびロール角βを計算するステップ2)と、
電子制御ユニットによって垂直変位w、ピッチ角αおよびロール角βに対して遮断周波数がωのハイパスフィルターを行い、フィルター後の垂直変位はwであり、ピッチ角はαであり、ピッチ角はβであるステップ3)と、
ステップ3)で得られた垂直変位w、ピッチ角αおよびロール角βと前のスキャンサイクルの値を比較して、垂直変位、ピッチ角、ロール角の変化量Δw、Δα、Δβを計算して、−Δw、−Δα、−Δβを姿勢相対補正量とし、車両サスペンション機構の逆運動学のアルゴリズムにより車両各サスペンションサーボ作動シリンダーの伸縮量の目標値を計算し、前記目標値をサーボコントローラーグループに送信して各サスペンションサーボ作動シリンダーの変位サーボ制御を行い、車両姿勢目標の制御を実現することにより、垂直変位w、ピッチ角αおよびロール角βがほぼ変化しないようにし、車両の質量中心の軌跡が直線または円弧に沿って移動し、車体の姿勢が変化しないようにするステップ4)とを含む。
【0011】
本発明の制御方法のさらなる改善は、車両の質量中心Wにおける垂直変位w、ピッチ角αおよびロール角βの計算式は以下のとおりであり、
座標系OXYZにおける質量中心Wの座標をx、y、zとすることを特徴とする。
【0012】
本発明の制御方法のさらなる改善は、遮断周波数ωは、
車両が水平面に静止している時、ハイパスフィルター後に出力される垂直変位w、ピッチ角αおよびロール角βはすべて0に収束されるステップS1、
車両を許容限界の横方向勾配および縦方向勾配に静止駐車し、ハイパスフィルター後に出力される垂直変位w、ピッチ角αおよびロール角βは比較的に小さな値に収束され、前記値はシステム安定性制御に必要な誤差範囲内にあるステップS2、
S1とS2の2つの条件を満たす場合、遮断周波数ωは低い値を取るステップS3によって決定される。
【発明の効果】
【0013】
上記の技術的解決策の採用により、本発明により達成される技術的進歩は以下の通りである:
従来のアクティブサスペンションシステムおよび制御方法と比較して、本発明によって提出される慣性制御の原理に基づくアクティブサスペンションシステムおよび制御方法は、各サーボ作動シリンダーの伸縮を制御することにより、車両の運転の姿勢を制御し、ほぼ変化のない状態に保つことで、走行するときの車体の振動を低減し、複雑な道路を走行するときの速度、操縦安定性、および乗り心地を改善できる。
【0014】
本発明のアクティブサスペンションシステムおよび制御方法を使用すると、1つは車両の姿勢調節および乗り心地制御を統合することができ、もう1つは車両の走行中に各車輪の接地点が不均一になる可能性があるため、車体姿勢への路面の影響は低く抑え、すなわち、複数の入力と複数の出力を備えた複雑なシステムであるアクティブサスペンションシステムを、非干渉化した。
【0015】
本発明ハイパスフィルターは、w、αおよびβで変更頻度が遅い積分誤差と、車両が緩やかな傾斜をのり越えることによって引き起こされるw、αおよびβでゆっくり変化する部分を除去し、後者を除去することで、サスペンションストロークが限界に達することなく、車両が丘の包絡面に沿って移動することが可能になり、車両の通過を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】姿勢偏差に基づく慣性調整アクティブサスペンションシステムの構造原理図である。
図2】姿勢偏差に基づく四輪車両慣性調整アクティブサスペンションシステムの構造原理図である。
図3】試験で使用された三軸車両の概略図である。
図4】試験で使用された三角形の障害物の概略図である。
図5】ピッチ角の変化を測定するための試験スキームの概略図である。
図6】ロール角の変化を測定するための試験スキームの概略図である。
図7】三軸車両が5 km/hの速度で三角形の障害物をのり越える時に測定された車体のピッチ角の変化比較図である。
図8】三軸車両が10 km/hの速度で三角形の障害物をのり越える時に測定された車体のピッチ角の変化比較図である。
図9】三軸車両が5 km/hの速度で三角形の障害物をのり越える時に測定された車体のロール角の変化比較図である。
図10】三軸車両が10 km/hの速度で三角形の障害物をのり越える時に測定された車体のロール角の変化比較図である。
図11】三軸車両が5 km/hの速度で三角形の障害物をのり越える時に測定された車体質量中心の垂直加速度の変化比較図である。
図12】三軸車両が10 km/hの速度で三角形の障害物をのり越える時に測定された車体質量中心の垂直加速度の変化比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施例に結び付けて本発明をさらに詳細に説明する。
【0018】
本発明は、3つ以上の車輪を有する車両アクティブサスペンションシステムに適用される姿勢偏差に基づく慣性調整アクティブサスペンションシステムを提供する。
【0019】
以下の説明では、一般的な三輪車と四輪車を例に挙げて説明するが、四輪以上の車両は、四輪車両の構成原理と方法に従うことができる。
【0020】
実施例1:姿勢偏差に基づく三輪車両慣性調整アクティブサスペンションシステムおよび制御方法
図1に示したように、車体13、慣性測定ユニット1、車輪2、3、4および車輪2、3、4に一対一に対応するサスペンションサーボ作動シリンダー5、6、7およびサスペンションサーボ作動シリンダー5、6、7にそれぞれ対応する変位センサー8、9、10、電子制御ユニット11おおびサーボコントローラーグループ12を含む。ここで、慣性測定ユニット1は、車体13に固定され、車輪2、3、4はそれぞれ、サスペンションサーボ作動シリンダー5、6、7を介して車体13の下方に連結され、変位センサー8、9、10はそれぞれ、サスペンションサーボ作動シリンダー5、6、7のストロークを測定するために使用され、かつ変位センサーの変位フィードバック値の測定信号を形成し、前記測定信号をサーボコントローラーグループ12に送信する。電子制御ユニット11およびサーボコントローラーグループ12は、車体13に固定装着され、前記電子制御ユニット11は、慣性測定ユニット1およびサーボコントローラーグループ12に通信接続され、サーボコントローラーグループ12は、変位センサー8、9、10に通信接続される。電子制御ユニット11は、慣性測定ユニット1によって測定された車両姿勢パラメータを読み取り、車両の現在の時刻と前の時刻の姿勢偏差を計算し、姿勢制御パラメータをサーボコントローラーグループ12に出力し、サーボコントローラーグループ12は、電子制御ユニットによって出力された姿勢制御パラメータおよび変位センサーの変位フィードバック値に基づいて、各サスペンションサーボ作動シリンダー5、6、7の伸縮動作を制御して、車両の質量中心がほぼ直線または円弧に沿って移動し、車体の姿勢が変化しないようにする。
【0021】
本実施例は三輪車両であり、各車輪およびそのサスペンションサーボ作動シリンダーは、車体の1つの支点を形成することができるため、3点で1つの平面を決定する方法で車体の姿勢を制御することができる。
【0022】
本発明の慣性測定ユニット1は、ジャイロスコープなどの慣性パラメータを測定することができる構成要素であることもできる。
【0023】
本発明の制御方法は、まず車両全体に座標系OXYZを構築し、車体質量中心Wを定義し、座標系の座標原点が慣性測定ユニットの中心点Oであり、車両走行の正方向をY軸正方向、車両走行の右側方向をX軸正方向、XOY平面に垂直な方向をZ軸正方向と定義し、同時に電子制御ユニットの内部でスキャンサイクルをプリセットする。本発明の具体的な制御方法は、以下のステップを含む。
【0024】
第1のステップ、座標原点Oを測定点とし、一定のスキャンサイクルで、慣性測定ユニット1によって座標原点Oの垂直変位w、ピッチ角αおよびロール角βを測定して電子制御ユニット11に出力し、前記wは座標原点OにおけるZ軸方向に沿った車体の垂直変位であり、αはX軸を中心に回転するときのピッチ角であり、βはY軸を中心に回転するときのロール角である。
【0025】
第2のステップ、車両の質量中心Wにおける姿勢パラメータを計算する。車体質量中心をWと定義し、電子制御ユニットによって質量中心Wの相対座標原点Oの幾何学的関係と座標原点Oの垂直変位w、ピッチ角α与ロール角βに基づいて、車両の質量中心Wにおける垂直変位w、ピッチ角αおよびロール角βを計算し、前記座標系OXYZにおける車体質量中心Wの座標はx、y、zであり、wはZ軸方向にそった車両の質量中心Wの垂直変位であり、αは車両が質量中心Wを迂回し、X軸に平行な軸を中心に回転するピッチ角であり、βは車両が質量中心Wを迂回し、Y軸に平行な軸を中心に回転するロール角であるので、W質量中心座標の計算式は以下のとおりである。
【0026】
第3のステップ、電子制御ユニット11によって垂直変位w、ピッチ角αおよびロール角βに対して遮断周波数がωのハイパスフィルターを行い、フィルター後に垂直変位はwであり、ピッチ角はαであり、ロール角はβを得た。ここで、ハイパスフィルターを行う作用は、w、αおよびβで変更頻度が遅い積分誤差と、車両が緩やかな傾斜をのり越えることによって引き起こされるw、αおよびβでゆっくり変化する部分を除去し、後者を除去することで、サスペンションストロークが限界に達することなく、車両が丘の包絡面に沿って移動することが可能になり、車両の通過を改善するためである。ここで、遮断周波数ωは、以下の実験方法で決定される。
【0027】
ステップS1、車両を水平面に静止させ、ハイパスフィルター後に出力される垂直変位w、ピッチ角αおよびロール角βはすべて0に収束され、ほぼ0に収束される。
【0028】
ステップS2、車両を許容限界の横方向勾配および縦方向勾配に静止駐車し、ハイパスフィルター後に出力される垂直変位w、ピッチ角αおよびロール角βは比較的に小さな値に収束され、前記値はシステム安定性制御に必要な誤差範囲内にある
【0029】
ステップS3、S1とS2の2つの条件を満たす場合、遮断周波数ωは低い値を取る。
【0030】
第4のステップ、各サスペンションサーボ作動シリンダーの伸縮を制御して、垂直変位w、ピッチ角αおよびロール角βがほぼ変化しないようにし、車両の質量中心の軌跡が直線または円弧に沿って移動し、車体の姿勢が変化しないようにする。具体的な方法は以下のとおりである:第3のステップで得られた垂直変位w、ピッチ角αおよびロール角βと前のスキャンサイクルの値を比較して、垂直変位、ピッチ角、ロール角の変化量Δw、Δα、Δβを計算して、−Δw、−Δα、−Δβを姿勢相対補正量とし、車両各サスペンションサーボ作動シリンダーグループ5、6、7の伸縮量l、l、lの目標値を計算し、前記目標値をサーボコントローラーグループ12に送信して各サスペンションサーボ作動シリンダー5、6、7の変位サーボ制御を行うことで、車両姿勢目標の制御を実現することができ、これにより垂直変位w、ピッチ角αおよびロール角βがほぼ変化しないようにし、車両の質量中心の軌跡が直線または円弧に沿って移動し、車体の姿勢が変化しないようにする。サスペンションサーボ作動シリンダーの伸縮量の目標値を計算する場合、車両サスペンション機構の逆運動学のアルゴリズムにより計算できる。
【0031】
実施例2:姿勢偏差に基づく四輪車両慣性調整アクティブサスペンションシステムおよび制御方法
図2に示したように、本実施例は四輪車両であり、システムは、車体13、慣性測定ユニット1、車輪2、3、4.1、4.2および車輪2、3、4.1、4.2に一対一に対応するサスペンションサーボ作動シリンダー5、6、7.1、7.2と対応する変位センサー8、9、10.1、10.2、電子制御ユニット11、およびサーボコントローラーグループ12を含む。ここで、慣性測定ユニット1は、車体13に固定装着され、車輪2、3、4.1、4.2は、サスペンションサーボ作動シリンダー5、6、7.1、7.2を介して車体13の下方に連結され、変位センサー8、9、10.1、10.2はそれぞれ、サスペンションサーボ作動シリンダー5、6、7.1、7.2のストロークを測定するために使用され、電子制御ユニット11およびサーボコントローラーグループ12は、車体に固定され、前記電子制御ユニット11は、慣性測定ユニット1およびサーボコントローラーグループ12に通信接続され、サーボコントローラーグループ12は、変位センサー8、9、10.1、10.2に通信接続される。
【0032】
四輪車両として、本発明の制御方法の1つは、実施例1と同様であり、電子制御ユニットの内部でスキャンサイクルをプリセットし、一定のスキャンサイクルで、電子制御ユニット11は、慣性測定ユニット1によって測定された車両姿勢パラメータを読み取り、車両の現在の時刻と前の時刻の姿勢偏差を計算し、姿勢制御パラメータをサーボコントローラーグループ12に出力し、サーボコントローラーグループ12は、電子制御ユニットによって出力された姿勢制御パラメータおよび変位センサーの変位フィードバック値に基づいて、各サスペンションサーボ作動シリンダー5、6、7.1、7.2の伸縮動作を制御して、車両の質量中心がほぼ直線または円弧に沿って移動し、車体の姿勢が変化しないようにする。
【0033】
本実施例の四輪車両ではさらに、車輪4.1および4.2に対応するサスペンションサーボ作動シリンダー7.1、7.2の上部チャンバーと下部チャンバーをそれぞれ連通させて、すなわち、サスペンションサーボ作動シリンダー7.1、7.2の上部チャンバーは、上部チャンバー接続パイプライン14を介して接続され、下部チャンバーは、下部チャンバー接続パイプライン15を介して接続されて、車輪4.1、4.2およびそれらのサスペンションの車体に対する支持作用は、1つの支点と同等し、他の2つの車輪2、3およびそれらのサスペンションは車体を個別に支持し、それぞれが支点を形成するため、車体は3つの支点を有する。一般的な車両の場合、2つの後輪とそのサスペンションサーボ作動シリンダーは通常まったく同じ構造を採用しているため、同等の支点は、車輪4.1、4.2に対応するサスペンションサーボ作動シリンダー7.1、7.2の上部ヒンジポイントの中点にあると考えることができる。前記同等の支点の高さを制御するには、サスペンションサーボ作動シリンダー7.1、7.2の平均伸縮量を制御することで実現できる(図2のlで示される)。次に、本実施例の制御方法は、本実施例の二輪を1つの車輪グループとし、実施例1の制御方法をその車輪グループの制御方法に適用した以外は、実施例1と全く同様であるため、ここで繰り返して説明しない。
【0034】
四輪および四輪以上の車両について、実施例2の方法を参考することで実現できる。すなわち、四輪以上の車両について、すべての車輪を3つの車輪グループに分け、各車輪グループ内に1つの車輪または複数の車輪を設置し、ある車輪グループ内の車輪の数が1より大きい場合、前記車輪グループ内のすべてのサスペンションサーボ作動シリンダーの上部チャンバーと下部チャンバーはそれぞれ連通されて、前記車輪グループが車体を支持する1つの支点を構成し、3つの車輪グループが車体の3つの支点を構成する。3つの支点の支持高さを制御することにより、車体の姿勢を制御する。本発明は、四輪以上の車両の制御方法を提供し、三輪を超える車両のすべての車輪を3つの車輪グループの問題に統一計画し、3点で1つの平面を決定する方法で車体の姿勢を制御することにより、複雑なことを簡単にし、制御方法をすべての三輪以上の車両に適合させた。同時に、グループ内の車輪サスペンションサーボ作動シリンダーの上下部チャンバーが連通するように、位置の近い車輪グループを選択して車輪グループにし、車輪グループの支点を簡単に決定するためにグループ分ける時に、車輪グループ内の各車輪およびそのサスペンションサーボ作動シリンダーと変位センサーの構造およびサイズがすべて等しくするようにする。本発明は、各サイクルにおける車両座標原点の垂直変位、ピッチ角およびロール角をリアルタイム走査して、これらのスキャン値にハイパスフィルターを行い、信号内の積分累積誤差信号の干渉を低減し、その後、フィルター後の垂直変位、ピッチ角およびロール角にしたがって、車両サスペンション機構の逆運動学のアルゴリズムを介して、各車輪グループのサスペンションサーボ作動シリンダーの伸縮量を計算し、車両の質量中心が直線または円弧に沿って移動し、車体の姿勢が変化しないようにして、車体の振動を大幅に低減した。
【0035】
本発明の研究開発過程において、発明者らは、姿勢偏差に基づく慣性調整アクティブサスペンションシステムを搭載した三軸車両と、パッシブハイドロニューマチックサスペンションシステムを搭載した三軸車両とを用いて、三角形の障害物をのり越える姿勢比較試験を行った。試験で使用した三軸車両は図3に示したとおりである。車両全長は10m、ホイールベース(2.95+1.65)m、総重量36t、車軸荷重12t、サスペンションストローク±0.11mである。試験で使用した2台の三軸車両の1つは、本発明のアクティブサスペンションシステムを備え、本発明の方法によって制御され、他の三軸車両は、パッシブハイドロニューマチックサスペンションシステムを備えたものである。試験中、本発明の三軸6輪車両の2つの前輪に対応するサスペンションサーボ作動シリンダーの上部チャンバーと下部チャンバーは、それぞれ接続パイプラインによって接続され、その結果、2つの前輪およびそれらのサスペンションの車体に対する支持作用は、1つの支点を形成し、車両後部の2つの軸の右側の2つの車輪に対応するサスペンションサーボ作動シリンダーの上部チャンバーと下部チャンバーは、それぞれ接続パイプラインによって接続され、その結果、後部右側の2つの車輪の車体に対する支持作用は1つの支点を形成し、車両後部の2つの軸の左側の2つの車輪に対応するサスペンションサーボ作動シリンダーの上部チャンバーと下部チャンバーは、それぞれ接続パイプラインによって接続され、その結果、後部左側の2つの車輪の車体に対する支持作用は1つの支点を形成し、これにより車体は3つの支点を有する。車両後部の4つの車輪およびそのサスペンションサーボ作動シリンダーは、まったく同じ構造を採用する。
【0036】
試験で使用した三角形の障害物は図4に示したとおりである。三角形の障害物は、長さ3m、幅0.8m、高さ0.1mである。
【0037】
図5は、ピッチ角の変化を測定するための試験スキームの概略図である。この試験スキームでは、ホイールベースに基づいて2つの同じ三角形の障害物を対称的に配置し、車両の左側と右側の車輪が同時に三角形の障害物を通過して、車体のピッチ角の変化と質量中心の垂直加速度を測定した。
【0038】
図6は、ロール角の変化を測定するための試験スキームの概略図である。この試験スキームでは、車両の片側(左側または右側)に1つの三角形の障害物のみを配置し、三角形の障害物に対応する車両の側の車輪のみが三角形の障害物を通過して、車体のロール角の変化を測定した。
【0039】
図7および図8は、図5で示された試験スキームを使用して、それぞれ5km/hおよび10km/hの速度で両側の車輪が三角形の障害物を乗り越える時の車体のピッチ角の変化を表す。図7および図8から分かるように、本発明のアクティブサスペンションシステムを搭載した三軸車両が三角形の障害物を乗り越える時、そのピッチ角の変化は、−1°ないし1°の間であり、パッシブハイドロニューマチックサスペンションシステムを搭載した三軸車両が三角形の障害物を乗り越える時、そのピッチ角の変化は、約−1°ないし2.5°の間であり、パッシブハイドロニューマチックサスペンションシステムと比較して、本発明のアクティブサスペンションシステムおよび制御方法を使用した車体のピッチ角は大幅に減少した。
【0040】
図9および図10は、図6で示された試験スキームを使用して、それぞれ5km/hおよび10km/hの速度で片側の車輪が三角形の障害物をのり越える時の車体のロール角の変化を表す。図9および図10から分かるように、本発明のアクティブサスペンションシステムを搭載した三軸車両が三角形の障害物を乗り越える時、そのロール角の変化は、−1°ないし1°の間であり、パッシブハイドロニューマチックサスペンションシステムを搭載した三軸車両が三角形の障害物を乗り越える時、そのピッチ角の変化は、約−1°ないし2°の間であり、パッシブハイドロニューマチックサスペンションシステムと比較して、本発明のアクティブサスペンションシステムおよび制御方法を使用した車体のロール角は大幅に減少した。
【0041】
図11および図12は、図5で示された試験スキームを使用して、それぞれ5km/hおよび10km/hの速度で両側の車輪が三角形の障害物をのり越える時の車体質量中心の垂直加速度の変化を表す。図11および図12から分かるように、パッシブハイドロニューマチックサスペンションシステムと比較して、本発明のアクティブサスペンションシステムおよび制御方法を使用した三軸車両が三角形の障害物を乗り越える時、その車体質量中心の垂直加速度振幅が大幅に低減され、車体の振動が大幅に低減され、平らな路面での垂直加速度振幅と比較して、本発明の車両が三角形の障害物を乗り越える時の垂直加速度振幅は、あまり変化しなかった。
【0042】
上記の比較試験から、本発明で提案する姿勢偏差に基づく慣性調整アクティブサスペンションシステムは、車体振動を効果的に低減し、車両の操縦安定性および運転快適性を改善できることがわかる。
【0043】
最後に、上記の各実施例は、本発明の技術的解決策を例示するためにのみ使用され、それを限定するために使用されないことに留意すべきである。本発明は、前述の実施例を参照して詳細に説明されているが、当業者は、前述の実施例で説明されている技術的解決策を変更すること、または技術的特徴の一部またはすべてを同等に置き換えることは依然として可能であり、これらの変更または置き換えは、対応する技術的解決策の本質を本発明の実施例の技術的解決策の範囲から逸脱させないことを理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12